IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ホームテクノ株式会社の特許一覧 ▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱調理器 図1
  • 特開-加熱調理器 図2
  • 特開-加熱調理器 図3
  • 特開-加熱調理器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088205
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
A47J27/00 109S
A47J27/00 103L
A47J27/00 109G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202906
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】三條 累
(72)【発明者】
【氏名】小林 博明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA02
4B055BA13
4B055CA02
4B055CA71
4B055CB02
4B055CB24
4B055CC03
4B055CD02
4B055DA02
4B055DB04
4B055GB08
4B055GC04
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】高出力の熱板式のヒータで耐久性や安全性を確保して加熱可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】本発明の加熱調理器は、被調理物Sを収容する鍋4と、鍋4の底部に当接して鍋4を加熱する熱板式の底ヒータ6と、底ヒータ6の熱板6aの温度を検知する熱板温度センサ7と、熱板温度センサ7の検知する検知温度から熱板6aの温度上昇率を算出する底ヒータ温度上昇率算出手段29と、底ヒータ6を停止させる制御手段21と、を備え、熱板温度センサ7が第1のヒータ停止温度としてのヒータ停止温度を検知した場合、または底ヒータ温度上昇率算出手段29が第1のヒータ停止温度上昇率を算出した場合に、制御手段21が底ヒータ6を停止させる構成としている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する鍋と、
前記鍋の底部に当接して当該鍋を加熱する熱板式の底ヒータと、
前記底ヒータの外殻体の温度を検知する外殻体温度検知手段と、
前記外殻体温度検知手段の検知する検知温度から前記外殻体の温度上昇率を算出する外殻体温度上昇率算出手段と、
前記底ヒータを停止させるヒータ温度過昇防止手段と、
を備え、
前記外殻体温度検知手段が第1のヒータ停止温度を検知した場合、または、前記外殻体温度上昇率算出手段が第1のヒータ停止温度上昇率を算出した場合に、前記ヒータ温度過昇防止手段が前記底ヒータを停止させることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記鍋の温度を検知する鍋温度検知手段と、
前記鍋温度検知手段の検知する検知温度から前記鍋の温度上昇率を算出する鍋温度上昇率算出手段と、
をさらに備え、
前記底ヒータ駆動時に、前記鍋温度上昇率算出手段が算出した前記鍋の温度上昇率が第2のヒータ停止温度上昇率未満である場合に、前記ヒータ温度過昇防止手段が前記底ヒータを停止させることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記底ヒータは、前記外殻体の温度が第2のヒータ停止温度になったことを検知した場合に前記底ヒータを停止させる外殻体温度過昇防止手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記鍋の開口部を覆う蓋体に設けられた蓋ヒータと、
前記鍋の側部を加熱する側面ヒータと、
をさらに備え、
調理開始から前記被調理物に含まれる水分が沸騰するまでの期間、前記底ヒータと、前記側面ヒータと、前記蓋ヒータと、を組み合わせて加熱する構成としたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記鍋の温度が第3のヒータ停止温度になったことを検知した場合に前記底ヒータを停止させる本体温度過昇防止手段をさらに備え、
前記本体温度過昇防止手段は、前記底ヒータから離間し、かつ前記鍋に当接するように配設されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板式のヒータで加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器として炊飯器が知られており、例えば特許文献1では、被調理物を収容する内鍋と、この内鍋をセット可能な有底筒状の内ケースと、この内ケースの底部に設けられた熱板式のヒータとを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-143977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術は、熱板式のヒータに使用されるシーズヒータの耐久性確保のためや、同じく熱板式のヒータに使用されるアルミニウム熱板の熱変形を防止するため、およびアルミニウム熱板の温度が溶解温度まで上昇することを防止するために、当該熱板式のヒータが、内鍋の熱容量や底面積の大きさに応じて限られた出力に制限され、例えば内鍋の容量が2L~6Lの民生品では、熱板式のヒータの出力を、100Vで1000W以下に抑制せざるを得ない状況だった。
【0005】
そこで本発明は、高出力の熱板式のヒータで耐久性や安全性を確保して加熱可能な加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱調理器は、被調理物を収容する鍋と、前記鍋の底部に当接して当該鍋を加熱する熱板式の底ヒータと、前記底ヒータの外殻体の温度を検知する外殻体温度検知手段と、前記外殻体温度検知手段の検知する検知温度から前記外殻体の温度上昇率を算出する外殻体温度上昇率算出手段と、前記底ヒータを停止させるヒータ温度過昇防止手段と、を備え、前記外殻体温度検知手段が第1のヒータ停止温度を検知した場合、または、前記外殻体温度上昇率算出手段が第1のヒータ停止温度上昇率を算出した場合に、前記ヒータ温度過昇防止手段が前記底ヒータを停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器によれば、高出力の熱板式の底ヒータを、耐久性や安全性を確保して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す加熱調理器の縦断面概略図である。
図2】同上、蓋の縦断面概略図である。
図3】同上、加熱調理器の電気的構成を示すブロック図である。
図4】同上、調理工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、蓋温度センサの検知温度と、蓋ヒータの出力と、側面ヒータの出力と、底ヒータの出力と、の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【0010】
図1図4は、本発明を加熱調理器に適用した一実施形態を示している。先ず、図1に基づいて、本実施形態における加熱調理器の全体構成を説明すると、1は上面を開口した本体、2は本体1の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体1と蓋2とにより加熱調理器の外観が構成される。本体1は上面を開口した鍋収容部としての内枠3を有し、蓋2を開けたときに、被調理物Sを収容する有底筒状の鍋4が着脱自在に収容される構成となっている。そして本体1に鍋4を入れて蓋2を閉じると、蓋2の下面部に装着された内蓋5が鍋4の開口上面を塞ぐように構成される。
【0011】
鍋4は、厚さ1~3mmのアルミニウム板をプレス加工で有底筒状に形成し、内面にフッ素塗装を施したものである。また本実施形態の鍋4は、内容積は2.0L~4.0Lで、調理可能容量は65%程度の1.3L~2.6Lで構成されるものを採用しているが、本発明はこれに限定されず、数値などはあくまでも一例である。
【0012】
内枠3は、例えばアルミメッキ鋼板製で耐熱剛性を有し、耐食性に優れた鋼板をプレス加工により有底筒状に成形し、収容された鍋4の外側面との間に空間を持たせるように形成される。また内枠3の底部には、被調理物Sを調理するために鍋4を加熱する加熱手段として熱板式の底ヒータ6が配設され、この底ヒータ6に鍋4を載置して、底ヒータ6が鍋4の外底面を加熱する構成となっている。底ヒータ6は、アルミニウム母材の熱板6aおよびシーズヒータ6bを有し、最高出力が、例えば1000W~1400Wのものであり、本実施形態では最高出力が1200Wのものを採用している。そのため、例えば電磁誘導加熱式の加熱手段で必要となる高周波発生手段や、加熱手段の回路および加熱コイルの冷却手段が不要となり、電磁誘導加熱式の加熱調理器よりも構成を簡素化しつつ、当該電磁誘導加熱式の加熱調理器と同レベルの高出力で鍋4を加熱することができる。また熱板6aが熱を蓄えるため、一度温度上昇した熱板6aの温度が冷めにくいという特性も有する。
【0013】
7は、底ヒータ6の熱板6aの温度を検知する熱板温度検知手段としてのサーミスタ式の熱板温度センサである。この熱板温度センサ7の検知温度に基づき、後述する制御手段21(図3参照)がシーズヒータ6bによる熱板6aの加熱温度を、例えば200~300℃の所定温度以下に抑制するように温度管理する。なお熱板温度センサ7は、例えばシーズヒータ6bから20mm以内など、シーズヒータ6bの近傍の熱板6aに当接してその当接箇所の温度を検知することが好ましく、シーズヒータ6bによる加熱に対する熱板6aの温度上昇をより早く検知することができる。
【0014】
10は、例えばバイメタル式の温度ヒューズなど、温度リミッタ―としての熱板温度過昇防止装置であり、本実施形態では、シーズヒータ6bの電流を遮断する動作温度としての熱板温度過昇防止装置10のヒータ電流遮断温度が、熱板温度センサ7の検知温度の後述するヒータ停止温度よりも高いもの、例えば300℃で動作するものを採用している。熱板温度過昇防止装置10は、例えばシーズヒータ6bから20mm以内など、シーズヒータ6bの近傍の熱板6aに設けられており、例えば何らかの意図しない原因でシーズヒータ6bが連続通電状態になった場合に、熱板温度過昇防止装置10が遮断してシーズヒータ6bを断電し、底ヒータ6を停止させることにより、異常加熱により熱板6aが変形することや、熱板6aのアルミニウムの溶解することを防止している。なお本発明はこれに限定されず、数値などはあくまでも一例であり、アルミニウムの融点は略660℃である一方で、熱板6aの材厚や含有成分に応じて溶解温度は変化し、また熱変形温度も変化するため、機器の特性に応じて熱板温度過昇防止装置10のヒータ電流遮断温度が設定される。
【0015】
鍋4の外側面に対向する内枠3の外面には、加熱手段としてコードヒータによる側面ヒータ8が配設される。本実施形態の側面ヒータ8は最高出力が150Wのものが採用され、鍋4への補助加熱手段として鍋4の側面上部に対向して配置され、側面ヒータ8が通電状態となると、側面ヒータ8からの輻射熱で鍋4の主に側面上部を加熱する構成となっている。
【0016】
本実施形態では、内枠3の底部中央に挿通穴3aが設けられ、また底ヒータ6の中央には挿通穴6cが設けられている。そして、これらの挿通穴3a,6cを通り抜けて、鍋4の底部の外面である外底面の内側中心部に当接するサーミスタ式の鍋温度センサ9が配設される。鍋4の底部の温度を検知する鍋温度検知手段となる鍋温度センサ9の検知温度に基づき、制御手段21が底ヒータ6による鍋4の底部の加熱温度を温度管理する。また内枠3では、底ヒータ6から離間した場所である内枠上端部に鍋4のフランジ部を載置するように形成されており、この内枠上端部近傍に突出部3bに形成して、この突出部3bの下側に、内枠3の外側面に接触するように本体温度過昇防止装置32が設けられる。本体温度過昇防止装置32は温度リミッタ―として機能しており、例えば温度ヒューズなどで構成されて、シーズヒータ6bの電流を遮断する動作温度としての本体温度過昇防止装置32のヒータ電流遮断温度が、例えば130℃で動作するものを採用している。
【0017】
蓋2の上面には、鍋4内の被調理物Sから発生する蒸気を加熱調理器の外部に排出する蒸気口11が設けられている。また蓋2の前方上面には、蓋クランプ解除ボタン12が露出状態で配設される。この蓋クランプ解除ボタン12は制御手段21と電気的に接続されており、蓋クランプ解除ボタン12が操作されたことを制御手段21が検出すると、制御手段21がクランプフック20(図3参照)によるクランプ受け部(図示せず)への係合を解除するように制御する。また蓋クランプ解除ボタン12は本体1が蓋2に閉じたことを検出する、例えば近接センサなどの検出手段を有するように構成されている。
【0018】
クランプフック20は、クランプ受け部に係合、係合解除することにより、本体1と蓋2との係合、係合解除を行なうものであり、制御手段21によりクランプ受け部への係合、係合解除が制御されている。また制御手段21からの係合解除の制御信号がないときには、クランプフック20が、例えばバネなどの付勢手段により係合方向に付勢されるように構成される。そのため蓋クランプ解除ボタン12が操作されると、制御手段21により、本体1と蓋2とのクランプフック20による係合が解除され、本体2の上部後方に設けたヒンジバネ12(図2参照)により、ヒンジ軸10を回転中心として蓋2が自動的に開いて、鍋4からの内蓋5の開放操作が行われる。また蓋2が本体1に閉じられたときに、付勢手段によりクランプフック20が係合方向に付勢されてクランプ受け部に係合し、鍋5の開口部が内蓋5で覆われる。このとき蓋クランプ解除ボタン12の検出手段により本体1が蓋2に閉じたことを検出して、制御手段21に信号を送出する。なお蓋クランプ解除ボタン12の検出手段の代わりに、蓋2の開閉を検出する角度センサなどの蓋開閉検出手段を、例えばヒンジ軸10近傍に設けてもよい。
【0019】
本体1の上方開口部を開閉する蓋2には、内蓋5の温度を検知するサーミスタ式の蓋温度センサ15と、コードヒータなどの蓋ヒータ16とがそれぞれ設けられている。本実施形態の蓋ヒータ16は内蓋5を加熱して、内蓋5や鍋4内部の温度を上昇させるものであり、最高出力が50Wのものが採用されて、蓋加熱手段として機能している。ここで蓋2に内蓋5を装着すると、内蓋5の上面に蓋温度センサ15が接触し、内蓋5の上面に蓋ヒータ16が対向して配置される構成となっている。そして蓋温度センサ15の検知温度に基づき、制御手段21が蓋ヒータ16の出力を制御するようになっている。
【0020】
図2は、本実施形態の加熱調理器上部の縦断面図を示している。内蓋5は鍋4の上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、鍋4と内蓋5との間をシールするために、内蓋5の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン17を有している。環状に形成された蓋パッキン17は、蓋2を閉じた蓋閉時に、鍋4の上端部の上面および内側側面に当接して、この鍋4と内蓋5との間の隙間を塞いでいる。
【0021】
蓋2の下面部を構成する内蓋5の略中央には調圧部18が配設される。調圧部18は、鍋4内部と連通する蒸気孔18aと、ボール状で例えば金属製の調圧弁18bと、調圧弁18bを移動させるソレノイド18cを含んでいる。そして蒸気孔18aと、調圧弁18bと、ソレノイド18cの一部とが、鍋4の内部と蒸気口11との間を連通する蒸気排出経路19の途中に配設される。鍋4内の蒸気を外部へ放出する場合には、ソレノイド18cにより調圧弁18bを蒸気孔18aから移動させることにより、調圧弁18bが塞いでいた蒸気孔18aを開放することで蒸気排出経路19を開放し、鍋4への加熱に関係なく鍋4内部を大気圧に維持する。また鍋4内を加圧または減圧状態にする場合には、ソレノイド18cが後方に戻ることで調圧弁18bが自重で蒸気孔18aに移動し、調圧弁18bにより蒸気孔18aを閉塞させるように、ソレノイド18cが調圧弁18bを移動させることにより蒸気排出経路19を閉塞し、鍋4の開口部がすべて密閉される。ここで加圧時には、底ヒータ6や側面ヒータ8により鍋4が加熱されることで鍋4内の被調理物Sも加熱され、また蓋ヒータ16により内蓋5が加熱されることで鍋4内の被調理物S上方の空間が加熱されて、鍋4の内圧が所定値に達すると、調圧弁18bの自重に抗して蒸気排出経路19を開放することで、鍋4内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。なお、例えば調圧部18近傍に、鍋4内の圧力を検知する圧力センサなどの圧力検知手段を設けてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態における加熱調理器の電気的な構成を示している。同図において、21は本体1または蓋2の内部に組み込まれた制御手段であり、マイクロコンピュータを構成する制御用IC、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段、タイマーなどの計時手段、各部の駆動素子などを含んで構成されている。制御手段21の入力ポートには、上述した熱板温度センサ7と、鍋温度センサ9と、蓋温度センサ15と、蓋クランプ解除ボタン12に加えて、操作手段22がそれぞれ電気的に接続される。また制御手段21の出力ポートには、上述したソレノイド18cおよびクランプフック20に加えて、底ヒータ駆動手段24と、側面ヒータ駆動手段25と、蓋ヒータ駆動手段26と、表示手段23がそれぞれ電気的に接続される。
【0023】
操作手段22は、時間や、調理コ-スなどの調理メニューや、各種設定を選択、設定するためのものであり、表示手段23は、調理に関わる様々な情報を表示するものである。ユーザは、表示手段23に表示された情報を確認しながら操作手段22を操作することにより、これらの時間や、調理メニューや、各種設定を選択、設定することができる。
【0024】
底ヒータ駆動手段24は、シーズヒータ6bのON/OFF、すなわち通断電を行ない、熱板6aを加熱することで底ヒータ6として駆動させるものであり、電磁リレーやパワートランジスタなどで構成される。また同様に、側面ヒータ駆動手段25は側面ヒータ8を駆動させるもので、蓋ヒータ駆動手段26は蓋ヒータ16を駆動させるものであり、側面ヒータ駆動手段25や蓋ヒータ駆動手段26も電磁リレーやパワートランジスタなどで構成される。
【0025】
制御手段21は、操作手段22や蓋クランプ解除ボタン12からの操作信号と、熱板温度センサ7や鍋温度センサ9や蓋温度センサ15からの各検知信号を受けて、内蔵する計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、表示手段23に表示制御信号を出力し、また底ヒータ6と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ8とに、それぞれ加熱制御信号を出力し、そしてソレノイド18cと、クランプフック20とに駆動制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての記憶手段に予め記録したプログラムを、制御手段21が読み取ることで実現し、調理制御手段27により調理時に鍋4内の被調理物Sを加熱調理する調理工程の制御が行なわれ、同様に、保温制御手段28により保温時に鍋4内の被調理物を所定の保温温度に維持する保温工程の制御が行なわれ、底ヒータ温度上昇率算出手段29により熱板温度センサ7の検知する検知温度から熱板6aの温度上昇率が算出され、鍋温度上昇率算出手段30により鍋温度センサ9の検知する検知温度から鍋4の温度上昇率が算出され、蓋温度上昇率算出手段31により蓋温度センサ15の検知する検知温度から鍋4の温度上昇率が算出される。
【0026】
次に図4を参照しつつ、上記構成の加熱調理器について調理工程や保温工程における作用を説明する。図4は、本実施形態の加熱調理器の調理の一例として、加熱調理器の調理工程および保温工程における、鍋温度センサ9の検知温度tおよび蓋温度センサ15の検知温度tの経時的な変化と、蓋ヒータ16の出力P、側面ヒータ8の出力P、および底ヒータ6の出力Pのタイミングチャートをそれぞれグラフおよび図で示している。図中、(T)は蒸気孔18aを閉塞している期間であることを示し、(H)は蒸気孔18aを開放している期間であることを示し、(T/H)は蒸気孔18aを閉塞状態と開放状態に適宜切替える期間であることを示している。
【0027】
本実施形態の調理時における動作を説明すると、鍋4内に被調理物Sを入れ、これを本体1の内枠3にセットした後に、蓋2を閉じる。それと前後して、加熱調理器の電源プラグ(図示せず)をコンセントに差し込んで通電すると、加熱調理器は調理工程や保温工程が行われていない初期の切(待機)状態となる。このとき制御手段21は、ソレノイド18cを制御して調圧弁18bにより蒸気孔18aを閉塞させ、ユーザが操作しなくても自動的に鍋4内外の連通を遮断している。また炊飯などの調理メニュー開始のために待機中であるタイマー予約で調理を開始する場合も、タイマー予約中で調理開始を待機しているとき、制御手段21はソレノイド18cを制御して調圧弁18bにより蒸気孔18aを閉塞させる。外気などの空気中には多種多様な菌が浮遊しており、開口部である蒸気孔18aから鍋4内に侵入すると鍋4内で増殖する虞があるが、本実施形態では鍋4内外の連通を遮断して、外気の空気中に浮遊する腐敗菌や食中毒菌などの雑菌が、蒸気排出経路19を経由して蒸気孔18aから鍋4内に侵入することを防止することができる。
【0028】
ここで蓋クランプ解除ボタン12が操作され、その操作信号を制御手段21が受信すると、制御手段21はソレノイド18cを制御して調圧弁18bを蒸気孔18aから移動させて蒸気孔18aを開放する。その後、制御手段21はクランプフック20を制御して本体1と蓋2との係合が解除され、蓋2が開いて鍋4から内蓋5が開放されるようになる。このように、蓋2の係止を外す前に鍋4内と外気とを連通させて減圧状態を解除して大気圧に戻すため、内蓋5の蓋パッキン16が鍋4の上端から離れやすくなり、鍋4内の圧力に関わらず、鍋4内と外気の空気置換を行なって蓋2の下面部に装着された内蓋5を開くことができ、蓋2を容易に開放することができる。
【0029】
その後、蓋2を閉じると、付勢手段によりクランプフック20が係合方向に付勢されてクランプ受け部に係合し、蓋クランプ解除ボタン12の検出手段により本体1が蓋2に閉じたことを検出して、制御手段21に信号を送出する。制御手段21はこの信号を受信すると、例えば10秒後など所定時間経過後にソレノイド18cを制御して蒸気孔18aを閉塞させる。そのため、蒸気孔18aを閉塞させた後に蓋2を閉める、ということがなく、鍋4内の空気が抵抗になって蓋2すなわち内蓋5を閉鎖するのに強い力が必要になる、ということがない。
【0030】
またここで、例えば表示手段23を確認しつつ操作手段22を操作して、調理メニューの設定を行なった後に調理開始の指示を行ない、またはタイマー予約で調理開始時間になり、調理が開始されると、調理制御手段27は、その設定した調理コースの加熱パターンに沿って(A)昇温工程、(B)沸騰加熱工程、(C)沸騰継続工程の各調理工程を行なう。
【0031】
なお本実施形態では調理工程において、鍋4内が加圧状態である可能性があり、鍋4内が加圧状態だと蓋2が開くときに鍋4内の圧力で勢いがついてしまう虞があるため、例えば蒸気孔18aを閉塞した状態で底ヒータ6により鍋4を加熱しているときなど鍋4内が加圧状態のときには、制御手段21は蓋クランプ解除ボタン12をロックするように制御しており、蓋クランプ解除ボタン12が操作されても本体1と蓋2との係合を解除しないようにしている。その一方で、例えば圧力検知手段などで鍋4内が加圧状態にないことが確認可能な場合は、制御手段21は蓋クランプ解除ボタン12のロックを解除するように制御して、蓋クランプ解除ボタン12が操作されると本体1と蓋2との係合を解除するように構成してもよい。
【0032】
調理工程を開始すると、(B)沸騰加熱工程に移行するまでの加熱で、調理制御手段27が底ヒータ駆動手段24と側面ヒータ駆動手段25と蓋ヒータ駆動手段26とに加熱制御信号を出力して、底ヒータ6と側面ヒータ8と蓋ヒータ16とを連続通電する制御を行ない、鍋4内の被調理物Sを強く加熱する(A)昇温工程を行なう。このため、図4に示されるように鍋温度センサ9が検知する検知温度tが次第に上昇し、被調理物Sから蒸気が発生し始めることにより蓋温度センサ15が検知する検知温度tが次第に上昇する。このように、昇温期間である(A)昇温工程において底ヒータ6と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ16とを組み合わせて加熱する構成にすることにより、鍋4の底面、側面、上面の全方向から加熱を行なうことができ、鍋4内の被調理物Sの加熱ムラを少なくすることができる。この(A)昇温工程中では、制御手段21は蒸気孔18aを閉塞させるようにソレノイド18cを制御しており、雑菌が蒸気排出経路19経由で蒸気孔18aから鍋4内に侵入することを防止し、また底ヒータ6、側面ヒータ8および蓋ヒータ16の加熱効率ロスを抑制している。
【0033】
本実施形態では、前述したように制御手段21が熱板温度センサ7の検知温度に基づき底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力して底ヒータ6を制御しており、熱板温度センサ7の検知温度が所定温度の例えば200℃未満のときにはシーズヒータ6bをONし、熱板温度センサ7の検知温度が200℃以上のときにはシーズヒータ6bをOFFするように底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力している。なお本発明はこれに限定されず、数値などはあくまでも一例であり、機器の特性に応じてこの所定温度が設定される。
【0034】
そして調理制御手段27は、検知温度tが所定温度、例えば80℃になったことを検知した鍋温度センサ9からの温度検知信号を受信し、または図4のΔ(1)に示されるように、鍋温度上昇率算出手段30により鍋4の温度上昇率が所定の値、例えば30秒で10℃以上の温度上昇率を算出すると、調理工程が(B)沸騰加熱工程に移行する。(B)沸騰加熱工程では、調理制御手段27が側面ヒータ駆動手段25と蓋ヒータ駆動手段26とに加熱制御信号を出力して、側面ヒータ8と蓋ヒータ16とをOFFにする制御を行なうと共に、底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力して、図4の断続加熱(1)に示されるように、例えばシーズヒータ6bの8秒ON/2秒OFFを繰り返して底ヒータ6を通断電制御する。ここで本実施形態の底ヒータ6は最高出力が1200Wのものであるので、このときの底ヒータ6の通電率は(8/(8+2))×100の80%であり、出力は平均で960Wになる。
【0035】
その後、調理制御手段27は、検知温度tが所定温度、例えば90~100℃の沸騰温度近傍になったことを検知した蓋温度センサ15からの温度検知信号を受信し、または図4のΔ(2)に示されるように、蓋温度上昇率算出手段31が内蓋5の温度上昇率を所定の値、例えば10秒で2℃以下の温度上昇率を算出すると、被調理物Sが沸騰したと判定し、調理工程が(C)沸騰継続工程に移行する。
【0036】
なお本実施形態では、調理工程中における被調理物Sの沸騰時に鍋4内を加圧状態にするか常圧状態にするかを選択することができ、制御手段21は、鍋4内を加圧状態にする場合、(B)沸騰加熱工程でも引き続き蒸気孔18aを閉塞させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を遮断し、その一方で、鍋4内を加圧状態にせず常圧状態にする場合、(B)沸騰加熱工程で蒸気孔18aを開放させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を開放する。
【0037】
(C)沸騰継続工程に移行すると、調理制御手段27が蓋ヒータ駆動手段26に加熱制御信号を出力して蓋ヒータ16をONにする制御を行なって内蓋5への結露を抑制すると共に、底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力して、図4の断続加熱(2)に示されるように、例えばシーズヒータ6bの6秒ON/4秒OFFを繰り返して底ヒータ6を通断電制御して、鍋温度センサ9の検知温度tが、例えば98℃以上など所定の温度以上を維持するようにして、被調理物Sの沸騰状態を継続させる。ここで本実施形態の底ヒータ6は最高出力が1200Wのものであるので、このときの底ヒータ6の通電率は(6/(6+4))×100の60%であり、出力は平均で720Wになる。
【0038】
調理制御手段27は、被調理物Sが沸騰したと判定してから所定時間、例えば20分が経過したことを計時手段により計時すると、底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力してシーズヒータ6bをOFFにする制御を行なって(C)沸騰継続工程を終了させ、調理工程が完了して次の保温工程に移行する。なお本発明はこれに限定されず、被調理物Sが沸騰してからの所定時間は調理メニューの品目や被調理物の量などで異なるため、それぞれの調理メニューや被調理物の量に応じて、例えば10分や15分などそれぞれ調整可能にしてもよい。
【0039】
ここで、(B)沸騰加熱工程で鍋4内を常圧状態にした場合、制御手段21は、(C)沸騰継続工程でも引き続き蒸気孔18aを開放させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を開放させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を開放する。また(B)沸騰加熱工程で鍋4内を加圧状態にした場合、制御手段21は、(C)沸騰継続工程でも引き続き蒸気孔18aを閉塞させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を遮断する一方で、(C)沸騰継続工程の後期や(C)沸騰継続工程終了時で保温工程に移行する前、鍋温度センサ9の検知温度tが前述の所定の温度以上で被調理物Sの沸騰温度相当の状態において、調理制御手段27は蒸気孔18aを開放させるようにソレノイド18cを制御して鍋4内外の連通を開放させ、鍋4内の蒸気や空気などの気体を加熱調理器の機外へ放出する。
【0040】
また被調理物Sが煮水物の場合、(B)沸騰加熱工程や(C)沸騰継続工程において、鍋4内に煮水物の水があるときには、鍋4よりも温度が低い当該水に鍋4の熱が伝達されるため、鍋4に近接した内枠3の温度は、この煮水物の水の沸騰温度を大きく超えた温度にはならない。その一方で、煮水物の水がドライアップして無くなった場合、または煮水物が水分のみのときは煮水物自体が蒸発してすべて無くなった場合は、煮水物により鍋4が冷やされない状態になり、鍋4の温度が急激に上昇し、水の沸騰温度を超えた温度となる。調理制御手段27は、検知温度tが、例えば120℃の所定のドライアップ温度になったことを検知した鍋温度センサ9からの温度検知信号を受信し、または鍋温度上昇率算出手段30により鍋4の温度上昇率が、例えば10秒で3℃以上など所定のドライアップ温度上昇率を算出すると、鍋4内の水分が減少してドライアップしたと判定して底ヒータ6のシーズヒータ6bをOFFにする制御を行ない、被調理物Sの焦げ付きを防止する。
【0041】
保温工程を開始すると、保温制御手段28は、鍋温度センサ9の検知温度tに基づいて鍋4の底部の温度を制御して、鍋4の温度を、例えば70~76℃の保温温度まで降下させ、それと共に、蓋温度センサ15の検知温度に基づいて蓋ヒータ16を制御して内蓋5への露付きを防止し、また側面ヒータ8を制御して鍋4側面への露付きを防止する(D)温度降下工程を行なう。ここで鍋4の熱は被調理物Sに伝達されるため、鍋4内部の被調理物Sの温度は鍋4の温度と略同等である。(D)温度降下工程では、制御手段21は蒸気孔18aを閉塞させており、調理工程の(C)沸騰継続工程で脱気した後に鍋4内外の連通を遮断した状態で、被調理物Sの温度を沸騰温度近傍から保温温度まで降下させるため、鍋4内の蒸気などの気体の気温も降下されて水などの液体になり、鍋4の内部が減圧脱気状態になる。保温制御手段28が鍋温度センサ9の検知温度tに基づき鍋4内部のご飯の温度が保温温度まで降下したと判定すると、保温工程は次の(E)保温維持工程に移行する。
【0042】
(E)保温維持工程に移行すると、保温制御手段28は、鍋温度センサ9の検知温度tに基づき底ヒータ6の通断電制御を行ない、鍋4の温度すなわち被調理物Sの温度が保温温度を維持するようにすると共に、蓋温度センサ15の検知温度に基づいて蓋ヒータ16を制御して内蓋5への露付きを防止し、また側面ヒータ8を制御して鍋4側面への露付きを防止する。(E)保温維持工程中では、蒸気孔18aを閉塞させ、鍋4の内部が減圧脱気状態であることを維持している。このように鍋4内外の連通を遮断して、蒸気孔18aからの腐敗菌や食中毒菌の侵入を防止し、また外気からの冷たい空気の侵入も防止している。
【0043】
なお(E)保温維持工程から、鍋4の温度を、例えば60~66℃の低温保温の温度で維持する(F)低温保温工程に切替えてもよい。この場合、調理工程が終了して保温工程に移行してから、例えば6時間など所定の時間が経過したことを計時手段により検出すると、保温制御手段28は、鍋温度センサ9の検知温度tに基づき底ヒータ6の通断電制御を行ない、鍋4の温度を、例えば60~66℃の低温保温の温度まで降下させ、この低温保温の温度を維持するようにすると共に、蓋温度センサ15の検知温度に基づいて蓋ヒータ16を制御して内蓋5への露付きを防止し、また側面ヒータ8を制御して鍋4側面への露付きを防止する(F)低温保温工程を行ない、鍋4内部の被調理物Sが黄変や独特の臭気を発するという保温状態の劣化を抑制する。また(F)低温保温工程でも、(E)保温維持工程中と同様に、蒸気孔18aを閉塞させ、鍋4の内部が減圧脱気状態であることを維持している。
【0044】
(F)低温保温工程が、例えば6時間など所定の時間継続したことを保温制御手段28が計時手段により検出すると、(E)の保温維持工程に再度移行する。ここで保温制御手段28は、蒸気孔18aを開放するようにソレノイド18cを制御してから、鍋温度センサ9の検知温度tに基づいて底ヒータ6の通断電制御を行ない、被調理物Sの温度が保温温度よりも所定温度高くなるようにして、鍋4内の蒸気および空気を加熱調理器の外に放出して脱気する。その後、保温制御手段28は、鍋温度センサ9の検知温度tに基づき鍋4内部のご飯の温度が保温温度よりも所定の温度上昇したと判定すると、蒸気孔18aを閉塞させるようにソレノイド18cを制御すると共に、底ヒータ6を制御し、鍋温度センサ9の検知温度tに基づいて鍋4の底部の温度を管理して、鍋4内部の被調理物Sの温度を保温温度まで降下させて、再度、鍋4の内部を減圧脱気状態になるようにしている。
【0045】
このように本実施形態では、保温工程で減圧ポンプを用いずに鍋4の内部を減圧脱気状態にでき、したがって加熱調理器の構造を簡素化でき、また蓋体2の小型化、すなわち加熱調理器の小型化をすることができる。さらに減圧ポンプが無いため、減圧ポンプ動作時の駆動音もなく、また減圧ポンプに水分が混入した場合や蒸気が吸い込まれた場合における、熱および水分による減圧ポンプの故障も無くすることができる。
【0046】
ここで、例えば鍋4を本体1の内枠3にセットしたときに鍋4と底ヒータ6との間に異物が挟まるなどの事由により、底ヒータ6の熱板6aから鍋4の底部が浮いたまま調理工程や保温工程が行われてしまい、底ヒータ6から鍋4への熱伝導性が悪化して、熱板6aの温度が、例えば250℃以上など異常に高温になった場合、制御手段21は、熱板温度センサ7の検知温度がヒータ停止温度の、例えば250℃に達したことを検知すると、シーズヒータ6bをOFFするように底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力する。また制御手段21は、底ヒータ温度上昇率算出手段29により熱板6aの温度上昇率が第1のヒータ停止温度上昇率の、例えば10秒間に5℃以上であると算出されると、シーズヒータ6bをOFFするように底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力する。このように制御手段21は、熱板温度センサ7の検知温度に基づいて熱板6aの温度の制御を行なっており、鍋4の検知温度とは関係なく、調理加熱とは切り離して熱板6aの温度の制御を行なうことができ、調理レシピに左右されずに熱板6aの温度を所定温度に制御することができる。したがって1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6で加熱しても、熱板6aが溶解温度にまで上昇しないように熱板6aの温度を抑制することができる。
【0047】
その一方で制御手段21は、鍋4の検知温度と関連した熱板6aの温度の管理も行なっている。前述の熱板6aから鍋4の底部が浮いてしまった場合を例にして説明すると、底ヒータ6駆動時は、シーズヒータ6bがONすることで熱板6aの温度が上昇する。その一方で、鍋4の底部が熱板6aから浮いており、底ヒータ6から鍋4への熱伝導性が悪化しているため鍋4の温度はそれほど上昇しない。ここで制御手段21が底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力して底ヒータ6を駆動しているときに、底ヒータ温度上昇率算出手段29により熱板6aの温度上昇率が前述のヒータ停止温度上昇率未満、および所定の底ヒータ温度上昇率の、例えば10秒間に5℃以上であると算出される一方で、鍋温度上昇率算出手段30により鍋4の温度上昇率が、殆ど上昇率が無い0近傍である第2のヒータ停止温度上昇率の、例えば10秒間に5℃未満であると算出されると、制御手段21は底ヒータ6から鍋4への熱伝導性が悪化していると判定する。そして、制御手段21はシーズヒータ6bをOFFするように底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力する。そのため熱板6aの検知温度と鍋4の検知温度とを関連させて熱板6aの温度の制御をさらに行なうことができ、前述の熱板6aの温度の制御と併せて、1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6で加熱しても、熱板6aが溶解温度にまで上昇しないように熱板6aの温度を抑制することができる。
【0048】
そして調理工程や保温工程など、底ヒータ6のシーズヒータ6bを駆動し、例えば何らかの原因で熱板6aの温度がヒータ停止温度に達したときに、調理制御手段27や保温制御手段28がシーズヒータ6bをOFFするように底ヒータ駆動手段24に加熱制御信号を出力しない場合や、調理制御手段27や保温制御手段28からシーズヒータ6bに対して加熱制御信号が出力されてもシーズヒータ6bがOFFしなかった場合など、熱板6aの温度が、例えば300℃などの熱板温度過昇防止装置10のヒータ電流遮断温度になったことを熱板温度過昇防止装置10が検知すると、熱板温度過昇防止装置10が動作してシーズヒータ6bへの電流を遮断することにより、シーズヒータ6bを機械的に断電させて底ヒータ6を停止する。そのため熱板6aの温度がヒータ停止温度に達し、制御手段21が何らかの理由によりシーズヒータ6bをOFFするように制御しなかった場合などでも、アルミニウム母材の熱板6aが溶解する虞を制御手段21に関係なく防止することができる。さらに鍋4の温度が、例えば130℃などの本体温度過昇防止装置32のヒータ電流遮断温度になったことを本体温度過昇防止装置32が検知すると、本体温度過昇防止装置32が動作してシーズヒータ6bへの電流を遮断することにより、シーズヒータ6bを機械的に断電させて底ヒータ6を停止させ、本体1の、例えばプラスチック部材で形成された外装部が溶解する虞を制御手段21に関係なく防止することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の加熱調理器では、被調理物Sを収容する鍋4と、鍋4の底部に当接して鍋4を加熱する熱板式の底ヒータ6と、底ヒータ6の外殻体としての熱板6aの温度を検知する外殻体温度検知手段としての熱板温度センサ7と、熱板温度センサ7の検知する検知温度から熱板6aの温度上昇率を算出する外殻体温度上昇率算出手段としての底ヒータ温度上昇率算出手段29と、底ヒータ6を停止させるヒータ温度過昇防止手段としての制御手段21と、を備え、熱板温度センサ7が第1のヒータ停止温度としてのヒータ停止温度を検知した場合、または底ヒータ温度上昇率算出手段29が第1のヒータ停止温度上昇率を算出した場合に、制御手段21が底ヒータ6を停止させる構成としている。
【0050】
このように構成することにより、制御手段21は、熱板温度センサ7の検知温度に基づいて熱板6aの温度の制御を行ない、鍋4の検知温度とは関係なく、調理加熱とは切り離して熱板6aの温度の制御を行なうことができ、調理レシピに左右されずに熱板6aの温度を所定温度に制御することができる。したがって1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6で加熱しても、熱板6aが溶解温度にまで上昇しないように熱板6aの温度を抑制することができるため、1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6を、耐久性や安全性を確保して使用することができる。
【0051】
また本実施形態の加熱調理器では、鍋4の温度を検知する鍋温度検知手段としての鍋温度センサ9と、鍋温度センサ9の検知する検知温度から鍋4の温度上昇率を算出する鍋温度上昇率算出手段30と、をさらに備え、底ヒータ6駆動時に、鍋温度上昇率算出手段30が算出した鍋4の温度上昇率が第2のヒータ停止温度上昇率未満である場合に、制御手段21が底ヒータ6を停止させる構成としている。
【0052】
このように構成することにより、熱板6aの検知温度と鍋4の検知温度とを関連させて熱板6aの温度の制御をさらに行なうことができ、前述の熱板6aの温度の制御と併せて、1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6で加熱しても、熱板6aが溶解温度にまで上昇しないように熱板6aの温度を抑制することができる。
【0053】
また本実施形態の底ヒータ6は、熱板6aの温度が第2のヒータ停止温度としての熱板温度過昇防止装置10のヒータ電流遮断温度になったことを検知した場合に、シーズヒータ6bの電流を遮断して底ヒータ6を停止させる外殻体温度過昇防止手段としての熱板温度過昇防止装置10をさらに備える構成としており、熱板6aの温度がヒータ停止温度に達し、制御手段21が何らかの理由によりシーズヒータ6bをOFFするように制御しなかった場合でも、アルミニウム母材の熱板6aが溶解する虞を制御手段21に関係なく防止することができる。
【0054】
また本実施形態の加熱調理器では、鍋4の開口部を覆う蓋体としての内蓋5に設けられた蓋ヒータ16と、鍋4の側部を加熱する側面ヒータ8と、をさらに備え、調理開始から被調理物Sに含まれる水分が沸騰するまでの期間としての(A)昇温工程および(B)沸騰加熱工程で、底ヒータ6と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ16と、を組み合わせて加熱する構成としている。そのため鍋4の底面、側面、上面の全方向から加熱を行なうことができ、鍋4内の被調理物Sの加熱ムラを少なくすることができる。
【0055】
また本実施形態の加熱調理器では、鍋4の温度が第3のヒータ停止温度としての本体温度過昇防止手段32のヒータ電流遮断温度になったことを検知した場合にシーズヒータ6bの電流を遮断して底ヒータ6を停止させる本体温度過昇防止手段32をさらに備え、本体温度過昇防止手段32は、底ヒータ6から離間し、かつ内枠3の突出部3bを介して鍋4に当接するように配設される構成としている。そのためシーズヒータ6bを機械的に断電することができ、1000Wを超える高出力の熱板式の底ヒータ6で鍋4を加熱しても、鍋4が異常な高温にならないように鍋4の温度を抑制することができるため、本体1の、例えばプラスチック部材で形成された外装部が溶解する虞を制御手段21に関係なく防止することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、この加熱調理器を使用して炊飯やおでんや煮込みなどの調理メニューを行なってもよく、加熱調理を行なった後に保温工程に移行し、鍋4の内部を減圧脱気状態にして、鍋4内の被調理物Sの腐敗を抑制すると共に、被調理物Sに味を染み込ませて熟成させるように構成してもよい。また実施形態中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、加熱調理器の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。
【符号の説明】
【0057】
4 鍋
5 内蓋(蓋体)
6 底ヒータ
6a 熱板(外殻体)
6b シーズヒータ
7 熱板温度センサ(外殻体温度検知手段)
8 側面ヒータ
9 鍋温度センサ(鍋温度検知手段)
10 熱板温度過昇防止装置(外殻体温度過昇防止手段)
16 蓋ヒータ
21 制御手段(ヒータ温度過昇防止手段)
29 底ヒータ温度上昇率算出手段(外殻体温度上昇率算出手段)
30 鍋温度上昇率算出手段
32 本体温度過昇防止手段
図1
図2
図3
図4