(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088161
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】予混合装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20230619BHJP
F23N 5/12 20060101ALI20230619BHJP
F23D 14/62 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/00 S
F23N5/12 Z
F23D14/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202855
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】則竹 克哉
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
3K017
【Fターム(参考)】
3K003FA04
3K003FB03
3K003FC04
3K003GA03
3K005WA01
3K005WB04
3K005WC06
3K017CA04
3K017CB09
3K017CC01
(57)【要約】
【課題】空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、混合気の空気過剰率が適正値になるようにガス供給路に介設した可変絞り弁の開度を調節する制御を行うものにおいて、可変絞り弁の調節に、ヒステリシス量の変化に起因して時間がかかってしまうことを防止できるようにする。
【解決手段】検出空気過剰率が合格範囲から一方、例えば、大きい側に外れている場合は、検出空気過剰率が適正値λmになるまでモータを開度増加方向に単位角度ずつ回転させることを繰り返す。検出空気過剰率が合格範囲から他方、例えば、小さい側に外れている場合は、モータを、空気過剰率が合格範囲から大きい側に一定量外れた値λkになると想定される第1位置P
1まで開度減少方向に高速回転させてから、目標位置Pmの手前の第2位置P
2まで開度増加方向に高速回転させ、その後、開度増加方向に単位角度ずつ回転させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された、ステッピングモータで駆動される可変絞り弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、
制御手段は、ファンの回転数を要求燃焼量に応じて可変する制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が所定の適正値になるように可変絞り弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、
可変絞り弁の開度を増加と減少の一方に変化させるステッピングモータの回転方向を正転方向、可変絞り弁の開度を増加と減少の他方に変化させるステッピングモータの回転方向を逆転方向として、
制御手段は、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が、適正値を含む所定の合格範囲外で、可変絞り弁の開度を前記一方に変化させることで適正値になるような値になっている場合には、ステッピングモータを所定の単位角度だけ正転方向に回転させた状態で、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別することを、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になるまで繰り返す制御を行い、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が、合格範囲外で、可変絞り弁の開度を前記他方に変化させることで適正値になるような値になっている場合には、ステッピングモータを逆転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す逆転方向の変化特性線に基づいて設定される、混合気の空気過剰率が合格範囲から可変絞り弁の開度を前記他方に変化させたときの変化方向に一定量外れた調節基準値になると想定される所定の第1基準回転位置まで、ステッピングモータを逆転方向に回転させ、次に、ステッピングモータを正転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す正転方向の変化特性線に基づいて算出される、混合気の空気過剰率が適正値になると想定される目標回転位置に対し正転方向で所定角度手前の第2基準回転位置まで、ステッピングモータを第1基準回転位置から正転方向に回転させ、その後、ステッピングモータを正転方向に所定の単位角度回転させた状態で、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別することを、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になるまで繰り返す制御を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ステッピングモータを前記第1基準回転位置まで逆転方向に回転させた状態で、前記空気過剰率検出手段により混合気の空気過剰率を検出し、検出された混合気の空気過剰率が前記調節基準値になっていない場合は、前記逆転方向の変化特性線に基づいて第1基準回転位置を混合気の空気過剰率が調節基準値になるように補正する制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1記載の予混合装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の予混合装置であって、前記空気過剰率検出手段は、前記バーナで発生する火炎内に挿入される、フレーム電流値を検出するフレームロッドで構成されるものにおいて、
前記制御手段は、前記ステッピングモータを前記第1基準回転位置まで逆転方向に回転させる際に、前記可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を減少する変化である場合は、フレームロッドで検出されたフレーム電流値が上昇したときに、また、可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を増加する変化である場合は、フレームロッドで検出されたフレーム電流値が下降したときに、異常であると判断してバーナの燃焼を停止するエラー停止を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の予混合装置として、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、燃料ガスの供給量は、二次ガス圧である大気圧とガス吸引部に作用する負圧との差圧に応じて変化する。そして、ガス吸引部に作用する負圧がファン回転数に応じて変化するため、燃料ガスの供給量はファン回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。従って、要求燃焼量に応じてファン回転数を制御することにより、要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナに供給され、混合気の空気過剰率(一次空気量/化学量論的空気量)は一定になる。
【0003】
ところで、国によっては、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。上記従来例のものでは、燃料ガスの発熱量が変動しても、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比は一定であるため、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0004】
そこで、従来、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された、ステッピングモータで駆動される可変絞り弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段とを備え、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が一定になるように可変絞り弁の開度を調節する制御を行うようにした予混合装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ここで、可変絞り弁の開度を増加と減少の一方に変化させるステッピングモータの回転方向を正転方向、可変絞り弁の開度を増加と減少の他方に変化させるステッピングモータの回転方向を逆転方向として、ステッピングモータを正転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す正転方向の変化特性線に対し、ステッピングモータを逆転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す逆転方向の変化特性線は、ステッピングモータから可変絞り弁の弁体までの間の駆動機構のバックラッシュによるヒステリシス量だけ逆転方向にずれる。そして、前回の調節時に可変絞り弁の開度を例えば前記一方に変化させ、今回の調節では、可変絞り弁の開度を前記他方に変化させる必要を生じた場合、ステッピングモータを逆転方向に回転させても、回転角度がヒステリシス量以内であれば可変絞り弁の開度は変化しない。そのため、可変絞り弁の開度調節に要する時間を短縮するには、ステッピングモータを逆転方向にヒステリシス量だけ素早く回転させることが必要になる。
【0006】
但し、ヒステリシス量は、個体差があり、更には、経時的に変化する。そのため、ステッピングモータの逆転方向への回転角度が所定のヒステリシス量に達する前に可変絞り弁の開度が前記他方に変化し始めて、ステッピングモータの逆転方向への回転角度が所定のヒステリシス量に達したときには、可変絞り弁の開度が前記他方に過度に変化してしまうことがある。この場合には、ステッピングモータを正転方向に回転させて、可変絞り弁の開度を前記一方に変化させることが必要になる。そして、ステッピングモータを正転方向に所定のヒステリシス量だけ素早く回転させた時点で、可変絞り弁の開度が前記一方に過度に変化して、可変絞り弁の開度を再度前記他方に変化させることが必要になることもある。その結果、可変絞り弁の開度を前記他方と前記一方とに変化させることが繰り返されて、可変絞り弁の調節に時間がかかってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-179447号公報
【特許文献2】特開2021-25722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、可変絞り弁の調節に、ヒステリシス量の変化に起因して時間がかかってしまうことを防止できるようにした予混合装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された、ステッピングモータで駆動される可変絞り弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、制御手段は、ファンの回転数を要求燃焼量に応じて可変する制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が所定の適正値になるように可変絞り弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、可変絞り弁の開度を増加と減少の一方に変化させるステッピングモータの回転方向を正転方向、可変絞り弁の開度を増加と減少の他方に変化させるステッピングモータの回転方向を逆転方向として、制御手段は、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が、適正値を含む所定の合格範囲外で、可変絞り弁の開度を前記一方に変化させることで適正値になるような値になっている場合には、ステッピングモータを所定の単位角度だけ正転方向に回転させた状態で、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別することを、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になるまで繰り返す制御を行い、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が、合格範囲外で、可変絞り弁の開度を前記他方に変化させることで適正値になるような値になっている場合には、ステッピングモータを逆転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す逆転方向の変化特性線に基づいて設定される、混合気の空気過剰率が合格範囲から可変絞り弁の開度を前記他方に変化させたときの変化方向に一定量外れた調節基準値になると想定される所定の第1基準回転位置まで、ステッピングモータを逆転方向に回転させ、次に、ステッピングモータを正転方向に回転させたときのステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度との関係を表す正転方向の変化特性線に基づいて算出される、混合気の空気過剰率が適正値になると想定される目標回転位置に対し正転方向で所定角度手前の第2基準回転位置まで、ステッピングモータを第1基準回転位置から正転方向に回転させ、その後、ステッピングモータを正転方向に所定の単位角度回転させた状態で、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別することを、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になるまで繰り返す制御を行うように構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が合格範囲から可変絞り弁の開度を前記一方に変化させることで適正値になるような側に外れている場合、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別しつつステッピングモータを所定の単位角度ずつ正転方向に回転させることを繰り返すことにより、可変絞り弁を混合気の空気過剰率が適正値になるように左程時間をかけずに調節できる。また、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が、合格範囲から可変絞り弁の開度を前記他方に変化させることで適正値になるような側に外れている場合、ステッピングモータを第1基準回転位置まで逆転方向に回転させてから第2基準回転位置まで正転方向に回転させることにより、ヒステリシス量の変化で逆転方向へのヒステリシス量分の回転角度が変化しても、この変化は、正転方向へのヒステリシス量分の回転角度の変化で相殺される。そのため、ステッピングモータを第2基準回転位置まで正転方向に回転させたときに、可変絞り弁の開度は、ヒステリシス量の変化に影響されずに、正転方向の変化特性線で規定される第2基準回転位置に対応する開度になり、開度が前記一方に過度に変化することはない。従って、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が合格範囲から可変絞り弁の開度を前記他方に変化させることで適正値になるような側に外れている場合でも、ステッピングモータを第1基準回転位置と第2基準回転位置とに素早く回転させ、その後、空気過剰率検出手段で検出された混合気の空気過剰率が適正値になっているか否かを判別しつつステッピングモータを第2基準回転位置から所定の単位角度ずつ正転方向に回転させることを繰り返すことにより、可変絞り弁を混合気の空気過剰率が適正値になるように左程時間をかけずに調節できる。即ち、可変絞り弁の調節に、ヒステリシス量の変化に起因して時間がかかってしまうことを防止できる。
【0011】
また、本発明において、制御手段は、ステッピングモータを第1基準回転位置まで逆転方向に回転させた状態で、空気過剰率検出手段により混合気の空気過剰率を検出し、検出された混合気の空気過剰率が調節基準値になっていない場合は、逆転方向の変化特性線に基づいて第1基準回転位置を混合気の空気過剰率が調節基準値になるように補正する制御を行うように構成されることが望ましい。これによれば、ステッピングモータを第1基準回転位置に回転させたときの可変絞り弁の開度がヒステリシス量の変化で変化して、混合気の空気過剰率が調節基準値からずれても、第1基準回転位置の補正により、次に、ステッピングモータを第1基準回転位置に回転させたときは、混合気の空気過剰率が調節基準値になり、バーナの燃焼状態が過度に悪化することを防止できる。
【0012】
ところで、空気過剰率検出手段は、バーナで発生する火炎内に挿入される、フレーム電流値を検知するフレームロッドで構成することができる。フレーム電流値は、混合気の空気過剰率が1.0であるときに最大になり、空気過剰率が1.0から増加したり減少したりするのに伴い減少する。そして、可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を減少する変化である場合、混合気の空気過剰率が1.0よりも小さくガスリッチであると、ステッピングモータを第1基準回転位置まで逆転方向に回転させて、可変絞り弁の開度を減少させる際に、混合気の空気過剰率が1.0に向けて増加して、フレーム電流値は上昇する。また、可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を増加する変化である場合、混合気の空気過剰率が1.0よりも小さくガスリッチであると、ステッピングモータを第1基準回転位置まで逆転方向に回転させて、可変絞り弁の開度を増加させる際に、混合気の空気過剰率がより減少して、フレーム電流値は減少する。
【0013】
そこで、空気過剰率検出手段をフレームロッドで構成する場合、制御手段は、ステッピングモータを第1基準回転位置まで逆転方向に回転させる際に、可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を減少する変化である場合は、フレームロッドで検出されたフレーム電流値が上昇したときに、また、可変絞り弁の開度の前記他方への変化が開度を増加する変化である場合は、フレームロッドで検出されたフレーム電流値が下降したときに、異常であると判断してバーナの燃焼を停止するエラー停止を行うように構成されることが望ましい。これによれば、混合気の空気過剰率が1.0よりも小さな場合にエラー停止することができ、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の予混合装置とこの予混合装置から混合気が供給されるバーナを具備する燃焼装置とを示す説明図。
【
図2】混合気の空気過剰率とフレームロッドで検出されるフレーム電流値との関係を示すグラフ。
【
図3】可変絞り弁を駆動するステッピングモータの回転位置と可変絞り弁の開度及び混合気の空気過剰率との関係を示すグラフ。
【
図4】実施形態の予混合装置の制御手段が実行する可変絞り弁の開度調節制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す燃焼装置は、全一次燃焼式のバーナ1と、バーナ1の燃焼面1aから噴出する混合気の燃焼空間を囲う燃焼筐2と、燃焼筐2内に配置した熱交換器3とを備える熱源機である。混合気の燃焼で生ずる燃焼ガスは、熱交換器3を加熱した後に燃焼筐2の端部に接続される排気筒4を介して外部に排出される。また、本発明の実施形態の予混合装置Aにより、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファン5とその下流側の混合気供給路51とを介してバーナ1に供給している。
【0016】
予混合装置Aは、ファン5の上流側の空気供給路6と、燃料ガスを供給するガス供給路7と、ファン5、後述するバタフライ弁62、元弁72及び可変絞り弁74を制御する制御手段たるコントローラ8とを備えている。ガス供給路7の下流端は、空気供給路6に設けられたガス吸引部61に接続されている。ガス吸引部61の上流側に隣接する空気供給路6の部分には、バタフライ弁62を配置した部分よりも小径なベンチュリ部63が設けられている。ベンチュリ部63の下流側に隣接する空気供給路6の部分は、ベンチュリ部63より大径の筒部64で囲われている。そして、ベンチュリ部63の下流端部を筒部64の上流端部に環状の隙間を存して挿入し、この隙間でガス吸引部61を構成している。ガス供給路7の下流端には、筒部64を囲うようにして、ガス吸引部61に連通するガス室71が設けられている。また、ガス供給路7には、上流側から順に、元弁72と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナ73と、ステッピングモータ74aで駆動される可変絞り弁74とが介設されている。
【0017】
ガス吸引部61を介して供給される燃料ガスの量は、二次ガス圧である大気圧とガス吸引部61に作用する負圧との差圧に応じて変化する。ここで、ガス吸引部61に作用する負圧は、ファン5の回転数に応じて変化する。そのため、燃料ガスの供給量はファン5の回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。また、燃料ガスの供給量と空気の供給量との比率は、可変絞り弁74の開度によって変化する。可変絞り弁74の開度を使用するガス種に応じた所定の基準開度にすることで、混合気の空気過剰率が所定の適正値(例えば、1.3)になる。そして、要求燃焼量(設定湯温の温水を出湯するために必要な燃焼量)に応じてファン5の回転数を制御することにより、空気過剰率が適正値で要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナ1に供給される。
【0018】
尚、排気筒4への風の侵入で排気不良を生じないようにするため、即ち、耐風性能を確保するため、ファン5の下限回転数をあまり低く設定することはできない。そして、要求燃焼量がファン5の下限回転数に対応する所定値以下になった場合には、要求燃焼量に対応する量の空気を供給できなくなる。
【0019】
そこで、ガス吸引部61より上流側の空気供給路6の部分に、当該部分の通気抵抗を大小2段に切換えるために、
図1に実線で示す閉じ姿勢と仮想線で示す開き姿勢とに切換えられるバタフライ弁62を配置している。そして、要求燃焼量が上記所定値以下になった場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくし、ファン5の回転数を下限回転数以下にせずに、所定値以下の要求燃焼量に対応する量の空気を供給できるようにしている。但し、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくするだけでは、空気供給路6内の負圧が増加して、燃料ガスの供給量が過大となり、バーナ1に供給される混合気の空気過剰率が適正値を下回ってしまう。そのため、要求燃焼量が比較的小さな場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくすると共に、可変絞り弁74を基準開度から所定開度分だけ絞って、ゼロガバナ73の下流側のガス供給路7の部分の通気抵抗を大きくした小能力状態として、空気過剰率が適正値で比較的小さな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにし、要求燃焼量が比較的大きな場合には、バタフライ弁62を開き姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を小さくすると共に、可変絞り弁74を基準開度まで開いて、ゼロガバナ73の下流側のガス供給路7の部分の通気抵抗を小さくした大能力状態として、空気過剰率が適正値で比較的大きな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにしている。
【0020】
また、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。この場合、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比が一定であると、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0021】
そこで、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段を設けている。本実施形態では、バーナ1で発生する火炎内に挿入される、フレーム電流値を検出するフレームロッド9で空気過剰率検出手段を構成している。フレーム電流値は、
図2に示す如く、混合気の空気過剰率が1.0であるときに最大になり、空気過剰率が1.0から増加したり減少したりするのに伴い減少する。従って、フレームロッド9で検出したフレーム電流値に基づいて混合気の空気過剰率を検出できる。そして、空気過剰率の検出信号をコントローラ8に入力し、検出された空気過剰率が適正値になるように、コントローラ8により可変絞り弁74の開度を調節する制御を行う。
【0022】
以下、可変絞り弁74の開度調節の制御について説明するが、その前に、可変絞り弁74を駆動するステッピングモータ74aの回転位置と可変絞り弁74の開度との関係を表す変化特性について、可変絞り弁74の開度を増加方向に変化させるステッピングモータ74aの回転方向を正転方向、可変絞り弁74の開度を減少方向に変化させるステッピングモータ74aの回転方向を逆転方向として説明する。ステッピングモータ74aを正転方向に回転させたときのステッピングモータ74aの回転位置と可変絞り弁74の開度との関係を表す正転方向の変化特性線は、
図3にLaで示す線になり、ステッピングモータ74aを逆転方向に回転させたときのステッピングモータ74aの回転位置と可変絞り弁74の開度との関係を表す逆転方向の変化特性線は、正転方向の変化特性線に対しステッピングモータ74aから可変絞り弁74の弁体までの間の駆動機構のバックラッシュによるヒステリシス量hs分だけ逆転方向にずれた
図3にLbで示す線になる。また、混合気の空気過剰率は、可変絞り弁74の開度を増加すると減少し、可変絞り弁74の開度を減少すると増加する。
図3に示す例では、混合気の空気過剰率が適正値λmになるときの可変絞り弁74の開度がθmになっている。尚、正転方向及び逆転方向の変化特性線La,Lbの傾きを含む変化特性線La,Lbを特定するための数値はコントローラ8に記憶されている。
【0023】
図4を参照して、可変絞り弁74の開度調節の制御について説明する。この制御では、先ず、STEP1において、フレームロッド9による検出フレーム電流値に基づいて検出される混合気の空気過剰率(以下、検出空気過剰率と記す)λsが適正値λmを含む所定の合格範囲に入っている以下否か、即ち、合格範囲の下限と上限を夫々λml、λmuとして、λml≦λs≦λmuであるか否かを判別する。合格範囲外であれば、STEP2に進んで、検出空気過剰率λsが可変絞り弁74の開度を減少方向に変化させることで適正値λmになる値、即ち、合格範囲の下限λmlを下回っているか否かを判別する。そして、現在のステッピングモータ74aの回転位置と可変絞り弁74の開度とが、夫々、
図3のPnow,θnowであって、検出空気過剰率λsが合格範囲の下限λmlを下回っていれば、STEP3に進む。
【0024】
STEP3では、正転方向の変化特性線Laに基づいて、混合気の空気過剰率が適正値λmになると想定される目標回転位置Pmを、次式、
Pm=Pnow-(λm-λs)/変化特性線の傾き
で算出する。そして、この目標回転位置Pmに対し正転方向で所定量手前の位置、例えば、全閉位置から目標回転位置Pmまでの回転角度の10%手前の位置を第2基準回転位置P2に設定する。尚、混合気の空気過剰率が合格範囲から可変絞り弁74の開度を減少方向に変化させたときの変化方向、即ち、増加方向に一定量外れた調節基準値λk(例えば、1.45)になると想定される所定の第1基準回転位置P1が逆転方向の変化特性線Lbに基づいて予め設定されている。
【0025】
STEP3での処理を終了すると、STEP4に進んで、ステッピングモータ74aの逆転方向への高速回転を開始する。次に、STEP5において、フレームロッド9により検出したフレーム電流値が下降したか否かを判別する。フレーム電流値が下降していれば、STEP6において、ステッピングモータ74aの回転位置が第1基準回転位置P1に到達したか否かを判別し、第1基準回転位置P1に到達するまでSTEP4~6の処理を繰り返す。ここで、混合気の空気過剰率が1.0よりも小さくガスリッチであると、ステッピングモータ74aを第1基準回転位置P1まで逆転方向に回転させて、可変絞り弁74の開度を減少させる際に、混合気の空気過剰率が1.0に向けて増加して、フレーム電流値は上昇する。この場合、STEP5において、フレーム電流値が上昇したと判別されて、STEP7に進み、異常であると判断してバーナの燃焼を停止するエラー停止が行われる。そのため、混合気の空気過剰率が1.0より小さい状態で燃焼を継続することを防止でき、安全である。
【0026】
ステッピングモータ74aを第1基準回転位置P1まで逆転方向に高速回転させると、STEP8に進んで、検出空気過剰率λsが上記調節基準値λkになっているか否かを判別する。λs≠λkであれば、STEP9に進み、第1基準回転位置P1を、逆転方向の変化特性線Lbに基づいて、混合気の空気過剰率が調節基準値λkになるように、次式、
P1=現在のP1-(λk-λs)/変化特性線の傾き
に従って補正し、その後、STEP10に進む。λs=λkであれば、STEP8からSTEP10に直接進む。
【0027】
ここで、ステッピングモータ74aをPnowの位置から第1基準回転位置P1まで逆転方向に回転させる際、回転開始からの回転角度が上記ヒステリシス量hsに達するまでは、可変絞り弁74の開度は変化しない。そして、ヒステリシス量hsは、個体差があり、更に、経時的に変化する。そのため、ステッピングモータ74aの回転位置が第1基準回転位置P1に達したときの可変絞り弁74の開度θ1は、ヒステリシス量の変化で変化し、混合気の空気過剰率が調節基準値λkからずれてしまう。第1基準回転位置P1を上記の如く補正することにより、次に、ステッピングモータ74aを第1基準回転位置P1に回転させたときは、混合気の空気過剰率が調節基準値λkになり、バーナ1の燃焼状態が過度に悪化することを防止できる。
【0028】
STEP10では、第1基準回転位置P1からのステッピングモータ74aの正転方向への高速回転を開始する。そして、STEP11でステッピングモータ74aの回転位置が第2基準回転位置P2に到達したと判別されるまで、ステッピングモータ74aの正転方向の高速回転を継続する。次に、STEP12に進んで、ステッピングモータ74aを所定の単位角度だけ正転方向に回転させた後、STEP13に進んで、検出空気過剰率λsが適正値λmになっているか否かを判別する。そして、STEP12,13の処理をλs=λmになるまで繰り返す。また、STEP2で検出空気過剰率λsが合格範囲の上限λmuを上回っていると判別されたときも、STEP12,13の処理をλs=λmになるまで繰り返す。
【0029】
ここで、ステッピングモータ74aを第1回転基準位置P1まで逆転方向に回転させる際に、ヒステリシス量hsの変化で逆転方向へのヒステリシス量hs分の回転角度が変化しても、この変化は、第2基準回転位置P2まで正転方向に回転させる際の正転方向へのヒステリシス量hs分の回転角度の変化で相殺される。従って、ステッピングモータ74aを第2基準回転位置P2まで正転方向に回転させたときに、可変絞り弁74の開度は、ヒステリシス量hsの変化に影響されずに、正転方向の変化特性線Laで規定される第2基準回転位置P2に対応する開度θ2になる。そのため、可変絞り弁74の開度が増加方向に過度に変化することはない。その後、検出空気過剰率λsが適正値λmになっているか否かを判別しつつステッピングモータ74aを第2基準回転位置P2から所定の単位角度ずつ正転方向に回転させることを繰り返すことにより、可変絞り弁74を混合気の空気過剰率が適正値λmになるように左程時間をかけずに調節できる。即ち、可変絞り弁74の調節に、ヒステリシス量hsの変化に起因して時間がかかってしまうことを防止できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステッピングモータ74aの正転方向と逆転方向を、上記実施形態とは逆に、夫々可変絞り弁74の開度を減少方向に変化させる回転方向と増加方向に変化させる回転方向にしてもよい。この場合は、検出空気過剰率λsが、合格範囲外で、可変絞り弁74の開度を減少方向に変化させることで適正値λmになるような値になっている場合、即ち、合格範囲の下限λmlを下回っている場合にSTEP12に進み、合格範囲の上限λmuを上回っている場合にSTEP3に進む。また、STEP5では、フレーム電流値が上昇したか否かを判別し、フレーム電流値が下降したときに、STEP7に進んでエラー停止させる。
【0031】
また、空気過剰率検出手段を上記実施形態のフレームロッド9以外のもので構成することも可能である。即ち、混合気の空気過剰率に応じて火炎が燃焼面1aに近づいたり離れたりするため、燃焼面1aの裏面温度が混合気の空気過剰率に応じて変化する。従って、燃焼面1aの裏面温度を検出する温度センサで空気過剰率検出手段を構成することも可能である。また、上記実施形態では、ガス吸引部61よりも上流側の空気供給路6の部分にバタフライ弁62を設けているが、バタフライ弁を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
A…予混合装置、1…バーナ、5…ファン、6…空気供給路、61…ガス吸引部、7…ガス供給路、73…ゼロガバナ、74…可変絞り弁、74a…ステッピングモータ、8…コントローラ(制御手段)、9…フレームロッド(空気過剰率検出手段)、La…正転方向の変化特性線、Lb…逆転方向の変化特性線、λm…空気過剰率の適正値、λk…調節基準値、P1…第1基準回転位置、P2…第2基準回転位置、Pm…目標回転位置。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】