(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008829
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ディテント装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/38 20060101AFI20230112BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20230112BHJP
【FI】
F16H63/38
G05G5/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089593
(22)【出願日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2021111074
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 明伸
【テーマコード(参考)】
3J067
3J070
【Fターム(参考)】
3J067AB01
3J067DA02
3J067EA81
3J067FA05
3J067FA16
3J067FA24
3J067FB61
3J067FB81
3J067FB90
3J067GA01
3J070AA03
3J070AA23
3J070BA02
3J070BA12
3J070BA14
3J070BA17
3J070BA74
3J070CD05
3J070CD33
3J070CD35
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】転動体が嵌合する複数の孔又は凹部を容易に形成することができるディテント装置を提供する。
【解決手段】このディテント装置10は、プレート部材20と、ベース部材40と、両部材を互いに相対回転可能に支持する第1支軸80と、ベース部材40に対して近接離反するように回動する回動ブラケット50とを有し、回動ブラケット50は、基部51とアーム部55と転動体60とを有し、更に、転動体60をプレート部材20の表面28から裏面29に向けて押し付ける付勢部材70を有し、プレート部材20の表面28には、プレート部材20及びベース部材40が相対回転するときに、転動体60が嵌合する複数の孔31,32,33が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなしたプレート部材と、
該プレート部材の表面に載置されたベース部材と、
前記プレート部材及びベース部材を、互いに相対回転可能に支持する第1支軸と、
該第1支軸に交差する第2支軸を介して前記ベース部材に装着され、前記ベース部材に対して近接離反するように回動する回動ブラケットとを有しており、
前記回動ブラケットは、前記第2支軸が挿通される基部と、該基部から延出するアーム部と、該アーム部の先端部に回転可能に支持された転動体とを有しており、
更に、前記アーム部を介して、前記転動体を前記プレート部材の表面から裏面に向けて押し付ける付勢部材を有しており、
前記プレート部材の表面には、前記プレート部材及び前記ベース部材が前記第1支軸を介して相対回転するときに、前記転動体が嵌合する、複数の孔が形成されていることを特徴とするディテント装置。
【請求項2】
前記転動体はローラとなっており、
前記プレート部材に形成された各孔は、ローラである前記転動体に適合する矩形状をなしている請求項1記載のディテント装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、
前記第2支軸が挿通される一対の巻回部と、
これらの一対の巻回部どうしを連結し、且つ、前記巻回部の半径方向外方に延びて、前記アーム部を押圧する連結部とからなる、
ダブルトーションバネである請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項4】
前記プレート部材は被取付面に固定されており、
前記プレート部材の表面の、前記孔が形成された領域は、前記被取付面から離間しており、前記孔に嵌合した前記転動体が前記被取付面に対して接触しないように構成されている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項5】
前記回動ブラケットの基部には、前記第1支軸が挿通される第1支軸挿通孔が形成されており、
該第1支軸挿通孔は、前記回動ブラケットの、前記ベース部材に対する回動を妨げず、且つ、前記回動ブラケットの、前記ベース部材に対する回動を許容する長孔となっている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項6】
前記転動体は、その軸方向から見て、前記複数の孔に嵌合する複数の突出部分を有しており、隣接する突出部分どうしの外郭形状が、直線又は凸曲線をなしており、
所定の突出部分が所定の孔に嵌合した状態で、前記プレート部材及び前記ベース部材が前記第1支軸を介して相対回転したとき、前記所定の突出部分に隣接する他の突出部分が、前記所定の孔に隣接する他の孔に嵌合するように構成されている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項7】
前記転動体は、三角形状をなしている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項8】
前記複数の孔の内側縁部には、前記転動体が前記孔に嵌合した状態で、前記プレート部材及び前記ベース部材が前記第1支軸を介して相対回転したとき、前記転動体を前記プレート部材の表面上に乗り上げさせる、テーパ面が形成されている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項9】
前記転動体の外周は、前記回動ブラケットの前記基部側に向けて次第に縮径する形状をなしている請求項1又は2記載のディテント装置。
【請求項10】
前記回動ブラケットの前記アーム部の表面側には、該アーム部の表面からの突出量を調整可能な調整部材が設けられ、該調整部材に前記付勢部材が当接しており、
前記付勢部材からの押し付け力が、前記調整部材を介して前記アーム部に付与され、該アーム部を介して、前記転動体が前記プレート部材の表面から裏面に向けて押し付けられるように構成されている請求項1又は2記載のディテント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の自動変速機に用いられる、ディテント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の自動変速機は、シフトレバーを操作して、P(駐車)や、R(後退)、D(ドライブ)等の作動モードを適宜切り替えている。このシフトレバーを、上記「P」や「R」等の作動モードに保持するための構造として、マニュアルプレートと、ディテントスプリングとが用いられている。マニュアルプレートには、「P」や「R」等に対応した、山谷形状をなした複数の山谷部が形成され、シフトレバーの操作に連動して回動する。また、ディテントスプリングは板状をなし、先端側に二股状をなしたローラ支持部が設けられ、これにローラが回動支持されており、マニュアルプレートの複数の山谷部に弾性的に嵌合する。そして、シフトレバーを所定荷重で操作して、マニュアルプレートを回動させることによって、所定の山谷部に嵌合したローラを、ディテントスプリングの先端側を撓ませつつ、他の山谷部に嵌合させることで、シフトレバーを所定の動作モードに切り替え可能となっている。
【0003】
上記構造を有するものとして、下記特許文献1には、外周に係止部を有するマニュアルプレートと、ばね部の端部に係止部との係合部を有して、シフトレバーの選択ポジションを保持する、弾性板材からなるディテントスプリングとを備えた、自動変速機のディテント機構が記載されている。ディテントスプリングは、先端が二股状をなした、ばね部を有しており、二股状の部分に、ローラが回転可能に支持されている。また、上記マニュアルプレートは略扇形状をなした板体となっており、その外周縁部に、周方向に沿って複数の凹凸が形成されており、この凹凸にローラが間欠的に嵌合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のマニュアルプレートは、略扇形状をなした板体となっており、その外周縁部に、嵌合部をなす複数の凹凸が形成されている。ところで、マニュアルプレートは、シフトレバー選択時に、節度感を生じさせるため、ある程度の板厚が必要である。このような厚肉の板体を、打ち抜きや、切削加工、放電加工等で加工して、その外周縁部に、複雑な凹凸形状を形成しようとすると、バリや、クラック、ダレ等の欠陥が生じるおそれがあり、板体の外周縁部に嵌合部を形成することは容易ではなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、転動体が嵌合する嵌合部を、容易に形成することができる、ディテント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のディテント装置は、板状をなしたプレート部材と、該プレート部材の表面に載置されたベース部材と、前記プレート部材及びベース部材を、互いに相対回転可能に支持する第1支軸と、該第1支軸に交差する第2支軸を介して前記ベース部材に装着され、前記ベース部材に対して近接離反するように回動する回動ブラケットとを有しており、前記回動ブラケットは、前記第2支軸が挿通される基部と、該基部から延出するアーム部と、該アーム部の先端部に回転可能に支持された転動体とを有しており、更に、前記アーム部を介して、前記転動体を前記プレート部材の表面から裏面に向けて押し付ける付勢部材を有しており、前記プレート部材の表面には、前記プレート部材及び前記ベース部材が前記第1支軸を介して相対回転するときに、前記転動体が嵌合する、複数の孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1支軸を介して、プレート部材及びベース部材が相対回転すると、アームを介して付勢部材により押し付けられた転動体が、所定の孔から抜け出て、プレート部材の表面上を転がりながら移動し、隣接する他の孔に嵌合する際に、節度感を得ることができる。そして、このディテント装置では、上記特許文献1のように、マニュアルプレートの外周縁部に、複数の凹凸を形成する場合に比べて、板状をなしたプレート部材の表面に、転動体が嵌合する複数の孔が形成されているので、転動体が嵌合する嵌合部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るディテント装置の一実施形態を示す、分解斜視図である。
【
図3】同ディテント装置を構成するプレート部材の、拡大斜視図である。
【
図5】同ディテント装置を構成するベース部材の、拡大斜視図である。
【
図6】
図6Aは、同ディテント装置を構成する回動部材の拡大斜視図であり、
図6Bは、同回動部材の平面図である。
【
図10】
図7のA-A矢視線における断面図である。
【
図11】
図7のB-B矢視線における断面図である。
【
図12】
図7の状態から、ベース部材及び回動ブラケットがR1方向に回動した状態の、平面図である。
【
図14】
図12の状態から、ベース部材及び回動ブラケットがR1方向に更に回動して、転動体が他の孔に嵌合した状態の平面図である。
【
図15】
図7の状態から、ベース部材及び回動ブラケットが、R2方向に回動して、転動体が他の孔に嵌合した状態の平面図である。
【
図16】本発明に係るディテント装置の、他の実施形態を示す、分解斜視図である。
【
図18】同ディテント装置を構成するプレート部材の、平面図である。
【
図19】同ディテント装置を構成する転動体を示しており、
図19Aはその側面図、19Bは平面図である。
【
図21】同第2実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図22】
図21の状態から、ベース部材及び回動ブラケットがR1方向に回動した状態の、断面図である。
【
図23】本発明に係るディテント装置の、更に他の実施形態を示す、組付け斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ディテント装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係るディテント装置の、一実施形態について説明する。
【0011】
図1,2,10,11に示すように、この実施形態におけるディテント装置10は、板状をなしたプレート部材20と、該プレート部材20の表面に載置されたベース部材40と、プレート部材20及びベース部材40を、互いに相対回転可能に支持する第1支軸80と、該第1支軸80に交差する第2支軸90を介してベース部材40に装着され、ベース部材40に対して近接離反するように回動する回動ブラケット50とを有している。また、回動ブラケット50は、第2支軸90が挿通される基部51と、該基部51から延出するアーム部55と、該アーム部55の先端部57に回転可能に支持された転動体60とを有している。更に、ディテント装置10は、
図10,11の矢印Fに示すように、アーム部55を介して、転動体60をプレート部材20の表面(ここでは後述する隆起部27の表面28)から裏面29に向けて押し付ける付勢部材70を有している。
【0012】
なお、プレート部材20の「表面」や「表側」とは、
図10や
図11に示す被取付部材1の被取付面3とは反対側の面や被取付面3とは反対側を意味する。これは、ベース部材40や回動ブラケット50における「表面」や「表側」も同様の意味である。また、プレート部材20、ベース部材40、回動ブラケット50における「裏面」や「裏側」とは、被取付部材1の被取付面3に向く面や被取付面3側を意味する。
【0013】
図2や
図6Aに示すように、この実施形態における転動体60は、ローラとなっている。
図10,11,13等を参照すると、この実施形態における転動体60は、その径方向中央に軸挿通孔61が形成されたローラであって、一定外径で且つ一定厚さで形成された略円盤状をなした基部63と、該基部63の厚さ方向両端面から同軸状に突出した一対の軸部65,65とから構成されている。また、ローラである転動体60を回転支持する、転動体支軸67は、所定長さで延びる軸部68と、その軸方向(長手方向)両端に設けられたフランジ部69,69とからなる(
図10参照)。なお、転動体としては、例えば、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。
【0014】
また、
図7に示すように、上記第1支軸80は、所定長さで延びる軸部81と、その軸方向(長手方向)両端に設けられたフランジ部83,83とを有している。更に
図10に示すように、上記第2支軸90は、所定長さで延びる軸部91と、その軸方向両端に設けられたフランジ部93,93とを有している。なお、第2支軸90の軸部91の方が、第1支軸80の軸部81よりも長く形成されている。また、各支軸80,90の、一方のフランジ部83,93は、ディテント装置10の組付け前には形成されておらず(
図1参照)、所定の軸挿通孔に挿通後にカシメること等によって形成されるようになっている。更に
図10や
図11に示すように、第1支軸80と、第2支軸90とは、互いに直交するように配置されている(ディテント装置10を、側方や、背面方向、正面方向等のいずれの方向から見ても、両軸80,90の、軸心C1,C2が互いに直交している)。
【0015】
図10や
図11に示すように、上記プレート部材20は、自動車のトランスミッションのケース等の被取付部材1に固定され、ひいてはディテント装置10全体が被取付部材1に取付けられるようになっている。なお、被取付部材1の、プレート部材20との対向面側が、被取付面3をなしている。
【0016】
図1に示すように、この実施形態における付勢部材70は、線材を所定ピッチで巻回してなる(ここでは密巻)一対の巻回部71,71と、これらの一対の巻回部71,71どうしを連結し、且つ、巻回部71の半径方向外方に延びる連結部73とからなる、いわゆるダブルトーションバネとなっている。また、
図2に示すように、一対の巻回部71,71は、第2支軸90に挿通されるようになっており、この実施形態の場合、軸方向の両端部に装着される。更に、連結部73は、アーム部55を押圧する部分となっている。また、連結部73は、一方の巻回部71の軸方向一端から径方向外方に延出した延出部73aと、他方の巻回部71の軸方向他端から径方向外方に延出した延出部73aと、両延出部73a,73aの延出方向先端どうしを連結する押圧部73bとからなり、略コ字状をなしている。なお、
図1に示すように、各巻回部71の、連結部73の延出部73аとは反対側の端部からは、係止部71аが延出しており、
図9に示すように、この係止部71аが、ベース部材40の側壁43の一側部に係止するようになっている。
【0017】
更に、
図7に示すように、上記ベース部材40には、自動車のオートマチックトランスミッション(以下、単に「AT」ともいう)の図示しないシフトレバーによって、操作ワイヤー等を介して操作される操作部材5が連結されている。そして、シフトレバーを、「R」、「N」、「D」等の各作動モードに移動させることで、操作部材5を介して回動ブラケット50が回動するようになっている。なお、このディテント装置は、自動車のAT以外の箇所に適用してもよく、適用箇所は特に限定されない。
【0018】
まず、
図3や
図4等を参照して、プレート部材20の具体的な構造について説明する。
【0019】
この実施形態のプレート部材20は、所定方向に長く延びる略長板状をなした基板21と、該基板21の長手方向L(延出方向に沿った方向)の中央であって幅方向W(長手方向Lに直交する方向)の一側部から、基板21に対して直交して延びる延出板23とを有しており、全体として略T字状をなした所定厚さの板状(プレート状)を呈している。なお、上記の長手方向Lや幅方向Wは、下記の隆起部27や、ベース部材40等においても同様の意味である。また、基板21の四隅は、丸みを帯びたR状をなしている。
【0020】
前記基板21の長手方向Lの両側部からは、固定板25がそれぞれ延出している。また、各固定板25には、丸孔状をなした固定孔25aがそれぞれ形成されている。そして、
図10,11に示すように、被取付部材1に螺着される図示しないボルトやネジが、各固定孔25aに挿通されることで、一対の固定板25,25を介して、被取付部材1の被取付面3上に、プレート部材20が固定されるようになっている。
【0021】
また、前記延出板23の延出方向先端側には、第1支軸80の軸部81が挿通される、丸孔状をなした第1支軸挿通孔23aが形成されている。なお、第1支軸挿通孔23aは、第1支軸80のフランジ部83の外径よりも小さい内径で形成されている。
【0022】
更に、前記基板21の外周縁部よりも内側部分には、傾斜部27aを介して被取付部材1の被取付面3から離れるように浮き上がって隆起した形状をなした、隆起部27が設けられている。この隆起部27は、基板21よりも小さい相似形状であって、プレート部材20の長手方向に延びる略長板状をなし、且つ、その四隅がR状を呈した形状となっている。また、隆起部27の、被取付面3とは反対側の厚さ方向一端面を、「表面28」とし、同隆起部27の、被取付面3側に向く厚さ方向他端面を、「裏面29」とする。この隆起部27の表面28は平坦面状をなしており、同表面28は、基板21や延出板23の表面に対して平行となっている(
図10,11参照)。なお、上記隆起部27の平坦面状の表面28の領域が、本発明における「プレート部材の表面の、孔が形成された領域」をなしており、被取付部材1の被取付面3から離間している。その結果、下記の孔31,32,33に嵌合した転動体60が、被取付面3に対して接触しないように構成されている(
図10,11参照)。
【0023】
そして、プレート部材20の表面28(ここでは隆起部27の表面28)には、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転するときに、転動体60が嵌合する、複数の孔31,32,33が形成されている(
図4参照)。この実施形態では、転動体60が、プレート部材20の面方向(プレート部材20の表面28に沿った方向を意味する)に対して直交する方向(直交方向)から見て所定角度で嵌合する(ここではローラである転動体60の基部63が嵌合する)、複数の孔31,32,33が形成されている(
図4参照)。これらの複数の孔31,32,33が、転動体60が嵌合する、嵌合部をなしている。
【0024】
図3や
図4に示すように、プレート部材20の基板21の隆起部27には、その長手方向Lの中央であって、幅方向Wの他側部(延出板23とは反対側の側部)寄りの位置に形成された孔31と、隆起部27の長手方向Lの一端部寄りで、且つ、幅方向Wの一側部(延出板23側の側部)寄りの位置に形成された孔32と、隆起部27の長手方向Lの他端部寄りで、且つ、幅方向Wの一側部寄りの位置に形成された孔33との、3個の孔31,32,33が設けられている。言い換えると、隆起部27には、隆起部27に設けた孔31を挟んで、隆起部27の長手方向Lの両両端部寄りの位置に、孔32,33が形成されている。
【0025】
また、この実施形態における複数の孔31,32,33は、いずれもプレート部材20の隆起部27の表面28を含むように形成されていると共に、同表面28から裏面29に向けて、隆起部27を厚さ方向に貫通して設けられたものとなっている(
図10参照)。なお、孔としては、プレート部材の表面を含むように、表面から裏面に向けて、プレート部材の厚さ方向の途中にまで、所定深さで凹んで形成された有底凹状をなしていてもよい。すなわち、本発明における「孔」とは、少なくとも、プレート部材の厚さ方向の表面を含むように同表面を貫通して、プレート部材の厚さ方向に所定深さで形成されたものであり、表面から裏面に至るまでプレート部材の厚さ方向に貫通していてもよく、表面から裏面に向けてプレート部材の厚さ方向途中までの所定深さの凹状をなしていてもよい。
【0026】
また、隆起部27に複数の孔31,32,33を形成したことで、孔31,32,33に、転動体60の基部63が嵌合した状態で、転動体60の基部63の外周面は、被取付部材1の被取付面3に対して接触しないようになっている(
図10,11参照)。
【0027】
上記の各孔31,32,33は、
図4に示すように、プレート部材20の面方向に直交する方向から見て、ローラである転動体60が適合する(ここでは転動体60の基部63)が適合する矩形状、この実施形態では長方形状をなしている。
【0028】
より具体的には、孔31は、その長手方向が、隆起部27の長手方向Lに対して平行に延びる長方形状となっている。また、孔32は、その長手方向が、隆起部27の長手方向Lに対して所定角度θ1で傾斜して延びる長方形状となっている。更に、孔33は、その長手方向が、隆起部27の長手方向Lに対して所定角度θ2で傾斜して延びる長方形状となっている。
【0029】
また、
図4には、第1支軸80の軸心C1と、この第1支軸80を介して回動する回動ブラケット50に支持される転動体60の転動軌跡Kとが示されているが、前記孔31,32,33は、転動体60の転動軌跡K上に形成されている。そして、転動体60は、回動ブラケット50の回動に伴って、隆起部27の表面28上を、前記転動軌跡Kに沿って、転がりながら移動して、孔31,32,33に順次嵌合するようになっている(これについては後で詳述する)。なお、各孔31,32,33は、転動体60の転動軌跡K上に形成されることが必要である。また、傾斜した孔32,33は、軸心C1を中心とした半径(転動軌跡K)に対する接線上に配置されているか、又は、接線に近い角度となるように配置されていることが好ましい。
【0030】
更に、孔31の長手方向両端に位置する内面31c,31cは、隆起部27の面方向に対して直交する垂直面状をなしている。また、孔31の内側縁部、ここでは、孔31の長手方向両端の内側縁部であって、上記一対の内面31c,31cに隣接した位置には、隆起部27の表面28から裏面29側に向けて、次第に孔31の開口面積を狭くさせる、テーパ面31a,31aが設けられている。これらのテーパ面31а,31aは、隆起部27の表面28から所定深さ落ち込んで孔31に嵌合した転動体60が、孔31から抜け出て隣接する孔32又は孔33へと移動しようとするときに、孔31から抜け出やすくするためのものである。
【0031】
また、孔32,33の長手方向一端側(孔31に近接する側)に位置する内面32c,33cは、隆起部27の面方向に対して直交する垂直面状をなしている。また、各孔32,33の内側縁部、ここでは、各孔32,33の長手方向一端の内側縁部であって、上記各内面32c,33cに隣接した位置に、隆起部27の表面28から裏面29側に向けて、次第に孔32,33の開口面積を狭くさせる、テーパ面32a,33aが設けられている。これらのテーパ面32a,33aによって、孔32,33に嵌合した転動体60が、孔31側へと移動する際に抜け出やすくなる。
【0032】
更に、孔32,33の長手方向他端側(孔31から離反する側)に位置する内面は、隆起部27の面方向に対して直交する垂直面状のストッパ面32b,33bをなしている。上記ストッパ面32bによって、孔32に嵌合した転動体60が、孔32を超えた位置へ移動することを規制し(孔31から離反する方向への移動を規制)、上記ストッパ面33bによって、孔33に嵌合した転動体60が、孔33を超えた位置へ移動することを規制する(孔31から離反する方向への移動を規制する)。
【0033】
以上説明したプレート部材は、例えば、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。また、プレート部材を構成する各部分(基板、延出板、固定板、隆起部等)は全て一体形成されている。
【0034】
次に、
図5を参照して、プレート部材20の表面に載置されたベース部材40の具体的な構造について説明する。
【0035】
この実施形態のベース部材40は、略長板状をなした底壁41と、該底壁41の長手方向Lの両端縁から互いに平行に立設した一対の側壁43,43とを有し、全体として略コ字枠状をなしている。底壁41の長手方向Lの中央部には、第1支軸80の軸部81が挿通される、丸孔状をなした第1支軸挿通孔41aが形成されている。また、底壁41は、前記プレート部材20の延出板23の表面上に載置され、第1支軸80を介して回動可能に支持されるようなっている。更に、各側壁43には、第2支軸90の軸部91が挿通される、丸孔状をなした第2支軸挿通孔43aがそれぞれ形成されている。なお、第2支軸挿通孔43aは、第2支軸90のフランジ部93の外径よりも小さい内径で形成されている。
【0036】
更に、底壁41の長手方向Lの中央であって、長手方向Lに直交する幅方向Wの一側部から、底壁41に対して直交するように、延出部45が延出している。
図7に示すように、この延出部45に、ATのシフトレバーにより操作ワイヤー等を介して操作される、操作部材5が連結されるようになっている。
【0037】
以上説明したベース部材は、例えば、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。また、ベース部材を構成する各部分(底壁、側壁、延出部等)は全て一体形成されている。
【0038】
次に、
図6А,6B等を参照して、回動ブラケット50や転動体60の、具体的な構造について説明する。
【0039】
この実施形態における回動ブラケット50は、一方向に所定長さで延びる略長板状をなした基部51と、該基部51の長手方向に直交する幅方向の両側縁部から互いに平行に立設した一対の側部53,53と、前記基部51の長手方向の一側縁部から延出したアーム部55と、アーム部55の先端部57に回転可能に支持された転動体60とを有している。
【0040】
前記基部51には、第1支軸80の軸部81が挿通される、第1支軸挿通孔51aが形成されている。
図6Bに示すように、この第1支軸挿通孔51аは、回動ブラケット50の、ベース部材40に対する回動を妨げず、且つ、回動ブラケット50の、ベース部材40に対する回動(
図10,13に示される、回動ブラケット50がベース部材40に対して近接離反するような回動)を許容する長孔となっている。具体的には、この実施形態の第1支軸挿通孔51aは、基部51の長手方向に沿って所定長さで延び、長手方向両端が円弧状をなした長孔となっている。また、長孔状をなした第1支軸挿通孔51аは、第1支軸80の軸部81の外径に適合し且つそのフランジ部83の外径よりも小さい幅で形成されていると共に、その長手方向の寸法は、軸部81の外径よりも大きく形成されている。
【0041】
そして、ベース部材40に対して回動ブラケット50が近接離反方向に回動(以下の説明では、上下方向への回動ともいう)しようとする際に、
図13に示すように、第1支軸80の軸部81を介して、回動ブラケット50が、ベース部材40に対して離反する方向に回動可能となり(第1支軸挿通孔51аの内径が、第1支軸80の軸部81の外径に適合する寸法だと、上記の回動ブラケット50の上方回動時に、第1支軸挿通孔51аの内周が軸部81の外周に干渉して、上方回動が不能となる)、また、
図13に示す状態から、第1支軸80の軸部81を介して、回動ブラケット50が、ベース部材40に対して近接する方向に回動可能となる。
【0042】
また、各側部53には、第2支軸90の軸部91が挿通される、丸孔状をなした第2支軸挿通孔53aがそれぞれ形成されている。
【0043】
そして、
図2,7,9等に示すように、第2支軸90の軸部91が、回動ブラケット50の一対の第2支軸挿通孔53a,53a、付勢部材70の一対の巻回部71,71、ベース部材40の一対の第2支軸挿通孔43a,43aにそれぞれ挿通されることで、ベース部材40に対して近接離反するように(
図10の矢印R3参照)、ベース部材40に対して回動ブラケット50が上下方向に回動可能に装着されるようになっている。
【0044】
更に
図10に示すように、第1支軸80の軸部81が、プレート部材20の第1支軸挿通孔23a、ベース部材40の第1支軸挿通孔41a、回動ブラケット50の第1支軸挿通孔51aにそれぞれ挿通されることで、第1支軸80を介して、プレート部材20及びベース部材40が互いに相対回転可能に支持されるようになっている(
図7の矢印R1,R2参照)。また、回動ブラケット50は、ベース部材40に第2支軸90を介して装着されているため、プレート部材20に対してベース部材40が第1支軸80を介して回動するときに、ベース部材40と共に回動ブラケット50も回動するようになっている。すなわち、回動ブラケット50は、
図7の矢印R1,R2に示すように、第1支軸80を介して、被取付部材1の被取付面3の面方向に沿って、ベース部材40と一緒に回動すると共に、
図10の矢印R3に示すように、第2支軸90を介して、ベース部材40に対して近接離反するように回動するようになっている(
図10,13参照)。
【0045】
また、
図10や
図13に示すように、第1支軸80の一方のフランジ部83が、プレート部材20の第1支軸挿通孔23aの裏側周縁に係合し、第1支軸80の他方のフランジ部83が、回動ブラケット50の第1支軸挿通孔51aの上方に位置するようになっている。その結果、第1支軸80によって、プレート部材20の延出板23、ベース部材40の底壁41、回動ブラケット50の基部51が抜け止め保持されるようになっている。また、回動ブラケット50が、ベース部材40に対して過度に上方に回動した場合、すなわち、
図13に示す状態よりも、更に回動ブラケット50が上方に回動すると、第1支軸80の他方のフランジ部83が、第1支軸挿通孔51аの表側周縁に係合するため、回動ブラケット50の過度の回動が規制されるようになっている。
【0046】
更に、
図7,9等に示すように、回動ブラケット50の一対の第2支軸挿通孔53a,53a、付勢部材70の一対の巻回部71,71、ベース部材40の一対の第2支軸挿通孔43a,43aにそれぞれ挿通された第2支軸90の、一方のフランジ部93が、回動ブラケット50の第2支軸挿通孔53aの表側周縁に係合し、他方のフランジ部93が、回動ブラケット50の第2支軸挿通孔53aの表側周縁に係合することで、ベース部材40から、回動ブラケット50や付勢部材70が外れないように保持される。
【0047】
また、
図6Aや
図10に示すように、上記アーム部55は、基部51に対して平行に配置され所定長さで延出していると共に、その延出方向の基端部56は、基部51に対して平行に延びる部分に対して直角に屈曲した形状をなしており、この基端部56が基部51の長手方向の一側縁部に連結されている。更に、アーム部55の延出方向の先端部57及び基端部56の間には、長孔状をなした切欠き58aが形成されており、この切欠き58aを介して、転動体支持片58がベース部材40側に向けて切り起こされて形成されている。また、アーム部55の先端部57の最先端からは、前記転動体支持片58に対して平行となるように、転動体支持片59がベース部材40側に向けて屈曲形成されている。更に、転動体支持片58,59には、それぞれ丸孔状をなした支持孔58a,59aが形成されている(
図10参照)。なお、アーム部55の先端部57は、付勢部材70からの付勢力を受け止める部分となっている。
【0048】
そして、一対の転動体支持片58,59の間に、ローラである転動体60が配置されて、一対の支持孔58a,59a及び転動体60の軸挿通孔61に、転動体支軸67の軸部68が挿通されて、一対の支持孔58a,59aの表側周縁に、転動体支軸67のフランジ部69,69が配置されることで、アーム部55の先端部57に、転動体支軸67を介して、転動体60が回転可能に支持されるようになっている。なお、転動体60の基部63は、アーム部55の一対の転動体支持片58,58の先端から突出している。
【0049】
また、
図2に示すように、ディテント装置10を構成するプレート部材20、ベース部材40、転動体60を回転支持した回動ブラケット50、付勢部材70、各部材が組付けられた状態では、ベース部材40の一方の側壁43と回動ブラケット50の一方の側部53との間に、付勢部材70の一方の巻回部71が配置され、且つ、ベース部材40の他方の側壁43と回動ブラケット50の他方の側部53との間に、付勢部材70の他方の巻回部71が配置されると共に、付勢部材70の連結部73の押圧部73bが、アーム部55の先端部57の表面上に載置される。その結果、付勢部材70による付勢力が、連結部73の押圧部73bを介して、アーム部55の表面から作用し、
図10,11の矢印Fに示すように、転動体60が、プレート部材20の隆起部27の表面28に向けて押し付けられるようになっている。
【0050】
そして、転動体60は、回動ブラケット50の回動に伴って、以下のように、隆起部27の表面28上を転がりながら移動して、孔31,32,33に順次嵌合する。この場合、転動体60は、常時はプレート部材20の所定の孔に嵌合している。ここでは
図11に示すように、転動体60が、プレート部材20の孔31に嵌合した状態から、孔32,33へと移動する場合について説明する。
【0051】
なお、本発明において、転動体が孔に嵌合するとは、転動体が孔に入り込んで(嵌まり込んで)、回動ブラケットの回動動作が規制されることを意味しており、転動体の外周と孔の内周との間に隙間があってもよい。
【0052】
この場合、
図11に示すように、アーム部55を介して付勢部材70によって、プレート部材20の表面28から裏面29に向けて押し付けられた転動体60は、その基部63が、隆起部27の表面28から孔31内へと落ち込んで入り込み、同基部63の外周面が、孔31の両テーパ面31a,31aに当接した状態で嵌合している。
【0053】
この状態から、ベース部材40の延出部45に連結された操作部材5を介して、プレート部材20に対してベース部材40が、
図7の矢印R1方向に回動すると、転動体60の基部63が、付勢部材70の押し付け力に抗して、孔31の一方のテーパ面31aを介して孔31から抜け出て、隆起部27の表面28上に乗り上がり、隆起部27の表面28上を、転動体60の転動軌跡Kに沿って転がりながら移動していく(
図12,13参照)。具体的に言うと、転動体60は、隆起部27の長手方向Lの一端部側に向けて、且つ、幅方向Wの一側部に向けて近接するように、転がりながら移動する。
【0054】
なお、孔31から隆起部27の表面28上に乗り上がった転動体60は、付勢部材70の押し付け力によって、その基部63の外周面がプレート部材20の表面28に押し付けられているので、隆起部27の表面28から転動体60が浮き上がることはない。
【0055】
また、隆起部27の表面28から孔31に嵌合した転動体60が、孔31から抜け出て隆起部27の表面28上に乗り上がる際には、転動体60は、隆起部27の板厚の分だけ上方に移動する一方、隆起部27の表面28から孔31に嵌合する際に、下方に移動するようになっている。すなわち、転動体60は、孔31から抜け出て、隆起部27の表面28上に乗り上がるときに、上方に移動すると共に、隆起部27の表面28から孔31に嵌合するときに、下方に移動するようになっている。このディテント装置10においては、
図10の矢印R3に示すように、ベース部材40の底壁41に対して、回動ブラケット50の基部51から近接離反するように、第2支軸90を介して、ベース部材40に対して回動ブラケット50が上下方向に回動する構成となっているので、回動ブラケット50のアーム部55に回転可能に支持された転動体60の、孔31への落ち込みに伴う下方移動や、孔31から抜け出る際の上方移動が許容されることとなる。
【0056】
その後、転動体60が孔32に至ると、アーム部55を介して付勢部材70により押し付けられた転動体60の基部63が、隆起部27の表面28から孔32へと落ち込んで入り込み、同基部63の外周面が、テーパ面32a及びストッパ面32bに当接した状態で嵌合する(
図14参照)。
【0057】
一方、
図11に示す状態から、プレート部材20に対してベース部材40が、
図7の矢印R2方向に回動すると、転動体60の基部63が、付勢部材70の押し付け力に抗して、孔31の他方のテーパ面31aを介して孔31から抜け出て、隆起部27の表面28上に乗り上がり、隆起部27の表面28上を、転動体60の転動軌跡Kに沿って転がりながら移動していく。具体的に言うと、転動体60は、隆起部27の長手方向Lの他端側に向けて、且つ、幅方向Wの一側部に向けて近接するように、転がりながら移動する。その後、転動体60が孔33に至ると、アーム部55を介して付勢部材70により押し付けられた転動体60の基部63が、隆起部27の表面28から孔33に落ち込んで入り込み、同基部63の外周面が、テーパ面32a及びストッパ面32bに当接した状態で嵌合する(
図15参照)。
【0058】
以上説明した回動ブラケットは、例えば、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。また、回動ブラケットを構成する各部分(基部、側部、アーム部、転動体支持片等)は、転動体を除いて全て一体形成されている。
【0059】
(変形例)
以上説明した実施形態では、転動体60は一定外径で且つ一定厚さのローラとなっているが、転動体としては、例えば、厚さ方向中央が最も膨出し、厚さ方向両端面に向けて曲面を描きつつ次第に縮径するような、略太鼓状をなしたローラとしたり、軸挿通孔を形成した球状体としたりしてもよく、プレート部材の表面上を転がり移動可能で、複数の孔に順次嵌合可能であればよい。なお、本発明における「ローラ」とは、上記のように、プレート部材の表面上を転がり移動可能で、且つ、転動体支軸により自転可能に回転支持されたものを意味する。
【0060】
また、この実施形態における付勢部材70は、ダブルトーションバネとなっているが、付勢部材としては、例えば、巻回部が1個のトーションバネや3個以上の巻回部を有するトーションバネ(なお、巻回部は密巻でも疎巻でもよい)、或いは、板バネや、コイルバネ等であってもよく、アーム部を介して転動体をプレート部材の表面から裏面に向けて押し付け可能であればよい。
【0061】
更に、この実施形態では、プレート部材20が被取付部材1の被取付面3に取付けられて動かない状態とされ、このプレート部材20に対して、第1支軸80を介してベース部材40が回転可能に支持されているが、これとは逆に、ベース部材を、被取付部材の被取付面に取付けて動かない状態とし、ベース部材に対して、第1支軸を介してプレート部材が回転可能に支持される構造としてもよい。この場合には、プレート部材側に、АTにより操作される操作部材が連結されることとなる。
【0062】
更に、この実施形態におけるプレート部材20は、長板状の基板21と延出板23とを有し、基板21側に複数の孔が設けられ、延出板23側に第1支軸挿通孔23аを設けられているが、プレート部材としては、例えば、四角形や楕円形等の板状体とし、この板状体に複数の孔や支軸挿通孔を形成してもよく、プレート部材の形状や構造は特に限定されない。
【0063】
また、この実施形態では、プレート部材20の基板21に設けた隆起部27の表面28の領域が、「プレート部材の表面の、孔が形成された領域」をなし、被取付面3から離間して、且つ、同表面28に形成された孔31,32,33に嵌合した転動体60が、被取付面3に接触しないように構成されているが、このような構造としては、例えば、(1)プレート部材に厚肉部分を設けて(隆起部はない形状)、その表面を被取付面から離間させると共に、表面に形成された孔に嵌合した転動体を被取付面に接触しないようにしたり、(2)プレート部材に厚肉部分を設けて(隆起部はない形状)、その表面を被取付面から離間させると共に、厚肉のベース部材の下面側から下向きに開口する凹部を設けて、表面に形成された孔に嵌合した転動体を被取付面に接触しないようにしたりしてもよく、特に限定はされない。
【0064】
また、この実施形態では、転動体60が嵌合する形状・構造として、複数の孔31,32,33を採用したが、転動体が嵌合する形状・構造としては、プレート部材の表面から所定深さで凹んで形成された凹部であってもよい。更に、この実施形態では、プレート部材20を構成する基板21の隆起部27に、3個の孔31,32,33を形成したが、孔や凹部としては、2個以上の複数であればよく、例えば、4個や5個以上であってもよく、ディテント装置による節度感を何回生じさせるかによって適宜選択できる。また、この実施形態における孔31は長方形状をなしているが、孔や凹部の形状としては、例えば、正方形や、円形状、楕円形状等であってよく、嵌合される転動体の形状に対応して適宜選択することができる。
【0065】
更に、この実施形態では、3つの孔31,32,33は、転動体60の転動軌跡K上に形成され、転動体60は、この転動軌跡Kに沿って転がり移動するが、転動体60の転がり移動をガイドするようなガイド溝を形成してもよい。例えば、隆起部27の表面28であって、孔31と孔32との間隙、及び、孔32と孔33との間隙に、隆起部27の表面28から所定深さで形成された凹溝を、転動体60の転動軌跡Kに沿って設けて、これを上記ガイド溝とすることができる。
【0066】
また、この実施形態におけるベース部材40は略コ字枠状をなしているが、ベース部材としては、プレート部材に第1支軸を介して回転可能に支持され、且つ、第2支軸を介して回動ブラケットを近接離反可能に支持できれば、その形状や構造は特に限定されない。
【0067】
更に、回動ブラケットとしては、少なくとも基部とアーム部と転動体とを有し、アーム部を介して付勢部材によりプレート部材の表面に向けて押し付けられることが可能であれば、その形状や構造は特に限定されない。
【0068】
また、この実施形態におけるアーム部55は、基部51の一側縁部から直角に立ち上がる、基端部56を介して、基部51と平行に延びるアーム状をなしているが、アーム部としては、例えば、基部の一側縁部から斜めに延出したアーム状であってもよく、付勢部材の押し付け荷重を受け止めることが可能で、且つ、転動体を回転支持可能な形状や構造であればよい。
【0069】
更に、この実施形態では、アーム部55の先端部57に、一対の転動体支持片58,59を設け、これらの一対の転動体支持片58,59及び転動体支軸67により、転動体60を両持ち状態で回転可能に支持しているが、転動体を回転支持する構造としては、例えば、転動体支持片を1個だけ設けて、この転動体支持片及び転動体支軸を介して転動体を片持ち支持したり、或いは、アーム部の先端部から転動体支軸を一体的に設けて、同転動体支軸により転動体を回転支持したりしてもよい。
【0070】
(作用効果)
次に、上記構成からなるディテント装置10の作用効果について説明する。
【0071】
図10及び
図11には、転動体60の基部63が、孔31に嵌合した状態が示されている。この状態では、付勢部材70の連結部73の押圧部73bによって、アーム部55の先端部57が押圧されて、アーム部55を介して転動体60がプレート部材20の表面28から裏面29に向けて押し付けられて、基部63が孔31に嵌合しているため、自動者走行時の振動や外力等によって、転動体60が孔31から抜け出ることはない。
【0072】
そして、自動車のATが操作されて、操作部材5を介して、ベース部材40が
図7のR1方向やR2方向に回動すると、転動体60の基部63が、付勢部材70の押し付け力に抗して、テーパ面31aを介して孔31から抜け出て、隆起部27の表面28上に乗り上がり、隆起部27の表面28上を転がりながら移動していく。その後、転動体60の基部63が孔32や孔33に至ると、基部63が、隆起部27の表面28から落ち込んで孔32や孔33に入り込んで嵌合するので(
図14及び
図15参照)、その際に、節度感を得ることができる。
【0073】
そして、このディテント装置10においては、上記の特許文献1(特開平7-4283号公報)のように、マニュアルプレートの外周縁部に、複数の凹凸を形成する場合に比べて、板状をなしたプレート部材20の表面28に、転動体60が嵌合する複数の孔31,32,33が形成されているので、転動体60が嵌合する嵌合部を、容易に形成することができる。
【0074】
すなわち、このディテント装置10においては、プレート部材20の表面28に複数の孔31,32,33を形成するようにしたので、プレート部材20の外周形状や隆起部27等を形成すべく、板材に打ち抜き加工等を施す際に、その加工と同時に、複数の孔31,32,33や、複数の凹部を形成することができるため、転動体60が嵌合する嵌合部をなす複数の孔31,32,33を、容易に形成することができる。
【0075】
また、この実施形態においては、転動体60はローラとなっており、プレート部材20に形成された孔31,32,33は、ローラである転動体60に適合する矩形状をなしている。
【0076】
上記態様によれば、転動体60がローラとなっているので、転動体60を作りやすい。また、プレート部材20に形成された孔31,32,33、ローラである転動体60が適合する矩形状をなしているので(ここでは転動体60の基部63が適合する長方形状をなしている)、転動体60を、孔31,32,33にガタツキを抑制しながら、しっかりと嵌合させることができ、転動体60を所定の嵌合位置に確実に保持することができる。
【0077】
更に、この実施形態においては、付勢部材70は、第2支軸90が挿通される一対の巻回部71,71と、これらの一対の巻回部71,71どうしを連結し、且つ、巻回部71の半径方向外方に延びて、アーム部55を押圧する連結部73とからなる、ダブルトーションバネとなっている。
【0078】
上記態様によれば、付勢部材70はダブルトーションバネとなっているので、付勢部材70による、回動ブラケット50のアーム部55に対する付勢力を増大させて、転動体60の、プレート部材20の表面28から裏面29側に向く押し付け力を高めることができ、転動体60が孔又は凹部に嵌合する際の、節度感をより高めることができる。
【0079】
なお、従来の板バネからなるディテントスプリングにおいて、弾性力を高めようとする場合には、板厚等を大きくすることが考えられるが、この場合、設置スペースが大きくなる等の観点から、板厚を増大させることについては限界があり、高荷重化に対応しにくい。これに対して、このディテント装置10においては、上述したように、付勢部材70としてダブルトーションバネを採用し、このバネ荷重によって、アーム部55を介して、転動体60をプレート部材20の表面28側に押し付ける構造としたので、高荷重化に対応でき、それによって、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に利用した場合に、シフトレバーの操作荷重を高めて、操作者が感じる節度感を高めることができる。
【0080】
また、この実施形態においては、プレート部材20は被取付面3に固定されており、プレート部材20の表面28の、孔31,32,33が形成された領域は、被取付面3から離間しており、孔31,32,33に嵌合した転動体60が、被取付面3に対して接触しないように構成されている(
図10,11参照)。
【0081】
上記態様によれば、プレート部材20を被取付面3に対して固定した状態で、プレート部材20の表面28の孔31,32,33に、転動体60が嵌合したときに、転動体60が被取付面3に干渉することを防止することができ、節度感をより高めることができる。なお、孔31,32,33への転動体60の嵌合時に、転動体60が被取付面3に接触すると、転動体60が孔31,32,33に完全に落ち込んで嵌合した状態とならず、やや浮いた状態で嵌合するので、節度感が減ることになる。
【0082】
ところで、このディテント装置10おいては、第1支軸80を介して、プレート部材20及びベース部材40が相対回転して、
図13に示すように、転動体60が所定の孔又は凹部から抜け出る際に、回動ブラケット50の基部51がベース部材40に対して回動し、それに伴って、回動ブラケット50は、ベース部材40に対してスライド移動するようになっている。
【0083】
このとき、この実施形態においては、回動ブラケット50の基部51には、第1支軸80が挿通される第1支軸挿通孔51аが形成されており、この第1支軸挿通孔51аは、回動ブラケット50の、ベース部材40に対する回動を妨げず、且つ、回動ブラケット50の、ベース部材40に対する回動を許容する長孔となっている(
図6B参照)。そのため、回動ブラケット50の、ベース部材40に対する近接離反方向の回動構造を、簡単な構造で設けることができる。
【0084】
(ディテント装置の、他の実施形態)
図16~22には、本発明に係るディテント装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0085】
この実施形態のディテント装置10Aは、主として、転動体60Aの形状が、前記実施形態と異なっている。
【0086】
図16に示すように、この実施形態における転動体60Aは三角形状をなしている。また、
図20に示すように、転動体60Aは、その軸方向から見て(ここでは転動体60Aの回転中心である軸心C3を横断面で見たとき)、複数の孔31,32,33に嵌合する複数の突出部分(突出部分64a,64b,64c)を有しており、隣接する突出部分どうしの外郭形状が、直線をなしている。
【0087】
すなわち、転動体60Aは、転動体支軸67の軸部68に回転支持される、所定厚さの板状をなした基部63Aを有しており、この基部63Aの外周から、略三角突起状をなした突出部分が、周方向に均等な間隔を空けて複数突設している。ここでは、基部63Aの周囲に、3個の突出部分64a,64b,64cが設けられている。なお、突出部分の個数は、プレート部材20に形成した孔の個数(ここでは孔31,32,33の、3個の孔)に対応した個数となっている。また、各突出部分64a,64b,63cの頂部は、円弧状に丸みを帯びた形状となっている。
【0088】
更に、隣接して配置された突出部分どうし、すなわち、(1)突出部分64a,64bどうし、(2)突出部分64b,64cどうし、(3)突出分64c,64aどうしが、直線状をなした外郭66によって互いに連結されており、転動体60Aは全体として、3個の頂部が丸みを帯びた三角形状をなしている。なお、転動体60Aは、前記実施形態における転動体60と同様に、転動体支軸67により自転可能に回転支持されたローラとなっている。
【0089】
また、
図19に示すように、転動体60Aの外周62は、回動ブラケット50の基部51側(
図17参照)に向けて次第に縮径する形状をなしている。
【0090】
すなわち、三角板状をなした転動体60Aの外周62(転動体60Aの軸方向に直交する厚さ方向の外周面)は、
図19Aに示すように転動体60Aを側方から見たとき、転動体60Aの表側62a(回動ブラケット50の基部51とは反対側)から裏側62b(回動ブラケット50の基部51側)に向けて次第に縮径する形状をなすと共に、
図19Bに示すように転動体60Bを軸方向から見たときにも、転動体60Aの表側62aから裏側62bに向けて縮径する形状をなしている。
【0091】
また、転動体は、
図21や
図22に示すような形状であってもよい。
【0092】
図21や
図22に示す転動体60Bは、転動体支軸67の軸部68に回転支持される、所定厚さの板状をなした基部63Bを有しており、この基部63Bの外周から、略三角突起状をなした突出部分が、周方向に均等な間隔を空けて複数突設している。ここでは、基部63Bの周囲に、3個の突出部分64d,64e,64fが設けられている。また、隣接して配置された突出部分どうし、すなわち、(1)突出部分64d,64eどうし、(2)突出部分64e,64fどうし、(3)突出分64f,64dどうしが、凸曲線状をなした外郭66B(基部63Bの径方向外方に向けて凸状に突出する曲線状をなした外郭66B)によって互いに連結されており、転動体60Bは全体として、略円形板状をなした外周面から3個の三角突起が突出したような形状となっている。なお、この転動体60Bを備えるディテント装置を、ディテント装置10Bとする。また、この転動体60Bも、転動体60Aと同様に、その外周62が回動ブラケット50の基部51側に向けて次第に縮径する形状をなしている。
【0093】
なお、転動体としては、上記のような形状のみならず、例えば、軸方向から見て、略4角形状や(菱形を含む)、略5角形状、略6角形状、それ以上の角を有する多角形状としたり(但し、プレート部材に形成した孔の個数に対応することが好ましい。また、これらの場合、外郭形状は直線となる)、長軸及び短軸を有する形状(略楕円形状や、略小判形状、ラグビーボール形状等)としたりしてもよい(この場合、外郭形状は凸曲線となる)。
【0094】
そして、上記の実施形態では、転動体60A,60Bの、所定の突出部分64а~64fが所定の孔31,32,33に嵌合した状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転したとき、所定の突出部分に隣接する他の突出部分が、所定の孔に隣接する他の孔に嵌合するように構成されている。なお、この構成については、後で詳述する。
【0095】
また、この実施形態における孔31,32,33は、ローラである転動体60A,60Bの回動軌跡上に形成されるものであって、前記第1実施形態と同様に、各孔31,32,33のそれぞれが、長方形状をなしている。
【0096】
更に、孔31の長手方向両端に位置する内面31c,31cに隣接した位置、すなわち、孔31の長手方向両端の内側縁部には、テーパ面31a,31aがそれぞれ設けられていると共に、これらのテーパ面31a,31aの、プレート部材20の表面28側の上端部には、R状をなしたR状部31d,31dが形成されている。
【0097】
また、孔32,33の長手方向一端(孔31に近接する側)に位置する内面32c,33cに隣接した位置、すなわち、孔32,33の長手方向一端の内側縁部には、テーパ面32a,33aがそれぞれ設けられていると共に、各テーパ面32a,33aの、プレート部材20の表面28側の上端部には、R状をなしたR状部32d,33dが形成されている。
【0098】
また、上記の、孔31,32,33の内側縁部に設けたテーパ面31a,32a,33aは、転動体60A,60Bが孔31,32,33に嵌合した状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転したとき、転動体60A,60Bをプレート部材20の表面28上に乗り上げさせるものとなっている。なお、この構成については、後で詳述する。
【0099】
更に
図16及び
図18に示すように、この実施形態では、プレート部材20の表面28における、孔31と孔32との間の中間部分28аの幅、及び、孔31と孔33との間の中間部分28аの幅が、
図1~15に示す実施形態の、プレート部材20の表面28における、孔31と孔32との中間部分28аの幅、及び、孔31と孔33との中間部分28аの幅(
図3,4,8参照)よりも小さくなるように、複数の孔31,32,33が配置されている。なお、上記の中間部分28аを、以下の説明では、単に「プレート表面中間部分28а」ともいう。
【0100】
図20を併せて参照すると、転動体60Aの所定の突出部分64аが所定の孔31に嵌合した状態から、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転すると(ここでは
図17の矢印R2方向への回転)、転動体60Aが所定の孔31の内側縁部に当接して、該当接部分(ここでは孔31の、孔33寄りの内側縁部であって、プレート表面中間部分28аに至る部分)を支点として転動体60Aが更に転がるようになるが、この回転支点から、所定の突出部分64аに隣接する他の突出部分64bの先端までの最長距離をL3としたとき(転動体60A´参照)、このL3は、プレート表面中間部分28аの幅Hよりも大きくなるように設定されている。また、転動体60Aにおける上記の最長距離L3は、上記のプレート表面中間部分28аの幅Hと、これに隣接する孔の長さ(ここでは孔33)との合計よりも小さくなるように設定されている。
【0101】
また、
図21に示すように、転動体60Bの所定の突出部分64dが所定の孔31に嵌合した状態から(転動体60B´参照)、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転すると(ここでは
図17の矢印R2方向への回転)、転動体60Bが所定の孔31の内側縁部に当接して、該当接部分(ここでは孔31の、孔33寄りの内側縁部であって、プレート表面中間部分28аに至る部分)を支点として転動体60Bが更に転がるようになるが、この回転支点から、所定の突出部分64dに隣接する他の突出部分64eの先端までの最長距離をL3としたとき(転動体60B参照)、このL3は、プレート表面中間部分28аの幅Hよりも大きくなるように設定されている。また、転動体60Bにおける上記の最長距離L3は、上記のプレート表面中間部分28аの幅Hと、これに隣接する孔の長さ(ここでは孔33)との合計よりも小さくなるように設定されている。
【0102】
次に、上記の段落0094及び段落0098で説明した構成について詳述する。
【0103】
図20には、転動体60の突出部分64aが、孔31に嵌合した状態が示されている。なお、突出部分64aは、長方形状をなした孔31の長手方向両端に位置する内面31c,31cに対して隙間がある状態で嵌合している。
【0104】
この状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転、ここでは
図17の矢印R2方向に、プレート部材20に対してベース部材40が回動すると、突出部分64aと突出部分64bとの間の外郭66が、孔31のテーパ面31aに当接する(
図20の転動体60A´参照)。すると、孔31のテーパ面31aによって、突出部分64aと突出部分64bとの間の外郭66が押し上げられて、当該外郭66が、プレート部材20の表面28における、孔31と孔33との間の中間部分28а上に乗り上がる(
図20の転動体60A´´参照)。更にプレート部材20に対してベース部材40が回動すると、突出部分64aに隣接する突出部分64bが、孔31に隣接する孔33に入り込んで嵌合する(
図20の転動体60A´´´参照)。
【0105】
なお、
図17の矢印R1方向に、プレート部材20に対してベース部材40が回動しても、上記と同様の動作をなす(この場合、突出部分64aに隣接する突出部分64cが、孔31に隣接する孔32に嵌合する)。
【0106】
また、
図21,22には、転動体60Bの動作が二点鎖線で併記されている。
【0107】
図21の二点鎖線で示すように、転動体60Bの突出部分64dが、孔31に嵌合した状態で(
図21の転動体60B´参照)、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転、ここでは
図17の矢印R2方向に、プレート部材20に対してベース部材40が回動すると、突出部分64dと突出部分64eとの間の外郭66Bが、孔31のテーパ面31aに当接して、同テーパ面31aによって外郭66Bが押し上げられて、当該外郭66が孔31のR状面31dに当接し(
図21参照)、その後、外郭66Bが、プレート部材20の表面28における、孔31と孔32との中間部分28а上に乗り上がる(
図22参照)。更にプレート部材20に対してベース部材40が回動すると、突出部分64dに隣接する突出部分64eが、孔31に隣接する孔33に入り込んで嵌合する(
図22の転動体60B´´参照)。
【0108】
(作用効果)
次に、上記構成からなるディテント装置10A,10Bの作用効果について説明する。
【0109】
すなわち、この実施形態における転動体60Aは、その軸方向から見て、複数の孔31,32,33に嵌合する複数の突出部分(突出部分64a,64b,64c)を有しており、隣接する突出部分どうしの外郭形状(外郭66の形状)が、直線をなしている(
図20参照)。また、この実施形態における転動体60Bは、その軸方向から見て、複数の孔31,32,33に嵌合する複数の突出部分(突出部分64d,64e,64f)を有しており、隣接する突出部分どうしの外郭形状(外郭66Bの形状)が、凸曲線をなしている(
図21,22参照)。そして、転動体60A,60Bの、所定の突出部分64а~64fが所定の孔31,32,33に嵌合した状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転したとき、所定の突出部分に隣接する他の突出部分が、所定の孔に隣接する他の孔に嵌合するように構成されている。
【0110】
そのため、プレート部材20の表面28上を、転がりながら移動する転動体60A,60Bが、プレート部材20の表面28における、孔31と孔32との間の中間部分28а又は孔31と孔33との間の中間部分28аで停止させにくくすることができる(中間停止させにくくすることができる)。
【0111】
すなわち、この実施形態においては、段落0100で説明したように、所定の突出部分64аが所定の孔31に嵌合した状態における転動体60Aの回転支点から、所定の突出部分64аに隣接する他の突出部分64bの先端までの最長距離L3が、プレート表面中間部分28аの幅Hよりも大きくなるように、且つ、プレート表面中間部分28аの幅Hと、これに隣接する孔の長さ(ここでは孔33)との合計よりも小さくなるように設定されている(
図20参照)。そのため、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転し、転動体60Aの外郭66がプレート表面中間部分28а上に乗り上がると、転動体60Aが上記回転支点で転がって、突出部分64аに隣接する突出部分64bが、孔31に隣接する孔33に確実に嵌合することになるので、転動体60Aをプレート表面中間部分28а上で中間停止させにくくすることができる。
【0112】
同様に、この実施形態では、段落0101で説明したように、所定の突出部分64dが所定の孔31に嵌合した状態における転動体60Bの回転支点から、所定の突出部分64dに隣接する他の突出部分64eの先端までの最長距離L3が、プレート表面中間部分28аの幅Hよりも大きくなるように、且つ、プレート表面中間部分28аの幅Hと、これに隣接する孔の長さ(ここでは孔33)との合計よりも小さくなるように設定されている(
図21参照)。そのため、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を1介して相対回転し、転動体60Bの外郭66Bがプレート表面中間部分28а上に乗り上がると、転動体60Bが上記回転支点で転がって、突出部分64dに隣接する突出部分64eが、孔31に隣接する孔33に確実に嵌合することになるので、転動体60Bをプレート表面中間部分28а上で中間停止させにくくすることができる。
【0113】
また、ディテント装置10Aを構成する転動体60Aは、三角形状をなしている(
図20参照)。
【0114】
この態様によれば、転動体60Aは三角形状をなしているので、三角形の頂部に位置する3個の突出部分64а,64b,64cが、複数の孔31,32,33に順次嵌合することになる。そのため、例えば、R、N、D等の3つのシフトポジションを有することが多い、EV車両などに適用しやすくなる。
【0115】
更に、この実施形態においては、複数の孔31,32,33の内側縁部には、転動体60A,60Bが孔31,32,33に嵌合した状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転したとき、転動体60A,60Bをプレート部材20の表面28上に乗り上げさせる、テーパ面31а,32а,33аが形成されている。
【0116】
上記態様によれば、転動体60A,60Bが孔31,32,33に嵌合した状態で、プレート部材20及びベース部材40が第1支軸80を介して相対回転したとき、孔31,32,33の内側縁部に形成されたテーパ面31а,32а,33аによって、所定孔に嵌合した転動体60A,60Bを、プレート部材20の表面28上に乗り上げやすくすることができる。また、プレート部材20の表面28における、孔31と孔32との中間部分28аや孔31と孔33との中間部分28аの幅を幅狭にすることができるので、所定の孔からプレート部材20の表面28上に乗り上がった転動体60A,60Bが、プレート部材20の表面28上を転がり移動する際に、転動体60A,60Bを、プレート表面中間部分28аで、より中間停止させにくくすることができる。
【0117】
また、この実施形態においては、転動体60A,60Bの外周62は、回動ブラケット50の基部51側に向けて次第に縮径する形状をなしている。
【0118】
上記態様によれば、転動体60A,60Bの外周62は、回動ブラケット50の基部51側に向けて次第に縮径する形状をなしているので、所定の孔31,32,33に嵌合した転動体60A,60Bが、その孔から、プレート部材20の表面28上に乗り上がりやすくなる。
【0119】
すなわち、転動体の外周が、上記のような縮径形状ではない場合、当該転動体は、その転がり移動時に、転動体外周の外径側と内径側とで、回動軌道に差が生じることになる。これに対して、この実施形態の転動体60A,60Bは、その外周62が上記のような傾斜形状をなしているので、転動体外周の外径側と内径側との回動軌道の差を生じにくくすることができる。それによって、転動体60A,60Bの外周62が孔31,32,33の内側縁部に片当たりしにくくなるので(偏って当たりにくくなる)、所定の孔31,32,33からプレート部材20の表面28上に乗り上がりやすくすることができる。その結果、転動体60A,60Bがプレート部材20の表面28上を転がり移動する際に、転動体60A,60Bを、プレート表面中間部分28аで、より中間停止させにくくすることができる。
【0120】
(ディテント装置の、更に他の実施形態)
図23及び
図24には、本発明に係るディテント装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0121】
この実施形態のディテント装置10Cは、付勢部材70の押し付け力を調整可能な構造となっている。すなわち、このディテント装置10Cは、回動ブラケット50のアーム部55の表面側には、該アーム部55の表面からの突出量を調整可能な調整部材100が設けられ、該調整部材100に付勢部材70が当接しており、付勢部材70からの押し付け力が、高さ調整部材100を介してアーム部55に付与され、該アーム部55を介して、転動体60がプレート部材20の表面28から裏面29に向けて押し付けられるように構成されている。
【0122】
より具体的に説明すると、回動ブラケット50のアーム部55の先端部57の所定箇所に、貫通孔57аが形成されており(
図24参照)、該貫通孔57аを介してその表面周縁から円筒状をなした筒状部57bが突設されている。また、貫通孔57а及び筒状部57bの内周には、ネジ溝57cが形成されている。
【0123】
一方、調整部材100は、上記の貫通孔57а及び筒状部57b内に挿入される軸部101と、該軸部101の一端に連結され、外周が六角形状をなした頭部103とからなる。また、軸部101の外周には、前記ネジ溝57cに螺合するネジ溝101аが形成されている。更に、頭部103は、アーム部55に設けた筒状部57bの先端面(図中、上端面)に、対向して配置されるようになっている。また、頭部103の表面上に、付勢部材70を構成する連結部73の押圧部73bが載置され、付勢部材70からの押し付け力が付与されるようになっている。
【0124】
そして、アーム部55側のネジ溝57cに対して、調整部材100を所定方向に回転させることで、筒状部57bの先端面に対する、調整部材100の頭部103の位置を変化させることができる。すなわち、調整部材100の、アーム部55の表面からの突出量を調整可能となる。
【0125】
この実施形態の場合、頭部103に付勢部材70の押圧部73bが載置されたままの状態で、頭部103の側方から、スパナやモンチーレンチ等の工具を差し込んで、同工具で頭部103を把持した後、頭部103を所定方向に適宜回転させることで、筒状部57bの先端面に対する、頭部103の位置を変化させることができる。
【0126】
なお、この実施形態における調整部材100は、ネジ溝101а,57cによる螺合構造によって、調整部材100の、アーム部55の表面からの突出量が調整可能となっているが、調整機構としては、例えば、カム溝やカム突部による調整機構、ラチェット溝や突起による調整機構等であってもよく、特に限定されない。
【0127】
更に、調整部材100の頭部103は、この実施形態の場合、その外周が六角形状をなしているが、例えば、円形状をなしていてもよい。また、頭部外周を円形状とした場合、その天井面に、付勢部材70の押圧部73bを挿入配置するための、直線状の挿入溝を設けることが好ましい。
【0128】
そして、このディテント装置10Cの場合、上記のように、回動ブラケット50のアーム部55の表面側には、該アーム部55の表面からの突出量を調整可能な調整部材100が設けられているので、調整部材100を適宜操作することで、調整部材100の頭部103の、アーム部55の表面からの突出量を調整することができる。その結果、アーム部55の表面と付勢部材70との距離を調整することができるので、付勢部材70からの押し付け力を微調整しやすくすることができる。
【0129】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1 被取付部材
3 被取付面
10,10A,10B,10C ディテント装置
20 プレート部材
21 基板
27 隆起部
28 表面
29 裏面
31,32,33 孔
31а,32а,33а テーパ面
40 ベース部材
50 回動ブラケット
51 基部
55 アーム部
57 先端部
60,60A,60B 転動体
70 付勢部材
71 巻回部
73 連結部
80 第1支軸
90 第2支軸
100 調整部材