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特開2023-88314シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン
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  • 特開-シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン 図1A
  • 特開-シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン 図1B
  • 特開-シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン 図2
  • 特開-シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン 図3
  • 特開-シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088314
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】シリカコンパウンド用の活性硫黄非含有官能性シラン
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20230619BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230619BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230619BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20230619BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/013
C08K3/36
C08K5/541
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199111
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】17/644,102
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・ヨン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・インケット・チェ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フランクリン・スピルカー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・パトリック・マレー
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA06
3D131AA07
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3D131BA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA07
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3D131BA12
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
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3D131BB05
3D131BB07
3D131BB09
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC51
3D131BC55
4J002AC111
4J002AC141
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EX037
4J002EX057
4J002EX067
4J002EX077
4J002EX087
4J002FB091
4J002FB096
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリカ充填剤をポリマー組成物に組み込むための硫黄加硫可能ゴムコンパウンドおよびカップリング剤を提供する。
【解決手段】硫黄加硫可能ゴムコンパウンドは、シラン官能化ジエンエラストマー、シランカップリング剤、およびシリカ充填剤を含む。シランカップリング剤は、活性硫黄部分を含有しない。ゴムコンパウンドは、シラン官能化ジエンエラストマーと硫黄を含有しないシランカップリング剤とのシロキシル縮合反応の反応生成物である。カップリング剤は、シリカ充填剤に含有されるヒドロキシル基およびジエン系エラストマーに含有されるシラン部分と反応する少なくとも1つの末端基を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのジエンエラストマー、
シリカを含む補強充填剤、および
シランカップリング剤
を特徴とし、
前記ジエンエラストマーが、シラン官能化エラストマーであり、
前記シランカップリング剤が、活性硫黄部分を含有しない、
硫黄加硫可能ゴムコンパウンド。
【請求項2】
前記ゴムコンパウンドが、前記シリカと前記シランカップリング剤とのシラン化反応、および前記シラン官能化エラストマーと前記シランカップリング剤とのシロキシル縮合反応の反応生成物である、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、一般式A-R-A’(式中、AおよびA’は、それぞれ独立して、前記シリカおよび前記ジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表し、Rが存在する場合は炭化水素鎖であるが、Rは存在しなくてもよい)を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項4】
前記Rが炭化水素鎖、またはヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素であり、該炭化水素が、1~10の間の炭素数を有することを特徴とする、請求項3に記載のゴムコンパウンド。
【請求項5】
前記シリカカップリング剤が、ケイ素原子上に少なくとも2つの脱離基を有する単官能性および/または二官能性の有機シランであることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項6】
前記脱離基が、それぞれ独立して、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のゴムコンパウンド。
【請求項7】
第1の前記脱離基が、ケイ素原子を介して前記補強充填剤との結合をもたらし、第2の前記脱離基が、前記シラン官能化エラストマーとの結合をもたらすことを特徴とする、請求項5に記載のゴムコンパウンド。
【請求項8】
前記シランカップリング剤が、一般式Q-A
(式中、A基は、ケイ素および前記ジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表し、
式中、Qは任意に、炭化水素鎖、またはヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素である)
を有する二官能性有機シランであることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項9】
前記部分が、ケイ素原子上に少なくとも2つの脱離基を含み、脱離基が、それぞれ独立して、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のゴムコンパウンド。
【請求項10】
前記部分が、
ケイ素原子を介して前記補強充填剤との結合をもたらす第1の前記脱離基、および
ケイ素原子を介して前記シラン官能化エラストマーとの結合をもたらす第2の前記脱離基
を含むことを特徴とする、請求項8に記載のゴムコンパウンド。
【請求項11】
前記シランカップリング剤が、n-オクチルトリエトキシシラン(EtO)Si-Cであることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項12】
前記シランカップリング剤が、ビス(トリエトキシシリル)オクタン((EtO)Si-(CHSi(OEt)であることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項13】
前記シラン官能化ジエンエラストマーが、単一のシラノール官能基を含む末端官能基または単一のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって特徴づけられる、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項14】
前記シラン官能化ジエンエラストマーが、ブタジエンスチレンまたはブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項15】
タイヤ部品、ゴムベルト、またはホースに組み込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項16】
前記ゴムコンパウンドが、前記シリカを含む補強充填剤と前記シラン官能化エラストマーとが前記シランカップリング剤に結合しているシロキサン(Si-O-Si)連結を含む官能ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のゴムコンパウンド。
【請求項17】
沈降シリカに含有されるヒドロキシル基と反応性で、かつジエンエラストマーに含まれるシラン部分と反応性の、少なくとも1つの末端基を特徴とする、硫黄を含有しない二官能性シランカップリング剤。
【請求項18】
沈降シリカに含有される少なくとも1つのヒドロキシル基と選択的に反応性で、かつジエンエラストマーに含まれるシラン部分と選択的に反応性の、少なくとも第2の末端基を特徴とする、請求項17に記載のカップリング剤。
【請求項19】
前記カップリング剤がタイヤ用ゴムコンパンドに組み込まれる、請求項18に記載のカップリング剤。
【請求項20】
シラン官能化ジエンエラストマーと硫黄を含まないシランカップリング剤との間のシロキシ縮合反応の反応生成物であるポリマーを特徴とする、タイヤ中に組み込むための、非活性シリカ含有ゴムコンパウンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、活性硫黄を含有しない単官能性、二官能性、および多官能性のカップリング剤、ならびにそれを含むゴムコンパウンドに関する。これは、官能性ポリマーと併用した特定の用途に用いることができ、特にこの点に関して記載される。しかし当然のことながら、本明細書の例示的な実施形態は他の同様の用途にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
[0002]シリカは、ある特定の性能の有利な点を増進させるために、タイヤに広く用いられている。しかしながら、シリカは、親水性の表面を有するため、エラストマーに分散させることが困難である。混合物中の分散性を向上させる1つの方法として、シリカを有機シランカップリング剤で処理する方法がある。何十年もの間、加硫可能シリカ充填ゴム材料において、シリカとポリマーとを結びつけるために、硫黄を含有するシランカップリング剤が使用されてきた。典型的には、カップリング剤は、二官能性である。カップリング剤は、シリカ表面と反応する部分(例えば、シリル基)、およびエラストマーと結合する別の部分(典型的には、活性硫黄基)を有する。このような種類のカップリング剤の周知な例は、アルコキシシランポリスルフィド(例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT))およびメルカプトシラン(例えば、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン(NXT))である。
【0003】
[0003]シリカとこのような化学剤のカップリング反応は、2つのスキーム:(1)トリエトキシシリル基がシリカのシラノール基と反応するシラン化修飾反応;および(2)加硫条件下で硫黄基がポリマーと反応し、ゴムと充填剤との結合を形成するシラン-ポリマーカップリング反応に分けられ得る。従来の官能化シランカップリング剤では、硫黄が架橋結合を行うのに必要であると考えられている。
【0004】
[0004]しかしながら、配合に必要な化学剤の量が多い(シリカ含有量に対して)ことに関連して、コストが非常に高くなる。また、ポリスルフィド鎖の別の不利な点は、迅速な反応を促進させるために、シラン化は限定された温度範囲内で行わなければならず、そうでないと、カップリング剤の不可逆的な熱劣化が起こることである。これにより、とりわけ、混合物が焦げるという結果となる。
【0005】
[0005]他にも理由はあるが、中でもこのような理由から、シリカ充填剤をポリマー組成物に組み込むためのさらなる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,936,669号
【特許文献2】米国特許第7,981,966号
【特許文献3】米国特許第8,217,103号
【特許文献4】米国特許第8,569,409号
【特許文献5】米国特許第5,064,901号
【特許文献6】米国特許第6,242,534号
【特許文献7】米国特許第6,207,757号
【特許文献8】米国特許第6,133,364号
【特許文献9】米国特許第6,372,857号
【特許文献10】米国特許第5,395,891号
【特許文献11】米国特許第6,127,488号
【特許文献12】米国特許第5,672,639号
【特許文献13】米国特許第5,504,135号
【特許文献14】米国特許第6,103,808号
【特許文献15】米国特許第6,399,697号
【特許文献16】米国特許第6,410,816号
【特許文献17】米国特許第6,248,929号
【特許文献18】米国特許第6,146,520号
【特許文献19】米国特許出願公開第2001/0023307号
【特許文献20】米国特許出願公開第2002/0000280号
【特許文献21】米国特許出願公開第2002/0045697号
【特許文献22】米国特許出願公開第2001/0007049号
【特許文献23】EP0839891
【特許文献24】JP2002097369
【特許文献25】ES2122917
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society、第60巻、304頁(1930年)
【非特許文献2】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、第62版、Institute of Petroleum発行、United Kingdom
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁
【発明の概要】
【0008】
[0006]本開示の一実施形態は、少なくとも1つのジエンエラストマー;シリカを含む補強充填剤;およびシランカップリング剤を含む硫黄加硫可能ゴムコンパウンドを対象とする。意図される実施形態では、ジエンエラストマーは、シラン官能化エラストマーである。好ましい実施形態では、シランカップリング剤は、活性硫黄部分を含有しない。
【0009】
[0007]本開示の別の実施形態は、タイヤに組み込むためのシリカ含有ゴムコンパウンドを対象とする。ゴムコンパウンドは、シラン官能化ジエンエラストマーと硫黄を含有しないシランカップリング剤とのシロキシル縮合反応の反応生成物であるポリマーを含む。
【0010】
[0008]本開示のさらなる実施形態では、活性硫黄を含有しない二官能性シランカップリング剤を対象とする。カップリング剤は、沈降シリカに含有されるヒドロキシル基およびジエン系エラストマーに含有されるシラン部分と反応する少なくとも1つの末端基を含む。
【0011】
[0009]本発明を例示するために、以下の添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】トリエトキシシリル基がシリカ表面のシラノール基と反応するシラン化修飾反応を示す図である。
図1B】硫黄基がポリマーと加硫条件下で反応し、ゴムと充填剤の結合を形成するシラン-ポリマーカップリング反応を示す図である。
図2】実験の第2シリーズ(試料A~H)について、個々の対照ゴム試料および実験ゴム試料の時間に対する相対トルク値のプロットを示す図である。
図3】実験の第2シリーズ(試料A~H)について、個々の対照ゴム試料および実験ゴム試料のひずみ(パーセント)に対する相対損失正接値のプロットを示す図である。
図4】実験の第2シリーズ(試料A~H)について、個々の対照ゴム試料および実験ゴム試料の温度(℃)に対する相対損失正接値のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[00010]本発明は、活性硫黄部分を含有しないシランカップリング剤に関する。硫黄を含有しない官能性シランカップリング剤は、官能化されたポリマーを介したシリカ補強充填剤(以下、「シリカ」および/または「シリカ充填剤」)またはシランを介したゴムと官能性結合とを結びつけるのに使用され得ることが見出される。
【0014】
[00011]本明細書で使用される場合、用語「ゴム」、「ポリマー」および「エラストマー」は、別段の規定がない限り、同じ意味で使用されてよい。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、様々な成分および材料と配合または混合されたゴムを指すために同じ意味で使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合の技術分野の当業者にとって周知である。
【0015】
[00012]本明細書で使用される場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「comprise(含む)」ならびに当該用語の変化形である「comprising(含むこと)」、「comprises(含む)」および「comprised(含まれる)」などの用語は、さらなる添加剤、成分、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
【0016】
[00013]硫黄加硫可能ゴムコンパウンドは、シラン官能化ジエンエラストマー、シランカップリング剤、およびシリカ充填剤を含む。ゴムコンパウンドは、シラン官能化ジエンエラストマーと硫黄を含有しないシランカップリング剤とのシロキシル縮合反応の反応生成物である。カップリング剤は、シリカ充填剤に含有されるヒドロキシル基およびジエン系エラストマーに含有されるシラン部分と反応する少なくとも1つの末端基を含む。
【0017】
[00014]カップリング剤は、シリカとゴムとの間に接続または結合を形成する材料である。従来のカップリング剤は、一般式A-R-B(式中、Aは、シリカ粒子と結合することが可能な第1の官能基である)で表される二官能性化合物である。この結合は、カップリング剤のケイ素原子とシリカ粒子の酸素原子との間に存在し得る。プロセスは、シリカ表面のシラン化修飾反応として公知である。図1Aは、TESPTを例示として用いた先行技術におけるシリカ-シラン-シラン化を示す。B基は、ゴムポリマーに化学的または物理的に結合することが可能な第2の異なる官能基を表す。従来のカップリング剤では、この結合は、硫黄原子とゴムポリマーとの間にある。従来のカップリング剤では、B基としては、ゴムポリマーと結合する硫黄を提供することが可能なメルカプト基-SHまたはその他の基(例えば、-SCN、-S(式中、xは2~8である))を挙げることができよう。B基は、ポリマーの二重結合とのカップリング反応に関与する。図1Bは、図1Aのシラン化に続くシラン-ポリマーカップリング反応を示す。図1A~Bは、官能性でないポリマーの場合、硫黄-ポリマーカップリング反応によってシリカ-シラン-ポリマー相間が形成されることを示す。この相間は、下記の構造Iで表される。
【0018】
【化1】
【0019】
[00015]シラン官能化ポリマーについては、シロキシル縮合反応(-Si-O-Si-ポリマー結合)によってシリカ-シラン-ポリマー相間が形成され得ることが見出される。そのようなシリカ-シラン-ポリマーは、下記の構造IIで表される。
【0020】
【化2】
【0021】
[00016]したがって、硫黄部分または類似の官能基を有する部分を含有しないカップリング剤が、官能化されたポリマーから形成されるゴムコンパウンドに用いることができることが見出される。
【0022】
[00017]本開示による活性硫黄を含有しない二官能性シランカップリング剤は、沈降シリカに含有されるヒドロキシル基およびジエン系エラストマーに含有されるシラン部分と反応する少なくとも1つの末端基を含む。意図される実施形態では、カップリング剤は、ケイ素原子上に少なくとも2つの脱離基を有する、単官能性および/または二官能性および/または多官能性の有機シランである。
【0023】
[00018]一実施形態では、カップリング剤は、一般式A-R-A’を有する二官能性有機シランである。AおよびA’は、それぞれ独立して、シリカおよびジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表す。このように、それぞれの部分は、2つの脱離基を有する。一実施形態では、脱離基は、同一または異なるアルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基であってもよい。Rは、安定的にAとA’に接続し、結合することが可能な二官能基を表す。いくつかの実施形態では、Rは、AとA’との間の直接の化学結合であってもよいが、一般に、Rは、炭化水素鎖、ヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素、または環基である。R基は、1~10個の炭素原子を有する炭化水素であることが好ましい。しかしながら、炭化水素鎖は、より長くてもよく、分岐していてもよい。
【0024】
[00019]いくつかの実施形態では、Rは、炭化水素鎖中に非活性硫黄を含有してもよい。本発明は、硫黄が以下に述べる活性部分の一部である点で、従来の有機シランとは異なる。
【0025】
[00020]これらの式の二官能性シランの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
【化3】
【0027】
[00021]実施形態の一例では、加硫剤は、ビス(トリエトキシシリル)オクタン((EtO)Si-(CHSi(OEt)である。
[00022]一実施形態では、カップリング剤は、一般式Q-Aを有する単官能性有機シランである。Aは、シリカおよびジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表す。つまり、カップリング剤は、2つの活性な脱離基を有する。一実施形態では、脱離基は、同一または異なるアルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基であってもよい。Qは、炭化水素鎖、ヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素、または環基を表す。二官能性有機シランの実施形態に関連して上述したRと同様に、Qは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素であることが好ましい。しかしながら、炭化水素鎖は、より長くてもよく、分岐していてもよい。
【0028】
[00023]これらの式の単官能性シランの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
[00024]実施形態の一例では、単官能性有機シラン加硫剤は、n-オクチルトリエトキシシラン(EtO)Si-Cである。
[00025]一実施形態では、ゴム組成物は、カップリング剤を約1~約10phr含んでよく、より好ましくはシランカップリング剤を約4~約7phr含んでよい。さらなる実施形態では、追加のカップリング剤が、ゴムコンパウンドに用いられてもよい。
【0031】
[00026]単官能性有機シランおよび二官能性有機シランの両方の実施形態について、第1の脱離基は、ケイ素原子を介して補強充填剤との結合をもたらす。このことは、シラン化反応によって成し遂げられ得る。第2の脱離基は、ケイ素原子を介してシラン官能化エラストマーとの結合をもたらす。このことは、ジエンエラストマーとカップリング剤とのシロキシル縮合反応を介して成し遂げられ得る。
【0032】
[00027]本開示の一態様は、ゴムコンパウンドについて、図1Bに示される従来のシラン-ポリマーカップリング反応を除外することである。その代わりに、開示されるカップリング剤を用いることによって、ゴムコンパウンドは、ジエンエラストマーと硫黄を含有しないシランカップリング剤との間のシロキシル縮合反応の生成物である。
【0033】
[00028]一実施形態では、硫黄加硫可能ゴムコンパウンドは、少なくとも1つのジエンエラストマー、シリカを含む補強充填剤;および本明細書で開示されるシランカップリング剤を含む。
【0034】
[00029]ゴムコンパウンド用に様々な共役ジエン系エラストマーが使用されてよい。そのような共役ジエン系エラストマーは、例えば、イソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも一方のポリマー、ならびにイソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも一方と共重合したスチレンのコポリマー、ならびにそれらの混合物などである。
【0035】
[00030]そのような共役ジエン系エラストマーの代表例は、シス1,4-ポリイソプレン(天然および合成)、シス1,4-ポリブタジエン、スチレン/ブタジエンコポリマー(水性乳化重合で製造されたものおよび有機溶媒溶液重合で製造されたもの)、約15~約90パーセントの範囲のビニル1,2含有量を有する中ビニルポリブタジエン、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーの少なくとも1つから構成される。
【0036】
[00031]シス1,4-ポリイソプレンおよびシス1,4-ポリイソプレン天然ゴムは、ゴムの技術分野の当業者にとって周知である。
[00032]例示的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体(例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエン、およびペンタジエン)の単独重合生成物、ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体と他の不飽和モノマーとから形成されるコポリマーなどのコポリマーである。後者の中には、アセチレン類(例えば、ビニルアセチレン);オレフィン類(例えば、イソブチレン(イソプレンと共重合してブチルゴムを形成する));ビニル化合物(例えば、アクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸、およびスチレン(ブタジエンと重合してSBRを形成する))、ならびにビニルエステル類ならびに様々な不飽和のアルデヒド類、ケトン類およびエーテル類(例えば、アクロレイン、メチルイソプロペニルケトン、およびビニルエチルエーテル)がある。
【0037】
[00033]合成ゴムの具体例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(シス-1,4-ポリブタジエンなど)、ポリイソプレン(シス-1,4-ポリイソプレンなど)、ブチルゴム、ハロブチルゴム(クロロブチルゴムまたはブロモブチルゴムなど)、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3-ブタジエンまたはイソプレンとモノマー(スチレン、アクリロニトリル、およびメタクリル酸メチルなど)とのコポリマー、およびエチレン/プロピレンターポリマー(別名エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM))、および特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーなどが挙げられる。使用されてよいゴムのさらなる例としては、アルコキシ-シリル末端官能基を有する溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBR、およびSIBR)、ケイ素カップリングおよびスズカップリングの星型分岐ポリマーなどが挙げられる。
【0038】
[00034]実際には、好ましいゴムエラストマーは、ブタジエンスチレンまたはブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーである。一実施形態では、第2のゴムは、天然ゴム、ポリイソプレン、またはポリブタジエンを含んでよい。一実施形態では、第2のゴムは、官能化されていないゴムを含んでもよい。
【0039】
[00035]一実施形態では、1つのエラストマーは、SBRであり、より好ましくは、溶液重合SBR(SSBR)である。SSBRは、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下で有機リチウムの触媒作用により簡便に製造されることができる。
【0040】
[00036]意図される実施形態では、少なくとも1つのエラストマーは、シリカ充填剤と反応するように官能化されている。官能化エラストマーの代表例は、下記:
(A)沈降シリカのヒドロキシル基と反応するアミン官能基、
(B)沈降シリカのヒドロキシル基と反応する、末端鎖シロキシ基などのシロキシ官能基、
(C)当該沈降シリカのヒドロキシル基と反応するアミン官能基およびシロキシ官能基の組合せ、
(D)沈降シリカのヒドロキシル基と反応するチオール官能基およびシロキシ官能基(例えば、エトキシシラン)の組合せ、
(E)沈降シリカのヒドロキシル基と反応するイミン官能基およびシロキシ官能基の組合せ、
(F)沈降シリカと反応するヒドロキシル官能基
からなる1つまたは複数の官能基を含有するスチレン/ブタジエンエラストマーである。
【0041】
[00037]官能化エラストマーについて、アミン官能化SBRエラストマーの代表例は、米国特許第6,936,669号に記載の鎖内官能化SBRエラストマーであり、その米国特許第6,936,669号の開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0042】
[00038]アミノシロキシ官能化SBRエラストマーおよびそのエラストマーに結合される1つまたは複数のアミノシロキシ基の組合せの代表例は、JSRのHPR355(商標)および米国特許第7,981,966号に記載のアミノシロキシ官能化SBRエラストマーであり、その米国特許第7,981,966号の開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0043】
[00039]シラン-スルフィド基で末端官能化されたスチレン/ブタジエンエラストマーの代表例は、米国特許第8,217,103号および米国特許第8,569,409号に記載されており、それら米国特許第8,217,103号および米国特許第8,569,409号の開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0044】
[00040]意図される実施形態では、少なくとも1つのジエンエラストマーは、単一のシラノール官能基を含む末端官能基または単一のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって特徴づけられるシラン官能化エラストマーである。
【0045】
[00041]また、有機溶媒重合で製造されたスズカップリングエラストマーが使用されてもよい。そのようなスズカップリングエラストマーは、例えば、スズカップリング有機溶液重合で製造されたスチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレンコポリマー、ポリブタジエン、および上記官能化されたスチレン/ブタジエンエラストマーを含むスチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーなどである。
【0046】
[00042]スチレン/ブタジエンのスズカップリングコポリマーは、例えば、有機溶媒溶液中でのスチレン/1,3-ブタジエンモノマー共重合反応中に、通常、重合反応終了時またはそれに近い時にスズカップリング剤を導入することによって製造され得る。そのようなスチレン/ブタジエンコポリマーのカップリングは、当業者にとって周知である。
【0047】
[00043]実際には、通常、スズカップリングエラストマー中の少なくとも50パーセント、より多くの場合、約60~約85パーセントの範囲のSn(スズ)結合は、スチレン/ブタジエンコポリマーのブタジエン単位に結合して、例えばブタジエニル結合などのSn-ジエニル結合を形成することが好ましい。
【0048】
[00044]スズ-ジエニル結合の形成は、例えば、ブタジエンを共重合系に逐次付加する、または、スチレンおよび/またはブタジエンの共重合の反応性比を変更するために重合調整剤を使用するなど、多くの方法で成し遂げられ得る。そのような技術は、バッチ式または連続式の共重合系のいずれで使用されるかどうかにかかわらず、当業者にとって周知であると考えられる。
【0049】
[00045]エラストマーのカップリングには、様々なスズ化合物、特に有機スズ化合物が使用されてよい。そのような化合物の代表例は、アルキルスズトリクロリド、ジアルキルスズジクロリドであり、これらによりスズカップリングスチレン/ブタジエンコポリマーエラストマーの変種が得られるが、単にスズ末端コポリマーを得るトリアルキルスズモノクロリドが使用されてもよい。
【0050】
[00046]スズ修飾またはスズカップリングスチレン/ブタジエンコポリマーエラストマーの例は、例えば、限定することを意図するものではないが、米国特許第5,064,901号に見出されることができ、その米国特許第5,064,901号の開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0051】
[00047]コポリマー中に結合アクリロニトリルを約2~約40重量パーセント含む、乳化重合で製造されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムも、本発明に使用するためのジエン系ゴムとして意図される。
【0052】
[00048]乳化重合で製造されたE-SBRとは、スチレンおよび1,3-ブタジエンを水性エマルションとして共重合させたものを意味する。そのことは、当業者にとって周知である。結合スチレン含有量は、例えば、約5~約50パーセントの範囲で変化し得る。また、一態様では、E-SBRは、ターポリマーゴムを形成するためのアクリロニトリルを、E-SBARとして、例えば、ターポリマー中に結合アクリロニトリルを約2~約30重量パーセントの量で含有してもよい。
【0053】
[00049]特定の実施形態では、ゴムコンパウンドは、追加のエラストマーとして、ブチル系ゴムを含んでもよく、特に、イソブチレンと少ない含有量のジエン炭化水素(例えば、イソプレンなど)とのコポリマー、およびハロゲン化ブチルゴムを含んでもよいことがさらに意図される。
【0054】
[00050]開示されるゴムコンパウンドに使用され得る官能化エラストマーの非限定的な例としては、以下のものを挙げることができる。
【0055】
【化5】
【0056】
[00051]一実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも2つのエラストマーを含む組成物中で、第1のゴムエラストマーを0~約100phr含んでよく、より好ましくは第1のエラストマーを約10~約90phr含んでよい。一実施形態では、組成物が少なくとも2種のエラストマー(合成および/または天然)の組合せを含むように、追加のジエン系エラストマーが用いられる。例えば、追加の共役ジエン系エラストマーは、ゴム組成物中に、約1~約100phrの量で存在してもよく、より具体的には、約10~約90phrの量で存在してもよい。一実施形態では、少なくとも第3のゴムエラストマーが用いられてもよい。一実施形態では、第1のエラストマーおよび任意の第2のエラストマーおよび追加のエラストマーは、合計100phrとなる量で提供される。
【0057】
[00052]開示されるゴムコンパウンドの別の重要な成分は、シリカを含む補強充填剤である。ゴムコンパウンドは、シリカを約10~約150phr含んでよい。別の実施形態では、20~80phrのシリカが使用されてよい。
【0058】
[00053]一般に用いられるシリカ含有顔料でゴムコンパウンドに使用されてよいものとしては、従来の焼成シリカ含有顔料および沈降シリカ含有顔料(シリカ)などが挙げられる。一実施形態では、沈降シリカが使用される。本発明で用いられる従来のシリカ含有顔料は、沈降シリカであり、例えば、可溶性ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)を酸性化することによって得られる沈降シリカなどである。
【0059】
[00054]そのような従来のシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定されるBET表面積を特徴としてよい。一実施形態では、BET表面積は、1グラム当たり約40~約600平方メートルの範囲であってもよい。別の実施形態では、BET表面積は、1グラム当たり約80~約300平方メートルの範囲であってもよい。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、第60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0060】
[00055]また、従来のシリカは、約100~約400あるいは約150~約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによって特徴づけられてもよい。
[00056]従来のシリカは、電子顕微鏡で測定される平均基本粒子径が、例えば0.01~0.05μm(0.01~0.05ミクロン)の範囲であると予想され得るが、シリカ粒子の大きさはさらに小さくてもよく、場合によってはもっと大きくてもよい。
【0061】
[00057]様々な市販のシリカが使用されてよく、本明細書での例示に過ぎず、限定されないが、PPG IndustriesからHi-Sil商標で210、243などの名称で市販されているシリカ;Rhodiaから例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称で入手可能なシリカ、およびDegussa AGから例えばVN2およびVN3などの名称で入手可能なシリカなどが使用されてよい。
【0062】
[00058]シリカ被覆カーボンブラックおよび/または一般に用いられるカーボンブラックも、充填剤として10~150phrの範囲の量で使用され得る。別の実施形態では、20~80phrのカーボンブラックが使用されてもよい。そのようなカーボンブラックの代表例としては、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990、およびN991などが挙げられる。これらのカーボンブラックは、ヨウ素吸着量が9~145g/kgの範囲であり、DBP数が34~150cm/100gの範囲である。
【0063】
[00059]ゴム組成物に使用されてよいその他の充填剤としては、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む粒子状充填剤、架橋粒子状ポリマーゲル(米国特許第6,242,534号;米国特許第6,207,757号;米国特許第6,133,364号;米国特許第6,372,857号;米国特許第5,395,891号;または米国特許第6,127,488号に開示されているものなどが挙げられるが、これらに限定されない)、および可塑化デンプン複合充填剤(米国特許第5,672,639号に開示されているものなどが挙げられるが、これに限定されない)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなその他の充填剤は、1~30phrの範囲の量で使用されてよい。
【0064】
[00060]ゴム組成物は、任意に、ゴム加工油を含んでもよい。ゴム組成物は、加工油を0~約100phr含んでもよい。加工油は、エラストマーを伸展させるために典型的に使用される伸展油として、ゴム組成物に含まれてもよい。また、加工油は、ゴム配合の間にその油を直接加えることによって、ゴム組成物に含まれてもよい。使用される加工油は、エラストマー中に存在する伸展油、および配合の間に加えられる加工油の両方を含んでもよい。一実施形態では、ゴム組成物は、低PCA油を含む。適切な低PCA油としては、当該技術分野で公知であるように(例えば、米国特許第5,504,135号;米国特許第6,103,808号;米国特許第6,399,697号;米国特許第6,410,816号;米国特許第6,248,929号;米国特許第6,146,520号;米国特許出願公開第2001/0023307号;米国特許出願公開第2002/0000280号;米国特許出願公開第2002/0045697号;米国特許出願公開第2001/0007049号;EP0839891;JP2002097369;ES2122917を参照のこと。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれている)、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、残渣芳香族抽出物(RAE)、SRAE、および重ナフテン系油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
[00061]適切な低PCA油としては、IP346法で測定される多環式芳香族含有量が3重量パーセント未満のものなどが挙げられる。IP346法の手順は、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、第62版、Institute of Petroleum発行、United Kingdomから入手可能である。
【0066】
[00062]適切なTDAE油は、Klaus Dahleke KGからTudalen(登録商標)SX500、H&R GroupからVivaTec(登録商標)400およびVivaTec(登録商標)500、BPからEnerthene(登録商標)1849、およびRepsolからExtensoil(登録商標)1996として入手可能である。油は、油単独で、または伸展されたエラストマーの形態でエラストマーとともに入手可能でよい。
【0067】
[00063]好適な植物油としては、例えば、ある特定の不飽和度を有するエステルの形態の大豆油、ヒマワリ油、菜種油、およびキャノーラ油などが挙げられる。
[00064]トレッドゴムのゴム組成物が、例えば様々な硫黄加硫可能構成ゴムを様々な一般に使用される添加剤材料と混合する工程など、ゴム配合の技術分野において一般に公知の方法によって配合されるものであり、そのような添加剤材料としては、例えば、加硫助剤(硫黄活性化剤、遅延剤、および促進剤など)、加工添加剤(油など)、樹脂(粘着性付与樹脂、トラクション性樹脂、および熱可塑性樹脂など)、ならびに可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、亜鉛酸、ワックス、抗酸化剤、およびオゾン劣化防止剤(分解防止剤)、分散剤、および補強材料などが挙げられることは、当業者によって容易に理解される。当業者にとって公知であるように、硫黄加硫可能材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の使用目的に応じて、上記の添加剤が選択され、従来通りの量で通常使用される。
【0068】
[00065]硫黄供与体の代表例としては、元素状硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィド、および硫黄オレフィン付加物などが挙げられる。一実施形態では、硫黄加硫剤は、元素状硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrあるいは1.5~6phrの範囲の量で使用されてよい。樹脂の典型的な量は、約0~約100phrの範囲で添加され得る。加工助剤の典型的な量は、約1~約50phrを含む。抗酸化剤の典型的な量は、約1~約5phrを含む。例示的な酸化防止剤としては、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミンなどであってもよく、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁に開示されているものであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、約1~5phrを含む。ステアリン酸を含み得る脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、約0.5~約3phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は、約2~約5phrを含む。ワックスの典型的な量は、約1~約5phrを含む。マイクロクリスタリンワックスは、よく使用される。分散剤の典型的な量は、約0.1~約1phrを含む。典型的な分散剤としては、例えば、ジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0069】
[00066]促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御するため、および加硫物の特性を向上させるために使用される。一実施形態では、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてよい。一次促進剤は、総量で、約0.5~約4phrあるいは約0.8~約1.5phrの範囲で使用されてよい。別の実施形態では、一次促進剤および二次促進剤の組合せが使用されてよく、二次促進剤は、活性化して加硫物の特性を向上させるために、より少ない量で、例えば約0.05~約3phrなどで使用されてよい。これらの促進剤を組み合わせることで、最終的な特性に対して相乗効果をもたらすことが期待され、どちらか一方の促進剤の単独使用によってもたらされる特性よりも、いくらか優れている。また、標準の加工温度では影響を受けないが、通常の加硫温度で満足な硫化をもたらす遅延作用促進剤が使用されてよい。また、加硫遅延剤が使用されてもよい。本発明で使用されてよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、およびキサンテートである。一実施形態では、一次促進剤は、スルフェンアミドである。二次促進剤が使用される場合、その二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート、またはチウラム化合物であってもよい。
【0070】
[00067]その他の加硫剤を使用してもよく、LanxessからVulcurenとして入手可能な1,6-ビス(N,N’ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン0.5~5phrなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0071】
[00068]上記添加剤の有無および相対量は、別段に明記しない限り、本発明の態様であるとはみなされず、それより主としては、本発明の態様は、硫黄を含有しないシランカップリング剤を用いて製造されたゴムコンパウンドを対象とする。ゴムコンパウンドは、例えば、特に、タイヤ部品、ゴムベルト、およびホースなどの様々なゴム物品に組み込まれてよい。
【0072】
[00069]そのようなタイヤ部品の代表例は、タイヤトレッドであり、例えば、トレッドキャップおよび/またはトレッドベースゴム層、タイヤサイドウォール、タイヤカーカス部品、例えば、カーカスコードプライコート、タイヤサイドウォール補強インサート、タイヤビードに隣接または離間したエイペックス、ワイヤコート、インナーライナータイヤチェーファー、および/またはタイヤビード部品の少なくとも1つなどである。トレッドおよび/またはタイヤは、当業者にとって直ちに明らかである様々な方法によって組み立てられ、成形され、成型され、および加硫され得る。
【0073】
[00070]本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土木機械用、オフロード用、トラック用タイヤなどであってもよい。一実施形態では、タイヤは、乗用車タイヤまたはトラックタイヤである。また、タイヤは、ラジアルまたはバイアスであってもよい。一実施形態では、タイヤ部品は、地面に接触することを目的としている。別の実施形態では、タイヤ部品は、地面に接触しない。他の実施形態では、ゴムコンパウンドは、空気入りではないタイヤに組み込まれ得る。
【0074】
[00071]ゴム組成物の混合は、ゴム混合の技術分野の当業者に公知の方法によって成し遂げられ得る。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2つの段階、すなわち少なくとも1つの非生産的段階と、その後の生産的混合段階とで混合される。硫黄加硫剤を含む最終的な加硫剤は、先の非生産的混合段階の混合温度よりも低いある温度または極限温度で典型的に混合が行われる「生産的」混合段階と従来称される最終段階で典型的に混合される。用語「非生産的」混合段階および「生産的」混合段階は、ゴム混合の技術分野の当業者にとって周知である。ゴム組成物は、熱機械的混合工程に供してよい。熱機械的混合工程は、通常、140℃~190℃の間のゴム温度を生じさせるために適切な時間、混合機または押出機で機械加工する工程を含む。熱機械的加工の適切な期間は、作業条件、ならびに部品の容積および性質に応じて変化する。例えば、熱機械的加工は、1~20分であってもよい。
【0075】
[00072]混合した後、配合ゴムは、例えば、タイヤトレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースなど)を形成するために適切な金型を通して押出成形するなどによって、加工され得る。タイヤトレッドは、典型的には、硫黄加硫可能タイヤカーカスへと組み立てられ、その組立体は、当業者にとって周知の方法によって、高温高圧の条件下で適切な金型内で加硫される。
【0076】
[00073]本開示の一態様、特にシロキシル反応によって成し遂げられるシリカ-シラン-ポリマー架橋により、ゴムコンパウンドに用いることができるエラストマーおよびカップリング剤の組合せの数を非常に多くすることができる。このことは、さらに、形成され得るゴムコンパウンドの数を無限にする。
【0077】
[00074]また、シランカップリング剤に活性硫黄部分を含有させないことで、加硫されるゴムコンパウンドの加工性が向上することも見出される。
【実施例0078】
[00075]本実施例では、開示される非硫黄二官能性シランがゴムコンパウンドの性能に及ぼす効果について説明する。表1の配合表に従って、ゴム組成物を複数工程の混合手順で混合した。加硫剤の標準的な量および加硫の技術も使用した。その後、ゴムコンパウンドを加硫し、様々な特性、特に加工、ウェットトラクション、および転がり抵抗などの特性を試験した。
【0079】
[00076]対照となるゴムコンパウンドの試料AおよびBは、官能化されていないSBRおよび従来の硫黄を含有するシランカップリング剤を使用した。対照試料CおよびDは、官能化されていないSBRを使用したが、従来の硫黄を含有するシランカップリング剤を、硫黄を含有しないシランカップリング剤に置き換えたものである。実験試料EおよびFは、官能化されたSBRおよび従来の硫黄を含有するシランカップリング剤を使用した。実験試料GおよびHは、官能化されたSBRおよび硫黄を含有しないシランカップリング剤を使用した。
【0080】
[00077]エラストマー100重量部に対する部(phr)で表した基本配合を下記の表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
[00078]表2の結果は、対照試料A~Fならびに実験試料GおよびHの加硫特性を比較したものである。
【0083】
【表2】
【0084】
[00079]結果は、ピーク応力における最大トルク(レオメーターを用いて170℃で60分間測定した)は、実験試料Gで最も低いことを示しており、実験試料Gが最も良好な加工/加硫条件を示すことを意味する。実際、試料Gは対照Cと同様の加工を行い、若干の向上を示している。また、実験試料GおよびHのトルク値(加工性の指標である)は、両方とも、従来の硫黄を含有するシランカップリング剤をそれぞれ使用した試料AおよびB、ならびに試料EおよびFよりも低い。開示される硫黄を含有しない(または活性硫黄を含有しない)シランカップリング剤、およびそれを官能化されたポリマーとともに含有するゴムコンパウンドは、従来のコンパウンドよりも加工性を向上させることが結論づけられる。
【0085】
[00080]図3には、試料A~Hの損失正接値が、測定されたひずみレベルで示されている。損失正接値は、ゴムコンパウンドのヒステリシスを示す指標であり、ゴムコンパウンドがタイヤの転がり抵抗に及ぼす効果を予測するものである。10%ひずみ時の損失正接値が低いほど、予測ヒステリシスが低くなり、結果として、タイヤの転がり抵抗の低減に有利に働く。
【0086】
[00081]図3において、実験試料Gの損失正接は、他の試料よりも低いことが分かる。これは、シラン官能化エラストマーと活性硫黄部分を含有しないシランカップリング剤とから形成されたそのようなゴムコンパウンドのトレッドを有する車両用タイヤの転がり抵抗が有利に低減することを示す。また、そのようなコンパウンドのタイヤを用いる車両も、燃費が有利に低減する。また、図3では、実験試料Hの損失正接値が対照試料Dとほぼ同じであり、実験試料GおよびHの応力ひずみが対照試料AおよびBよりも有意に低いことを示すことも分かる。
【0087】
[00082]このことは、開示されるゴムコンパウンド(シラン官能化SBRと活性硫黄部分を含有しないカップリング剤とから形成されたゴムコンパウンド)のトレッドを有する車両用タイヤの転がり抵抗は、従来のゴムコンパウンド(ベースSBRと硫黄部分を含有するカップリング剤とから形成されたゴムコンパウンド)のトレッドを有する車両用タイヤの転がり抵抗と比べて(ほぼ同じでなければ)有意に向上することを意味する。
【0088】
[00083]さらに、ゴムコンパウンドの粘弾性特性は、図4において、温度に対する損失正接値の温度掃引プロットを用いて特徴づけられる。試料A~Hは、-40℃から-20℃の領域で単一の損失正接のピークを示すことが分かる。
【0089】
[00084]本明細書で提供した本発明の説明に照らして、本発明の変形形態が可能である。ある特定の例示的な実施形態および詳細が主題の発明を例示する目的で示したが、主題の発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および改変を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、説明した特定の実施形態において、添付の特許請求の範囲によって定義する本発明の意図した全範囲内にある変更を行うことができると理解されるべきである。
【0090】

[発明の態様]
[1]
少なくとも1つのジエンエラストマー、
シリカを含む補強充填剤、および
シランカップリング剤
を含み、
ジエンエラストマーが、シラン官能化エラストマーであり、
シランカップリング剤が、活性硫黄部分を含有しない
ことを特徴とする、硫黄加硫可能ゴムコンパウンド。
[2]
シリカとカップリング剤とのシラン化反応、およびシラン官能化エラストマーとカップリング剤とのシロキシル縮合反応の反応生成物である、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[3]
カップリング剤が、一般式A-R-A’(式中、AおよびA’は、それぞれ独立して、シリカおよびジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表し、Rが存在する場合は炭化水素鎖であるが、Rは存在しなくてもよい)を有する、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[4]
炭化水素鎖、またはヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素であり、該炭化水素が、1~10の間の炭素数を有する、[3]に記載のゴムコンパウンド。
[5]
カップリング剤が、ケイ素原子上に少なくとも2つの脱離基を有する単官能性および/または二官能性の有機シランである、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[6]
脱離基が、それぞれ独立して、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基からなる群から選択される、[5]に記載のゴムコンパウンド。
[7]
第1の脱離基が、ケイ素原子を介して補強充填剤との結合をもたらし、第2の脱離基が、官能化エラストマーとの結合をもたらす、[5]に記載のゴムコンパウンド。
[8]
カップリング剤が、一般式Q-A
(式中、A基は、ケイ素およびジエンエラストマーの両方に結合することが可能な部分を表し、
式中、Qは任意に、炭化水素鎖、またはヘテロ原子(O、N、P)を含有する炭化水素である)
を有する二官能性有機シランである、1に記載のゴムコンパウンド。
[9]
前記部分が、ケイ素原子上に少なくとも2つの脱離基を含み、脱離基が、それぞれ独立して、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびフェノキシ基からなる群から選択される、[8]に記載のゴムコンパウンド。
[10]
前記部分が、
ケイ素原子を介して補強充填剤との結合をもたらす第1の脱離基、および
ケイ素原子を介して官能化エラストマーとの結合をもたらす第2の脱離基
を含む、[8]に記載のゴムコンパウンド。
[11]
シランカップリング剤が、n-オクチルトリエトキシシラン(EtO)Si-Cである、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[12]
シランカップリング剤が、ビス(トリエトキシシリル)オクタン((EtO)Si-(CHSi(OEt)である、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[13]
官能化されたジエンエラストマーが、単一のシラノール官能基を含む末端官能基または単一のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって特徴づけられる、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[14]
官能化されたジエンエラストマーが、ブタジエンスチレンまたはブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーである、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[15]
タイヤ部品、ゴムベルト、またはホースに組み込まれている、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[16]
ゴムコンパウンドが、シリカ充填剤と官能化エラストマーとがカップリング剤に結合しているシロキサン(Si-O-Si)連結を含む官能ポリマーである、[1]に記載のゴムコンパウンド。
[17]
沈降シリカに含有されるヒドロキシル基と反応性で、かつジエンエラストマーに含まれるシラン部分と反応性の、少なくとも1つの末端基を含む、硫黄を含有しない二官能性シランカップリング剤。
[18]
沈降シリカに含有される少なくとも1つのヒドロキシル基と選択的に反応性で、かつジエンエラストマーに含まれるシラン部分と選択的に反応性の、少なくとも第2の末端基を含む、[17]に記載のカップリング剤。
[19]
カップリング剤がタイヤ用ゴムコンパンドに組み込まれる、[18]に記載のカップリング剤。
[20]
シラン官能化ジエンエラストマーと硫黄を含まないシランカップリング剤との間のシロキシ縮合反応の反応生成物であるポリマーを含む、タイヤ中に組み込むための、非活性シリカ含有ゴムコンパウンド。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【外国語明細書】