(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088104
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】駐車支援システム及びクラウドサーバー
(51)【国際特許分類】
G08G 1/14 20060101AFI20230619BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230619BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230619BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230619BHJP
【FI】
G08G1/14 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202762
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 文健
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF32
5H181KK01
5H181KK06
5H181KK07
(57)【要約】
【課題】駐車場に駐車する際、各駐車枠の空車確率または有車確率を確認することで、スムーズに空き駐車枠を見つけることができ、駐車場内の混雑緩和に貢献すること。
【解決手段】複数の車両V1,V2,V3,V4…にそれぞれ搭載された複数台の車載装置1と通信を行なうクラウドサーバー2を備える駐車支援システムAである。複数台の車載装置1は、測位システム11と、カメラ12と、駐車枠認識部13と、送信部14と、をそれぞれ備える。クラウドサーバー2は、受信部21と、駐車場全体像生成部22と、空車確率計算部25と、駐車情報生成部26と、送信部27と、を備える。駐車情報利用端末3は、受信部31と、表示部33と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両にそれぞれ搭載された複数台の車載装置と通信を行なうクラウドサーバーを備える駐車支援システムであって、
前記複数台の車載装置は、
自車の位置および方向を測位する測位システムと、
周囲の画像を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像から自車周囲の駐車枠の位置およびその駐車枠が有車であるか空車であるかを認識する駐車枠認識部と、
前記駐車枠認識部によって認識された自車位置基準による駐車枠の位置情報と有車/空車情報を、前記クラウドサーバーにアップロードする送信部と、をそれぞれ備え、
前記クラウドサーバーは、
前記複数台の車載装置からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信する受信部と、
前記複数台の車載装置から受信した複数の駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像を生成する駐車場全体像生成部と、
前記複数台の車載装置から受信した複数の前記有車/空車情報を集計し、駐車枠ごとの空車確率または有車確率を計算する確率計算部と、
前記駐車場全体像の情報に前記空車確率または有車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報を生成する駐車情報生成部と、
前記駐車情報を駐車情報利用端末に送信する送信部と、を備え、
前記駐車情報利用端末は、
前記クラウドサーバーからの前記駐車情報を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記駐車情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載された駐車支援システムにおいて、
前記クラウドサーバーは、
前記複数台の車載装置からの前記駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信した時刻における曜日、季節、温度、天気、時間帯を記録するパラメータ記録部と、
各駐車枠について過去に受信して蓄積された記録データに含まれるパラメータ条件である曜日、季節、温度、天気、時間帯ごとに前記有車/空車情報を集計した学習データを作成する学習データ作成部と、を備え、
前記確率計算部は、駐車枠ごとの前記空車確率または有車確率を計算するとき、前記駐車情報を前記駐車情報利用端末に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により前記学習データを読み出し、読み出した前記学習データに基づいて前記空車確率または有車確率を計算する
ことを特徴とする駐車支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された駐車支援システムにおいて、
前記駐車情報利用端末は、
駐車情報利用車の位置および方向を測位する測位システムを備え、
前記表示部は、前記駐車情報を表示した画面に、前記駐車情報利用車を加えて表示する
ことを特徴とする駐車支援システム。
【請求項4】
複数の車両にそれぞれ搭載された複数台の車載装置と通信を行なうクラウドサーバーであって、
前記複数台の車載装置からの前記駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信する受信部と、
前記複数台の車載装置から受信した複数の前記駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像を生成する駐車場全体像生成部と、
前記複数台の車載装置から受信した複数の前記有車/空車情報を集計し、前記駐車枠ごとの空車確率または有車確率を計算する確率計算部と、
前記駐車場全体像の情報に前記空車確率または有車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報を生成する駐車情報生成部と、
前記駐車情報を駐車情報利用端末に送信する送信部と、
を備えることを特徴とするクラウドサーバー。
【請求項5】
請求項4に記載されたクラウドサーバーにおいて、
前記複数台の車載装置からの前記駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信した時刻における曜日、季節、温度、天気、時間帯を記録するパラメータ記録部と、
各駐車枠について過去に受信して蓄積された記録データに含まれるパラメータ条件である曜日、季節、温度、天気、時間帯ごとに前記有車/空車情報を集計した学習データを作成する学習データ作成部と、を備え、
前記確率計算部は、駐車枠ごとの前記空車確率または有車確率を計算するとき、前記駐車情報を前記駐車情報利用端末に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により前記学習データを読み出し、読み出した前記学習データに基づいて前記空車確率または有車確率を計算する
ことを特徴とするクラウドサーバー。
【請求項6】
請求項5に記載されたクラウドサーバーにおいて、
前記確率計算部は、前記駐車枠ごとの空車確率を、
空車確率=(一番最近の認識結果)×(係数値)+(空車確率学習値)×(1-係数値)
の式を用いて計算し、
前記一番最近の認識結果は、有車であると0%で与え、空車であると100%で与え、
前記空車確率学習値は、前記学習データに基づいて、パラメータ条件ごとの重み付け学習により計算された値で与え、
前記係数値は、認識時刻に1で与え、認識時刻からの時間が経過するとともに1から徐々に低下してゼロに至る値で与える
ことを特徴とするクラウドサーバー。
【請求項7】
請求項6に記載されたクラウドサーバーにおいて、
前記確率計算部は、前記係数値が1からゼロに至るまでの設定時間を、その駐車場における平均駐車時間に基づき、前記平均駐車時間が長いほど長い時間に設定する
ことを特徴とするクラウドサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援システム及びクラウドサーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場の空き状況を把握できる駐車場管理システムが知られている。駐車場管理システムの車載装置は、駐車場の静止画像と静止画像の撮影時刻とを含む簡易状況データを管理サーバーに送信する。管理サーバーは、簡易状況データを車載装置から受信した場合、駐車場の動画像を取得するか否かを、静止画像から推定された駐車場の空き状況に基づいて判断する。管理サーバーは、動画像の取得を決定した場合、静止画像の撮影時刻を含む詳細状況要求を車載装置に送信する。車載装置は、詳細状況要求を受信した場合、撮影時刻を含む対象期間に撮影された動画像を含む詳細状況データを管理サーバーに送信する(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術は、管理サーバーにおいて、現状における駐車場の空き状況と、動画像による空き状況の変化を把握する技術であり、駐車枠ごとの空き情報を提供するものではない。したがって、駐車予定車両が駐車場に入ってきたとき、広い駐車場のどこに空いている駐車枠があるのかがわからず、闇雲に駐車場内を走行せざるを得ない。そして、闇雲に駐車場内を走行する行為は、駐車場内の混雑を助長することにも繋がる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、駐車場に駐車する際、各駐車枠の空車確率または有車確率を確認することで、スムーズに空き駐車枠を見つけることができ、駐車場内の混雑緩和に貢献する駐車支援システム及びクラウドサーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駐車支援システムは、複数の車両にそれぞれ搭載された複数台の車載装置と通信を行なうクラウドサーバーを備えるシステムであって、複数台の車載装置は、自車の位置および方向を測位する測位システムと、周囲の画像を撮影するカメラと、カメラで撮影された画像から自車周囲の駐車枠の位置およびその駐車枠が有車であるか空車であるかを認識する駐車枠認識部と、駐車枠認識部によって認識された自車位置基準による駐車枠の位置情報と有車/空車情報を、クラウドサーバーにアップロードする送信部と、をそれぞれ備える。クラウドサーバーは、複数台の車載装置からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信する受信部と、複数台の車載装置から受信した複数の駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像を生成する駐車場全体像生成部と、複数台の車載装置から受信した複数の有車/空車情報を集計し、駐車枠ごとの空車確率または有車確率を計算する確率計算部と、駐車場全体像の情報に空車確率または有車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報を生成する駐車情報生成部と、駐車情報を駐車情報利用端末に送信する送信部と、を備える。駐車情報利用端末は、クラウドサーバーからの駐車情報を受信する受信部と、受信部で受信した駐車情報を表示する表示部と、を備える。
【0007】
本発明のクラウドサーバーは、複数の車両にそれぞれ搭載された複数台の車載装置と通信を行なうサーバーであって、複数台の車載装置からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信する受信部と、複数台の車載装置から受信した複数の駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像を生成する駐車場全体像生成部と、複数台の車載装置から受信した複数の有車/空車情報を集計し、駐車枠ごとの空車確率または有車確率を計算する確率計算部と、駐車場全体像の情報に空車確率または有車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報を生成する駐車情報生成部と、駐車情報を駐車情報利用端末に送信する送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る駐車支援システム及びクラウドサーバーによれば、駐車場に駐車する際、各駐車枠の空車確率または有車確率を確認することで、スムーズに空き駐車枠を見つけることができ、駐車場内の混雑緩和に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の駐車支援システムの全体概要を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施例1の駐車支援システムにおける車載装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】車載装置において俯瞰画像から自車周囲の駐車枠の位置およびその駐車枠が有車であるか空車であるかを認識する様子を示す駐車枠認識説明図である。
【
図4】実施例1の駐車支援システムにおけるクラウドサーバーの構成例を示すブロック図である。
【
図5】クラウドサーバーにおいて学習データ作成部において作成される学習データの一例を示す学習データ図である。
【
図6】クラウドサーバーにおいて空車確率計算部で空車確率を計算するときの係数の値の時間変化例を示す係数特性図である。
【
図7】クラウドサーバーにおいて駐車情報生成部で生成される駐車情報の一例を示す駐車情報図である。
【
図8】実施例1の駐車支援システムにおける駐車情報利用端末の構成例を示すブロック図である。
【
図9】駐車情報利用端末において表示部に表示される駐車支援表示画面の一例を示す駐車支援表示画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による駐車支援システム及びクラウドサーバーを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例0011】
実施例1の駐車支援システムAは、駐車場に駐車する際、ドライバーがスムーズに空き駐車枠を見つけることができる情報である各駐車枠の空車確率情報をクラウドサーバーから提供するシステムである。以下、
図1~
図9を参照し、駐車支援システムAの構成を説明する。
【0012】
駐車支援システムAは、
図1に示すように、車載装置1と、クラウドサーバー2と、駐車情報利用端末3と、を備え、これらの構成要素によってクラウドコンピューティングを活用したクラウドシステムを構築している。
【0013】
車載装置1は、複数の車両V1,V2,V3,V4,…のそれぞれ搭載された複数台の装置である。クラウドサーバー2は、複数台の車載装置1とインターネット4を介して通信を行なうサーバーである。駐車情報利用端末3は、駐車情報を利用する駐車情報利用車V0に備えられ、クラウドサーバー2とインターネット4を介して通信を行なう端末である。
【0014】
車載装置1は、
図2に示すように、測位システム11と、カメラ12と、駐車枠認識部13と、送信部14と、を備える。
【0015】
測位システム11は、自車の位置および方向を測位するシステムである。具体的には、GPS測位システム(単独測位システム)やRTK測位システム(相対測位システム)が用いられる。
【0016】
GPS測位システムは、広く普及している基本的な測定方法で、単独の受信機で4つ以上のGPSやGNSSの衛星から信号を受信して、各衛星からの距離を測定することで、自車の位置および方向を算出する。GPSは、「Global Positioning System」の略称である。
【0017】
RTK測位システムは、固定局と移動局の2つの受信機で4つ以上の衛星から信号を受信する技術で、2つの受信機の間で情報をやりとりしてズレを補正することで、単独測位よりも精度の高い位置情報(誤差範囲が数センチメートル以内)を得ることができる。RTKは、「Real Time Kinematic」の略称である。
【0018】
カメラ12は、自車周囲の画像を撮影するフロントカメラ、リアカメラ、右サイドカメラ、左サイドカメラ等により構成される。
【0019】
駐車枠認識部13は、カメラ12で撮影された画像からの視点変換処理により自車両の俯瞰画像を生成し、自車周囲の駐車枠の位置およびその駐車枠が有車であるか空車であるかを認識する。この駐車枠認識部13は、駐車時に作動させ、モニター画面に自車両の俯瞰画像を表示して安全性と利便性を高める全方位モニターシステムと呼ばれる。
【0020】
駐車枠認識部13を、具体的に説明すると、4方向のカメラ12から得られた映像信号をリアルタイムで俯瞰視点からの画像に視点変換処理する。これら視点変換処理された4つのカメラ画像を、俯瞰で見た自車両画像を中心として1つの画像に合成処理することによって自車両の俯瞰画像が得られる。自車両の俯瞰画像は、自車両とともに自車両周囲を真上から見下ろしているかのような俯瞰視点からの画像になる。よって、俯瞰画像を走査してエッジを検出し、検出したエッジに補正を加えることで、駐車枠端点の座標、駐車枠のパターン(並列、縦列等)、駐車枠形状(I字、U字、十字等)、有車/空車、の情報を取得することができる。
【0021】
例えば、
図3に示すように、駐車場P内の通路に存在する3台の車両V1,車両V2,車両V3のカメラ12による認識の場合、車両V1の俯瞰画像範囲がI1になり、車両V2の俯瞰画像範囲がI2になり、車両V3の俯瞰画像範囲がI3になる。よって、車両V1,車両V2,車両V3のそれぞれについて、
図3の左右両側に配置される6つの駐車枠を認識できると共に、6つの駐車枠が有車であるか空車であるかを認識できる。
【0022】
送信部14は、駐車枠認識部13によって認識された自車位置基準による駐車枠の位置情報と有車/空車情報を、インターネット4を介してクラウドサーバー2にアップロードする。アップロードのタイミングは、例えば、車載装置1を備える車両V1等が駐車枠に入るときや駐車枠から出るときに全方位モニターシステムを作動させると、システム作動をトリガーとして設定されたタイミング(1回又は複数回)とする。
【0023】
クラウドサーバー2は、
図4に示すように、受信部21と、駐車場全体像生成部22と、パラメータ記録部23と、学習データ作成部24と、空車確率計算部25(確率計算部)と、駐車情報生成部26と、送信部27と、を備える。
【0024】
受信部21は、複数台の車載装置1からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信する。
【0025】
駐車場全体像生成部22は、複数台の車載装置1から受信した複数の駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場P内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像を生成する。ここで、駐車枠の位置を特定した駐車場全体像は、隣接する俯瞰画像の座標点を合わせながら、複数の俯瞰画像を1つの画像に合成処理することによって生成される。
【0026】
パラメータ記録部23は、複数台の車載装置1からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報を受信した時刻における曜日、季節、温度、天気、時間帯を記録する。
【0027】
学習データ作成部24は、各駐車枠について過去に受信して蓄積された記録データに含まれるパラメータ条件である曜日、季節、温度、天気、時間帯ごとに有車/空車情報を集計した学習データDを作成する。
図5に学習データDの一例を示す。
【0028】
空車確率計算部25は、複数台の車載装置1から受信した複数の有車/空車情報を集計し、駐車枠ごとの空車確率を計算する。実施例1では、駐車枠ごとの空車確率を計算するとき、駐車情報を駐車情報利用端末3に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により学習データDを読み出し、読み出した学習データDに基づいて空車確率を計算する。
【0029】
空車確率計算部25は、駐車枠ごとの空車確率を、
空車確率=(一番最近の認識結果)×(係数値)+(空車確率学習値)×(1-係数値)
の式を用いて計算する。ここで、一番最近の認識結果は、有車であると0%で与え、空車であると100%で与える。
【0030】
空車確率学習値は、学習データDに基づいて、パラメータ条件ごとの重み付け学習により計算された値で与える。重み付けは、例えば、月曜日~金曜日に比べて土曜日と日曜日が混雑する等の曜日に依存する駐車場、冬季に比べ夏季に混雑する等の季節に依存する駐車場、温度や天気や時間帯に依存する駐車場が存在する。このように、各駐車場の立地条件による特色に応じ、曜日、季節、温度、天気、時間帯に対して適切な重み付け係数を与える。なお、学習データが豊富に蓄積された場合、AI(「Artificial Intelligence」の略称)を用い、深層学習により空車確率学習値を計算しても良い。
【0031】
係数値は、
図6に示すように、認識時刻に1で与え、認識時刻からの時間が経過するとともに1から徐々に低下してゼロに至る値で与える。係数値が1からゼロに至るまでの設定時間Tは、その駐車場における平均駐車時間に基づき、平均駐車時間が長いほど長い時間に設定する。
【0032】
駐車情報生成部26は、駐車場全体像生成部22からの駐車場全体像の情報に、空車確率計算部25からの空車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報を生成する。具体的な駐車情報としては、
図7に示すように、駐車場Pの各駐車枠内に%単位の空車確率を記載したものとしている。
【0033】
送信部27は、駐車情報を駐車情報利用端末3に送信する。例えば、駐車情報利用車V0のドライバーが駐車情報の利用操作(ボタン操作等)を行うと、駐車情報の利用操作がインターネット4を介してクラウドサーバー2にアクセスして駐車情報の提供を要求する操作になり、送信部27から駐車情報が送信される。
【0034】
駐車情報利用端末3は、
図8に示すように、受信部31と、測位システム32と、表示部33と、を備えている。
【0035】
受信部31は、クラウドサーバー2からの駐車情報を受信する。
【0036】
測位システム32は、駐車情報利用車V0の位置および方向を測位する。この測位システム32は、車載装置1の測位システム11と同様に、GPS測位システムやRTK測位システム等が用いられる。
【0037】
表示部33は、駐車情報を表示した画面に、駐車情報利用車V0を加えて表示する。具体的には、
図9に示すように、駐車情報(駐車場全体像+空車確率)に、駐車情報利用車V0を加えて表示した画面を駐車支援画面とする。
【0038】
次に、実施例1の駐車支援システムAの駐車支援作用について説明する。
【0039】
例えば、車載装置1を備える車両V1が駐車場Pの駐車枠に入るときや駐車枠から出るときに全方位モニターシステムを作動させると、システム作動をトリガーとして設定されたタイミングにて認識情報がクラウドサーバー2にアップロードされる。ここで、認識情報とは、駐車枠認識部13によって認識された自車位置基準による駐車枠の位置情報と有車/空車情報をいう。
【0040】
そして、車載装置1を備える車両V2,V3,V4…のそれぞれについても車両V1と同様に、駐車場Pの駐車枠に入るときや駐車枠から出るときに全方位モニターシステムを作動させると、車載装置1での認識情報がクラウドサーバー2にアップロードされる。
【0041】
車載装置1での認識情報がクラウドサーバー2にアップロードされると、クラウドサーバー2の受信部21において、複数台の車載装置1からの駐車枠の位置情報と有車/空車情報が受信され、駐車情報の生成処理が行われる。駐車情報の生成処理は、駐車場全体像生成部22において、複数台の車載装置1から受信した複数の駐車枠の位置情報に基づいて、駐車場内での複数の駐車枠の位置を特定した駐車場全体像が生成される。空車確率計算部25において、複数台の車載装置1から受信した複数の有車/空車情報が集計され、駐車枠ごとの空車確率が計算される。駐車情報生成部26において、駐車場全体像の情報に空車確率を示す情報を組み合わせて駐車情報が生成される。そして、送信部27において、駐車情報が駐車情報利用端末3に送信される。
【0042】
駐車情報利用端末3の受信部31において、クラウドサーバー2からの駐車情報が受信されると、表示部33において、受信部31で受信した駐車情報が表示される。
【0043】
このように、駐車支援システムAでは、複数台の車載装置1から異なるタイミングで継続的に得られる有車/空車情報、つまり、過去から現在までの有車/空車情報に基づいて計算される各駐車枠の空車確率を、駐車支援情報として提供することができる。
【0044】
実施例1では、クラウドサーバー2での駐車枠ごとの空車確率を計算するときは、駐車情報を駐車情報利用端末3に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により学習データ作成部24で作成された学習データが読み出される。そして、読み出した学習データに基づいて空車確率が計算される。
【0045】
このように、駐車支援システムAでは、曜日、季節、温度、天気、時間帯のパラメータを属性とする学習制御により、駐車枠ごとの空車確率を計算している。このため、駐車場Pの立地条件による特色をあらわす曜日、季節、温度、天気、時間帯を、駐車枠ごとの空車確率の計算に反映することができる。
【0046】
実施例1では、駐車情報利用端末3の表示部33に駐車情報を表示するときは、駐車情報を表示した画面に、測位システム32による駐車情報利用車V0の位置を加えて表示される(
図9を参照)。
【0047】
このように、駐車支援システムAでは、駐車情報利用端末3の表示部33の画面に表示される内容が、駐車情報に駐車情報利用車V0の位置を加えものとなる。よって、駐車情報利用車V0がどの方向に進むと空車となっている確率の高い駐車枠や空車となっている確率の高い複数の駐車枠を含む領域にたどり着くことができるのかが一目瞭然にて判別できる。
【0048】
以上説明したように、実施例1の駐車支援システムA及びクラウドサーバー2にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0049】
(1)複数の車両V1,V2,V3,V4…にそれぞれ搭載された複数台の車載装置1と通信を行なうクラウドサーバー2を備える駐車支援システムAである。複数台の車載装置1は、測位システム11と、カメラ12と、駐車枠認識部13と、送信部14と、をそれぞれ備える。クラウドサーバー2は、受信部21と、駐車場全体像生成部22と、空車確率計算部25と、駐車情報生成部26と、送信部27と、を備える。駐車情報利用端末3は、受信部31と、表示部33と、を備える。即ち、現状における各駐車枠の空き状況(リアルタイムの空車または有車といった択一的な状況のこと)を駐車支援情報として提供するのではなく、過去から現在までの有車/空車情報に基づいて計算される各駐車枠の空車確率を駐車支援情報として提供するようにしている。したがって、駐車場Pに駐車する際、各駐車枠の空車確率を確認することで、駐車場内の全域に亘って他の車両から現時点のリアルタイムの空き状況(空車または有車)の情報が送信されていない場合であっても、空車率によって空き駐車枠の有無の目安が得られる。このため、駐車場Pに駐車する際、各駐車枠の空車確率を確認することで、スムーズに空き駐車枠を見つけることができ、駐車場P内の混雑緩和に貢献する駐車支援システムAを提供することができる。加えて、駐車情報利用端末3は、受信機能と表示機能が要求されるだけで、周囲認識機能が要求されない。このため、周囲認識機能を有さない車両や携帯端末にも各駐車枠の空車確率を駐車支援情報として提供でき、広範囲の車両が本発明の利益を享受することができる。
【0050】
(2)クラウドサーバー2は、パラメータ記録部23と、学習データ作成部24と、を備える。空車確率計算部25は、駐車枠ごとの空車確率を計算するとき、駐車情報を駐車情報利用端末3に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により学習データDを読み出し、読み出した学習データDに基づいて空車確率を計算する。このため、駐車場Pの立地条件による特色をあらわす曜日、季節、温度、天気、時間帯を、駐車枠ごとの空車確率の計算に反映する駐車支援システムAを提供することができる。
【0051】
(3)駐車情報利用端末3は、駐車情報利用車V0の位置および方向を測位する測位システム32を備え、表示部33は、駐車情報を表示した画面に、駐車情報利用車V0を加えて表示する。このため、駐車情報利用車V0のドライバーがどの方向に進むと空車となっている確率の高い駐車枠にたどり着くことができるのかが一目瞭然にて判別される駐車支援システムAを提供することができる。
【0052】
(4)複数の車両V1,V2,V3,V4…にそれぞれ搭載された複数台の車載装置1と通信を行なうクラウドサーバー2である。クラウドサーバー2は、受信部21と、駐車場全体像生成部22と、空車確率計算部25と、駐車情報生成部26と、送信部27と、を備える。このため、駐車場Pに駐車する際、各駐車枠の空車確率を確認することで、スムーズに空き駐車枠を見つけることができ、駐車場P内の混雑緩和に貢献するクラウドサーバー2を提供することができる。
【0053】
(5)クラウドサーバー2は、パラメータ記録部23と、学習データ作成部24と、を備える。空車確率計算部25は、駐車枠ごとの空車確率を計算するとき、駐車情報を駐車情報利用端末3に送信するときの曜日、季節、温度、天気、時間帯との照合により学習データDを読み出し、読み出した学習データDに基づいて空車確率を計算する。このため、駐車場Pの立地条件による特色をあらわす曜日、季節、温度、天気、時間帯を、駐車枠ごとの空車確率の計算に反映するクラウドサーバー2を提供することができる。
【0054】
(6)クラウドサーバー2の空車確率計算部25は、駐車枠ごとの空車確率を、
空車確率=(一番最近の認識結果)×(係数値)+(空車確率学習値)×(1-係数値)
の式を用いて計算する。即ち、一番最近の認識結果が得られた直後は、一番最近の認識結果が優先される空車確率となり、一番最近の認識結果が得られてから設定時間Tを経過した後は、空車確率学習値が優先される。そして、一番最近の認識結果が得られてから設定時間Tが経過するまでの間は、一番最近の認識結果の優先度合が徐々に低下し、空車確率学習値の優先度合が徐々に上昇する空車確率の計算になる。このため、車載装置1から収集した認識データの平均値により空車確率を計算する場合に比べ、車載装置1からの認識データの新しさや古さを適切に反映する空車確率を計算するクラウドサーバー2を提供することができる。
【0055】
(7)クラウドサーバー2の空車確率計算部25は、係数値が1からゼロに至るまでの設定時間Tを、その駐車場Pにおける平均駐車時間に基づき、平均駐車時間が長いほど長い時間に設定する。即ち、一番最近の認識結果が得られてから平均駐車時間に相当する設定時間Tが経過すると空車確率学習値による空車確率の計算になる。したがって、一番最近の認識結果が有車であるとき、設定時間Tが経過すると空車になっている可能性が高いことに符合する空車確率の計算になる。このため、係数値の設定時間Tを駐車場Pにかかわらず一定時間で与える場合比べ、駐車場Pの平均駐車時間を反映する信頼度の高い空車確率を計算するクラウドサーバー2を提供することができる。
【0056】
以上、本発明の駐車支援システムA及びクラウドサーバー2を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、実施例1に限られるものではない。特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0057】
実施例1では、クラウドサーバーとして、インターネット環境に配置され、複数台の車載装置1から送信されるデータ取得から駐車情報利用端末3へのデータ送信までを一元管理する一つのクラウドサーバー2を用いる例を示した。しかし、クラウドサーバーとしては、データ取得から駐車情報の生成までを機能を分担するサーバー装置と、サーバー装置からのアップロードにより駐車情報を受信し、駐車情報利用端末へのデータ送信する公開サーバーとの2つのサーバーを用いる例としても良い。
【0058】
実施例1では、駐車情報生成部26として、駐車場全体像生成部22からの駐車場全体像の情報に、空車確率計算部25からの空車確率の情報を組み合わせて駐車情報を生成する際、空車確率を、駐車場Pの各駐車枠内に%単位であらわした例を示した。しかし、駐車情報生成部としては、空車確率を、駐車場の各駐車枠内に%単位であらわす例に限られない。例えば、空車確率を、駐車場の各駐車枠内の色を色分けしてあらわしても良いし、駐車場の各駐車枠内の色に濃淡をつけてあらわしても良い。また、空車確率を、駐車場の各駐車枠内の色による識別表示と%単位表示の併用によりあらわしても良い。また、クラウドサーバー2は、空車確率計算部25において空車確率を計算する例を示したが、代わりに空車確率の逆数である有車確率を計算して、それを駐車情報利用端末3へデータ送信しても良い。
【0059】
実施例1では、車載装置1を搭載した複数の車両V1,V2,V3,V4…と、駐車情報利用車V0と、を切り離して説明した。しかし、車載装置と駐車情報利用端末を共に搭載した車両の場合、認識データを送信する車両であると同時に、駐車情報を利用する車両でもある例としても良い。