IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本エイアンドエル株式会社の特許一覧

特開2023-88244繊維集束用組成物、及びこれを用いた樹脂含浸繊維、成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088244
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】繊維集束用組成物、及びこれを用いた樹脂含浸繊維、成形品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/233 20060101AFI20230619BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20230619BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230619BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20230619BHJP
   C08F 212/06 20060101ALI20230619BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20230619BHJP
   D06M 15/31 20060101ALI20230619BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20230619BHJP
   D06M 13/03 20060101ALI20230619BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
D06M15/233
C08L101/12
C08K5/053
C08K5/42
C08F212/06
D06M15/263
D06M15/31
D06M13/148
D06M13/03
C08J5/04 CET
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104037
(22)【出願日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2021202609
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和代
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅典
(72)【発明者】
【氏名】三崎 皇雄
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB29
4F072AC08
4F072AD05
4F072AD37
4F072AD44
4F072AG03
4F072AG05
4F072AG16
4F072AH04
4F072AH05
4F072AH23
4F072AH42
4F072AH49
4F072AK04
4F072AK05
4F072AK14
4F072AK15
4F072AK16
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL11
4J002AA011
4J002BC061
4J002BG011
4J002EC046
4J002EC066
4J002EV256
4J002FD316
4J002FD341
4J002GF00
4J002GK02
4J002GN00
4J002GQ00
4J100AB02P
4J100AJ02R
4J100AM02Q
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA25
4J100EA06
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100FA28
4J100FA30
4J100FA35
4J100GB03
4J100GC13
4J100JA01
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA43
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC12
4L033BA03
4L033BA12
4L033CA13
4L033CA18
4L033CA26
(57)【要約】
【課題】曲げ強度等の機械的物性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得るための繊維集束用組成物を提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂エマルジョンと、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含む繊維集束用組成物であって、動的表面張力が25~55mN/mであることを特徴とする繊維集束用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂エマルジョンと、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含む繊維集束用組成物であって、動的表面張力が25~55mN/mであることを特徴とする繊維集束用組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンが、芳香族ビニル系単量体40~98.5重量%と、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体1.5~60重量%との共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維集束用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の繊維集束用組成物で集束された樹脂含浸繊維。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂含浸繊維からなる層と熱可塑性樹脂層を含む積層体を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造に用いられる繊維の集束用組成物、その集束用組成物で集束された樹脂含浸繊維、およびこれを用いた成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を代表とする繊維材料は高強度、高弾性、電気伝導性等の優れた特徴をもち、その特徴を活かして熱可塑性樹脂をマトリックスとした繊維強化熱可塑性樹脂複合材料として、家電、輸送機械、スポーツ用品など様々な産業分野で広く利用されている。
【0003】
これら繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造に際しては、繊維に対して集束処理を行い繊維ストランドとした後、(1)短繊維化して熱可塑性樹脂と溶融混練する方法、(2)シート状とし熱可塑性樹脂シートと積層させる方法などで行なっている。
【0004】
集束処理は、数百本~数万本からなる独立した繊維を集束剤により一体化させ、ストランドとするもので、後の熱可塑性樹脂との複合化工程に必要不可欠な処理である。
【0005】
この集束剤は、繊維ストランドに耐擦性を付与させ、複合化工程における作業性に影響を与えるのみならず、本質的に相溶性のない繊維と熱可塑性樹脂との間に濡れ性や接着性等を付与し、最終的な繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の性能や品質に大きく影響を与える重要なものである。
【0006】
従来、繊維と熱可塑性樹脂との親和性を高める目的では、さまざまな集束剤が検討されている。例えば、特許文献1では、共重合ナイロン樹脂を主成分とする水系エマルジョンで繊維を集束させることで、繊維と熱可塑性樹脂との接着性を向上させて、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の強度を改善する方法が開示されている。あるいは特許文献2では、特定のカルボキシル基量を有するスチレン系エマルジョンで集束処理する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3では、炭素繊維等からなる連続強化繊維シートと、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートとを交互に積層した状態で、熱プレス処理(加熱加圧処理)を行うことにより、連続強化繊維間の隙間に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4では、炭素繊維等からなる連続強化繊維間の隙間に熱可塑性樹脂を含浸させたシート状のプリプレグを積層することにより形成された繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が提案されており、予め所定の形状(長さ)に切断されたプリプレグの強化繊維を所定の方向に配向させた状態で、熱プレスにより付着(溶融接着)させて積層することで、生産性に優れ、高性能を有する繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得ることができると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61-254629号公報
【特許文献2】特開2004-176227号公報
【特許文献3】特開2013-189634号公報
【特許文献4】国際公開WO2016/067711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらの方法では、繊維と熱可塑性樹脂との界面接着強度こそ向上するものの、最終的に得られる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の曲げ強度等の機械的物性は、未だ満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前述の諸事情に鑑み、現状の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、繊維を集束させる組成物として、熱可塑性樹脂エマルジョンと特定の界面活性剤を含み、かつ、特定の動的表面張力を有することで、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]で構成される。
[1]熱可塑性樹脂エマルジョンと、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含む繊維集束用組成物であって、動的表面張力が25~55mN/mであることを特徴とする繊維集束用組成物。
【0013】
本発明には、以下の[2]~[4]のような態様も含まれる。
[2]前記熱可塑性樹脂エマルジョンが、芳香族ビニル系単量体40~98.5重量%と、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体1.5~60重量%との共重合体を含有することを特徴とする[1]に記載の繊維集束用組成物。
[3][1]または[2]のいずれかに記載の繊維集束用組成物で集束された樹脂含浸繊維。
[4][3]に記載の樹脂含浸繊維からなる層と熱可塑性樹脂層を含む積層体を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形品の曲げ強度を向上させることのできる繊維集束用組成物、及びこれを用いた樹脂含浸繊維、成形品を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の繊維集束用組成物は、熱可塑性樹脂エマルジョンと、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含むものである。
【0017】
本発明の繊維集束用組成物に含まれる熱可塑性樹脂エマルジョンは、熱可塑性樹脂の水分散体であれば特に制限なく、例えば、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン、ポリアミド系樹脂エマルジョン、芳香族ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、オレフィン系樹脂エマルジョンなどが挙げられる。中でも芳香族ビニル系樹脂エマルジョンが樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂との接着性の点で好ましい。
【0018】
芳香族ビニル系樹脂エマルジョンは、芳香族ビニル系単量体と、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を含有する。芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体、アルキルエステル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド系単量体、ビニルピリジン系単量体、共役ジエン系単量体等が挙げられ、目的に応じて各々1種または2種以上混合して使用することが可能である。
【0019】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレン、α-メチルスチレンの使用が好ましい。
【0020】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)等が挙げられる。
【0021】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル等が挙げられる。
【0022】
アルキルエステル系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β-ヒドロキシエチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ-(エチレングリコール)マレエート、ジ-(エチレングリコール)イタコネート、2-ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2-ヒドロキシエチル)マレエート、2-ヒドロキシエチルメチルフマレート等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸アミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
ビニルピリジン系単量体としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン等が挙げられる。
【0026】
共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられる。
【0027】
中でも、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、2-ビニルピリジン、1,3-ブタジエンの使用が好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂エマルジョンの製造に用いられる単量体の全量(全単量体)中の芳香族ビニル系単量体の含有量は、40~98.5重量%であることが好ましく、45~95重量%であることがより好ましく、47~90重量%であることがさらに好ましい。この範囲に調整することで樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂との接着性に優れる傾向にある。
【0029】
全単量体中の「芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体」の含有量は、1.5~60重量%であることが好ましく、5~55重量%であることがより好ましく、10~53重量%であることがさらに好ましい。この範囲に調整することで樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂との接着性に優れる傾向にある。
【0030】
芳香族ビニル系樹脂エマルジョンの各単量体の好ましい組成比率としては、芳香族ビニル系単量体60~95重量%、シアン化ビニル系単量体4~39重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1~15重量%が挙げられ、さらに好ましい組成比率としては、芳香族ビニル系単量体80~94重量%、シアン化ビニル系単量体5~15重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1~5重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の繊維集束用組成物に含まれる熱可塑性樹脂エマルジョンが、乳化重合により得られる場合、公知の乳化重合法、例えば、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、多段階重合法、シード重合法、パワーフィード重合法等の何れを採用してもよい。中でも重合時の安定性や分子量の調整の容易さから連続添加方法が好ましい。
【0032】
本発明の繊維集束用組成物に含まれる熱可塑性樹脂エマルジョンを乳化重合の際には、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、α-メチルスチレンダイマー、ターピノレン等の連鎖移動剤や過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤、還元剤である硫酸第一鉄、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、また、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩などの還元性スルホン酸塩、更にはL-アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはデキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類の各々1種または2種以上の添加剤を使用することも可能である。これらの添加剤の使用量に特に制限は無いが、製品コストや最終製品の外観への影響を考えると、全単量体100重量部に対して、各々0.01~5重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0033】
本発明の繊維集束用組成物に含まれる熱可塑性エマルジョンを乳化重合する際に使用される界面活性剤に特に制限はなく、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン界面活性剤、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
これらを1種又は2種以上使用することができ、全単量体100重量部に対して、0.05~10重量部の範囲で使用するのが好ましい。0.05部未満では重合液の安定性に劣り、10重量部を越えると最終製品での成型の際にガスが多量に発生し、成形品表面を損なう不具合が発生する。好ましくは0.1~8重量部、より好ましくは0.5~5重量部の範囲である。
【0035】
更に、重合時には、公知の電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
【0036】
また、乳化重合する際の重合温度は、40~80℃の範囲で行うことが好ましく、重合時間は、3~15時間の範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明の繊維集束用組成物は、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含むものである。
【0038】
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤は、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物である。
【0039】
【化1】
【0040】
上記一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ炭素数1以上5以下のアルキル基を示す。R1、R2、R3及びR4は、アセチレン基を中心に左右対称構造であることが好ましい。
【0041】
【化2】
【0042】
上記一般式(2)中のR5、R6、R7及びR8は、それぞれ炭素数1以上5以下のアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1以上25以下の整数であり、m+nは2以上40以下である。OEはオキシエチレン鎖(-O-CH-CH-)、OPはオキシプロピレン鎖(-O-CH-CH[CH]-)である。OE及びOPはそれぞれ単独鎖であっても混合鎖であってもよい。R5、R6、R7及びR8は、アセチレン基を中心に左右対称構造であることが好ましい。
【0043】
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤は、日信化学工業(株)製から「Surfynol(登録商標)」又は「Olfine(登録商標)」の名称で、川研ファインケミカル(株)製から「Acetylenol(登録商標)」の名称で市販されている。
【0044】
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール又は2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシレートが好ましい。
【0045】
ジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が8~16のものが好ましい。塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩の具体例としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩、ジオクチルスルホコハク酸トリエタノールアミン塩、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム塩(ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム塩)、ジドデシルスルホコハク酸マグネシウム塩、ジテトラデシルスルホコハク酸リチウム塩、ジヘキサデシルスルホコハク酸カリウム塩等が挙げられる。これらのジアルキルスルホコハク酸塩は、一種類のジアルキルスルホコハク酸塩を単独で使用してもよいし、又は二種以上のジアルキルスルホコハク酸塩を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0046】
中でも、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムであることが曲げ強度向上の観点から好ましい。
【0047】
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種の含有量は、熱可塑性樹脂エマルジョン100重量部に対して0.5~10重量部であることが好ましく、0.7~3.2重量部であることがより好ましい。この範囲に調整することで樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂との接着性に優れる傾向にある。
【0048】
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種は、熱可塑性樹脂エマルジョンの製造時に添加しても良く、熱可塑性樹脂エマルジョンの製造完了後に添加しても良い。
【0049】
また、本発明の繊維集束用組成物には、分散剤、滑剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤等を本発明の効果を損なわない範囲に配合して使用することが可能である。
【0050】
本発明の繊維集束用組成物中の熱可塑性樹脂エマルジョンの含有割合(固形分換算)は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
【0051】
本発明の繊維集束用組成物中の熱可塑性樹脂エマルジョンの重量平均分子量は、1.0×10~8×10の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が、1.0×10より低いと本発明の目的である最終製品での強度が劣り、8×104を超えると本発明の特徴である炭素繊維間への含浸性が低下する。より好ましくは2×10~7.5×10、さらに好ましくは2.5×10~7×10、特に好ましくは3.5×10~6.8×10、最も好ましくは4×10~6.5×10の範囲である。
【0052】
なお、熱可塑性樹脂エマルジョンの重量平均分子量は、UV検出器、カラム(Agilent社製 MIXD-B)を備えた市販のゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)測定装置を用いて、カラム温度50℃、溶媒テトラヒドロフラン(THF)、流量1ml/min、検出波長254nmの条件で測定したポリスチレン換算分子量である。
【0053】
本発明の繊維集束用組成物中の熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分のガラス転移温度に特に制限はないが、30~200℃の範囲であることが最終製品の強度の点から好ましい。より好ましくは35~190℃、さらに好ましくは60~140℃、特に好ましくは80~120℃の範囲である。このガラス転移温度はJIS K7121―2012に準拠して測定することができる。なお、この熱可塑性樹脂エマルジョン中の固形分の抽出方法に特に制限はないが、例えば熱可塑性樹脂エマルジョンを90℃に調整された乾燥機中で10時間乾燥することにより得ることができる。
【0054】
本発明の繊維集束用組成物は、動的表面張力が、25~55mN/mであることが必要であり、29~40mN/mが特に好ましい。動的表面張力が55mN/m超の場合、繊維集束用組成物の繊維に対する濡れ性が低下し、熱可塑性樹脂と繊維との接着性が悪化する。一方、動的表面張力が25mN/m未満の場合、繊維に対する繊維集束用組成物の付着量を制御することが困難となることがある。
【0055】
動的表面張力は、例えば、実施例に記載されている方法で測定することができる。
【0056】
尚、動的表面張力は、例えば、繊維集束用組成物に添加される界面活性剤の種類や量によって調整することが可能である。
【0057】
本発明の繊維集束用組成物を繊維に集束させる方法には特に制限はなく、スプレー法や塗布法または含浸法等の方法から1種または2種以上組み合わせて選択することが可能である。
【0058】
本発明の繊維集束用組成物で集束させる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、硼素繊維、炭化ケイ素繊維、あるいはアルミウム繊維、ステンレス繊維、銅繊維、ニッケル繊維などの金属繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ポリイミド繊維、(ナノ)セルロース繊維などの有機繊維等を用いることが出来る。さらにこれらの繊維は1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。中でも、炭素繊維が最も好ましい。炭素繊維には、通常の炭素繊維に加えて、ニッケルなどの金属で被覆処理した炭素繊維なども含まれ、かつその形態に特に制限はなく、連続繊維、チョップド繊維、ミルド形状や不織布等、目的に応じて任意の形態のものを選ぶことが可能である。
【0059】
本発明における繊維集束用組成物と繊維の含有比率には特に制限は無いが、熱可塑性樹脂との接着性や最終製品の強度面から、固形分換算で、繊維集束用組成物1~20重量部、繊維99~80重量部の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明の樹脂含浸繊維における、繊維に繊維集束用組成物を集束させた後の水分の蒸発方法については特に制限はなく、例えば乾燥機を使用する方法、赤外線を照射する方法、連続的に乾燥機を通過させる方法等を目的に応じて採用することが可能である。中でも、水分の蒸発だけではなく、集束した繊維集束用組成物を溶融させ、繊維表面を更に均一に被覆させるために、繊維集束用組成物のガラス転移温度+60℃以上に調整された1m以上の行路を持つ乾燥機内を0.5m/分以上の速度で連続的に通過させながら乾燥することが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂含浸繊維は、熱可塑性樹脂と溶融混練し、繊維強化熱可塑性樹脂組成物として用いることができる。さらに、熱可塑性樹脂シートまたはフィルムと積層させた積層品として用いることもできる。
【0062】
本発明の樹脂含浸繊維と組み合わせる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(ASA)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)等のスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリアミド樹脂(PA)、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)あるいはスチレン系樹脂と、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、及びポリ乳酸樹脂(PLA)から選ばれる1種以上の樹脂とのアロイが例示され、最終製品の要求性能に合わせて1種又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。中でもスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、およびスチレン系樹脂とポリエステル樹脂またはポリアミドとのアロイが、最終製品の成形性と強度のバランスの点で好ましい。
【0063】
本発明の樹脂含浸繊維と組み合せる熱可塑性樹脂には、例えば、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、顔料、染料等の各種添加剤を含むこともできる。
【0064】
本発明の樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られた繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、例えば、射出成形、多層押し出し成形、フィルム成形、シート成形、インフレーション成形、プレス成形、SMC成形法、LFT-D法等、目的に応じた加工法を採用することで成形品を得ることが可能である。また、場合によっては予備賦形を行う工程を挟むことも可能である。
【0065】
本発明の樹脂含浸繊維からなる層を熱可塑性樹脂シートまたはフィルムと積層させた積層体は、プレス成型等により成形品を得ることができる。また、場合によっては予備賦形を行う工程を挟むことも可能である。
【0066】
成形品の加工温度に特に制限はなく、使用される熱可塑性樹脂の特性により任意の温度を選択することが可能であるが、成形サイクルの点から180~270℃の範囲で成形することが好ましく、更に好ましくは180~250℃の範囲である。
【実施例0067】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。また、各実施例、比較例での各種物性の測定は次の方法による。
【0068】
重量平均分子量
得られた熱可塑性樹脂エマルジョンを室温にて一昼夜乾燥後、70℃のオーブンで1時間乾燥させることで測定サンプルとした。その後、測定サンプル0.02gをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)測定装置を用いて、下記条件で測定した。
検出器:UV
カラム:Agilent社製 MIXD-B
カラム温度:50℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1ml/min、
検出波長:254nm
標準試料:ポリスチレン
ガラス転移温度
得られた熱可塑性樹脂エマルジョンを90℃のオーブンで10時間乾燥させることで測定サンプルとした。その後、示差走査熱量計を用いてJIS K7121―2012に準拠して測定した。
【0069】
動的表面張力
サンプル濃度を6%に調整し、バブルプレッシャー式動的表面張力計(KRUSS社製 BP100)を用いて、最大泡圧法により、温度30℃、キャピラリー径0.2mmのキャピラリー、表面寿命時間100msの条件で測定した。単位:mN/m
曲げ強度
各実施例及び比較例で得られた試験片を用い、JIS K7074に準じて曲げ強度を測定した。単位:MPa
<熱可塑性樹脂エマルジョンの製造方法>
耐圧性の重合反応器に、脱イオン水45部を添加した後、窒素置換を行った。スチレン88部、アクリロニトリル10部、t-ドデシルメルカプタン0.8部からなる単量体混合物A100部を準備し、これを単量体混合物A100重量%あたり5重量%の単量体混合物A-1と95重量%の単量体混合物A-2に分けた。
【0070】
次いで反応器を75℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部(固形分換算)および単量体混合物A-1加えて十分攪拌した後、過硫酸カリウム0.1部を仕込み、80℃にて重合を開始した。
【0071】
開始から1時間後に残りの単量体混合物A-2、アクリル酸2部を脱イオン水18部に溶解させた溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7部(固形分換算)と過硫酸カリウム0.1部を脱イオン水30部に溶解させた溶液を7.5時間にわたって連続的に添加した。そのまま重合温度を80℃で5時間保ち重合を終了した。次いで、熱可塑性樹脂エマルジョンを苛性ソーダ水溶液でpHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、固形分を45%に調整し、熱可塑性樹脂エマルジョンを得た。
【0072】
熱可塑性樹脂エマルジョンの固形分の重量平均分子量は5.4×10、ガラス転移温度は102℃であった。
【0073】
<繊維集束用組成物-1の製造方法>
熱可塑性樹脂エマルジョン100重量部(固形分換算)に、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(製品名「サーフィノール(登録商標)104E」)を1重量部(固形分換算)添加し、十分に攪拌し繊維集束用組成物-1を得た。上述の方法で測定した動的表面張力は40mN/mであった。
【0074】
サーフィノール(登録商標)104E:日信化学工業(株)製 物質名:2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール
<繊維集束用組成物-2の製造方法>
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(製品名「サーフィノール(登録商標)104E」)の添加量を1重量部から3重量部に変更した以外は繊維集束用組成物-1と同様の方法で行った。上述の方法で測定した動的表面張力は29mN/mであった。
【0075】
<繊維集束用組成物-3の製造方法>
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(製品名「サーフィノール(登録商標)104E」)をジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤(製品名「サンモリン(登録商標)OT-70」)に変更した以外は繊維集束用組成物-1と同様の方法で行った。
【0076】
上述の方法で測定した動的表面張力は44mN/mであった。
【0077】
サンモリン(登録商標)OT-70:三洋化成工業(株)製 物質名:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
<繊維集束用組成物-4の製造方法>
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(製品名「サーフィノール(登録商標)104E」)をジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤(製品名「サンモリン(登録商標)OT-70」)に変更した以外は繊維集束用組成物-2と同様の方法で行った。
【0078】
上述の方法で測定した動的表面張力は30mN/mであった。
【0079】
<繊維集束用組成物-5の製造方法>
熱可塑性樹脂エマルジョンを繊維集束剤組成物-5とした。上述の方法で測定した動的表面張力は62mN/mであった。
【0080】
<連続樹脂含浸繊維-1の製造方法>
布引装置を用いて、繊維集束用組成物-1(固形分換算)を炭素繊維100重量部に対して含有量が15重量部となるように集束させ、その後得られた連続樹脂含浸繊維を180℃に調整した乾燥炉内を1m/分の速さで3分間移動させることにより、水分を完全に除去し、最終の連続樹脂含浸繊維-1を得た。
【0081】
<連続樹脂含浸繊維-2~5の製造方法>
繊維集束用組成物-1を繊維集束剤組成物2~5に変更した以外は連続樹脂含浸繊維-1と同じ製法で、連続樹脂含浸繊維-2~5を得た。
【0082】
上述の連続樹脂含浸繊維に用いた炭素繊維は、帝人株式会社製 Tenax(登録商標)-J STS40 F13 24K 1600tex
<連続樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂からなる積層品の製造方法>
連続樹脂含浸繊維を20cm角のシートとなるように複数枚並列させた後、ポリアミド樹脂フィルム(東レフィルム加工株式会社製 レイファン(登録商標)N0 1401 厚み40μm)と炭素繊維含量が30重量%になるように交互に積層させ、設定温度250℃の圧縮成型機NF37型を用いて、圧力5MPaをかけた状態で余熱を5分間行った後、圧力15MPaをかけた状態で5分間熱プレス処理を行い、厚みが2mmの積層品を作製した。また、得られた積層品から幅15mm×長さ150mmの試験片を切り出し曲げ試験用試験片とした。
【0083】
尚、積層品を作成する際には炭素繊維の方向は一方向に揃えてあり、また曲げ試験用試験片は炭素繊維の方向と試験片の長辺の方向が一致する方向で切り出しを行った。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、本発明の繊維集束用組成物を用いて製造された連続樹脂含浸繊維をポリアミド樹脂フィルムと積層した実施例1~4は、曲げ強度に優れるものであった。
【0086】
比較例1は、本発明の繊維集束用組成物の動的表面張力が規定範囲を満足しないため、曲げ強度に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
上述の通り、本発明品は、従来のものに比べて製品強度に優れる特性を有することから、成形体として、例えば自動車部品や電化製品に好適である。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂とが複合化した繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造において、複数の繊維を集束して前記樹脂含浸繊維を製造するための繊維集束用組成物であり、
熱可塑性樹脂エマルジョンと、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種を含む繊維集束用組成物であって、動的表面張力が25~55mN/mであることを特徴とする繊維集束用組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンが、芳香族ビニル系単量体40~98.5重量%と、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体1.5~60重量%との共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維集束用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の繊維集束用組成物で集束された樹脂含浸繊維。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂含浸繊維からなる層と熱可塑性樹脂層を含む積層体を成形してなる成形品。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含浸繊維と熱可塑性樹脂とが複合化した繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造において、複数の繊維を集束して前記樹脂含浸繊維を製造するための繊維集束用組成物であり、
重量平均分子量が1.0×10 4 ~8×10 4 以下である芳香族ビニル系樹脂を含有する芳香族ビニル系樹脂エマルジョンと、
アセチレングリコール系非イオン界面活性剤またはジアルキルスルホコハク酸塩系陰イオン界面活性剤の少なくとも1種とをみ、
前記繊維集束用組成物の濃度を6%に調整し、最大泡圧法により、キャピラリー径0.2mmのキャピラリーを用いて、温度30℃、表面寿命時間100msの条件で測定した動的表面張力が、25~55mN/mであることを特徴とする繊維集束用組成物。
【請求項2】
前記芳香族ビニル系樹脂が、芳香族ビニル系単量体40~98.5重量%と、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体1.5~60重量%との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の繊維集束用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の繊維集束用組成物で集束された樹脂含浸繊維。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂含浸繊維からなる層と熱可塑性樹脂層を含む積層体を成形してなる成形品。