(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088311
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ダイカスト金型、高温チャンバーシステム、金属をダイカストで鋳造するための方法、及びダイカスト金型の使用法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20230619BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B22D17/22 K
B22D17/20 M
B22D17/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022198614
(22)【出願日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】10 2021 132 870.5
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518289058
【氏名又は名称】フェッロファクタ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ハー イゴール キュジック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイカスト金型、高温チャンバーシステム、金属をダイカストで鋳造するための方法、及び金型部を生成するためのダイカスト金型の使用法を提供する。
【解決手段】動作中に高温になり、溶解用の出口点を伴う少なくとも1つのダイカストノズル(6)を備える第1の金型プレート(11)と、低温側を形成する第2の金型プレートとを備え、金型キャビティ(14)は、ダイカスト金型(10)が閉鎖状態であるとき、第1の金型プレートと第2の金型プレートとの間に形成され、金型キャビティでは、金型部は、少なくとも1つの溶解物チャネル(4)、少なくとも1つのダイカストノズル(6)、及び少なくとも1つのゲート(12)を介して、金型キャビティ(14)に導入された凝固溶解物から生成できる。ダイカスト金型(10)は、さらに、金型部をダイカスト金型(10)から離型するための離型システム(20)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト金型(10)であって、動作中に高温になり、溶解用の出口点(17)を伴う少なくとも1つのダイカストノズル(6)を有する第1の金型プレート(11)と、低温側を形成する第2の金型プレートとを備え、金型キャビティ(14)は、前記ダイカスト金型(10)が閉鎖状態であるとき、前記第1の金型プレート(11)と前記第2の金型プレートとの間に形成され、前記金型キャビティ(14)では、金型部(16)は、少なくとも1つの溶解物チャネル(4)及び前記少なくとも1つのダイカストノズル(6)を介して、前記金型キャビティ(14)に導入された凝固溶解物(8)から生成でき、前記ダイカスト金型(10)は、さらに、前記金型部(16)を前記ダイカスト金型(10)から離型するための離型システム(20)を備え、前記離型システム(20)は、エジェクタアセンブリ(28,30)、駆動デバイス(21)、及び前記駆動デバイス(21)ならびに前記エジェクタアセンブリ(28,30)に接続された力伝達デバイス(24)を備え、前記離型システム(20)は、前記少なくとも1つの溶解物チャネル(4)及び前記少なくとも1つのダイカストノズル(6)の領域の外側に配置され、前記第1の金型プレート(11)に配置するための温度抵抗を有することを特徴とする、ダイカスト金型(10)。
【請求項2】
前記駆動デバイス(21)は前記第1の金型プレート(11)で周辺に配置され、少なくとも2つの線形駆動部として構成され、前記少なくとも2つの線形駆動部は、前記少なくとも1つの溶解物チャネル(4)及び前記少なくとも1つのダイカストノズル(6)の前記領域の外側に配置される、請求項1に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項3】
前記線形駆動部は油圧式駆動部として構成され、前記油圧式駆動部のそれぞれは油圧シリンダー(22)を備える、請求項2に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの保護ガス出口(32)は、前記金型キャビティ(14)の中にある保護ガスを前記出口点(17)に向かって送達するために設けられている、先行請求項のいずれか1項に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの保護ガス出口(32)は前記エジェクタアセンブリ(28,30)に配置される、請求項4に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの保護ガス出口(32)が、押出中に前記第1の金型プレート(11)から出る領域内で、エジェクタ壁(31)に配置されることにより、押出中、前記保護ガス出口(32)は遮断解除される、請求項5に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項7】
エジェクタ装置は個別に作用するエジェクタピン(28)を備える、及び/または前記ダイカスト金型(6)の前記出口点(17)の周りに、円環形のエジェクタスリーブ(30)として構成される、先行請求項のいずれか1項に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項8】
前記離型システム(20)は、前記第1の金型プレート(11)の金型キャビティ側(15)を介してアクセス可能である、先行請求項のいずれか1項に記載のダイカスト金型(10)。
【請求項9】
高温チャンバー方式に従って、前記金属溶解物(8)をダイカストで鋳造するための高温チャンバーシステム(1)であって、前記溶解物(8)は、前記ダイカスト金型(10)の中で開放している前記ダイカストノズル(6)の出口点(17)において液体状態に維持され、前記高温チャンバーシステム(1)は鋳造ビッセル及び機械ノズル(2)を伴う高温チャンバーダイカスト機を備え、前記機械ノズル(2)を介して、前記溶解物(8)は、前記溶解物チャネル(4)を介して前記ダイカストノズル(6)に到達し、溶解流を遮断する前記凝固溶解物(8)のプラグは、前記ダイカストノズル(6)の出口点(17)に形成でき、前記ダイカスト金型(10)は、請求項1~8のいずれか1項に従って構成されることを特徴とする、高温チャンバーシステム(1)。
【請求項10】
溶解物として提供された金属をダイカストで鋳造するための方法であって、請求項1~8のいずれか1項に記載のダイカスト金型(10)において、
a.前記第1の金型プレート(11)及び前記第2の金型プレートを一緒に移動させ、前記金型キャビティ(14)を閉鎖(包囲)することによって、前記ダイカスト金型(10)を閉鎖するステップと、
b.ゲート側を形成し前記出口点(17)を有する前記第1の金型プレート(11)から、つまり、前記ダイカストノズル(6)の出口点(17)から、前記金型キャビティ(14)の中に前記溶解物(8)を導入するステップと、
c.前記溶解物(8)を冷却及び凝固し、前記金型部(16)を形成するステップと、
d.前記第2の金型プレートを前記第1の金型プレート(11)から持ち上げ、一側で前記金型部(16)を解放することによって、前記ダイカスト金型(10)を開放するステップと、
e.前記離型システム(20)をアクティブにするステップと、
f.前記離型システム(20)の力効果により、前記第1の金型プレート(11)における前記金型キャビティ(14)との接着接続を解放することによって、前記金型部(16)を押し出すステップと、
を行うことを特徴とする、方法。
【請求項11】
保護ガスは、前記金型部(16)の解放中、前記金型キャビティ(14)の中に流れる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保護ガスは、酸素の進入から、前記ダイカストノズル(6)の出口点(17)を保護する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記保護ガスは前記エジェクタアセンブリ(28,30)から流出する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
窒素は前記保護ガスとして使用される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
高温チャンバー方式に従って、前記金属溶解物(8)をダイカストで鋳造するために、ダイカスト金型(10)として構成された、請求項1~8のいずれか1項に記載のダイカスト金型(10)の使用法であって、前記溶解物(8)は、前記ダイカストノズル(6)の出口点(17)において液体状態に維持される、ダイカスト金型(10)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作中に高温になり、溶解用の出口点を伴う少なくとも1つのダイカストノズルを有する第1の金型プレートと、低温側を形成する第2の金型プレートとを備える、ダイカスト金型に関し、金型キャビティは、ダイカスト金型が閉鎖状態であるとき、第1の金型プレートと第2の金型プレートとの間に形成され、金型キャビティでは、金型部は、少なくとも1つの溶解物チャネル及び少なくとも1つのダイカストノズルを介して、金型キャビティに導入された凝固溶解物から生成でき、ダイカスト金型は、さらに、金型部をダイカスト金型から離型するための離型システムを備え、離型システムは、エジェクタアセンブリ、駆動デバイス、及び駆動デバイスならびにエジェクタアセンブリに接続された力伝達デバイスを備える。力伝達デバイスは、駆動力をエジェクタアセンブリに伝達する働きをする。
【0002】
本発明は、さらに、高温チャンバー方式に従って、金属溶解物をダイカストで鋳造するための高温チャンバーシステムに関し、溶解物は、ダイカスト金型の中で開放しているダイカストノズルの出口点において液体状態に維持され、高温チャンバーシステムは鋳造ビッセル及び機械ノズルを伴う高温チャンバーダイカスト機を備え、機械ノズルを介して、溶解物は、溶解物チャネルを介してダイカストノズルに到達し、溶解流を遮断する凝固溶解物のプラグは、ダイカストノズルの出口点に形成できる。本発明は、また、溶解物の形態で提供された金属をダイカストで鋳造するための方法と、ダイカスト金型の使用法とに関する。
【0003】
出口点は、鋳造プロセス中に溶解物が出るダイカストノズルの領域であり、1つ以上の金型部が取り付けされる湯口が形成される。湯口を用いないダイカストの場合、1つの金型部だけがダイカストノズルの前方に1回形成され、湯口は金型部のそばに位置し、分離されていない。したがって、高温金型プレートであるこのダイカスト金型の側は、ゲート側とも呼ばれる。
【背景技術】
【0004】
ダイカストで鋳造するために使用された先行技術に従った典型的な永久金型の部品は、以下のような
-プラテンと、
-第1の金型プレート、ゲート側と、
-第2の金型プレート、押出側(ゲート側の反対にある)であって、金型キャビティは、ダイカスト金型が閉鎖状態にあるとき、第1の金型プレートと第2の金型プレートとの間に形成される、第2の金型プレート、押出側と、
-エジェクタプレート用のスペーサバーと、
-エジェクタプランジャーを伴うエジェクタプレートと、
-プラテンと、
-孔を冷却するための接続部と、
-高温チャネルノズルまたは低温チャネルノズルと、
を含む。
【0005】
放電ユニットまたはエジェクタユニットとしても知られている離型システムを使用して、鋳造部を溶解チャネルから取り外す。離型システムは、本質的に、エジェクタ圧板ならびにエジェクタ保持プレート、及び一般的ないくつかの円形エジェクタから成り、大部分は、エジェクタピンまたはスリーブから成り、これらは、金型部の輪郭によって決まる。ここで、カラーによって、エジェクタ保持プレート上の適所に保持されるエジェクタは、金型部をダイカスト金型、すなわち、その金型キャビティから押し出すために、駆動デバイス、通常エジェクタボルト、及びエジェクタプレートによって前に押される。より複雑な金型部の輪郭のために、離型システムは、また、傾斜エジェクタ、曲線エジェクタ、またはフラットエジェクタ等のより高度な機能を含み得る。通常、離型システムは、リミットスイッチによって保護され、または、故障時にエジェクタパッケージが事前に後退していなかった場合、ツールが閉鎖されるとき、エジェクタパッケージを押し戻すボルトを元の状態に戻すことによって保護され、これは、プログラムシーケンスのエラー及び貴重な金型構成要素に対する関連の損傷を防止するために保護される。
【0006】
エジェクタ圧板は、常に、エジェクタ保持プレートよりも頑丈に設計される。この理由として、エジェクタ圧板は、力を伝達する働きをし、押出力を駆動デバイスから伝達し、従来、通常、ダイカスト金型の外側から駆動されたエジェクタロッドから、エジェクタに押出力を伝達するためである。
【0007】
多くの場合、ダイカスト金属構成要素が組み込まれる最終製品がハイエンドの外観を具現化する必要があるとき、ダイカスト金属構成要素を使用する。可視表面の目に見える仕上げ及び触覚に特に強調が置かれている。通常、そのような物品は、後で、様々な化学的表面処理によって仕上げられる。いくつかの電気めっきコーティング及びポリマーベースコーティングは、この目的のために利用可能である。しかしながら、これらのプロセスの全てについて、注型品の鋳造品質、すなわち、生成される表面に対して特別な要望がある。家具、公衆トイレの室内、または車室等の分野のいくつかの適用は、例として引用され得る。
【0008】
鋳造物とも呼ばれる金型部の気孔率及び表面上の含有物の両方は、後で生じる表面にかなり悪影響がある。さらに、それらのエジェクタによって生じる傷等の表面上のムラは望まれない。ある程度だけ、第1の金型プレートによって形成された表面にはゲートのムラがあり、第2の金型プレートによって形成された表面にはエジェクタのムラがある。結果として、乱れていない完全な表面が形成できない面が生じる。
【0009】
ダイカストの実施では、ゲート側またはノズル側としても知られている、固定されたダイカスト金型の高温側に、エジェクタユニットとしても知られている離型システムを設置する必要性がなくなっている。もともと、鋳造の副製品として後で生じる湯口が取り外されず、そして対応する表面の仕上げが施されないゲート側への金型部の直接接続は、いずれにしても、適切な高温チャネル方式の性能不足により不可能であった。
【0010】
しかしながら、現在、この直接接続を可能にし、湯口を用いないダイカストを説明する先行技術のダイカスト方法が知られている。金属溶解物をダイカストで鋳造するための高温チャンバーシステムで使用するダイカスト方法及びダイカストノズルシステムは、国際公開第2012/076008号、国際公開第2013/071926号、及び国際公開第2017/148457号から知られており、上記の特許文献のそれぞれの説明では、溶解流を遮断する凝固溶解物のプラグは、後で生じる金型部の表面でゲートのそばに形成できる。前述の方法を使用するだけで、金型部で直接接続が可能になり、材料及びエネルギーの節約に加えて、鋳造品質をかなり増加させることも可能になる。直接接続により、ダイカストノズルとダイカスト金型との間のチャネルで凝固する鋳造の副製品としての湯口がなくなり、湯口は、従来のダイカスト方法で、望ましくない方式で離型した後に、鋳造部と一緒に固まり、多額の費用で取り外す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/076008号
【特許文献2】国際公開第2013/071926号
【特許文献3】国際公開第2017/148457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、先行技術の方法では、湯口を取り外さない場合でも、ノズルの圧痕は、現在最小の湯口領域は、ダイカスト金型の高温側で、金型部の表面上に生成される。同時に、ムラは金型部の反対側に作成され、金型部は、金型の低温側によって形成され、エジェクタはそこに位置する。結果として、高品質の面は、単独で鋳造法によって生成できない。したがって、本発明の目的は、ダイカスト金型、高温チャンバーシステム、金属をダイカストで鋳造するための方法、及び金型部を生成するためのダイカスト金型の使用法を提供することである。そして、金型部は、ゲートまたはエジェクタによる表面における生産に関連する外乱がなく、一側で、さらにすぐに処理できる表面品質をもたらす高品質の表面を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的はダイカスト金型によって実現され、ダイカスト金型は、動作中に高温になり、溶解用の出口点を伴う少なくとも1つのダイカストノズルを有する第1の金型プレートと、低温側を形成する第2の金型プレートとを備える。第1の金型プレート及び第2の金型プレートが相互に密接に接触するとき、ダイカスト金型が閉鎖状態になり、金型キャビティが第1の金型プレートと第2の金型プレートとの間に形成され、金型キャビティでは、金型部は、少なくとも1つの溶解物チャネル及び少なくとも1つのダイカストノズルを介して、金型キャビティに導入された凝固溶解物から生成できる。ダイカスト金型は、さらに、金型部をダイカスト金型から離型するための離型システムを備える。離型システムはエジェクタアセンブリを有し、好ましくは、それぞれエジェクタ保持プレートに保持されるエジェクタピンまたはエジェクタスリーブを備える。冷却された金型部が押し出されるとき、エジェクタ圧板は力をエジェクタアセンブリに伝達する。したがって、離型システムは、エジェクタアセンブリ、駆動デバイス、及び駆動デバイスならびにエジェクタアセンブリに接続された動力伝達デバイスを有する。
【0014】
本発明に従うと、離型システムは、具体的には、少なくとも1つの溶解物チャネル及び少なくとも1つのダイカストノズルの領域の外側に、周辺駆動部とともに配置され、具体的には、駆動デバイスは、第1の金型プレートの配置が可能になるような温度抵抗を有する。第1の金型プレートは入ってくる溶解物により加熱され、または要求温度で溶解物が金型キャビティに入ることができるように、十分に高温になる必要がある。第1の金型プレートの温度は、溶解温度によって決まる。したがって、駆動デバイスの温度抵抗は、例えば、最大300°Cまで保証される必要がある。
【0015】
利点をもたらす本発明の実施形態では、離型システムの駆動デバイスは第1の金型プレートで周辺に配置され、少なくとも2つの線形駆動部は、少なくとも1つの溶解物チャネル、少なくとも1つのダイカストノズル、及びダイカストノズルの出口点の領域の外側に配置される。
【0016】
さらに利点をもたらす実施形態に従うと、線形駆動部は油圧式駆動部として構成され、油圧式駆動部のそれぞれは、溶解物チャネル及びダイカストノズルの領域の両側に、油圧シリンダーを備える。代替として、空圧駆動もしくは線形駆動、スピンドル駆動、または他の適切な実施形態を使用し得る。特に、好ましい油圧シリンダーは、高温に耐性があり、最大300°Cの温度に耐えることができる。例えば、油圧シリンダーには160barで5kNの力がかかり、pmax=220barの圧力に耐えることができる。また、最大300°Cの要求温度抵抗は、同様に、使用するために意図される他の駆動システムにも適用される。最終的に各々の溶解温度により要件が決定されるため、温度仕様は例示的である。
【0017】
エジェクタアセンブリは個別に作用するエジェクタピンを備える場合、及び/または、ダイカストノズルの出口点の周りに円環形のスリーブエジェクタとして構成される場合、利点をもたらすことが証明されている。エジェクタピン及びスリーブエジェクタの両方には、保護ガス接続部、内側にある保護ガスライン、及び保護ガス出口が装備され得る。
【0018】
少なくとも1つの保護ガス出口、例えば、保護ガスノズルは、離型中、保護ガスを金型キャビティ内に送達するのに利点をもたらすことが証明されている。主な利点は、特に、マグネシウム等の可燃性溶解物を使用するときに生じる。マグネシウムは高速で酸化して燃焼でき、残りの液体マグネシウムがダイカストノズルから逃げるとき、特に、離型中、発生する可能性がある。
【0019】
金型部が金型キャビティに新たに形成される間、ダイカストノズルの出口点は凝固溶解物によって閉鎖され、金型部を介した熱放散により、湯口が溶解することを防止する。しかしながら、離型中、金型部がエジェクタによって高温側から押し出されるとき、液体溶解物が次の鋳造動作のためにノズルに保持される出口点の状態は不安定になる。溶解物プラグ(金型部に接着しない湯口からの残留物)によって閉鎖された湯口は、すなわち、ダイカストノズルの出口点は開放状態になり得、液体溶解物は逃げ得る。次に、溶解物と酸素との酸化は周囲空気から発生する。これは、より高温で発熱して、危険な溶解物、特に、マグネシウムで発生し、火災を引き起こす。
【0020】
大火災が発生しない場合でも、酸化物は、特に、ダイカストノズル出口点の領域内にさらに形成され、金型またはダイカストノズルを損傷し得る。押出中に保護ガスを使用することにより、火災と、既に可能性がある起点におけるダイカスト金型及びダイカストノズルに対する損傷とを防止できる。
【0021】
有利には、エジェクタアセンブリが金型キャビティのそばに位置し、実質的に、金型部を押し出すことに関わるため、保護ガスがエジェクタアセンブリから直接流出する。保護ガスは最初に金型キャビティに到達する必要があり、また、大きい量が提供される必要があるため、さらに離れて位置する保護ガス出口、例えば、金型キャビティの隣にある保護ガス出口は効果が弱くなるだろう。ダイカスト金型及び金型部の表面のさらなる外乱を含む金型キャビティの領域内の別の保護ガス出口と比較して、エジェクタの内側の保護ガスを保護ガス出口に移送するためのエジェクタアセンブリを使用して、目標とする適用により、見事な解決策が提供される。
【0022】
したがって、少なくとも1つの保護ガス出口は、特に好ましくは、エジェクタアセンブリに配置される。エジェクタアセンブリは、金型部の押出中、金型キャビティに直接入る、この場合、具体的には、ノズル出口点、すなわち、そのような酸化の起点に入る。これに関連して、特別な利点は、修正された配置から生じる。その配置では、少なくとも1つの保護ガス出口は、エジェクタ壁に配置され、エジェクタの壁に、例えば、ダイカストノズルの出口点に面するスリーブエジェクタの壁の内側に配置される。結果として、危険な溶解物を使用して、スリーブエジェクタによって、まるでスカートのようなものによって、その溶解物がこの領域内に維持されるとき、酸化または出火の特定のリスクがある場合、保護ガスはノズル出口点に直接指向される。これにより、高効率になり、ガス消費が少なくなる。
【0023】
特に利点をもたらす実施形態に従うと、保護ガス出口は、押出中に第1の金型プレートからだけ出る領域内に配置されることにより、押出中だけ、保護ガス出口は遮断解除される。これにより、鋳造プロセス中、保護ガス出口が覆われ、密閉され、保護される状態が保たれる。結果として、これは、追加の外乱が表面で生じることも防止する。複数の保護ガス出口は、十分な量の保護ガスを送達することを可能にするために、好ましくは、エジェクタピンまたはスリーブエジェクタの壁の円周付近に配置される。
【0024】
酸化を防止でき、周囲空気から出た酸素を維持するガスのすべては、保護ガスとして使用できる。また一方、このガスがすぐに利用可能であり、周囲空気の無害な主要構成物質であり、安全対策がさらに必要ではないため、窒素が保護ガスとして使用される場合、利点をもたらすことが証明されている。
【0025】
有利には、具体的には、取り付け及びメンテナンスのために、離型システムは、ダイカスト金型が開放するとき、第1の金型プレートの金型キャビティ側を介してアクセス可能である。
【0026】
また、本発明は、高温チャンバー方式に従って、金属をダイカストで鋳造するために高温チャンバーシステムによって実現され、高温チャンバーでは、溶解物は、ダイカスト金型内で開放しているダイカストノズルの出口点において液体状態に維持される。高温チャンバーシステムは、鋳造ビッセル及び機械ノズルを伴う高温チャンバーダイカスト機を備え、機械ノズルを通って、溶解物がダイカスト金型に入る。溶解流を遮断する凝固溶解物のプラグは、ダイカストノズルの出口点に形成できる。高温チャンバーシステムは、さらに、加熱ゾーン及びノズル先端に一体化する少なくとも1つの溶解物チャネルを備える。ノズル先端は、好ましくは、ダイカスト金型のゲート領域と隣接するダイカストノズルを形成する、またはその一部である。本発明の解決策に従って、前述に説明したような離型システムを伴うダイカスト金型として構成される。
【0027】
本発明の目的は、さらに、溶解物として提供された金属をダイカストで鋳造するための方法によって解決される。本発明の解決策に従って、前述に説明したような離型システムを伴うダイカスト金型では、
a.第1の金型プレート及び第2の金型プレートを一緒に移動させ、金型キャビティを閉鎖(包囲)することによって、金型を閉鎖するステップと、
b.ゲート側を形成しゲートを有する第1の金型プレートから、つまり、ダイカストノズルの出口点から、金型キャビティ内に溶解物を導入するステップと、
c.溶解物を冷却及び凝固し、金型部を形成するステップと、
d.第2の金型プレートを第1の金型プレートから持ち上げ、金型部を解放することによって、金型を開放するステップと、
e.第1の金型プレートにも位置する離型システムをアクティブにするステップと、
f.離型システムにより、第1の金型プレートとの接着接続を解放することによって、金型部を押し出すステップと、
が行われる。ステップd)及びステップe)は、特に、ダイカスト金型を開放するプロセスが離型システムに機械的に結合され、エジェクタは同時に金型部を押し出す場合、同時に実行され得る。代替として、独立型駆動部は、必要なとき、金型部がマニピュレータによって把持された後、離型システムをアクティブにし得る。
【0028】
本方法の利点をもたらす構成に従って、大気酸素から離れている保護ガスは、金型部の解放中、金型キャビティ内に流れ、そして、ダイカストノズルの出口点に流れる。これは、強い酸化及び点火に関する固有のリスクをもたらす溶解物に特に利点をもたらす。これは、具体的には、マグネシウムに当てはまる。これは、マグネシウムの加工が高い火災リスクに関連付けられるためである。押出中に保護ガスを使用することにより、可能性がある起点における火災を防止できる。
【0029】
有利には、エジェクタアセンブリが金型キャビティのそばに位置し、実質的に、金型部を押し出すことに関わるため、保護ガスがエジェクタアセンブリから流出する。さらに、このガスが周囲空気の無害な主要構成物質であり、ひいては、安全対策がさらに必要ではないため、窒素が保護ガスとして使用される場合、利点をもたらすことが証明されている。
【0030】
その目的は、さらに、離型システムとともに、上記に説明したようなダイカスト金型を使用することによって実現され、この金型は、高温チャンバー方式に従って、金属溶解物をダイカストで鋳造するために、ダイカスト金型として構成され、溶解物は、ダイカストノズルの出口点において液体状態に維持される。
【発明の効果】
【0031】
離型システムまたはエジェクタアセンブリを第1の金型プレートに展開及び統合すると、高温チャネルシステムの一部としてのダイカスト金型の高温側、可視表面の表面品質及び完全性の両方は、ノズルまたはエジェクタの影響を確実に受けなくなる。可視表面または湯口端を研磨する等の複雑な処理ステップは必要ではない。いずれかの鋳造工場の主要問題である表面欠陥は著しく減る。結果として、収益性が増加する。欠陥による、生成された金型部の時間のかかる分類の必要がなくなる。これは、通常、ただコーティング後だけに明らかになり、これにより、最終的に、十分な表面品質に足りないものに該当する部品の廃棄をもたらす。
【0032】
金型キャビティまたは金型部のそばにゲートがあり開放している、先行技術から知られているダイカストノズルを使用することによって、本発明を使用して、いずれかの後処理が必要ではない金型部を生成できる。また、本発明により、ゲートの反対にある金型部の側は、エジェクタによって生じるムラによって表面を損なうことなく生成できることも実現される。代わりに、これらのムラは反対側に再配置され、いずれにしても、金型部はゲートの影響を受ける。これにより、最高要件を満たし、後処理なしで使用できる、または仕上げできる完全に影響を受けない表面が生じる。
【0033】
本発明は、対応する図面における例示的な実施形態及びその例証を説明するために、下記により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による、ダイカスト金型の実施形態の断面図を概略的に示す。
【
図2】本発明による、鋳造プロセスにおける金型部の形成中のダイカスト金型の実施形態の断面図を概略的に示す。
【
図3】本発明による、鋳造プロセスに続く金型部の押出中における、ダイカスト金型の実施形態の断面図を概略的に示す。
【
図4】本発明による、金型部の押出中における、ダイカスト金型の実施形態の断面図の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明による、2つのダイカストノズル6を伴うダイカスト金型10の実施形態の断面図を概略的に示し、2つのダイカストノズル6の出口点17は、金型キャビティ14の中で開放している。金型部16(
図2及び
図3参照)は、(示されないが、ダイカスト金型10または第1の金型プレート11の底側に)金型キャビティ14に生成できる。ダイカスト金型10は高温チャンバーシステム1の一部であり、高温チャンバーシステム1の断面だけが示され、高温チャンバーシステム1は、部分的に示されるダイカスト金型10及び機械ノズル2に加えて、示されない鋳造ビッセルも備え、溶解物8は、機械ノズル2を介してダイカスト金型10に移動する。ダイカスト金型10の第1の金型プレート11だけが示される。
【0036】
示されない第2の金型プレートは、ダイカスト金型10を閉鎖されるとき、金型キャビティ側15の領域内で隣接する。第2の金型プレートが鋳造プロセスの前に第1の金型プレート11まで移動することにより、完全な金型キャビティ14はキャビティとして形成され、第2の金型プレートは、金型部16を取り外すためにダイカスト金型10を開放するために離れる。第2の金型プレートだけがキャビティを有し、そうでなければ、内部要素または機能要素がない。この理由として、分かりやすくするために、第2の金型プレートが示されていない。
【0037】
金型キャビティ14のそれぞれは、離型システム20によってアクセス可能であり、すなわち、金型部16を第1の金型プレート11から離型するために、図の左側のエジェクタピン28または図の右側のエジェクタスリーブ30によってアクセス可能である。エジェクタシステム20は、第1の金型プレート11の溶解物チャネル側15を介してアクセス可能であり、2つの駆動デバイス21を備え、示される実施形態では、2つの駆動デバイス21には、それぞれ、油圧シリンダー22が装備され、油圧シリンダー22のピストンロッド23はエジェクタ圧板24に接続される。エジェクタ圧板24を使用して、ピストンロッド23からエジェクタピン28またはエジェクタスリーブ30に駆動力を伝達する。エジェクタピン28及びエジェクタスリーブ30は、エジェクタ保持プレート26で保持される。エジェクタスリーブ30の軸方向誘導のために、右に示されるダイカストノズル6は、さらに、ガイドプレートに加えて、不特定のガイドスリーブによって囲まれる一方、エジェクタピン28はガイドプレートにおいて軸方向に誘導される。エジェクタピン28は、また、ガイドプレートにおいて誘導される。
【0038】
油圧シリンダー22は、機械ノズル2が取り付けられ、溶解物チャネル4が伸び、ダイカストノズル6が位置する領域の外側に位置する。これは、先行技術から知られているセンターエジェクタボルトによる離型システムの従来の中央駆動から逸脱している。いくつかの油圧シリンダー22の間で分けられる離型力を生成するための非中央駆動デバイス21は、説明で言及した利点と一緒に、離型システム20の全体を第1の金型プレート11に配置することを可能にすることが示されている。
【0039】
金属溶解物がこのプロセスで使用されたことにより、具体的には、ダイカスト中に、200~300℃の高温が第1の金型プレート11で生じるため、油圧シリンダー22は、それに対応して温度安定するように構成され、第1の金型プレート11の温度に耐え、第1の金型プレート11の温度は各々の溶解温度によって決まり、ひいては、異なる要件を有する。
【0040】
図2は、本発明による、鋳造プロセスにおける金型部16の形成中における、高温チャンバーシステム1(
図1の説明を参照)の一部を用いて、ダイカスト金型10の実施形態の断面図を概略的に示す。鋳造プロセス中、溶解流は、太い白矢印によって可視化される。そのプロセスでは、溶解物8は、ダイカスト金型10に取り付けられ部分的に示される機械ノズル2から、溶解物チャネル4を介して、ダイカストノズル6に流れる。
【0041】
出口点17から、溶解物8は金型キャビティ14に入り、金型キャビティ14は、第1の金型プレート11と、示されない第2の金型プレートとの間に形成され、第2の金型プレートは、ダイカスト金型10が閉鎖されるとき、第1の金型プレート11と直接接触する。これは、金型キャビティ14に入っている溶解物8が冷却されるとき、金型部16が形成される場合に起こる。
【0042】
図3は、本発明による、金型キャビティ14に入った後に冷却されている溶解物8から形成された金型部16の押出中における、高温チャンバーシステム1(
図1の説明を参照)の一部を用いて、ダイカスト金型10の実施形態の断面図を概略的に示す。
【0043】
押し出すために、離型システム20は、油圧シリンダー22を伴う駆動デバイス21によって駆動され、油圧シリンダー22は、第1の金型プレート11から離れるように矢印の方向に(説明図の下向きに)、ピストンロッド23を押す。また、これにより、エジェクタ圧板24、エジェクタ保持プレート26、エジェクタピン28、及びエジェクタスリーブ30は、金型キャビティ側15のダイカスト金型10から外に出て、金型キャビティ14のほうに移動する。それによって、金型キャビティ14に接着する金型部16は金型キャビティ14から解放され、鋳造プロセスは金型部16の押出によって完了する。押出中、保護ガス接続部36は、窒素等の保護ガスを、エジェクタスリーブ30の内側の保護ガスライン34に導入し、また、エジェクタピン28にも導入される。しかし、エジェクタピン28は、この機器を含むものとして示されていない。この保護ガスは保護ガス出口32から出て、金型キャビティ14の領域に入る(
図4参照)。
【0044】
続いて、離型システム20はその最初の位置に戻り、具体的には、エジェクタアセンブリ28、30が後退することにより、ダイカスト金型10が閉鎖した後、新しい金型プロセスは開始でき、新しい金型プロセス中、示されない第2の金型プレートは前の位置に戻り、第1の金型プレート11と接触する。
【0045】
図4は、本発明による、金型部16の押出中における、ダイカスト金型10の実施形態の断面図の詳細
図Aを示す。保護ガス出口32は遮断解除されるように示され、その状態では、エジェクタ壁31の内側の保護ガスラインを通って保護ガス出口32まで流れる保護ガスを逃がすことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 高温チャンバーシステム(全体)
2 機械ノズル
4 溶解物チャネル
6 ダイカストノズル
8 溶解物
10 ダイカスト金型
11 第1の金型プレート
12 ゲート
14 金型キャビティ
15 金型キャビティ側
16 金型部
17 出口点
20 離型システム
21 駆動デバイス
22 油圧シリンダー
23 ピストンロッド
24 力伝達デバイス、エジェクタ圧板
26 エジェクタ保持プレート
28 エジェクタアセンブリ、エジェクタピン
30 エジェクタアセンブリ、エジェクタスリーブ
31 エジェクタ壁
32 保護ガス出口
34 保護ガスライン
36 保護ガス接続部
【外国語明細書】