(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088357
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】多段ルーツ式真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
F04C25/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203004
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000127123
【氏名又は名称】株式会社アンレット
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】横井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】横井 亮知
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB12
3H129BB43
3H129CC02
3H129CC09
3H129CC13
3H129CC23
(57)【要約】
【課題】少ないスペースで設置できるコンパクトな形態の多段ルーツ式真空ポンプ10を提供すること。
【解決手段】ロータ室17,18,19,20の吐出口33,34,35,36と次段のロータ室18,19,20,21の吸込口29,30,31,32を連通する流体通路38,39,40,41をケーシング11の外部に配管するのではなくて、ロータ室17,18,19,20,21の外周部に形成しする。ポンプ形態がコンパクトになり、少ないスペースで多段ルーツ式真空ポンプ10を設置できる。ロータ室17,18,19,20,21の外周部に形成した流体通路38,39,40,41に隣接して水冷ジャケット42を設け、流体通路38,39,40,41を通過する圧縮流体を効率良く冷却する。最終段のロータ室21に冷却用気体を導入する冷却気体導入通路43を設け、冷却気体導入通路43から最終段のロータ室21に冷却用気体を導入することにより圧縮流体を直接冷却して多段ルーツ式真空ポンプ10の温度低減を図る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに複数段のロータ室を設けて各ロータ室にルーツロータを回転可能に組み付け、一のロータ室の吐出口と次段のロータ室の吸込口を流体通路で連通し、流体通路を通して初段のロータ室から順次、最終段のロータ室へ流体を吸引し、各段のロータ室で流体を圧縮する多段ルーツ式真空ポンプであって、
ロータ室の外周部を形成するケーシングの部位に流体通路を形成したことを特徴とする多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項2】
流体通路に隣接するように水冷ジャケットを設け、水冷ジャケットに貯えた冷却水で流体通路を通過する圧縮流体を冷却するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項3】
最終段のロータ室に冷却用気体を導入する冷却気体導入通路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項4】
中間段のロータ室の外周部に設けた流体通路と最終段のロータ室の吐出口をバイパス管で接続するとともに、バイパス管に逆止弁を設け、ポンプ内圧が所定圧力を超えたとき逆止弁を開いて中間段のロータ室の圧力流体の一部が最終段の吐出口で合流するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項5】
ケーシングにおける各段のロータ室の下部にドレン口を設け、上部に均圧口を設け、ドレン口と均圧口を配管接続し、各段のロータ室の下部と上部の間を均圧状態にしたことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項6】
ケーシングを、吸込口を設けたアッパケーシングと吐出口を設けたロアケーシングから成り、両ケーシングを合体した2分割構造とし、
両ケーシングの接合面にシールボンドを塗布し、
余剰のシールボンドが流体通路に侵入するのを防止するため接合面に開口する流体通路の開口端面を溝で囲ったことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項7】
ケーシングにルーツロータのシャフトが貫通するハウジングを組み付け、
ハウジングにシャフトを回転可能に支持するベアリングを組み込み、
シャフトに被せたシャフトスリーブに第1オイルシールと第2オイルシールが装着され、両オイルシールで中間室を区画形成し、
ハウジングから突出するシャフトの端部に組み付けたタイミングギヤを覆うとともに、タイミングギヤとベアリングへ給油される潤滑油の貯留部を内部に設けたギヤカバーをハウジングに組み付け、
中間室の内部に、初段のロータ室に隣接する第1オイルシールとベアリングに隣接する第2オイルシールを、カラーを介してシャフトに装着して中間室を軸封したことを特徴とする請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【請求項8】
中間室にハウジングのドレンを排出するハウジングドレン口と、不活性ガス又は大気の導入口を設けたことを特徴とする請求項7に記載の多段ルーツ式真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多段ルーツ式真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
多段ルーツ式真空ポンプの一形式として、特開2001-27190号公報には、ケーシングに3段のロータ室を設けて各ロータ室にルーツロータを回転可能に組み付け、初段のロータ室の吐出口と2段目のロータ室の吸込口、2段目のロータ室の吐出口と最終段のロータ室の吸込口をそれぞれ流体通路で連通し、流体通路を通して初段のロータ室から順次、最終段のロータ室へ流体を吸引し、各段のロータ室で流体を圧縮する多段ルーツ式真空ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の多段ルーツ式真空ポンプでは、一のロータ室の吐出口と次段のロータ室の吸込口を連通する流体通路として管路をケーシングの外部に配置しているため、ポンプ形態が嵩張り、設置に広いスペースが必要となる。
本発明はかかる点に鑑み、少ないスペースで設置できるコンパクトな形態の多段ルーツ式真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ケーシングに複数段のロータ室を設けて各ロータ室にルーツロータを回転可能に組み付け、一のロータ室の吐出口と次段のロータ室の吸込口を流体通路で連通し、流体通路を通して初段のロータ室から順次、最終段のロータ室へ流体を吸引し、各段のロータ室で流体を圧縮する多段ルーツ式真空ポンプであって、
ロータ室の外周部を形成するケーシングの部位に流体通路を形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、流体通路に隣接するように水冷ジャケットを設け、水冷ジャケットに貯えた冷却水で流体通路を通過する圧縮流体を冷却するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、
最終段のロータ室に冷却用気体を導入する冷却気体導入通路を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、
中間段のロータ室の外周部に設けた流体通路と最終段のロータ室の吐出口をバイパス管で接続するとともに、バイパス管に逆止弁を設け、ポンプ内圧が所定圧力を超えたとき逆止弁を開いて中間段のロータ室の圧力流体の一部が最終段の吐出口で合流するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、
ケーシングにおける各段のロータ室の下部にドレン口を設け、上部に均圧口を設け、ドレン口と均圧口を配管接続し、各段のロータ室の上部と下部の間を均圧状態にしたことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、
ケーシングを、吸込口を設けたアッパケーシングと吐出口を設けたロアケーシングから成り、両ケーシングを合体した2分割構造とし、
両ケーシングの接合面にシールボンドを塗布し、
余剰のシールボンドが流体通路に侵入するのを防止するため接合面に開口する流体通路の開口端面を溝で囲ったことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、 請求項1に記載の多段ルーツ式真空ポンプにおいて、
ケーシングにルーツロータのシャフトが貫通するハウジングを組み付け、
ハウジングにシャフトを回転可能に支持するベアリングを組み込み、
シャフトに被せたシャフトスリーブに第1オイルシールと第2オイルシールを装着され、両オイルシールで中間室を区画形成し、
ハウジングから突出するシャフトの端部に組み付けたタイミングギヤを覆うとともに、タイミングギヤとベアリングへ給油される潤滑油の貯留部を内部に設けたギヤカバーをハウジングに組み付け、
中間室の内部に、初段のロータ室に隣接する第1オイルシールとベアリングに隣接する第2オイルシールを、カラーを介してシャフトに装着して中間室を軸封したことを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の多段ルーツ真空ポンプにおいて、中間室にハウジングのドレンを排出するハウジングドレン口と、不活性ガス又は大気の導入口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ロータ室の吐出口と次段のロータ室の吸込口を連通する流体通路をケーシングの外部に配管するのではなくて、ロータ室の外周部に形成したので、ポンプ形態がコンパクトになり、少ないスペースで多段ルーツ式真空ポンプを設置できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ロータ室の外周部に形成した流体通路に隣接して水冷ジャケットを設けたので、流体通路を通過する圧縮流体を効率良く冷却できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、最終段のロータ室に冷却用気体を導入する冷却気体導入通路を設けたので、冷却気体導入通路から最終段のロータ室に冷却用気体を導入することにより採取圧縮流体を直接冷却して多段ルーツ式真空ポンプの温度低減を図ることがでる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、、ポンプ内圧が所定圧力を超えたとき中間段のロータ室の圧力流体の一部を最終段の吐出口で合流させるので、多段ルーツ式真空ポンプの内部の圧力が低減され、所要動力の増大を抑制し、省エネ運転が可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、各段のロータ室の上部と下部の間を配管接続して均圧状態にしたので、ロータ室に溜まったドレンを効率的に排出回収できる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、ケーシングの組み立て時、アッパケーシングとロアケーシングの接合面に塗布したシールボンドが流体通路に侵入するのを溝で防止でき、組み立て作業が容易になる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、第1オイルシールによってロータ室の流体がベアリング側へ漏出するのを防止するとともに、第2オイルシールでベアリングから潤滑油がロータ室に侵入するのを防止できる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、中間室にハウジングのドレンを排出するハウジングドレン口と、不活性ガス又は大気の導入口を設けたので、中間室を不活性ガスで加圧し、あるいは大気圧にすることで、ハウジングのドレンを効率的に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例に係る多段ルーツ式真空ポンプの主要部を示す断面図である。
【
図5】同多段ルーツ式真空ポンプを示す平面図である。
【
図6】同多段ルーツ式真空ポンプを示す底面図である。
【
図8】同多段ルーツ式真空ポンプのハウジングを示す拡大断面図である。
【実施例0022】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1には本発明の一実施例に係る多段ルーツ式真空ポンプ10が示されている。当該多段ルーツ式真空ポンプ10はケーシング11、左右のハウジング12、ギヤカバー13及び駆動モータ14を備えている。ケーシング11はアッパケーシング15とロアケーシング16を合体して構成されている。
【0023】
ケーシング11には5段のロータ室17,18,19,20,21が形成され、各ロータ室17,18,19,20,21には前後2本のシャフト22(
図2、
図4参照)のそれぞれに一体に設けた三葉のルーツロータ23,24,25,26,27が回転可能に組み込まれている。
【0024】
アッパケーシング15には各ロータ室17,18,19,20,21にそれぞれ連通する吸込口28,29,30,31,32が形成され、ロアケーシング16には各ロータ室17,18,19,20,21にそれぞれ連通する吐出口33,34,35,36,37が形成されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ケーシング11には一段目のロータ室の17の吐出口33と二段目のロータ室18の吸込口29を連通する流体通路38が1段目のロータ室17の外周部から2段目のロータ室18の外周部にかけて形成されている。同様に、2段目のロータ室18の吐出口34と3段目のロータ室19の吸込口30を連通する流体通路39が2段目のロータ室18の外周部から3段目のロータ室19の外周部にかけて形成され、3段目のロータ室19の吐出口35と4段目のロータ室20の吸込口31を連通する流体通路40が3段目のロータ室19の外周部から4段目のロータ室20の外周部にかけて形成され、4段目のロータ室20の吐出口36と5段目のロータ室21の吸込口32を連通する流体通路41が4段目のロータ室20の外周部から5段目のロータ室21の外周部にかけて形成されている。
【0026】
図2に示すように、流体通路39の下半分にはこれに隣接するように水冷ジャケット42が設けられている。同様に、他の流体通路38,40,41にも水冷ジャケット42が隣接して設けられている。
【0027】
図4に示すように、最終段のロータ室21には外部から冷却用気体を導入する冷却気体導入通路43が設けられている。
【0028】
3段目のロータ室19の外周部から4段目のロータ室20の外周部にかけて設けた流体通路40と最終段である5段目のロータ室21の吐出口37がケーシング11の外部に配管したバイパス管44で接続されている。このバイパス管44には逆止弁45が設けられている。ポンプ内圧が所定圧力を超えたとき逆止弁45を開いて3段目のロータ室19の圧力流体の一部が5段目の吐出口37で合流する。
【0029】
図1に示すように、ケーシング11の下部には、ロータ室17,18,19からドレンを排出するドレン口46,47,48、49が設けられ、ケーシンク11上部に均圧口50、51,52、53が設けられている。そして、
図5及び
図6に示すように、ドレン口46と均圧口50が管路54で接続されている。同様に、ドレン口47と均圧口51、ドレン口48と均圧口52、ドレン口49と均圧口53がそれぞれ各管路54,55,56,57で接続されている。
【0030】
吸込口28,29,30,31,32を設けたアッパケーシング15と、吐出口33,34,35,36,37を設けたロアケーシング16の接合面58(
図2、
図4参照)にはシールボンドが塗布されている。そして、接合面58に開口する流体通路38,39,40,41の開口端面を囲むように溝59、60,61,62、が形成されている。そのため、余剰のシールボンドは溝に溜まるので、流体通路38,39,40,41に侵入するのを防止できる。
【0031】
ケーシング11に組み付けた左右のハウジング12にルーツロータ23,24,25,26,27のシャフト22が貫通している。このハウジング12にはシャフト22を回転可能に支持するベアリング66が組み込まれている。また、シャフト22に被せたシャフトスリーブ63に第1オイルシール70と第2オイルシール71が装着され、両オイルシール70,71で中間室65が区画形成されている。
【0032】
右側のハウジング12から突出するシャフト22の端部にはタイミングギヤ67が組み付けられ、タイミングギヤ67とベアリング66へ給油される潤滑油68の貯留部を内部に設けたギヤカバー13がタイミングギヤ67に被せるようにハウジング12に組み付けられている。
中間室65にはハウジング12のドレンを排出するハウジングドレン口73と、不活性ガス又は大気の導入口74が設けられている。
【0033】
本実施例に係る多段ルーツ式真空ポンプ10の構造は以上の通りであって、ロータ室17,18,19,20の吐出口33,34,35,36と次段のロータ室18,19,20,21の吸込口29,30,31,32を連通する流体通路38,39,40,41をケーシング11の外部に配管するのではなくて、ロータ室17,18,19,20,21の外周部に形成したので、ポンプ形態がコンパクトになり、少ないスペースで多段ルーツ式真空ポンプ10を設置できる。
【0034】
ロータ室17,18,19,20,21の外周部に形成した流体通路38,39,40,41に隣接して水冷ジャケット42を設けたので、流体通路38,39,40,41を通過する圧縮流体を効率良く冷却できる。
【0035】
最終段のロータ室21に冷却用気体を導入する冷却気体導入通路43を設けたので、冷却気体導入通路43から最終段のロータ室21に冷却用気体を導入することにより圧縮流体を直接冷却して多段ルーツ式真空ポンプ10の温度低減を図ることがでる。
【0036】
ポンプ内圧が所定圧力を超えたとき3段目のロータ室19の圧力流体の一部を最終段のロータ室21の吐出口37で合流させるので、多段ルーツ式真空ポンプ10の内部の圧力が低減され、所要動力の増大を抑制し、省エネ運転が可能となる。
【0037】
各段のロータ室17,18,19,20,21の上部と下部の間を配管接続して均圧状態にしたので、ロータ室17,18,19,20,21に溜まったドレンを効率的に排出回収できる。
【0038】
ケーシング11の組み立て時、アッパケーシング15とロアケーシング16の接合面58に塗布したシールボンドが流体通路38,39,40,41に侵入するのを溝で防止でき、組み立て作業が容易になる。
【0039】
第1オイルシール70によってロータ室17、18,19,20,21の流体がベアリング66側へ漏出するのを防止するとともに、第2オイルシール71でベアリング66から潤滑油68がロータ室17、18,19,20,21に侵入するのを防止できる。
【0040】
中間室65にハウジングのドレンを排出するハウジングドレン口73と、不活性ガス又は大気の導入口74を設けたので、中間室65を不活性ガスで加圧し、あるいは大気圧にすることで、ハウジング12のドレンを効率的に排出できる。