(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088280
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】治療補助機器
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20230619BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H02J1/00 309D
H02J1/00 310L
A61M1/36 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186747
(22)【出願日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2021202362
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】森 駿太
(72)【発明者】
【氏名】藤綱 伊織
【テーマコード(参考)】
4C077
5G165
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077BB06
4C077CC07
4C077CC09
4C077DD01
4C077DD18
4C077DD21
4C077DD24
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH09
4C077HH14
4C077JJ03
4C077JJ08
4C077JJ15
4C077JJ24
4C077KK25
5G165BB02
5G165BB06
5G165EA07
5G165FA01
5G165JA09
5G165KA04
5G165LA03
(57)【要約】
【課題】サイズ及び製造コストを増大させることなく、効果的に瞬時電圧低下への対策ができる治療補助機器を提供すること。
【解決手段】医療に用いられる機器10を補助するために動作する治療補助機器1は、機器10を補助するための動作を行う負荷装置16と、制御装置15と、制御装置15及び負荷装置16に電力を供給する電源装置13と、を備え、電源装置13は、制御装置15に電力を供給する制御側電源13Aと、負荷装置16に電力を供給する負荷側電源13Bと、を有し、負荷側電源3Bは、前記制御側電源よりも電源容量が多く、電源装置13への電力の供給量が急激に低下した場合、負荷側電源3Bは、動作を停止し、制御側電源13Aのみが動作を継続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療に用いられる機器を補助するために動作する治療補助機器であって、
前記機器を補助するための動作を行う負荷装置と、
制御装置と、
前記制御装置及び前記負荷装置に電力を供給する電源装置と、を備え、
前記電源装置は、
前記制御装置に電力を供給する制御側電源と、
前記負荷装置に電力を供給する負荷側電源と、を有し、
前記負荷側電源は、前記制御側電源よりも電源容量が多く、
前記電源装置への電力の供給量が急激に低下した場合、前記負荷側電源は、動作を停止し、前記制御側電源のみが動作を継続する、
治療補助機器。
【請求項2】
前記制御側電源における消費電力に対する電源容量の割合が、前記負荷側電源における消費電力に対する電源容量の割合よりも大きくなるように設計される、請求項1に記載の治療補助機器。
【請求項3】
前記制御側電源における消費電力に対する電源容量の割合は、300%以上1250%以下である、請求項1又は2に記載の治療補助機器。
【請求項4】
前記治療補助機器は、前記電源装置以外の電力供給装置を備えていない、請求項1から3のいずれか一項に記載の治療補助機器。
【請求項5】
前記治療補助機器は、
冷水又は温水を貯留するタンクと、
前記冷水又は温水を循環させる循環ポンプと、
前記冷水又は温水の温度を調節する温度調節器と、を更に備え、
前記負荷装置は、前記循環ポンプ、送風ファン及びペルチェモジュールを有し、
前記治療補助機器は、前記機器に前記冷水又は温水を供給する機器である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の治療補助機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療補助機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開心術や補助循環等で用いられる医療機器(例えば、人工肺)は、患者の体温(血液の温度)を調整するために熱交換器を備えている。このような熱交換器は、冷水又は温水を必要とするため、冷水又は温水を供給する冷水温水供給装置等の治療補助機器と接続される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような治療補助機器には、落雷等で医療機器への電力供給が瞬間的に停止又は減少する瞬時電圧低下(瞬低)現象への対策が必要とされる。従来の治療補助機器の瞬低対策としては、二次電池や無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)を搭載することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、治療補助機器において、瞬低によって内部の電気部品の動作が停止した場合、患者への危害や治療の遅延等のような重大な問題が発生するため、治療補助機器は瞬低対策を必要とする。一方、瞬低対策として二次電池やUPS等を搭載することは、治療補助機器のサイズ及び製造コストの増大の観点から望ましくない。また、治療補助機器は、病棟間(例えば、ICUから一般病棟)を移動させる必要があり、サイズの小型化が求められている。
【0006】
従って、本発明は、サイズ及び製造コストを増大させることなく、効果的に瞬時電圧低下への対策ができる治療補助機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る治療補助機器は、医療に用いられる機器を補助するために動作する治療補助機器であって、前記機器を補助するための動作を行う負荷装置と、制御装置と、前記制御装置及び前記負荷装置に電力を供給する電源装置と、を備え、前記電源装置は、前記制御装置に電力を供給する制御側電源と、前記負荷装置に電力を供給する負荷側電源と、を有し、前記負荷側電源は、前記制御側電源よりも消費電力が多く、前記電源装置への電力の供給量が急激に低下した場合、前記負荷側電源は、動作を停止し、前記制御側電源のみが動作を継続する。
【0008】
また、前記制御側電源は、消費電力に対する電源容量の割合が、前記負荷側電源よりも大きくなるように設計されることが好ましい。
【0009】
また、前記治療補助機器は、前記電源装置以外の電力供給装置を備えていないことが好ましい。
【0010】
また、前記治療補助機器は、冷水又は温水を貯留するタンクと、前記冷水又は温水を循環させる循環ポンプと、前記冷水又は温水の温度を調節する温度調節器と、を更に備え、前記負荷装置は、前記循環ポンプ、送風ファン及びペルチェモジュールを有し、前記治療補助機器は、前記機器に前記冷水又は温水を供給する機器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイズ及び製造コストを増大させることなく、効果的に瞬時電圧低下への対策ができる治療補助機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る治療補助機器の物理的な構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る治療補助機器の電気的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る治療補助機器1の物理的な構成を示す模式図である。治療補助機器1は、医療に用いられる機器を補助するために動作する。例えば、治療補助機器1は、人工肺のような医療機器10(機器)の熱交換器に冷水又は温水を供給する冷温水槽である。
【0014】
図1に示すように、治療補助機器1は、筐体2と、タンク3と、循環ポンプ4と、温度調節ユニット5と、弁6と、を備える。なお、治療補助機器1は、
図1に示される構成以外にも冷温水槽として機能するための他の構成を有するが、本実施形態では、他の構成についての説明を省略する。
【0015】
筐体2は、その内部にタンク3、循環ポンプ4、温度調節ユニット5、弁6等を収容する。
タンク3は、返送ラインL1を介して医療機器10から返送され、後述の温度調節ユニット5において温度調節された冷水又は温水を貯留する。また、タンク3は、貯留した冷水又は温水を、給水ラインL2を介して循環ポンプ4に送出する。
【0016】
なお、返送ラインL1は、医療機器10から治療補助機器1に返送される冷水又は温水の経路を示し、給水ラインL2は、治療補助機器1から医療機器10に供給される冷水又は温水の経路を示す。返送ラインL1及び給水ラインL2は、冷水又は温水を流通させるためのチューブや配管により構成される。
【0017】
循環ポンプ4は、タンク3から供給された冷水又は温水を加圧し、弁6を介して医療機器10に供給する。
温度調節ユニット5は、医療機器10から返送された冷水又は温水を加熱又は冷却して所定の温度に調節する。温度調節ユニット5によって温度調節された水は、タンク3に貯留される。
【0018】
図2は、本実施形態に係る治療補助機器1の電気的な構成を示す図である。
図2に示すように、治療補助機器1は、電源供給部7と、インレット部11と、スイッチ部12と、電源装置13と、制御装置15と、負荷装置16と、シールド部17と、を備える。
【0019】
電源供給部7は、電源コード及び電源プラグ8と、保護接地線9と、を有し、外部電源から電力(交流電流)を取得し、取得した電力を治療補助機器1の各構成に供給する。
インレット部11は、ヒューズ、ノイズフィルター、インレットフィルター等を有し、電源供給部7から供給された交流電流に所定の処理を行う。
【0020】
スイッチ部12は、インレット部11と電源装置13との間に設けられ、インレット部11と電源装置13と接続のオン・オフを切り替える。
【0021】
電源装置13は、電源供給部7、インレット部11及びスイッチ部12を経由して供給された交流電流を直流電流に変換する。電源装置13は、制御側電源13Aと、負荷側電源13Bと、を有する。
【0022】
制御側電源13A及び負荷側電源13Bは、それぞれ、一次回路、二次回路及び絶縁トランスを有する。制御側電源13Aは、供給された交流電流を直流電流に変換し、変換した交流電流(電力)を制御装置15に供給する。負荷側電源13Bは、供給された交流電流を直流電流に変換し、変換した交流電流(電力)を負荷装置16に供給する。
【0023】
制御装置15は、治療補助機器1の本体を制御する。制御装置15は、タッチパネル151と、温度調節器152と、温度警報器153と、単相電流リレー154と、を有する。制御装置15は、消費電力の少ない機器により構成される。
【0024】
タッチパネル151は、ユーザからの入力操作を受け付け、受け付けた処理内容に応じて各構成を動作させる。
温度調節器152は、上述した温度調節ユニット5の一部として機能し、温度調節のための制御を行う。
温度警報器153は、冷水又は温水の温度が予め設定された温度を超える又は下回る場合、危険を知らせるための警報音を発生する。
単相電流リレー154は、負荷装置16内の過電流を監視する。
【0025】
負荷装置16は、医療機器10を補助するための動作を行う。負荷装置16は、循環ポンプ4と、第1送風ファン161と、第2送風ファン162と、第3送風ファン163と、第4送風ファン164と、第1ペルチェモジュール165と、第2ペルチェモジュール166と、ソリッドステートリレー(SSR)167と、を有する。
【0026】
第1送風ファン161、第2送風ファン162、第3送風ファン163及び第4送風ファン164は、治療補助機器1内の各構成を冷却するために送風を行う。
第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166は、上述した温度調節ユニット5の一部として機能し、冷水又は温水を加熱又は冷却する。
【0027】
第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166は、それぞれペルチェ素子を有する。ペルチェ素子は、P型半導体及びN型半導体を交互に配列した板状の素子である。ペルチェ素子に直流電流を流すと、ペルチェ素子の両面で熱が移動し、一方の面は、発熱して温度が上がり、他方の面は、吸熱して温度が下がる。第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166は、ペルチェ素子に入力される直流電流の方向を切り替えることで、冷水又は温水を加熱及び冷却する。
【0028】
SSR167は、入力信号としての直流電流が印加されている間のみ、第3送風ファン163、第4送風ファン164、第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166をオンとし、入力信号が無くなると、第3送風ファン163、第4送風ファン164、第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166をオフにする。
【0029】
シールド部17は、保護接地された金属シールドで構成され、インレット部11、スイッチ部12、電源装置13、制御装置15及び負荷装置16を電気的に遮蔽する。
【0030】
本実施形態に係る負荷側電源13Bは、負荷装置16(特に第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166)において多量の電力を消費するため、制御側電源13Aよりも消費電力が多い。そして、落雷等で瞬時電圧低下(瞬低)現象が発生し、電源装置13への電力の供給量が急激に低下した場合、負荷側電源13Bは、動作を停止し、消費電力の少ない制御側電源13Aのみが動作を継続する。
【0031】
このように本実施形態に係る治療補助機器1は、電源装置13を、消費電力の少ない機器構成とした制御装置15に電力を供給する制御側電源13A、及び多量の電力を消費する機器構成とした負荷装置16に電力を供給する負荷側電源13Bの2つの電源に分割し、電源装置13への電力の供給量が急激に低下した場合、消費電力が多い負荷側電源13Bは、動作を停止し、消費電力が少ない制御側電源13Aのみが動作を継続する。
【0032】
これにより、治療補助機器1は、瞬時電圧低下(瞬低)現象が発生した場合であっても、制御側電源13Aによって制御装置15の動作は継続し、効果的に瞬時電圧低下への対策が可能になる。更に、治療補助機器1は、電源装置13を、瞬時電圧低下の対策のために余分な装備を追加していないため、治療補助機器1のサイズをコンパクト化でき、製造コストを低減することができる。
【0033】
更に、従来は、瞬停などの際に制御装置等制御系も動作停止していたため、再起動させるためには、人の操作によって電源ボタン等を押す等のような人的な起動動作を必要としていた。しかし、本実施形態に係る治療補助機器1は、瞬低現象回復後も制御装置15の動作を継続できているので、負荷装置16の制御を自動的に再稼働させることができる。従って、治療補助機器1は、人の操作を必要とすることなく治療を継続することが可能になる。
【0034】
また、制御側電源13Aにおける消費電力に対する電源容量の割合が、負荷側電源13Bにおける消費電力に対する電源容量の割合よりも大きくなるように設計される。例えば、制御側電源13Aは、消費電力が10Wである場合、電源容量が100Wに設定され、負荷側電源13Bは、消費電力が300Wである場合、電源容量が400Wに設定される。また、制御側電源13Aにおける消費電力に対する電源容量の割合は、300%以上1250%以下であることが好ましい。
【0035】
このように治療補助機器1は、制御側電源13Aの消費電力に対する電源容量の割合を負荷側電源13Bの消費電力に対する電源容量の割合よりも余裕を持たせて設計することによって、瞬時電圧低下(瞬低)現象が発生した場合に制御側電源13Aの動作を継続させることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る治療補助機器1は、電源装置13以外の電力供給装置(例えば、二次電池、UPS等)を備えていない。これにより、治療補助機器1は、電源装置13以外の電力供給装置を備えていないため、治療補助機器1のサイズをコンパクト化でき、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る治療補助機器1において、負荷装置16は、循環ポンプ4、第1送風ファン161、第2送風ファン162、第3送風ファン163及び第4送風ファン164、並びに第1ペルチェモジュール165及び第2ペルチェモジュール166を有し、治療補助機器1は、医療機器10に冷水又は温水を供給する冷温水槽である。このような構成を有することにより、治療補助機器1は、サイズが小さく、消費電力が少ない冷温水槽として機能することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0039】
例えば、上述した実施形態において、電源装置13は、制御側電源13A及び負荷側電源13Bの2つに分割されたが、これに限らない。即ち、電源装置を、2つ以上の制御側電源及び/又は2つ以上の負荷側電源に分割して構成してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態は、治療補助機器1として冷温水槽の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、二次電池やUPSを搭載しない他の治療補助機器にも適用することが可能である。なお、治療補助機器は、直接的に治療には関与しないが、治療には必要な情報の検知/表示などを行い、結果的に治療もしくは医療機器に効果をもたらす機器のことを指す。具体的には、治療補助機器としては、ガスブレンダーなどの血中成分をモニタリングする機器や、圧力モニターや点滴モニターなどのようなモニター類などが対象となる。
【符号の説明】
【0041】
1 治療補助機器
2 筐体
3 タンク
4 ポンプ
5 温度調節ユニット
6 弁
7 電源供給部
8 電源ケーブル
9 電源コード及び電源プラグ
10 医療機器(機器)
11 インレット部
12 スイッチ部
13 電源装置
13A 制御側電源
13B 負荷側電源
15 制御装置
16 負荷装置
17 シールド部