IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テイ・エス テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シート 図1
  • 特開-シート 図2
  • 特開-シート 図3
  • 特開-シート 図4
  • 特開-シート 図5
  • 特開-シート 図6
  • 特開-シート 図7
  • 特開-シート 図8
  • 特開-シート 図9
  • 特開-シート 図10
  • 特開-シート 図11
  • 特開-シート 図12
  • 特開-シート 図13
  • 特開-シート 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088269
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20230619BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230619BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20230619BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/90
A47C7/50 A
A47C7/74 C
A47C7/74 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176262
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】63/289,311
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JF04
3B084JG02
3B084JG06
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】着座者に対して効率的に送風することができるシートを提供する。
【解決手段】シートクッション5を含むシート下部12と、シートクッションよりも上の部分であってシートバック6及びヘッドレスト7を含むシート上部11とを備えるシート1であって、シート上部及びシート下部それぞれに設けられた通気口25、45と、通気口の一方から空気を送り出す送気機19と、通気口の他方から空気を吸い出す吸気機19と、を有し、通気口の一方から送り出される空気の送気方向が吸気機の側の通気口に向いている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを含むシート下部と、前記シートクッションよりも上の部分であってシートバック及びヘッドレストを含むシート上部とを備えるシートであって、
前記シート上部及び前記シート下部それぞれに設けられた通気口と、
前記通気口の一方から空気を送り出す送気機と、
前記通気口の他方から空気を吸い出す吸気機と、を有し、
前記通気口の一方から送り出される空気の送気方向が前記吸気機の側の前記通気口に向いているシート。
【請求項2】
前記通気口の前記一方と前記他方とは互いに対向している請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記通気口の少なくとも一方には、空気の流れの向きを調節するためのルーバが設けられている請求項1に記載のシート。
【請求項4】
前記シート上部に設けられた前記通気口は前記シートバックの前面上部の左右側部に位置し、
前記シート下部に設けられた前記通気口は前記シートクッションの上面前部に位置している請求項1に記載のシート。
【請求項5】
前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右他方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、
正面視で中心線に交差する方向の気流が生成される請求項1に記載のシート。
【請求項6】
前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、
正面視で対角方向の気流が生成される請求項4に記載のシート。
【請求項7】
前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右一方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、
正面視で中心線に対して平行な方向の気流が生成される請求項1に記載のシート。
【請求項8】
前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、
正面視で中心線に対して平行な気流が生成される請求項5に記載のシート。
【請求項9】
前記シート下部はオットマンを含む請求項1に記載のシート。
【請求項10】
前記通気口それぞれに設けられたファンと、前記ファンの駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は対応する前記通気口から空気の送出及び吸出を行うべく、前記ファンの駆動を制御する請求項1に記載のシート。
【請求項11】
送り出される空気の加熱及び冷却の少なくとも一方を行う温調ユニットを備える請求項1に記載のシート。
【請求項12】
前記温調ユニットは、前記シート上部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を温めるためのヒータを含む請求項11に記載のシート。
【請求項13】
前記温調ユニットは、前記シート下部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を冷やすためのクーラを備える請求項11に記載のシート。
【請求項14】
着座者の状態を検出する着座者センサと、前記着座者センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置とを備える請求項11~請求項13のいずれか1つの項に記載のシート。
【請求項15】
前記シート上部及び前記シート下部の少なくとも一方の状態を検出するシート状態センサと、前記シート状態センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置とを備える請求項11~請求項13のいずれか1つの項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートであって、特に、乗物に搭載されるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートヒータを備えた乗物用シートを開示している。シートヒータは、ヒータユニットと、ヒータユニットに対応する部位に配置される送風装置と、ヒータユニット及び送風装置の出力を制御する制御装置とを備えている。
【0003】
乗物用シートのシートクッションやシートバックのパッド材は、表面に形成された複数の通気穴と、通気穴に連通する通気路とを有している。シートクッション及びシートバックは、送風装置(ブロア)の作動によって通気穴及び表皮材を通して座面部から着座者に向けて空気を吹き出すように構成されている。
【0004】
特許文献2には、香りを効率的に着座者に届けることができるシートが開示されている。シートは、シートバック及びヘッドレストを含むシート上部に配置された送風口及び吸気口と、シート上部の前側で送風口から吸気口に向かう気流を形成する少なくとも1つのファンと、送風口から吹き出される空気に香りを付加する芳香器とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-178129号公報
【特許文献2】特開2020-195429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着座者の体感温度に合う環境を提供するため、冷暖房を行う空調装置をシートごとに設けることが考えられる。しかしながら、シートごとに空調装置を設けると、必要となる電力が増大する。そのため、シートに着座する着座者に効率よく冷風や温風を当てる技術の開発が求められている。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、着座者に効率よく送風することができるシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、シートクッション(5)を含むシート下部(12)と、前記シートクッションよりも上の部分であってシートバック(6)及びヘッドレスト(7)を含むシート上部(11)とを備えるシート(1)であって、前記シート上部及び前記シート下部それぞれに設けられた通気口(25、45)と、前記通気口の一方から空気を送り出す送気機(19)と、前記通気口の他方から空気を吸い出す吸気機(19)と、を有し、前記通気口の一方から送り出される空気の送気方向が前記吸気機の側の前記通気口に向いている。
【0009】
この態様によれば、シート上部とのシート下部との間に空気の流れを良好に生成することができるため、着座者に効率よく送風することができる。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口の前記一方と前記他方とは互いに対向している。
【0011】
この態様によれば、通気口の一方から他方に至る気流を良好に生成することができる。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口の少なくとも一方には、空気の流れの向きを調節するためのルーバ(63)が設けられている。
【0013】
この態様によれば、ルーバによって通気口における空気の流れの向きを調節できる。よって、通気口の一方から他方に至る気流を良好に生成することができる。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部に設けられた前記通気口は前記シートバックの前面上部の左右側部に位置し、前記シート下部に設けられた前記通気口は前記シートクッションの上面前部に位置している。
【0015】
この態様によれば、通気口からの送気や吸気が着座者の身体によって阻害され難くなる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右他方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、正面視で中心線(O)に交差する方向の気流(F1-F4)が生成される。
【0017】
この態様によれば、着座者を跨ぐ気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0018】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、正面視で対角方向の気流(F1,F2、F3,F4)が生成される。
【0019】
この態様によれば、着座者を対角方向に跨ぐ2つの気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0020】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右一方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、正面視で中心線に対して平行な方向の気流(F11―F14)が生成される。
【0021】
この態様によれば、着座者の側部に沿って気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0022】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、正面視で中心線に対して平行な気流(F11,F12、F13,F14)が生成される。
【0023】
この態様によれば、着座者の左右両側部に沿って気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0024】
上記の態様において、好ましくは、前記シート下部はオットマン(59)を含む。
【0025】
この態様によれば、着座者の足近傍に気流を生成することができる。
【0026】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口それぞれに設けられたファン(19)と、前記ファンの駆動を制御する制御装置(50)とを備え、前記制御装置は対応する前記通気口から空気の送出及び吸出を行うべく、前記ファンの駆動を制御する。
【0027】
この態様によれば、ファンの駆動を制御することによって、通気口からの送気と吸気とを入れ替えることができる。
【0028】
上記の態様において、好ましくは、送り出される空気の加熱及び冷却の少なくとも一方を行う温調ユニット(55)を備える。
【0029】
この態様によれば、着座者に向かって送り出される空気の加熱や冷却を行うことができる。
【0030】
上記の態様において、好ましくは、前記温調ユニットは、前記シート上部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を温めるためのヒータ(21)を含む。
【0031】
この態様によれば、シート上部から下方に向けて温風を送り出すことができる。これにより、温かい空気が室内上部に滞留することを防止することができる。よって、暖房効率を向上させることができる。
【0032】
上記の態様において、好ましくは、前記温調ユニットは、前記シート下部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を冷やすためのクーラ(41)を備える。
【0033】
この態様によれば、シート下部から上方に向けて冷風を送り出すことができる。これにより、冷たい空気が室内下部に滞留することを防止することができる。よって、冷房効率を向上させることができる。
【0034】
上記の態様において、好ましくは、着座者の状態を検出する着座者センサ(70)と、前記着座者センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置(50)とを備える。
【0035】
この態様によれば、着座者の状態に合わせて、送風することができる。
【0036】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部及び前記シート下部の少なくとも一方の状態を検出するシート状態センサ(62)と、前記シート状態センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置(50)とを備える。
【0037】
この態様によれば、シートの状態に合わせて、送風することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、シートクッションを含むシート下部と、前記シートクッションよりも上の部分であってシートバック及びヘッドレストを含むシート上部とを備えるシートであって、前記シート上部及び前記シート下部それぞれに設けられた通気口と、前記通気口の一方から空気を送り出す送気機と、前記通気口の他方から空気を吸い出す吸気機と、を有し、前記通気口の一方から送り出される空気の送気方向が前記吸気機の側の前記通気口に向いている。
【0039】
この態様によれば、シート上部とのシート下部との間に空気の流れを良好に生成することができるため、着座者に効率よく送風することができる。
【0040】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口の前記一方と前記他方とは互いに対向している。
【0041】
この態様によれば、通気口の一方から他方に至る気流を良好に生成することができる。
【0042】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口の少なくとも一方には、空気の流れの向きを調節するためのルーバが設けられている。
【0043】
この態様によれば、ルーバによって通気口における空気の流れの向きを調節できる。よって、通気口の一方から他方に至る気流を良好に生成することができる。
【0044】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部に設けられた前記通気口は前記シートバックの前面上部の左右側部に位置し、前記シート下部に設けられた前記通気口は前記シートクッションの上面前部に位置している。
【0045】
この態様によれば、通気口からの送気や吸気が着座者の身体によって阻害され難くなる。
【0046】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右他方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、正面視で中心線に交差する方向の気流が生成される。
【0047】
この態様によれば、着座者を跨ぐ気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0048】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、正面視で対角方向の気流が生成される。
【0049】
この態様によれば、着座者を対角方向に跨ぐ2つの気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0050】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部の左右一方側と、前記シート下部の左右一方側とにそれぞれ前記通気口が設けられ、正面視で中心線に対して平行な方向の気流が生成される。
【0051】
この態様によれば、着座者の側部に沿って気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0052】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部と、前記シート下部とにそれぞれ左右一対の前記通気口が設けられ、正面視で中心線に対して平行な気流が生成される。
【0053】
この態様によれば、着座者の左右両側部に沿って気流が生成されるため、着座者に対して効果的に送風することができる。
【0054】
上記の態様において、好ましくは、前記シート下部はオットマンを含む。
【0055】
この態様によれば、着座者の足近傍に気流を生成することができる。
【0056】
上記の態様において、好ましくは、前記通気口それぞれに設けられたファンと、前記ファンの駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は対応する前記通気口から空気の送出及び吸出を行うべく、前記ファンの駆動を制御する。
【0057】
この態様によれば、ファンの駆動を制御することによって、通気口からの送気と吸気とを入れ替えることができる。
【0058】
上記の態様において、好ましくは、送り出される空気の加熱及び冷却の少なくとも一方を行う温調ユニットを備える。
【0059】
この態様によれば、着座者に向かって送り出される空気の加熱や冷却を行うことができる。
【0060】
上記の態様において、好ましくは、前記温調ユニットは、前記シート上部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を温めるためのヒータを含む。
【0061】
この態様によれば、シート上部から下方に向けて温風を送り出すことができる。これにより、温かい空気が室内上部に滞留することを防止することができる。よって、暖房効率を向上させることができる。
【0062】
上記の態様において、好ましくは、前記温調ユニットは、前記シート下部に設けられ、前記通気口から送り出される空気を冷やすためのクーラを備える。
【0063】
この態様によれば、シート下部から上方に向けて冷風を送り出すことができる。これにより、冷たい空気が室内下部に滞留することを防止することができる。よって、冷房効率を向上させることができる。
【0064】
上記の態様において、好ましくは、着座者の状態を検出する着座者センサと、前記着座者センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置とを備える。
【0065】
この態様によれば、着座者の状態に合わせて、送風することができる。
【0066】
上記の態様において、好ましくは、前記シート上部及び前記シート下部の少なくとも一方の状態を検出するシート状態センサと、前記シート状態センサの検出結果に基づいて、前記送気機、前記吸気機、及び、前記温調ユニットの少なくとも一つの駆動を制御する制御装置とを備える。
【0067】
この態様によれば、シートの状態に合わせて、送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】第1実施形態に係るシートの斜視図
図2図1のII-IIに対応する斜視断面図
図3】第1実施形態に係るシートの側面図
図4】気流生成ユニットのブロック図
図5】(A)冷房処理時の気流、及び、(B)暖房処理時の気流を示す斜視図
図6】(A)冷房処理時の気流、及び、(B)暖房処理時の気流を示す正面図
図7】第1実施形態に係るシートの変形例を示す斜視図
図8】第1実施形態に係るシートの変形例を示す側面図
図9】第1実施形態に係るシートの変形例を示す正面図
図10】第1実施形態に係るシートの変形例であって、(A)シートバックとシートクッションにそれぞれ通気口が左右一方ずつに設けられた場合の例、及び(B)シートクッションの左右方向中央部分に通気口が設けられた場合の例
図11】第1実施形態に係るシートの変形例であって、シートの中心線に平行な気流が生成される場合にける(A)冷房処理時の気流及び(B)暖房処理時の気流を示す斜視図
図12】第2実施形態に係るシートの側面図
図13】第3実施形態に係るシートの側面図
図14】(A)第3実施形態に係るシートの変形例において、圧力センサの設置位置を示す斜視図、及び、(B)(A)のXIVB-XIVBの断面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、図面を参照して、本発明に係るシートの実施形態について説明する。以下では、本発明が乗用車の前部座席、特に運転席を構成するシートに適用された実施形態について説明する。但し、本発明は、後部座席を構成するシード等にも幅広く適用可能である。また、以下では、シートに着座した乗員、すなわち着座者を基準として、前後左右上下の各方向を定めて説明を行う。
【0070】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、シート1は、車室2下部を画定するフロア3上に載置されている。シートクッション5と、シートクッション5の後部に支持されたシートバック6とを有する。シートクッション5はシート1に着座する着座者の臀部を下方から支持する。シートバック6は着座者の背部の後方に配置され、背凭れとして機能する。シートバック6の上端にはヘッドレスト7が設けられている。
【0071】
以下、シートクッション5の上面を座面8と記載し、シートバック6の前面を背凭れ面9と記載する。
【0072】
また、適宜、シートバック6及びヘッドレスト7を合わせてシート上部11、シートクッション5をシート下部12と記載する。シート上部11はシートの着座者の上半身(背部及び頭部)を支持することのできる部分に相当し、シート下部12はシート1の着座者の下半身(臀部及び大腿部)を支持することのできる部分に相当する。
【0073】
図2に示すように、シートバック6は、骨格をなすシートバックフレーム13と、シートバックフレーム13に支持されたパッド14と、パッド14に被せられた表皮材15とを有する。
【0074】
図3に示すように、シートバック6を構成するパッド14にはその前面から後方に延びる2つの通気孔18が設けられている。
【0075】
一方の通気孔18の前端部分はパッド14の前面の左上部を通過する軸線Xに沿って延びている。一方の通気孔18の前端部分はパッド14の前面の左上部において開口している。他方の通気孔18はパッド14の前面の右上部を通過する軸線Yに沿って延びている。他方の通気孔18はパッド14の前面の右上部において開口している。2つの通気孔18の前端開口部分は、標準的な体格の着座者の左右の肩に対応する位置(肩口ともいう)にそれぞれ設けられている。
【0076】
図1に示すように、軸線Xはシートバック6の前面(背凭れ面9)左上部と、シートクッション5の上面(座面8)右前部とを通過している。軸線Yはシートバック6の前面右上部と、シートクッション5の上面左前部とを通過している。
【0077】
図3に示すように、通気孔18の後端にはそれぞれファン19が設けられている。ファン19は通気孔18の内部に空気を送り出す(すなわち、内部に送気する)ことができる。またファン19は通気孔18の内部から空気をシートバック6の後方に吸い出す(すなわち、内部から吸気する)ことができる。ファン19は例えば、シロッコファンによって構成されていてもよく、また、プロペラファンによって構成されていてもよい。ファン19はその回転方向に応じて、通気孔18の内部への送気(送風ともいう)と、通気孔18の内部からの吸気とを切り替え可能であるとよい。
【0078】
シートバック6を構成する表皮材15には、通気孔18の開口に重なる位置にそれぞれ、通気部20が設けられている。通気部20は表皮材15の他の部分に比べて通気性の高い部分であり、網目状に織られた布材などによって構成されているとよい。その他、表皮材15にはその厚さ方向に貫通する複数の孔が設けられることによって、通気部20が構成されていてもよい。
【0079】
シートバック6の通気孔18の内部には加熱ユニット21(ヒータ)が設けられている。加熱ユニット21は電熱線22によって構成されている。但し、加熱ユニット21は、電熱線22によって構成されたものには限定されず、例えば、チューブ内に所定の媒質を流通させることによって加熱を行う加熱装置によって構成されていてもよい。
【0080】
ファン19が通気孔18の内部に空気を送り出すと、通気部20及び通気孔18を介して、シートバック6の前方に位置する着座者の肩近傍に向けて送気が行われる。このとき、ファン19は着座者に空気を送る送気機として機能する。ファン19が通気孔18の内部から空気を吸い出すと、通気部20及び通気孔18を介して、シートバック6の前方に位置する着座者の肩近傍から空気が吸い出される。このとき、ファン19は座面8から空気を吸い出す吸気機として機能する。
【0081】
通気部20及び通気孔18によって、シートバック6の前面(背凭れ面9)には、シートバック6の前側に空気を送り出し、且つ、空気を吸い出す(すなわち、シートバック6の前側に通気する)ための通気口25が形成されている。本実施形態では、背凭れ面9には左右一対の通気口25が形成されている。
【0082】
図2に示すように、シートクッション5もまたシートバック6と同様に、骨格をなすシートクッションフレーム33と、シートクッションフレーム33に支持されたパッド34と、パッド34に被せられた表皮材35とを有する。
【0083】
図3に示すように、シートクッション5を構成するパッド34にはその上面から下方に至る2つの通気孔38が設けられている。
【0084】
一方の通気孔38の上端部分はパッド34の上面の左前部において開口し、軸線Yに沿って延びている。他方の通気孔38の上端部分はパッド34の上面の右前部において開口し、軸線Xに沿って延びている。通気孔38の上端開口部分はそれぞれ、標準的な体格の着座者の大腿部に対応する位置に設けられている。
【0085】
通気孔38の下端にはそれぞれファン39が設けられている。ファン39は通気孔38の内部に空気を送り出す(すなわち、内部に送気する)ことができる。またファン19は、通気孔38の内部から空気をシートクッション5の下方に吸い出す(すなわち、内部から吸気する)ことができる。ファン39は例えば、シロッコファンによって構成されていてもよく、また、プロペラファンによって構成されていてもよい。ファン39はその回転方向に応じて、通気孔38の内部への送気(送風ともい)と、通気孔38の内部からの吸気とを切り替え可能であるとよい。
【0086】
シートクッション5を構成する表皮材35には、通気孔38の開口に重なる位置にそれぞれ、通気部40が設けられている。通気部40は表皮材35の他の部分に比べて通気性の高い部分であり、網目状に織られた布材などによって構成されているとよい。その他、表皮材35にはその厚さ方向に貫通する複数の孔が設けられることによって、通気部40が構成されていてもよい。
【0087】
シートクッション5の通気孔38の内部には冷却ユニット41(クーラ)が設けられている。冷却ユニット41はペルチェ素子42によって構成されている。但し、冷却ユニット41は、ペルチェ素子42によって構成されたものには限定されず、例えば、チューブ内に所定の媒質を流通させることによって冷却を行う冷却装置によって構成されていてもよい。
【0088】
ファン39が通気孔38の内部に空気を送り出すと、通気部40及び通気孔38を介して、シートクッション5の上方に位置する着座者の大腿部に向けて送気が行われる。このとき、ファン39は着座者に空気を送る送気機として機能する。ファン39が通気孔38の内部からシートクッション5の下方に空気を吸い出すと、通気部40及び通気孔38を介して、シートクッション5の上方に位置する大腿部近傍から空気が吸い出される。このとき、ファン39は座面8から空気を吸い出す吸気機として機能する。
【0089】
通気部40及び通気孔38によって、シートクッション5の上面(座面8)には、シートクッション5の上側に空気を送り出し、且つ、空気を吸い出す(すなわち、シートクッション5の上側に通気する)ための通気口45が形成されている。本実施形態では、座面8には左右一対の通気口45が形成されている。
【0090】
シートバック6に設けられた左側の通気孔18の前端部分と、シートクッション5に設けられた右側の通気孔38の上端部分とはそれぞれ軸線Xに沿って延びている。すなわち、シートバック6に設けられた左側の通気口25と、シートクッション5の右側の通気口45とが、互いに対向している。シートバック6に設けられた右側の通気孔18と、シートクッション5に設けられた左側の通気孔38とはそれぞれ軸線Yに沿って延びている。すなわち、シートバック6に設けられた右側の通気口25と、シートクッション5の左側の通気口45とが、互いに対向している。
【0091】
本実施形態では、シートバック6の通気孔18の前端部分の延在方向と、シートクッション5の通気孔38の上端部分の延在方向とはそれぞれ、シート1に着座者がいない(乗員が着座していない)ときを基準として定められている。但し、この態様には限定されず、例えば、標準的な体格を有する着座者が着座したときの延在方向を基準として定められていてもよい。
【0092】
シート1には、シートバック6に設けられた2つのファン19及びシートクッション5に設けられた2つのファン39を制御する制御装置50が設けられている。制御装置50は、図4に示すように、中央演算処理装置(CPU)等のプロセッサ51と、揮発性メモリ(RAM)や不揮発性メモリ(ROM)等のメモリ52と、SSD(ソリッドステートドライブ)やHDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置53とを備えたコンピュータによって構成されている。制御装置50は、シートバック6の背面やシートクッション5の下面に設けられているとよく、また、シートバック6やシートクッション5の内部に設けられていてもよい。本実施形態では、制御装置50はシートクッション5の下面であって、ファン39や通気孔38に重ならない位置に設けられている。
【0093】
制御装置50は、シートクッション5及びシートバック6のうち、一方に設けられたファン19,39を駆動することによって通気口25,45から空気を送り出す。同時に、制御装置50は、シートクッション5及びシートバック6のうち、他方に設けられたファン19,39を駆動し、通気口25,45から空気を吸い込ませる。これにより、シート1の前面であって、着座者の上半身近傍と下半身近傍との間に流れる気流が生成される。すなわち、通気口25,45、ファン19,39及び制御装置50によって、シート1の前面に気流を生成する気流生成ユニット54(気流生成装置)が構成されている。
【0094】
制御装置50は、加熱ユニット21及び冷却ユニット41に接続され、加熱ユニット21及び冷却ユニット41の駆動をそれぞれ制御することができる。
【0095】
本実施形態では、シートバック6の左右側部にはアームレスト56が設けられている。アームレスト56の上面には、少なくとも一つの入力スイッチ57を含む入力部58が設けられている。制御装置50(プロセッサ51)は入力部58への入力に基づいて、所定のプログラムを実行することによって、ファン19,39、加熱ユニット21及び冷却ユニット41を制御する。本実施形態では、入力スイッチ57は例えば、タッチパネルやメンブレンスイッチ等によって構成され、暖房、冷房それぞれに対応する入力を受け付けることができる。制御装置50は暖房に対応する入力を検出したときに、暖房処理を行い、冷房に対応する入力を検出したときに、冷房処理を行う。
【0096】
制御装置50は、冷房処理において、冷却ユニット41を駆動させるとともに、シートクッション5のファン39を駆動させてシートクッション5に設けられた通気口45から空気を送り出す。このとき、シートクッション5に設けられた通気口45から送り出される空気は冷却ユニット41に冷却されて冷風となっている。また、同時に制御装置50は、シートバック6のファン19を駆動させて、シートバック6に設けられた通気口25から空気を吸い出す。
【0097】
制御装置50は、暖房処理において、加熱ユニット21を駆動させるとともに、シートバック6のファン19を駆動させてシートバック6に設けられた通気口25から空気を送り出す。このとき、シートバック6に設けられた通気口25から送り出される空気は加熱ユニット21に加熱されて温風となっている。同時に制御装置50は、シートクッション5のファン39を駆動させて、シートクッション5に設けられた通気口45から空気を吸い出す。
【0098】
このように、加熱ユニット21及び冷却ユニット41は通気口25,45から送り出される空気の温度を調節するための温調ユニット55を構成する。
【0099】
次に、このように構成したシート1の製造方法について説明する。シート1の製造を行う作業者はまず、シートバックフレーム13及びシートクッションフレーム33を含むシート1のフレームを用意し、シートバックフレーム13にパッド14を配置し、シートクッション5にパッド34を配置する。その後、作業者は、シートバック6の通気孔18の対応する位置にファン19、加熱ユニット21を、シートクッション5の通気孔38の対応する位置にファン39、冷却ユニット41をそれぞれ設ける。更に、作業者は制御装置50をシートクッション5の下面であって、ファン39や通気孔38に重ならない位置に設置し、ファン19、39、加熱ユニット21、冷却ユニット41をそれぞれ制御装置50に接続する。その後、作業者は、パッド14、34に表皮材15、35を被せ、ヘッドレスト7をシートバック6に接続することにより、シート1の製造が完了する。
【0100】
次に、このように構成したシート1の効果について説明する。
【0101】
冷房処理時には、空気がシートクッション5に設けられた通気口45から、冷却ユニット41により冷やされて送り出される。シートクッション5に設けられた右前部の通気孔38の上端部分は軸線Xに沿って延びているため、通気口45からの風の方向(送風方向)は概ね軸線Xに沿い、シートバック6の左側の通気孔18に向く。シートバック6に設けられたファン19は制御装置50によって対応する通気孔18から吸気を行うように制御されるため、図5(A)及び図6(A)に示すように、正面視でシート1の中心線O(図6(A)を参照)を交差し、且つ、右下から左上に向く冷気の気流F1が生成される。
【0102】
同様に、シートクッション5に設けられた左前部の通気孔38の上端部分は軸線Yに沿って延びているため、その送風方向は軸線Yに沿い、シートバック6の右側の通気孔18に向く。シートバック6に設けられたファン19は制御装置50によって対応する通気孔18から吸気を行うように制御されるため、図5(A)及び図6(A)に示すように、正面視でシート1の中心線O(図6(A)を参照)を交差し、且つ、左下から右上に向く冷気の気流F2が生成される。よって、冷暖房処理時には、正面視でシート1の下部左右一方側から上部左右他方側に向く2つの気流F1、F2がシート1の中心線Oを交差し、ぶつかるように生成される。
【0103】
暖房処理時には、空気がシートバック6に設けられた通気孔18から、加熱ユニット21により温められて送り出される。シートバック6に設けられた左側の通気孔18の前端部分は軸線Xに沿って延びているため、通気口25からの風の方向(送風方向)は軸線Xに沿い、シートクッション5の右前部の通気孔38に向く。シートクッション5に設けられたファン39は制御装置50によって対応する通気孔38から吸気を行うように制御されるため、図5(B)及び図6(B)に示すように、正面視でシート1の中心線O(図6(B)を参照)を交差し、且つ、左上から右下に向く暖気の気流F3が生成される。
【0104】
同様に、シートバック6に設けられた右側の通気孔18の前端部分は軸線Yに沿って延びているため、その送風方向は軸線Yに沿い、シートクッション5の左前部の通気孔38に向く。シートクッション5に設けられたファン39は制御装置50によって対応する通気孔38から吸気を行うように制御されるため、図5(B)及び図6(B)に示すように、正面視でシート1の中心線O(図6(B)を参照)を交差し、且つ、右上から左下に向く暖気の気流F4が生成される。よって、暖房処理時には、正面視でシート1の上部左右一方側から下部左右他方側に向く2つの気流F3、F4がシート1の中心線Oを交差し、ぶつかるように生成される。
【0105】
このように、冷房処理時、暖房処理時のいずれにおいても、正面視で対角方向に向く2つの気流F1~F4が生成される。気流F1~F4がそれぞれシート1の中心線Oを跨ぐように形成されるため、着座者に効果的に送風することができる。また、冷房処理時、暖房処理時のいずれにおいても、対角方向に向き、着座者の体を包み込むような2つの気流F1~F4が形成される。これにより、冷房処理時には着座者の周辺を効率よく冷やし、暖房処理時には着座者の周辺を効率よく温めることができる。よって、シート1の快適性が高められる。
【0106】
冷房処理時には、気流F1、F2が下から上へ向くように形成されるため、冷たい空気が車室2の下部に滞留し難くなる。また、暖房処理時には、気流F3、F4が上から下へ向くように形成されるため、温かい空気が車室2の上部に滞留し難くなる。よって、冷暖房効率を向上させることができ、電力消費を抑えることができる。
【0107】
また、シートバック6の通気口25はシートバック6の前面上部の左右側部であって、着座者の肩近傍に設けられている。そのため、通気口25がシートバック6の前面下部に設けられる場合に比べて、着座者の上半身によって通気口25が封じられ難い。また、シートクッション5の通気口45はシートクッション5の上面前部(詳細には上面前部の左右側部)に設けられている。そのため、通気口45がシートクッション5の上面後部に設けられる場合に比べて、着座者の身体によって通気口45が封じられ難い。よって、着座者の身体によって、送気・吸気が阻害され難く、送気・吸気が良好に行われる。
【0108】
<変形例>
上記実施形態では、シートバック6に通気口25が設けられていたが、シート上部11とシート下部12とにそれぞれ通気口25が設けられていればよい。具体的には、例えば、図7及び図8に示すように、シートバック6に代えて、ヘッドレスト7に通気口25が設けられていてもよい。この場合においても、図8に示すように、ヘッドレスト7に設けられた通気口25と、シートクッション5に設けられた通気口45とが互いに対向するように構成されていることが好ましい。
【0109】
図9に示すように、シートクッション5の前端に足置きとなるオットマン59が設けられている場合がある。シートクッション5とオットマン59とによって着座者の下半身を支持するシート下部12が構成される。その場合には、シート下部12のいずれかの位置に通気口45が設けられていればよく、具体的には、例えば、シートクッション5に代えて、オットマン59に通気口45が設けられていてもよい。
【0110】
オットマン59に通気口45が設けられる場合には、オットマン59の着座者側の面の左右両縁に設けられていてもよい。オットマン59の着座者側の面に、着座者側に隆起する土手部が設けられているときには、通気口45はその土手部に設けられていてもよい。
【0111】
上記実施形態では、シート上部11(シートバック6)に左右2つの通気口25が設けられ、シート下部12(シートクッション5)に左右2つの通気口45が設けられていたが、本発明はこの態様には限定されない。図10(A)及び図10(B)に示すように、シート上部11の左右一方や左右方向中央部分に通気口25が設けられる態様や、シート下部12の左右一方や左右方向中央部分に通気口45が設けられる態様であってもよい。図10(B)に示すように、シートクッション5の左右方向中央部分に通気口45が設けられる場合には2つの通気口25が送風領域に位置するように、その形状(大きさや幅など)が構成されることが好ましい。
【0112】
上記実施形態では、シートバック6の通気孔18及びシートクッション5の通気孔38がそれぞれ端部において、正面視でシート1の対角方向に延びる軸線X及び軸線Yに沿って延びるように形成されていたが、この態様には限定されない。シートバック6の通気孔18の前端部及びシートクッション5の通気孔38の上端部がそれぞれ、正面視でシート1の中心線Oに平行に延びる軸線L及び軸線Mに沿って延びるように形成されていてもよい。
【0113】
この場合には、冷房処理時には、図11(A)に示すように、左下から左上に向く冷気の気流F11と、右下から右上に向く冷気の気流F12との正面視でシート1の中心線Oに平行な2つの気流が生成される。暖房処理時には、図11(B)に示すように、左上から左下に向く暖気の気流F13と、右上から右下に向く暖気の気流F14との正面視でシート1の中心線Oに平行な2つの気流が生成される。
【0114】
これにより、着座者の側面に沿い、着座者の体を包み込む2つの気流F11-F14が生成される。よって、冷房処理時には着座者の周辺を効果的に冷やし、暖房処理時には着座者の周辺を効果的に温めることができる。よって、シート1の快適性が高められる。
【0115】
但し、本発明はこの態様には限定されず、シートバック6の左右一方側の通気口25と、シートクッション5の左右一方側の通気口45とにおいて送気・吸気が行われ、着座者の左右一方側にのみ、正面視で中心線Oに対して平行な方向の気流が生成される態様であってもよい。この場合においても、着座者の左右一方側の側部に気流が生成されるため、気流が生成されない場合に比べて、着座者に対して送風が良好に行われる。
【0116】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るシート1は、図12に示すように、シート1の位置や形状を変更する変位機構61と、シート1の状態を検出するシート状態センサ62と、通気孔18それぞれに設けられたルーバ63とを備えている。
【0117】
変位機構61は、シートバック6とシートクッション5との間に設けられ、シートバック6をシートクッション5に対して傾倒させるリクライニング装置65によって構成されている。変位機構61はその他、シートクッション5及びシートバック6をフロア3に対して前後に移動させる装置によって構成されていてもよい。
【0118】
シート状態センサ62は、シートバック6の傾倒角度(リクライニング角度)を検出する角度センサによって構成されている。
【0119】
ルーバ63は平行をなすように配置された複数の羽板63Aと、その羽板63Aの主面の方向を変更するモータ63Bとを備えている。モータ63Bは制御装置50に接続されている。制御装置50はモータ63Bの駆動を制御し、羽板63Aの主面の方向を変更する。本実施形態では、制御装置50は、角度センサによって取得された角度に基づいて、羽板63Aの向きを変更し、通気孔18から送り出される空気の送風方向を、吸気される通気孔18に向くように制御する。
【0120】
制御装置50は冷房処理において、シートクッション5の左前部の通気孔38に設けられたルーバ63を制御し、シートクッション5の左前部の通気孔18からの送風方向が、シートバック6の右側の通気孔18に向くように制御する。制御装置50はまた、冷房処理において、シートクッション5の右前部の通気孔38に設けられたルーバ63を制御し、シートクッション5の右前部の通気孔38からの送風方向が、シートバック6の左側の通気孔18に向くように制御する。
【0121】
制御装置50は暖房処理において、シートバック6の左側の通気孔18に設けられたルーバ63を制御し、シートバック6の左側の通気孔18からの送風方向が、シートクッション5の右前部の通気孔38に向くように制御する。制御装置50はまた、暖房処理において、シートバック6の右側の通気孔18に設けられたルーバ63を制御し、シートバック6の右側の通気孔18からの送風方向が、シートクッション5の左前部の通気孔38に向くように制御する。
【0122】
次に、このように構成したシート1の効果について説明する。制御装置50は、着座者に向けて送風が行われる通気口25,45のルーバ63を、その送風方向を吸気が行われる通気口25,45に向くように制御する。そのため、着座者近傍に2つの気流を良好に生成することができる。
【0123】
<変形例>
制御装置50は暖房処理及び冷風処理の少なくとも一方において、シート状態センサ62によって検出されるリクライニング角度が所定の閾値以上であることを検出したときには、通気口25,45からの吸気を停止し、通気口45からの送風のみを行うようにファン19,39を制御してもよい。閾値は、ルーバ63の制御によって送風方向を対応する吸気を行う通気口25,45に向けることができるリクライニング角度の範囲に基づいて設定されているとよい。これにより、シートバック6が通常位置よりも後傾するリラックスモードにあり、気流を生成することが困難であるときに、吸気を行うためのファン19,39の駆動を停止する。よって、電力消費を抑えることができる。
【0124】
シート状態センサ62はリクライニング角度を検出するセンサには限定されない。例えば、シート状態センサ62は、フロア3に対してシート1の変位の有無を検出するように構成されていてもよい。シート1の変位としては、例えば、シート1の前後/横スライド、回転、リクライニング、ハイト(フロア3に対するシートクッション5の上下動)、チルト(フロア3に対するシートクッション5の回転)が含まれうる。その他、シート状態センサ62は、シート1の一部(例えばアームレスト56)の変位の有無を検出してもよい。
【0125】
このとき、制御装置50はシート状態センサ62によって検出された変位の有無に基づいて、ファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21の少なくとも1つを制御するように構成されているとよい。具体的には、制御装置50は、シート状態センサ62によってシート1の変位が検出されたときには、冷房処理や暖房処理を中断する(又は禁止する)ように構成されているとよい。これにより、シート1が変位しているときに、ファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21などの空調装置の駆動が中断(禁止)されるため、シート1が変位しているときにおける電力消費を抑えることができる。
【0126】
シート上部11やシート下部12に複数の通気口25,45が設けられているときには、制御装置50はシート状態センサ62の検出結果に基づいて、送気又は吸気を行う通気口25,45を選択するように構成されていてもよい。例えば、シート1がフロア3に対して上下に延びる軸線を中心として回転可能に構成されているときには、制御装置50はシート1の車両の前後方向を基準とする回転角度に基づいて、送気又は吸気を行う通気口25,45を選択するとよい。
【0127】
暖房処理や冷房処理において、制御装置50は、シート状態センサ62よって検出される回転角度に基づいて、対角方向に流れる2つの気流のうち、車外側に向く気流のみを生成するようにファン19,39を制御するとよい。これにより、隣接するシート1の着座者に影響の与え難い気流が生成される。
【0128】
具体的には、制御装置50は暖房処理や冷房処理において、シートバック6及びシートクッション5の左右の通気口25,45のうち、一方のみを選択して送気・吸気を行うことにより車外側に向く気流のみを生成するように構成するとよい。その場合には、制御装置50はシート状態センサ62によって検出される回転角度が閾値以上であるときに、その選択を入れ替える(変更する)ように構成されているとよい。
【0129】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係るシート1は、着座者に係る情報を取得する着座者センサ70を備え、着座者センサ70の検出結果に基づいて、制御装置50がファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21の駆動を制御する点が第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。よって、以下では、他の構成については、説明を省略する。
【0130】
本実施形態では、図13に示すように、着座者センサ70はシートバック6の前方に設けられ、着座者の像(画像)を取得するカメラ71によって構成されている。図13では、カメラ71が車室2の上縁を画定する天井(ルーフ)に結合されて、支持されている例を示しているが、この態様には限定されず、シートバック6やヘッドレスト7等に結合され、支持されていてもよい。制御装置50は、着座者センサ70によって取得された像(画像)に基づき、着座者の特性や動作、状態等を推定し、推定された特性や動作、状態等に基づいて、ファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21の駆動を制御する。
【0131】
一つの実施例では、制御装置50は、着座者センサ70によって取得された像に基づき、着座者の性別を推定する。制御装置50は推定された着座者の性別に基づいて、ファン19,39の回転速度を設定する。制御装置50は冷却処理において、着座者の性別が女性であると推定されたときに、ファン19,39の回転速度を弱めるように構成されている。その他、制御装置50は、冷却処理において、着座者の性別が女性であると推定されたときには、それ以外の場合に比べて、冷却ユニット41の駆動量を下げ、送り出される空気の温度を若干高める(冷房を弱める)ように構成されていてもよい。
【0132】
次に、このように構成されたシート1の効果について説明する。制御装置50は、着座者センサ70によって取得された着座者に係る情報に基づいて、ファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21の駆動を制御する。そのため、着座者の特性や動作、状態等に基づいて適切に温度を設定し、着座者の特性や動作、状態等に応じた気流を生成することができる。
【0133】
上記実施例では、制御装置50は、着座者の性別が女性であると推定されたときには、冷却処理において、ファン19,39の回転速度を弱めるように構成されている。これにより、冷却処理が行われているときに、着座者が寒く感じることが防止できる。
【0134】
<変形例>
上記実施例では、着座者センサ70が着座者の像を検出するカメラ71によって構成されている例について記載したが、この態様には限定されない。シート1が運転席を構成する場合には、着座者センサ70は運転者の運転操作の検出(運転検知)を行うセンサによって構成されていてもよい。着座者センサ70によって検出される運転操作には、アクセルペダルや、ブレーキペダル、ステアリングの操作の有無などが含まれうる。
【0135】
制御装置50は、冷却処理時に、着座者センサ70によって運転操作が行われていることを検出したときには、ファン19,39の回転速度を高めるように構成されているとよい。これにより、着座者の周辺に生成される冷やされた気流の流速を高めることができるため、着座者の集中力を高めることができる。このとき、制御装置50は車両に設けられ、車両の走行を制御する走行制御装置(コンピュータ)から運転操作に係る情報を取得し、その情報に基づいて、運転者の運転操作の有無を取得するように構成されていてもよい。
【0136】
制御装置50は、着座者センサ70によって検出される運転操作の有無に基づいて、着座者が運転中であるか否かを判定してもよい。制御装置50は、判定結果に基づいて、送風や吸気を行う通気口25,45を選択してもよい。また、制御装置50は、判定結果に基づいて、送風される空気の温度を設定し、設定された温度になるように、冷却ユニット41や加熱ユニット21の駆動を制御してもよい。
【0137】
制御装置50は、着座者が運転操作をしているときには、運転操作を行っていない(例えば、休憩中であるとき)に比べて、送風される空気の温度を低くするように設定してもよい。これにより、着座者の集中力低下を防止しつつ、着座者を温めることができる。
【0138】
また、制御装置50は、暖房処理において、着座者センサ70の検出結果に基づき、着座者が運転操作中であると判定したときには、通気口45からの通気方向を若干、下半身側(上半身側よりも足元側)に設定してもよい。制御装置50は、その他、制御装置50は、暖房処理において、着座者が運転操作中であると判定したときには、オットマン59に設けられた通気口45から温められた空気を送り出し、運転操作中でないときには、シートクッション5に設けられた通気口45から温められた空気を送り出すようにファン39及び冷却ユニット41を制御するように構成されていてもよい。これにより、着座者の頭部から遠い部分に温風を送ることができるため、着座者の集中力低下を防止しつつ、着座者を温めることができる。
【0139】
着座者センサ70は、シート1に設けられ、対応する部分(以下、検出部分)の圧力を検出する1以上の圧力センサ72によって構成されていてもよい。図14(A)に示すように、圧力センサ72(詳細には、圧力を検出する検出部)はシートバック6、シートクッション5の適所であって、通気口25,45を避けた位置に設けられているとよい。圧力センサ72(詳細には、検出部となる電極板)は、シート1の座面8や背凭れ面9であって、通気口25,45以外の位置に設けられているとよい。図14(B)の断面拡大図に示すように、圧力センサ72は例えば、検出部となる一対の円板状の金属薄膜72A(電極板)を備え、圧力に応じて金属薄膜72Aの間の静電容量が変化する静電容量センサ72Bによって構成されていてもよい。また、圧力センサ72は、圧力に応じて金属薄膜72Aの間の抵抗値が変化するセンサであってもよい。
【0140】
制御装置50は、着座者センサ70(圧力センサ72)によって検出される圧力に基づいて、着座者の有無を判定し、着座者がいると判定したときに、冷房処理や暖房処理の実行を許可するように構成されていてもよい。
【0141】
例えば、シート1は車内温度(車室2内の温度)を検出する温度センサ73を備え、制御装置50は温度センサ73によって取得された車内温度が所定の閾値以上であり、且つ、着座センサによって所定の閾値以上の圧力が検出されたときに冷房処理を実行するように構成されていてもよい。また、制御装置50は温度センサ73によって取得された車内温度が所定の閾値以下であり、且つ、着座センサによって所定の閾値以上の圧力が検出されたときに暖房処理を実行するように構成されていてもよい。
【0142】
着座者センサ70は複数の圧力センサ72を含み、制御装置50は圧力センサ72によって検出された圧力に基づいて座面8や背凭れ面9に加わる圧力分布を取得し、取得した圧力分布に基づいて、着座者の体格や姿勢を推定するように構成されていてもよい。シート上部11と、シート下部12とにそれぞれ複数の通気口25,45が設けられているときには、制御装置50は、推定された着座者の体格や姿勢に基づき、送気や吸気を行う通気口25,45を選択し、選択された通気口25,45に対応するファン19,39を駆動させるとよい。
【0143】
着座者センサ70は圧力センサ72や電波センサなどによって構成され、心拍や、脈拍、血圧などの着座者の生体情報を取得するセンサであってもよい。制御装置50は、着座センサによって取得される生体情報に基づき、着座者の体調を推定して、ファン19,39、冷却ユニット41及び加熱ユニット21の少なくとも一つを制御するように構成されていてもよい。
【0144】
制御装置50は着座センサによって取得される生体情報に基づき、着座者の乗物酔いの有無を判定してもよい。制御装置50はカメラ71によって取得される着座者の像に基づき、着座者の乗物酔いの有無を判定してもよい。制御装置50は、乗物酔いをしていると判定したときには、乗物酔いをしていないときに比べて、ファン19,39の回転速度や加熱ユニット21の駆動量を高めるとよい。これにより、乗物酔いをしているときには、着座者周辺をより冷やすことができるため、乗物酔いの症状を抑えることができる。
【0145】
制御装置50は着座センサによって取得される生体情報や、カメラ71によって取得される着座者の像に基づき、着座者の覚醒度を取得してもよい。制御装置50は、覚醒度が所定値より低い場合は、ファン19,39の回転速度を低下させて、送気量や吸気量を減らしてもよい。また、制御装置50は、覚醒度が所定値より低い場合に、所定値以上である場合に比べて、送気を行う通気口25,45を着座者の足元側に設定して、対応するファン19,39を駆動させるとよい。
【0146】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、温調ユニット55は、加熱ユニット21及び冷却ユニット41の両方を含んでいたが、この態様には限定されない。温調ユニット55は、加熱ユニット21及び冷却ユニット41の少なくとも一方を含み、送り出される空気の温度を調節する態様であればいかなる構成であってもよい。
【0147】
上記実施形態では、冷房処理時及び暖房処理時の両方において気流が対角方向に生成されるか、又は、冷房処理時及び暖房処理時の両方において気流が中心線Oに平行な方向に生成される例を記載したが、この態様には限定されない。冷房処理時及び暖房処理時のいずれか一方において対角方向の気流が生成され、他方において中心線Oに平行な方向の気流が生成されてもよい。例えば、制御装置50はルーバ63を制御することにより、冷房処理時には、正面視でシート1の中心線Oに対して対角方向の気流F1、F2を生成し、暖房処理時には、正面視でシート1の中心線Oに対して平行の気流F13、F14を生成するように構成されていてもよい。その他、制御装置50は冷房処理(又は、暖房処理)を開始してからの所定の時間が経過したときに、気流の方向を変更する(例えば、対角方向から中心線Oに対して平行な方向に変更する)ように構成されていてもよい。
【0148】
このとき、羽板63Aがシートバックフレーム13、シートクッションフレーム33にそれぞれ上下方向及び水平方向に延びる軸線を中心として回転可能に支持されているとよい。これにより、ルーバ63は、上下方向及び水平方向に送り出される風の向きを調節可能となり、対角方向と中心線Oに平行な方向との気流の切り替えが可能となる。
【0149】
上記実施形態では、シート1が4輪自動車等の乗用車に設けられる例を記載したが、この態様には限定されない。本発明はバスやトラック、船舶、鉄道、飛行機等の乗物に搭載されるシート1にも適用することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 :シート
5 :シートクッション
6 :シートバック
7 :ヘッドレスト
11 :シート上部
12 :シート下部
19 :ファン
21 :加熱ユニット(ヒータ)
25 :通気口
39 :ファン
41 :冷却ユニット(クーラ)
45 :通気口
50 :制御装置
55 :温調ユニット
59 :オットマン
62 :シート状態センサ
63 :ルーバ
70 :着座者センサ
F1-F4 :気流
F11-F14 :気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14