(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088085
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20230619BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230619BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20230619BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B60C9/18 N
B60C11/03 100A
B60C9/22 C
B60C9/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202728
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】木田 英香
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131BC34
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA54
3D131DA58
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB22X
3D131EB24X
3D131EB86X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】偏摩耗性能を向上できる、タイヤを提供する。
【解決手段】ベルト6は、複数層の交錯ベルト層6aと、それぞれタイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルトコード6bcを含む、1層又は複数層の周方向ベルト層6bとを有し、交錯ベルトコード6acは、タイヤ幅方向に対するなす角度が20°~45°であり、トレッド踏面100には、それぞれタイヤ周方向に沿って延在する、複数本の主溝110と、ショルダー陸部121に設けられ、主溝よりも狭い溝幅を有し、タイヤ周方向に沿って延在する、副溝130と、が設けられ、副溝における一対の溝壁面のうちタイヤ幅方向外側に位置する外溝壁面は、1層又は複数層の周方向ベルト層のタイヤ幅方向最外端と同じタイヤ幅方向位置に位置するか、又は、1層又は複数層の周方向ベルト層のタイヤ幅方向最外端よりもタイヤ幅方向内側に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと、
トレッド踏面と、
を備えた、タイヤであって、
前記ベルトは、
それぞれ層間で互いに交差する方向に延在する交錯ベルトコードを含む、複数層の交錯ベルト層と、
それぞれタイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルトコードを含む、1層又は複数層の周方向ベルト層と、
を有し、
前記交錯ベルトコードは、タイヤ幅方向に対するなす角度が20°~45°であり、
前記トレッド踏面には、
それぞれタイヤ周方向に沿って延在する、複数本の主溝と、
前記複数本の主溝のうち最もタイヤ幅方向外側に位置する最外主溝と接地端との間に区画された、ショルダー陸部と、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記主溝よりも狭い溝幅を有し、タイヤ周方向に沿って延在する、副溝と、
が設けられ、
前記副溝における一対の溝壁面のうちタイヤ幅方向外側に位置する外溝壁面は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層のタイヤ幅方向最外端と同じタイヤ幅方向位置に位置するか、又は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端よりもタイヤ幅方向内側に位置している、タイヤ。
【請求項2】
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、前記1層又は複数層の周方向ベルト層の幅Wの5%以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記周方向ベルトコードは、波形状をなしており、
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、前記周方向ベルトコードのなす波形状の両振幅Bの2倍以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、5mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記副溝の溝深さDは、前記最外主溝の溝深さEの10~30%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記副溝の前記外溝壁面は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層のそれぞれのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に位置している、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記1層又は複数層の周方向ベルト層は、前記複数層の交錯ベルト層よりもタイヤ径方向内側に位置している、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、交錯ベルト層と周方向ベルト層とを備えた、タイヤがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来のタイヤにおいては、耐偏摩耗性能に関し、向上の余地があった。
【0005】
この発明は、耐偏摩耗性能を向上できる、タイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、
ベルトと、
トレッド踏面と、
を備えた、タイヤであって、
前記ベルトは、
それぞれ層間で互いに交差する方向に延在する交錯ベルトコードを含む、複数層の交錯ベルト層と、
それぞれタイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルトコードを含む、1層又は複数層の周方向ベルト層と、
を有し、
前記交錯ベルトコードは、タイヤ幅方向に対するなす角度が20°~45°であり、
前記トレッド踏面には、
それぞれタイヤ周方向に沿って延在する、複数本の主溝と、
前記複数本の主溝のうち最もタイヤ幅方向外側に位置する最外主溝と接地端との間に区画された、ショルダー陸部と、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記主溝よりも狭い溝幅を有し、タイヤ周方向に沿って延在する、副溝と、
が設けられ、
前記副溝における一対の溝壁面のうちタイヤ幅方向外側に位置する外溝壁面は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層のタイヤ幅方向最外端と同じタイヤ幅方向位置に位置するか、又は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端よりもタイヤ幅方向内側に位置している。
本発明のタイヤによれば、耐偏摩耗性能を向上することができる。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、前記1層又は複数層の周方向ベルト層の幅Wの5%以下であると、好適である。
これにより、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、
前記周方向ベルトコードは、波形状をなしており、
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、前記周方向ベルトコードのなす波形状の両振幅Bの2倍以下であると、好適である。
これにより、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、
前記副溝の前記外溝壁面から前記1層又は複数層の周方向ベルト層の前記タイヤ幅方向最外端までのタイヤ幅方向距離Lは、5mm以下であると、好適である。
これにより、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、
前記副溝の溝深さDは、前記最外主溝の溝深さEの10~30%であると、好適である。
これにより、剛性の低下を抑制でき、また、副溝が所期した偏摩耗抑制効果を発揮した後に副溝が消失するようにすることができる。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、
前記副溝の前記外溝壁面は、前記1層又は複数層の周方向ベルト層のそれぞれのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に位置していてもよい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、
前記1層又は複数層の周方向ベルト層は、前記複数層の交錯ベルト層よりもタイヤ径方向内側に位置していると、好適である。
これにより、タイヤの内圧充填時におけるタイヤの形状の保持がしやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、耐偏摩耗性能を向上できる、タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤを概略的示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図2】
図1のタイヤのトレッド踏面を展開視した様子を概略的に示す、平面図である。
【
図3】
図1のタイヤの一部を拡大して示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図4】本発明の任意の実施形態に係るタイヤに好適に適用できる周方向ベルトコードの一例を説明するための、説明図である。
【
図5】
図1のタイヤに荷重が掛かったときの動作を説明するための、説明図である。
【
図6】
図3に対応する図面であり、本発明の他の実施形態に係るタイヤの一部を拡大して示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図7】
図6のタイヤに荷重が掛かったときの動作を説明するための、説明図である。
【
図8】
図1の実施形態に係るタイヤと一参考例に係るタイヤとのそれぞれのベルトに作用する張力について説明するための、説明図である。
【
図9】他の参考例のタイヤに荷重が掛かったときの動作を説明するための、説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の空気入りタイヤに利用できるものであるが、好適には重荷重用空気入りタイヤに、さらに好適にはトラック・バス用空気入りタイヤに、利用できるものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係るタイヤの実施形態を例示説明する。
【0016】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。各図では、タイヤ幅方向、タイヤ幅方向外側、タイヤ幅方向内側をそれぞれ符号「WD」、「WDO」、「WDI」で示し、タイヤ径方向、タイヤ径方向外側、タイヤ径方向内側をそれぞれ符号「RD」、「RDO」、「RDI」で示し、タイヤ周方向を符号「CD」で示している。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ1を説明するための図面である。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ1を概略的示す、タイヤ幅方向断面図である。
図1の実施形態のタイヤ1は、重荷重用空気入りタイヤ、より具体的には、トラック・バス用空気入りタイヤとして、構成されている。ただし、本発明の任意の実施形態のタイヤ1は、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
【0018】
図1に示すように、タイヤ1は、トレッド部1aと、このトレッド部1aのタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部1bと、各サイドウォール部1bのタイヤ径方向内側の端部に設けられた一対のビード部1cと、を備えている。ビード部1cは、タイヤ1をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成される。
また、タイヤ1は、一対のビードコア4aと、一対のビードフィラー4bと、カーカス5と、ベルト6と、トレッドゴム7と、サイドゴム8と、インナーライナー9と、を備えている。
【0019】
各ビードコア4aは、それぞれ、対応するビード部1cに埋設されている。ビードコア4aは、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えている。ビードワイヤは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。ビードワイヤは、例えば、モノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。
【0020】
各ビードフィラー4bは、それぞれ、対応するビードコア4aに対してタイヤ径方向外側に位置する。ビードフィラー4bは、タイヤ径方向外側に向かって先細状に延びている。ビードフィラー4bは、例えばゴムから構成される。
一般的に、ビードフィラーは、「スティフナー」と呼ばれることがある。
【0021】
カーカス5は、一対のビードコア4a間に跨っており、トロイダル状に延在している。カーカス5は、1枚以上(
図1の例では、1枚)のカーカスプライ5aから構成されている。各カーカスプライ5aは、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
カーカスコード5cは、金属(例えばスチール)から構成されると、好適である。
カーカス5は、ラジアル構造であると好適であるが、バイアス構造でもよい。
【0022】
サイドゴム8は、サイドウォール部1bに位置している。サイドゴム8は、サイドウォール部1bのタイヤ幅方向外側の外表面を構成している。サイドゴム8は、カーカス5よりもタイヤ幅方向外側に位置している。サイドゴム8は、ビードフィラー4bよりもタイヤ幅方向外側に位置している。サイドゴム8は、トレッドゴム7と一体で形成されている。
【0023】
インナーライナー9は、カーカス5のタイヤ内側に配置され、例えば、カーカス5のタイヤ内側に積層されてもよい。インナーライナー9は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成される。ブチル系ゴムには、例えばブチルゴム、及びその誘導体であるハロゲン化ブチルゴムが含まれる。インナーライナー9は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマーで構成することができる。
【0024】
図1に示すように、ベルト6は、カーカス5のクラウン部に対してタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト6は、複数層(
図1の実施形態では、5層)のベルト層6a~6cを有している。ベルト6は、少なくとも、複数層の交錯ベルト層6aと、1層又は複数層の周方向ベルト層6bと、を有する。
【0025】
複数層(
図1の実施形態では、2層)の交錯ベルト層6aは、それぞれ、層間で互いに交差する方向に延在する交錯ベルトコード6acと、交錯ベルトコード6acを被覆する交錯ベルト被覆ゴム6arと、含む。交錯ベルトコード6acは、タイヤ幅方向に対するなす角度が小さい、いわゆる低角度のベルトコードである。具体的に、交錯ベルトコード6acは、タイヤ幅方向に対するなす角度が20°~45°である。
交錯ベルトコード6acは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。交錯ベルトコード6acは、金属(例えばスチール)から構成されると好適であるが、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0026】
1層又は複数層(
図1の実施形態では、2層)の周方向ベルト層6bは、それぞれ、タイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルトコード6bcと、周方向ベルトコード6bcを被覆する周方向ベルト被覆ゴム6brと、含む。
周方向ベルトコード6bcに関し、「タイヤ周方向に沿って延在する」とは、タイヤ周方向に平行に延在する場合に限られず、タイヤ周方向対して0°超5°以下をなす方向に延在する場合も含んでいる。なお、後述のように周方向ベルトコード6bcが波形状をなす場合(
図4)、周方向ベルトコード6bcの延在方向は、周方向ベルトコード6bcのなす波形状の振幅中心線の延在方向を指す。
周方向ベルトコード6bcは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。周方向ベルトコード6bcは、金属(例えばスチール)から構成されると好適であるが、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0027】
図4に示すように、周方向ベルトコード6bcは、波形状をなす、いわゆるウェービー(Wavy)コードであると、好適である。この場合、周方向ベルトコード6bcは、波形状に沿って、タイヤ幅方向に振幅しながら、タイヤ周方向に沿って延在する。ここで、本明細書において、「波形状」とは、
図4に示すように滑らかな曲線からなる波形状に限られず、折れ曲がり線からなる波形状をも含む概念である。周方向ベルトコード6bcは、波形状に癖付け(型付け)されている。
一般的に、タイヤのクラウン部は、使用時、常に内圧によりタイヤ周方向に引張入力を受け、使用によるクリープから周長が伸びることにより、歪が生じる傾向がある。そこで、周方向ベルトコード6bcを波形状にすることによって、タイヤ1の重量を増加させることなくセパレーションを有効に防止することができる。このことは、タイヤ1が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ)である場合に、特に言えることである。
周方向ベルトコード6bcのなす波形状の両振幅Bは、例えば、1.5~2.5mmであると好適である。ここで、「周方向ベルトコード6bcのなす波形状の両振幅B」は、当該波形状の片振幅(振幅)Aの2倍である(
図4)。
ただし、周方向ベルトコード6bcは、波形状をなす代わりに、タイヤ周方向に沿って直線状に延在していてもよい。
【0028】
図1に示すように、1層又は複数層の周方向ベルト層6bは、複数層の交錯ベルト層6aよりもタイヤ径方向内側に位置していると、好適である。これにより、タイヤの内圧充填時におけるタイヤの形状の保持がしやすくなる。
ただし、周方向ベルト層6bと交錯ベルト層6aとの位置関係は任意であり、例えば、1層又は複数層の周方向ベルト層6bは、複数層の交錯ベルト層6aよりもタイヤ径方向外側に位置していてもよい。
【0029】
図1に示すように、複数層の交錯ベルト層6aのうち少なくとも1層(
図1の実施形態では、1層)の交錯ベルト層6aは、各周方向ベルト層6bよりも広い幅(タイヤ幅方向長さ)を有していると、好適である。これにより、偏摩耗を抑制できる。
【0030】
ベルト6は、1層又は複数層の周方向ベルト層6b及び複数層の交錯ベルト層6aに加えて、1層又は複数層(
図1の実施形態では、1層)の他のベルト層6cを有してもよい。他のベルト層6cは、
図1に示すように、1層又は複数層の周方向ベルト層6b及び複数層の交錯ベルト層6aよりもタイヤ径方向内側に位置していてもよいし、周方向ベルト層6b及び交錯ベルト層6aどうしの間に位置していてもよいし、かつ/又は、1層又は複数層の周方向ベルト層6b及び複数層の交錯ベルト層6aよりもタイヤ径方向外側に位置していてもよい。
図1の実施形態においては、1層又は複数層の周方向ベルト層6bと複数層の交錯ベルト層6aとの間に、他のベルト層6cが介在していない。
当該他のベルト層6cは、例えば、傾斜ベルト層6cであってもよい。傾斜ベルト層6cは、タイヤ周方向に対して傾斜した方向に延在する傾斜ベルトコード6ccと、傾斜ベルトコード6ccを被覆する傾斜ベルト被覆ゴム6crと、含む。
傾斜ベルトコード6ccは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。傾斜ベルトコード6ccは、金属(例えばスチール)から構成されると好適であるが、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0031】
トレッドゴム7は、トレッド部1aにおいて、ベルト6のタイヤ径方向外側に位置している。トレッドゴム7は、トレッド部1aのタイヤ径方向外側の面であるトレッド踏面100を構成している。トレッド踏面100には、トレッドパターンが形成されている。
【0032】
本明細書において、「トレッド踏面(100)」とは、リムに組み付けるとともに所定の内圧を充填したタイヤを、最大負荷荷重を負荷した状態で転動させた際に、路面と接触することになる、タイヤの全周に亘る外周面を意味する。
本明細書において、「接地端(TE)」とは、トレッド踏面(100)のタイヤ幅方向端を意味する。
本明細書において、「接地幅」とは、トレッド踏面(100)の一対の接地端どうしの間のタイヤ幅方向距離を意味する。
ここで、「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(すなわち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTOのSTANDARDS MANUAL 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「所定の内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
【0033】
図2は、
図1のタイヤ1のトレッド踏面100を展開視した様子を概略的に示す、平面図である。
図2では、トレッド踏面100よりもタイヤ径方向内側に窪んだ、各溝の内部を、ドットハッチにより示している。
ここで、本明細書において、「トレッド踏面100の展開視」とは、トレッド踏面100を平面上に展開した状態でトレッド表面を平面視することを指す。
【0034】
本明細書では、特に断りのない限り、タイヤ1の各要素の位置関係や寸法は、「基準状態」で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤ1をリムに組み付け、上記所定の内圧を充填し、無負荷とした状態を指す。ここで、トレッド踏面100における溝、サイプ等の各要素の寸法については、トレッド踏面100の展開視において測定されるものとする。
【0035】
図1~
図2に示すように、本実施形態において、トレッド踏面100には、複数本の主溝110が設けられている。各主溝110は、それぞれ、タイヤ周方向に沿って連続して延在している。これら複数本の主溝110は、最もタイヤ幅方向外側に位置する一対の最外主溝111を含んでいる。これら一対の最外主溝111は、タイヤ赤道面CLの両側に位置している。
図1~
図2の実施形態のように、これら複数本の主溝110は、一対の最外主溝111に加えて、一対の最外主溝111どうしの間に、1本又は複数本(
図1~
図2の実施形態では、3本)のセンター主溝112を含んでもよいし、あるいは、一対の最外主溝111のみを含んでいてもよい。
主溝110の溝幅は、6mm以上が好適であり、7mm以上がより好適であり、8mm以上がさらに好適である。主溝110の溝幅は、12mm以下が好適であり、10mm以下がさらに好適である。
主溝110の溝深さは、6mm以上が好適であり、7mm以上がより好適であり、8mm以上がさらに好適である。主溝110の溝深さは、12mm以下が好適であり、10mm以下がさらに好適である。
【0036】
本明細書において、「溝」は、上記基準状態において、トレッド踏面100での溝幅が1.3mm以上となるものである。本実施形態では、溝として、主溝110、副溝130がある。溝の溝幅は、1.5mm以上であると好適である。「溝幅」は、溝の延在方向に垂直に測ったときの、互いに対向する一対の溝壁面どうしの間隔であり、タイヤ径方向に一定でもよいし変化してもよい。「溝」は、タイヤをリムに組み付け、所定の内圧を充填して最大負荷荷重を負荷した際の、荷重直下時に、互いに対向する一対の溝壁面どうしが接触しないように構成されていると好適である。
本明細書において、「サイプ」とは、上記基準状態において、トレッド踏面100でのサイプ幅が1.3mm未満となるものである。本実施形態では、サイプとして、一端開口サイプ121t、122t、両端開口サイプ122kがある。サイプ幅は、1.0mm以下であると好適であり、0.8mm以下であるとより好適である。「サイプ幅」は、サイプの延在方向に垂直に測ったときの、互いに対向する一対のサイプ壁面どうしの間隔である。「サイプ」は、タイヤ1をリムに組み付け、所定の内圧を充填して最大負荷荷重を負荷した際の、荷重直下時に、互いに対向する一対のサイプ壁面どうしが少なくとも一部分で接触するように構成されていると好適である。
【0037】
図1~
図2に示すように、トレッド踏面100には、複数本(本実施形態では、5本)の主溝110と一対の接地端TEとによって区画された、複数(本実施形態では、6つ)の陸部120が設けられている。これら複数の陸部120は、一対の最外主溝111と一対の接地端TEとの間に区画された、一対のショルダー陸部121を含んでいる。また、これら複数の陸部120は、複数本の主溝110どうしの間に区画された、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)のセンター陸部122を、さらに含んでいる。
ショルダー陸部121には、副溝130が設けられている。副溝130は、
図1~
図2に示すように、各ショルダー陸部121にそれぞれ設けられると好適であるが、いずれか一方のショルダー陸部121のみに設けられてもよい。副溝130は、主溝110よりも狭い溝幅を有しており、タイヤ周方向に沿って延在している。
図2に示すように、副溝130は、直線状に延在していると、好適である。
【0038】
以下では、副溝130、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bg、ショルダー陸部121等について説明する場合、特に断りが無い限り、タイヤ1のうちタイヤ赤道面CLに対して一方側の半部を見たときの構成について説明しているものとする。タイヤ1は、タイヤ1のうちタイヤ赤道面CLに対して他方側の半部を見たときの構成においても、同様の構成を有していると好適である。
【0039】
図3は、
図1の一部を拡大した図面である。
図1及び
図3に示すように、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのうち少なくとも1層(
図1及び
図3の実施形態では、1層)の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向外端6beは、ショルダー陸部121に対応するタイヤ幅方向領域内(すなわち、最外主溝111よりもタイヤ幅方向外側、かつ、接地端TEよりもタイヤ幅方向内側)に位置している。
図1及び
図3の実施形態のように、各周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向外端6beは、ショルダー陸部121に対応するタイヤ幅方向領域内(すなわち、最外主溝111よりもタイヤ幅方向外側、かつ、接地端TEよりもタイヤ幅方向内側)に位置していると、好適である。
図1及び
図3の実施形態のように、複数層の交錯ベルト層6aのうち少なくとも1層(
図1及び
図3の実施形態では、1層)の交錯ベルト層6aのタイヤ幅方向外端は、ショルダー陸部121に対応するタイヤ幅方向領域内(すなわち、最外主溝111よりもタイヤ幅方向外側、かつ、接地端TEよりもタイヤ幅方向内側)に位置していると、好適である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態において、副溝130において互いに対向する一対の溝壁面130a、130bのうちタイヤ幅方向外側に位置する溝壁面130a(以下、「外溝壁面130a」という。)は、ベルト6が有する1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向内側に位置している。
ここで、「1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bg」は、各周方向ベルト層6bのそれぞれのタイヤ幅方向外端6beのうち最もタイヤ幅方向外側に位置するタイヤ幅方向外端6beを指す。
【0041】
ここで、本実施形態の作用効果について、説明する。
まず、本実施形態では、上述のように、ベルト6が複数層の交錯ベルト層6aと1層又は複数層の周方向ベルト層6bとを有し、交錯ベルト層6aの交錯ベルトコード6acが低角度(タイヤ幅方向に対するなす角度が20°~45°)のベルトコードである(
図1)。このような、複数のベルト層のベルトコードどうしの交差角度が大きい(具体的には、周方向ベルト層6bの周方向ベルトコード6bcと交錯ベルト層6aの交錯ベルトコード6acとの交差角度が大きい)ベルト6の構成に起因して、
図8において実線グラフによって示すように、ベルト6には、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgの近傍において、大きな張力段差が発生する。
図8において、実線グラフは、本実施形態のタイヤ1のベルト6に作用する張力を概略的に示している。
図8において、破線グラフは、複数のベルト層のベルトコードどうしの交差角度が小さいベルトを備えた、従来一般的な一参考例に係るタイヤのベルトに作用する張力を概略的に示している。
図8の破線グラフから見て取れるように、このような従来一般的なタイヤのベルトにおいては、張力段差がほとんど又は全く見られず、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側へ向かって張力が滑らかに減少する。
図5に示すように、本実施形態のタイヤ1に荷重が掛かったときには、上記の張力段差に起因して、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgと路面Gとの間のトレッドゴム7が、荷重によって圧縮されることによって、タイヤ幅方向外側へ向かって膨出変形する現象(以下、「外向きクラッシング」という。)H1が、発生する。この外向きクラッシングH1は、ショルダー陸部121での偏摩耗に繋がるおそれがある。この外向きクラッシングH1は、タイヤ1が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ)である場合に、特に顕著となる。
そこで、本実施形態では、上述のように、トレッド踏面100において、ショルダー陸部121に副溝130を設けている。副溝130を設けたことにより、
図5に示すように、タイヤ1に荷重が掛かったときには、副溝130の外溝壁面130aの近傍のトレッドゴム7が、荷重によって圧縮されることによって、タイヤ幅方向内側へ向かって膨出変形する現象(以下、「内向きクラッシング」という。)H2が、発生する。そして、上述のように、副溝130の外溝壁面130aは、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向内側に位置しているので、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2によって、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1を相殺することができる。よって、ショルダー陸部121での偏摩耗を抑制することができ、ひいては、耐偏摩耗性能を向上することができる。
【0042】
上述した実施形態に限られず、
図6に示す他の実施形態のように、副溝130の外溝壁面130aは、ベルト6が有する1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgと同じタイヤ幅方向位置に位置していてもよい。この場合、
図7に示すように、タイヤ1に荷重が掛かったときには、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の位置が、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1の位置に、よりしっかりと重なるので、当該外向きクラッシングH1をさらに効果的に相殺することができる。よって、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
【0043】
なお、仮に、
図9に示す他の参考例のように、副溝130の外溝壁面130aが、ベルト6が有する1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向外側に位置する場合には、タイヤ1に荷重が掛かったときに、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1の近傍において、副溝130の内溝壁面130bの近傍のトレッドゴム7にも外向きクラッシングH3が発生することとなる。したがって、外向きクラッシングH1、H3が増長されることとなり、ショルダー陸部121での偏摩耗が悪化するおそれがある。このことは、副溝130の内溝壁面130bが、ベルト6が有する1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgと同じタイヤ幅方向位置に位置している場合に、特に言えることである。
【0044】
なお、タイヤ1の設計時においては、
図3のように、副溝130の外溝壁面130aを、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向内側の所定位置に設定しておくと、好適である。実際に製造されるタイヤ1には若干のバラツキがあり得るため、副溝130の外溝壁面130aと1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgとの位置関係が、所期したものから若干ずれる可能性がある。副溝130の外溝壁面130aを、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向内側の所定位置に予め設定しておくことにより、製造時にそのような若干のずれが生じても、製造されたタイヤ1において、副溝130の外溝壁面130aが、ベルト6が有する1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgよりもタイヤ幅方向外側に位置する(
図9)ことを、より確実に回避することができる。
【0045】
本明細書で説明する各実施形態において、副溝130の外溝壁面130aから1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgまでのタイヤ幅方向距離L(
図3)は、1層又は複数層の周方向ベルト層6bの幅W(
図1)の5%以下であると、好適である。当該タイヤ幅方向距離Lは、
図6の実施形態のように当該幅Wの0%であってもよいし、
図3の実施形態のように当該幅Wの0%超であってもよい。
これにより、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の位置を、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1に、より近づけることができ、当該外向きクラッシングH1をより効果的に相殺することができる。よって、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる(
図5、
図7)。
ここで、「1層又は複数層の周方向ベルト層6bの幅W」(
図1)は、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向両側のタイヤ幅方向最外端6bg(
図3)どうしの間のタイヤ幅方向距離を指す。
【0046】
本明細書で説明する各実施形態においては、上述のように周方向ベルトコード6bcが波形状をなしている場合(
図4)、副溝130の外溝壁面130aから1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgまでのタイヤ幅方向距離L(
図3)は、周方向ベルトコード6bcのなす波形状の両振幅B(
図4)の2倍以下であると、好適である。当該タイヤ幅方向距離Lは、
図6の実施形態のように当該両振幅Bの0倍であってもよいし、
図3の実施形態のように当該両振幅Bの0倍超であってもよい。
これにより、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の位置を、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1に、より近づけることができ、当該外向きクラッシングH1をより効果的に相殺することができる。よって、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる(
図5、
図7)。
【0047】
本明細書で説明する各実施形態においては、副溝130の外溝壁面130aから1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgまでのタイヤ幅方向距離L(
図3)は、5mm以下であると、好適である。当該タイヤ幅方向距離Lは、
図6の実施形態のように0mmであってもよいし、
図3の実施形態のように0mm超であってもよい。
これにより、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の位置を、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1に、より近づけることができ、当該外向きクラッシングH1をより効果的に相殺することができる。よって、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる(
図5、
図7)。
この構成は、タイヤ1が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ)である場合に、特に好適である。
【0048】
副溝130の外溝壁面130aは、
図3に示すように、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのそれぞれのタイヤ幅方向外端6beよりもタイヤ幅方向内側に位置していてもよい。
【0049】
本明細書で説明する各実施形態において、副溝130の溝深さD(
図3)は、最外主溝111の溝深さE(
図3)の10%以上であると、好適である。これにより、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の効果をよりしっかりと得ることができ、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
また、副溝130の溝深さDは、最外主溝111の溝深さEよりも小さいと好適であり、例えば、最外主溝111の溝深さEの30%以下であると、好適である。これにより、剛性の低下を抑制できる。
また、副溝130の溝深さDが最外主溝111の溝深さEの10~30%であることにより、副溝130が所期した偏摩耗抑制効果(例えば、摩耗率20%程度)を発揮した後に副溝130が消失するようにすることができる。
【0050】
なお、溝(主溝110、副溝130)の溝深さは、トレッド踏面100に垂直な方向に沿って測るものとする。また、
図1~
図2の実施形態のように、主溝110がその溝底面に後述の突起部111s、112sを有する場合、主溝110の溝深さは、突起部111s、112sが無いとみなしたときの主溝110の溝深さを指すものとし、言い換えれば、主溝110のトレッド踏面100への開口面から突起部111s、112sのタイヤ径方向内端までの距離を指すものとする。
【0051】
本明細書で説明する各実施形態において、副溝130の溝幅は、最外主溝111の溝幅の10%以上であると、好適である。これにより、副溝130の外溝壁面130aによる内向きクラッシングH2の効果をよりしっかりと得ることができ、耐偏摩耗性能をさらに向上することができる。
同様の観点から、副溝130の溝幅は、1.5mm以上であると好適であり、1.8mm以上であるとより好適である。
また、副溝130の溝幅は、最外主溝111の溝幅の20%以下であると、好適である。これにより、剛性の低下を抑制できる。
同様の観点から、副溝130の溝幅は、2.5mm以下であると好適であり、2.2mm以下であるより好適である。
【0052】
本明細書で説明する各実施形態において、タイヤ径方向に沿って数えたときの、ベルト6が有するベルト層6a~6cの層数(タイヤ径方向の積層数。
図1の実施形態では、5層。)は、4層以上であると好適であり、5層以上であるとより好適である。
また、ベルト6が有する周方向ベルト層6bの層数(
図1の実施形態では、2層)は、2層以上であると好適である。この場合、上述した、1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgの近傍での張力段差が特に大きくなるため、副溝130による偏摩耗抑制効果が特に有利となる。
また、ベルト6が有する各ベルト層6a~6cは、それぞれ、厚みが1.3mm以上であると、好適である。
これらの構成は、タイヤ1が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ)である場合に、特に好適である。
【0053】
なお、本明細書で説明する各実施形態においては、トレッド踏面100に設けられるトレッドパターンに関し、最外主溝111と接地端TEとの間に区画されたショルダー陸部121に、副溝130が設けられている限り、上述した副溝130による偏摩耗抑制効果を得ることができる。したがって、トレッド踏面100に設けられるトレッドパターンは、最外主溝111と接地端TEとの間に区画されたショルダー陸部121に、副溝130が設けられていること以外は、任意でよい。
【0054】
図2の実施形態において、各ショルダー陸部121には、それぞれ、副溝130に加えて、複数の一端開口サイプ121tが設けられている。これら複数の一端開口サイプ121tは、それぞれ、一端が最外主溝111に開口しており、タイヤ幅方向外側へ延在し、副溝130に至る手前で、他端がショルダー陸部121の内部で終端している。また、これら複数の一端開口サイプ121tは、タイヤ周方向に沿って互いから間隔を空けて配列されている。各ショルダー陸部121には、副溝130及び複数の一端開口サイプ121t以外に、いかなる溝やサイプも設けられていない。
図2の実施形態のように、各ショルダー陸部121は、タイヤ幅方向に沿って延在する溝によってタイヤ周方向において分断されていない、リブとして構成されていると、好適である。この場合、上述した1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1(
図5)がより顕著に生じやすいため、副溝130による偏摩耗抑制効果が特に有利となる。ただし、各ショルダー陸部121は、タイヤ幅方向に沿って延在する溝によってタイヤ周方向において分断された、ブロック列として構成されてもよい。
【0055】
図2の実施形態において、各センター陸部122には、それぞれ、複数の一端開口サイプ122tと、複数の両端開口サイプ122kとが、設けられている。各センター陸部122においては、当該センター陸部122を区画する一対の主溝110のそれぞれに、タイヤ周方向に沿って互いから間隔を空けて配列された複数の一端開口サイプ122tが開口している。これら複数の一端開口サイプ122tは、それぞれ、当該センター陸部122を区画する一対の主溝110のうちいずれか一方の主溝110に開口しており、タイヤ幅方向に延在し、他端が当該センター陸部122の内部で終端している。また、各センター陸部122において、複数の両端開口サイプ122kは、それぞれ、タイヤ幅方向に沿って延在しており、両端が、当該センター陸部122を区画する一対の主溝110のそれぞれに開口している。複数の両端開口サイプ122kは、タイヤ周方向に沿って互いから間隔を空けて配列されている。各センター陸部122には、複数の一端開口サイプ122t及び複数の両端開口サイプ122k以外に、いかなる溝やサイプも設けられていない。
図2の実施形態のように、各センター陸部122は、タイヤ幅方向に沿って延在する溝によってタイヤ周方向において分断されていない、リブとして構成されていると、好適である。この場合、上述した1層又は複数層の周方向ベルト層6bのタイヤ幅方向最外端6bgによる外向きクラッシングH1(
図5)がより顕著に生じやすいため、副溝130による偏摩耗抑制効果が特に有利となる。ただし、各センター陸部122は、タイヤ幅方向に沿って延在する溝によってタイヤ周方向において分断された、ブロック列として構成されてもよい。
【0056】
図2の実施形態において、各最外主溝111及び各センター主溝112は、それぞれ、その溝底面に、タイヤ径方向外側へ突出する突起部111s、112sを有している。
図1に示すように、これらの突起部111s、112sのタイヤ径方向外端は、トレッド踏面100よりもタイヤ径方向内側に位置している。
ただし、各最外主溝111は、その溝底面に、突起部111sを有していなくてもよい。また、各センター主溝112は、その溝底面に、突起部112sを有していなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の空気入りタイヤに利用できるものであるが、好適には重荷重用空気入りタイヤに、さらに好適にはトラック・バス用空気入りタイヤに、利用できるものである。
【符号の説明】
【0058】
1:タイヤ、
1a:トレッド部、 1b:サイドウォール部、 1c:ビード部、
4a:ビードコア、 4b:ビードフィラー、
5:カーカス、 5a:カーカスプライ、
6:ベルト、
6a:交錯ベルト層(ベルト層)、 6ac:交錯ベルトコード、 6ar:交錯ベルト被覆ゴム、
6b:周方向ベルト層(ベルト層)、 6bc:周方向ベルトコード、 6br:周方向ベルト被覆ゴム、 6be:幅方向外端、 6bg:幅方向最外端、
6c:傾斜ベルト層(ベルト層)、 6cc:傾斜ベルトコード、 6cr:傾斜ベルト被覆ゴム、
7:トレッドゴム、 8:サイドゴム、 9:インナーライナー、
100:トレッド踏面、
110:主溝、 111:最外主溝、 111s:突起部、 112:センター主溝、 112s:突起部、
120:陸部、 121:ショルダー陸部、 121t:一端開口サイプ、 122:センター陸部、 122t:一端開口サイプ、 122k:両端開口サイプ、
130:副溝、 130a:外溝壁面、 130b:内溝壁面、
CL:タイヤ赤道面、
TE:接地端、
WD:タイヤ幅方向、 WDO:タイヤ幅方向外側、 WDI:タイヤ幅方向内側、
RD:タイヤ径方向、 RDO:タイヤ径方向外側、 RDI:タイヤ径方向内側、
CD:タイヤ周方向、
G:路面