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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088222
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20230619BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230619BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/00 E
E04F13/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202939
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 雅史
(72)【発明者】
【氏名】臼田 啓治
(72)【発明者】
【氏名】砂子 真人
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110EA06
2E110EA09
2E110GA33W
2E110GA42W
2E110GB42W
2E110GB42Z
2E110GB43W
2E110GB44W
2E110GB52W
2E110GB53Z
2E110GB54W
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100CA18B
4F100DG11A
4F100DG15A
4F100GB08
4F100GB33
4F100HB31B
4F100JA13A
4F100JK02
4F100JK04
(57)【要約】
【課題】
表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な、表面材を提供する。
【解決手段】
布帛と樹脂を含み構成されているプリントとを有しており、布帛における一方の主面上にプリントを備える表面材であって、表面材のたて方向とよこ方向の曲げ剛性値との平均値が0.83gf・cm/cmより大きく、表面材のたて方向とよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい表面材を用いることによって、調製した内外装材の表面に皺が生じるのを抑制して意匠性に富む内外装材を提供できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛と、樹脂を含み構成されているプリントとを有しており、前記布帛における一方の主面上に前記プリントを備える、表面材であって、
純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、表面材を前記プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲げた際に測定される、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値が、0.83gf・cm/cmより大きく、
純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて測定される、表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい、
表面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種内装材や各種外装材を調製可能な、表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面材を立体的に成形して各種内装材や各種外装材(以降、併せて内外装材と称する)を調製することが行われている。一例として、例えば金型などの加熱板や加熱ローラなどの手段によって熱または熱と圧力を作用させて表面材を曲げる成形工程へ供することで、あるいは、熱を作用させることなく金型などを用いて表面材を曲げる成形工程へ供することで、表面材を所望する立体的な形状に変形させて内外装材を調製することが行われている。
【0003】
そのため、インジェクション成形により内装部品を成形する際に、特許文献1に開示のプリント不織布と一体化して、プリント不織布で装飾した内装部品(例えば、ピラー)を成形することを試みた。ところが、インジェクション成形した際に、溶融樹脂がプリント不織布のプリント面まで透過してしまい、内装部品の意匠性を損なう場合があった。また、インジェクション成形した際に、溶融樹脂がプリント不織布のプリント面まで透過しない場合であっても、プリント不織布に凹凸が発生し、内装部品の意匠性を損なう場合があった。なお、プリント不織布のプリント面とは反対面に、フィルムをラミネートすることによって、溶融樹脂の透過や凹凸の発生による意匠性の低下を防止することができると考えられたが、プリント不織布にフィルムをラミネートすることは、製造工程の追加に繋がるため、得策ではない。また、意匠性に富む内外装材を提供できるよう、前述の表面材として、布帛(例えば、不織布など)における一方の主面上に、樹脂を含み構成されているプリントを備える表面材を採用することが検討されている。このような表面材として、例えば、特開2018-40089(特許文献1)には、不織布表面にプリント樹脂を有するインジェクション成形用表面材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-40089(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような従来技術にかかる表面材を、上述した成形工程へ供して内外装材を調製した場合、調製した内外装材の表面(表面材におけるプリントが存在する主面由来の表面)に、皺が生じるという問題が発生することがあった。そして、表面に皺が生じている内外装材は、その皺の発生により意匠性が劣るものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は「布帛と、樹脂を含み構成されているプリントとを有しており、前記布帛における一方の主面上に前記プリントを備える、表面材であって、
純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、表面材を前記プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲げた際に測定される、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値が、0.83gf・cm/cmより大きく、
純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて測定される、表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい、
表面材。」である。
【発明の効果】
【0007】
本願出願人は検討の結果、布帛における一方の主面上にプリントを備える表面材の物性を最適化することによって、成形工程へ供し調製した内外装材の表面に皺が生じるのを防止できることを見出した。
【0008】
つまり、本願出願人は、布帛における一方の主面上にプリントを備えた表面材について、
・プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け過剰に曲がり易い特性を有している場合、特に、表面材の全体にわたり当該特性を有している場合には、調製した内外装材の表面に皺が生じ易くなること、
・主面と平行を成す方向へ過剰に伸び易い特性を有している場合、特に、表面材の全体にわたり当該特性を有している場合には、調製した内外装材の表面に皺が生じ易くなること、
を見出した。そして、この両方の特性を有する表面材を成形工程へ供した場合には、調製される内外装材の表面に皺が発生することを見出した。
【0009】
本願出願人は上述した知見のもと検討を続けた結果、本発明にかかる測定方法によって、表面材が有する曲がり易さと伸び易さを評価できることを見出した。
【0010】
つまり、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、表面材をプリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲げた際に測定される、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値が、0.83gf・cm/cmより大きい表面材は、表面材の全体にわたり、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる剛性を有しており、プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け過剰に曲がり易い特性を有する表面材ではないことを見出した。そのため、当該平均値が、0.83gf・cm/cmより大きい表面材を用いることによって、調製した内外装材の表面に皺が生じるのを抑制できる。
【0011】
そして、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて測定される、表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい表面材は、表面材の全体にわたり、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる形状の維持性を有しており、主面と平行を成す方向へ過剰に伸び易い特性を有する表面材ではないことを見出した。そのため、当該平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい表面材を用いることによって、調製した内外装材の表面に皺が生じるのを抑制できる。
【0012】
以上から、本発明にかかる物性を有する表面材は、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な、表面材である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。また、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0014】
本発明にかかる表面材は布帛を備えている。本発明でいう布帛とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の繊維構造体である。本発明にかかる表面材は、布帛(特に、繊維ウェブや不織布)を含んでいるため、柔軟で金型への追従性に優れるなど所望する立体的な形状に変形させ易い特性を有すると共に、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材である。
【0015】
布帛の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0016】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0017】
表面材に難燃性が求められる場合には、布帛の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持してもよい。
【0018】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0019】
布帛が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛に強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
【0020】
布帛が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増し表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供でき好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
【0021】
これらの構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0022】
構成繊維の繊度は適宜調整するが、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供できるよう、2.2dtex以下であるのが好ましく、1.7dtex以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、0.1dtex以上であるのが現実的である。
【0023】
また、構成繊維の繊維長も適宜調整するが、柔軟で金型への追従性に優れるなど所望する立体的な形状に変形させ易い特性を有すると共に、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材であるよう、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、不織布の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供し難くなる恐れがあることから、繊維長は110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0024】
布帛の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0025】
布帛の調製方法は適宜選択できる。繊維ウェブや不織布は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などへ供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0026】
また、上述の方法を用いて調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0027】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0028】
布帛を構成する繊維同士を接着するため、接着繊維による構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法以外にも、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。
【0029】
バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型への追従性に優れるなど所望する立体的な形状に変形させ易い特性を有すると共に、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を提供でき好ましい。
【0030】
不織布に含まれるバインダの目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を提供し難くなる恐れがある。そのため、バインダの目付は、50g/m以下であるのが好ましく、30g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下(理想的には0g/m)であるのが好ましい。一方、バインダを含んでいない不織布は耐摩耗性が低下して意匠性に富む内外装材を提供し難くなる恐れがあることから、この観点においては、目付10g/m以上のバインダを含んだ不織布を採用するのが好ましい。また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0031】
布帛の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。布帛の厚みは、0.1~5mmであることができ、0.5~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。また、布帛の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。なお、本発明において厚みとは主面と垂直方向へ20g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0032】
本発明にかかる表面材は、前述した布帛の一方の主面上における全面あるいは部分的に、樹脂を含み構成されているプリントを有している。本発明でいうプリントは、少なくとも布帛の一方の主面上に存在し、主として表面材の触感を向上させる役割や意匠性を向上する役割を担う。また、耐摩耗性の向上や構成繊維の脱落を防止する効果に寄与する役割も担い得る。なお、布帛の両主面にプリントが存在してなる表面材である場合、表面材におけるプリントが付与されている目付(単位:g/m)が多い方の主面を、表面材(布帛)におけるプリントが存在している側の主面(プリントを備える主面)であるとみなすことができる。
【0033】
布帛の両主面にプリントが存在してなる表面材であってもよいが、金型への追従性に優れるなど所望する立体的な形状に変形させ易い特性を有することで、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を提供できるよう、一方の主面上にのみにプリントが存在してなる(一方の主面上のみにプリントを備える)表面材であるのが好ましい。
【0034】
プリントに含まれる樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、より金型への追従性に優れるなど所望する立体的な形状に変形させ易い特性を有すると共に、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を提供できることから、プリントはアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。なお、プリントは樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。特に、プリントが顔料を含むことで、意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を提供でき好ましい。
【0035】
なお、プリントがシリコーンを含有していると、触感に優れる主面を備える内外装材を提供可能な表面材を提供でき好ましい。また、プリントが中空粒子を含有していると、更に触感に優れる主面を備える内外装材を提供可能な表面材を提供でき好ましい。当該中空粒子の平均粒子径は適宜調整できるが、より触感に優れる主面を備える内外装材を提供可能な表面材を提供できる傾向があることから、その平均粒子径は35μmよりも大きく106μm以下であるのが好ましい。このような中空粒子の具体例として、松本油脂製薬株式会社のMFL-81GTA、MFL-81GCA、MFL-SEVEN、MFL-HD30CA、MFL-HD60CA、MFL-100MCA、MFL-110CALなどを挙げることができる。また、加熱を受けることによって熱膨張する粒子を採用してもよい。このような粒子として、熱膨張して中空粒子となる、日本フィライト株式会社の920DU40、909DU80、930DU120などを挙げることができる。
【0036】
本発明にかかる表面材は、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、下記の測定方法によって求められる、表面材をプリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲げた際に測定される、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値が、0.83gf・cm/cmより大きいことを特徴とする。
【0037】
(表面材のたて方向の曲げ剛性値と、よこ方向の曲げ剛性値との、平均値の測定方法)
1.一方の主面上にプリントを備える表面材を用意する。このとき、当該主面上における、表面材の製造時の搬送方向と平行を成す方向をたて方向、当該たて方向と直行する方向をよこ方向とする。
2.前記表面材から、試料A1および試料A2(いずれも、一辺10cmの正方形形状、厚みは表面材と同じ)を採取する。
3.採取した試料A1を、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)に設置する。なお、純曲げ試験機(KES-FB2)において、試料はチャック間の距離が1cmの間隔をなし、幅10cmにわたって二つのチャックに把持される。そして、この時、チャック間を最短距離で結ぶ方向と表面材におけるたて方向とが平行を成すようにする。
4.設置された試料A1に対し、曲率K=0~2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec)の曲げ試験を、当該試料A1におけるプリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向かう方向に対して実施する。この時、チャック間に保持されている試料は、等速度(変形速度0.5cm-1/sec)でチャック間の距離を半径とした円弧上に曲げられる。当該測定中に測定された曲げ剛性値を測定し、そのうち曲げ剛性値の最大値a1を求める。
5.採取した試料A2を純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)に設置する。なお、純曲げ試験機(KES-FB2)において、試料はチャック間の距離が1cmの間隔をなし、幅10cmにわたって二つのチャックに把持される。そして、この時、チャック間を最短距離で結ぶ方向と表面材におけるよこ方向とが平行を成すようにする。
6.設置された試料A2に対し、曲率K=0~2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec)の曲げ試験を、当該試料A2におけるプリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向かう方向に対して実施する。この時、チャック間に保持されている試料は、等速度(変形速度0.5cm-1/sec)でチャック間の距離を半径とした円弧上に曲げられる。当該測定中に測定された曲げ剛性値を測定し、そのうち曲げ剛性値の最大値a2を求める。
7.曲げ剛性値の最大値a1とa2の平均値を算出し、当該値を本発明にかかる「表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値」とする。
【0038】
なお、曲げ剛性値(また、曲げ剛性値との平均値)の値が小さい試料であるほど、プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲がり易い特性を有していることを意味する。
【0039】
なお、表面材の製造時の搬送方向が不明である場合には、次の方を用いて、表面材の製造時の搬送方向を判断できる。
【0040】
(表面材の製造時の搬送方向が不明である場合)
まず、表面材の主面における様々な方向と試料の辺とが平行を成すようにして、表面材から複数の試料(いずれも、一辺10cmの正方形形状、厚みは表面材と同じ)を採取する。
次いで、採取した各試料を上述した測定方法3~4の工程へ各々供する。なお、試料をチャック間に把持する際、チャック間を最短距離で結ぶ方向と表面材におけるいずれか一辺とが平行を成すようにする。
各試料で測定された曲げ剛性値の最大値を比較し、最も高い曲げ剛性値を示した試料における、測定時のチャック間を最短距離で結ぶ方向と平行を成す方向を、当該試料を採取した表面材の製造時の搬送方向であると判断する。
【0041】
本願出願人は、本発明にかかる平均値が0.83gf・cm/cmより大きい表面材は、表面材の全体にわたり、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる剛性を有しており、プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け、過剰に曲がり易い特性を有するものではないことを見出した。
【0042】
つまり、本願出願人は検討の結果、当該平均値が0.83gf・cm/cm以下の表面材を成形工程へ供して内外装材を調製した場合、調製した内外装材の表面に皺が生じ易いことを見出した。一方、本願出願人は検討の結果、当該平均値が0.83gf・cm/cmより大きい表面材を用いることによって、調製した内外装材の表面に皺が生じるのを抑制できることを見出した。
【0043】
この理由は完全に明らかにできていないが、プリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け過剰に曲がり易い特性を有している表面材(当該平均値が0.83gf・cm/cm以下の表面材)を金型へ供するなどの成形手段へ供すると、表面材が成形手段の動き(例えば、プレス時の金型の動き)に過剰に追従して、意図せず成形手段(例えば、金型同士の間)に巻き込まれ、巻き込まれた状態のまま立体的な形状に変形すると考えられる。つまり、表面材における意図せず成形手段に巻き込まれた部分が、調製した内外装材の表面における皺の発生原因になっていると考えられる。
【0044】
一方、本発明にかかる表面材は、本発明にかかる平均値が0.83gf・cm/cmより大きく、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる剛性を有した表面材である。そのため、金型へ供するなどの成形手段へ供しても、表面材が成形手段の動き(例えば、プレス時の金型の動き)に過剰に追従することなく、意図せず成形手段(例えば、金型同士の間)に巻き込まれることが防止されている。その結果、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供できると考えられる。
【0045】
本発明によって、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を実現できるよう、当該平均値は0.83gf・cm/cmより大きく、1.00gf・cm/cm以上であるのが好ましく、1.10gf・cm/cm以上であるのが好ましく、1.20gf・cm/cm以上であるのが好ましい。上限値は適宜調整できるが、当該平均値が高過ぎる表面材を、複雑で立体的な形状に変形させるため厳しい条件の成形工程へ供すると(角度の急な成形表面を有するなど複雑な形状を有する成形手段へ供するなどすると)、使用する成形手段へ追従し難いことに起因して意図せず皺が発生する恐れがある。そのため、当該平均値は1.50gf・cm/cm以下であるのが現実的であり、1.39gf・cm/cm未満であるのが好ましい。
【0046】
更に、本発明にかかる表面材は、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、下記の測定方法によって求める、表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さいことを特徴とする。
【0047】
(表面材のたて方向における引張仕事量と、よこ方向における引張仕事量との、平均値の測定方法)
1.一方の主面上にプリントを備える表面材を用意する。このとき、当該主面上における、表面材の製造時の搬送方向と平行を成す方向をたて方向、当該たて方向と直行する方向をよこ方向とする。
2.前記表面材から、試料B1および試料B2(いずれも、一辺10cmの正方形形状、厚みは表面材と同じ)を採取する。
3.採取した試料B1を、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)に設置する。なお、純曲げ試験機(KES-FB2)において、試料はチャック間の距離が5cmの間隔をなし、幅10cmにわたって二つのチャックに把持される。そして、この時、チャック間を最短距離で結ぶ方向と表面材におけるたて方向とが平行を成すようにする。
4.そして、0.2mm/secの条件でチャック間を離してゆき、設置された試料B1へ主面と平行を成す方向へ荷重500gf/cmの力を作用させ伸張させた際に、試料B1が示した引張仕事量(WT値)b1を求める。
5.採取した試料B2を純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)に設置する。なお、純曲げ試験機(KES-FB2)において、試料はチャック間の距離が5cmの間隔をなし、幅10cmにわたって二つのチャックに把持される。そして、この時、チャック間を最短距離で結ぶ方向と表面材におけるよこ方向とが平行を成すようにする。
6.そして、0.2mm/secの条件でチャック間を離してゆき、設置された試料B2に主面と平行を成す方向へ荷重500gf/cmの力を作用させ伸張させた際に、試料B2が示した引張仕事量(WT値)b2を求める。
7.引張仕事量(WT値)b1とb2の平均値を算出し、当該値を本発明にかかる「表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値」とする。
【0048】
なお、引張仕事量の値が大きい試料であるほど、主面と平行を成す方向へ同じ荷重を作用させ伸張させた際に、主面と平行を成す方向へ伸び易い特性を有していることを意味する。
【0049】
なお、表面材の製造時の搬送方向が不明である場合には、(表面材の製造時の搬送方向が不明である場合)に挙げた方法によって、表面材の製造時の搬送方向を判断できる。
本願出願人は、本発明にかかる平均値が7.9gf・cm/cmより小さい表面材は、表面材の全体にわたり、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる形状の維持持性を有しており、主面と平行を成す方向へ過剰に伸び易い特性を有するものではないことを見出した。
【0050】
つまり、本願出願人は検討の結果、当該平均値が7.9gf・cm/cm以上の表面材を成形工程へ供して内外装材を調製した場合、調製した内外装材の表面に皺が生じ易いことを見出した。一方、本願出願人は検討の結果、当該平均値が7.9gf・cm/cmより小さい表面材を用いることによって、調製した内外装材の表面に皺が生じるのを抑制できることを見出した。
【0051】
この理由は完全に明らかにできていないが、主面と平行を成す方向へ過剰に伸び易い特性を有している表面材(当該平均値が7.9gf・cm/cm以上の表面材)を金型へ供するなどの成形手段へ供すると、表面材が成形手段の動き(例えば、プレス時の金型の動き)に過剰に追従して、意図せず成形手段(例えば、金型同士の間)に巻き込まれ、巻き込まれた状態のまま立体的な形状に変形すると考えられる。つまり、表面材における意図せず成形手段に巻き込まれた部分が、調製した内外装材の表面における皺の発生原因になっていると考えられる。
【0052】
一方、本発明にかかる表面材は、本発明にかかる平均値が7.9gf・cm/cmより小さく、皺の発生が防止された内外装材を提供するため必要となる形状の維維持性を有した表面材である。そのため、金型へ供するなどの成形手段へ供しても、表面材が成形手段の動き(例えば、プレス時の金型の動き)に過剰に追従することなく、意図せず成形手段(例えば、金型同士の間)に巻き込まれることが防止されている。その結果、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供できると考えられる。
【0053】
本発明によって、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を実現できるよう、当該平均値は7.9gf・cm/cmより小さく、7.5gf・cm/cm以下であるのが好ましく、7.0gf・cm/cm以下であるのが好ましく、6.5gf・cm/cm以下であるのが好ましい。下限値は0gf・cm/cmよりも大きいものであり適宜調整できるが、当該平均値が低過ぎる表面材を、複雑で立体的な形状に変形させるため厳しい条件の成形工程へ供すると(角度の急な成形表面を有するなど複雑な形状を有する成形手段へ供するなどすると)、使用する成形手段へ追従し難いことに起因して意図せず皺が発生する恐れがある。そのため、当該平均値は2.9gf・cm/cmよりも大きいのが現実的であり、3.0gf・cm/cm以上であるのが好ましい。
【0054】
本発明にかかる表面材が備える布帛の見かけ密度は、意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材を実現できるよう、適宜調整する。特に、表面の地合いが良好であってより意匠性に富む内外装材を提供できることから、布帛の見かけ密度は0.111g/cmよりも高いのが好ましく、0.113g/cm以上であるのが好ましい。上限値は適宜調整するが、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供できるよう、0.122g/cm未満であるのが好ましく、0.117g/cm以下であるのが好ましい。なお、当該見かけ密度は、表面材が備える布帛の目付(プリントを除いた目付)を、布帛の厚み(プリントを除いた厚み)で除し算出できる。
【0055】
本発明にかかる物性を有するのであれば、一方の主面上にプリントを備える布帛を、単体で表面材として使用できる。また、布帛に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層して、本発明にかかる物性を有する表面材としてもよい。
【0056】
あるいは、本発明にかかる表面材に、別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層してもよい。これらの構成部材は表面材における、プリントを備える側の主面とは異なる主面側に積層して設けるのが好ましい。
【0057】
また、表面材はそのまま成形工程へ供することができるが、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程や、リライアントプレス処理などの厚さや表面の平滑性といった諸物性を調整する工程などの、各種二次工程へ供してから成形工程へ供してもよい。
【0058】
次に、本発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
【0059】
本発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択できるが、一例として、
工程(1)繊維ウェブを用意する工程、
工程(2)前記繊維ウェブを繊維絡合装置へ供し、前記繊維ウェブの構成繊維同士を絡合させて不織布を調製する工程、
工程(3)プリントを構成可能な樹脂などの構成成分を、分散媒に分散させてなるプリント液および/または溶媒に溶解させてなるプリント液を用意する工程、
工程(4)不織布における一方の主面上に、プリント液を付与する工程、
工程(5)一方の主面上にプリント液を付与した不織布から、前記分散媒および/または前記溶媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法であることができる。
工程(1)について説明する。
繊維ウェブは本発明にかかる表面材を調製できるのであれば、構成繊維の態様は適宜選択できる。
【0060】
工程(2)について説明する。
繊維ウェブの構成繊維同士を絡合させて不織布を調製するため使用する、繊維絡合装置の種類は適宜選択でき、水流絡合装置やニードルパンチ装置などを採用できる。また、繊維絡合装置による繊維ウェブの構成繊維の絡合条件は適宜調整する。
【0061】
なお、本製造方法の例示では、構成繊維同士をただ絡合してなる不織布を例示したが、当該不織布の構成繊維同士を接着できるよう繊維ウェブあるいは不織布へバインダ液を付与し、バインダ液中に含まれるバインダ成分によって、繊維ウェブあるいは不織布の構成繊維同士を接着させもよい。
【0062】
工程(3)について説明する。
プリント液に含まれる樹脂などの構成成分とその組成は、求めるプリントを形成できるよう適宜調整できる。不織布の主面から脱落し難い態様で当該主面上にプリントを形成可能なように、プリント液には樹脂が含まれている。また、プリント液には樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。特に、プリント液が顔料を含んでいると、意匠性に優れる表面材を提供でき好ましい。
【0063】
分散媒や溶媒の種類は適宜選択できるが、不織布の主面上へ求める態様でプリント液を付与できるよう、プリントを構成可能な樹脂粒子および顔料など他の成分が溶解せず分散可能な分散媒を採用する、あるいは、プリントを構成可能な樹脂が溶解すると共に顔料など他の成分が溶解せず分散可能な分散媒を採用するのが好ましい。
【0064】
工程(4)について説明する。
不織布における一方の主面上に、プリント液を付与する方法は適宜選択できる。不織布における一方の主面上の全面にプリント液を付与しても、不織布における一方の主面上の一部分に柄を形成するようにプリント液を付与してもよい。また、不織布におけるもう一方の主面上にもプリント液が付与されていてもよい。
【0065】
プリント液の付与方法は適宜選択でき、不織布の主面にプリント液をそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーやグラビアロールなどを用いプリントや捺染して付与する方法などを選択できる。あるいは、不織布の一方の主面側をプリント液に含浸してもよい。なお、一種類のプリント液を付与する以外にも、複数種類のプリント液を付与しても良い。また、複数種類のプリント液を付与する場合には、各プリント液の付与態様(組成、柄、プリント液の組成)は異なっていても良い。
【0066】
工程(5)について説明する。
不織布における一方の主面上に付与されたプリント液から、分散媒や溶媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。分散媒を除去する際の加熱温度は分散媒が揮発可能な温度であると共に、不織布やプリントなど表面材を構成する部材の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。なお、本工程によって不織布の構成繊維同士を接着する(溶融したバインダで接着する、あるいは、構成繊維に含まれる熱可塑性成分を溶融させ接着する)、プリントに含まれる樹脂を架橋してもよい。
【0067】
表面材の製造方法において、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布)の見掛け密度を調整することによって、本発明が規定する、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値、および、表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値を満足する表面材を調製可能である。
【0068】
具体的には、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布)の見掛け密度を低下するため、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布)の目付および/または厚みを調整する工程を備えた表面材の製造方法であることができる。このような工程として、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布)の主面と平行を成す方向へ張力を作用させて、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布)の見掛け密度を低下させる工程を採用できる。
【0069】
上述の表面材の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えた表面材の製造方法であってもよい。なお、これらの構成部材は表面材における、プリント側の主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。また、表面材をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程へ供してもよい。
【0070】
そして、表面材を金型へ供するなどの成形手段へ供することで、表面材を所望する立体的な形状に変形させて内外装材を調製できる。
【実施例0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
(プリント液の用意)
以下に記載の割合で配合したプリント液を用意した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-5℃、アクリル酸エステル樹脂の固形分質量:45質量%):40質量部
・増粘剤A(固形分質量:1.5質量%):20質量部
・増粘剤B(固形分質量:28質量%):1質量部
・消泡剤(固形分質量:14質量%):0.5質量部
・架橋剤(固形分質量:40質量%):2質量部
・顔料(固形分質量:38質量%):3質量部
・25%アンモニア水:1質量部
・水:32.5質量部
【0073】
(比較例1)
分散媒中に、ナイロン繊維(繊度:0.6dtex、繊維長:5mm)50%、ナイロン芯鞘繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:5mm)50%を分散させて、繊維分散液を調製した。そして、繊維分散液を湿式抄造した後に分散媒を除去することで、繊維ウェブ(目付:41g/m)を形成した。
次いで、繊維ウェブを熱ロール間(ロール加熱温度:80℃)へ供することで、不織布(目付:41g/m、厚み:0.24mm)を調製した。
そして、シリンダを用いてプリント液を、不織布における一方の主面上の全面に付与した。その後、加熱温度を160℃に調整したドライヤーを用いて乾燥することでプリント液中に含まれていた水を除去し、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリントを備えてなる表面材(目付:57g/m、プリントの目付:15g/m、厚み:0.24mm、プリントを除いた厚み(布帛の厚み):0.24mm)を調製した。
【0074】
(実施例1)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm)100%を用いて、カード機により開繊して繊維ウェブ(目付:160g/m)を形成した。
次いで、繊維ウェブの一方の主面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行った後、熱ロール間(ギャップ間隔:0.4mm、ロール加熱温度:165℃)へ供することで、不織布(目付:160g/m、厚み:1.7mm)を調製した。
次いで、ニードルパンチ不織布のニードリングを施した面とは反対の面から、バインダ成分としてアクリル酸エステル樹脂を配合したバインダ液を泡立てた状態で付与し、第二のロール間(ギャップ間隔:0.25mm)へ供した。その後、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥することで、アクリル酸エステル樹脂によって構成繊維同士が接着一体化してなるバインダ接着不織布(目付:160g/m、厚み:1.7mm)を調整した。
そして、バインダ接着不織布におけるニードルパンチを施した側の主面に対して、シリンダを用いてプリント液を当該主面上の全面に付与した。その後、加熱温度を160℃に調整したドライヤーを用いて乾燥することでプリント液中に含まれていた水を除去し、バインダ接着不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリントを備えてなる表面材(目付:176g/m、プリントの目付:16g/m、厚み:1.59mm、プリントを除いた厚み(布帛の厚み):1.59mm)を調製した。
【0075】
(実施例2~4、比較例2~4)
使用する不織布の目付と厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バインダ接着不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリントを備えてなる表面材を調製した。
【0076】
上述のようにして調製した各表面材を以下の測定方法へ供することで、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な表面材であるか否かを判断した。
(皺発生の評価)
1.表面材から試料(一辺25cmの正方形形状、厚みは表面材と同じ)を採取する。
2.プリントを備えた主面が露出するようにして、試料を平滑な板の上に乗せる。
3.試料の四辺における、一辺Aとそれに平行をなす別の一辺Bとの間に谷部分が形成されるように、試料の一辺B側が平滑な板と接した状態のまま、一辺A側の主面と一辺B側の主面とが垂直を成すまで、試料の一辺A側を平滑な板から持ち上げて試料を折り曲げる。このとき、折り曲げた試料は“」”の字状の態様となる。
4.工程3時において、試料のプリントを備えた主面における、折り曲げられて形成された谷部分の態様を目視で確認する。
【0077】
本評価を行った結果、谷部分の表面(プリントを備えた主面)に皺が発生した表面材を「B」と評価した。一方、谷部分の表面(プリントを備えた主面)に皺の発生が認められなかった表面材を「A」と評価した。
【0078】
(地合いの評価)
上述した(皺発生の評価)の工程4において、試料のプリントを備えた主面における、折り曲げられて形成された谷部分の態様を目視で確認した。
【0079】
本評価を行った結果、谷部分の表面(プリントを備えた主面)の地合いが悪いと判断された実施例1の表面材を「B」と評価し、基準とした。一方、「B」と評価された表面材よりも、谷部分の表面(プリントを備えた主面)の地合いが良好であってより意匠性に富むものであった表面材を「A」と評価した。
【0080】
以上のようにして調製した各表面材の、諸物性と評価結果を表1にまとめた。なお、表1中では(皺発生の評価)結果を「皺の発生」欄に記載し、(地合いの評価)結果を「地合い」欄に記載した。
【0081】
【表1】
【0082】
以上の結果から、
・純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES-FB2)を用いて、表面材をプリントが存在している側の主面からもう一方の主面へ向け曲げた際に測定される、表面材のたて方向の曲げ剛性値と、同方法で測定される表面材のよこ方向の曲げ剛性値との平均値が、0.83gf・cm/cmより大きい(好ましくは1.02gf・cm/cm以上)、であると共に、
・表面材のたて方向における引張仕事量(WT値)と、同方法で測定される表面材のよこ方向における引張仕事量(WT値)との平均値が、7.9gf・cm/cmより小さい(好ましくは6.4gf・cm/cm以下)、
である表面材は、表面に皺が生じるのが防止されており意匠性に富む内外装材を提供可能な、表面材であることが判明した。
【0083】
加えて、実施例1と実施例2とを比較した結果から、更に、見かけ密度が0.111g/cmよりも高い(好ましくは0.113g/cm以上)布帛を備える表面材は、表面に皺が生じるのが防止されており、地合いが良好であることによって、更に意匠性に富む内外装材を提供可能な、表面材であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の表面材は、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど自動車用;パーティションなどのインテリア用;壁装材などの建材用に、好適に使用することができる。