(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088171
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、推定プログラム、及び学習モデル生成装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230619BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20230619BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
G01B7/16 R
G01N27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202867
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 創
(72)【発明者】
【氏名】若尾 泰通
【テーマコード(参考)】
2F051
2F063
2G060
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB06
2F051BA07
2F063AA25
2F063BD08
2F063BD17
2F063CA21
2F063CA26
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD03
2F063DD06
2F063EC07
2F063EC25
2G060AA08
2G060AE40
2G060AF07
2G060EA06
2G060EA09
2G060HC10
2G060HC15
(57)【要約】
【課題】特殊な検出装置を用いることなく、導電性を有する柔軟材料を備えた搬送部に設けられた補助部材の電気特性を利用して、外部物体と搬送部との接触状態を推定する。
【解決手段】推定装置(1A)は、搬送物を搬送する搬送部に設けられた補助部材であって、導電性を有し、かつ与えられた刺激の変化に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた補助部材の柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を用いて、柔軟材料に刺激を与えた際の時系列の電気特性と、柔軟材料に刺激を与える補助部材に対する外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、時系列の電気特性を入力とし、接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、検出部で検出された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する推定部(10)と、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部と、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記検出部で検出された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する推定部と、
を含む推定装置。
【請求項2】
前記電気特性は、体積抵抗であり、
前記補助部材は、柔軟性を有する部材を含み、
前記接触状態は、前記補助部材への前記外部物体による圧力刺激を付与する状態を含み、
前記学習モデルは、検出された電気特性に対応する前記外部物体による前記圧力刺激を付与する状態を示す情報を前記接触状態情報として出力するように学習される
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記補助部材は、柔軟性を有するゴム部材の少なくとも一部に導電性が付与されたゴム材料、若しくは、繊維状及び網目状の少なくとも一方の骨格を有する構造、又は内部に微小な空気泡が複数散在する構造のウレタン材の少なくとも一部に導電性が付与されたウレタン材料を含む
請求項1又は請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記ウレタン材料は、外部に向かって予め定めた厚みを有し、
前記検出部は、前記厚みを有する前記ウレタン材料の変形が予め定めた閾値を超える変形量のときに、前記電気特性を検出する
請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記学習モデルは、前記柔軟材料をリザーバとして当該リザーバを用いたリザーバコンピューティングによるネットワークを用いて学習させることで生成されたモデルを含む
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定部の推定結果を出力する出力部をさらに備える
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記出力部は、推定結果の接触状態に対応する予め定めた前記搬送部の搬送状態になるように前記搬送部の搬送制御に関する制御情報を出力する
請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
コンピュータが
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部から前記電気特性を取得し、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記取得された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する
推定方法。
【請求項9】
コンピュータに
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部から前記電気特性を取得し、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記取得された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する
処理を実行させるための推定プログラム。
【請求項10】
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出部で検出した外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報と、を取得する取得部と、
取得した前記時系列の電気特性と、前記接触状態情報とを学習用データとして、前記時系列の電気特性を入力とし、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態情報を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含む学習モデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置、推定方法、推定プログラム、及び学習モデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物体に生じる形状変化を検出し、当該検出結果を用いて物体に変形を与える人や物の状態を推定することが行われている。物体に生じる形状変化を検出する側面では、物体の変形を阻害せずに変形を検出することは困難である。また、金属変形等の剛体の検出に用いられる歪センサは物品に利用困難なため、物体の変形を検出するためには、特殊な検出装置が要求される。例えば、カメラによる物体の変位と振動を測定して、変形画像を取得し、変形量を抽出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、光の透過量から変形量を推定する柔軟触覚センサに関する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/029905号
【特許文献2】特開2013-101096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送物を搬送する場合、周囲に障害物等の物体が存在する場合、搬送物を保護する観点から、障害物等の物体に対する衝突による衝撃を低減したり衝突を回避することが好ましい。例えば、障害物等の物体に対する衝突により、搬送物が崩れたり、移動したりする場合がある。従って、搬送物の搬送中は周囲の外部物体との接触に関する対応が重要である。
【0005】
しかしながら、搬送中に周囲の外部物体を検出する場合、カメラ及び画像解析等を含むシステムは、大規模なものとなり、装置の大型化を招くので好ましくはない。また、外部物体から与えられる衝撃等により生じる形状変化を検出する場合も、カメラ及び画像解析等を含むシステムは、大規模なものとなり、装置の大型化を招くので好ましくはない。さらに、カメラを用いた光学手法ではカメラに撮像されない隠れた部分の計測は出来ない。従って、外部物体の変形による検出を搬送物の搬送に適用するのには改善の余地がある。
【0006】
本開示は、特殊な検出装置を用いることなく、導電性を有する柔軟材料を備えた搬送部に設けられた補助部材の電気特性を利用して、外部物体と搬送部との接触状態を推定可能な推定装置、推定方法、推定プログラム、及び学習モデル生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1態様は、
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部と、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記検出部で検出された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する推定部と、
を含む推定装置である。
【0008】
第2態様は、第1態様の推定装置において、
前記電気特性は、体積抵抗であり、
前記補助部材は、柔軟性を有する部材を含み、
前記接触状態は、前記補助部材への前記外部物体による圧力刺激を付与する状態を含み、
前記学習モデルは、検出された電気特性に対応する前記外部物体による前記圧力刺激を付与する状態を示す情報を前記接触状態情報として出力するように学習される。
【0009】
第3態様は、第1態様又は第2態様の推定装置において、
前記補助部材は、柔軟性を有するゴム部材の少なくとも一部に導電性が付与されたゴム材料、若しくは、繊維状及び網目状の少なくとも一方の骨格を有する構造、又は内部に微小な空気泡が複数散在する構造のウレタン材の少なくとも一部に導電性が付与されたウレタン材料を含む。
【0010】
第4態様は、第3態様の推定装置において、
前記ウレタン材料は、外部に向かって予め定めた厚みを有し、
前記検出部は、前記厚みを有する前記ウレタン材料の変形が予め定めた閾値を超える変形量のときに、前記電気特性を検出する。
【0011】
第5態様は、第1態様から第4態様の何れか1態様の推定装置において、
前記学習モデルは、前記柔軟材料をリザーバとして当該リザーバを用いたリザーバコンピューティングによるネットワークを用いて学習させることで生成されたモデルを含む。
【0012】
第6態様は、第1態様から第5態様の何れか1態様の推定装置において、
前記推定部の推定結果を出力する出力部をさらに備える。
【0013】
第7態様は、第6態様の推定装置において、
前記出力部は、推定結果の接触状態に対応する予め定めた前記搬送部の搬送状態になるように前記搬送部の搬送制御に関する制御情報を出力する。
【0014】
第8態様は、
コンピュータが
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部から前記電気特性を取得し、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記取得された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する
推定方法である。
【0015】
第9態様は、
コンピュータに
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出する検出部から前記電気特性を取得し、
外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報とを学習用データとして用いて、前記時系列の電気特性を入力とし、前記接触状態情報を出力するように学習された学習モデルに対して、前記取得された時系列の電気特性を入力し、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態を示す接触状態情報を推定する
処理を実行させるための推定プログラムである。
【0016】
第10態様は、
搬送物を搬送する搬送部の外部に備えられた補助部材であって、導電性を有し、かつ変形に応じて電気特性が変化する柔軟材料を備えた前記補助部材の前記柔軟材料に予め定められた複数の検出点の間の電気特性を検出部で検出した外部物体の接触により変形する前記柔軟材料の時系列の電気特性と、前記柔軟材料に変形を与える前記外部物体との接触状態を示す接触状態情報と、を取得する取得部と、
取得した前記時系列の電気特性と、前記接触状態情報とを学習用データとして、前記時系列の電気特性を入力とし、入力した時系列の電気特性に対応する接触状態情報を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含む学習モデル生成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、特殊な検出装置を用いることなく、導電性を有する柔軟材料を備えた搬送部に設けられた補助部材の電気特性を利用して、外部物体と搬送部との接触状態を推定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る推定装置の構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る導電性ウレタンの配置を示す図である。
【
図3】実施形態に係る学習モデル生成装置の概念構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係る学習処理部の機能構成を示す図である。
【
図5】実施形態に係る学習処理部の他の機能構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係る推定装置の電気的な構成を示す図である。
【
図7】実施形態に係る推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る搬送物及び搬送部を含む搬送体の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る外部物体と搬送体との接触状態に関する概念図である。
【
図10】実施形態に係る接触状態推定装置の構成の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る接触状態に関係する物理量を測定する測定装置を示す図である。
【
図12】実施形態に係る導電性ウレタンの電気特性の概念の一例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る学習処理の流れの一例を示す図である。
【
図14】実施形態に係る接触状態の推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図15】実施形態に係る接触状態推定部の変形例を示す図である。
【
図16】実施形態に係る無線通信の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。また、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
なお、本開示において人物とは、対象物に対して物理量により刺激を与えることが可能な人体及び物体の少なくとも一方を含む概念である。以下の説明では、人体及び物体の少なくとも一方を区別することなく、ヒトとモノとを含む概念として人物と総称して説明する。すなわち、人体及び物体のそれぞれの単体、及び人体と物体の組み合わせた組合せ体を総称して人物と称する。
【0021】
まず、
図1から
図7を参照して、本開示の技術を適用する導電性が付与された柔軟材料、及び当該柔軟材料を用いて、柔軟材料に対する付与側の状態を推定する状態推定処理を説明する。
【0022】
<柔軟材料>
本開示において「柔軟材料」とは、少なくとも一部が撓み等のように変形可能な材料を含む概念であり、ゴム材料等の柔らかい弾性体、繊維状及び網目状の少なくとも一方の骨格を有する構造体、及び内部に微小な空気泡が複数散在する構造体を含む。これらの構造体の一例には、ウレタン材などの高分子材料が挙げられる。また、本開示では、導電性が付与された柔軟材料を用いる。「導電性が付与された柔軟材料」とは、導電性を有する材料を含む概念であり、導電性を付与するために導電材を柔軟材料に付与した材料、及び柔軟材料が導電性を有する材料を含む。導電性を付与する柔軟材料はウレタン材などの高分子材料が好適である。以下の説明では、導電性が付与された柔軟材料の一例として、ウレタン材の全部または一部に導電材料を配合及び浸潤(含浸ともいう)等により形成させた部材を、「導電性ウレタン」と称して説明する。導電性ウレタンは、導電材料を配合と浸潤(含浸)との何れかの方法で形成可能であり、導電材料の配合又は浸潤(含浸)で形成可能で、また導電材料の配合と浸潤(含浸)とを組み合わせて形成可能である。例えば、浸潤(含浸)による導電性ウレタンが、配合による導電性ウレタン22より導電性が高い場合には、浸潤(含浸)により導電性ウレタンを形成することが好ましい。
【0023】
導電性ウレタンは、与えられた物理量に応じて電気特性が変化する機能を有する。電気特性が変化する機能を生じさせる物理量の一例には、撓み等のように構造を変形させる圧力による刺激(以下、圧力刺激という。)を示す圧力値による刺激値が挙げられる。なお、圧力刺激は、所定部位への圧力及び所定範囲の圧力の分布による圧力付与を含む。また、当該物理量の他例には、含水率及び水分付与等によって素材の性質を変化(変質)させる刺激(以下、素材刺激という。)を示す水分量等の刺激値が挙げられる。導電性ウレタンは、与えられた物理量に応じて電気特性が変化する。この電気特性を表す物理量の一例には、電気抵抗値が挙げられる。また、他例には、電圧値、又は電流値が挙げられる。
【0024】
導電性ウレタンは、所定の体積を有する柔軟材料に導電性を与えることで、与えられた物理量に応じた電気特性(すなわち電気抵抗値の変化)が現れ、その電気抵抗値は、導電性ウレタンの体積抵抗値と捉えることが可能である。導電性ウレタンは、電気経路が複雑に連携し、例えば、変形に応じて電気経路が伸縮したり膨縮したりする。また、電気経路が一時的に切断される挙動、及び以前と異なる接続が生じる挙動を示す場合もある。従って、導電性ウレタンは、所定距離を隔てた位置(例えば電極が配置された検出点の位置)の間では、与えられた物理量による刺激(圧力刺激及び素材刺激)の大きさや分布に応じた変形や変質で異なる電気特性を有する挙動を示す。このため、導電性ウレタンに与えられた物理量による刺激の大きさや分布に応じて電気特性が変化する。
【0025】
なお、導電性ウレタンを用いることで、変形及び変質についての対象箇所に電極等の検出点を設ける必要はない。導電性ウレタンに物理量による刺激が与えられる箇所を挟む任意の少なくとも2箇所に電極等の検出点を設ければよい(例えば
図1)。
【0026】
また、導電性ウレタンの電気特性の検出精度を向上するため、2個の検出点より多くの検出点を用いてもよい。また、本開示の導電性ウレタンは、
図1に示す導電性ウレタン22を1導電性ウレタン片とし、複数の導電性ウレタン片を配列してなる導電性ウレタン群で形成してもよい。この場合、複数の導電性ウレタン片毎に電気特性を検出してもよいし、複数の導電性ウレタン片の電気特性を合成して検出してもよい。複数の導電性ウレタン片毎に電気特性を検出する場合、配置部位毎(例えば検出セット#1~#n)に電気抵抗値等の電気特性を検出できる。また、他例としては、導電性ウレタン22上における検出範囲を分割して分割した検出範囲毎に検出点を設けて検出範囲毎に電気特性を検出してもよい。
【0027】
<推定装置>
次に、導電性ウレタンを用いて、当該導電性ウレタンに対する付与側の状態を推定する推定装置の一例を説明する。
【0028】
図1に、付与側の状態を推定する推定処理を実行可能な推定装置1の構成の一例を示す。推定装置1は、推定部5を備え、導電性ウレタン22における電気特性が入力されるように対象物2に接続されている。推定装置1では、対象物2に含まれる導電性ウレタン22に対する付与側の状態が推定される。推定装置1は、後述する処理を実行する実行装置としてのCPUを備えたコンピュータによって実現可能である。
【0029】
上述した導電性ウレタンの変形及び変質は、導電性ウレタンに対して時系列に与えられた物理量で生じる。この時系列に与えられる物理量は、付与側の状態に依存する。従って、時系列に変化する導電性ウレタンの電気特性は、導電性ウレタンに与えられた物理量の付与側の状態に対応する。例えば、導電性ウレタンを変形させる圧力刺激または導電性ウレタンを変質させる素材刺激が与えられる場合、時系列に変化する導電性ウレタンの電気特性は、圧力刺激の位置及び分布、並びに大きさを示す付与側の状態に対応する。よって、時系列に変化する導電性ウレタンの電気特性から導電性ウレタンに対する付与側の状態を推定することが可能である。
【0030】
推定装置1では、後述する推定処理によって、学習済みの学習モデル51を用いて、未知の付与側の状態を推定し、出力する。これにより、特殊な装置や大型の装置を用いたり対象物に含まれる導電性ウレタン22の変形及び変質を直接計測することなく、対象物2に対する付与側の状態を同定することが可能となる。学習モデル51は、対象物2に対する付与側の状態と、対象物2の電気特性(すなわち、対象物2に配置された導電性ウレタン22の電気抵抗値等の電気特性)とを入力として学習される。学習モデル51の学習については後述する。
【0031】
なお、導電性ウレタン22は、柔軟性を有する部材21に配置して対象物2を構成することが可能である(
図2)。導電性ウレタン22が配置された部材21により構成される対象物2は、電気特性検出部76を含む。導電性ウレタン22は、部材21の少なくとも一部に配置すればよく、内部に配置してもよいし外部に配置してもよい。また、導電性ウレタンは、導電性ウレタンへの付与側の状態を推定可能に配置すればよく、例えば、人物に直接的又は間接的、或いはその両方で接触可能に配置すればよい。
【0032】
図2に、対象物2における導電性ウレタン22の配置例を示す。対象物2のA-A断面を対象物断面2-1として示すように、導電性ウレタン22は、部材21の内部を全て満たすように形成しても良い。また、対象物断面2-2に示すように、導電性ウレタン22は、部材21の内部における一方側(表面側)に形成しても良く、対象物断面2-3に示すように、部材21の内部における他方側(裏面側)に導電性ウレタン22を形成しても良い。さらに、対象物断面2-4に示すように、部材21の内部の一部に導電性ウレタン22を形成しても良い。また、対象物断面2-5に示すように、導電性ウレタン22は、部材21の表面側の外側に分離して配置しても良く、対象物断面2-6に示すように、他方側(裏面側)の外部に配置しても良い。導電性ウレタン22を部材21の外部に配置する場合、導電性ウレタン22と部材21とを積層するのみでもよく、導電性ウレタン22と部材21とを接着等により一体化してもよい。なお、導電性ウレタン22を部材21の外部に配置する場合であっても、導電性ウレタン22が導電性を有するウレタン部材であるため、部材21の柔軟性は阻害されない。
【0033】
図1に示すように、導電性ウレタン22は、距離を隔てて配置された少なくとも2個の検出点75からの信号によって、導電性ウレタン22の電気特性(すなわち、電気抵抗値である体積抵抗値)を検出する。
図1の例では、導電性ウレタン22上で対角位置に配置された2個の検出点75からの信号により電気特性(時系列の電気抵抗値)を検出する検出セット#1が示されている。なお、検出点75の個数及び配置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、導電性ウレタン22の電気特性を検出可能な位置であれば3個以上の個数でもよく何れの位置でもよい。なお、導電性ウレタン22の電気特性は、電気特性(例えば、電気抵抗値である体積抵抗値)を検出する電気特性検出部76を検出点75に接続し、その出力を用いればよい。
【0034】
本実施形態では、センサとして導電性ウレタン22を用いるため、例えば、人物が介在する場合に従来のセンサに比べて人物に与える違和感が極めて少ない。このため、計測中に人物に関する付与側の状態を害することが無く、計測と付与側の状態推定を同時に行うことが可能となる。これは計測と付与側の状態推定を別個に行っていた従来のセンサに比べて利点となり、とりわけ時系列変化を追う長時間の計測評価による推定においては、そのメリットは大きい。
【0035】
推定部5は、対象物2に接続され、導電性ウレタン22の変形及び変質の少なくとも一方に応じて変化する電気特性に基づき、学習モデル51を用いて、付与側の状態を推定する機能部である。具体的には、推定部5には、導電性ウレタン22における電気抵抗の大きさ(電気抵抗値等)を表す時系列の入力データ4が入力される。入力データ4は、対象物2に対する付与側の状態、例えば対象物2に接触した人物の姿勢や動き等の人物の挙動に関する状態を示す状態データ3に対応する。例えば、人物が対象物2に接触する際、姿勢等の所定の状態で接触し、当該状態に対応して、対象物2を構成する導電性ウレタン22には刺激(圧力刺激及び素材刺激の少なくとも一方)が物理量として与えられ、導電性ウレタン22の電気特性が変化する。従って、入力データ4により示される時系列に変化する導電性ウレタン22の電気特性は、対象物2、すなわち、導電性ウレタン22に対する付与側の状態に対応するものとなる。また、推定部5は、学習済みの学習モデル51を用いた推定結果として、時系列に変化する導電性ウレタン22の電気特性に対応する付与側の状態を表す出力データ6を出力する。
【0036】
学習モデル51は、物理量として与えられる刺激(圧力刺激及び素材刺激)により変化する導電性ウレタン22の電気抵抗(入力データ4)から、付与側の状態を表す出力データ6を導出する学習を済ませたモデルである。学習モデル51は、例えば、学習済みのニューラルネットワークを規定するモデルであり、ニューラルネットワークを構成するノード(ニューロン)同士の間の結合の重み(強度)の情報の集合として表現される。
【0037】
<学習処理>
次に、学習モデル51を生成する学習処理について説明する。
図3に、学習モデル51を生成する学習モデル生成装置の概念構成を示す。学習モデル生成装置は、学習処理部52を備えている。学習モデル生成装置は、図示しないCPUを備えたコンピュータを含んで構成可能であり、CPUにより実行される学習データ収集処理及び学習モデル生成処理によって学習処理部52として実行されて学習モデル51を生成する。
【0038】
<学習データ収集処理>
学習処理部52は、学習データ収集処理において、付与側の状態を表す状態データ3をラベルとして導電性ウレタン22における電気特性(例えば電気抵抗値)を時系列に測定した大量の入力データ4を学習データとして収集する。従って、学習データは、電気特性を示す入力データ4と、その入力データ4に対応する付与側の状態を示す状態データ3と、のセットを大量に含む。
【0039】
具体的には、学習データ収集処理では、対象物2における状態(すなわち、導電性ウレタン22に対する付与側の状態)が形成された際の付与側の状態に応じた刺激(圧力刺激及び素材刺激)により変化する電気特性(例えば電気抵抗値)を時系列に取得する。次に、取得した時系列の電気特性(入力データ4)に状態データ3をラベルとして付与し、状態データ3と入力データ4とのセットが予め定めた所定数、又は予め定めた所定時間に達するまで処理を繰り返す。これらの付与側の状態を示す状態データ3と、付与側の状態毎に取得した時系列の導電性ウレタン22の電気特性(入力データ4)とのセットが学習データとなる。なお、学習データにおける状態データ3は、後述する学習処理において推定結果が正解である付与側の状態を示す出力データ6として扱われるように図示しないメモリに記憶される。
【0040】
なお、学習データは、導電性ウレタン22の電気抵抗値(入力データ4)の各々に測定時刻を示す情報を付与することで時系列情報を対応付けてもよい。この場合、付与側の状態として定まる期間について、導電性ウレタン22における時系列な電気抵抗値のセットに測定時刻を示す情報を付与して時系列情報を対応付けてもよい。
【0041】
上述した学習データの一例を次に表で示す。表1は、導電性ウレタン22に対する付与側の状態に関する学習データとして、時系列の電気抵抗値データ(r)と付与側の状態を示す状態データ(R)とを対応付けたデータセットの一例である。
【0042】
【0043】
なお、導電性ウレタン22で検出される電気特性(時系列の電気抵抗値データによる時間特性)は、導電性ウレタン22に対する付与側の状態に関する特徴パターンとして捉えることが可能である。すなわち、導電性ウレタン22に対する付与側の状態によって、導電性ウレタン22に対して異なる刺激が時系列に与えられる。従って、所定の時間内における時系列の電気特性は、付与側の状態に対して特徴的な電気特性として表れると考えられる。よって、導電性ウレタン22で検出される電気特性(時系列の電気抵抗値データによる時間特性)に示されるパターン(例えば電気特性における時系列の電気抵抗値の分布形状)は、付与側の状態に対応し、後述する学習処理において有効に機能する。
【0044】
<学習モデル生成処理>
次に、学習モデル生成処理について説明する。
図3に示す学習モデル生成装置は、学習処理部52における学習モデル生成処理によって、上述した学習データを用いて学習モデル51を生成する。
【0045】
図4は、学習処理部52の機能構成、すなわち学習処理部52で実行される学習モデル生成処理に関して、図示しないCPUの機能構成を示す図である。学習処理部52の図示しないCPUは、生成器54及び演算器56の機能部として動作する。生成器54は、入力である時系列に取得された電気抵抗値の前後関係を考慮して出力を生成する機能を有する。
【0046】
学習処理部52は、学習用データとして、上述した入力データ4(例えば、電気抵抗値)と、導電性ウレタン22に刺激を与えた付与側の状態を示す状態データ3である出力データ6とのセットを図示しないメモリに多数保持している。
【0047】
生成器54は、入力層540、中間層542、および出力層544を含んで、公知のニューラルネットワーク(NN:Neural Network)を構成する。ニューラルネットワーク自体は公知の技術であるため詳細な説明は省略するが、中間層542は、ノード間結合およびフィードバック結合を有するノード群(ニューロン群)を多数含む。その中間層542には、入力層540からのデータが入力され、中間層542の演算結果のデータは、出力層544へ出力される。
【0048】
生成器54は、入力された入力データ4(例えば、電気抵抗値)から付与側の状態を表すデータ又は付与側の状態に近いデータとしての生成出力データ6Aを生成するニューラルネットワークである。生成出力データ6Aは、入力データ4から導電性ウレタン22に刺激が与えられた付与側の状態を推定したデータである。生成器54は、時系列に入力された入力データ4から、付与側の状態に近い状態を示す生成出力データを生成する。生成器54は、多数の入力データ4を用いて学習することで、対象物2すなわち導電性ウレタン22に刺激が与えられた人物等の付与側の状態に近い生成出力データ6Aを生成できるようになる。他の側面では、時系列に入力された入力データ4である電気特性をパターンとして捉え、当該パターンを学習することで、対象物2すなわち導電性ウレタン22に刺激が与えられた人物等の付与側の状態に近い生成出力データ6Aを生成できるようになる。
【0049】
演算器56は、生成出力データ6Aと、学習データの出力データ6とを比較し、その比較結果の誤差を演算する演算器である。学習処理部52は、生成出力データ6A、および学習データの出力データ6を演算器56に入力する。これに応じて、演算器56は、生成出力データ6Aと、学習データの出力データ6との誤差を演算し、その演算結果を示す信号を出力する。
【0050】
学習処理部52は、演算器56で演算された誤差に基づいて、ノード間の結合の重みパラメータをチューニングする、生成器54の学習を行う。具体的には、生成器54における入力層540と中間層542とのノード間の結合の重みパラメータ、中間層542内のノード間の結合の重みパラメータ、および中間層542と出力層544とのノード間の結合の重みパラメータの各々を例えば勾配降下法や誤差逆伝搬法等の手法を用いて、生成器54にフィードバックする。すなわち、学習データの出力データ6を目標として、生成出力データ6Aと学習データの出力データ6との誤差を最小化するように全てのノード間の結合を最適化する。
【0051】
なお、生成器54は、時系列入力の前後関係を考慮して出力を生成する機能を有する再帰型ニューラルネットワークを用いてもよく、他の手法を用いてもよい。
【0052】
学習処理部52は、学習モデル生成処理によって、上述した学習データを用いて学習モデル51を生成する。学習モデル51は、学習結果のノード間の結合の重みパラメータ(重み又は強度)の情報の集合として表現され、図示しないメモリに記憶される。
【0053】
具体的には、学習処理部52は、次の手順により学習モデル生成処理を実行する。第1学習処理では、時系列に測定した結果の学習データである、付与側の状態を示す情報をラベルとした入力データ4(電気特性)を取得する。第2学習処理では、時系列に測定した結果の学習データを用いて学習モデル51を生成する。すなわち、上記のようにして多数の学習データを用いて学習した学習結果のノード間の結合の重みパラメータ(重み又は強度)の情報の集合を得る。そして、第3学習処理では、学習結果のノード間の結合の重みパラメータ(重み又は強度)の情報の集合として表現されるデータを学習モデル51として記憶する。
【0054】
そして、上記推定装置1では、学習済みの生成器54(すなわち、学習結果のノード間の結合の重みパラメータの情報の集合として表現されるデータ)を学習モデル51として用いる。十分に学習した学習モデル51を用いれば、対象物2、すなわち導電性ウレタン22の時系列の電気特性(例えば、時系列に変化する電気抵抗値の特性)から付与側の状態を同定することも不可能ではない。
【0055】
<PRC>
ところで、導電性ウレタン22は、上述したように電気経路が複雑に連携し、電気経路の伸縮、膨縮、一時的な切断、及び新たな接続等の変化(変形)、並びに素材の性質の変化(変質)に応じた挙動を示す。結果的に、導電性ウレタン22は、与えられた刺激(例えば圧力刺激)に応じて異なる電気特性を有する挙動を示す。このことは、導電性ウレタン22を、導電性ウレタン22の変形に関するデータを貯留するリザーバとして扱うことが可能である。すなわち、推定装置1は、物理的なリザーバコンピューティング(PRC:Physical Reservoir Computing)と呼ばれるネットワークモデル(以下、PRCNという。)に、導電性ウレタン22を適用することが可能である。PRCおよびPRCN自体は公知の技術であるため、詳細な説明を省略するが、PRC、及びPRCNは、導電性ウレタン22の変形や変質に関する情報の推定に好適である。
【0056】
図5に、PRCNを適用した学習処理部52の機能構成の一例を示す。PRCNを適用した学習処理部52は、入力リザバ層541と、推定層545とを含む。入力リザバ層541は、対象物2に含まれる導電性ウレタン22が対応する。すなわち、PRCNを適用した学習処理部52では、導電性ウレタン22を含む対象物2を、導電性ウレタン22を含む対象物2の変形及び変質に関するデータを貯留するリザーバとして扱って学習する。導電性ウレタン22は、多様な刺激の各々に応じた電気特性(電気抵抗値)となり、電気抵抗値を入力する入力層として機能し、また、導電性ウレタン22の変形及び変質に関するデータを貯留するリザーバ層として機能する。導電性ウレタン22は、人物等の付与側の状態により与えられた刺激に応じて異なる電気特性(入力データ4)を出力するので、推定層545で、与えられた導電性ウレタン22の電気抵抗値から未知の付与側の状態を推定することが可能である。従って、PRCNを適用した学習処理部52における学習処理では、推定層545を学習すればよい。
【0057】
<推定装置の構成>
次に、上述した推定装置1の具体的な構成の一例についてさらに説明する。
図6に、推定装置1の電気的な構成の一例を示す。
図6に示す推定装置1は、上述した各種機能を実現する処理を実行する実行装置としてのコンピュータを含んで構成したものである。上述の推定装置1は、コンピュータに上述の各機能を表すプログラムを実行させることにより実現可能である。
【0058】
推定装置1として機能するコンピュータは、コンピュータ本体100を備えている。コンピュータ本体100は、CPU102、揮発性メモリ等のRAM104、ROM106、ハードディスク装置(HDD)等の補助記憶装置108、及び入出力インターフェース(I/O)110を備えている。これらのCPU102、RAM104、ROM106、補助記憶装置108、及び入出力I/O110は、相互にデータ及びコマンドを授受可能にバス112を介して接続された構成である。また、入出力I/O110には、外部装置と通信するための通信部114、ディスプレイやキーボード等の操作表示部116、及び検出部118が接続されている。検出部118は、導電性ウレタン22を含む対象物2から、入力データ4(時系列の電気抵抗値等の電気特性)を取得する機能する。すなわち、検出部118は、導電性ウレタン22が配置された対象物2を含み、かつ導電性ウレタン22における検出点75に接続された電気特性検出部76から入力データ4を取得することが可能である。なお検出部118は通信部114を介して接続してもよい。
【0059】
補助記憶装置108には、コンピュータ本体100を本開示の推定装置の一例として推定装置1として機能させるための制御プログラム108Pが記憶される。CPU102は、制御プログラム108Pを補助記憶装置108から読み出してRAM104に展開して処理を実行する。これにより、制御プログラム108Pを実行したコンピュータ本体100は、推定装置1として動作する。
【0060】
なお、補助記憶装置108には、学習モデル51を含む学習モデル108M、及び各種データを含むデータ108Dが記憶される。制御プログラム108Pは、CD-ROM等の記録媒体により提供するようにしても良い。
【0061】
<推定処理>
次に、コンピュータにより実現された推定装置1における推定処理についてさらに説明する。
図7に、コンピュータ本体100で実行される制御プログラム108Pによる推定処理の流れの一例を示す。
図7に示す推定処理は、コンピュータ本体100に電源投入されると、CPU102により実行される。CPU102は、制御プログラム108Pを補助記憶装置108から読み出し、RAM104に展開して処理を実行する。
【0062】
まず、CPU102は、補助記憶装置108の学習モデル108Mから学習モデル51を読み出し、RAM104に展開することで、学習モデル51を取得する(ステップS200)。具体的には、学習モデル51として表現された重みパラメータによるノード間の結合となるネットワークモデル(
図4、
図5参照)を、RAM104に展開することによって、重みパラメータによるノード間の結合が実現された学習モデル51が構築される。
【0063】
次に、CPU102は、導電性ウレタン22に与えられた刺激による付与側の状態を推定する対象となる未知の入力データ4(電気特性)を、検出部118を介して時系列に取得する(ステップS202)。次に、CPU102は、学習モデル51を用いて、取得済みの入力データ4に対応する出力データ6(未知の付与側の状態)を推定する(ステップS204)。そして、CPU102は、推定結果の出力データ6(付与側の状態)を、通信部114を介して出力し(ステップS206)、本処理ルーチンを終了する。
【0064】
このように、推定装置1によれば、導電性ウレタン22の電気抵抗値から未知の付与側の状態を推定可能である。具体的には、推定装置1では、付与側の状態により導電性ウレタン22に与えられた刺激に応じて変化する入力データ4(電気特性)から、人物等の付与側の状態を推定することが可能となる。すなわち、特殊な装置や大型の装置を用いたり柔軟部材の変形を直接計測することなく、人物等の付与側の状態を推定することが可能となる。
【0065】
ところで、搬送物を搬送する場合、搬送物を保護する観点から、障害物等の物体に対する衝突による衝撃を低減したり衝突を回避することが好ましい。しかし、カメラ及び画像解析手法を用いて被衝突側である搬送側の形状変形を検出するシステムは、大規模な装置となり好ましくはない。そこで、本実施形態では、特殊な検出装置を用いることなく、上述した導電性ウレタンを移動体等の搬送部に設け、当該導電性ウレタンの電気特性を利用して、搬送側の被衝突側で接触状態を推定する。この接触状態は、上述した圧力刺激を与える状態を適用する。
【0066】
本実施形態は、上述した対象物2として、移動体等の搬送部に設けて、搬送物の搬送を補助する補助部材に本開示の技術を適用した一例である。なお、以降では、説明を簡単にするため、部材21の全部に導電性ウレタン22を配置し、対象物2を導電性ウレタン22で形成した一例を説明する(
図2の対象物断面2-1)。しかし、導電性ウレタン22は部材21の全部に配置することに限定されず、上述した何れの配置でも同様に本開示の技術が適用可能であることは勿論である。
【0067】
本実施形態では「接触」及び「接触状態」とは、搬送部で搬送物を搬送する際に、導電性ウレタン22に対して圧力刺激を与える外部物体と、搬送物を搬送する搬送部との間で少なくとも接触する状態を含む概念である。圧力刺激を与える接触状態は、衝突状態を含む。衝突状態とは、搬送部に外部物体が接触した際に、当該搬送部が変形する変形量が予め定めた変形量を超えた圧力刺激を与える状態である。
【0068】
<接触状態推定装置>
次に、接触状態推定装置の一例を説明する。接触状態推定装置は、導電性ウレタン22を用いて搬送物の接触状態を推定する。
【0069】
図8に、搬送物の接触状態を推定する搬送物を含む搬送体を搬送体9として示す。
図8では、回転駆動部91Aの回転駆動により搬送物92を搬送する搬送部91の周囲に導電性ウレタン22を備えた一例を示す。なお、
図8では、側面から見た搬送体9を搬送体側面90Aとして示し、上面から見た搬送体9を搬送体上面90Bとして示す。なお、
図8では、搬送部91上に搬送物92を載置した場合を示しているが、搬送物92は搬送パレットに収容したり載置したりして1以上の複数の搬送物92を載置して構成してもよい。
【0070】
ところで、外部物体と搬送体9とが接触する場合、接触したことを示す接触状態を検知することは重要である。これは、外部物体と搬送体9との接触状態に応じて、例えば、衝突を検知した場合、対応する制御を行う場合に有効である。一方、外部物体と搬送体9とが接触する場合、外部物体と搬送体9とに相互に影響を与える衝突状態と、外部物体と搬送体9とが接触するものの、外部物体と搬送体9とに相互の影響が衝突状態に至らない軽度の接触状態とが考えられる。このような軽度の接触状態は、外部物体と搬送体9とに相互の影響について詳細な考慮が不要、または接触を許容可能な状態である。そこで、本実施形態では、軽度の接触状態と、衝突状態とに分類し、各々に対応する制御を行う。以降では、軽度の接触状態を許容状態と称する。
【0071】
図9に、外部物体と搬送体9との接触状態に関する概念を示す。
図9では、外部物体が導電性ウレタン22に接触した状態から外部物体と搬送体9とに相互に影響を与える状態を示す衝突状態を示す。具体的には、外部物体と導電性ウレタン22の接触方向(衝突方向)に、衝突状態として定めた所定距離の変形を伴う接触までの状態を許容状態とし、所定距離の変形を超えた接触の状態を衝突状態とする。許容状態を形成可能とするために、導電性ウレタン22は、接触方向(衝突方向)に予め定めた厚みLを有して形成される。
【0072】
許容状態と衝突状態との境界は、導電性ウレタン22の柔軟性に基づいて、予め定めることが可能である。例えば、上記所定距離を、導電性ウレタン22の厚みLに対する比率(例えば50%)によって定めることが可能である。導電性ウレタン22の厚みLに対して50%の距離まで変形する状態を許容状態とすることで、上述した軽度の接触では、外部物体と搬送体9とに相互に影響を与える状態ではないことを定めることができる。一方、厚みLに対して50%の距離の変形が生じた場合を衝突検知の境界とすることで、導電性ウレタン22の変形可能な領域は残存する。よって、導電性ウレタン22による衝撃緩和機能を有したまま、外部物体の衝撃が搬送部91に伝達されるまでに衝撃を緩和する所定時間又は所定距離の余裕を得ることが可能となる。より具体的には、導電性ウレタン22の厚みLの50%以下の距離となる変形を許容状態とし、50%を超える距離となる変形を衝突状態とすることが可能である。
【0073】
図10に、本実施形態に係る接触状態推定装置としての推定装置1Aの構成の一例を示す。
図10に示す推定装置1Aは、
図1に示す推定部5に代えて、接触状態推定部10を備えている。
【0074】
推定装置1Aにおける推定処理は、学習済みの学習モデル51を用いて、未知の外部物体との接触状態を推定し、出力する。学習モデル51は、導電性ウレタン22の電気特性及び導電性ウレタン22と外部物体との接触状態を含む学習データによって学習される。
【0075】
次に、本実施形態に係る学習モデル51を生成する学習処理について説明する。外部物体との接触状態を示す接触状態情報(状態データ3)をラベルとする導電性ウレタン22の電気特性(入力データ4)を学習データとして学習を行う。
【0076】
まず、学習処理に用いる学習データについて説明する。
図11に、接触状態に関係する物理量を測定する測定装置8の一例を示す。測定装置8は導電性ウレタン22に対して圧力刺激を与えることで、導電性ウレタン22の電気特性を計測する。
【0077】
測定装置8は、基台81に固定された固定部82に、導電性ウレタン22に圧力刺激を与えるための圧力付与部83及びが取り付けられる。圧力付与部83は、圧力付与本体83A、当該圧力付与本体83Aから伸縮可能なアーム83B、及びアーム83Bの先端に取り付けられた先端部83Cを備えている。圧力付与本体83Aは固定部82に固定され、入力信号に応じてアーム83Bが伸縮されて、先端部83Cが所定方向(矢印Z方向及び逆方向)に移動される。これによって、押圧部材84は基台81に設置される導電性ウレタン22に接触したり、接触後に押圧したり、導電性ウレタン22から離間したりすることが可能となる。
【0078】
基台81上には、導電性ウレタン22を周囲に備えた搬送体9が配置される。圧力付与部83の先端部83Cには、所定形状の押圧部材84が取り付けられる。導電性ウレタン22は、圧力付与部83の先端部83Cに取り付けられた押圧部材84が、少なくとも接触可能に配置される。押圧部材84は、導電性ウレタン22に対して所定の圧力により圧力刺激を与える部材であり、先端が曲面形状(例えば球体の一部)の押圧部材を用いてもよく、断面形状として台形、円形、楕円形、又は多角形の何れの形状でもよく、その他の形状でもよい。
【0079】
圧力付与部83は、アーム83Bが伸長することによって、先端部83Cが押圧部材84を導電性ウレタン22に押圧するように作動する。
【0080】
圧力付与本体83Aは、例えば6軸方向の力を検出する機能を有するフォースセンサ85を備える。フォースセンサ85は、検出した力から、導電性ウレタン22に対する押圧部材84の押圧状態を検出する機能、及び対象物2に付与される圧力を検出する機能を有する。このフォースセンサ85によって、押圧部材84の導電性ウレタン22への押圧状態における物理量を時系列に検出可能であり、対象物2に付与される圧力を時系列に検出可能である。なお、フォースセンサ85は省略してもよい。
【0081】
測定装置8は、圧力付与部83、及びフォースセンサ85に接続されたコントローラ80を備えている。コントローラ80は、図示しないCPUを備え、図示しないCPUにより圧力付与部83の制御を行い、導電性ウレタン22に対して搬送物92を介した圧力刺激を与え、与えられた刺激に対する導電性ウレタン22の時系列の電気特性を取得し、記憶する。
【0082】
本実施形態では、コントローラ80は、アーム83Bを伸縮する往復運動を行って、搬送体9に対する外部物体の接触状態、例えば、衝突状態を擬似的に再現する圧力刺激を与える。すなわち、導電性ウレタン22に対して圧力刺激の付与及び解除を行うように圧力付与部83の制御を行う。例えば、外部物体との接触位置を想定し、予め定めた位置で、圧力刺激を与えることが適用される。また、コントローラ80は、導電性ウレタン22に与えた圧力刺激に同期して、導電性ウレタン22における電気特性を取得する。従って、測定装置8は、学習データの1つとして、刺激が与えられた導電性ウレタン22の電気特性を時系列に取得可能となる。
【0083】
図12に、上述した試験結果による導電性ウレタン22の電気特性の一例を概念として示す。
図12に示すように、外部物体と搬送体9との接触状態を擬似的に再現する圧力刺激を与えた際の電気特性が計測される。本実施形態では、圧力付与部83による圧力刺激を付与することで、搬送体9に対する外部物体との接触に関する状態を擬似的に再現する。
【0084】
次に、搬送物の接触状態について説明する。
【0085】
導電性ウレタン22の電気特性は、例えば、外部物体から与えられる圧力刺激の位置及び大きさにより変動する。外部物体と搬送体9との接触では、搬送体9においてどの位置で接触したかを検知できることは重要である。そこで、本実施形態では、外部物体と搬送体9との接触位置及び大きさ(例えば、上述した厚みLに対する比率)で定量化して接触状態を示す指標とする。
【0086】
上述した指標によって、搬送体9の接触状態を示す接触状態情報(状態データ3)を設定することが可能となる。従って、学習データとして、導電性ウレタン22への刺激に関する時系列の電気特性に対する搬送物92の接触状態を対応付けることが可能となる。従って、導電性ウレタン22における時系列の電気特性と、電気特性に対する搬送体9の接触状態との各々を示す情報によるセットが学習データとなる。
【0087】
次の表2に、外部物体と搬送体9(すなわち、導電性ウレタン22)との接触状態に関する学習データとして、時系列の電気抵抗値データ(r)と接触状態を示す状態データ(R)とを対応付けたデータセットの一例を示す。
【0088】
【0089】
表2は、状態データ(R)として、外部物体と搬送体9(すなわち、導電性ウレタン22)との接触状態に対応させた状態データ(Ra)の一例である。状態データ(R)は、外部物体と搬送体9との接触位置及び大きさを示す指標を対応させればよい。表2では、当該指標として、外部物体と搬送体9との接触位置(x)と、大きさ(s:厚みLに対する比率%)との指標を適用した場合を示す。なお、表2の備考欄には、状態データ(R)である接触位置(x)と、大きさ(s)に対応して、ユーザに直感的なメッセージを示す情報を対応させた一例を示す。従って、導電性ウレタン22の時系列の電気特性には、外部物体と搬送体9との接触状態が特徴的に表れるので、学習処理において有効に機能する。
【0090】
なお、表2では、上述した衝突状態におけるデータセットの学習データを示している。しかし、上述した許容状態を含めてデータセットを導出してもよい。この場合、データセットに、許容状態及び衝突状態の何れのデータセットであるかを示すデータを対応付けることが可能である。許容状態及び衝突状態の何れのデータセットであるかを示すデータを用いることで、対象とする状態に対応してデータセットを選択することが可能となる。例えば、衝突状態のみを対象とする場合、全てのデータセットを利用する場合と比べて、学習精度を向上可能なデータセットを抽出することが可能となる。
【0091】
次に、本実施形態にかかる搬送物92の接触状態に関する学習モデル51を生成する学習処理を説明する。
【0092】
図13に、学習処理部52において実行される学習処理の流れの一例を示す。学習処理は、上述した学習処理部52における図示しないCPUの処理によって行われる。
【0093】
ステップS110では、導電性ウレタン22の電気特性(入力データ4)を取得する。次のステップS111では、まず、導電性ウレタン22の電気特性(入力データ4)を与えた、上述した接触状態を示す指標を導出することで、外部物体と搬送体9との相対的な接触状態を示す状態データ3を取得する。このステップS111では、対象物2の電気特性である入力データ4と、接触状態を示す状態データ3とを対応付け、状態データ3(指標)をラベルとした入力データ4(電気抵抗)のセットを学習データとして取得する。次に、ステップS112では、取得した学習データを用いて学習モデル51を生成する。すなわち、上記のようにして多数の学習データを用いて学習した学習結果のノード間の結合の重みパラメータ(重み又は強度)の情報の集合を得る。そして、ステップS114で、学習結果のノード間の結合の重みパラメータ(重み又は強度)の情報の集合として表現されるデータを学習モデル51として記憶する。なお、ステップS110及びステップS111の処理は、本開示の取得部で実行される処理の一例である。また、ステップS112の処理は、本開示の学習モデル生成部で実行される処理の一例である。
【0094】
次に、本実施形態にかかる学習モデル51を用いた接触状態の推定処理について説明する。
【0095】
上述したように、接触状態推定装置1Aでは、以上に例示した手法により生成した学習済みの学習モデル51を用いることで、十分に学習した学習モデル51を用いれば、外部物体により与えられた刺激による電気特性から、外部物体と搬送体9とで相対的に接触した接触状態を同定することも不可能ではない。
【0096】
なお、対象物の接触状態推定装置1は、本開示の推定部および推定装置の一例である。電気特性検出部76は、本開示の検出部の一例である。操作表示部116は、本開示の出力部の一例である。
【0097】
図14に、コンピュータ本体100で実行される制御プログラム108Pによる外部物体の接触状態の推定処理の流れの一例を示す。
図14に示す推定処理は、コンピュータ本体100に電源投入されると、CPU102により実行される。
【0098】
まず、ステップS201では、補助記憶装置108の学習モデル108Mから上述した接触状態推定用に学習済みの学習モデル51を読み出し、RAM104に展開することで、学習モデル51を取得して学習モデル51を構築する。ステップS201では、上述した圧力刺激による外部物体と搬送体9の接触状態(表2)により学習された学習モデル51が構築される。
【0099】
次に、ステップS203で、未知の外部物体との接触状態における時系列の入力データ4(電気特性)を、検出部118を介して取得する。
【0100】
次に、ステップS205では、ステップS201で取得した学習モデル51を用いて、ステップS203において取得した入力データ4(電気特性)に対応する出力データ6(接触状態)を推定する。そして、次のステップS207では、推定結果の出力データ6(接触状態)を、通信部114を介して出力して、本処理ルーチンを終了する。
【0101】
なお、ステップS207では、推定結果の接触状態から、搬送物92に衝撃が伝達される時期を含む予測結果を報知する等の支援情報を出力することも可能である。例えば、外部物体と搬送体9との接触位置及び大きさ(比率)を、通信部114又は操作表示部116へ出力してもよい。また、上述したユーザに直感的なメッセージを接触状態として、通信部114又は操作表示部116へ出力してもよい。このように支援情報を出力することで、ユーザは、外部物体と搬送体9との相対的な接触について、将来、外部物体と衝突が予測されることを認知可能となり、事前に接触状態に対応する、例えば搬送の中止、及び逆方向への移動(回避行動)等の適切な処理を行うことが可能となる。
【0102】
また、ステップS207では、搬送部91の制御命令等の制御情報を出力することも可能である。例えば、搬送物92が外部物体に衝突することが予測される接触状態の場合、情報の報知に加えて、搬送部91の回転駆動部91Aの停止などの制御命令を出力することが可能である。例えば、搬送部の搬送が停止される状態等の搬送部91の搬送状態になるように搬送停止などの制御命令を示す制御情報を出力する。このように制御命令等の制御情報を出力することで、搬送部91の挙動により接触情報をユーザ側に報知することが可能となる。
【0103】
上述した
図14に示す推定処理は、本開示の推定方法でコンピュータが実行する処理の一例である。
【0104】
以上説明したように、本開示によれば、搬送物の接触状態が未知の外部物体との接触における電気特性から、外部物体と搬送体9(すなわち、導電性ウレタン22)の接触状態を推定することが可能となる。すなわち、特殊な検出装置を用いることなく、導電性ウレタン22の電気特性を利用して、外部物体と搬送体9の接触状態、例えば衝突を推定することが可能となる。
【0105】
また、導電性ウレタン22は、外部物体との接触に関して衝撃を緩和する所定の厚みLを有する。よって、接触方向(衝突方向)に予め定めた所定距離を境界として、外部物体と導電性ウレタン22の接触を検知することで、所定距離以下の軽度の接触では、外部物体と搬送体9とに相互に影響を与える状態ではないことを定めることができる。また、所定距離の変形が生じた場合を衝突検知の境界とすることで、導電性ウレタン22の変形可能な領域は残存する。よって、所定距離を超える接触を衝突として検知することで、導電性ウレタン22による衝撃緩和機能を有したまま、外部物体の衝撃が搬送体9に伝達されるまでに衝撃を緩和する所定時間又は所定距離の余裕を得ることが可能となる。
【0106】
さらに、外部物体と搬送体9の接触状態の推定結果を出力することによって、現在の接触状態によって引き起こされる将来の状態、例えば搬送物が崩れるなどに対する対応を事前に行うことも可能となる。
【0107】
<変形例>
上述した接触状態推定部10は、上述した許容状態を、衝突の虞がない状態とする処理を含むことが可能である。この許容状態として許容する処理を含む接触状態推定部を変形例として説明する。
【0108】
図15に、接触状態推定部10の変形例の構成を示す。接触状態推定部10は、接触状態分析部12、比較判定部14、及び閾値記憶部16とを含む。
【0109】
接触状態分析部12は、導電性ウレタン22からの時系列の電気特性(入力データ4)を用いて、搬送物92の接触状態を分析する機能部である。接触状態分析部12は、上述した接触状態を示す指標を導出する。比較判定部14は、接触状態の判定用の閾値を記憶した閾値記憶部16に接続され、分析結果の接触状態と、接触状態の判定用閾値とを比較し、比較結果を出力する機能部である。閾値記憶部16は、例えば、ユーザに直感的なメッセージに対応付ける等のように接触状態の判定のための閾値を、ROM106又は補助記憶装置108に記憶すればよい。また、比較判定部14は、例えば、接触状態の判定のための閾値を用いて、導出された接触の大きさ(すなわち、比率)等の指標が閾値未満の場合は許容状態、閾値以上の場合は外部物体が衝突する虞がある衝突状態と判定すればよい。このように、接触状態推定部10Aを構成することで、予め定めた範囲の接触状態を、許容状態として扱うことができる。
【0110】
なお、上述した実施形態では、接触状態推定部10として電気特性検出部76を介して導電性ウレタン22に接続する一例を説明したが、当該接続は有線接続でもよく無線接続でもよい。例えば、無線接続の場合、
図16に示すように、電気特性検出部76及び送信部77を含む送信ユニット78を導電性ウレタン22側に備えればよい。
【0111】
本開示では、柔軟部材の一例として導電性ウレタンを適用した場合を説明したが、柔軟部材は柔軟性を有すればよく、上述した導電性ウレタンに限定されないことは勿論である。
【0112】
また、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0113】
また、上記実施形態では、推定処理及び学習処理を、フローチャートを用いた処理によるソフトウエア構成によって実現した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば各処理をハードウェア構成により実現する形態としてもよい。
【0114】
また、推定装置の一部、例えば学習モデル等のニューラルネットワークを、ハードウェア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 推定装置
2 対象物
3 状態データ
4 入力データ
5 推定部
6 出力データ
6A 生成出力データ
21 部材
22 導電性ウレタン
51 学習モデル
52 学習処理部
54 生成器
56 演算器
75 検出点
76 電気特性検出部