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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008823
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】純水製造装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230112BHJP
【FI】
C02F1/00 S
C02F1/00 B
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083787
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2021110768
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大庵 亨輔
(57)【要約】
【課題】より低コストで純水の循環による温度上昇を抑制する。
【解決手段】純水製造装置1は、純水を貯留するタンク2と、タンク2内の純水を循環させる循環ラインL1と、循環ラインL1に設けられ、タンク2内の純水を循環ラインL1に流通させるポンプ3と、ポンプ3の下流側で循環ラインL1から分岐してユースポイント7に接続された送水ラインL2と、送水ラインL2への純水の流通の有無または送水ラインL2を流れる純水の流量変化を直接的または間接的に検知した結果に基づいて、ポンプ3の回転数を切り替える制御手段10と、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を貯留するタンクと、
前記タンク内の純水を循環させる循環ラインと、
前記循環ラインに設けられ、前記タンク内の純水を前記循環ラインに流通させるポンプと、
前記ポンプの下流側で前記循環ラインから分岐してユースポイントに接続された送水ラインと、
前記送水ラインへの純水の流通の有無または前記送水ラインを流れる純水の流量変化を直接的または間接的に検知した結果に基づいて、前記ポンプの回転数を切り替える制御手段と、を有する純水製造装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記送水ラインに純水が流れ始めたとき、または前記送水ラインを流れる純水の流量が増加したときに、前記ポンプの回転数を第1の回転数から該第1の回転数を上回る第2の回転数に切り替える、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記送水ラインに純水が流れ始めたこと、または前記送水ラインを流れる純水の流量が増加したことを直接的あるいは間接的に検知して検知信号を出力する検知手段を有し、
前記制御手段は、前記検知信号を受信したときに、前記ポンプの回転数を前記第1の回転数から前記第2の回転数に切り替える、請求項2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記循環ラインのうち前記送水ラインとの分岐点の下流側に設けられた背圧発生手段を有し、
前記検知手段は、前記循環ラインのうち前記分岐点の下流側を流れる純水の圧力が所定値以下になったときに前記検知信号を出力する、請求項3に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記循環ラインのうち前記分岐点の下流側であって前記背圧発生手段の上流側に設けられた圧力スイッチまたは圧力センサである、請求項4に記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記送水ラインを流れる純水の流量が所定値以上になったときに前記検知信号を出力する、請求項3に記載の純水製造装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記送水ラインに設けられた流量スイッチまたは流量センサである、請求項6に記載の純水製造装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記送水ラインと前記ユースポイントとを接続する電磁弁が開いたときに、前記ポンプの回転数を前記第1の回転数から前記第2の回転数に切り替える、請求項2に記載の純水製造装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ポンプの駆動出力を前記タンクの最小保有水量1L当たりに換算して5W以下に設定することで、前記ポンプの回転数を前記第1の回転数に調整する、請求項2から8のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項10】
純水製造装置の運転方法であって、
循環ラインに設けられたポンプにより、タンクに貯留された純水を前記循環ラインに沿って循環させる工程と、
前記ポンプの下流側で前記循環ラインから分岐した送水ラインを通じて、前記循環ラインを循環する純水をユースポイントに送水する工程と、
前記送水ラインへの純水の流通の有無または前記送水ラインを流れる純水の流量変化を直接的または間接的に検知した結果に基づいて、前記ポンプの回転数を切り替える工程と、を含む、純水製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造用や生化学分析用の純水(精製水)を製造してユースポイントに供給する装置として、循環ラインに沿って純水を循環させながら、必要に応じてその一部をユースポイントに供給する純水製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、例えばユースポイントで純水の需要がない夜間や休日など、長期間にわたってユースポイントへの純水の供給が停止される場合にも、滞留による生菌発生を抑制するために純水の循環運転が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-095479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
純水の循環運転が長期間にわたると、循環ラインに設置されたポンプや紫外線殺菌装置の発熱などにより、純水の温度が上昇してユースポイントでの適正使用温度(設定温度)を上回ることがある。例えば、研究機関で使用されることが多い比較的小型の純水製造装置では、様々な用途に対応するために、タンクの最大保有水量に対して比較的大きな容量(最大吐出流量)のポンプが使用されることが多く、このような温度上昇が顕著に発生しやすい。このような温度上昇に対する対策としては、特許文献1に記載されているように、循環ラインに熱交換器などの冷却手段を設置することが考えられるが、比較的小型の純水製造装置では、装置サイズやコストの面から現実的ではない。また、各種プラントに設置される比較的大型の純水製造装置でも、経済的な観点から、循環ラインへの冷却手段の設置を見送ることがある。そのため、多くの純水製造装置では、純水の温度を設定温度以下に低下させるために、循環している純水を一定量ブローして新たに補充することが行われる。しかしながら、このような純水の無駄な廃棄も、結果的にコスト増加の要因となるため好ましくない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、より低コストで純水の循環による温度上昇を抑制する純水製造装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の純水製造装置は、純水を貯留するタンクと、タンク内の純水を循環させる循環ラインと、循環ラインに設けられ、タンク内の純水を循環ラインに流通させるポンプと、ポンプの下流側で循環ラインから分岐してユースポイントに接続された送水ラインと、送水ラインへの純水の流通の有無または送水ラインを流れる純水の流量変化を直接的または間接的に検知した結果に基づいて、ポンプの回転数を切り替える制御手段と、を有している。
【0007】
また、本発明の純水製造装置の運転方法は、循環ラインに設けられたポンプにより、タンクに貯留された純水を循環ラインに沿って循環させる工程と、ポンプの下流側で循環ラインから分岐した送水ラインを通じて、循環ラインを循環する純水をユースポイントに送水する工程と、送水ラインへの純水の流通の有無または送水ラインを流れる純水の流量変化を直接的または間接的に検知した結果に基づいて、ポンプの回転数を切り替える工程と、を含んでいる。
【0008】
このような純水製造装置およびその運転方法によれば、ポンプの回転数を切り替えることで純水の循環による温度上昇を抑制することができるため、純水を無駄に廃棄することがない。さらに、常時同じ回転数でポンプを作動させる場合に比べて、ポンプの消費電力を抑えてランニングコストを削減することもできる。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、より低コストで純水の循環による温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の純水製造装置として、研究機関や医療機関において血液自動分析装置などの分析装置と共に好適に使用されるキャビネット型の純水製造装置を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の純水製造装置としては、循環する純水の温度を能動的に調節する手段(例えば、熱交換器など)が設けられてないものであれば、例えば、各種プラントに設置されるような大型の純水製造装置であってもよい。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。なお、図示した純水製造装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0013】
純水製造装置1は、タンク2と、ポンプ3と、紫外線酸化装置4と、イオン交換装置5と、分離膜装置6とを有している。これらは、キャビネットに収容され、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水を順次処理して純水を製造する二次純水システム(サブシステム)を構成し、その純水をユースポイント7に供給するものである。
【0014】
ポンプ3、紫外線酸化装置4、イオン交換装置5、および分離膜装置6は、両端がタンク2に接続された循環ラインL1上に設けられている。ユースポイント7には、電磁弁V1を介して、循環ラインL1から分岐した送水ラインL2が接続され、電磁弁V1は、ユースポイント7から送られる指令信号(開閉指令信号)により開閉するように構成されている。また、タンク2には、一次純水供給ラインL3が接続され、例えば、水位センサ(図示せず)により検知されたタンク2内の水位に応じて、一次純水システム(図示せず)から一次純水が供給される。具体的には、タンク2内の水位が所定の給水開始水位以下になると、一次純水供給ラインL3を通じてタンク2に一次純水が補給され、タンク2内の水位が所定の上限水位に達すると、タンク2への一次純水の補給が停止される。
【0015】
タンク2に貯留された一次純水(被処理水)は、ポンプ3により送水されて紫外線酸化装置4に供給されると、波長185nmの紫外線を照射され、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。その後、被処理水は、イオン交換装置5においてイオン交換処理により金属などが除去され、分離膜装置6において微粒子などが除去される。こうして得られた純水は、循環ラインL1を通じてタンク2に還流されるが、ユースポイント7からの採水要求により電磁弁V1が開かれると、その一部または全部が送水ラインL2を通じてユースポイント7に供給される。なお、循環ラインL1のうち送水ラインL2との分岐点Bの下流側には、電磁弁V1が開いたときに循環ラインL1から送水ラインL2に純水を確実に流入させるために、背圧発生手段としての背圧弁V2が設けられている。
【0016】
タンク2、ポンプ3、紫外線酸化装置4、イオン交換装置5、および分離膜装置6としては、純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、イオン交換装置5としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混床で充填された非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)を使用することができる。また、分離膜装置6は、精密ろ過膜(MF膜)と限外ろ過膜(UF膜)のどちらを含んでいてもよい。なお、紫外線酸化装置4の代わりに、あるいはそれに加えて、波長254nmの紫外線照射により被処理水を殺菌する紫外線殺菌装置が設けられていてもよい。
【0017】
純水製造装置1では、例えばユースポイント7で純水の需要のない夜間や休日など、長期間にわたって採水運転(ユースポイント7への純水の供給)が停止される場合にも、滞留による生菌発生を抑制するために、製造された純水をタンク2に還流させる循環運転が行われる。このような純水の循環運転が長期間にわたると、ポンプ3や紫外線酸化装置4の発熱などにより、純水の温度が上昇してユースポイント7での適正使用温度(設定温度)以上になることがある。特に、本実施形態のようにキャビネット型の純水製造装置では、様々な用途に対応するために、タンクの最大保有水量に対して比較的大きな容量(最大吐出流量)のポンプが使用されることが多く、装置サイズやコストの面から、熱交換器などの冷却手段も設けられていない。そのため、このような温度上昇が顕著に発生しやすく、例えば、製造される純水が血液自動分析装置などの分析装置に使用される場合、ユースポイントでの使用温度が30~35℃であるのに対し、純水の温度が35℃を超えてしまうことがある。
【0018】
そこで、本実施形態では、純水の循環による温度上昇を抑制するために、循環運転時には、採水運転時よりも低い回転数でポンプ3が作動するようになっている。すなわち、循環運転時には第1の回転数でポンプ3が作動し、採水運転時には第1の回転数を上回る第2の回転数でポンプ3が作動するようになっている。このために、純水製造装置1は、ポンプ3の回転数を制御するインバータ(図示せず)を含む制御部(制御手段)10を有し、制御部10は、送水ラインL2への純水の流通の有無に基づいて、ポンプ3の回転数を切り替えるようになっている。
【0019】
制御部10は、ユースポイント7から電磁弁V1に送られる開指令信号を取得したときに、電磁弁V1が開いて送水ラインL2に純水が流れ始めた(すなわち、採水運転が開始された)ことを間接的に検知し、ユースポイント7から電磁弁V1に送られる閉指令信号を取得したときに、電磁弁V1が閉じて送水ラインL2への純水の流通が停止された(すなわち、採水運転が停止された)ことを間接的に検知する。そして、制御部10は、採水運転が開始されたことを検知すると、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替え、採水運転が停止されたことを検知すると、ポンプ3の回転数を第2の回転数から第1の回転数に切り替えるようになっている。なお、ポンプ3の回転数は、ポンプ3の駆動出力(モータ出力)を制御することで調整可能である。
【0020】
ここで、循環運転時の第1の回転数は、実際の装置構成に応じて適宜設定され、特に限定されないが、循環する純水の温度が上昇しない範囲を予め実験的に検証することにより決定されることが好ましい。実際に検証した結果については後述するが、純水の循環による温度上昇を最小限に抑えるには、第1の回転数に対応するポンプ3の駆動出力をタンク2の最小保有水量1L当たりに換算して5W以下に設定することが好ましく、2W以下に設定することがより好ましい。ここでいう最小保有水量とは、タンク2内の水位が最も低くなるとき、すなわち、所定の給水開始水位にあるときの保有水量である。なお、循環ラインL1を構成する配管の全容積がタンク2の容積に比べて無視できるほど小さくない場合には、第1の回転数に対応するポンプ3の駆動出力を設定するにあたり、そのような配管の全容積を考慮してもよい。すなわち、タンク2の最小保有水量に相当する容積に配管の全容積に加えた分を、タンク2の最小保有水量と見なしてもよい。一方、採水運転時の第2の回転数は、ユースポイント7で必要とされる純水の流量に応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
【0021】
このように、本実施形態によれば、送水ラインL2を通じたユースポイント7への純水の供給の有無に応じてポンプ3の回転数を切り替えることで、循環運転時には相対的に低い回転数でポンプ3を作動させることができる。これにより、純水を無駄な廃棄することなく、循環運転時の純水の温度上昇を抑制することができる。さらに、循環運転時と採水運転時に同じ回転数でポンプ3を作動させる場合、すなわち、同じ流量で純水を循環させる場合に比べて、ポンプ3の消費電力とイオン交換装置5内のイオン交換樹脂の消耗を抑えることができ、その結果、ランニングコストを削減することもできる。なお、研究機関や医療機関での使用を想定したキャビネット型の純水製造装置では、純水が短時間かつ高頻度で使用されることが多いため、純水の温度上昇に伴うブロー工程が不要になることは、必要時にいつでも純水の使用が可能になる点でも有利である。
【0022】
上述したように、図示した純水製造装置1の構成は、あくまで一例であり、装置の使用目的や用途、要求性能に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。特に、純水(一次純水)を貯留するタンク2と、タンク2内の純水を循環させる循環ラインL1と、タンク2内の純水を循環ラインL1に流通させるポンプ3と、ポンプ3の下流側で循環ラインL1から分岐してユースポイント7に接続された送水ラインL2とが設けられている限り、紫外線酸化装置4とイオン交換装置5と分離膜装置6のうちの1つ以上が省略されてもよく、3つすべてが省略されてもよい。また、背圧弁V2は、採水運転時に送水ラインL2を流れる純水の流量を調整するために、2つ以上設けられていてもよく、場合によっては省略されてもよい。
【0023】
ここで、循環ラインを循環する純水の温度がポンプの発熱によりどの程度上昇するかを検証した試験結果について説明する。
【0024】
(試験1-1)
図1に示す純水製造装置を模擬した試験装置を用いて、純水の循環運転を継続的に行い、純水の温度(水温)の経時変化を測定した。そして、運転期間を通じて水温が最も上昇した期間を特定し、その期間(時間)とそのときの水温上昇量から水温上昇速度(単位時間当たりの水温上昇量)を算出した。なお、この試験装置は、イオン交換装置と分離膜装置が設けられていないこと(および、送水ラインが設けられていないこと)を除いて、図1に示す純水製造装置と同様の構成を有している。タンクとして最大保有水量が60Lのものを用い、ポンプとして、株式会社イワキ製のマグネットギヤポンプ(型式:MDG-M4S6A100)を用いた。純水の循環運転は、ポンプのモータ出力を200Wに設定し、タンクを満水にした状態、すなわち、タンクに60Lの純水を充填した状態で行った。
【0025】
(試験1-2)
タンクに40Lの純水を充填した状態で循環運転を行ったことを除いて、試験1-1と同様の条件で測定を行った。
【0026】
(試験1-3)
タンクとして最大保有水量が20Lのものを用い、タンクを満水にした状態、すなわち、タンクに20Lの純水を充填した状態で循環運転を行ったことを除いて、試験1-1と同様の条件で測定を行った。
【0027】
(試験2-1)
以下の点を除いて、試験1-1と同様の条件で測定を行った。ポンプとして、株式会社ニクニ製の渦流タービンポンプ(型式:15DNL03ZM-V)を用い、ポンプのモータ駆動用のインバータとして、三菱電機株式会社製のインバータ(型式:FR-D710W-0.75K)を用いた。純水の循環運転は、ポンプのモータ出力を110Wに設定し、タンクを満水にした状態、すなわち、タンクに60Lの純水を充填した状態で行った。
【0028】
(試験2-2)
モータ出力を165Wに設定して循環運転を行ったことを除いて、試験2-1と同様の条件で測定を行った。
【0029】
(試験2-3)
モータ出力を235Wに設定して循環運転を行ったことを除いて、試験2-1と同様の条件で測定を行った。
【0030】
(試験2-4)
タンクに40Lの純水を充填した状態で循環運転を行ったことを除いて、試験2-1と同様の条件で測定を行った。
【0031】
(試験2-5)
タンクに40Lの純水を充填した状態で循環運転を行ったことを除いて、試験2-2と同様の条件で測定を行った。
【0032】
表1に、各試験における水温上昇速度の算出結果を示す。なお、表1には、参考のために、タンクの保有水量、ポンプのモータ出力、および、タンクの保有水量1L当たりのポンプのモータ出力も示している。
【0033】
【表1】
【0034】
試験1-3を除くいずれの試験においても、水温上昇速度が1.6℃/h以下に抑えられていることが確認され、中でも、タンクの保有水量に対するポンプのモータ出力が最も小さい試験2-1において特に良好な結果が得られていることが確認された。このことから、純水の循環による温度上昇を抑制するという観点では、ポンプのモータ出力は、タンクの保有水量1L当たりに換算して5W以下であることが好ましく、2W以下であることがより好ましいと考えられる。
【0035】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0036】
上述したように、ユースポイント7からの採水要求により電磁弁V1が開かれると、循環ラインL1を流れる純水の一部または全部が送水ラインL2を通じてユースポイント7に供給される。このとき、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側では、純水の流量低下に伴って圧力低下が発生するが、この圧力低下を検知することでも、送水ラインL2に純水が流れ始めたことを間接的に検知することができる。本実施形態では、このような圧力低下を検知するために、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側であって背圧弁V2の上流側に圧力スイッチ11が設けられている。圧力スイッチ11は、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側を流れる純水の圧力が規定圧力(所定値)以下になったときに検知信号を出力するように構成されている。そして、制御部10は、この検知信号を受信したときに、採水運転が開始されて送水ラインL2に純水が流れ始めたとして、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替えるようになっている。これにより、本実施形態においても、純水を無駄な廃棄することなく、循環運転時の純水の温度上昇を抑制することができ、ランニングコストを削減することもできる。
【0037】
送水ラインL2に純水が流れ始めたことを間接的に検知する検知手段としては、圧力スイッチ11に限定されず、圧力センサであってもよい。換言すると、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側を流れる純水の圧力が所定値以下になったことを検知できれば、圧力スイッチ11の代わりに、圧力センサが用いられてもよい。また、送水ラインL2に純水が流れ始めたことを確実に検知するためには、その際に循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側に十分な圧力低下を生じさせることが好ましい。そのため、背圧弁V2は、第1の実施形態では、上述したように必ずしも設けられていなくてもよいが、本実施形態では設けられていることが好ましい。なお、背圧弁V2の代わりに、オリフィスなどの他の背圧発生手段が設けられていてもよい。
【0038】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。以下、上述した実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0039】
本実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、送水ラインL2への純水の流通の有無を検知する方法が第2の実施形態と異なっている。具体的には、第2の実施形態では、送水ラインL2に純水が流れ始めたことを間接的に検知するために、循環ラインL1に圧力スイッチ11が設けられているのに対し、本実施形態では、それを直接的に検知するために、送水ラインL2に流量スイッチ12が設けられている。流量スイッチ12は、送水ラインL2を流れる純水の流量が規定流量(所定値)以上になったときに検知信号を出力するように構成され、制御部10は、この検知信号を受信したときに、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替えるようになっている。これにより、本実施形態においても、純水を無駄な廃棄することなく、循環運転時の純水の温度上昇を抑制することができ、ランニングコストを削減することもできる。
【0040】
なお、第2の実施形態では、送水ラインL2の圧力損失が変化してしまうと、送水ラインL2に純水が流れ始めたときに、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側の圧力が圧力スイッチ11の規定圧力以下になるほどには低下しないことがある。したがって、第2の実施形態では、送水ラインL2の圧力損失の変化を考慮し、それに応じて圧力スイッチ11の設定圧力の調整を行う必要があるが、本実施形態は、そのような圧力損失の変化を考慮しなくてよい点で有利である。
【0041】
送水ラインL2に純水が流れ始めたことを直接的に検知する検知手段としては、流量スイッチ12に限定されず、流量センサであってもよい。換言すると、送水ラインL2を流れる純水の流量が所定値以上になったことを検知できれば、流量スイッチ12の代わりに、流量センサが用いられてもよい。
【0042】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態に係る純水製造装置の構成を示す概略図である。以下、上述した実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0043】
第2の実施形態では、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側で発生する純水の圧力低下を検知したときに、ポンプ3の回転数の切り替えを行っている。しかしながら、そのような純水の圧力低下は、循環運転から採水運転に移行して送水ラインL2に純水が流れ始めたときだけでなく、採水運転時に送水ラインL2を流れる純水の流量が増加するときにも発生する。そのため、ポンプ3の回転数の切り替えは、本実施形態のように、採水運転時に送水ラインL2を流れる純水の流量変化に基づいて行われてもよい。
【0044】
本実施形態では、送水ラインL2が複数(図示した例では3つ)に分岐し、それぞれが電磁弁V11~V13を介して複数のユースポイント71~73に接続されているが、この場合、複数のユースポイント71~73からの採水要求はそれぞれ独立に行われる。そのため、採水運転時にも、送水ラインL2を流れる純水の流量は大幅に変動し、例えば、複数のユースポイント71~73から同時に採水要求があった場合には、各ユースポイント71~73から個別に採水要求があった場合に比べて大幅に増加することになる。こうした純水の流量増加を間接的に検知するために、本実施形態では、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側に圧力センサ13が設けられている。圧力センサ13は、循環ラインL1のうち分岐点Bの下流側を流れる純水の圧力が所定の設定値以下になったときに検知信号を出力するように構成されている。そして、制御部10は、この検知信号を受信したときに、送水ラインL2を流れる純水の流量が増加したとして、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替えるようになっている。これにより、ユースポイント71~73から要求される純水の流量に応じてポンプ3の回転数を切り替えることができ、本実施形態においても、純水を無駄な廃棄することなく、循環運転時の純水の温度上昇を抑制することができ、ランニングコストを削減することもできる。
【0045】
圧力センサ13の設定値(しきい値)は、それぞれのユースポイント71~73から要求される純水の流量に応じて適宜変更可能である。例えば、複数のユースポイント71~73のいくつかから同時に採水要求があった場合にのみ、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替え、各ユースポイント71~73から個別に採水要求があった場合には、ポンプ3の回転数を切り替えず、第1の回転数のまま維持するようになっていてもよい。また、ユースポイント71~73ごとに純水の要求流量に差がある場合には、要求流量が比較的大きいユースポイントから採水要求があったときのみ、ポンプ3の回転数を第1の回転数から第2の回転数に切り替えるようになっていてもよい。
【0046】
なお、本実施形態においても、第3の実施形態のように、送水ラインL2に流れる純水の流量が増加したことを直接的に検知するようになっていてもよいが、そのための検知手段としては、ポンプ3の回転数を切り替えるためのしきい値を任意に設定可能な点で、流量センサを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 純水製造装置
2 タンク
3 ポンプ
4 紫外線酸化装置
5 イオン交換装置
6 分離膜装置
7,71~73 ユースポイント
10 制御部(制御手段)
11 圧力スイッチ
12 流量スイッチ
13 圧力センサ
L1 循環ライン
L2 送水ライン
V1,V11~V13 電磁弁
V2 背圧弁(背圧発生手段)
図1
図2
図3
図4