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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088366
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B41J2/175 301
B41J2/175 303
B41J2/175 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203030
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 崇
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA29
2C056EB25
2C056EB50
2C056EB56
2C056EC07
2C056EC24
2C056EC36
2C056EC38
2C056FA04
(57)【要約】
【課題】インクの使用量を高精度に検出することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】インクを蓄積するインクカートリッジ33と、インクカートリッジ33のインクの残量を検出する残量検出センサ34とを備える。また、プリントヘッド36から吐出するインクのドロップ数をカウントし、ドロップ数のカウント値に基づいて印刷に要したインク量を算出し、プリントヘッド36のクリーニング回数に基づいて、クリーニングに要したインク量を算出する。インクカートリッジ33のインクを消費したことが検出されたときの印刷に要したインク量とクリーニングに要したインク量の合計量と、インクカートリッジ33での消費量との差分を算出し、差分に基づいて、プリントヘッド36に印加する電圧値、及びプリントヘッドのクリーニングのインクパージ時間を調整する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドからインクを吐出して印刷媒体に印刷する印刷装置であって、
複数色のインクを蓄積するインクカートリッジと、
前記インクカートリッジのインクの残量を検出する残量検出部と、
前記プリントヘッドから吐出するインクのドロップ数をカウントし、ドロップ数のカウント値に基づいて印刷に要したインク量を算出する第1の使用量算出部と、
前記プリントヘッドのクリーニング回数に基づいて、クリーニングに要したインク量を算出する第2の使用量算出部と、
前記残量検出部にて、前記インクカートリッジのインクを消費したことが検出されたときの前記印刷に要したインク量と前記クリーニングに要したインク量の合計量と、前記インクカートリッジでの消費量との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記プリントヘッドに印加する電圧値、及び前記プリントヘッドのクリーニングのインクパージ時間を調整する演算制御部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりプリンタ、複写装置、ファクシミリなどの印刷装置として、インクカートリッジに接続されたプリントヘッドからインク液滴を吐出し、印刷用紙などの印刷媒体に着弾させることにより、画像を形成するインクインクジェット方式の印刷装置が知られている。
【0003】
インクジェット方式の印刷装置では、インクの使用量を測定し、この使用量に基づいてインクカードリッジ内のインク残量を算出し、ユーザに通知することが行われている。インク残量を通知することにより、インク不足により印刷ができなくなる前に、先行してインクカートリッジの交換をユーザに促すことができる。
【0004】
特許文献1には、印写画像データに含まれる画素数、及び画素の大きさの情報に基づいてインクの使用量を算出し、更に、温度、湿度などの環境情報に基づいてインクの使用量を補正することにより、プリントヘッドの周囲環境に応じたインクの使用量を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-95086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された方法では、プリントヘッドの周囲環境に基づいてインク使用量を補正するものの、計算により求めたインク使用量と、実際に使用したインク量との相関をとっていない。このため、同一プリントヘッド内の各ノズルから吐出する液滴量は、各ピエゾ素子の負荷容量のバラツキや、各サーマル素子の抵抗値のバラツキなどに起因し、液滴量の誤差として発生した場合には何らかの補正が必要になる。また、インクジェット方式の場合、ノズル面のクリーニングのためにインクパージ動作を行っている。この際、プリントヘッド内の流路抵抗、インク経路部材や圧力生成部材の部品バラツキになどにより、同じ条件下でインクパージ制御を行っても、プリントヘッドから吐出される液滴量に差が生じることがある。つまりは、ノズル毎、プリントヘッド毎、インクパージ機構毎に、周囲環境に対する特性の変化はそれぞれ異なるため、補正をしてもその精度には限界があり、インクの使用量を高精度に検出することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、インクの使用量を高精度に検出することが可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明は、プリントヘッドからインクを吐出して印刷媒体に印刷する印刷装置であって、複数色のインクを蓄積するインクカートリッジと、前記インクカートリッジのインクの残量を検出する残量検出部と、前記プリントヘッドから吐出するインクのドロップ数をカウントし、ドロップ数のカウント値に基づいて印刷に要したインク量を算出する第1の使用量算出部と、前記プリントヘッドのクリーニング回数に基づいて、クリーニングに要したインク量を算出する第2の使用量算出部と、前記残量検出部にて、前記インクカートリッジのインクを消費したことが検出されたときの前記印刷に要したインク量と前記クリーニングに要したインク量の合計量と、前記インクカートリッジでの消費量との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記プリントヘッドに印加する電圧値、及び前記プリントヘッドのクリーニングのインクパージ時間を調整する演算制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの使用量を高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る印刷装置の全体構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る印刷装置の制御ブロック図である。
図3図3は、プリントヘッドの詳細な構成を示すブロック図である。
図4図4は、ピエゾ素子の駆動電圧、及び、クリーニング時におけるインクパージ時間を制御する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0014】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が主経路RC、破線で示す経路が反転経路RR1、RR2である。以下の説明における上流、下流は、搬送経路上の搬送方向における上流、下流を意味する。
【0015】
図1図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷ユニット3A、3Bと、中間搬送部4と、排紙部5と、制御部6(図2参照)とを備える。なお、印刷ユニット3A、3B等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0016】
給紙部2は、印刷ユニット3Aに用紙Pを給紙する。給紙部2は、用紙Pが積載される給紙台11を備える。また、給紙部2は、給紙台11上の用紙Pを印刷ユニット3Aへ搬送する給紙ローラ(図示省略)を備える。
【0017】
印刷ユニット3Aは、給紙部2から給紙された用紙Pを主経路RCに沿って搬送しつつ、用紙Pに印刷する。印刷ユニット3Aは、進入ローラ21と、進入モータ22と、レジストローラ23と、レジストモータ24と、搬送印刷部25と、連絡ローラ26と、連絡モータ27と、操作パネル28と、インクカートリッジ33を備える。
【0018】
進入ローラ21は、給紙部2から用紙Pを受け取って搬送する。進入モータ22は、進入ローラ21を回転駆動させる。
【0019】
レジストローラ23は、進入ローラ21から搬送されてきた用紙Pが突き当てられ、用紙Pにたるみが形成された後、搬送印刷部25に向けて用紙Pを搬送する。レジストモータ24は、レジストローラ23を回転駆動させる。
【0020】
搬送印刷部25は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに印刷を行う。搬送印刷部25は、ヘッドユニット31と、ベルトプラテン部32とを備える。
【0021】
ヘッドユニット31は、ベルトプラテン部32により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット31は、プリントヘッド36K、36C、36M、36Yと、ヘッドホルダ37と、を備える。なお、以下では4つのプリントヘッド36K、36C、36M、36Yを総称して示す場合には、添え字を省略し「プリントヘッド36」と記載する。
【0022】
プリントヘッド36は、インクカートリッジ33に接続され、該インクカートリッジ33から供給されるインクを、ベルトプラテン部32により搬送される用紙Pに吐出する。インクカートリッジ33は、複数色のインクを蓄積する。
【0023】
図3は、プリントヘッド36の詳細な構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリントヘッド36は、電圧供給部361と、ドライバ回路362と、ピエゾ素子363と、カウント部364と、を備えている。
【0024】
電圧供給部361は、制御部6で設定された駆動電圧をドライバ回路362に供給する。
【0025】
ドライバ回路362は、電圧供給部361から出力される駆動電圧により、ピエゾ素子363を駆動させる。ピエゾ素子363が駆動することにより、インクカートリッジ33から供給されるインクを吐出する。従って、電圧供給部361から出力されるピエゾ素子363の駆動電圧を制御することにより、プリントヘッド36から吐出されるインク量を調節することができる。
【0026】
カウント部364は、プリントヘッド36から吐出される液滴のドロップ数をカウントする。カウント部364でカウントされたドロップ数のデータは、制御部6に送信される。
【0027】
インクカートリッジ33には、残量検出センサ34(残量検出部;図2参照)が接続されている。残量検出センサ34は、インクカートリッジ33に貯留されているインクの残量が予め設定した下限値(例えば、残量ゼロ)まで低下したか否かを検出する。残量検出センサ34は、インクの残量が下限値まで低下した際に、制御部6にインク不足を示すためのエラー信号を出力する。
【0028】
ヘッドホルダ37は、中空状の略直方体形状をなしており、プリントヘッド36を保持する。
【0029】
ベルトプラテン部32は、レジストローラ23から搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。
【0030】
連絡ローラ26は、ベルトプラテン部32から搬送されてきた用紙Pを搬送して中間搬送部4へ送り出す。連絡モータ27は、連絡ローラ26を回転駆動させる。
【0031】
図1に示す操作パネル28は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル28は、液晶表示パネル等を有する表示部(図示省略)と、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部(図示省略)とを備える。
【0032】
印刷ユニット3Bは、中間搬送部4を介して印刷ユニット3Aから搬送されてきた用紙Pを主経路RCに沿って搬送しつつ、用紙Pに印刷する。印刷ユニット3Bは、上述した印刷ユニット3Aと同様の構成を有する。印刷装置1で両面印刷を行う場合、印刷ユニット3Bは、用紙Pの印刷ユニット3Aで印刷された面(表面)とは異なる面(裏面)に印刷を行う。
【0033】
中間搬送部4は、印刷ユニット3Aから印刷ユニット3Bへ用紙Pを搬送する。印刷装置1で両面印刷を行う場合、中間搬送部4は、印刷ユニット3Aで一方の面(表面)に印刷された用紙Pを表裏反転して印刷ユニット3Bへ搬送する。中間搬送部4は、進入ローラ41と、切替部42と、反転ローラ43と、連絡ローラ44とを備える。
【0034】
進入ローラ41は、印刷ユニット3Aから用紙Pを受け取って搬送する。進入ローラ41は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0035】
切替部42は、進入ローラ41により搬送される用紙Pの搬送経路を主経路RCと反転経路RR1との間で切り替える。印刷装置1で印刷ユニット3A,3Bにより両面印刷を行う場合、切替部42は、用紙Pを反転経路RR1へ導く。印刷装置1で印刷ユニット3A,3Bの一方のみを用いて片面印刷を行う場合、切替部42は、用紙Pを主経路RCに沿って搬送されるようガイドする。
【0036】
反転ローラ43は、切替部42により反転経路RR1へ導入された用紙Pをスイッチバックして連絡ローラ44へ搬送する。反転ローラ43は、図示しないモータにより正逆転可能に構成されている。
【0037】
連絡ローラ44は、進入ローラ41または反転ローラ43から搬送されてきた用紙Pを搬送して印刷ユニット3Bへ送り出す。連絡ローラ44は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0038】
排紙部5は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部5は、進入ローラ51と、切替部52と、反転ローラ53と、複数対の排紙ローラ54と、排紙台55とを備える。
【0039】
進入ローラ51は、印刷ユニット3Bから用紙Pを受け取って搬送する。進入ローラ51は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0040】
切替部52は、進入ローラ51により搬送される用紙Pの搬送経路を主経路RCと反転経路RR2との間で切り替える。
【0041】
反転ローラ53は、切替部52により反転経路RR2へ導入された用紙Pをスイッチバックして排紙ローラ54へ搬送する。反転ローラ53は、図示しないモータにより正逆転可能に構成されている。
【0042】
排紙ローラ54は、進入ローラ51または反転ローラ53から搬送されてきた用紙Pを搬送して排紙台55へ排紙する。排紙ローラ54は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0043】
排紙台55は、排紙ローラ54により排紙された印刷済みの用紙Pが積載されるものである。
【0044】
図2に示す制御部6は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部6は、カウント部364でカウントされたカウント値に基づいて、印刷に要したインク量を算出する。即ち、制御部6は、プリントヘッド36から吐出するインクのドロップ数をカウントし、ドロップ数のカウント値に基づいて印刷に要したインク量を算出する第1の使用量算出部としての機能を備えている。
【0045】
制御部6はまた、インクをパージしてプリントヘッド36をクリーニングする際の、インクパージ時間に基づいてクリーニングに要したインク量を算出する。即ち、制御部6は、プリントヘッド36のクリーニング回数に基づいて、クリーニングに要したインク量を算出する第2の使用量算出部としての機能を備えている。
【0046】
制御部6はまた、残量検出センサ34にて、インクカートリッジ33のインクを消費したことが検出されたときの印刷に要したインク量とクリーニングに要したインク量の合計量と、インクカートリッジでの消費量との差分(後述するΔR)を算出し、この差分ΔRに基づいて、プリントヘッド36に印加する電圧値、及びプリントヘッドのクリーニングのインクパージ時間を調整する演算制御部としての機能を備えている。また、制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0047】
本実施形態に係る印刷装置1では、ピエゾ素子363の駆動電圧、及び、プリントヘッド36をクリーニングする際のインクパージ時間を調整することにより、計算により算出されるインクの使用量と、実際に消費されたインクの使用量が一致するように制御する。
【0048】
[本実施形態の動作]
以下、ピエゾ素子363の駆動電圧、及び、クリーニング時におけるインクパージ時間を制御する処理手順を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
初めにステップS11において制御部6は、各インクカートリッジ33に印字累積液滴量を「Ra」、クリーニング累積液量を「Rb」、インクカートリッジ33の充填インク量を「Rc」に設定する。
【0050】
印字累積液滴量Raは、印字に要したインク量の累積値である。印字累積液滴量Raは、プリントヘッド36から吐出される液滴数と一滴のインク量との乗算で算出することができる。即ち、カウント部364(図3参照)にてカウントされる液滴数と、予め設定されている一滴のインク量とを乗算することにより、印字累積液滴量Raが算出される。
【0051】
クリーニング累積液量Rbは、ヘッドクリーニングに要したインク量の累積値である。ヘッドクリーニング時における単位時間当たりに使用するインク量と、インクパージ時間とを乗算することによりクリーニング累積液量Rbを算出することができる。
【0052】
充填インク量Rcは、新たなインクカートリッジ33に充填されているインク量から、前述した下限値におけるインク量を減算したインク量である。例えば、インクカートリッジ33に充填されているインクの総量である。
【0053】
ステップS12において制御部6は、ヘッドユニット31に搭載されているインクカートリッジ33が新たなインクカートリッジに交換されたことを検出する。この処理では、例えばユーザが新たなインクカートリッジに交換したときに交換した旨のデータ入力を行うことにより検出することができる。また、センサなどにより新たなインクカートリッジに取り換えられたことを検出してもよい。
【0054】
ステップS13において制御部6は、印字累積液滴量Ra及びクリーニング累積液量Rbをリセットする。
【0055】
ステップS14において制御部6は、インクカートリッジ33におけるインクの残量が下限値まで低下したか否かを判定する。具体的には、インクカートリッジ33のインクの残量が下限値まで低下した際に、残量検出センサ34(図2参照)により出力されるエラー信号が受信されたか否かを判定する。
【0056】
エラー信号が受信されない場合には(S14:NO)、ステップS15において制御部6は、印字累積液滴量Ra及びクリーニング累積液量Rbを随時算出する。
【0057】
エラー信号が受信された場合には(S14:YES)、ステップS16において制御部6は、下記(1)式により、充填インク量Rcと、使用したインク量との差分ΔRを算出する。
【0058】
ΔR=Rc-(Ra+Rb) ・・・(1)
ステップS17において制御部6は、差分ΔRに基づいて、下記(2)式により電圧補正値ΔRV、時間補正値ΔRTを算出する。
【0059】
ΔRV=ΔR*α
ΔRT=ΔR*(1-α) ・・・(2)
但し、「α」は、予め設定されているヘッド駆動補正電圧とクリーニング加圧補正時間の補正比率であり、「0<α<1」の数値である。「α」の数値は、例えばユーザが過去における経験値、統計値などにより適宜設定することが可能である。
【0060】
ステップS18において制御部6は、電圧補正値ΔRVに基づいて、ピエゾ素子363の駆動電圧の補正電圧V1を算出する。制御部6は、時間補正値ΔRTに基づいて、インクパージ時間の補正時間T1を算出する。
【0061】
ステップS19において制御部6は、ピエゾ素子363の駆動電圧に補正電圧V1を加算する。なお、補正電圧V1が負値である場合には、減算となる。制御部6は、インクパージ時間に補正時間T1を加算する。なお、補正時間T1が負値である場合には、減算となる。補正した駆動電圧及びインクパージ時間は、メモリ(図示省略)などに記憶保存される。
【0062】
そして、次回にカートリッジが交換された場合には、上記の処理で補正した駆動電圧によりピエゾ素子363を駆動させ、且つ補正したインクパージ時間によりプリントヘッド36のクリーニングを行うように制御する。
【0063】
こうして、実際に使用されたインク量と、計算により算出したインクの使用量が一致するように、ピエゾ素子363の駆動電圧、及びインクパージ時間を調整することができる。
【0064】
[本実施形態の効果]
このように、本実施形態に係る印刷装置1では、印字に使用したインク量とクリーニングに使用したインク量の合計が、カートリッジに蓄積されたインクの実使用量と一致するように、ピエゾ素子363の駆動電圧、及びクリーニング時のインクパージ時間が制御される。このため、印字累積液滴量Ra、及びクリーニング累積液量Rbで算出されるインク使用量を高精度に算出することが可能になる。
【0065】
その結果、印刷装置1により印刷用紙Pを印刷する際の、イールド枚数を精度良く設定することが可能になる。具体的には、図1に示した印刷ユニット3Aで印刷可能なイールド枚数と、印刷ユニット3Bで印刷するイールド枚数をほぼ一致させることが可能になる。このため、1枚当たりのインクコストを正確に把握することができる。
【0066】
また、実際に使用したインク量(例えば、1000mL)と、演算により算出したインクの使用量との相関を得るように、ピエゾ素子363の駆動電圧、及びクリーニング時のインクパージ時間が制御されるため、異なる印刷装置間であっても、同一のチャートを多くの枚数印刷するような場合において、インクの交換時期の乖離を低減することができる。
【0067】
なお、図4のステップS17の処理で算出される電圧補正値ΔRV、及び時間補正値ΔRTの少なくとも一方が、所定の閾値よりも大きくなったときに、この旨をユーザ、サービスマンなどに通知してもよい。こうすることにより、インク使用量の算出に何らかの異常が発生していることを迅速に通知することが可能になる。
【0068】
また、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0069】
[付記1]
プリントヘッドからインクを吐出して印刷媒体に印刷する印刷装置であって、
複数色のインクを蓄積するインクカートリッジと、
前記インクカートリッジのインクの残量を検出する残量検出部と、
前記プリントヘッドから吐出するインクのドロップ数をカウントし、ドロップ数のカウント値に基づいて印刷に要したインク量を算出する第1の使用量算出部と、
前記プリントヘッドのクリーニング回数に基づいて、クリーニングに要したインク量を算出する第2の使用量算出部と、
前記残量検出部にて、前記インクカートリッジのインクを消費したことが検出されたときの前記印刷に要したインク量と前記クリーニングに要したインク量の合計量と、前記インクカートリッジでの消費量との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記プリントヘッドに印加する電圧値、及び前記プリントヘッドのクリーニングのインクパージ時間を調整する演算制御部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置
2 給紙部
3A、3B 印刷ユニット
4 中間搬送部
5 排紙部
6 制御部
11 給紙台
21 進入ローラ
22 進入モータ
23 レジストローラ
24 レジストモータ
25 搬送印刷部
26 連絡ローラ
27 連絡モータ
28 操作パネル
31 ヘッドユニット
32 ベルトプラテン部
33 インクカートリッジ
34 残量検出センサ(残量検出部)
36(36C、36K、36M、36Y) プリントヘッド
37 ヘッドホルダ
41 進入ローラ
42 切替部
43 反転ローラ
44 連絡ローラ
51 進入ローラ
52 切替部
53 反転ローラ
54 排紙ローラ
55 排紙台
361 電圧供給部
362 ドライバ回路
363 ピエゾ素子
364 カウント部
図1
図2
図3
図4