(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088069
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】基板用保護具、及び膜付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20230619BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20230619BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230619BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230619BHJP
G02B 1/113 20150101ALN20230619BHJP
【FI】
C23C14/50 D
C23C16/458
C03C17/34 Z
H01L21/68 N
G02B1/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202706
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄亮
【テーマコード(参考)】
2K009
4G059
4K029
4K030
5F131
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009BB02
2K009CC02
2K009DD01
4G059AA01
4G059AC04
4G059EA01
4G059EA05
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA07
4G059GA12
4K029AA04
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029CA05
4K029JA01
4K030CA05
4K030CA06
4K030CA07
4K030CA17
4K030GA02
5F131AA03
5F131AA12
5F131BA03
5F131BA04
5F131CA06
5F131DA05
5F131DA22
5F131DA42
5F131EB38
5F131GA03
5F131GA22
5F131GA32
(57)【要約】
【課題】機能性膜の膜質の均一性を高めることのできる基板用保護具、及び膜付き基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板用保護具11は、基板W1の第1主面W1aを保護する。基板用保護具11は、基板W1の第1主面W1aを覆う寸法を有する本体プレート12と、本体プレート12に基板W1を取り付ける取付部材13とを備える。取付部材13は、本体プレート12と基板W1との間に配置される取付部本体13aと、本体プレート12と基板W1との間から外方に突出する突出部13bとを有する。取付部本体13aは、基板W1の第1主面W1aの周縁部に粘着する粘着層を有する。取付部本体13aは、本体プレート12に固定されず、突出部13bが、本体プレート12に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の両主面のうち、一方の主面を保護するための基板用保護具であって、
前記基板の前記主面を覆う寸法を有する本体プレートと、
前記本体プレートに前記基板を取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材は、前記本体プレートと前記基板との間に配置される取付部本体と、
前記本体プレートと前記基板との間から外方に突出する突出部と、を有し、
前記取付部本体は、前記基板の前記主面の周縁部に粘着する粘着層を有し、
前記取付部本体は、前記本体プレートに固定されず、前記突出部が、前記本体プレートに固定される、基板用保護具。
【請求項2】
前記取付部材の前記取付部本体は、長手方向を有し、
前記取付部材の前記突出部は、前記取付部本体の長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記突出部のいずれも前記本体プレートに固定される、請求項1に記載の基板用保護具。
【請求項3】
前記本体プレートに固定される固定部材をさらに備え、
前記取付部材の前記突出部は、前記固定部材と前記本体プレートとの間に挟持される、請求項1又は請求項2に記載の基板用保護具。
【請求項4】
前記固定部材と前記本体プレートとは、互いに嵌合する凹凸構造を有し、
前記取付部材の前記突出部は、前記凹凸構造により挟持される、請求項3に記載の
基板用保護具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板用保護具を用いる膜付き基板の製造方法であって、
前記基板用保護具に前記基板を取り付ける取り付け工程と、
前記基板用保護具に取り付けられた前記基板に機能性膜を成膜することで膜付き基板を得る成膜工程と、を備える、膜付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用保護具、及び膜付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の基板の両主面のうち、基板の一方の主面のみに機能性膜を成膜する場合がある。この場合、特許文献1,2に開示されるように、基板の他方の主面を基板用保護具により保護することで、基板の他方の主面における機能性膜の成膜を抑えることができる。基板用保護具は、基板の主面における周縁部に粘着可能な粘着層を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-044237号公報
【特許文献2】国際公開第2019/117186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように基板用保護具が基板の周縁部に粘着可能な粘着層を有する場合、基板の周縁部に成膜された機能性膜の膜質の品位と、基板の周縁部よりも内側部分に成膜された機能性膜の膜質の品位とが異なり易い。
【0005】
本発明の目的は、機能性膜の膜質の均一性を高めることのできる基板用保護具、及び膜付き基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する基板用保護具は、基板の両主面のうち、一方の主面を保護するための基板用保護具であって、前記基板の前記主面を覆う寸法を有する本体プレートと、前記本体プレートに前記基板を取り付ける取付部材と、を備え、前記取付部材は、前記本体プレートと前記基板との間に配置される取付部本体と、前記本体プレートと前記基板との間から外方に突出する突出部と、を有し、前記取付部本体は、前記基板の前記主面の周縁部に粘着する粘着層を有し、前記取付部本体は、前記本体プレートに固定されず、前記突出部が、前記本体プレートに固定される。
【0007】
上記のように、取付部材の取付部本体が本体プレートに固定されていないため、取付部本体と本体プレートとの密着性を低く抑えることができる。このため、基板から取付部本体、本体プレートの順に伝わる熱伝導を抑えることが可能となる。これにより、基板の温度上昇を伴う機能性膜の成膜工程において、基板の中央部の温度と基板の周縁部の温度との差を小さくすることができる。すなわち、基板に機能性膜を成膜する成膜工程において、基板の温度の均一性を高めることができる。
【0008】
上記基板用保護具において、前記取付部材の前記取付部本体は、長手方向を有し、前記取付部材の前記突出部は、前記取付部本体の長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記突出部のいずれも前記本体プレートに固定されてもよい。この構成によれば、本体プレートに対する取付部本体の離間を抑えることで、基板と本体プレートとの位置ずれを抑えることができる。これにより、例えば、成膜工程を安定して行うことが可能となる。
【0009】
上記基板用保護具において、前記本体プレートに固定される固定部材をさらに備え、前記取付部材の前記突出部は、前記固定部材と前記本体プレートとの間に挟持されてもよい。このように、取付部材の突出部を固定部材と本体プレートとの間に挟持させることで、取付部材を本体プレートに容易に着脱することができる。これにより、例えば、取付部材を容易に交換することが可能となる。
【0010】
上記基板用保護具において、前記固定部材と前記本体プレートとは、互いに嵌合する凹凸構造を有し、前記取付部材の前記突出部は、前記凹凸構造により挟持されてもよい。この構成によれば、取付部材の突出部をより強固に本体プレートに固定することができる。これにより、本体プレートに対する取付部材の位置ずれを抑えることができる。従って、例えば、成膜工程をより安定して行うことが可能となる。
【0011】
膜付き基板の製造方法は、上記基板用保護具を用いる膜付き基板の製造方法であって、前記基板用保護具に前記基板を取り付ける取り付け工程と、前記基板用保護具に取り付けられた前記基板に機能性膜を成膜することで膜付き基板を得る成膜工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、機能性膜の膜質の均一性を高める効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態における基板用保護具を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、基板用保護具の使用状態を示す正面図である。
【
図4】
図4は、基板用保護具を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、固定部材の動作を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、固定部材の動作を説明する断面図である。
【
図9】
図9は、試験用サンプルを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、機能性膜の反射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、基板用保護具、及び膜付き基板の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0015】
<基板用保護具の概要>
図1に示すように、基板W1は、第1主面W1aと、第1主面W1aの反対側の第2主面W1bとを有している。
図1~
図3に示すように、基板用保護具11は、基板W1の第1主面W1aを保護する。基板用保護具11は、基板W1の第1主面W1aを覆う寸法を有する本体プレート12と、本体プレート12に基板W1を取り付ける取付部材13とを備えている。本実施形態の基板用保護具11は、本体プレート12に固定される固定部材14をさらに備えている。
【0016】
基板W1の第2主面W1bは、機能性膜が成膜される主面であり、この第2主面W1bに機能性膜を成膜することで、図示を省略した膜付き基板が得られる。基板W1としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板等が挙げられる。本実施形態の基板W1は、平面視で長方形のガラス基板である。基板W1は、単層構造に限定されず、例えば、ガラス等からなる本体層と、印刷層等の外層とからなる多層構造を有していてもよい。基板W1の厚さは、例えば、5mm以下である。基板W1の厚さは、例えば、0.1mm以上である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、基板用保護具11は、設置部Mに取り付けて用いられる。設置部Mには、一つの基板用保護具11を取り付けてもよいし、
図2に示すように、複数の基板用保護具11を取り付けてもよい。基板W1に機能性膜を成膜する成膜工程は、例えば、
図2に示すように、基板W1及び本体プレート12が縦姿勢になるように基板用保護具11を配置して行うことができる。
【0018】
<本体プレート>
図1に示すように、基板用保護具11の本体プレート12は、基板W1の第1主面W1aよりも大きい外形寸法のプレート面12aと、プレート面12aの外周に連なる外周端面12bとを有している。本実施形態の本体プレート12のプレート面12aは、基板W1における第1主面W1aの全体がプレート面12aの外周縁よりも内側に配置される外形寸法を有している。本体プレート12のプレート面12aは、平面視においてプレート面12aの外周縁から0.5mm以上内側となる範囲に基板W1における第1主面W1aの全体が配置可能な外形寸法を有することが好ましい。
【0019】
本体プレート12の材料としては、例えば、金属材料、セラミックス、耐熱樹脂等が挙げられる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等が挙げられる。本体プレート12の熱膨張係数は、基板W1の熱膨張係数をA/℃とした場合、A-(10×10-6)/℃以上、A+(10×10-6)/℃以下の範囲内であることが好ましい。ここでいう熱膨張係数は、20℃以上、200℃以下の範囲における平均熱膨張係数である。本体プレート12の厚さは、例えば、3mm以上、30mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0020】
<取付部材>
図1及び
図2に示すように、基板用保護具11の取付部材13は、本体プレート12と基板W1との間に配置される取付部本体13aと、本体プレート12と基板W1との間から外方に突出する突出部13bとを有している。
【0021】
図3に示すように、取付部本体13aは、基板W1の第1主面W1aの周縁部に粘着する粘着層15を有している。本実施形態の取付部本体13aは、本体プレート12の対向する二辺に沿って延びるように一対配置されている。一対の取付部本体13aの粘着層15は、基板W1の対向する二辺に沿った周縁部を粘着する。
【0022】
粘着層15は、基板W1に機能性膜を成膜する成膜時の温度に耐え得る耐熱性を有するものを選択して用いることができる。粘着層15としては、例えば、シリコーン系粘着層、アクリル系粘着層、及びウレタン系粘着層が挙げられる。
【0023】
粘着層15の基板W1に対する粘着力は、成膜後において基板W1から粘着層15を容易に剥離させる観点から、例えば、3.0(N/25mm幅)以下の弱粘着性を有することが好ましい。なお、粘着層15の基板W1に対する粘着力の下限は、基板W1に対する密着性を確保し易くするため、0.05(N/25mm幅)以上であることが好ましい。粘着層15の粘着力は、JIS Z0237(2009)に規定される180°剥離試験に準拠して測定される。
【0024】
取付部本体13aは、粘着層15が設けられる支持体層16を有している。支持体層16は、非粘着性を有する層であり、本体プレート12側に配置される主面は、非粘着面16aである。すなわち、支持体層16を有する取付部本体13aは、本体プレート12に粘着されない。
【0025】
取付部本体13aの支持体層16は、例えば、織布又は不織布、高分子材料等が挙げられる。織布又は不織布としては、例えば、ガラスクロスが挙げられる。高分子材料としては、例えば、樹脂材料又はゴム材料が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリイミド樹脂が挙げられる。ゴム材料としては、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、及びエチレン・プロピレン・ジエンゴムが挙げられる。
【0026】
支持体層16は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。支持体層16は、例えば、ポリイミドフィルム、PETフィルム等の樹脂フィルムから構成することが好適である。取付部本体13aの厚さは、例えば、10μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、取付部材13の突出部13bが本体プレート12に固定されている。取付部材13の突出部13bは、上記取付部本体13aと同様に粘着層15と支持体層16とを有している。本実施形態の取付部材13は、長手方向を有し、突出部13bは、取付部本体13aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。取付部本体13aの長手方向の両端部の各突出部13bは、いずれも本体プレート12に固定されている。突出部13bの厚さは、例えば、10μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0028】
<固定部材>
図1及び
図2に示すように、基板用保護具11の固定部材14は、本体プレート12の両端部に対応して一対設けられている。
図4~
図6に示すように、上述した取付部材13の突出部13bは、本体プレート12と固定部材14との間に挟持される。このように本実施形態の取付部材13の突出部13bは、固定部材14により本体プレート12に固定される。
【0029】
固定部材14は、第1凹凸構造17を有している。また、本体プレート12は、第1凹凸構造17と嵌合する第2凹凸構造18を有している。取付部材13の突出部13bは、互いに嵌合する第1凹凸構造17と第2凹凸構造18とにより挟持されている。本実施形態の第1凹凸構造17は、凸部構造であるが、凹部構造であってもよいし、凹部と凸部とを組み合わせた構造であってよい。本実施形態の第2凹凸構造18は、凹部構造であるが、凸部構造であってもよいし、凸部と凹部とを組み合わせた構造であってよい。
【0030】
固定部材14を用いて取付部材13を本体プレート12に固定するには、
図5に示すように、取付部材13の取付部本体13aを本体プレート12に重なるように配置する。このとき、取付部材13の突出部13bを本体プレート12の両端部に巻き付けるように配置する。次に、
図5及び
図6に示すように、固定部材14を取付部材13の突出部13bに押し付けるようにして本体プレート12の両端部に組み付ける。これにより、固定部材14の第1凹凸構造17を本体プレート12の第2凹凸構造18に嵌合させる。このとき、第1凹凸構造17と第2凹凸構造18とにより取付部材13の突出部13bを挟持することができる。
【0031】
<その他の構成>
図7及び
図8に示すように、本実施形態の基板用保護具11は、固定部材14を本体プレート12に向けて付勢する付勢機構19を備えている。なお、
図4では、図面を簡略化するため、付勢機構の図示を省略している。
【0032】
基板用保護具11の付勢機構19は、例えば、圧縮コイルばね等の付勢部材を備えている。
図7に示す基板用保護具11では、付勢機構19の付勢力により、固定部材14と本体プレート12により挟持される取付部材13の突出部13bの移動が規制されている。
図8に示すように、固定部材14を付勢機構19の付勢力に抗して引っ張ることで、固定部材14を本体プレート12から離間させることができる。これにより、取付部材13の突出部13bの移動の規制を解除することができる。この状態では、固定部材14と本体プレート12との間の間隙に取付部材13の突出部13bを挿脱することができる。なお、本実施形態の付勢機構19は、例えば、引張コイルばね、板ばね等の付勢部材を用いて、固定部材14を本体プレート12に向けて付勢するように構成することもできる。
【0033】
<膜付き基板の製造方法>
次に、上記基板用保護具11を用いる膜付き基板の製造方法について、基板用保護具11の主な作用とともに説明する。
【0034】
膜付き基板の製造方法は、基板用保護具11に基板W1を取り付ける取り付け工程と、基板用保護具11に取り付けられた基板W1に機能性膜を成膜することで膜付き基板を得る成膜工程とを備えている。
【0035】
図1に示すように、取り付け工程では、基板W1の第1主面W1aを本体プレート12のプレート面12aと向かい合うようにして基板W1を本体プレート12のプレート面12aに重ねるように載置する。このとき、基板W1の第1主面W1aを基板用保護具11の粘着層15に粘着させることで、本体プレート12に対する基板W1の位置ずれを抑えることができる。
【0036】
成膜工程では、基板用保護具11に取り付けられた基板W1の第2主面W1b上に機能性膜を成膜することで、図示を省略した膜付き基板を得る。成膜工程では、基板W1の外周端面にも機能性膜を成膜することも可能である。
【0037】
成膜工程で用いる成膜法としては、例えば、スパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スプレー、スピンコート等のコーティング法等が挙げられる。膜付き基板の機能性膜としては、例えば、所定の光学的特性を有する膜(誘電体膜等)、所定の機械的特性を有する膜、及び所定の化学的特性を有する膜、所定の色を有する膜が挙げられる。機能性膜を形成するための成膜材料は、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。
【0038】
成膜工程で用いる基板用保護具11は、本体プレート12と取付部材13とを備えている。取付部材13の取付部本体13aは、本体プレート12に固定されず、取付部材13の突出部13bが、本体プレート12に固定されている。
【0039】
このように取付部材13の取付部本体13aが本体プレート12に固定されていないため、取付部本体13aと本体プレート12との密着性を低く抑えることができる。このため、基板W1から取付部本体13a、本体プレート12の順に伝わる熱伝導を抑えることが可能となる。これにより、基板W1の温度上昇を伴う機能性膜の成膜工程において、基板W1の中央部の温度と基板W1の周縁部の温度との差を小さくすることができる。すなわち、基板W1に機能性膜を成膜する成膜工程において、基板W1の温度の均一性を高めることができる。
【0040】
次に、成膜用保護具を用いた成膜工程の試験例について説明する。
図9には、成膜用保護具の試験用サンプル20を示している。試験用サンプル20は、取付部材13として片面粘着テープを用いている。片面粘着テープは、取付部本体13aと突出部13bとを構成している。片面粘着テープの突出部13bは、本体プレート12のプレート面12aとは反対側の主面に固定されている。片面粘着テープの厚さは、75μmである。
【0041】
試験用サンプル20は、本体プレート12に設けられる両面粘着テープ21をさらに備えている。両面粘着テープ21は、基板W1と本体プレート12のプレート面12aとの間に配置されるとともに、基板W1と本体プレート12との両方に粘着している。両面粘着テープ21の厚さは、125μmである。
【0042】
試験用サンプル20を用いた成膜工程では、ガラス基板に機能性膜として反射防止膜をスパッタリング法により成膜した。反射防止膜は、5層構造とした。1層目は、最もガラス板に近い層であり、その材料は、SiO2であり、厚さは、45.0nmである。2層目の材料は、Nb2O5であり、厚さは、10.3nmである。3層目の材料は、SiO2であり、厚さは、33.0nmである。4層目の材料は、Nb2O5であり、厚さは、109.3nmである。5層目の材料は、SiO2であり、厚さは、83.5nmである。
【0043】
次に、ガラス基板上に成膜した反射防止膜の反射スペクトルを測定した。反射スペクトルの測定は、第1測定点A、第2測定点B、及第3測定点Cの3箇所で行った。第1測定点Aは、ガラス基板が粘着されていない中央部分である。第2測定点Bは、ガラス基板が取付部材13の取付部本体13aと重なる第1の周縁部である。第3測定点Cは、ガラス基板が両面粘着テープ21と重なる位置の第2の周縁部である。
【0044】
図10には、第1測定点A、第2測定点B、及び第3測定点Cにおける反射スペクトルを示す。
図10に示すように、第2測定点Bにおける反射防止膜の反射スペクトルは、第1測定点Aのおける反射防止膜の反射スペクトルと同等の結果が得られた。一方、第3測定点Cにおける反射防止膜の反射スペクトルは、第1測定点Aにおける反射防止膜の反射スペクトルとは大きく異なる結果となった。
【0045】
次に、ガラス基板上に成膜した反射防止膜の色座標を測定した。色座標は、JIS Z8781-4:2013に規定されるL
*a
*b
*色空間に準拠して測定した。その結果を
図11に示す。
図11に示すように、第2測定点Bの反射防止膜の色座標は、第1測定点Aの反射防止膜の色座標と同等の結果が得られた。一方、第3測定点Cの反射防止膜の色座標は、第1測定点Aの反射防止膜の色座標とは大きく異なる結果となった。
【0046】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)基板用保護具11は、基板W1の第1主面W1aを覆う寸法を有する本体プレート12と、本体プレート12に基板W1を取り付ける取付部材13とを備えている。取付部材13は、本体プレート12と基板W1との間に配置される取付部本体13aと、本体プレート12と基板W1との間から外方に突出する突出部13bとを有している。取付部本体13aは、基板W1の第1主面W1aの周縁部に粘着する粘着層15を有している。取付部本体13aは、本体プレート12に固定されず、突出部13bが、本体プレート12に固定されている。
【0047】
この構成によれば、上述したように基板W1に機能性膜を成膜する成膜工程において、基板W1の温度の均一性を高めることができる。従って、機能性膜の膜質の均一性を高めることができる。例えば、膜付き基板における機能性膜の中央部の反射率と周縁部における反射率とを近づけることができる。また、例えば、膜付き基板の中央部の色と周縁部の色とを近づけることができる。
【0048】
(2)基板用保護具11において、取付部材13の取付部本体13aは、長手方向を有している。取付部材13の突出部13bは、取付部本体13aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。これら突出部13bのいずれも本体プレート12に固定されている。この場合、本体プレート12に対する取付部本体13aの離間を抑えることで、基板W1と本体プレート12との位置ずれを抑えることができる。これにより、例えば、基板W1に機能性膜を成膜する成膜工程を安定して行うことが可能となる。
【0049】
(3)基板用保護具11は、本体プレート12に固定される固定部材14をさらに備えている。取付部材13の突出部13bは、固定部材14と本体プレート12との間に挟持されている。このように取付部材13の突出部13bを固定部材14と本体プレート12との間に挟持させることで、取付部材13を本体プレート12に容易に着脱することができる。これにより、例えば、取付部材13を容易に交換することが可能となる。
【0050】
(4)基板用保護具11において、固定部材14と本体プレート12とは、互いに嵌合する凹凸構造を有している。取付部材13の突出部13bは、凹凸構造により挟持されている。この場合、取付部材13の突出部13bをより強固に本体プレート12に固定することができる。これにより、本体プレート12に対する取付部材13の位置ずれを抑えることができる。従って、例えば、成膜工程をより安定して行うことが可能となる。
【0051】
(5)基板用保護具11は、固定部材14を本体プレート12に向けて付勢する付勢機構19を備えている。この場合、付勢機構19の付勢力に抗して固定部材14を引っ張ることで、固定部材14を本体プレート12から離間させることができる。これにより、固定部材14と本体プレート12との間に取付部材13の突出部13bを容易に挿脱することができる。従って、本体プレート12に取付部材13を容易に着脱することが可能となる。このため、例えば、取付部材13を容易に交換することが可能となる。
【0052】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・基板用保護具11において、固定部材14の第1凹凸構造17と本体プレート12の第2凹凸構造18とを省略することもできる。すなわち、固定部材14と本体プレート12は、平坦面により取付部材13の突出部13bを挟持する構成であってもよい。
【0054】
・基板用保護具11において、取付部材13の突出部13bは、固定部材14と本体プレート12との間に挟持されることで本体プレート12に固定されているが、この固定方法に限定されない。例えば、取付部材13の突出部13bと本体プレート12との間に粘着層を配置し、この粘着層により、突出部13bを本体プレート12に固定することもできる。また、このような粘着層と上記固定部材14とを併用することもできる。
【0055】
・基板用保護具11の固定部材14を、例えば、ねじ等の締結部材により本体プレート12に固定することもできる。
・基板用保護具11の付勢機構19を省略することもできる。
【0056】
・基板用保護具11において、一つの固定部材14に設けられる付勢機構19の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
・基板用保護具11において、取付部材13の取付部本体13aの形状や配置は、上記実施形態に限定されず、例えば、平面視で本体プレート12の外周端縁に沿って連続する環状であってもよい。
【0057】
・基板用保護具11において、取付部材13の突出部13bは、取付部本体13aの両端部に設けられているが、取付部本体13aの両端部のうち、いずれか一方の端部に設けられていてもよい。例えば、
図2に示すように、基板W1及び本体プレート12が縦姿勢になるように基板用保護具11を配置して成膜工程を行う場合、取付部本体13aの上端部に設けた突出部13bのみによって取付部材13を本体プレート12に固定してもよい。
【0058】
・基板用保護具11において、取付部材13の突出部13bは、一つの取付部本体13aに対して3つ以上設けることもできる。
・基板用保護具11において、取付部材13の突出部13bは、粘着層15と支持体層16とを有しているが、支持体層16のみから構成することもできる。
【0059】
・上記基板用保護具11における本体プレート12のプレート面12aは、基板W1における第1主面W1aの全体がプレート面12aの外周縁よりも内側に配置される外形寸法を有している。しかし、本体プレート12のプレート面12aは、基板W1の第1主面W1aと同じ外形寸法を有していてもよい。
【0060】
・基板W1に機能性膜を成膜する成膜工程は、基板W1及び本体プレート12が横姿勢や傾斜姿勢となるように基板用保護具11を配置して行うこともできる。
・上記実施形態の基板用保護具11の本体プレート12の形状は、平面視で四辺形状であるが、例えば、四辺形状以外の多角形状、円形状、楕円形状等、基板W1の形状に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
11…基板用保護具
12…本体プレート
13…取付部材
13a…取付部本体
13b…突出部
14…固定部材
15…粘着層
17…第1凹凸構造
18…第2凹凸構造
W1…基板
W1a…第1主面