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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088079
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20230619BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H01L29/78 301X
H01L29/78 301G
H01L29/78 301H
H01L29/78 301S
H01L27/088 A
H01L27/088 E
H01L27/088 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202722
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 成実
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AA04
5F048AC01
5F048BA02
5F048BA14
5F048BA19
5F048BB09
5F048BB11
5F048BC03
5F048BC18
5F048BD06
5F048BD07
5F048BG13
5F048CB01
5F140AA12
5F140AA24
5F140AA39
5F140BA01
5F140BA05
5F140BB04
5F140BB05
5F140BC12
5F140BD11
5F140BD13
5F140BE07
5F140BF05
5F140BF06
5F140BF07
5F140BF10
5F140BG04
5F140BG08
5F140BG14
5F140BG28
5F140BG36
5F140BH05
5F140BH06
5F140BH30
5F140BK18
5F140CB02
5F140CB04
5F140CB10
(57)【要約】
【課題】SOI構造の利点を損なわずに、浮遊ボディ効果を抑制する。
【解決手段】フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置が、基板11の上方に形成され、半導体層19を介して基板11に接続されたチャネル層14と、基板11の上方に絶縁層20aを介して基板11から離間して設けられ、チャネル層14の第1側面に設けられたソース層21aと、基板11の上方に絶縁層20bを介して基板11から離間して設けられ、チャネル層14の第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層21bと、チャネル層14の上方に設けられた第1部分と基板11とチャネル層14との間に設けられた第2部分(部分22a)とを含み、第2部分の側面22a1または側面22a2が、半導体層19に対向しているゲート電極22と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置において、
基板の上方に形成され、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層と、
前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層と、
前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層と、
前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記チャネル層は、前記第1絶縁層または前記第2絶縁層と、前記第2部分の前記第3側面または前記第4側面との間に設けられた前記半導体層を介して前記基板に接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板と、前記チャネル層と、前記半導体層と、前記ゲート電極における前記第2部分により、前記トランジスタとは反対導電型の第1のトランジスタが設けられている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層は、前記チャネル層に含まれる第1の不純物とは反対導電型の第2の不純物を含む、請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層は、前記チャネル層に含まれる第1の不純物と同一導電型の第2の不純物を含み、前記半導体層の不純物濃度は、前記チャネル層の不純物濃度よりも低い、請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板の表面には、前記チャネル層に含まれる第1の不純物と同一導電型の第3の不純物を含み、不純物濃度が、前記チャネル層の不純物濃度よりも高い不純物層が形成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1部分の側壁に形成されている側壁絶縁膜の下方の前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の上面の一部は、前記チャネル層の下面に形成された前記半導体層の下面に接している、請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記チャネル層は、第1のチャネル層と前記第1のチャネル層の上方に設けられた第2のチャネル層とを含み、
前記第1のチャネル層と前記第2のチャネル層との間に、前記ゲート電極の第3部分がさらに設けられている、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1のチャネル層と、前記第2のチャネル層と、前記半導体層と、前記ゲート電極における前記第3部分により、前記トランジスタとは反対導電型の第2のトランジスタが設けられている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、
基板の上方に、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層を形成し、
前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層を形成し、
前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層を形成し、
前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極を形成する、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon On Insulator)基板上に、フィン型構造のトランジスタ(フィン状に隆起したトランジスタ構造をもつ)を有する半導体装置が知られている。また、トランジスタのチャネルの周囲を完全にゲートで囲むGAA(Gate All Around)構造のフィン型トランジスタが提案されている(たとえば、特許文献1~3参照)。
【0003】
ところで、SOI基板上に形成されるフィン型トランジスタのチャネルは、半導体基板から電気的に分離されているため、直前の動作履歴に依存した電荷がたまり、閾値電圧の変化などの特性ばらつきが生じやすくなる。このような現象は浮遊ボディ効果と呼ばれることもある。
【0004】
浮遊ボディ効果をなくすために、チャネルと基板間を導通させる技術が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-52173号公報
【特許文献2】特開2007-173784号公報
【特許文献3】国際公開第2009/151001号
【特許文献4】特開2008-10876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、浮遊ボディ効果をなくすために、チャネルと基板間を導通していると、ゲート電圧によるチャネル部のポテンシャルの変化が小さくなるなど、SOI構造の利点が損なわれる可能性がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、SOI構造の利点を損なわずに、浮遊ボディ効果を抑制可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置において、基板の上方に形成され、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層と、前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層と、前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層と、前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極と、を有する半導体装置が提供される。
【0009】
また、1つの実施態様では、フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、基板の上方に、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層を形成し、前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層を形成し、前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層を形成し、前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極を形成する、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、本発明は、SOI構造の利点を損なわずに、浮遊ボディ効果を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態の半導体装置の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5図2のV-V線における断面図である。
図6】チャネルカット層を設けていない半導体装置の例を示す図である。
図7】絶縁層の厚さが下限の場合の半導体装置の例を示す図である。
図8】絶縁層の厚さが下限を下回る場合の半導体装置の例を示す図である。
図9】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その1)。
図10】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その2)。
図11】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その3)。
図12】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その4)。
図13】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その5)。
図14】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その6)。
図15】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その7)。
図16】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その8)。
図17】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その9)。
図18】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その10)。
図19】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その11)。
図20】隣接する2つのフィン型構造のトランジスタの例を示す図である。
図21】チャネル層の上方のゲート幅よりもチャネル層の下方のゲート幅が細い半導体装置の例を示す断面図である。
図22】第2の実施の形態の半導体装置の一例を示す斜視図である。
図23図22のXXIII-XXIII線における断面図である。
図24図23のXXIV-XXIV線における断面図である。
図25図23のXXV-XXV線における断面図である。
図26図23のXXVI-XXVI線における断面図である。
図27】チャネルカット層を設けていない半導体装置の例を示す図である。
図28】絶縁層の厚さが厚い場合の半導体装置の例を示す図である。
図29】絶縁層の厚さが下限を下回る場合の半導体装置の例を示す図である
図30】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その1)。
図31】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その2)。
図32】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その3)。
図33】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その4)。
図34】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その5)。
図35】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その6)。
図36】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その7)。
図37】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その8)。
図38】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その9)。
図39】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その10)。
図40】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である(その11)。
図41】隣接する2つのフィン型構造のトランジスタの例を示す図である。
図42】チャネル層の上方のゲート幅よりもチャネル層の下方のゲート幅が細い半導体装置の例を示す断面図である。
図43】半導体層が厚く、2つのチャネル層間と、下方のチャネル層と基板間が半導体層で埋まる半導体装置の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の一例を示す斜視図である。また、図2は、図1のII-II線における断面図、図3は、図2のIII-III線における断面図、図4は、図2のIV-IV線における断面図、図5は、図2のV-V線における断面図である。
【0013】
第1の実施の形態の半導体装置10は、基板11の上方に形成された、チャネル層14(図2参照)、ソース層21a、ドレイン層21b、ゲート電極22によるフィン型構造のトランジスタを備えている。
【0014】
基板11は、たとえば、シリコン基板である。また、図2に示されているように、基板11の表面には、チャネル層14に含まれる不純物と同一導電型の不純物を含み、不純物濃度が、チャネル層14の不純物濃度よりも高い不純物層(以下チャネルカット層という)12が形成されている。図2の例では、チャネル層14はp型の不純物を含むp型不純物領域であり、チャネルカット層12はチャネル層14よりもp型の不純物濃度が高いp+型不純物領域である。
【0015】
なお、チャネルカット層12は設けられていなくてもよいが、後述のようにソース-ドレイン間のリーク電流を抑制するために、チャネルカット層12が設けられていることが望ましい。
【0016】
また、基板11には、隣接する素子間を電気的に分離するSTI(Shallow Trench Isolation)15a,15bが形成されている。
チャネル層14は、図2に示されているように、半導体層19を介して、表面にチャネルカット層12が形成された基板11に接続されている。なお、図2の例では、チャネル層14には、ソース層21aとドレイン層21bから拡散された不純物を含む不純物拡散領域14a,14bが形成されている。不純物拡散領域14a,14bは、ソース層21a、ドレイン層21bに含まれる不純物と同じ導電型(チャネル層14に含まれる不純物と異なる導電型)の不純物を、ソース層21a、ドレイン層21bよりも低い不純物濃度で含む。
【0017】
ソース層21aは、フィン型構造のトランジスタのソースであり、基板11の上方に絶縁層20aを介して基板11から離間して設けられているとともに、チャネル層14のある側面に設けられている。
【0018】
ドレイン層21bは、フィン型構造のトランジスタのドレインであり、基板11の上方に絶縁層20bを介して基板11から離間して設けられているとともに、ソース層21aが設けられたチャネル層14の側面と対向する側面に設けられている。
【0019】
ソース層21aとドレイン層21bは、チャネル層14に含まれる不純物と異なる導電型(図2の例ではn型)の不純物を含む。
ゲート電極22は、フィン型構造のトランジスタのゲートであり、図2に示されているように、チャネル層14の上方に設けられた第1部分と、基板11とチャネル層14との間に設けられた第2部分(図2の部分22a)とを含む。ここで、部分22aの側面22a1と側面22a1と対向する側面22a2は、半導体層19に対向している。
【0020】
また、ゲート電極22の側面には側壁絶縁膜18が形成されている。
なお、図示が省略されているが、ゲート電極22のチャネル層14の上方にある部分と、チャネル層14との間、部分22aと半導体層19との間、部分22aとチャネル層14との間、及び部分22aとチャネルカット層12との間には、ゲート絶縁膜が形成されている。ゲート絶縁膜は、たとえば、SiO膜(シリコン酸化膜)やHigh-k膜などである。High-k膜の材料としては、HfO(酸化ハフニウム)、Hf-Si-O(ハフニウムシリコン酸化物)、HfSiON(ハフニウムシリコン酸窒化物)などがあるがこれらに限定されるわけではない。
【0021】
半導体層19は、たとえば、後述の方法により形成されるシリコンエピタキシャル層である。半導体層19は、絶縁層20a,20bと、側面22a1,22a2との間に設けられており、チャネル層14と、基板11とを接続している。なお、半導体層19は、側面22a1,22a2の一方の側のみに設けられていてもよい。
【0022】
また、半導体層19は、図2のように、チャネルカット層12と絶縁層20a,20bとの間、及び絶縁層20a,20bとチャネル層14との間に設けられていてもよい。図2の例では、ゲート電極22のチャネル層14の上方にある部分の側壁に形成されている側壁絶縁膜18の下方の絶縁層20a,20bの上面の一部が、チャネル層14の下面に形成された半導体層19の下面に接している。
【0023】
半導体層19は、チャネル層14に含まれる不純物とは反対導電型の不純物を含んでいてもよいし、チャネル層14に含まれる不純物と同一導電型の不純物を含んでいてもよいし、チャネル層14に含まれる不純物と同一導電型の不純物を、チャネル層14と同じ不純物濃度で、またはチャネル層14よりも低い不純物濃度で含んでいてもよい。
【0024】
また、半導体層19は、ノンドープ層であってもよい。なお、半導体層19は、たとえば、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下となっていれば、n型不純物またはp型不純物が存在していたとしても実質的にノンドープ層であるといえる。
【0025】
このような半導体装置10では、基板11と、チャネル層14と、半導体層19と、ゲート電極22における部分22aにより、フィン型のトランジスタとは反対導電型のトランジスタ25が設けられる。トランジスタ25において、基板11がソースまたはドレインの一方、チャネル層14がソースまたはドレインの他方、半導体層19がチャネル、部分22aがゲートとして機能する。
【0026】
ドレイン層21b側にも同様のトランジスタが設けられている。
フィン型構造のトランジスタをオン状態にする電圧がゲート電極22に印加されたとき、半導体層19において、チャネル層14の不純物と同じ導電型のキャリア(電子または正孔)の密度が低下する。これにより、トランジスタ25はオフ状態となり、チャネル層14は、基板11に対して電気的に分離された状態(フローティング状態)となる。このため、ゲート電圧によるチャネル層14のポテンシャルの変化が大きくなり、大きなソース-ドレイン間電流が得られる。つまり、SOI構造による利点が得られる。
【0027】
一方、フィン型構造のトランジスタをオフ状態にする電圧がゲート電極22に印加されたとき、半導体層19においてチャネル層14の不純物と同じ導電型のキャリアの密度が上がる。これにより、トランジスタ25はオン状態となり、チャネル層14は、基板11と電気的に接続された状態となる。このため、浮遊ボディ効果が抑制され、直前の動作履歴に依存した電荷がチャネル層14にたまることによる、閾値電圧の変化などの特性ばらつきの発生を抑制できる。
【0028】
フィン型構造のトランジスタが、nチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の場合、チャネル層14はp型の不純物を含む。半導体層19がn型の不純物を含み、基板11がp型の不純物を含む場合、トランジスタ25は、pチャネル型MOSFETとなる。この場合、フィン型のトランジスタをオン状態にする電圧(閾値以上の正の電圧)がゲート電極22に印加されたとき、チャネル層14と基板間の電気的分離が良好である。
【0029】
一方、半導体層19がp型の不純物を、チャネル層14と同じ不純物濃度で、またはチャネル層14よりも低い不純物濃度で含み、基板11がp型の不純物を含む場合、トランジスタ25は、デプレッション型のpチャネル型MOSFETとなる。この場合、閾値以上の正の電圧がゲート電極22に印加されたときの、チャネル層14と基板11との絶縁性は、トランジスタ25が上記pチャネル型MOSFETの場合よりも劣る。しかし、トランジスタ25がデプレッション型のpチャネル型MOSFETとなる場合、フィン型のトランジスタをオフ状態にする電圧(0V)がゲート電極22に印加されたとき、チャネル層14と基板11をより低抵抗で接続できる。このため、浮遊ボディ効果の低減効果をより向上できる。
【0030】
また、ソース層21a及びドレイン層21bと、基板11は絶縁層20a,20bで絶縁されているので基板11の上部を介したソース-ドレイン間のリーク電流が防止される。さらに、ソース層21aと基板11間の容量及び、ドレイン層21bと基板11間の容量も小さくできる。
【0031】
また、図2に示されている側壁絶縁膜18の下方の絶縁層20a,20bの上面の一部が、チャネル層14の下面に形成された半導体層19の下面に接している。言い換えると、側壁絶縁膜18の下方のチャネル層14の下面に半導体層19が形成されている。これにより、実質的にチャネル層14の厚さ(上下方向の長さ)が部分的に増え、ソース-ドレイン間の寄生抵抗を低減する効果もある。一方、ゲート電極22の下方のチャネル層14の厚さは変わらないため、チャネル層14に対するゲートの制御性は変わらない。
【0032】
以上のように、第1の実施の形態の半導体装置10によれば、SOI構造の利点を損なわずに、浮遊ボディ効果を抑制できる。
(比較例1)
図6は、チャネルカット層を設けていない半導体装置の例を示す図である。図6において、図2に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0033】
チャネルカット層12がない場合、図6の矢印26で示されるように、ソース層21aから、チャネル層14、半導体層19、基板11を介してドレイン層21bへ流れる、リーク電流が発生する場合があり得る。
【0034】
このため、図2に示したようにチャネルカット層12が設けられていることが望ましい。
(比較例2)
図7は、絶縁層の厚さが下限の場合の半導体装置の例を示す図である。図7において、図2に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0035】
図7の例では、絶縁層20a,20bの厚みが図2の場合よりも薄くなっている。図7に示されている側壁絶縁膜18の下方の絶縁層20a,20bの上面の一部は、チャネル層14の下面(図7では半導体層19が当該下面部分において不純物拡散領域14a,14bとして図示されている)と接している。なお、図7において、不純物拡散領域14a,14bにおいて絶縁層20a,20bと接する部分は、半導体層19にソース層21a、ドレイン層21bからの不純物が拡散されて形成された部分である。
【0036】
絶縁層20a,20bの厚みがさらに薄くなると、以下の比較例3のようになる。
(比較例3)
図8は、絶縁層の厚さが下限を下回る場合の半導体装置の例を示す図である。図8において、図2に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0037】
図8の例では、絶縁層20a,20bの上面が、図7に示した場合のチャネル層14の下面よりも低い位置にある。この場合、チャネル層14の下面と絶縁層20a,20bの上面との間に、ソース層21a及びドレイン層21bが入り込み、チャネル層14の下部で、ソース層21aとドレイン層21bの距離が短くなり、ソース-ドレイン間のリーク電流が発生する可能性がある。
【0038】
このため、絶縁層20a,20bの厚さは、側壁絶縁膜18の下方の絶縁層20a,20bの上面が、チャネル層14の下面の高さ以上になるような厚さであることが望ましい。ただ、絶縁層20a,20bが厚すぎる場合、ソース層21aとドレイン層21bが減り、チャネル層14とソース層21a及びドレイン層21bとの接続面積が小さくなり、ソース-ドレイン間電流が流れる経路が小さくなる(高抵抗化する)。このため、たとえば、チャネル層14の厚みが30nmである場合、絶縁層20a,20bの上面が、チャネル層14の下面から5nm程度高くなるような厚みで、絶縁層20a,20bを形成することが望ましい。
【0039】
(半導体装置10の製造方法)
次に、第1の実施の形態の半導体装置10の製造方法の例を説明する。
図9乃至図19は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【0040】
以下の製造方法の例では、基板11としてシリコン基板を用いるものとして説明する。図9に示されているように、まず、基板11の表面に対する不純物注入により、後に形成されるチャネル層14に含まれる不純物と同一導電型の不純物を含み、不純物濃度がチャネル層14の不純物濃度よりも高いチャネルカット層12が形成される。
【0041】
不純物注入の手法として、イオン注入、気相ドーピング、プラズマ・ドーピング、プラズマ浸漬イオン注入、クラスタ・ドーピング、インフュージョン・ドーピング、液相ドーピング、固相ドーピングなどがある。n型不純物は、P(リン)、As(ヒ素)などであり、p型不純物は、B(ホウ素)、BF(フッ化ホウ素)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)などである。
【0042】
その後、チャネルカット層12上にエピタキシャル成長により、SiGe(シリコンゲルマニウム)のエピタキシャル層13が形成され、エピタキシャル層13上に再びエピタキシャル成長により、ノンドープのシリコンによるチャネル層14が形成される。エピタキシャル成長の手法としては、VPE(Vapor-Phase Epitaxy)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)などがある。
【0043】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13の厚さは、たとえば、5~10nmであり、チャネル層14の厚さは、たとえば、30~50nmである。
その後、基板11においてSTI形成領域が、たとえば、深さ30~50nm程度で形成されるように、エッチング処理により図9に示した積層構造がエッチングされる。そして、エッチング後の構造に対して、たとえば、HDP(High Density Plasma)-CVD(Chemical Vapor Deposition)処理により、シリコン酸化膜がSTI形成領域に埋め込まれる。さらに、CMP(Chemical Mechanical Polishing)による平坦化処理、HF(フッ酸)処理が行われ、シリコン酸化膜が後退し、図10に示されているようなフィン構造とSTI15a,15bが形成される。STI15a,15bは、上面がシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13の下面の高さになるように形成される。
【0044】
続いて、チャネル層14への不純物注入が行われる。フィン型構造のトランジスタが、nチャネル型のMOSFETの場合にはp型不純物が注入され、pチャネル型のMOSFETの場合にはn型不純物が注入される。なお、チャネル層14への不純物注入は、エピタキシャル成長によりチャネル層14が形成される際に行われてもよい。さらになお、たとえば、エピタキシャル成長の際にチャネル層14に予めnチャネル型のMOSFET向けにp型不純物の注入を行った場合には、pチャネル型のMOSFETを形成する領域のチャネル層14にこの時点でn型不純物の注入を重ねるように行ってもよい。同様に、たとえば、エピタキシャル成長の際にチャネル層14に予めpチャネル型のMOSFET向けにn型不純物の注入を行った場合には、nチャネル型のMOSFETを形成する領域のチャネル層14にこの時点でp型不純物の注入を重ねるように行ってもよい。
【0045】
なお、チャネル層14にp型不純物が注入された場合、そのチャネル層14には、フィン型構造のトランジスタがオン状態のとき、n型になるチャネル領域(反転層)が形成され、チャネル層14にn型不純物が注入された場合、そのチャネル層14には、フィン型構造のトランジスタがオン状態のとき、p型になるチャネル領域が形成される。
【0046】
次に、熱酸化により、図10に示したシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13とチャネル層14による積層構造の側面及び上面にゲート酸化膜(図示が省略されている)が、たとえば、1~3nm程度で形成される。さらに、CVD処理により、ポリシリコン膜、ハードマスク層が順に堆積される。ハードマスク層は、たとえば、SiN(窒化シリコン)膜またはシリコン酸化膜である。そして、ポリシリコン膜、ハードマスク層による積層膜に対して、エッチング処理が行われる。なお、エッチング処理はゲート酸化膜上で停止され、ゲート酸化膜は除去されない。
【0047】
エッチング処理により、ポリシリコン膜が、フィン構造に跨るような形状になるようにパターニングされることで、図11に示されているようなダミー電極(以下ダミーゲートという)16と、その上部に設けられるハードマスク17が形成される。ダミーゲート16は、たとえば、ゲート幅Wgが10~14nm程度となるように形成されている。
【0048】
なお、ダミーゲート16は、後述の工程により、ゲート電極22(図2の部分22aを除く)に置き換わる。
次に、側壁絶縁膜18を形成するために、図11に示した構造上に、たとえば、CVD処理により窒化シリコン膜が堆積される。そして、異方性エッチングにより、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13、チャネル層14、ダミーゲート16、ハードマスク17の側壁に窒化シリコン膜が残るようにエッチバックされ、図12に示されているような側壁絶縁膜18が形成される。
【0049】
なお、側壁絶縁膜18の幅Wsは、たとえば、8~12nm程度である。シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13とチャネル層14の側壁に形成される側壁絶縁膜18の高さHsは、後述の処理でチャネル層14をエッチングする際のマスクとなるように、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13の厚さよりも厚くなるように形成される。たとえば、Hsは、10~15nm程度である。
【0050】
このようなエッチバックにより側壁絶縁膜18を形成するため、上記の窒化シリコン膜を堆積する工程では、目標とするWsよりも30%程度厚くなるように堆積される。
次に、ハードマスク17と側壁絶縁膜18をマスクとして、図13に示されているように矢印方向の異方性エッチングが行われる。これにより、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13とチャネル層14において、ハードマスク17と側壁絶縁膜18によりマスクされている部分以外の部分が除去される。なお、図13以降、ダミーゲート16の図示が省略されている。
【0051】
上記異方性エッチング後、図14に示されているように、チャネル層14の下面に残ったシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13が、チャネル層14の下面中央部分(ダミーゲート16により挟まれている部分)が残るように、等方性エッチングによりエッチングされる。
【0052】
このとき、残存するエピタキシャル層13の幅がゲート幅Wgよりも大きすぎる場合、後述の工程で残存するエピタキシャル層13をさらに除去して、その除去した空間にゲート電極22の金属材料を埋め込む際に、適切に埋め込まれない可能性がある。その場合、ゲート電極22と半導体層19が分離するなどして、ゲート電位が半導体層19に影響せず前述のトランジスタ25としての機能が得られなくなる可能性がある。
【0053】
このため、残存するエピタキシャル層13の幅がゲート幅Wgと同じか、プロセスマージンを考慮して、ゲート幅Wgよりも細くなるように、エッチング時間が調整されていることが望ましい。以下では、残存するエピタキシャル層13の幅がゲート幅Wgと同じであるものとして説明する。
【0054】
次に、前述のようなエピタキシャル成長の手法を用いて、図15に示されているように、シリコンによる半導体層19が、チャネルカット層12の上面、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13の露出している側面、及びチャネル層14の露出している側面及び露出している下面に形成される。半導体層19は、たとえば、1~5nmの厚さで形成される。
【0055】
半導体層19は、前述のように、チャネル層14に含まれる不純物とは反対導電型の不純物が注入されていてもよいし、チャネル層14に含まれる不純物と同一導電型の不純物を、チャネル層14以下の不純物濃度で注入されていてもよい。また、半導体層19は、n型またはp型の不純物が注入されていなくてもよい。なお、n型またはp型の不純物が注入されている場合であっても、たとえば、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下であれば、半導体層19を、実質的に不純物を注入していないノンドープ層と扱うことが可能である。
【0056】
次に、図16に示されているように、シリコン酸化膜である絶縁層20a,20bが、側壁絶縁膜18で挟まれた領域と、チャネル層14の下方(シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13が除去された部分)に埋め込まれる。埋め込みが適切に行われるように、シリコン酸化膜の堆積とエッチングを適宜組み合わせて埋め込みが行われてもよい。たとえば、CVDによるシリコン酸化膜の堆積、異方性エッチング、HDP-CVD処理の順に行われてもよいし、さらに最後に異方性エッチングが行われるようにしてもよい。
【0057】
チャネル層14の側面に形成された半導体層19の側壁にシリコン酸化膜が残る場合には、たとえば、フッ酸などによりそのシリコン酸化膜が除去される。
その後、チャネル層14の側面に形成されている半導体層19を除去してもよい(図17参照)。半導体層19の除去は、等方性エッチングにより行われてもよいし、ハードマスク17と側壁絶縁膜18をマスクとして用いた異方性エッチングにより行われてもよい。チャネル層14の側面に形成されている半導体層19を除去する理由については後述する(図21参照)。
【0058】
次に、図18に示すように、ソース層21aとドレイン層21bが形成される。ソース層21aとドレイン層21bは、チャネル層14の対向する2つの側面にエピタキシャル成長により形成される。形成されるソース層21aとドレイン層21bの形状は、ソース層21aとドレイン層21bのエピタキシャル成長が行われるチャネル層14の上記2つの側面の結晶面などによって変わる。また、ソース層21aとドレイン層21bには、チャネル層14に含まれる不純物とは反対導電型の不純物が注入されている。
【0059】
その後、図示を省略しているが、図18に示した構造を覆うように、たとえば、CVD処理により層間絶縁膜となるシリコン酸化膜が堆積される。そして、CMPが行われ、シリコン酸化膜の平坦化が行われる。
【0060】
ハードマスク17がシリコン酸化膜の場合、CMPによりハードマスク17も除去され、ポリシリコンによるダミーゲート16の上面が露出される。
ハードマスク17が窒化シリコン膜の場合、CMPによりハードマスク17の上面が露出する。続いて層間絶縁膜のシリコン酸化膜をマスクにして窒化シリコン膜のハードマスク17がエッチングされ、ハードマスク17が除去され、ポリシリコンによるダミーゲート16の上面が露出される。
【0061】
その後、RMG(Replacement Metal Gate)工程により、ダミーゲート16と、チャネル層14の下方に残存するシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13がゲート電極22に置き換えられる(図19参照)。なお、図19では、チャネル層14については図示が省略されている。
【0062】
RMG工程では、気相エッチングやウェットエッチングなどによりダミーゲート16が除去される。図示しないゲート酸化膜は、ダミーゲート16の除去中に、チャネル層14などを保護する。ゲート酸化膜がフッ酸処理などにより除去された後、チャネル層14の下方に残存するエピタキシャル層13が、等方性エッチングにより除去される。その後、ダミーゲート16とエピタキシャル層13が除去された空間に露出しているチャネル層14の表面と基板11の表面とに図示しないゲート絶縁膜が形成される。さらに、ゲート絶縁膜上であり、かつ、ダミーゲート16、ハードマスク17を除去した箇所及びチャネル層14の下方に残存していたエピタキシャル層13を除去した箇所に、金属材料が充填される。これにより、図19に示すようなゲート電極22が形成される。
【0063】
ゲート絶縁膜は、たとえば、シリコン酸化膜やHigh-k膜などである。ゲート電極22の金属材料としては、たとえば、TiN(窒化チタン)、TiAl(チタンアルミナイド)、TiAlN(アルミニウム窒化チタン)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Ru(ルテニウム)、Zr(ジルコニウム)、Co(コバルト)、Cu(銅)などを用いることができる。また、複数の金属材料の組合せによりゲート電極22が形成されていてもよい。
【0064】
ゲート絶縁膜やゲート電極22は、CVD、メッキ、ALD(Atomic layer deposition)、蒸着などの堆積手法によって形成することができる。
以上のような製造方法によって、図1~5に示したような半導体装置10が製造可能である。
【0065】
なお、チャネル層14の側面に形成されている半導体層19を除去する理由は以下の通りである。
図20は、隣接する2つのフィン型構造のトランジスタの例を示す図である。なお、図20において、ソース層21aとドレイン層21bは図示が省略されている。
【0066】
チャネル層14の側面の半導体層19を除去しない場合、2つのフィン型構造のトランジスタ間においてソース層21aとドレイン層21bを形成するスペースが狭すぎる場合がある。
【0067】
図20の例において、たとえば、ゲート電極22のゲート幅Wgは10~14nm程度、側壁絶縁膜18の幅Wsは8~12nm程度である。たとえば、2つのフィン型構造のトランジスタ間のゲート間距離(隣接する側壁絶縁膜間距離)Laが12nm程度である場合、半導体層19がチャネル層14の側面に1~2nmの厚さで形成された場合、ソース層21aとドレイン層21bが形成される半導体層間の距離Lbは、8~10nmとなり、Laよりも20~30%も短くなる。
【0068】
このため、チャネル層14の側面の半導体層19は、ソース層21aとドレイン層21bを形成する前に除去しておくことが望ましい。
ただし、Laが長くてソース層21aとドレイン層21bを形成するスペースが十分ある場合には、半導体層19を除去しなくてもよい。
【0069】
(比較例4)
図21は、チャネル層の上方のゲート幅よりもチャネル層の下方のゲート幅が細い半導体装置の例を示す断面図である。
【0070】
図14に示した等方性エッチングによりシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層13を除去する際に、残存するエピタキシャル層13の幅がゲート幅Wgよりも細くなるように、エッチング時間が調整された場合には、図21に示すような構造が得られる。すなわち、ゲート電極22においてチャネル層14の上方の部分のゲート幅Wgよりも、チャネル層14の下方の部分22aの幅Wgaが細い。
【0071】
(第2の実施の形態)
図22は、第2の実施の形態の半導体装置の一例を示す斜視図である。また、図23は、図22のXXIII-XXIII線における断面図、図24は、図23のXXIV-XXIV線における断面図、図25は、図23のXXV-XXV線における断面図、図26は、図23のXXVI-XXVI線における断面図である。
【0072】
第2の実施の形態の半導体装置30は、基板31の上方に形成された、チャネル層34a,34b(図23参照)、ソース層41a、ドレイン層41b、ゲート電極42によるフィン型構造のトランジスタを備えている。
【0073】
基板31は、たとえば、シリコン基板である。また、図23に示されているように、基板31の表面には、チャネル層34a,34bに含まれる不純物と同一導電型の不純物を含み、不純物濃度が、チャネル層34a,34bの不純物濃度よりも高い不純物層(以下チャネルカット層という)32が形成されている。図23の例では、チャネル層34a,34bはp型の不純物を含むp型不純物領域であり、チャネルカット層32はチャネル層34a,34bよりもp型の不純物濃度が高いp+型不純物領域である。
【0074】
なお、チャネルカット層32は設けられていなくてもよいが、後述のようにソース-ドレイン間のリーク電流を抑制するために、チャネルカット層32が設けられていることが望ましい。
【0075】
また、基板31には、隣接する素子間を電気的に分離するSTI35a,35bが形成されている。
チャネル層34aは、図23に示されているように、半導体層39を介して、表面にチャネルカット層32が形成された基板31に接続されている。チャネル層34bも、半導体層39とチャネル層34aを介して、基板31に接続されている。なお、図23の例では、チャネル層34a,34bには、ソース層41aとドレイン層41bから拡散された不純物を含む不純物拡散領域34c,34dが形成されている。不純物拡散領域34c,34dは、ソース層41a、ドレイン層41bに含まれる不純物と同じ導電型(チャネル層34a,34bに含まれる不純物と異なる導電型)の不純物を、ソース層41a及びドレイン層41bよりも低い不純物濃度で含む。
【0076】
ソース層41aは、フィン型構造のトランジスタのソースであり、基板31の上方に絶縁層40aを介して基板31から離間して設けられているとともに、チャネル層34a,34bのある側面に設けられている。
【0077】
ドレイン層41bは、フィン型構造のトランジスタのドレインであり、基板31の上方に絶縁層40bを介して基板31から離間して設けられているとともに、ソース層41aが設けられたチャネル層34a,34bの側面と対向する側面に設けられている。
【0078】
ソース層41aとドレイン層41bは、チャネル層34a,34bに含まれる不純物と異なる導電型(図23の例ではn型)の不純物を含む。
ゲート電極42は、フィン型構造のトランジスタのゲートであり、図23に示されているように、チャネル層34bの上方に設けられた第1部分と、基板31とチャネル層34aとの間に設けられた第2部分(図23の部分42a)と、チャネル層34aとチャネル層34bとの間に設けられた第3部分(図23の部分42b)と、を含む。
【0079】
ここで、部分42aの側面42a1と側面42a1と対向する側面42a2は、半導体層39に対向している。部分42bの側面42b1と側面42b1と対向する側面42b2も、半導体層39に対向している。
【0080】
また、ゲート電極42の側面には側壁絶縁膜38が形成されている。
なお、図示が省略されているが、ゲート電極42のチャネル層34bの上方にある部分とチャネル層34bとの間、部分42a,42bと半導体層39との間、部分42aとチャネル層34aとの間、部分42bとチャネル層34a,34bとの間、部分42aとチャネルカット層32との間には、ゲート絶縁膜が形成されている。ゲート絶縁膜は、たとえば、シリコン酸化膜やHigh-k膜などである。
【0081】
半導体層39は、たとえば、後述の方法により形成されるシリコンエピタキシャル層である。半導体層39は、絶縁層40a,40bと、側面42a1,42a2,42b1,42b2との間に設けられており、チャネル層34a,34bと、基板31とを接続している。なお、半導体層39は、側面42a1,42b1と、側面42a2,42b2の一方の側のみに設けられていてもよい。
【0082】
また、半導体層39は、図23のように、チャネルカット層32と絶縁層40a,40bとの間、及び絶縁層40a,40bとチャネル層34a,34bとの間に設けられていてもよい。図23の例では、ゲート電極42のチャネル層34bの上方にある部分の側壁に形成されている側壁絶縁膜38の下方の絶縁層40a,40bの上面の一部が、チャネル層34a,34bの下面に形成された半導体層39の下面に接している。
【0083】
半導体層39は、チャネル層34a,34bに含まれる不純物とは反対導電型の不純物を含んでいてもよいし、チャネル層34a,34bに含まれる不純物と同一導電型の不純物を含んでいてもよいし、チャネル層34a,34bに含まれる不純物と同一導電型の不純物を、チャネル層34a,34bと同じ不純物濃度で、またはチャネル層34a,34bよりも低い不純物濃度で含んでいてもよい。
【0084】
また、半導体層39は、ノンドープ層であってもよい。なお、半導体層39は、たとえば、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下となっていれば、n型不純物またはp型不純物が存在していたとしても実質的にノンドープ層であるといえる。
【0085】
このような半導体装置30では、基板31と、チャネル層34aと、半導体層39と、ゲート電極42における部分42aにより、フィン型のトランジスタとは反対導電型のトランジスタ45aが設けられる。トランジスタ45aにおいて、基板31がソースまたはドレインの一方、チャネル層34aがソースまたはドレインの他方、半導体層39がチャネル、部分42aがゲートとして機能する。
【0086】
さらに、チャネル層34aと、チャネル層34bと、半導体層39と、ゲート電極42における部分42bにより、フィン型のトランジスタとは反対導電型のトランジスタ45bが設けられる。トランジスタ45bにおいて、チャネル層34aがソースまたはドレインの一方、チャネル層34bがソースまたはドレインの他方、半導体層39がチャネル、部分42bがゲートとして機能する。
【0087】
ドレイン層41b側にも同様のトランジスタが設けられている。
フィン型のトランジスタをオン状態にする電圧がゲート電極42に印加されたとき、半導体層39において、チャネル層34a,34bの不純物と同じ導電型のキャリア(電子または正孔)の密度が低下する。これにより、トランジスタ45a,45bはオフ状態となり、チャネル層34a,34bは、基板31に対して電気的に分離された状態(フローティング状態)となる。このため、ゲート電圧によるチャネル層34a,34bのポテンシャルの変化が大きくなり、大きなソース-ドレイン間電流が得られる。つまり、SOI構造による利点が得られる。
【0088】
一方、フィン型構造のトランジスタをオフ状態にする電圧がゲート電極42に印加されたとき、半導体層39においてチャネル層34a,34bの不純物と同じ導電型のキャリアの密度が上がる。これにより、トランジスタ45a,45bはオン状態となり、チャネル層34a,34bは、基板31と電気的に接続された状態となる。このため、浮遊ボディ効果が抑制され、直前の動作履歴に依存した電荷がチャネル層34a,34bにたまることによる、閾値電圧の変化などの特性ばらつきの発生を抑制できる。
【0089】
フィン型構造のトランジスタが、nチャネル型のMOSFETの場合、チャネル層34a,34bはp型の不純物を含む。半導体層39がn型の不純物を含み、基板31がp型の不純物を含む場合、トランジスタ45a,45bは、pチャネル型MOSFETとなる。この場合、フィン型構造のトランジスタをオン状態にする電圧(閾値以上の正の電圧)がゲート電極42に印加されたとき、チャネル層34a,34bと基板間の電気的分離が良好である。
【0090】
一方、半導体層39がp型の不純物を、チャネル層34a,34bと同じ不純物濃度で、またはチャネル層34a,34bよりも低い不純物濃度で含み、基板31がp型の不純物を含む場合、トランジスタ45a,45bは、デプレッション型のpチャネル型MOSFETとなる。この場合、閾値以上の正の電圧がゲート電極42に印加されたときの、チャネル層34a,34bと基板31との絶縁性は、トランジスタ45a,45bが上記pチャネル型MOSFETの場合よりも劣る。しかし、トランジスタ45a,45bがデプレッション型のpチャネル型MOSFETとなる場合、フィン型構造のトランジスタをオフ状態にする電圧(0V)がゲート電極42に印加されたとき、チャネル層34a,34bと基板31をより低抵抗で接続できる。このため、浮遊ボディ効果の低減効果をより向上できる。
【0091】
また、ソース層41a及びドレイン層41bと、基板31は絶縁層40a,40bで絶縁されているので基板31の上部を介したソース-ドレイン間のリーク電流が防止される。さらに、ソース層41aと基板31間の容量及び、ドレイン層41bと基板31間の容量も小さくできる。
【0092】
また、図23に示されている側壁絶縁膜38の下方の絶縁層40a,40bの上面の一部が、チャネル層34a,34bの下面に形成された半導体層39の下面に接している。言い換えると、側壁絶縁膜38の下方のチャネル層34a,34bの下面に半導体層39が形成されている。これにより、実質的にチャネル層34a,34bの厚さ(上下方向の長さ)が部分的に増え、ソース-ドレイン間の寄生抵抗を低減する効果もある。
【0093】
一方、ゲート電極42の下方のチャネル層34a,34bの厚さは変わらないため、チャネル層34a,34bに対するゲートの制御性は変わらない。第2の実施の形態の半導体装置30では、チャネル層34a,34bの厚さが、第1の実施の形態の半導体装置10のチャネル層14よりも薄いため、半導体層39を用いた厚膜化による効果は、第1の実施の形態の半導体装置10よりも高い。
【0094】
以上のように、第2の実施の形態の半導体装置30においても、SOI構造の利点を損なわずに、浮遊ボディ効果を抑制できる。
なお、上記の例では、チャネル層34a,34bを2層とした場合を示したが、これに限定されず、チャネル層を3層以上とすることも可能である。
【0095】
(比較例1)
図27は、チャネルカット層を設けていない半導体装置の例を示す図である。図27において、図23に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0096】
チャネルカット層32がない場合、図27の矢印46で示されるように、ソース層41aから、チャネル層34a、半導体層39、基板31を介してドレイン層41bへ流れる、リーク電流が発生する場合があり得る。
【0097】
このため、図23に示したようにチャネルカット層32が設けられていることが望ましい。
(比較例2)
図28は、絶縁層の厚さが厚い場合の半導体装置の例を示す図である。図28において、図23に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0098】
図28の例では、絶縁層40a,40bの厚みが図23の場合よりも厚くなっている。絶縁層40a,40bが厚くなるほど、ソース層41aとドレイン層41bが減り、チャネル層34aとソース層41a及びドレイン層41bとの接続面積が小さくなり、ソース-ドレイン間電流が流れる経路が小さくなる(高抵抗化する)。このため、絶縁層40a,40bの厚い部分の上面が、チャネル層34aと絶縁層40a,40bの薄い部分との間に設けられた半導体層39(この部分はチャネル層34aとして機能する)の下面以上で、当該下面から3nm程度高くなるまでの範囲内になるような厚みで、絶縁層40a,40bが形成されることが望ましい。
【0099】
(比較例3)
図29は、絶縁層の厚さが下限を下回る場合の半導体装置の例を示す図である。図29において、図23に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0100】
図29の例では、絶縁層40a,40bの上面が、チャネル層34aの下面(図29ではチャネル層34aの下面部分を構成する半導体層39が不純物拡散領域34c,34dの一部として図示されている)よりも低い位置にある。
【0101】
この場合、当該下面と絶縁層40a,40bの上面との間に、ソース層41a及びドレイン層41bが入り込み、チャネル層34aの下部で、ソース層41aとドレイン層41bの距離が短くなり、ソース-ドレイン間のリーク電流が発生する可能性がある。
【0102】
このため、絶縁層40a,40bの厚さは、側壁絶縁膜38の下方の絶縁層40a,40bの上面が、チャネル層34aの下面(チャネル層34aの下面部分を構成する半導体層39の下面)の高さ以上になるような厚さであることが望ましい。
【0103】
(半導体装置30の製造方法)
次に、第2の実施の形態の半導体装置30の製造方法の例を説明する。
図30乃至図40は、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【0104】
以下の製造方法の例では、基板31としてシリコン基板を用いるものとして説明する。図30に示されているように、まず、基板31の表面に対する不純物注入により、後に形成されるチャネル層34a,34bに含まれる不純物と同一導電型(以下p型とする)の不純物を含み、不純物濃度がチャネル層34a,34bの不純物濃度よりも高いチャネルカット層32が形成される。
【0105】
その後、チャネルカット層32上にエピタキシャル成長により、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33aが形成され、エピタキシャル層33a上に再びエピタキシャル成長により、ノンドープのシリコンによるチャネル層34aが形成される。そして、さらに、チャネル層34a上にエピタキシャル成長により、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33bが形成され、エピタキシャル層33b上にエピタキシャル成長により、ノンドープのシリコンによるチャネル層34bが形成される。
【0106】
エピタキシャル層33a,33b、チャネル層34a,34bの厚さは、たとえば、それぞれ4~8nmである。
その後、基板31においてSTI形成領域が、たとえば、深さ30~50nm程度で形成されるように、エッチング処理により図30に示した積層構造がエッチングされる。そして、エッチング後の構造に対して、たとえば、HDP-CVD処理により、シリコン酸化膜がSTI形成領域に埋め込まれる。さらに、CMPによる平坦化処理、フッ酸処理が行われ、シリコン酸化膜が後退し、図31に示されているようなフィン構造とSTI35a,35bが形成される。STI35a,35bは、上面がシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33aの下面の高さになるように形成される。
【0107】
続いて、チャネル層34a,34bへの不純物注入が行われる。フィン型構造のトランジスタが、nチャネル型のMOSFETの場合にはp型不純物が注入され、pチャネル型のMOSFETの場合にはn型不純物が注入される。なお、チャネル層34a,34bへの不純物注入は、エピタキシャル成長によりチャネル層34a,34bが形成される際に行われてもよい。さらになお、たとえば、エピタキシャル成長の際にチャネル層34a,34bに予めnチャネル型のMOSFET向けにp型不純物の注入を行った場合には、pチャネル型のMOSFETを形成する領域のチャネル層34a,34bにこの時点でn型不純物の注入を重ねるように行ってもよい。同様に、たとえば、エピタキシャル成長の際にチャネル層34a,34bに予めpチャネル型のMOSFET向けにn型不純物の注入を行った場合には、nチャネル型のMOSFETを形成する領域のチャネル層34a,34bにこの時点でp型不純物の注入を重ねるように行ってもよい。
【0108】
なお、チャネル層34a,34bにp型不純物が注入された場合、チャネル層34a,34bには、フィン型構造のトランジスタがオン状態のとき、n型になるチャネル領域(反転層)が形成され、チャネル層34a,34bにn型不純物が注入された場合、チャネル層34a,34bには、フィン型構造のトランジスタがオン状態のとき、p型になるチャネル領域が形成される。
【0109】
次に、熱酸化により、図31に示した積層構造の側面及び上面にゲート酸化膜(図示が省略されている)が、たとえば、1~3nm程度で形成される。さらに、CVD処理により、ポリシリコン膜、ハードマスク層が順に堆積される。ハードマスク層は、たとえば、窒化シリコン膜またはシリコン酸化膜である。そして、ポリシリコン膜、ハードマスク層による積層膜に対して、エッチング処理が行われる。なお、エッチング処理はゲート酸化膜上で停止され、ゲート酸化膜は除去されない。
【0110】
エッチング処理により、ポリシリコン膜が、フィン構造に跨るような形状になるようにパターニングされることで、図32に示されているようなダミーゲート36と、その上部に設けられるハードマスク37が形成される。ダミーゲート36は、たとえば、ゲート幅Wgが10~14nm程度となるように形成されている。
【0111】
なお、ダミーゲート36は、後述の工程により、ゲート電極42(図23の部分42a,42bを除く)に置き換わる。
次に、側壁絶縁膜38を形成するために、図32に示した構造上に、たとえば、CVD処理により窒化シリコン膜が堆積される。そして、異方性エッチングにより、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a、ダミーゲート36、ハードマスク37の側壁に窒化シリコン膜が残るようにエッチバックされ、図33に示されているような側壁絶縁膜38が形成される。
【0112】
なお、側壁絶縁膜38の幅Wsは、たとえば、8~12nm程度である。エピタキシャル層33aの側壁に形成される側壁絶縁膜38の高さHsは、エピタキシャル層33aの厚さと同程度になるように、4~8nm程度である。
【0113】
このようなエッチバックにより側壁絶縁膜38を形成するため、上記の窒化シリコン膜を堆積する工程では、目標とするWsよりも30%程度厚くなるように堆積される。
次に、ハードマスク37と側壁絶縁膜38をマスクとして、図34に示されているように矢印方向の異方性エッチングが行われる。これにより、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bとチャネル層34a,34bにおいて、ハードマスク37と側壁絶縁膜38によりマスクされている部分以外の部分が除去される。なお、図34以降、ダミーゲート36の図示が省略されている。
【0114】
上記異方性エッチング後、図35に示されているように、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bが、チャネル層34a,34bの下面中央部分(ダミーゲート36により挟まれている部分)が残るように、等方性エッチングによりエッチングされる。
【0115】
このとき、残存するエピタキシャル層33a,33bの幅がゲート幅Wgよりも大きすぎる場合、後述の工程で残存するエピタキシャル層33a,33bをさらに除去して、その除去した空間にゲート電極42の金属材料を埋め込む際に、適切に埋め込まれない可能性がある。その場合、ゲート電極42と半導体層39が分離するなどして、ゲート電位が半導体層39に影響せず前述のトランジスタ45a,45bとしての機能が得られなくなる可能性がある。
【0116】
このため、残存するエピタキシャル層33a,33bの幅がゲート幅Wgと同じか、プロセスマージンを考慮して、ゲート幅Wgよりも細くなるように、エッチング時間が調整されていることが望ましい。以下では、残存するエピタキシャル層33a,33bの幅がゲート幅Wgと同じであるものとして説明する。
【0117】
次に、前述のようなエピタキシャル成長の手法を用いて、図36に示されているように、シリコンによる半導体層39が、チャネルカット層32の上面、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bの露出している側面、チャネル層34aの露出している側面、上面及び下面、チャネル層34bの露出している側面及び下面に形成される。半導体層39は、たとえば、1~5nmの厚さで形成される。
【0118】
半導体層39は、前述のように、チャネル層34a,34bに含まれる不純物とは反対導電型の不純物が注入されていてもよいし、チャネル層34a,34bに含まれる不純物と同一導電型の不純物を、チャネル層34a,34b以下の不純物濃度で注入されていてもよい。また、半導体層39は、n型またはp型の不純物が注入されていなくてもよい。なお、n型またはp型の不純物が注入されている場合であっても、たとえば、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下であれば、半導体層39を、実質的に不純物を注入していないノンドープ層と扱うことが可能である。
【0119】
次に、図37に示されているように、シリコン酸化膜である絶縁層40a,40bが、側壁絶縁膜38で挟まれた領域と、チャネル層34a,34bの下方(シリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bが除去された部分)に埋め込まれる。埋め込みが適切に行われるように、シリコン酸化膜の堆積とエッチングを適宜組み合わせて埋め込みが行われてもよい。たとえば、CVDによるシリコン酸化膜の堆積、異方性エッチング、HDP-CVD処理の順に行われてもよいし、さらに最後に異方性エッチングが行われるようにしてもよい。
【0120】
チャネル層34a,34bの側面に形成された半導体層39の側壁にシリコン酸化膜が残る場合には、たとえば、フッ酸などによりそのシリコン酸化膜が除去される。
その後、チャネル層34a,34bの側面に形成されている半導体層39を除去してもよい(図38参照)。半導体層39の除去は、等方性エッチングにより行われてもよいし、ハードマスク37と側壁絶縁膜38をマスクとして用いた異方性エッチングにより行われてもよい。チャネル層34a,34bの側面に形成されている半導体層39を除去する理由については後述する(図41参照)。
【0121】
次に、図39に示すように、ソース層41aとドレイン層41bが形成される。ソース層41aとドレイン層41bは、チャネル層34a,34bの対向する2つの側面にエピタキシャル成長により形成される。形成されるソース層41aとドレイン層41bの形状は、ソース層41aとドレイン層41bのエピタキシャル成長が行われるチャネル層34a,34bの上記2つの側面の結晶面などによって変わる。また、ソース層41aとドレイン層41bには、チャネル層34a,34bに含まれる不純物とは反対導電型の不純物が注入されている。
【0122】
その後、図示を省略しているが、図39に示した構造を覆うように、たとえば、CVD処理により層間絶縁膜となるシリコン酸化膜が堆積される。そして、CMPが行われ、シリコン酸化膜の平坦化が行われる。
【0123】
ハードマスク37がシリコン酸化膜の場合、CMPによりハードマスク37も除去され、ポリシリコンによるダミーゲート36の上面が露出される。
ハードマスク37が窒化シリコン膜の場合、CMPによりハードマスク37の上面が露出する。続いて層間絶縁膜のシリコン酸化膜をマスクにして窒化シリコン膜のハードマスク37がエッチングされ、ハードマスク37が除去され、ポリシリコンによるダミーゲート36の上面が露出される。
【0124】
その後、RMG工程により、ダミーゲート36と、チャネル層34a,34bの下方に残存するシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bがゲート電極42に置き換えられる(図40参照)。なお、図40では、チャネル層34a,34bについては図示が省略されている。
【0125】
RMG工程では、気相エッチングやウェットエッチングなどによりダミーゲート36が除去される。図示しないゲート酸化膜は、ダミーゲート36の除去中に、チャネル層34a,34bなどを保護する。ゲート酸化膜がフッ酸処理などにより除去された後、チャネル層34a,34bの下方に残存するエピタキシャル層33a,33bが、等方性エッチングにより除去される。その後、ダミーゲート36とエピタキシャル層33a,33bが除去された空間に露出しているチャネル層34a,34bの表面と基板31の表面とに図示しないゲート絶縁膜が形成される。さらに、ゲート絶縁膜上であり、かつ、ダミーゲート36、ハードマスク37を除去した箇所及びチャネル層34a,34bの下方に残存していたエピタキシャル層33a,33bを除去した箇所に、金属材料が充填される。これにより、図40に示すようなゲート電極42が形成される。
【0126】
ゲート絶縁膜やゲート電極42は、たとえば、第1の実施の形態の半導体装置10と同様のものを用いることができる。
以上のような製造方法によって、図22~26に示したような半導体装置30が製造可能である。
【0127】
なお、チャネル層34a,34bの側面に形成されている半導体層39を除去する理由は以下の通りである。
図41は、隣接する2つのフィン型構造のトランジスタの例を示す図である。なお、図41において、ソース層41aとドレイン層41bは図示が省略されている。
【0128】
チャネル層34a,34bの側面の半導体層39を除去しない場合、2つのフィン型構造のトランジスタ間においてソース層41aとドレイン層41bを形成するスペースが狭すぎる場合がある。
【0129】
図41の例において、たとえば、ゲート電極42のゲート幅Wgは10~14nm程度、側壁絶縁膜38の幅Wsは8~12nm程度である。たとえば、2つのフィン型構造のトランジスタ間のゲート間距離(隣接する側壁絶縁膜間距離)Laが12nm程度である場合、半導体層39がチャネル層34a,34bの側面に1~2nmの厚さで形成された場合、ソース層41aとドレイン層41bが形成される半導体層間の距離Lbは、8~10nmとなり、Laよりも20~30%も短くなる。
【0130】
このため、チャネル層34a,34bの側面の半導体層39は、ソース層41aとドレイン層41bを形成する前に除去しておくことが望ましい。
ただし、Laが長くてソース層41aとドレイン層41bを形成するスペースが十分ある場合には、半導体層39を除去しなくてもよい。
【0131】
(比較例4)
図42は、チャネル層の上方のゲート幅よりもチャネル層の下方のゲート幅が細い半導体装置の例を示す断面図である。
【0132】
図35に示した等方性エッチングによりシリコンゲルマニウムのエピタキシャル層33a,33bを除去する際に、残存するエピタキシャル層33a,33bの幅がゲート幅Wgよりも細くなるように、エッチング時間が調整された場合には、図42に示すような構造が得られる。すなわち、ゲート電極42においてチャネル層34bの上方の部分のゲート幅Wgよりも、チャネル層34a,34bの下方の部分42a,42bの幅Wgaが細い。
【0133】
(比較例5)
図43は、半導体層が厚く、2つのチャネル層間と、下方のチャネル層と基板間が半導体層で埋まる半導体装置の例を示す断面図である。
【0134】
図43の例では、半導体層39が厚く、チャネル層34aとチャネル層34bとの間と、チャネル層34aと基板31との間が半導体層39で埋まっている。この場合、図43に示すように側壁絶縁膜38の下方のチャネル層34aとチャネル層34bとの間、チャネル層34aと基板31との間に、絶縁層40a,40bは形成されないが、上記の第2の実施の形態の半導体装置30と同様の効果が得られる。
【0135】
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体装置及びその製造方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
たとえば、図2図22では、半導体装置10,30のフィン型構造のトランジスタが、nチャネル型のMOSFETである場合を示したが、pチャネル型のMOSFETであってもよい。その場合、各要素の導電型(n型とp型)を入れ替えればよい。
【0136】
また、上記の例では、基板11,31はシリコン基板であるものとして説明したが、これに限定されない。基板11,31として、シリコンゲルマニウムなどの他の材料を用いることもできる。半導体装置10,30の各要素の材料も、適宜変更可能である。たとえば、基板11,31がシリコンゲルマニウム基板の場合、エピタキシャル層13,33a,33bとしてシリコンを用いることができ、チャネル層14,34a,34bとしてシリコンゲルマニウムを用いることができる。
【0137】
以上説明した複数の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置において、
基板の上方に形成され、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層と、
前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層と、
前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層と、
前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極と、
を有する半導体装置。
【0138】
(付記2) 前記チャネル層は、前記第1絶縁層または前記第2絶縁層と、前記第2部分の前記第3側面または前記第4側面との間に設けられた前記半導体層を介して前記基板に接続される、付記1に記載の半導体装置。
【0139】
(付記3) 前記基板と、前記チャネル層と、前記半導体層と、前記ゲート電極における前記第2部分により、前記トランジスタとは反対導電型の第1のトランジスタが設けられている、付記1または2に記載の半導体装置。
【0140】
(付記4) 前記半導体層は、前記チャネル層に含まれる第1の不純物とは反対導電型の第2の不純物を含む、付記1乃至3の何れか1つに記載の半導体装置。
(付記5) 前記半導体層は、前記チャネル層に含まれる第1の不純物と同一導電型の第2の不純物を含み、前記半導体層の不純物濃度は、前記チャネル層の不純物濃度よりも低い、付記1乃至3の何れか1つに記載の半導体装置。
【0141】
(付記6) 前記半導体層はノンドープ層である、付記1乃至3の何れか1つに記載の半導体装置。
(付記7) 前記基板の表面には、前記チャネル層に含まれる第1の不純物と同一導電型の第3の不純物を含み、不純物濃度が、前記チャネル層の不純物濃度よりも高い不純物層が形成されている、付記1乃至6の何れか1つに記載の半導体装置。
【0142】
(付記8) 前記第1部分の側壁に形成されている側壁絶縁膜の下方の前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の上面の一部は、前記チャネル層の下面に形成された前記半導体層の下面に接している、付記1乃至7の何れか1つに記載の半導体装置。
【0143】
(付記9) 前記第1部分の前記ゲート電極の幅よりも、前記第2部分の幅が細い、付記1乃至8の何れか1つに記載の半導体装置。
(付記10) 前記チャネル層は、第1のチャネル層と前記第1のチャネル層の上方に設けられた第2のチャネル層とを含み、
前記第1のチャネル層と前記第2のチャネル層との間に、前記ゲート電極の第3部分がさらに設けられている、
付記1乃至9の何れか1つに記載の半導体装置。
【0144】
(付記11) 前記第1のチャネル層と、前記第2のチャネル層と、前記半導体層と、前記ゲート電極における前記第3部分により、前記トランジスタとは反対導電型の第2のトランジスタが設けられている、付記10に記載の半導体装置。
【0145】
(付記12) 前記半導体層は、前記基板と前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層との間にも設けられている、付記1乃至11の何れか1つに記載の半導体装置。
(付記13) 前記ゲート電極の側面には側壁絶縁膜が設けられており、前記側壁絶縁膜の材料は窒化シリコン膜である、付記1乃至12の何れか1つに記載の半導体装置。
【0146】
(付記14) フィン型構造のトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、
基板の上方に、半導体層を介して前記基板に接続されたチャネル層を形成し、
前記トランジスタのソースであり、前記基板の上方に第1絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の第1側面に設けられたソース層を形成し、
前記トランジスタのドレインであり、前記基板の上方に第2絶縁層を介して前記基板から離間して設けられ、前記チャネル層の前記第1側面と対向する第2側面に設けられたドレイン層を形成し、
前記トランジスタのゲートであり、前記チャネル層の上方に設けられた第1部分と前記基板と前記チャネル層との間に設けられた第2部分とを含み、前記第2部分の第3側面または前記第3側面と対向する第4側面が、前記半導体層に対向しているゲート電極を形成する、
半導体装置の製造方法。
【0147】
(付記15) 前記半導体層は、前記チャネル層の前記第1側面、前記第2側面、及び前記チャネル層の下面の一部にエピタキシャル成長される、付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【0148】
(付記16) 前記チャネル層の前記第1側面、前記第2側面に形成された前記半導体層を除去する工程を有する、付記15に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17) 第1のチャネル層と前記第1のチャネル層の上方に設けられた第2のチャネル層とを含む前記チャネル層を形成し、
前記第2のチャネル層の上方に前記第1部分が設けられ、前記基板と前記第1のチャネル層との間に前記第2部分が設けられ、前記第1のチャネル層と前記第2のチャネル層との間に前記ゲート電極の第3部分が設けられた、前記ゲート電極を形成する、
付記14乃至16の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0149】
(付記18) 前記基板と、前記チャネル層と、前記半導体層と、前記ゲート電極における前記第2部分により、前記トランジスタとは反対導電型の第1のトランジスタが設けられる、付記14乃至17の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0150】
(付記19) 前記ゲート電極の側面に、材料が窒化シリコン膜である側壁絶縁膜を形成する、付記14乃至18の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記20) 前記ゲート電極を形成する前にダミー電極を形成し、前記ダミー電極を前記ゲート電極に置換する、付記14乃至19の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0151】
10 半導体装置
11 基板
12 不純物層(チャネルカット層)
13 エピタキシャル層
14 チャネル層
14a,14b 不純物拡散領域
15a,15b STI
16 ダミーゲート
17 ハードマスク
18 側壁絶縁膜
19 半導体層
20a,20b 絶縁層
21a ソース層
21b ドレイン層
22 ゲート電極
22a 部分
22a1,22a2 側面
25 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43