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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008827
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】CMP研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230112BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20230112BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022087325
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】17/365,046
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】バイニャン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ドナ・エム・オールデン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・シモク
(72)【発明者】
【氏名】ナン-ロン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】シェン-ファン・ツェン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB06
3C158EB12
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
5F057AA03
5F057AA24
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケミカルメカニカルポリッシングに有用な研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは研磨層を有し、研磨層は、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと、塩素非含有マイクロエレメントと、を含む。マイクロエレメントは、膨張した中空マイクロエレメントであり得る。マイクロエレメントは、0.01~0.2の比重を有し得る。マイクロエレメントは、1~120マイクロメートル、又は15~30マイクロメートルの体積平均粒径を有し得る。研磨層は、塩素非含有である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルメカニカルポリッシングにおいて有用な研磨パッドであって、該研磨パッドは、
イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと
前記ポリマーマトリックス内に分布した0.01~0.2の比重を有する塩素非含有マイクロエレメントと、
を含む研磨層を有する、研磨パッド。
【請求項2】
エネルギー分散型X線分光法によって測定するとき、前記研磨層が、前記研磨層の総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含有量を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記硬化剤が芳香族ジアミンである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記芳香族ジアミンが、式
【化3】

(式中、R及びR、又はR及びRのいずれかは、アミン基、又は1~5個の炭素原子を有するアルキルアミン基であり、R、R、R、及びR又はRのいずれかでアミン含有基を含有しないものは、それぞれの出現時において、H、1~4個の炭素原子の-L-アルキル基から独立して選択され、ここで、Lは、直接結合、又はO若しくはSから選択される連結基である)、を有する請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記硬化剤が、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記マイクロエレメントが、アクリロニトリルコポリマーを含むシェルを有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層が、研磨層部分の全体積に基づいて5~50体積%の量の前記マイクロエレメントを含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記マイクロエレメントが、1~120マイクロメートルの体積平均粒径を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記マイクロエレメントが、30~300ナノメートルの壁厚を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項10】
ケミカルメカニカルポリッシングにおいて有用な研磨パッドであって、
該研磨パッドが、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックス内に分布する塩素非含有マイクロエレメントと、を含む研磨層を有し、
ASTM D7359-18に記載の燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定されるとき、前記研磨層が、前記研磨層の総重量に基づいて0.01重量%未満の塩素含有量を有し、
前記塩素非含有マイクロエレメントが、15~30マイクロメートルの体積平均粒径、及び30~300ナノメートルの平均シェル壁厚を有する、研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、を特に含む、基板のケミカルメカニカルポリッシング用の、特にマイクロエレクトロニクスの製造における酸化ケイ素含有基板の研磨用の研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性材料、半導体材料、及び絶縁材料の複数の層が、半導体ウェーハの表面上に堆積され、そして部分的又は選択的に半導体ウェーハの表面から除去される。導電性材料、半導体材料、及び絶縁材料の薄層を、複数の堆積技術を使用して堆積させてもよい。さらに、ダマシンプロセスでは、材料を堆積して、トレンチ及びビアのパターン化エッチングにより形成された陥凹領域を充填する。充填は表面の形に沿うため、不規則な表面形態につながる可能性がある。また、充填不足を回避するため、余分な材料を堆積させることがある。したがって、陥凹部の外側の材料を除去することが必要となる。最新のウェーハ加工における一般的な堆積技術には、スパッタリングとしても公知の物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、及び電気化学堆積法(ECD)が特に含まれる。一般的な除去技術には、ウェットエッチング及びドライエッチングや、等方性エッチング及び異方性エッチングが特に含まれる。
【0003】
材料が順次堆積及び除去されるにつれて、基板の表面形態は不均一又は非平面になり得る。後続の半導体プロセス(例えば、フォトリソグラフィ、メタライゼーションなど)は、ウェーハの表面が平坦であることを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、望ましくない表面形態や、表面欠陥、例えば、粗い表面、凝集した材料、結晶格子欠陥、スクラッチ、そして汚染された層又は材料を除去する上で有用である。
【0004】
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)とも呼ばれるケミカルメカニカルプラナリゼーションは、半導体ウェーハなどの加工対象物を平坦化又は研磨し、ダマシンプロセス、基板工程(FEOL:front end of line)、又は配線工程(BEOL:back end of line)において余分な材料を除去するために使用される一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェーハキャリア又は研磨ヘッドがキャリアアセンブリ上に取り付けられる。研磨ヘッドは、ウェーハを保持し、CMP装置内のテーブル又はプラテン上に取り付けられた研磨パッドの研磨表面と接触する位置にウェーハを載置する。キャリアアセンブリは、ウェーハと研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供する。同時に、スラリー又は他の研磨媒体が研磨パッド上に計量分配され、そしてウェーハと研磨層との間の隙間に導入される。研磨を達成するため、研磨パッド及びウェーハは通常、互いに相対的に回転する。研磨パッドがウェーハの下で回転するとき、ウェーハは典型的には環状の研磨トラック又は研磨領域を通過し、そこでウェーハの表面は直接、研磨層に面する。ウェーハ表面は、研磨表面及び表面上の研磨媒体(例えば、スラリー)の化学的及び機械的作用によって研磨され、平坦にされる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示されるのは、ケミカルメカニカルポリッシングに有用な研磨パッドであり、該研磨パッドは、研磨層を有し、該研磨層は、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス内に分布する塩素非含有マイクロエレメントと、を含む。マイクロエレメントは、中空マイクロエレメント(例えば、膨張マイクロエレメント)であり得る。マイクロエレメントは、0.01~0.2の比重を有し得る。マイクロエレメントは、1~120マイクロメートル又は15~30マイクロメートルの体積平均粒径を有し得る。中空マイクロエレメントは、30~300ナノメートルの平均壁厚を有し得る。研磨層は、塩素非含有である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示される研磨パッドは、ポリマーマトリックスを含み、該ポリマーマトリックスは、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物と、塩素非含有マイクロエレメントと、を含む。
【0007】
化合物(例えば、硬化剤)に関する「塩素非含有」とは、硬化剤として使用される化合物が化学式中に塩素原子を含まないことを意味する。
組成物、物品、又は構成要素に関して「塩素非含有」とは、塩素が組成物中で検出可能ではないことを意味する。好ましくは、研磨層全体とは、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、又はASTM D7359-18に記載されている燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定したときに、構成要素(例えば、マイクロエレメント若しくは研磨層)が、研磨層の総重量に基づいて、0.1重量%未満の塩素含有量を有することを意味する。最も好ましくは、研磨層全体とは、ASTM D7359-18に記載されている燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定したときに、構成要素(例えば、マイクロエレメント又は研磨層)が、研磨層の総重量に基づいて、0.01重量%未満の塩素含有量を有することを意味する。CICは、塩素濃度をより正確に測定する代表的な方法である。
【0008】
「体積平均粒径」とは、D50又はD(v,0.5)粒径を意味する。これは累積分布における50%での粒径の値である。例えば、D50=15マイクロメートルの場合、サンプル中の粒子の50%は15マイクロメートルより大きく、50%は15マイクロメートルより小さい。粒径及び粒度分布は、(例えば、Malvern製のMastersizer(商標)機器を使用して)レーザー回折法によって測定され得る。
【0009】
本明細書に開示される研磨パッドにより、(例えば、酸化ケイ素含有基板、特にオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)に基づく酸化ケイ素含有基板の)除去速度が、塩素含有マイクロエレメントを有する、及び/又は塩素含有硬化剤から形成されるポリマーマトリックスを有する類似のパッドと比較した場合に、驚くほど改善される。さらに、開示されるパッドは塩素非含有であるという利点を有する。
【0010】
研磨層は、塩素非含有であるポリマーマトリックスを含む。ポリマーマトリックスは、イソシアナート末端ウレタンと塩素非含有硬化剤との反応物であり得る。
【0011】
イソシアナート末端ウレタンプレポリマーは、未反応イソシアナート(NCO)基を2~15重量%、5~13重量%、6~12重量%、7~11重量%、又は8~10重量%有することができる。プレポリマーは、ポリイソシアナート(例えば、ジイソシアナート)とポリオールとの反応によって形成され得る。適切なポリイソシアナートの例には、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレン-1,5-ジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、パラフェニレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、及びそれらの混合物が含まれる。多官能性イソシアナート末端ウレタンプレポリマーを形成するために使用されるポリオールは、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコポリマー、及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。例えば、プレポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、及びそれらの混合物)、ポリカーボナートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、それらの混合物;並びにそれらと、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールからなる群より選択される1種以上の低分子量ポリオールとの混合物からなる群より選択され得る。ポリイソシアナート及びポリオールは、塩素非含有であり得る。
【0012】
硬化剤は、塩素非含有芳香族ジアミンであり得る。例えば、硬化剤は、以下の式を有し得る。
【化1】

式中、R及びR、又はR及びRは、アミン基(すなわち-NH)、又は1~5個の炭素原子を有するアルキルアミン基、好ましくはアミン基であり、R、R、R、及びR又はRのいずれかでアミン含有基ではないものは、それぞれの出現時において、H;1~4個の、好ましくは1~2個の炭素原子の-L-アルキル基より独立して選択され、ここで、Lは直接結合、又は連結基、好ましくはO若しくはS、最も好ましくはSである。
【0013】
硬化剤の例には、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、又はそれらの組合せが含まれる。
【0014】
プレポリマーに対する硬化剤の使用量は、プレポリマー及び硬化剤の総重量に基づいて5~40重量%であり得る。硬化剤の量は、硬化剤中及びプレポリマー中の利用可能な官能基に応じて変わり得る。硬化は高温で起こり得る。例えば、硬化は、50℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上、及び150℃以下、又は120℃以下の温度で起こり得る。中空のポリマーマイクロエレメントが使用される場合、硬化温度は、好ましくは、マイクロエレメントの壁のポリマーのガラス転移温度より低い。硬化は、一定時間にわたって、例えば1~20時間、又は5~18時間、又は10~16時間かけて生じ、硬化した研磨層バルク材料を作製することができる。
【0015】
プレポリマー及び硬化剤をマイクロエレメントと混合し、次いで硬化させることができる。
【0016】
マイクロエレメントは、中空マイクロエレメント又は中空マイクロスフェアであり得る。マイクロエレメントは、膨張ポリマーマイクロスフェアであり得る。マイクロエレメントは、0.01~0.2、0.02~0.15、0.05~0.1、又は0.070~0.096の比重を有することができる。比重は、ポリマーマトリックス中にマイクロエレメントが分布される前に、例えばガスピクノメータ法によって測定し得る。ピクノメータは、体積が公知の、1つの試料室及び1つの膨張室の2つの室を有する。予め秤量した試料を試料室内に配置することができ、膨張室への弁を閉じてから、試料室内の圧力を空気で約5psiに設定する。試料室内の圧力が平衡化したとき、膨張室への弁を開くと、試料室及び膨張室の両方で新たな平衡圧力に到達する。次いで、これら2つの異なる状態にある気体の状態方程式を使用して、試料のピクノメータ体積を算出することができる。密度は重量を体積で割ったものであり、比重は密度を4℃の水の密度で割ったものである。
【0017】
マイクロエレメントは、レーザー回折法によって測定したときに、1~120マイクロメートル、5~80マイクロメートル、15~40マイクロメートル、又は15~30マイクロメートルの体積平均粒径を有することができる。中空マイクロエレメントは、30~300ナノメートル、又は50~200ナノメートルの壁厚を有することができる。壁厚は例えば、ポリマーマトリックス中の中空マイクロエレメントの断面の、走査型電子顕微鏡観察によって測定され得る。ポリマーマイクロエレメントは、コモナー(commoner)を有する、アクリロニトリルコポリマーを含むシェルを含み得る。コモノマーは、別のエチレン性不飽和モノマー、例えば、アクリラート(例えばブチルアクリラート)、メタクリラート(例えば、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート)、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンジン)、酢酸ビニル、又は置換アクリロニトリル(例えば、メタクリロニトリル)であり得る。
【0018】
研磨層中のポリマーマトリックス内に分布するマイクロエレメントの量は、研磨層の全容積に基づいて、5~50体積%、10~45体積%、10~40体積%、又は10~35体積%であり得る。
【0019】
マイクロエレメントは、硬化前にプレポリマー及び硬化剤と混合され得る。
【0020】
研磨層は、ASTM D1622(2014)に準拠して測定したときに、0.4~1.15g/cm3、又は0.7~1.0g/cm3の密度を有することができる。
【0021】
研磨層は、ASTM D2240(2015)に準拠して測定したときに、28~75のショアD硬度を有することができる。
【0022】
研磨層は、20~150ミル、30~125ミル、40~120ミル、又は50~100ミル(0.5~4mm、0.7~3mm、1~3mm、又は1.3~2.5mm)の平均厚さを有することができる。
【0023】
研磨層は、塩素非含有である。研磨パッド全体は、塩素非含有であり得る。
【0024】
本発明の研磨パッドは、任意選択的に、研磨層に接合された1層以上の追加の層をさらに含む。例えば、研磨パッドは、研磨層に接着された圧縮性基層をさらに含み得る。圧縮性基層は、研磨中の基板の表面に対する研磨層の適合性を向上し得る。基部パッド(副層又は基層とも呼ばれる)は、研磨部分の下で使用され得る。基部パッドは単層であり得る。又は基部パッドは1層を上回る層を含み得る。例えば、研磨層を、機械的締結具を介して又は接着剤によって、基部パッドに取り付けてもよい。基層は、0.5mm以上又は1mm以上の厚さを有し得る。基層は、5mm以下、3mm以下、又は2mm以下の厚さを有し得る。
【0025】
基部パッド又は基層は、研磨パッド用の基層として使用することが公知となっている任意の材料を含んでもよい。例えば、上述の材料には、ポリマー、ポリマーの配合物、又はポリマー材料と他の材料(例えば、セラミック、ガラス、金属、若しくは石)との複合材料が含まれ得る。ポリマー及びポリマー複合材料は、研磨部分を形成し得る材料との適合性のために、基部パッドとして、特に1層を上回る層がある場合には最上層用の基部パッドとして使用され得る。上述の複合材料の例には、炭素フィラー又は無機フィラーが充填されたポリマー、及びポリマーを含浸させた、例えばガラス繊維又は炭素繊維の繊維マットが含まれる。パッドの基部は、以下の特性、すなわち、ヤング率が、例えばASTM D412-16に準拠して測定したときに、2MPa以上、2.5MPa以上、5MPa以上、10MPa以上、又は50MPa以上、900MPa以下、700MPa以下、600MPa以下、500MPa以下、400MPa以下、300MPa以下、又は200MPa以下の範囲にある特性;ポアソン比が、例えばASTM E132に準拠して測定したときに、0.05以上、0.08以上、又は0.1以上、0.6以下、又は0.5以下である特性;密度が、0.4グラム毎立方センチメートル(g/cm3)以上、又は0.5g/cm3以上、1.7g/cm3以下、1.5g/cm3以下、又は1.3g/cm3以下である特性、のうちの1つ以上を有する材料で作成され得る。
【0026】
基部パッド又は研磨部分中に使用され得る上述のポリマー材料の例には、ポリカーボナート、ポリスルホン、ナイロン、エポキシ樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルポリマー、ポリメチルメタクリラート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、エポキシ、シリコーン、それらのコポリマー(例えば、ポリエーテル-ポリエステルコポリマー)、又はそれらの組合せ若しくは配合物が含まれる。ポリマーは、ポリウレタンであり得る。ポリウレタンは単独で使用され得る。又はポリウレタンは炭素フィラー若しくは無機フィラー用母材、そして例えばガラス繊維若しくは炭素繊維の、繊維マット用母材であり得る。
【0027】
本発明の研磨パッドは、その最終形態において、その上面に1次元以上のテクスチャの組込みをさらに含むことができる。これらのテクスチャを、その寸法によってマクロテクスチャ又はマイクロテクスチャに分類してもよい。流体力学的応答及び/又はスラリー輸送を制御するためにCMPに使用される一般型マクロテクスチャは、多くの形態の溝、そして環状ハッチング、放射状ハッチング、及びクロスハッチングなどのデザインを含むが、これらに限定されるわけではない。これらのテクスチャを、機械加工プロセスによって薄い均一なシートに形成してもよく、又はネットシェイプ成形プロセスによってパッド表面に直接形成してもよい。一般型マイクロテクスチャは、より微細なスケールの形体であり、この形体が、研磨が行われる、基板ウェーハとの接触点である一団の表面突起を創成する。一般型マイクロテクスチャは、使用前、使用中、又は使用後のいずれかに、ダイヤモンドなどのずらりと並んだ硬質粒子による研磨(パッドコンディショニングとしばしば呼ばれる)によって形成されたテクスチャと、パッド製造プロセス中に形成されたマイクロテクスチャと、を非限定的に含む。
【0028】
本発明の研磨パッドは、ケミカルメカニカルポリッシング装置のプラテンと接合するのに適し得る。研磨パッドを、研磨装置のプラテンに取り付けることができる。感圧接着剤及び真空の少なくとも一方を用いて、研磨パッドをプラテンに取り付けることができる。
【0029】
本発明の研磨パッドを、使用中のパッドポリマーの特性に適合する様々なプロセスによって製造してもよい。これらのプロセスには、上記のような成分を混合し、金型に注入し、アニールし、所望の厚さのシートにスライスすることが含まれる。あるいは、研磨パッドをより精密なネットシェイプ形態に作製してもよい。製造プロセスには、1.熱硬化性射出成形(「反応射出成形」若しくは「RIM」と呼ばれることが多い)、2.熱可塑性若しくは熱硬化性射出ブロー成形、3.圧縮成形、又は4.流動性材料を配置して凝固させ、それによってパッドのマクロテクスチャ若しくはマイクロテクスチャの少なくとも一部を創成するあらゆる同様な種類のプロセスが含まれる。研磨パッドの成形の一例では、1.流動性材料は、構造体又は基板の内部若しくは表面に押し込まれ、2.構造体又は基板は、凝固するにつれて材料に表面テクスチャを付与することができ、3.構造体又は基板はその後、凝固した材料から取り外される。
【0030】
本明細書で開示するパッドは、研磨方法において使用され得る。例えば、本方法は、プラテン又はキャリアアセンブリを有するケミカルメカニカルポリッシング装置を用意する工程と;少なくとも1枚の研磨対象基板を用意する工程と;本明細書に開示のケミカルメカニカルポリッシングパッドを用意する工程と;プラテン上にケミカルメカニカルポリッシングパッドを設置する工程と;任意選択的に、研磨媒体(例えば、砥粒含有スラリー、及び/又は砥粒非含有反応性液体組成物)をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨部分と基板との間の界面に供給する工程と;研磨パッドの研磨部分と基板との間に動的接触を生じさせて、少なくとも一部の材料を基板から除去する工程と、を含むことができる。キャリアアセンブリは、研磨中の基板(例えば、ウェーハ)と研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供することができる。研磨媒体を研磨パッド上に計量分配し、そしてウェーハと研磨層との間の間隙に導入することができる。研磨媒体は、水と、pH調整剤と、を含むことができ、任意選択的に、砥粒粒子、酸化剤、インヒビター、殺生物剤、可溶性ポリマー、及び塩のうちの1種以上を非限定的に含むことができる。砥粒粒子は、酸化物、金属、セラミック、又は他の適切な硬質材料であり得る。典型的な砥粒粒子は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、セリア、及びアルミナである。研磨パッド及び基板は、互いに相対的に回転し得る。研磨パッドが基板の下で回転するとき、基板は典型的には環状の研磨トラック又は研磨領域を掃過することができ、そこで、ウェーハの表面は研磨パッドの研磨部分に直接的に面する。ウェーハ表面は、研磨層及び表面上の研磨媒体の化学的及び機械的作用によって研磨され、平坦にされる。任意選択的に、研磨開始前に、研磨パッドの研磨表面を砥粒調整剤で調整することができる。
【0031】
パッドは、任意選択的に、終点検出用の窓を含むことができる。その場合、本発明の方法、用意されたケミカルメカニカルポリッシング装置は、信号源(例えば、光源)及び信号検出器(例えば、光センサ(好ましくは、マルチセンサ分光器))をさらに含み得る。その場合、本方法は、窓を通して信号(例えば、光源からの光)を送信し、基板の表面から反射され終点検出窓を再び通ってセンサ(例えば、光センサ)に入射する信号(例えば、光)を解析することによって、研磨終点を決定する工程をさらに含み得る。基板は、銅又はタングステンを含有するような、金属又は金属被覆表面を有し得る。基板は、磁気基板、光学基板、及び半導体基板であり得る。
【0032】
実施例
パッド製造
注型ポリウレタンケーキは、(a)市販されているイソシアナート末端プレポリマー(トルエンジイソシアナート、TDI、及びポリエーテル系ポリオールの反応生成物であり、例えば51℃に予熱することができる)、(b)硬化剤、及び(c)ポリマーマイクロスフェアの制御混合によって調製される。硬化剤が4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MbOCA)である場合、該硬化剤を116℃に予熱することができる。硬化剤がジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)である場合、該硬化剤を46℃に予熱することができる。混合ヘッドから排出された後、混合物は3分間かけて直径86.4cm(34インチ)の円形金型に計量分配され、約8cm(3インチ)の合計注入厚さを与える。計量分配された混合物を15分間かけてゲル化させた後、硬化オーブンに金型を載置する。次いで、金型を硬化オーブン内で、以下のサイクル、すなわち、オーブン設定点温度を周囲温度から104℃まで30分間かけて上昇させ、その後104℃のオーブン設定点温度で15.5時間保持するサイクルを使用して硬化させる。
【0033】
ポリマーマイクロスフェアの充填量を、研磨層同様の密度0.8g/cm3、又は研磨層部分の全容積に基づいて32体積%を目標に制御する。研磨層の成分は、以下の表に示す通りである。
【表1】
【0034】
研磨層は約2mmの厚さであり、溝を形成するため機械加工されている。研磨層は、反応性ホットメルト接着剤を使用して発泡サブパッドに取り付けられる。
【0035】
パッド試験
パッドは、砥粒60部及び添加剤240部で予備混合された添加剤パッケージを有するセリア砥粒系スラリーを使用して試験される。パッドをコンディショニング後、プラテンに対して145回転毎分、ヘッドに対して133回転毎分で、3.3psi(0.023MPa)の下向きの力をかけて60秒の研磨時間にわたり研磨を行う。ダミーウェーハ及びTEOS系酸化ケイ素モニターウェーハを研磨処理する。
【0036】
第1の試験に関しては、実施例1及び実施例2によるパッドを比較例1と比較して、以下の表に示す結果を得た。塩素非含有マイクロスフェアを有するパッドは、塩素含有マイクロスフェアを有するパッドに比べて、驚くほど良好なTEOS系酸化ケイ素除去を示した。
【表2】
【0037】
第2の試験では、塩素非含有硬化剤(ジメチルチオトルエンジアミン)を有する実施例1によるパッドを、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MBOCA)を硬化剤に代用したパッドと比較した。驚くべきことに、研磨結果が示したのは、比較例2(塩素非含有ポリマーマイクロスフェアを含み、塩素含有硬化剤を含む)よりも改善されたTEOS除去率を実施例1がもたらし、除去率が42%向上し、欠陥が26%減少したことであった。
【表3】
【0038】
本開示は、以下の態様をさらに包含する。
【0039】
態様1.ケミカルメカニカルポリッシングに有用な研磨パッドであって、該研磨パッドは、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス内に分布した、0.01~0.2、好ましくは0.02~0.15、より好ましくは0.05~0.1、さらにより好ましくは0.070~0.096の比重を有する塩素非含有マイクロエレメントと、を含む研磨層を有する、研磨パッド。
【0040】
態様2.マイクロエレメントが、1~120マイクロメートル、好ましくは5~80マイクロメートル、より好ましくは15~40マイクロメートル、最も好ましくは15~30マイクロメートルの体積平均粒径を有する、態様1に記載の研磨パッド。
【0041】
態様3.エネルギー分散型X線分光法、又はASTM D7359-18に記載の燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定したときに、研磨層が、研磨層の総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含有量を有する、態様1又は2に記載の研磨パッド。
【0042】
態様4.エネルギー分散型X線分光法、又はASTM D7359-18に記載の燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定したときに、研磨パッドが、研磨パッドの総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含有量を有する、態様1又は2に記載の研磨パッド。
【0043】
態様5.ケミカルメカニカルポリッシングに有用な研磨パッドであって、該研磨パッドは、イソシアナート末端ウレタンプレポリマーと塩素非含有芳香族ポリアミン硬化剤との反応生成物を含むポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス内に分布した塩素非含有マイクロエレメントとを含む研磨層を有し、ASTM D7359-18に記載の燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定したときに、該研磨層が、研磨層の総重量に基づいて0.01重量%未満の塩素含有量を有する、研磨パッド。
【0044】
態様6.硬化剤が芳香族ジアミンである、態様1~5のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0045】
態様7.硬化剤が式
【化2】

(式中、R及びR、又はR及びRは、アミン基(すなわち-NH)、又は1~5個の炭素原子を有するアルキルアミン基、好ましくはアミン基であり、R、R、R、及びR又はRのいずれかでアミン含有基ではないものは、それぞれの出現時において、H;1~4個の、好ましくは1~2個の炭素原子の-L-アルキル基より独立して選択され、ここでLは直接結合、又は連結基、好ましくはO若しくはS、最も好ましくはSである)の化合物を含む、態様1~6のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0046】
態様8.硬化剤が、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、又はそれらの組合せを含む、態様1~7のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0047】
態様9.マイクロエレメントが、アクリロニトリルコポリマーを含むシェルを有する、態様1~8のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0048】
態様10.研磨層が、研磨層の全体積に基づいて、5~50体積%、好ましくは10~45体積%、より好ましくは10~40体積%、最も好ましくは10~35体積%の量のマイクロエレメントを含む、態様1~9のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0049】
態様11.マイクロエレメントが、30~300ナノメートル、好ましくは50~200ナノメートルの壁厚を有する、態様1~10のいずれか一項記載の研磨パッド。
【0050】
態様12.基板を用意する工程と、態様1~11のいずれか一項記載の研磨パッドを用意する工程と、研磨パッドと基板との間にスラリーを供給する工程と、パッド及びスラリーを用いて基板を研磨する工程と、を含む方法。
【0051】
組成物、方法、及び物品は、代替的に、本明細書に開示される任意の適切な材料、工程若しくは構成要素を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなり得る。組成物、方法、及び物品は、追加的又は代替的に、組成物、方法、及び物品の機能若しくは目的を達成する上で不要な何らかの材料(若しくは化学種)、工程若しくは構成要素を欠失するか、又は実質的に含まないように構成され得る。
【0052】
本明細書に開示されるすべての範囲は端点を含み、端点は、互いに独立して組み合わせ可能である(例えば、「25重量%以下、又はより具体的には5重量%~20重量%」の範囲は、「5重量%~25重量%」等の範囲の端点及びすべての中間値を含む)。さらに、前述の上限及び下限を組み合わせて範囲を形成することができる(例えば、「1以上又は2重量パーセント以上」及び「10又は5重量パーセント以下」を、範囲「1~10重量パーセント」、又は「1~5重量パーセント」、又は「2~10重量パーセント」、又は「2~5重量パーセント」として組み合わせ得る)。「組合せ」は、配合物、混合物、合金、反応生成物などを含む。「第1」、「第2」などの用語は、何らかの順序、量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を別の要素から区別するために使用される。「1つの(a)」及び「1つの(an)」並びに「該(the)」という用語は、量の限定を示すものではなく、本明細書で特に指示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「又は」は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体を通して「一部の実施形態」、「一実施形態」などへの言及は、該実施形態に関連して説明される特定の要素が本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態には存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、記載された要素を、様々な実施形態において任意の適切な方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。「それらの組合せ」は開かれた表現であり、列挙された成分又は特性の少なくとも1つを、任意選択的に、列挙されていない同様若しくは同等の成分又は特性と併せて含むあらゆる組合せを含む。
【0053】
本明細書において別段の指定がない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日に有効な最新規格であり、又は優先権が主張される場合は、試験規格が現われる最先の優先権出願の出願日に有効な最新規格である。
【外国語明細書】