(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008826
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ガスノズル
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086969
(22)【出願日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021111228
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】河上 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】杉山 愛海
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA13
5F004BA20
5F004BB13
5F004BC08
5F004DA01
(57)【要約】
【課題】パーティクル低減効果により優れた焼き肌面を有するガスノズルを提供する。
【解決手段】本発明にかかるガスノズル1は、ガスが流れる貫通孔2aを少なくとも1つ有し、セラミックス焼結体からなる柱状のガスノズルであって、前記ガスノズル1は、前記貫通孔2の内表面2a全域、および前記貫通孔2の出口2bが設けられた端面1Aのいずれもが焼成面であり、前記貫通孔2の内表面2aは、前記出口2bの近傍である第1の領域Aと、前記第1の領域Aよりもさらに奥側に位置する第2の領域Bと、を有し、前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径が、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さく形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流れる貫通孔を少なくとも1つ有し、セラミックス焼結体からなる柱状のガスノズルであって、
前記ガスノズルは、前記貫通孔の内表面全域、および前記貫通孔の出口が設けられた端面のいずれもが焼成面であり、前記貫通孔の内表面は、前記出口の近傍である第1の領域Aと、前記第1の領域Aよりもさらに奥側に位置する第2の領域Bと、を有し、
前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径が、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さいことを特徴とするガスノズル。
【請求項2】
前記第1の領域Aは、前記出口の端面から奥側への距離が0.5mm以内であり、前記第2の領域Bは、前記第1の領域Aよりもさらに奥側で前記出口の端面からの距離が3mm以内であり、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径が、前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径の1.2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスノズルに関し、例えば、半導体製造装置などのプラズマプロセスを有する装置に用いられる、腐食性ガスを噴出するセラミックス焼結体からなるガスノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマプロセス装置用の耐蝕性部材の一つとして、エッチングガスを処理装置内に導入するために設けられ、プラズマ雰囲気下に晒されるガスノズルがある。一般的なガスノズルの全体形状は、いわゆる柱状体に形成されている。即ち、前記ガスノズルの全体形状は、円、楕円、多角形のいずれかの形状に形成された一対の端面と、前記一対の端面の間に形成されたと略垂直方向に所定の長さを有する側面部とを有する。そして、前記ガスノズルには柱状体の軸線に沿って、例えばエッチングガスのようなガスが流通する貫通孔が複数形成されている。尚、ガスノズルの材質は、一般的に耐蝕性に優れたイットリア焼結体やアルミナ焼結体が用いられている。
【0003】
ところで、セラミックス焼結体からなるガスノズルの技術的課題の一つとして、ガスノズルからのパーティクル発生があり、これを低減するべく、いくつかの対策が取られてきた。その解決方法の一つとして、ガスノズルの内壁の面状態に着目した技術が、特許文献1に記載されている。
【0004】
この特許文献1に記載されたガスノズルを、
図2、
図3に基づいて説明する。尚、
図2は、ガスノズルを模式的に示した斜視図、
図3は、
図2のI-I断面図である。この特許文献1に示されたガスノズル10は、一般的なガスノズルと同様に、ガスが流れる貫通孔13が形成されたセラミック焼結体からなる柱状の本体からなり、該本体の一端面11には、前記貫通孔13における前記ガスの流出口14が形成されている。
【0005】
更に、
図3に示すように、前記ガスノズル10の貫通孔13の内壁13aは、前記出口14の近傍に位置する第1領域Aと該第1領域Aよりも前記本体の内部に位置する第2領域Bとを有し、前記第1領域Aおよび前記第2領域Bは、前記セラミック焼結体の焼き肌面に形成されている。そして、前記第1領域Aにおける平均結晶粒径は、前記第2領域Bにおける平均結晶粒径よりも大きく形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2014-119177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1には、「セラミック焼結体の焼き肌面における平均結晶粒径が大きいと、プラズマに腐食されやすい結晶粒界の焼き肌面における面積の割合が小さくなるため、焼き肌面がプラズマ化したガスに晒された際にパーティクルが脱落しにくくなる。したがって、プラズマ化したガスに晒されやすい第1領域Aにおけるパーティクルの発生を良好に低減できる」と記載されている。即ち、特許文献1には、ガスノズル10の出口14近傍の平均結晶粒径が大きいほうが、パーティクル発生量を減らせることが示されている。
【0008】
また、特許文献1には「セラミック焼結体の焼き肌面における平均結晶粒径が小さいと焼き肌面における結晶粒子の充填率が高くなるため、焼き肌面の機械的強度が高くなる。したがって、プラズマ化したガスによる影響を低減しつつ、機械的強度を高めることによって、機械的応力または熱応力に起因した本体の損傷を抑制できる」ことが記載されている。
【0009】
しかしながら、本発明者らが特許文献1記載のガスノズルの検証を行った結果、パーティクル低減効果が少なく、その性能は必ずしも満足のいくものとは言えなかった。そして、本発明者らが、セラミック焼結体の焼き肌面における平均結晶粒径について、鋭意研究した結果、ガスノズルの出口側の内壁面の平均結晶粒径を、奥側の内壁面の平均結晶粒径よりも小さくする方がパーティクル発生量の低減効果に優れていることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、パーティクル低減効果がより優れた、焼き肌面を有するガスノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかるガスノズルは、ガスが流れる貫通孔を少なくとも1つ有し、セラミックス焼結体からなる柱状のガスノズルであって、前記ガスノズルは、前記貫通孔の内表面全域、および前記貫通孔の出口が設けられた端面のいずれもが焼成面であり、前記貫通孔の内表面は、前記出口の近傍である第1の領域Aと、前記第1の領域Aよりもさらに奥側に位置する第2の領域Bと、を有し、前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径が、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
本発明にかかるガスノズルにあっては、上記構成を有することで、焼成面(焼き肌面)を有するガスノズルにおいて、効果的にパーティクルの発生を抑制できる。
【0013】
また、本発明に係るガスノズルは、具体的には、前記第1の領域Aは、前記出口の端面から奥側への距離が0.5mm以内であり、前記第2の領域Bは、前記第1の領域Aよりもさらに奥側で前記出口の端面からの距離が3mm以内であり、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径が、前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径の1.2倍以下であることが、より好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パーティクル低減効果がより優れた、焼成面(焼き肌面)を有するガスノズルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るガスノズルの第1の領域Aと第2の領域Bを説明するために、模式的に表した、断面図である。
【
図2】従来のガスノズルを模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかるガスノズルの一実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明にかかるガスノズル1は、従来のガスノズル10と同様に、ガスが流れる貫通孔2を少なくとも1つ備えた、セラミックス焼結体からなる柱状のガスノズルである。具体的には、ガスノズルは、略平面で互いに対向する端面1A、1Bを有し、これらの端面1A、1Bを貫通するように、少なくとも1つの貫通孔2が設けられている。前記貫通孔2には一の端面1Aで開口して出口2bが形成され、また他の端面1Bで開口して入口2cが形成されている。
【0017】
即ち、本発明にかかるガスノズル1は、円、楕円、多角形のいずれか形状の端面1A,1Bと、前記端面1A,1Bに対して垂直方向または斜め方向に延設された所定の長さ寸法の側面1Cと、を有する柱状形状に形成されている。尚、このガスノズル1は、プラズマプロセス装置で用いられる腐食性ガスを噴出するガスノズルとして、公知の形状、サイズを適宜選択して設計することができる。
【0018】
このガスノズル1は、耐蝕性に優れたセラミックスからなり、好適には、イットリアを主成分とするものが挙げられる。また、助剤として酸化タンタルを0.5~5wt%添加したイットリア焼結体を用いるとより好ましい。イットリアに酸化タンタルを適切に添加したものは、焼成時の異常成長が抑制され、第1の領域Aと第2の領域Bの平均結晶粒径の差を、好ましい所定の範囲にすることができる。
【0019】
前記ガスノズル1は、プラズマ及び反応ガスが接する面が焼成面として形成されている。このプラズマ及び反応ガスが接する面とは、ガスノズル1の端面1Aおよび貫通孔2の内壁(内表面)2aの全面が相当する。即ち、前記ガスノズル1は、少なくとも、前記貫通孔2の内表面2a全域および前記貫通孔2の出口2bが設けられた端面1Aのいずれもが焼成面(焼き肌面)に形成されている。尚、前記貫通孔2の内表面2aの全域、および貫通孔2の出口2bが設けられた端面1A以外については、加工面、焼成面のいずれでも構わない。更に言えば、ガスノズル1の全体の表面が焼成面であってもよい。
【0020】
ここで、焼成面とは、セラミックスを焼成した後に、焼成後の面に研磨,研削等の加工を施さず、また被覆やコート処理を施さない面であるが、清浄化の制御のための化学的処理は適宜なされていてもよい。尚、前記ガスノズル1の側面1Cは、前記したように焼成面(焼き肌面)でも良く、あるいはまた焼成面(焼き肌面)に研磨,研削等の加工を施し、あるいはまた被覆やコート処理を施しても良い。
【0021】
このように、前記ガスノズル1では、貫通孔2の内表面2aの全域、および貫通孔2の出口2bが設けられた端面1Aのいずれもが焼成面とされ、焼成後の面に研磨,研削等の加工を施さない状態になされているため、加工による破砕層が存在しない。そのため、前記焼成面がプラズマによるダメージを受けた場合にも、破砕層が脱落することによって発生する、特に大きいパーティクルは抑制される。
【0022】
更に、このガスノズル1における、貫通孔2の内表面2aは、出口2bの近傍である第1の領域Aと、第1の領域Aよりもさらに奥側に位置する第2の領域Bを有し、第1の領域Aにおける平均結晶粒径が、第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さく形成されている。尚、
図1に示すように、第1の領域Aと第2の領域Bは、ガスノズル1の出口2bから奥側に向かって、連続して形成されている領域である。
【0023】
そして、第1の領域Aにおける平均結晶粒径が、第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さい場合には、結晶粒子の剥離によるパーティクル発生量が抑制される。その理由は、現時点において明確に解明されていないが、プラズマがより強く当たりやすい領域Aでは、平均結晶粒径が小さいことで強度が増し、プラズマ曝露時にラジカル等の物理的衝撃に耐え、パーティクルの発生が抑えられると考えられる。一方、例えば、原料ガスとしてハロゲン系腐食性ガスを反応室内に供給し、プラズマ化したエッチングガスとすることによって、対象物に微細加工を施す装置のガスノズルにあっては、プラズマよりもハロゲン系腐食性ガス(例えば、フッ素系ガス)が多く接触する領域Bでは、平均結晶粒径を大きくすることで、粒界が少なくなり、ハロゲン系腐食性ガスによる粒界の腐食に強くなり、腐食によるパーティクルの発生が抑えられると考えられる。即ち、プラズマとハロゲン系腐食性ガス(例えば、フッ素系ガス)のそれぞれが持つセラックス焼結体への作用と粒径とのバランスを勘案すると、本発明のような平均結晶粒径大小関係が好適であるものと考えられる。
【0024】
ここで、第1の領域A、第2の領域についての具体的な一態様を示すと、第1の領域Aは出口から奥側への距離が0.5mm以内であり、第2の領域Bは第1の領域Aよりもさらに奥側で出口からの距離が3mm以内であり、第2の領域Bにおける平均結晶粒径は領域Aにおける平均結晶粒径の1.2倍以下である。第1の領域Aの平均粒径は、例えば、3μm~3.5μmであり、第2の領域Bの平均粒径は、例えば3.4μm~4μmである。
これら平均粒径は、第1の領域Aの表面、第2の領域Bの表面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、この撮影画像を、画像解析装置(装置名:Mac-View)を用いて解析することにより求めることができる。
【0025】
第1の領域Aを出口から奥側への距離が0.5mm以内としたのは、焼成の際、この領域が伝熱による加熱の影響を受けやすく、それにより粒径が大きくなり易く、第2の領域Bとの粒径の差が明確になるためである。また、第2の領域Bを、第1の領域Aよりもさらに奥側で出口からの距離が3mm以内としたのは、この領域における伝熱による加熱がほぼ一様の温度で、焼成が進行するので、おおよそ一定の粒径分布になる。即ち、この領域を含めたさらに奥側では粒径が安定しており、本発明の効果が得られる範囲として特定するのに十分な領域といえる。
【0026】
更に、第2の領域Bにおける平均結晶粒径を、領域Aにおける平均結晶粒径の1.2倍以下としたのは、この範囲であれば、より本発明の効果が発揮される。即ち、第2の領域Bにおける平均結晶粒径が領域Aにおける平均結晶粒径の1.2倍を超える場合には、結晶間の応力差が過大になり、領域Aと領域Bと境界(内壁面)での剥離の原因になる虞があるためである。
【0027】
前記ガスノズル1は、一般的な製造方法を用いて製造することができる。一例を挙げれば、まず、セラミック粉末に純水と有機バインダーを加えた後、ボールミルで湿式混合してスラリーを作製する。その後、スラリーをスプレードライにて造粒し、セラミック造粒粉末を形成する。そして、セラミック造粒粉末を用いて、金型プレス法または冷間静水圧プレス成形法(CIP成形法)などの成形法を用いて所定の形状に成形して、例えば、円柱状の成形体を得る。次に、前記成形体に貫通孔を穿設した後、大気雰囲気中または酸素雰囲気中のいずれかにて例えば1400℃以上2000℃以下で焼成し、本発明にかかるガスノズルを得る。このガスノズルは、焼成後に加工がされていないため、前記貫通孔2の内表面2aの全域、および貫通孔2の出口2bが設けられた端面1Aのほか、他の面も焼き肌面となっている。
【0028】
ここで、所定の形状の成形体を作製後、この成形体を焼成炉で焼成する際に、ガスノズル1の出口2bの熱伝達が速くなるように配置するのが良い。
具体的には、焼成炉の載置台上に成形体を載置する際、前記成形体のガスノズル1の出口2bに相当する部分を載置台上に載置する(前記成形体のガスノズル1の入口2cに相当する部分を上に向けて載置する)。これにより、成形体の焼成の際に、成形体の上方(入口2cから内方に)から熱が加わり、出口2b側から載置台側に熱が逃げる。その結果、出口2bの近傍に位置する第1の領域Aと比較して、成形体の内部に位置する第2の領域Bに大きな熱が加わりやすい。
【0029】
そして、ガスノズルが、例えば、イットリア焼結体、イットリウム・アルミニウム・ガーネット焼結体、スピネル焼結体または高純度アルミナ焼結体で形成される場合には、成形体を焼成する際に液相焼結が生じる。このため、大きな熱が加わりやすい第2の領域Bの粒径は、第1の領域Aの粒径に比べて、大きく成長しやすい。その結果、前記第1の領域Aにおける平均結晶粒径を、前記第2の領域Bにおける平均結晶粒径よりも小さくすることができる。
【0030】
このように、焼成炉内のガスノズル1の出口2bが載置板に載るように配置するのが良い。このような製造方法であれば、平均結晶粒径が本発明のような態様とすることが、比較的容易に達成することができる。
【0031】
尚、前記貫通孔の内表面全域、および前記貫通孔の出口が設けられた端面については、研削加工、研磨加工などの機械加工は行われない。これは、機械加工による破砕層を発生させないためであり、前記焼成面がプラズマによるダメージを受けた場合にも、破砕層が脱落することによって発生する、特に大きいパーティクルを抑制するためである。
【0032】
以上のようにして、ガスノズルを製造することができる。特に、前記したように、所定の形状の成形体を作製後、この成形体を焼成炉で焼成する際に、炉内に載置する際のガスノズル1の出口2bの熱伝達が速くなるように配置するのが良い。例えば、焼成炉内のガスノズル1の出口2bが載置板に載るように配置することにより、本発明のような平均結晶粒径の態様とすることが、比較的容易に達成することができる。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
【0034】
(実施例1)
(製造条件~焼成体の作製)
純度99.9%以上のイットリア粉末と、純水と、助剤としてタンタルの酸化物、その他市販の有機バインダーをそれぞれ秤量して、ボールミルで湿式混合してスラリーを作製した。その後、このスラリーをスプレードライにて造粒する。なお、造粒粉の粒径は、17μmから40μmの範囲にあるものを使用した。造粒したイットリア粉末を用いて、冷間静水圧プレス成形法(CIP成形法)を用いて、直径1.5mmの貫通孔をガスノズル端面の中心部に1本形成した円筒状の成形体を得た。そして、大気雰囲気中にて1100℃以上で脱脂して有機バインダーを分解させ、続けて、水素雰囲気中にて1800℃で焼成した。以上の工程を経て、評価用のガスノズルを作製した。
【0035】
実施例1として、ガスノズルの出口が焼成炉内の載置板に当接するようにして配置した。具体的には、
図1のガスノズルの端面1Aを下側(載置板側)に、端面1Bを上側に配置している。そして、上記共通の製造条件で、評価用ガスノズルを作製した。この時、ガスノズルの端面1Aが載置台と直接接触しないように、端面1A側の側面1Cにフランジ部を形成し、このフランジ部とのみ接触するような治具を用いて、載置台に載置した。即ち、ノズルと同じ素材(イットリア)および状態(焼成したままの面を有する)の治具(円環状)を準備し、端面1Aが載置台と接触しないよう、端面1A側の前記フランジ部をこの治具で支えるようにして載置した。この際、端面1A側の前記フランジ部と治具の間にイットリア敷粉をひき、接触面を少なくした。なお、この治具は、端面1A側の前記フランジ部をごく狭い接触面積で支持できれば良く、特にその形状が厳密に限定されるものではない。
【0036】
(比較例1)
比較例1として、ガスノズルの出口が焼成炉内の載置板と反対側に向くようにして配置した。すなわち、実施例1の場合と上下逆に配置し、ガスノズルの端面1Aを上側に、端面1Bを下側に配置した。そして、上記実施例1と同様の製造条件で、評価用ガスノズルを作製した。
【0037】
(評価1:平均結晶粒径)
実施例1、比較例1について、ガスノズル出口(端面部)から、ガスノズルの奥側に向かって、貫通孔内壁面の平均結晶粒径を測定した。測定箇所は、ガスノズル出口をゼロとして、0.5mm毎に測定した。第1の領域Aは0mmと0.5mmの2か所、第2の領域Bは1.0mm、1.5mm、2mmの3か所で測定した値を平均化した。なお、測定には、非接触式の走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、当該内壁面の画像を取得し、画像解析により粒子の個数と平均結晶粒径を得た。
【0038】
(評価2:パーティクル発生量)
実施例1、比較例1について、公知のICPエッチング装置のチャンバーを使用し、CF4のプラズマにて、12時間の腐食試験を行った。その後、同じく公知の気中パーティクルカウンターにて、パーティクルの発生量の測定を行った。
尚、パーティクル発生量は、ガスノズルの任意の面の1mm□領域における腐食試験前後での径2μm以上のパーティクルの増加数を測定した(単位:pts:個/cm2)。
【0039】
上記評価1、評価2において、実施例1は、第1の領域Aの平均結晶粒径が3.3μm、第2の領域Bの平均結晶粒径が3.9μm、平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比が1.18、パーティクル発生量が1000ptsであった。
【0040】
また評価1、評価2において、比較例1は、第1の領域Aの平均結晶粒径が5.8μm、第2の領域Bの平均結晶粒径が5.2μm、平均結晶粒径の領域B/領域Aの比が0.9、パーティクル発生量が2000ptsであった。
【0041】
以上のように、第1の領域Aの平均結晶粒径が第2の領域Bの平均結晶粒径よりも小さい場合には、第1の領域Aの平均結晶粒径が第2の領域Bの平均結晶粒径よりも大きい場合よりも、パーティクル発生量が少ないことが確認された。そして、そのときの平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比は1.18、即ち、1.2倍以下であった。
【0042】
(実施例2)
上記実施例1の結果から明らかなように、本発明は、第1の領域Aは、ガスノズル出口の端面から奥側への距離が0.5mm以内であり、第2の領域Bは第1の領域Aよりもさらに奥側でガスノズル出口の端面からの距離が3mm以内であると、より好ましい。
第1の領域Aの出口の端面から奥側への距離については、一例として焼成時の温度で調整することができる。そこで、実施例2では、焼成温度を調整し、第1の領域Aについて、ガスノズル出口の端面から奥側への距離が0.5mmを超え、1mm以内となるようガスノズルを焼成して形成した。
【0043】
尚、実際のガスノズル製造における焼成温度は、ガスノズル全体の密度や粒径分布の均一性、焼成時のクラック発生等を考慮して決定されるが、実施例2では、あくまで本発明の効果の検証として、意図的に焼成温度のみを変更した。
また、第2の領域Bのガスノズル出口の端面からの距離は、第1の領域Aを特定するために規定したものであり、かつ、第1の領域Aのガスノズル出口の端面からの距離に依存するものである。従って、本発明においては、第2の領域Bの出口の端面からの距離だけを独立させて制御することは実施しない。
【0044】
この実施例2では、上記のように第1の領域Aの領域について、ガスノズル出口の端面から奥側への距離が0.5mmを超え、1mm以内となるように、焼成温度を実施例1のとき(1800℃)よりも低い1700℃とした。それ以外の条件は、実施例1と同様にして製造、評価を行った。
【0045】
(評価1:平均結晶粒径)
実施例2について、ガスノズル出口(端面部)から、ガスノズルの奥側に向かって、貫通孔内壁面の平均結晶粒径を測定した。測定箇所は、ガスノズル出口をゼロとして、0.5mm毎に測定した。第1の領域Aは0mmと0.5mmと1.0mmの3か所、第2の領域Bは1.5mm、2mmの2か所で測定した値を平均化した。なお、測定には、非接触式の走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、当該内壁面の画像を取得し、画像解析により粒子の個数と平均結晶粒径を得た。
【0046】
(評価2:パーティクル発生量)
実施例2について、公知のICPエッチング装置のチャンバーを使用し、CF4のプラズマにて、12時間の腐食試験を行った。その後、同じく公知の気中パーティクルカウンターにて、パーティクルの発生量の測定を行った。
【0047】
上記評価1において、実施例2は、第1の領域Aの平均結晶粒径が3.0μm、第2の領域Bの平均結晶粒径が3.4μm、平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比が1.14であった。
【0048】
また、評価2において、パーティクル発生量は、1500ptsであった。
これは、実施例2では、第1の領域Aのガスノズル出口端面からノズル奥側への距離が0.5mmを超えたことで、平均結晶粒径が小さい第1の領域Aの面積が実施例1より相対的に増えるが、これにより、第2の領域Bの面積よりハロゲン系腐食性ガスによる粒界の腐食に弱い第一の領域Aの面積が多くなるので、実施例1との比較では、パーティクル発生量が多くなったものと考えられる。
【0049】
(実施例3)
平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比によるパーティクル発生量への影響については、高さ(端面1Aから載置台の面までの距離)が異なる治具を選択して用いることで調整することができる。
そこで、実施例3では、実施例1の条件に対し、治具の高さ(端面1Aから載置台の面までの距離)のみを変えて、パーティクル発生量への影響を検証した。
【0050】
実施例1で用いた治具の高さは30mmである。それに対し、実施例3では、高さ10mmの治具を用いた。その他の条件は実施例1と同様にしてガスノズルの製造を行い、実施例1と同様の評価1、2を行った。
【0051】
実施例3で製造したガスノズルは、実施例1と同様に第一の領域Aについては、ガスノズル出口の端面からガスノズル奥側に向かう距離が0.5mm以内であり、第二の領域Bについては、ガスノズル出口の端面からガスノズル奥側に向かう距離が3mm以内であった。
【0052】
(評価1:平均結晶粒径)
実施例3について、ガスノズル出口(端面部)から、ガスノズルの奥側に向かって、貫通孔内壁面の平均結晶粒径を測定した。測定箇所は、ガスノズル出口をゼロとして、0.5mm毎に測定した。第1の領域Aは0mmと0.5mmの2か所、第2の領域Bは1.0mm、1.5mm、2mmの3か所で測定した値を平均化した。なお、測定には、非接触式の走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、当該内壁面の画像を取得し、画像解析により粒子の個数と平均結晶粒径を得た。
【0053】
(評価2:パーティクル発生量)
実施例3について、公知のICPエッチング装置のチャンバーを使用し、CF4のプラズマにて、12時間の腐食試験を行った。その後、同じく公知の気中パーティクルカウンターにて、パーティクルの発生量の測定を行った。
【0054】
上記評価1において、実施例3は、第1の領域Aの平均結晶粒径が3.9μm、第2の領域Bの平均結晶粒径が4.0μm、平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比が1.02(本発明のより好ましい範囲の下限に相当)であった。
【0055】
また、評価2において、パーティクル発生量は、1300ptsであった。
この実施例3の結果は、実施例1の結果よりは劣るが、比較例1との比較ではパーティクル発生量は十分低く、本発明の効果は得られているといえる。
【0056】
(実施例4)
実施例4では、実施例1の条件に対し、治具の高さ(端面1Aから載置台の面までの距離)のみを変えて、パーティクル発生量への影響を検証した。
実施例1で用いた治具の高さは30mmであるが、実施例4では、高さ50mmの治具を用いた。その他の条件は実施例1と同様にしてガスノズルの製造を行い、実施例1と同様の評価1、2を行った。
【0057】
実施例4で製造したガスノズルは、実施例1と同様に第一の領域Aについては、ガスノズル出口の端面からガスノズル奥側に向かう距離が0.5mm以内であり、第二の領域Bについては、ガスノズル出口の端面からガスノズル奥側に向かう距離が3mm以内であった。
【0058】
(評価1:平均結晶粒径)
実施例4について、ガスノズル出口(端面部)から、ガスノズルの奥側に向かって、貫通孔内壁面の平均結晶粒径を測定した。測定箇所は、ガスノズル出口をゼロとして、0.5mm毎に測定した。第1の領域Aは0mmと0.5mmの2か所、第2の領域Bは1.0mm、1.5mm、2mmの3か所で測定した値を平均化した。なお、測定には、非接触式の走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、当該内壁面の画像を取得し、画像解析により粒子の個数と平均結晶粒径を得た。
【0059】
(評価2:パーティクル発生量)
実施例4について、公知のICPエッチング装置のチャンバーを使用し、CF4のプラズマにて、12時間の腐食試験を行った。その後、同じく公知の気中パーティクルカウンターにて、パーティクルの発生量の測定を行った。
【0060】
上記評価1において、実施例4は、第1の領域Aの平均結晶粒径が3.8μm、第2の領域Bの平均結晶粒径が4.18μm、平均結晶粒径の第2の領域B/第1の領域Aの比が1.1であった。
【0061】
また、評価2において、パーティクル発生量は、1700ptsであった。
この実施例4の結果は、実施例1の結果より劣るが、比較例1はもとより、実施例2,3との比較ではパーティクル発生量は十分低く、やはり本発明の効果は得られているといえる。