(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088126
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】モータ試験装置およびモータ試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/025 20190101AFI20230619BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20230619BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
G01M13/025
H02P29/00
G01M17/007 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202796
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隅田 悟士
(72)【発明者】
【氏名】伊君 高志
【テーマコード(参考)】
2G024
5H501
【Fターム(参考)】
2G024AB15
2G024AB17
2G024CA09
2G024CA12
2G024CA18
2G024DA09
2G024EA13
5H501BB09
5H501GG03
5H501HB08
5H501JJ23
5H501JJ25
5H501JJ26
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL32
(57)【要約】
【課題】慣性模擬制御におけるトルク検出時のノイズによる影響を抑制しつつ、トルク検出遅延を低減する。
【解決手段】モータ試験装置として、供試モータまたは当該供試モータに負荷を与える負荷モータの電流を検出する電流検出部と、供試モータまたは負荷モータのトルクを検出するトルク検出部と、トルク検出値をフィルタ処理してトルクフィルタ値を出力するフィルタ部と、トルク検出部を設けた側の供試モータまたは負荷モータの電流検出値に基づくか、または、トルク検出部を設けない側の供試モータまたは負荷モータの電流検出値および角加速度並びに供試モータと負荷モータとを含む回転軸の慣性値に基づいて、供試モータまたは負荷モータのトルク推定値を出力するトルク推定部と、トルク推定値をトルクフィルタ値に漸近させてトルク補正値を出力するトルク推定補正部と、トルク補正値に基づいて負荷モータを制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試モータの側または当該供試モータに負荷を与える負荷モータの側に設けられ、前記供試モータまたは前記負荷モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、
前記供試モータの側または前記負荷モータの側に設けられ、前記供試モータまたは前記負荷モータのトルクを検出してトルク検出値を出力するトルク検出部と、
前記トルク検出値をフィルタ処理してトルクフィルタ値を出力するフィルタ部と、
前記トルク検出部を設けた側の前記供試モータまたは前記負荷モータの電流検出値に基づくか、または、前記トルク検出部を設けない側の前記供試モータまたは前記負荷モータの電流検出値および角加速度並びに前記供試モータと前記負荷モータとを含む回転軸の慣性値に基づいて、前記供試モータまたは前記負荷モータのトルク推定値を出力するトルク推定部と、
前記トルク推定値を前記トルクフィルタ値に漸近させてトルク補正値を出力するトルク推定補正部と、
前記トルク補正値に基づいて前記負荷モータを制御する制御部と
を備えるモータ試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ試験装置であって、
前記トルク推定補正部は、前記トルク推定値をフィードフォワード側、前記トルクフィルタ値をフィードバック側とする二自由度制御系を構成する
ことを特徴とするモータ試験装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータ試験装置であって、
前記制御部は、前記負荷モータの速度指令演算回路を有し、
前記速度指令演算回路は、前記トルク補正値と所定の慣性値とに基づいて、前記負荷モータの速度指令値を演算する
ことを特徴とするモータ試験装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモータ試験装置であって、
前記制御部は、車両模擬回路を有し、
前記車両模擬回路は、前記トルク補正値から、ギア比を持って前記供試モータと車両の車輪とを連結するギア、当該車輪および当該車輪を接続した車体それぞれに関する物理量並びに前記車輪の回転速度に基づいて、前記負荷モータの速度指令を演算する
ことを特徴するモータ試験装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ試験装置であって、
前記供試モータまたは前記負荷モータの角加速度と前記供試モータまたは前記負荷モータの慣性値とに基づいてトルク検出補正値を演算して前記トルク検出値に加算するトルク検出補正部をさらに備える
ことを特徴とするモータ試験装置。
【請求項6】
供試モータまたは当該供試モータに負荷を与える負荷モータの電流を検出し、
前記供試モータまたは前記負荷モータのトルク検出値をフィルタ処理してトルクフィルタ値を求め、
トルク検出を行う側の前記供試モータまたは前記負荷モータの電流検出値に基づくか、または、当該トルク検出を行わない側の前記供試モータまたは前記負荷モータの電流検出値および角加速度並びに前記供試モータと前記負荷モータとを含む回転軸の慣性値に基づいて、前記供試モータまたは前記負荷モータのトルク推定値を算出し、
前記トルク推定値を前記トルクフィルタ値に漸近させてトルク補正値を求め、
前記トルク補正値に基づいて前記負荷モータを制御する
ことを特徴とするモータ試験方法。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ試験方法であって、
前記トルク補正値を、前記トルク推定値をフィードフォワード側、前記トルクフィルタ値をフィードバック側とする二自由度制御系を用いて、前記トルク推定値を前記トルクフィルタ値に漸近させることにより求める
ことを特徴とするモータ試験方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のモータ試験方法であって、
前記供試モータまたは前記負荷モータの角加速度と前記供試モータまたは前記負荷モータの慣性値とに基づいてトルク検出補正値を演算して前記トルク検出値に加算する
ことを特徴とするモータ試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ試験装置およびモータ試験方法におけるトルク推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御システムの評価に当たっては、供試モータと負荷モータとを対向させ、負荷モータで所定の負荷を与えて評価する。このとき、負荷モータの慣性値は、最終製品である鉄道車両や自動車などの慣性値とは一致しない。そのため、負荷モータの制御によって見掛け上の慣性を模擬する必要があり、これを慣性模擬制御と呼ぶ。また、慣性の他、走行抵抗や回転軸の減衰率などを模擬することも可能であり、例えば、特許文献1および2には、それに関する技術の開示がある。
【0003】
慣性模擬制御では、供試モータトルクが模擬対象とする慣性に入力された場合の挙動(角加速度・回転速度など)を演算し、それと負荷モータの実際の挙動が一致するように制御を行う。
【0004】
このため、慣性模擬制御では、供試モータトルクを検出する必要があり、特許文献1および2では、そのためにトルク検出器を備えている。また、実用上はトルク検出器にはノイズが含まれるため、特許文献2に開示のように、ローパスフィルタ(LPF)をトルク検出器の後段に備えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6737363号公報
【特許文献2】特開2014-142317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
慣性模擬制御において、ローパスフィルタ(LPF)を備えると、トルク検出遅延が発生するため、慣性模擬精度が低下するという課題が生じる。そのために、ローパスフィルタ(LPF)の時定数を下げると、トルク検出遅延は減少するが、検出ノイズの影響を受ける問題が残ることになる。
そこで、本発明では、トルク検出時のノイズによる影響を抑制しつつ、トルク検出遅延を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のモータ試験装置の一つは、供試モータの側または当該供試モータに負荷を与える負荷モータの側に設けられ供試モータまたは負荷モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、供試モータの側または負荷モータの側に設けられ供試モータまたは負荷モータのトルクを検出してトルク検出値を出力するトルク検出部と、トルク検出値をフィルタ処理してトルクフィルタ値を出力するフィルタ部と、トルク検出部を設けた側の供試モータまたは負荷モータの電流検出値に基づくか、または、トルク検出部を設けない側の供試モータまたは負荷モータの電流検出値および角加速度並びに供試モータと負荷モータとを含む回転軸の慣性値に基づいて、供試モータまたは負荷モータのトルク推定値を出力するトルク推定部と、トルク推定値をトルクフィルタ値に漸近させてトルク補正値を出力するトルク推定補正部と、トルク補正値に基づいて負荷モータを制御する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータ試験装置において、高精度かつ高応答なトルク検出を実現できる。この結果、モータ試験装置によるモータ制御システムの評価時と運用時の差をなくすことができ、モータあるいはインバータ効率、トルク応答などの評価精度を高めることが可能となる。
また、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係るモータ試験装置の構成を示す図
【
図2】トルク推定補正部を用いない場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図
【
図3】トルク推定部を用いた場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図
【
図4】トルク推定補正部を用いた場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図
【
図5】本発明の実施例2に係るモータ試験装置の構成の一部を示す図
【
図6】本発明の実施例3に係るモータ試験装置の構成の一部を示す図
【
図7】本発明の実施例4に係るモータ試験装置の構成の一部を示す図
【
図8】実施例4で模擬対象とする車両の車両機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態として、実施例1から4について説明する。なお、これら各実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1に係るモータ試験装置の構成を示す図である。
供試モータ(Mt)1と負荷モータ(Mg)2とは、対向して配置され、それぞれ、供試側インバータ(INV)3と負荷側インバータ(INV)4とにより駆動される。
【0012】
供試モータ(Mt)1と負荷モータ(Mg)2との間には、実慣性5が備えられ、その慣性値をJrとする。この実慣性5としては、フライホイールが挙げられる。
ここで、供試モータ(Mt)1、負荷モータ(Mg)2、実慣性5およびそれらを接続する回転軸は、完全な剛性体であるとし、回転速度は、いずれもωrとする。
【0013】
電流検出部6は、供試モータ(Mt)1のU相電流iu、V相電流ivおよびW相電流iwを検出する。
【0014】
トルク検出部7は、供試モータ(Mt)1のトルクτt(以下、「供試側トルクτt」という)を検出し、トルク検出値τt-dtcとして出力する。
【0015】
トルク推定部8は、三相二相変換回路8aおよび電流・トルク換算回路8bから構成される。その内、三相二相変換回路8aは、U相電流iu、V相電流ivおよびW相電流iwをd軸電流idとq軸電流iqに換算する。また、電流・トルク換算回路8bは、供試モータ(Mt)1のパラメータ(誘起電圧係数、インダクタンスなど)に基づいて、d軸電流idとq軸電流iqをトルク推定値τt-obsに換算する。
【0016】
フィルタ部9は、トルク検出値τt-dtcに含まれるノイズを除去するための手段である。例えば、ローパスフィルタ(LPF)を用いて、ノイズを除去したトルクフィルタ値τt-LPFを出力する。フィルタ部9は、ローパスフィルタ(LPF)の他、バンドパスフィルタ(BPF)などでもよい。
【0017】
トルク推定補正部10は、トルク推定値τt-obsおよびトルクフィルタ値τt-LPFに基づいて、トルク補正値τt-revを出力する。トルク補正値τt-revは、供試モータ(Mt)1の最終的なトルク推定値となる。
【0018】
慣性模擬部11は、トルク補正値τt-revに基づいて、実慣性5の慣性値Jrを見掛け上、Jに模擬するための手段であり、速度指令演算回路11a、速度制御回路11b、トルク・電流換算回路11c、電流制御回路11dおよび二相三相変換回路11eから構成される。
【0019】
速度指令演算回路11aは、次の(数1)に従って、トルク補正値τ
t-revから速度指令ω
r
*を演算する。
【数1】
【0020】
速度制御回路11bは、速度指令ωr
*と回転速度ωrが等しくなるように、負荷モータ(Mg)2のトルク指令τg
*を演算する。
【0021】
トルク・電流換算回路11cは、トルク推定部8の電流・トルク換算回路8bとは逆に、トルク指令τg
*からd軸電流指令id
*とq軸電流指令iq
*を演算する。
【0022】
電流制御回路11dは、d軸電流指令id
*とq軸電流指令iq
*およびモータ電圧方程式に従って、d軸電圧指令vd
*とq軸電圧指令vq
*を演算する。
【0023】
二相三相変換回路11eは、d軸電圧指令vd
*とq軸電圧指令vq
*を、U相電圧指令vu
*、V相電圧指令vv
*およびW相電圧指令vw
*に変換する。
【0024】
次に、慣性模擬制御の動作原理について説明する。
供試モータ(Mt)1に対して慣性値Jの慣性が接続された場合、次の(数2)が成り立つ。
【数2】
ここで、速度制御回路11bにより、「ω
r = ω
r
*」となる。
【0025】
また、供試モータ(Mt)1のトルクτtを理想的に検出でき、これをトルク補正値τt-revとするならば、「τt-rev = τt」となる。
【0026】
「ωr = ωr
*」および「τt-rev = τt」であるときに、(数1)と(数2)は等価となり、供試モータ(Mt)1から見ると、その先には慣性値Jの慣性が接続されたように見える。
【0027】
以上が、慣性模擬制御の原理であり、これを実現するための条件が、以下に記す実現条件(1)および(2)である。
(1)速度制御回路11bによって、「ωr = ωr
*」が成り立つ。
(2)理想的なトルク検出手段によって、「τt-rev = τt」が成り立つ。
【0028】
ところが、慣性模擬制御には課題があるので、それについて説明する。
実機では、トルク検出部7の検出精度や信号出力精度に依存して、トルク検出値τt-dtcにはノイズが含まれる。このノイズを除去するために、フィルタ部9を用いるが、その出力であるトルクフィルタ値τt-LPFは、トルク検出値τt-dtcおよび供試側トルクτtに対して遅延を含むことになる。
【0029】
図2は、トルク推定補正部10を用いない場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図である。
図2に示すように、時刻t
1において供試側トルクτ
tがステップ変化する場合、過渡的には「τ
t ≠ τ
t-LPF」となる。
【0030】
このため、「τt-rev = τt」および「τt-rev = τt-LPF」として、(数1)をそれぞれ演算した場合、前者の速度指令ωr
**および後者の速度指令ωr
*には差が生じる。この差を、速度誤差Δωr(= ωr
* - ωr
**)とする。
ここで、速度指令ωr
**は、慣性模擬制御における理想的な速度指令である。
【0031】
一方、速度指令ω
r
*は、供試側トルクτ
tをトルクフィルタ値τ
t-LPFで代替した場合の速度指令である。すなわち、
図1に示すトルク推定補正部10を備えることなく、トルクフィルタ値τ
t-LPFを、速度指令演算回路11aに直接入力した場合の速度指令である。
速度誤差Δω
rが負の場合、供試モータ(Mt)1から見て、出力したトルクの割には加速していないことを表し、見掛け上の慣性がJよりも大きくなっていることを意味する。これに対して、速度誤差Δω
rが正の場合は、逆である。
【0032】
いずれにしても、速度誤差Δωrは、見掛け上の慣性の誤差を表し、その原因は、「τt-rev = τt-LPF」としたことにより、「τt-rev = τt-LPF ≠ τt」となり、慣性模擬制御の実現条件の(2)「τt-rev = τt」が成り立たないためである。
【0033】
フィルタ部9の時定数を小さくすれば、遅延の影響は小さくなるが、ノイズの影響を受けやすくなるため、結局、慣性模擬制御の実現条件(2)は成り立たない。
【0034】
これが、慣性模擬制御の課題であり、フィルタ部9の時定数は維持したままで、トルク補正値τt-revとその真値である供試側トルクτtとを一致させることが求められる。
【0035】
本発明では、トルク補正値τt-revとその真値である供試側トルクτtを一致させるために、トルク推定部8およびトルク推定補正部10を備えることを特徴とする。以下に、その効果について説明する。
【0036】
図3は、トルク推定部8を用いた場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図である。
トルク推定部8では、供試モータ(Mt)1の電流検出値に基づいてトルクを推定する。ここで、電流検出部6の周波数帯域は、1MHz~100MHzであるため、トルク検出部7の帯域である1kHz~10kHzよりも高い。
【0037】
このため、トルク推定値τ
t-obsは、
図3の時刻t
1の箇所に示すように、供試側トルクτ
tを高応答に追従できる。すなわち、時刻t
1において、
図3に示すトルク推定誤差Δτ
t-obsは、同時刻t
1の
図2に示すトルク検出誤差Δτ
t-LPFよりも小さい。
【0038】
一方、電流・トルク換算回路8bは、供試モータ(Mt)1のパラメータを参照する必要があり、それには設定誤差が伴う。故に、
図3に示すトルク推定誤差Δτ
t-obsは、時間が経過してもゼロに収束するとは限らず、速度誤差Δω
rが増加し続ける可能性がある。
【0039】
そこで、トルク推定誤差Δτ
t-obsの影響を抑制するために、トルク推定補正部10は、トルク推定値τ
t-obsを基本値としながらも、トルクフィルタ値τ
t-LPFに漸近する値をトルク補正値τ
t-revとする。これには、
図1に示すように、トルク補正値τ
t-revとトルクフィルタ値τ
t-LPFとの差分を、ゲインKの積分回路10aへ入力し、積分(K/s)した結果を、トルク推定値τ
t-obsにフィードバックすればよい。ここで、積分回路10aは、一巡伝達関数が安定となるような特性を有する関数であれば、置き換え可能である。
【0040】
図4は、トルク推定補正部10を用いた場合のトルクおよび回転速度の波形を示す図である。
トルク推定誤差Δτ
t-revは、時刻t
1では、
図3に示すトルク推定誤差Δτ
t-obsと同じであるが、時刻t
1以降では、トルク補正値τ
t-revが、トルクフィルタ値τ
t-LPFに漸近することに起因して、ゼロに収束する。つまり、
図4に示すトルク推定誤差Δτ
t-revは、
図3に示すトルク推定誤差Δτ
t-obsと比較すれば、時刻t
1以降における定常的な誤差が低減されることになる。また、
図2に示す(
図4と同じ)トルク検出誤差Δτ
t-LPFと比較すれば、時刻t
1における過渡的な誤差が低減される。
【0041】
すなわち、定常時と過渡時のどちらの面においても誤差が低減されていることから、
図4に示す速度誤差Δω
rは、
図2から
図4に示す特性の中で最小となる。
これが、トルク推定値τ
t-obsを基本値としながらも、トルクフィルタ値τ
t-LPFに漸近する値をトルク補正値τ
t-revとした効果である。
【0042】
トルク推定補正部10は、一般化して言えば、電流検出部6およびトルク推定部8によるトルク推定値τt-obsをフィードフォワード側、トルク検出部7およびフィルタ部9によるトルクフィルタ値τt-LPFをフィードバック側とする二自由度制御系である。この二自由度制御系を用いることで、電流検出部6の応答性とトルク検出部7の精度とを両方活用していることになる。これによって、トルク補正値τt-revを供試側トルクτtに高応答かつ高精度に追従させ、慣性模擬精度を高めている。
【0043】
また、電流・トルク換算回路8bへの入力は、供試側の電流制御部(図示省略)におけるd軸電流指令id
*およびq軸電流指令iq
*に置き換えてもよい。この場合には、電流検出部6を省くことが可能となる。
本発明は、上記(a)~(d)のいずれの形態でも実施可能であるが、上記(b)および(d)の電流検出部6を負荷側に設ける場合は、負荷モータ(Mg)2が据え置き型でよいことに起因して、そのパラメータ測定を1回で済ませられる点、また、専用設計によりパラメータを精度よく把握できる点のメリットがある。