(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088230
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】燃料導入用インレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20230619BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20230619BHJP
B21K 21/08 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F02M55/02 330D
F02M55/02 330A
B21J5/02 C
B21K21/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215518
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】597102266
【氏名又は名称】株式会社ミナミダ
(72)【発明者】
【氏名】南田 豊司
【テーマコード(参考)】
3G066
4E087
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066AD05
3G066BA54
3G066CB05
3G066CD21
4E087AA06
4E087AA08
4E087AA09
4E087AA10
4E087CA13
4E087CB03
4E087EC02
4E087ED04
4E087EE02
4E087HA61
(57)【要約】
【課題】燃料導入用インレットをパーティングラインが無く高精度に成形し、金型の長寿命化と材料ロスをなくし低コスト化を実現する。
【解決手段】超硬合金又は高速度鋼からなる半割固定金型31と半割可動金型32とを備えた冷間鍛造機30を用いて円柱状成形素材Xをその軸方向から冷間鍛造することにより、先端に円柱状ネジ結合端部11aを有する燃料導入軸部13と、燃料導入軸部13の後端下部から燃料導入軸部13の軸方向に対して鈍角状に傾斜又は直交して突出するデリバリパイプ1への取付脚部14を備えた中実成形体10Aを成形し、その後、後工程で、円柱状ネジ結合端部11aの外周にネジ加工を施し、かつ、中実成形体10Aの燃料導入軸部13に燃料導入口12と連通孔15とを形成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料通路を有しかつ燃料噴射弁を取り付けるための複数の挿入部を備えたデリバリパイプにおける燃料導入用インレットの製造方法であって、まず、金型が超硬合金又は高速度鋼からなる半割の成形凹所を有する半割固定金型と半割の成形凹所を有する半割可動金型とを備えた冷間鍛造機を用い、これら半割可動金型と半割固定金型とにより円柱状の成形素材をその軸方向から冷間鍛造して、先端に円柱状ネジ結合端部を有する燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から燃料導入軸部の軸方向に対して直交又は鈍角状に傾斜して突出するデリバリパイプへの取付脚部を備えた中実成形体を成形し、次に、中実成形体を冷間鍛造機から取り出し、後工程で、成形体の円柱状ネジ結合端部の外周をネジ加工してネジ結合端を形成する共にネジ結合端の中心部に燃料導入口を形成し、さらに、燃料導入口に連通しかつ燃料導入軸部の後端側側面に開口して、燃料導入口を燃料通路に連通させる連通孔を形成したことを特徴とする燃料導入用インレットの製造方法。
【請求項2】
円柱状ネジ結合端部を燃料導入軸部の先端に段部を介して燃料導入軸部よりも小径に設定する一方、円柱状の成形素材としてその軸径が円柱状ネジ結合端部の軸径と同径もしくは小径のものを用い、成形素材をその軸方向から冷間鍛造して荷重が掛った時、成形素材と燃料導入軸部との軸径差による空間を利用して成形素材の両金型における燃料導入軸部成形部分及び取付脚部成形部分への体積移動を一気に行ない、燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から突出する取付脚部とを同時的に成形するようにしたことを特徴とする請求項1記載の燃料導入用インレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられるデリバリパイプに取り付けられる燃料導入用インレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関において、燃料供給管から供給される燃料を、各気筒に設けられた燃料噴射弁に分配するデリバリパイプが用いられている。
【0003】
従来、この種のデリバリパイプは、筒状体からなり、その燃料通路を有する筒状胴部の長手方向には燃料噴射弁を取り付けるための挿入部が所定間隔をおいて複数設けられ、かつ各挿入部には、デリバリパイプの燃料通路に連通する挿入口がそれぞれ設けられており、その挿入口に燃料噴射弁(図示せず)の後端が挿入される。そして、デリバリパイプの一端部には、高圧燃料ポンプに接続された高圧燃料供給管(図示せず)のジョイント部をネジ結合するためのネジ結合端を有する燃料導入口部が一体に設けられている。また、デリバリパイプの筒状胴部にはデリバリパイプを内燃機関のシリンダヘッドに固定するためのボルト穴部が複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したデリバリパイプにおいて、内燃機関におけるエンジンレイアウトの変更などに対しても最適な高圧燃料供給管におけるジョイント部の燃料導入口部におけるネジ結合端への取り付けが得られるように、高圧燃料供給管との接続部分となる燃料導入口部を、デリバリパイプの長手方向に対して積極的に傾斜させ、これによりネジ結合端が傾斜した姿勢で突出するように設けたものがある。
その場合、上記燃料導入口部がデリバリパイプに対しこれの軸方向に対して傾斜姿勢で突出する複雑な形状となることから、燃料導入口部をデリバリパイプと一体に成形することが非常に煩雑で困難となる。
【0006】
そこで、現状ではデリバリパイプとは別に、高圧燃料供給管の接続部分となる燃料導入用インレット(以下インレットという)を熱間鍛造で成形し、その後、後工程でネジの加工と連通孔の加工とを施して形成し、このインレットをデリバリパイプの一端部に取り付けるようにしている。
その場合、
図15の(イ)に示す円柱状の成形素材Xを、まず、予熱したうえで熱間鍛造の第1工程で
図15の(ロ)に示すように半割の成形凹所を有する半割固定金型(図示せず)と半割の成形凹部を有する半割可動金型(図示せず)で円柱状の成形素材Xの直径方向からバリ出し鍛造をして、先端に円柱状ネジ結合端部21aを有する燃料導入軸部23と、燃料導入軸部23の一端側部からその軸方向に対して直交して突出するデリバリパイプへの取付脚部24とを備えたバリ20a付の中実成形体20Aを成形する。このとき、中実成形体20Aのバリ20aは、燃料導入軸部23と取付脚部24とを左右対称形状に2分割する中央線上の全周位置に厚く形成される。次いで、熱間鍛造の第2工程でバリ付の中実成形体20Aからバリ20a部分を打ち抜き加工により除去して
図15の(ハ)に示すインレットの外形をした中実成形体20Aを形成する。その後、中実状成形体20Aを冷却し、後工程でショットブラストによりスケール落としを行い、さらに、円柱状ネジ結合端部21aへのネジの加工と、燃料導入軸部23への燃料導入口と連通孔との加工とを施して求める形状のインレットに形成するようにしている。
そして、このインレットを、その、燃料導入軸部23がデリバリパイプに対しその軸方向に対して傾斜状に突出する姿勢で溶接やロウ付けなどにより取り付けるようにしている。
しかし、上記したようにインレットを熱間鍛造して成形するものにあっては、まず第1工程でバリ出し鍛造によりバリ付中実成形体20Aを成形し、次いで第2工程でバリ付中実成形体20Aからバリ20a部分を打ち抜き加工により除去して中実成形体20Aを形成することから、中実成形体20Aにパーティングラインが大きく残る問題があり、加えて、熱間鍛造にあっては中実成形体20Aの寸法にバラツキが生じ易く、その寸法のバラツキのためネジや燃料導入口と連通孔とを後工程で加工する際のチャックなどによる中実成形体20Aの保持姿勢や保持力が一定化せず、後工程加工時における繰り返し精度が低いといった問題があった。その上、熱間鍛造にあっては金型の寿命が短くまたバリ20a部分を削除するため成形素材Xの材料ロスが多く、全体として不経済となるものであった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来の欠点を解決するために発明したもので、燃料噴射弁を取り付けるための複数の挿入部を備えたデリバリパイプとは別に、高圧燃料供給管の接続部分となる複雑な形状の燃料導入用インレットを成形するに際し、パーティングラインがゼロまたは極力薄く、かつ大きな体積移動でありながら全体寸法のバラツキも小さく抑えて高精度の中実インレット成形体を量産できるようにし、これにより、その成形体をしっかりと挟持したうえでネジや連通孔の後工程加工時における繰り返し精度を高く形成でき、その上、金型の長寿命化と材料ロスをなくし低コスト化も実現できる燃料導入用インレットの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1記載の発明は、燃料通路を有しかつ燃料噴射弁を取り付けるための複数の挿入部を備えたデリバリパイプに取り付ける燃料導入用インレットの製造方法であって、まず、金型が超硬合金又は高速度鋼からなる半割の成形凹所を有する半割固定金型と半割の成形凹所を有する半割可動金型とを備えた冷間鍛造機を用い、これら半割可動金型と半割固定金型とにより円柱状の成形素材をその軸方向から冷間鍛造して、先端に円柱状ネジ結合端部を有する燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から燃料導入軸部の軸方向に対して直交又は鈍角状に傾斜して突出するデリバリパイプへの取付脚部を備えた中実成形体を成形し、次に、中実成形体を冷間鍛造機から取り出し、後工程で、成形体の円柱状ネジ結合端部の外周をネジ加工してネジ結合端を形成する共にネジ結合端の中心部に燃料導入口を形成し、さらに、燃料導入口に連通しかつ燃料導入軸部の後端側側面に開口して、燃料導入口を燃料通路に連通させる連通孔を形成したことを特徴とする。
【0009】
本願の請求項2記載の発明は、上記した本願の請求項1記載の燃料導入用インレットの製造方法において、円柱状ネジ結合端部を燃料導入軸部の先端に段部を介して燃料導入軸部よりも小径に設定する一方、円柱状成形素材の軸径が円柱状ネジ結合端部の軸径と同径もしくは小径のものを用い、成形素材をその軸方向から冷間鍛造して荷重が掛った時、成形素材と燃料導入軸部との軸径差による隙間空間を利用して成形素材の両金型における燃料導入軸部成形部分及び取付脚部成形部分への体積移動を一気に行なって、燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から突出する取付脚部とを同時的に成形するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料導入用インレットの製造方法によれば、上記した構成により、デリバリパイプとは別に形成するインレットを、金型が超硬合金又は高速度鋼からなる冷間鍛造機により円柱状の成形素材をその軸方向から冷間鍛造して成形するようにしたから、その冷間鍛造された中実成形体のパーティングラインはゼロまたは極力薄くでき、かつ全体寸法のバラツキも小さく高精度の中実成形体を量産できる。これにより、後工程の加工用チャックに安定よく正確に保持でき、ネジや連通孔の加工時における繰り返し精度を著しく高め加工品質を維持できる。その上、冷間鍛造にあっては金型の長寿命化が図れると同時に成形素材の材料ロスを抑え、全体としての低コスト化が実現できる。
【0011】
また、円柱状ネジ結合端部を燃料導入軸部の先端に段部を介して燃料導入軸部よりも小径に設定する一方、円柱状の成形素材として、燃料導入軸部における円柱状ネジ結合端部の軸径と同径もしくは小径のもの、つまり燃料導入軸部の軸径よりも小径に設定したものを用いるようにすれば、成形素材をその軸方向から冷間鍛造して成形素材に荷重がかかった時点で、成形素材と燃料導入軸部との軸径差による隙間空間を利用して成形素材の両金型における燃料導入軸部成形部分及び取付脚部成形部分への大きな体積移動を一気に行なって、燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から突出する取付脚部とを同時的に一気に成形することができる。その結果、円柱状ネジ結合端部を有する燃料導入軸部と、燃料導入軸部の後端下部から突出する取付脚部を備えた中実成形体を、全体寸法のバラツキがより小さく、より高精度の中実成形体を成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る製造方法で製造されたインレットを取り付けたデリバリパイプの一部省略斜視図である。
【
図2】本発明に係る製造方法で製造されたインレットの側面図である。
【
図5】同インレットの冷間鍛造状態を示す説明図である。
【
図8】取付脚部を別の形状としたインレットの側面図である。
【
図10】同インレットの正面図中央縦断面図である。
【
図11】同インレットの冷間鍛造状態を示す説明図である。
【
図12】同冷間鍛造された中実成形体の側面図である。
【
図13】別の閉塞冷間鍛造状態を示す説明図である。
【
図14】さらに別の閉塞冷間鍛造状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明に係る燃料導入用インレットの製造方法の実施例を図に基づいて説明する。
【0014】
まず、
図1は、本発明の製造方法で製造されたインレット10を装着した内燃機関用デリバリパイプ1を示す。
デリバリパイプ1は、筒状を呈する鋳造体であって、燃料通路(図示せず)を有する筒状胴部1aにおける長手方向には燃料噴射弁(図示せず)を取り付けるための挿入部2…2が所定間隔ごとに複数設けられ、各挿入部2…2には、デリバリパイプ1における筒状胴部1aの燃料通路に連通する挿入口2a…2aがそれぞれ設けられ、かつ、その挿入口2a…2aに燃料噴射弁の後端が挿入される。また、デリバリパイプ1の筒状胴部1aにはデリバリパイプ1を内燃機関のシリンダヘッドに固定するためのボルト穴部3…3が複数設けられている。
そして、デリバリパイプ1の一端部は、高圧燃料ポンプ(図示せず)に接続された高圧燃料供給管4の先端部5がネジ結合で固定される部位であって、この部位には同デリバリパイプ1からその軸方向に対して傾斜した姿勢で突出する燃料導入用インレット10が溶接やロウ付けなどにより別設されている。
【0015】
インレット10は、
図2~4に示すようにデリバリパイプ1とは別に金型が超硬合金又はハイス高速度鋼(ハイス)からなる冷間鍛造機により成形された鍛造体からなる。
そして具体的には、
図2~
図4に示すように先端に高圧燃料供給管4の接続部分となるネジ結合端11を有しかつ中心部に燃料導入口12を有する円柱状の燃料導入軸部13と、燃料導入軸部13の長さ方向中間部からその軸方向に対し直交して横出し状に突出するデリバリパイプ1への取付脚部14(
図2~
図4においては下方に突出)を備え、かつ、燃料導入軸部13の後端側に、上記取付脚部14を介する燃料導入軸部13のデリバリパイプ1への取り付け時、燃料導入口12をデリバリパイプ1の燃料通路に連通させる連通孔15が形成されている。
【0016】
インレット10は、
図1に示すようにデリバリパイプ1の一端部にその長手方向に対して傾斜した姿勢で溶接やロウ付けなどにより取り付けられる。このようにインレット10をデリバリパイプ1に対して傾斜させた姿勢で、デリバリパイプ1の一端に取り付けられることにより、内燃機関におけるエンジンレイアウトの変更などに対しても幅広く対応させて最適な状態で高圧燃料供給管4における先端部5を燃料導入軸部13のネジ結合端11への取り付けが可能となされている。
また、インレット10をデリバリパイプ1に対して傾斜させた姿勢で、デリバリパイプ1の一端に例えば溶接で取り付けたとき、インレット10における燃料導入口12が、連通孔15を介してデリバリパイプ1の燃料通路に漏れなく連通連結されることになる。
【0017】
これにより、高圧燃料供給管4から供給された燃料は、インレット10の燃料導入口12から連通孔13を介してデリバリパイプ1における筒状胴部1aの燃料通路を通り、各挿入部2…2の挿入口2a…2aを介して各燃料噴射弁に分配され、エンジンの燃料室内に供給される。
【0018】
次に、以上のように形成されかつ使用される燃料導入用インレット10の製造方法について述べる。
このインレット10の製造方法としては、まず、
図5に示すように金型が超硬合金又は高速度鋼からなる半割の成形凹所31aを有する半割固定金型(ダイ)31と半割の成形凹所32aを有する半割可動金型(パンチ)32とを備えた冷間鍛造機30を用い、これら半割固定金型31と半割可動金型32とにより
図6に示すような円柱状の成形素材Xをその軸方向から冷間鍛造して、
図7に示す先端に円柱状ネジ結合端部11aを有する燃料導入軸部13と、燃料導入軸部13の長さ方向中間部からその軸方向に対し直交して突出するデリバリパイプ1への取付脚部14を備えた中実成形体10Aを成形する。
ここで、
図5において中実成形体10A上の点線は中実成形体10Aを成形する場合における下側の半割固定金型31と上側の半割可動金型32との突合せ面を示す。この突合せ面は、
図5において取付脚部14の厚みを上下でほぼ2分割する水平ラインの延長線上に形成されており、半割固定金型31の成形孔31aとノックアウトピン33とで
図7における中実成形体10Aの半割下部分の成形空間を形成し、また半割可動金型32の底面に形成した成形凹所32aで中実成形体10Aの半割上部分の成形空間を形成している。そして、これら下側の半割固定金型31と上側の半割可動金型32との間に成形素材Xを介在させた状態で上側の半割可動金型32を下側の半割固定金型31側へ移動させ、半割固定金型31と半割可動金型32とによる成形力と閉塞力により成形素材Xを冷間鍛造して取付脚部14が横出しされた求める形状の中実成形体10Aを成形する。
【0019】
その後、
図7のように成形された中実成形体10Aを冷間鍛造機30から取り出し、後工程で、円柱状ネジ結合端部11aの外周部分に適宜ネジ加工機(図示せず)でネジ切り加工を施して
図2に示すようなネジ結合端11を形成すると共に、ネジ結合端11の中心部に適宜穴あけ加工機(図示せず)により穴あけ加工して燃料導入口12を形成し、さらに、この燃料導入口12に連通しかつ燃料導入軸部13の後端側側面に開口して、燃料導12をデリバリパイプ1の燃料通路に連通させる連通孔15を形成し、これにより最終目的の燃料導入用インレット10を形成する。
【0020】
以上のように本発明の燃料導入用インレットの製造方法によれば、デリバリパイプとは別に形成するインレット10を、金型が超硬合金又は高速度鋼からなる冷間鍛造機により円柱状の成形素材Xをその軸方向から冷間鍛造して、成形するようにしたから、その冷間鍛造された中実成形体10Aのパーティングラインは、ゼロまたは極力薄くできかつ全体寸法のバラツキも小さく高精度の中実成形体10Aを量産できる。これにより、後工程の加工用チャックに安定よく正確に保持でき、ネジや連通孔の加工時における繰り返し精度を著しく高め加工品質を維持できる。その上、冷間鍛造にあっては金型の長寿命化が図れると同時に成形素材の材料ロスを抑え、全体としての低コスト化が実現できる。
なお、仮に中実成形体のパーティングラインが僅かに薄く出る場合があったとしても、バレル処理などで容易に除去でき、次工程の切削チャックに安定して保持でき、加工品質を維持できる。
【0021】
また、上記した実施例では、円柱状ネジ結合端部11aを燃料導入軸部13の先端に段部を介して燃料導入軸部13よりも小径に設定する一方、円柱状の成形素材として、燃料導入軸部13における円柱状ネジ結合端部11aの軸径と同径もしくは小径のもの、つまり燃料導入軸部13の軸径よりも小径に設定されたものを用いている。このように設定した場合には、成形素材をその軸方向から冷間鍛造して成形素材に荷重がかかった時点で、成形素材と燃料導入軸部13との軸径差による隙間空間を利用して成形素材の両金型における燃料導入軸部成形部分及び取付脚部成形部分への大きな体積移動を一気に行なて、燃料導入軸部13と、燃料導入軸部13の後端下部から突出する取付脚部14とを同時的に一気に成形することができる。その結果、円柱状ネジ結合端部11aを有する燃料導入軸部13と、燃料導入軸部13の後端下部から突出する取付脚部14を備えた中実成形体10Aを、全体寸法のバラツキがより小さく、より高精度の中実成形体10Aを成形できる。
【0022】
また、上記した実施例では、燃料導入軸部13の軸方向に対し直交して突出する(横出し状の)デリバリパイプ1への取付脚部14を備えたインレット10について説明したけれども、この他、例えば
図8~
図10に示すような燃料導入軸部13の長さ方向中間部から燃料導入軸部13の軸方向に対して鈍角状に傾斜して斜め出し状に突出するデリバリパイプ1への取付脚部14(
図8~
図10においては下方に突出)を備えたインレット10についても、
図11に示す冷間鍛造機30により先の実施例と同様に本発明の製造方法にて製造でき、同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
その場合、
図11における中実成形体10Bの図中点線で示す箇所は下側の半割固定金型31と上側の半割可動金型32との突合せ面を示す。つまり、この突合せ面は、
図11において斜めに突出する取付脚部14の厚みをその厚み方向でほぼ2分割する傾斜線と、その傾斜線の基端に繋がる燃料導入軸部13の直交線とを結ぶ線上において形成されることになる。そして、半割固定金型31の成形孔31aとノックアウトピン33とで中実成形体10Bの半割下部分の成形空間を形成し、また半割可動金型32の底面に形成した成形凹所32aで中実成形体10Aの半割上部分の成形空間を形成することになる。
【0024】
なお、
図12における中実成形体10Bでは、その燃料導入軸部13における両側面を扁平面13a,13aで小判型状を呈する形状としているので、その扁平面13a,13a部分を利用して機台側のチャックにより確実強固に固定したうえでネジ加工や切削加工などの二次加工を高精度に行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明における冷間鍛造とは、上記した実施例の構成の冷間鍛造に限らず閉塞冷間鍛造をも含む概念である。そこで、別の実施例として例えば
図13及び
図14にそれぞれ示すように、上記した二つの実施例の冷間鍛造機30における各半割可動金型31の内に、半割り凹所31a側に向って出退動する可動成形ピン34を内蔵させた閉塞冷間鍛造構造とし、冷間鍛造時に半割可動金型31の半割固定金型31への押圧による閉塞力を加えたうえで、さらに可動成形ピン34の半割り凹所32a側への前進(下動)による成形力を加えて閉塞冷間鍛造を行ない、これにより中実成形体10A又は中実成形体10Bを成形するようにしてもよい。
【0026】
また、上記した実施例では、いずれも1段の冷間鍛造工程で上記した中実成形体10A又は10Bを成形するようにしたものについて説明したけれども、何ら上記した実施例に限定されるものではなく、例えば前工程で円柱状の成形素材Xに一端予備成形を施すなど複数段の冷間鍛造工程とし、上記した中実成形体10A又は中実成形体10Bを段階的に冷間鍛造成形するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【符号の説明】
【0027】
1 デリバリパイプ
1a 筒状胴部
2 挿入部
2a 挿入口
10 燃料導入用インレット
10A 中実成形体
10B 中実成形体
11 ネジ結合端
11a 円柱状ネジ結合端部
12 燃料導入口
13 燃料導入軸部
14 取付脚部
15 連通孔
X 成形素材