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  • 特開-フィルム成形装置およびその制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088181
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】フィルム成形装置およびその制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20230619BHJP
   B29C 48/28 20190101ALI20230619BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20230619BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230619BHJP
   B65H 26/00 20060101ALN20230619BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/28
B29C48/30
B29C48/25
B65H26/00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202879
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】日置 一弥
【テーマコード(参考)】
3F105
4F207
【Fターム(参考)】
3F105AA04
3F105DA02
3F105DB02
3F105DB16
3F105DC08
4F207AG01
4F207AJ08
4F207AP01
4F207AP04
4F207AP20
4F207AR04
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL84
4F207KL88
4F207KM06
4F207KM16
4F207KW50
(57)【要約】
【課題】フィルムの引取力をより高精度に特定できるフィルム成形装置を提供する。
【解決手段】フィルム成形装置は、ダイから溶融樹脂を押し出し、それを固化させてフィルムを成形し、そのフィルムを搬送して巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成する。フィルム成形装置は、搬送されるフィルムが巻き掛けられた回転体に関連する情報に基づいてフィルムの引取力を特定する特定部132を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイから溶融樹脂を押し出し、それを固化させてフィルムを成形し、そのフィルムを搬送して巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成するフィルム成形装置であって、
搬送されるフィルムが巻き掛けられた回転体に関連する情報に基づいてフィルムの引取力を特定する特定部を備えるフィルム成形装置。
【請求項2】
前記回転体に関連する情報は、前記回転体にかかる荷重である請求項1に記載のフィルム成形装置。
【請求項3】
前記荷重を検出するための荷重センサをさらに備える請求項2に記載のフィルム成形装置。
【請求項4】
前記回転体は所定の支持部材に支持され、
前記回転体にかかる荷重と、その荷重により前記支持部材に生じるひずみ量との関係はあらかじめ特定されており、
前記支持部材のひずみ量を検出するためのひずみセンサをさらに備える請求項2に記載のフィルム成形装置。
【請求項5】
前記回転体は、フィルムが巻き掛けられた複数の回転体のうちの最も上流側に位置する回転体である請求項1から4のいずれかに記載のフィルム成形装置。
【請求項6】
前記回転体は、前記巻取機の巻取軸であり、
前記回転体に関連する情報は、前記巻取軸を回転させるための駆動トルクである請求項1に記載のフィルム成形装置。
【請求項7】
フィルム成形装置の制御装置であって、
前記フィルム成形装置は、ダイから溶融樹脂を押し出し、それを固化させてフィルムを成形し、そのフィルムを搬送して巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成し、
搬送されるフィルムが巻き掛けられた回転体に関連する情報に基づいてフィルムの引取力を特定する特定部を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム成形装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイから溶融樹脂を押出し、それを固化させてフィルムを成形し、成形されたフィルムを巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成するフィルム成形装置が知られている。従来では、リップ幅や冷却風の風量、風温を調節することにより、フィルムの厚みを目標範囲内に収める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルム成形装置では、フィルムの力学モデルにしたがってフィルムに生じる応力などをシミュレートすることにより、フィルムの成形の安定性を検討できる。シミュレーションでは、フィルムが引き取られる(引っ張られる)力である引取力の値が必要になる場合がある。従来は、ピンチロールの駆動トルクから引取力を推定していたが、その推定精度は低いため、シミュレーションの精度も低くなりうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、フィルムの引取力をより高精度に特定できるフィルム成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のフィルム成形装置は、ダイから溶融樹脂を押し出し、それを固化させてフィルムを成形し、そのフィルムを搬送して巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成するフィルム成形装置であって、搬送されるフィルムが巻き掛けられた回転体に関連する情報に基づいてフィルムの引取力を特定する特定部を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、制御装置である。この装置は、フィルム成形装置の制御装置であって、フィルム成形装置は、ダイから溶融樹脂を押し出し、それを固化させてフィルムを成形し、そのフィルムを搬送して巻取機で巻き取ってフィルムロール体を形成し、搬送されるフィルムが巻き掛けられた回転体に関連する情報に基づいてフィルムの引取力を特定する特定部を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルムの引取力をより高精度に特定できるフィルム成形装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るフィルム成形装置の概略構成を示す図である。
図2図1の制御装置の機能および構成を模式的に示すブロック図である。
図3】変形例に係るフィルム成形装置の概略構成を示す図である。
図4】別の変形例に係るフィルム成形装置の概略構成を示す図である。
図5】さらに別の変形例に係るフィルム成形装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、ピンチロールはフィルムの引き取りにほとんど寄与していないこと、すなわちフィルムの荷重はピンチロールにほとんどかかっていないことが判明した。そして本発明者は、フィルムの荷重がかかっている回転体、言い換えると、フィルムが巻き掛けられた回転体に基づけば、引取力をより高精度に特定できることに想到した。以下、具体的に説明する。
【0013】
図1は、実施の形態に係るフィルム成形装置100の概略構成を示す図である。フィルム成形装置100は、ダイ102と、冷却部104と、一対のガイド部106と、一対のピンチロール108と、複数のガイドローラ(回転体)110と、巻取機112と、厚みセンサ114と、幅センサ116と、荷重センサ118と、制御装置120と、を備える。
【0014】
ダイ102に形成されたリング状の吐出口102aから、溶融した樹脂が円筒状に吐出される。吐出された円筒状の樹脂の内側には、ダイ102の中心部に形成された空気吹出口102bから、適宜のタイミングで空気が噴出され、円筒状に膨らんだ薄肉のフィルムが成形される。
【0015】
冷却部104は、ダイ102の上方に配置される。冷却部104は、フィルムに冷却風を吹き付けてフィルムを冷却する。一対のガイド部106は、冷却部104の上方に配置される。一対のガイド部106は、フィルムを一対のピンチロール108に案内する。一対のピンチロール108は、一対のガイド部106の上方に配置される。一対のピンチロール108は、不図示のモータに駆動されて回転し、案内されたフィルムを扁平に折りたたむ。
【0016】
複数のガイドローラ110は、一対のピンチロール108と巻取機112との間のフィルムの搬送路を規定する。フィルムは複数のガイドローラ110に巻き掛けられ、搬送路に沿って搬送される。「フィルムが巻き掛けられたガイドローラ110」は、フィルムと線接触ではなく面接触しているガイドローラ110であり、典型的には、軸方向に見たときに30°~180°の範囲でフィルムと接触しているガイドローラ110である。言い換えると、「フィルムが巻き掛けられたガイドローラ110」は、そのガイドローラ110の上流側と下流側とでフィルムの搬送方向が変化しているガイドローラ110である。
【0017】
巻取機112は、複数のガイドローラ110によって規定される搬送路を搬送されてきたフィルムを巻き取ってフィルムロール体111を形成する。
【0018】
厚みセンサ114は、冷却部104と一対のガイド部106との間に配置される。厚みセンサ114は、円筒状に膨らんだフィルムの周りを回りながら、周方向の各位置におけるフィルムの厚みを所定の周期で検出する。厚みセンサ114は、例えば、フロストラインにおけるフィルムの厚みを検出する。厚みセンサ114により検出された厚みデータは制御装置120に送信される。
【0019】
幅センサ116は、一対のピンチロール108と巻取機112との間に配置される。幅センサ116は、折りたたまれた樹脂フィルムのフィルム幅を所定の周期で検出する。幅センサ116により検出された幅データは制御装置120に送信される。
【0020】
荷重センサ118は、ガイドローラ110aにかかる荷重を検出する。荷重センサ118は所定の周期で荷重を検出してもよいし、制御装置120から指示を受けたとき(例えば後述のようにシミュレーションを実行するとき)に荷重を検出してもよい。荷重センサ118は、本実施の形態ではロードセルである。荷重センサ118により検出された荷重データは制御装置120に送信される。
【0021】
荷重センサ118は、この例では、フィルムが巻き掛けられた複数のガイドローラ110のうちの最も上流側に位置するガイドローラ110(以下、ガイドローラ「110a」とも呼ぶ)にかかる荷重を検出する。最も上流側のガイドローラ110aにかかる荷重を検出することで、複数のガイドローラ110とフィルムとの間の摩擦の影響の少ない荷重を検出できる。
【0022】
好ましくは荷重センサ118は、その荷重検出方向と、フィルムからガイドローラ110aに付与される荷重の方向とが一致するように設置される。フィルムがガイドローラ110に付与する荷重の向きは、ガイドローラ110aに巻き掛けられたフィルムの巻き掛け範囲を2分し、かつ、ガイドローラ110aの中心軸を通る方向である。
【0023】
図示の例では、フィルムは、ガイドローラ110aに180°の範囲にわたって巻き掛けられており、ガイドローラ110aに鉛直下向きの荷重を付与する。ガイドローラ110aは、保持部材に回転可能に保持されている。荷重センサ118は、ガイドローラ110aを保持部材を介して下方から支持している。
【0024】
制御装置120は、フィルム成形装置100を統括的に制御する。
【0025】
図2は、制御装置120の機能および構成を模式的に示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
制御装置120は、種々の通信プロトコルにしたがって厚みセンサ114、幅センサ116および荷重センサ118との通信処理を実行する通信部122と、ユーザによる操作入力を受け付け、また各種画面を表示部に表示させるU/I部124と、通信部122およびU/I部124から取得されたデータをもとにして各種のデータ処理を実行するデータ処理部126と、データ処理部126により参照、更新されるデータを記憶する記憶部128と、を含む。
【0027】
データ処理部126は、受信部130と、特定部132と、シミュレーション部134と、出力処理部136と、動作制御部138と、を含む。受信部130は、厚みセンサ114、幅センサ116、荷重センサ118からフィルムの厚みを示す厚みデータ、フィルムの幅を示す幅データ、ガイドローラ110aにかかる荷重を示す荷重データを受信する。
【0028】
動作制御部138は、フィルム成形装置100のフィルムの成形に関する動作を制御する。例えば動作制御部138は、不図示の押出機からの樹脂の押出量、空気吹出口102bから噴出される空気の流量、冷却部104からバブルに吹き付けられる冷却風の風量や風温、一対のピンチロール108を駆動するモータに流れる駆動電流、巻取機112を駆動するモータに流れる駆動電流などを制御する。
【0029】
特定部132は、荷重データに基づいて、フィルムの引取力を特定する。具体的には特定部132は、フィルムの成形中に荷重センサ118により検出される荷重から、フィルムを成形していないとき、すなわちガイドローラ110aにフィルムが巻き掛けられていないときに荷重センサ118により検出される荷重を引いた値を、フィルムがガイドローラ110aに付与する荷重、すなわちフィルムの引取力として特定する。
【0030】
シミュレーション部134は、特定された引取力を使用したシミュレーションを実行する。例えばシミュレーション部134は、成形条件を入力として、バブルの応力を計算する。
【0031】
例えばシミュレーション部134は、成形中の現在の成形条件を入力として、バブルの応力を計算してもよい。この場合、例えば、成形中のバブルが破断する可能性があるか否かがわかる。バブルが破断する可能性がある場合は、その旨を画面表示、音声、またはその他の方法によりユーザに通知してもよい。この際、シミュレーション部134は、破断する可能性がなく、かつ、品質が高いフィルムを成形できる成形条件を計算して提示してもよい。また、その成形条件に自動で変更してもよい。
【0032】
また例えばシミュレーション部134は、変更予定の成形条件を入力として、成形条件を変更した場合のバブルの応力を計算してもよい。この場合、例えば、成形条件を変更することによって破断する可能性があるか否か分かる。
【0033】
出力処理部136は、各種画面を所定のディスプレイに表示する。例えば各種画面は、特定された引取力を表示する画面であってもよい。また例えば各種画面は、特定された引取力を用いたシミュレーションに関する情報を表示する画面であってもよい。変形例として、出力処理部136は、ディスプレイに表示する代わりに、出力処理として、所定の印刷機により印刷してもよいし、所定のメールアドレスにメール送信してもよい。
【0034】
続いて、シミュレーション部134による応力の計算(推定)方法について説明する。
【0035】
バブル(特にそのフロストライン)に生じる応力(σ)は、以下の式(1)により算出される。
【数1】
ここで、
η:粘度
εドット(上にドットが付いたε):ひずみ速度
である。
【0036】
粘度(η)について、以下の式(2)が成立するものとみなす。つまり、温度の影響を考慮せずに、簡易的に粘度(η)を算出する。
η=FL/{8πR(v-v)} ・・・(2)
ここで、
F:引取力
L:フロストライン高さ
:フロストラインにおけるバブルの半径
:フロストラインにおけるバブルの厚み
:バブルが引き取られる速度である引取り速度
:吐出口102aにおける樹脂の流速
である。
【0037】
ひずみ速度(εドット)について、本実施の形態では、以下の式(3)が成立するものとみなす。
【数2】
【0038】
したがって、式(1)は、式(2)、(3)より、以下の式(4)のように書き換えられる。
σ=F/{2πR} ・・・(4)
【0039】
引取力(F)は、上述のように特定部132により特定される。
【0040】
フロストラインにおけるバブルの半径(R)は、以下の式(5)で表される。
=w/π ・・・(5)
ここで、
w:フィルム幅[m]
である。
なお、フィルム幅(w)は、幅センサ116により検出される。
【0041】
フロストラインにおけるバブルの厚み(H)は、厚みセンサ114により検出される。
【0042】
つまり、特定部132によりが特定される引取力(F)、幅センサ116により検出されるフィルム幅(w)、厚みセンサ114によりバブルの厚み(H)に基づいて、応力(α)を推定できる。
【0043】
以上が、フィルム成形装置100の構成である。続いてその動作について説明する。
【0044】
制御装置120の受信部130は、フィルムの成形中において厚みセンサ114、幅センサ116および荷重センサ118が検出した厚みデータ、幅データ、荷重データを受信する。特定部132は、荷重データから引取力を特定する。シミュレーション部134は、厚みデータ、幅データおよび特定された引取力に基づいて、シミュレーションを実行する。厚みを変更する場合は変更予定の厚みを入力すればよく、幅を変更する場合は変更予定の幅を入力すればよい。
【0045】
以上説明した本実施の形態によれば、引取力を比較的精度良く特定できるため、この引き取り力を使用して比較的精度の高いシミュレーションが可能になる。
【0046】
以上、実施の形態に係るフィルム成形装置の構成と動作ついて説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0047】
(変形例1)
図3は、変形例に係るフィルム成形装置100の概略構成を示す図である。図3図1に対応する。本変形例の荷重センサ118は、ダンサユニットであり、ガイドローラ(ダンサローラ)110aに連結されたロッド140と、ロッド140を介してガイドローラ110aに荷重を付与するためのアクチュエータ142と、を含む。制御装置120は、フィルムの成形中にガイドローラ110aが一定の位置に維持されるようにアクチュエータ142を制御する。特定部132は、アクチュエータ142がガイドローラ110aに付与する荷重を、フィルムがガイドローラ110aに付与する荷重、すなわちフィルムの引取力として特定する。本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
(変形例2)
図4は、別の変形例に係るフィルム成形装置100の概略構成を示す図である。図4図1に対応する。本変形例のフィルム成形装置100は、荷重センサ118の代わりに、ガイドローラ110aを支持する支持部材(梁)144のひずみ量を検出するためのひずみセンサ146を備える。ひずみセンサ146は、例えばひずみゲージである。ひずみセンサ146は、検出したひずみデータを制御装置120に送信する。
【0049】
支持部材144ひいてはガイドローラ110aにかかる荷重と、その荷重により支持部材144に生じるひずみ量との関係は、あらかじめ特定されている。特定部132は、フィルムの成形中に検出されたひずみ量から特定される荷重から、フィルムを成形していないときに検出されたひずみ量から特定される荷重を引いた値を、フィルムが支持部材144ひいてはガイドローラ110aに付与する荷重、すなわちフィルムの引取力として特定する。本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
(変形例3)
図5は、さらに別の変形例に係るフィルム成形装置100の概略構成を示す図である。図5図1に対応する。本変形例のフィルム成形装置100は、荷重センサ18を備えていない。本変形例では、巻取機112がその巻取軸(回転体)112aを回転させる駆動トルクから引取力を特定する。例えば特定部132は、駆動トルクを巻取軸112aの半径Rで割った値を引取力として特定してもよい。なお駆動トルクは、巻取軸112aを駆動するモータに流れる駆動電流を検出することにより特定できる。
【0051】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例によれば、引取力を特定するための専用のセンサを必要としないため、フィルムの引取力をより高精度に特定できるフィルム成形装置100をより低コストに実現できる。
【0052】
(変形例4)
シミュレーション部134による応力の計算方法は、実施の形態のそれには限定されない。
【0053】
バブル(特にそのフロストライン)に生じる応力(σ)は、以下の式(6)によっても算出できる。
σ=F/S ・・・(6)
ここで、
S:バブルの断面積
である。
【0054】
バブルの断面積(S)は、以下の式(7)で表される。
S=2πR ・・・(7)
ここで
:ダイ102の吐出口102aの半径
:リップ幅、すなわち吐出口102aの幅
である。
【0055】
したがって、式(6)は、以下の式(8)のように書き換えられる。
σ=F/(2πR) ・・・(8)
リップ幅(H)は設定値であり、ダイ2の吐出口102aの半径(R)は設計値である。
【0056】
(変形例5)
ピンチロール118は、少なからず、フィルムの引き取りに寄与している。したがって、ピンチロール118の引取力をさらも考慮してもよい。実施の形態や上述の変形例において特定される引取力に、ピンチロール108の駆動トルクをピンチロール108の半径で割ることで得られる力を足した値を、引取力として特定してもよい。
【0057】
(変形例6)
実施の形態および上述の変形例のダイ102は、吐出口102aがリング状であるいわゆる丸ダイであったが、これには限定されず、実施の形態の技術思想は、吐出口が直線状であるいわゆるTダイにも適用できる。
【0058】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0059】
100 フィルム成形装置、 120 制御装置、 132 特定部、 134 シミュレーション部。
図1
図2
図3
図4
図5