(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088370
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】移動体に接続された線状部材の損耗抑制装置、及び損耗抑制装置を有する監視システム
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20230620BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230620BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230620BHJP
B61B 7/00 20060101ALI20230620BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20230620BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20230620BHJP
H02G 9/10 20060101ALI20230620BHJP
B64F 3/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E03F7/00
B64C39/02
B64C27/08
B61B7/00 A
E03F3/04 A
H02G11/00
H02G9/10
B64F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203037
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陰山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】益池 孝治
(72)【発明者】
【氏名】内堀 宗一朗
【テーマコード(参考)】
2D063
5G369
5G371
【Fターム(参考)】
2D063BA01
2D063EA03
5G369AA06
5G369BA05
5G371AA05
5G371BA05
(57)【要約】
【課題】
深い位置の下水管の中に線状部材を接続した移動体を移動させる場合であっても、線状部材が人孔の壁面や下水管との縁に接触を防止する。
【解決手段】
線状部材の損耗抑制装置であって、空間の入り口から空間の下方空間に垂下され、下方空間で横方向に移動する移動体と接続される線状部材と、空間の入り口から下方空間に垂下される垂下部材と、線状部材と垂下部材とに係合し、線状部材と垂下部材とを所定の距離に保ち、垂下部材に対する線状部材の向きを変更させて、移動体に接続された線状部材の損耗を抑制する方向転換部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材の損耗抑制装置であって、
空間の入り口から空間の下方空間に垂下され、下方空間で横方向に移動する移動体と接続される線状部材と、
空間の入り口から下方空間に垂下される垂下部材と、
前記線状部材と前記垂下部材とに係合し、前記線状部材と前記垂下部材とを所定の距離に保ち、移動体の移動に合わせて前記垂下部材に対する前記線状部材の向きを変更させて、移動体に接続された前記線状部材の損耗を抑制する方向転換部材と、を備える
損耗抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の損耗抑制装置であって、
前記方向転換部材に接続され、前記方向転換部材を吊り降ろして引き上げられる方向転換部垂下紐を備える
損耗抑制装置。
【請求項3】
請求項1から2の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記垂下部材は、
錘を備える
損耗抑制装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記方向転換部材は、
前記線状部材と前記垂下部材が内部を通るリングを有する
損耗抑制装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記方向転換部材は、
前記線状部材が内部を通る第1のリングと、
前記垂下部材が内部を通る第2のリングと、
前記第1のリングと前記第2のリングとを接合する接合体とを有する
損耗抑制装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記方向転換部材は、
前記垂下部材に沿って下方に降ろせる構造であり、
前記方向転換部材が、所定の位置よりも下方に移動することを抑制する下方移動抑制部材を備えた
損耗抑制装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記線状部材あるいは前記垂下部材の少なくとも一方の引き出し長が伸びないよう固定する固定装置を備える
損耗抑制装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の損耗抑制装置であって、
前記線状部材は、
回収用紐、電源線、信号線、流体配管、のうち少なくともいずれかを含む
損耗抑制装置。
【請求項9】
請求項7に記載の損耗抑制装置であって、
一端を前記固定装置に固定され、空間の入り口から下方空間に垂下される管内情報取得部材を有し、
前記管内情報取得部材は、
移動体との電波を送受信するアンテナと、
移動体の方向を照らす照明と、
移動体が含まれる方向を撮影するカメラ、のうち少なくとも一つを備える、
損耗抑制装置。
【請求項10】
損耗抑制装置を有する監視システムであって、
空間の入り口から空間の下方空間に垂下され、下方空間で横方向に移動し、下方空間の画像を撮影するカメラを備えた移動体と、
前記移動体に接続される線状部材と、
空間の入り口から下方空間に垂下される垂下部材と、
前記線状部材と前記垂下部材とに係合し、前記線状部材と前記垂下部材とを所定の距離に保ち、前記移動体の移動に合わせて前記垂下部材に対する前記線状部材の向きを変更させることで、移動体に接続された前記線状部材の損耗を抑制する方向転換部材と、を備える
監視システム。
【請求項11】
請求項10に記載の監視システムであって、
前記移動体は、飛行体、水面浮上体、車両型走行体のうち少なくともいずれかである、
監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間の横方向に移動する移動体に接続された線状部材の損耗抑制装置、損耗抑制装置を有する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ施設の調査に飛行体が使われるようになっている。インフラ施設としてたとえば硫化水素が発生中の下水管の場合、調査のため投入した飛行体が落下した場合に人が回収に行くことができない。あらかじめ飛行体に回収紐を接続して飛行させ、落下した場合にはその線状部材を地上から牽引することで回収することが可能となる。しかし、飛行体に接続された線状部材は、飛行体が下水管の延長方向に移動すると人孔の壁面や縁に一部が接触して摩耗するため耐久性が低下し、最悪の場合には切れてしまう。落下した飛行体を回収する場合でも同様に人孔の壁面や縁に一部が接触し、摩耗する。したがって、線状部材が壁面や縁に接触しない機構が必要である。
【0003】
この課題に関連し、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1では、人孔より長いケーブルガイドと、その先端のケーブルガイドローラーを介してケーブルを接続することで、人孔の壁面や縁にケーブルが接触することを回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、深い位置にある下水管の場合、特許文献1では長いケーブルガイドを準備する必要がある。ケーブルガイドが棒など長尺物の場合には準備や取り扱いが容易ではない課題がある。
【0006】
本発明の目的は、深い位置の下水管の中に線状部材を接続した移動体を移動させる場合であっても、線状部材が人孔の壁面や下水管との縁に接触を防止する移動体に接続された線状部材の損耗抑制装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、移動体に取り付ける線状部材の損耗を防止する損耗抑制装置を有する監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明の損耗抑制機構の一側面は、線状部材の損耗抑制装置であって、空間の入り口から空間の下方空間に垂下され、下方空間で横方向に移動する移動体と接続される線状部材と、空間の入り口から下方空間に垂下される垂下部材と、線状部材と垂下部材とに係合し、線状部材と垂下部材とを所定の距離に保ち、垂下部材に対する線状部材の向きを変更させて、移動体に接続された線状部材の損耗を抑制する方向転換部材と、を備える。
【0009】
あるいは、損耗抑制装置は、方向転換部材に接続され、方向転換部材を吊り降ろして引き上げられる方向転換部垂下紐を備える。
【0010】
あるいは、損耗抑制装置の垂下部材は、錘を備える。
【0011】
あるいは、損耗抑制装置の方向転換部材は、線状部材と垂下部材が内部を通るリングを有する。
【0012】
あるいは、損耗抑制装置の方向転換部材は、線状部材が内部を通る第1のリングと、垂下部材が内部を通る第2のリングと、第1のリングと第2のリングとを接合する接合体とを有する。
【0013】
あるいは、損耗抑制装置の方向転換部材は、垂下部材に沿って下方に降ろせる構造であり、方向転換部材が、所定の位置よりも下方に移動することを抑制する下方移動抑制部を備える。
【0014】
あるいは、損耗抑制装置は、線状部材あるいは垂下部材の少なくとも一方の引き出し長が伸びないよう固定する固定装置を備える。
【0015】
あるいは、損耗抑制装置の線状部材は、回収用紐、電源線、信号線、流体配管、のうち少なくともいずれかを含む。
【0016】
あるいは、損耗抑制装置は、一端を固定装置に固定され、空間の入り口から下方空間に垂下される管内情報取得部材を有し、管内情報取得部材は、移動体との電波を送受信するアンテナと、移動体の方向を照らす照明と、移動体が含まれる方向を撮影するカメラ、のうち少なくとも一つを備える。
【0017】
また、本発明の監視システムの一側面は、損耗抑制装置を有する監視システムであって、空間の入り口から空間の下方空間に垂下され、下方空間で横方向に移動する移動体と、移動体に接続される線状部材と、空間の入り口から下方空間に垂下される垂下部材と、線状部材と垂下部材とに係合し、線状部材と垂下部材とを所定の距離に保ち、垂下部材に対する線状部材の向きを変更させることで、移動体に接続された線状部材の損耗を抑制する方向転換部材と、を備える。
【0018】
あるいは、監視システムの移動体は、飛行体、水面浮上体、車両型走行体のうち少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、深い位置の下水管の中に線状部材を接続した飛行体を飛行させる場合であっても、線状部材が人孔の壁面や下水管との縁に接触して摩耗することで耐久性が低下し、最悪の場合には切れてしまう可能性を回避できる。長尺となるケーブルガイドではなく、紐やロープなど容易に曲げられる材料で構成される垂下部材を用いるため、準備や取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1に係り、飛行体が人孔の下の下水管内を飛行している断面模式図である。
【
図2】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が二つのリングと接合体から構成されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図3】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が一つのリングと一つの円筒と接合体から構成されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図4】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が一つのリングと一つの円筒と接合体と接合体の角度θを維持できる補強材から構成されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図5】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が二つのリングから構成されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図6】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が一つのリングで構成されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図7】本発明の実施例1に係り、方向転換部材が二つのリングと接合体から構成され、下方移動抑制部材が垂下部材に固定されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図8】本発明の実施例1に係り、下方移動抑制部材が垂下部材に固定されている状態の側面図と平面図の例である。
【
図9】本発明の実施例2に係り、構成要素を追加した場合に飛行体が飛行中の断面模式図である。
【
図10】本発明の実施例2に係り、管内情報取得垂下部材の下端部の例を拡大した図である。
【
図11】本発明の実施例2に係り、固定装置を上から見た平面図の例である。
【
図12】本発明の実施例2に係り、固定装置を側面から見た側面図の例である。
【
図13】本発明の実施例2に係り、方向転換部材が二つのリングと接合体から構成され、1本の方向転換部垂下紐が接続されている場合の断面図と平面図の例である。
【
図14】本発明の実施例3に係り、移動体が水面浮上体であり、人孔の下の下水管内を横方向に移動している断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0022】
なお、本発明の移動体としては下水管や雨水管内の調査用の飛行体や車両型走行体、船などの水面浮上体が挙げられるが、雨水管や貯留管、農業用水トンネルや共同溝など作業者が容易に内部へ入れないインフラの調査用移動体であっても良い。
【実施例0023】
図1は、本発明の実施例1に係り、移動体12がドローン等の飛行体であり、その飛行体が人孔10bの下の下水管内10cを飛行している断面模式図である。
【0024】
空間10は、例えば、地面のマンホール蓋を開けた際の孔の入り口10aと、ドローン等の移動体12が横方向に移動する下水管内、貯留管、農業用水トンネルや共同溝等の下方空間10cと、入り口10aから配下に広がる下方空間10cを接続する鉛直方向の孔(接続孔)10bとを有する。
【0025】
空間10の下方空間10cで横方向へ移動できる移動体12には線状部材14が接続されている。線状部材14は、空間10において、空間の入り口10aから下方空間10cの方向に垂下され、空間10に移動体12を出し入れする回収紐、移動体12に電源を供給する電源ケーブル、移動体12と電気信号や光信号をやり取りする情報ケーブル、移動体12に気体あるいは液体の機械エネルギーを供給するチューブなどのいずれでも良い。線状部材14は線状部材方向転換部材18(以下、方向転換部材18)の一端のリングの中を貫通している。下方空間10cで横方向へ移動する移動体12には、カメラや照明が搭載され、下方空間10cの状態を撮影し、下方空間10cの状況を地上の監視員が見ることができるよう、線状部材14を介して情報を送信できる構成となっている。
【0026】
方向転換部材18は、線状部材14と垂下部材16とに係合し、線状部材14と垂下部材16とを所定の距離に保ち、垂下部材16に対する線状部材14の向きを変更させる機能を有する。移動体12が横方向へ移動するのに合わせて、線状部材14はその延長が地上から繰り出されて供給される。
【0027】
垂下部材16は、空間の入り口10aから下方空間10cの方向に垂下される。方向転換部材18のもう一端のリングの中には垂下部材16の紐19の部分が貫通しているため、移動体12が横方向へ移動してその影響で線状部材14が横方向へ引っ張られても、線状部材14は垂下部材16から一定の距離以上離れない。
【0028】
垂下部材16は、紐19と錘とを有する。垂下部材16の紐19は、ワイヤロープ、鎖、樹脂チューブ等で構成する。垂下部材16の紐19が十分な強度や重みを有する場合には錘は不要である。方向転換部材18の二つのリングの間隔および上下方向の位置を適切に設定することによって、線状部材14が空間10の壁面や鋭い縁と接触するリスクを低減でき、損耗の抑制が可能となる。その結果、線状部材14が切れるリスクを最小化できる。
【0029】
線状部材14および垂下部材16が接触する方向転換部材18のリングの内側は、摩擦抵抗が小さい滑らかな金属あるいは樹脂であることが望ましい。リングには線状部材14および垂下部材16が引っ掛からないよう、断面が円形となっているなどエッジの無いことが望ましい。
【0030】
取り付けや取り外しの手間を減らすため、リングはカラビナやフックで実現しても良い。線状部材14が接触する部分に回転するプーリーを用いても良い。プーリーを用いる場合には線状部材14の向きが変わる箇所での抵抗を大幅に削減できるため、線状部材14の損耗抑制のみならず移動体12の横方向への移動に要するエネルギーも低減できる。なお、プーリーの場合には、軸の部分にベアリングを内蔵することがなお望ましい。
【0031】
移動体12がドローン等の飛行体である場合、飛行開始時や飛行中の状態として、機体が傾くような外力は加わらないことが望ましい。線状部材14と垂下部材16との距離が近すぎると垂下部材16に移動体12が接触して外力が加わる。特に、飛行開始時に機体が傾いてしまい、悪い影響を及ぼすことがある。そのため、方向転換部材18の二つのリング間の距離が移動体12の水平方向の長さの半分以上となるよう方向転換部材18の二つのリングの間を針金やピアノ線、硬質樹脂、アルミ材など棒状の材料である接合体で接続することでこの悪影響を低減できる。
【0032】
損耗抑制装置は、線状部材14、垂下部材16、方向転換部材18を含み、監視システムは、損耗抑制装置に加え、損耗抑止装置の線状部材14に接続されるドローン等の移動体を含む。
【0033】
図1に示したように、空間10や、空間10内に設けられる電線等の状況を確認するため、まず、垂下部材16が人孔に投下され、その後、線状部材14が接続された移動体12を空間10の下方に移動させる。移動体12の移動に伴い、方向転換部材18は、空間の下方に移動し、後述する下方移動抑制部材26(
図7参照)で、下方への移動が制限される。
【0034】
図2は、方向転換部材18が二つのリングと接合体から構成されている場合の断面図と平面図の例である。左側のリングには線状部材14が内側を貫通(内通)し、右側のリングには垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。垂下部材16の紐19と方向転換部材18の接合体との角度としてθが図中に示されている。重力によって方向転換部材18には鉛直下方向の力が働くため、
図2の構造の場合の角度θは0度から180度まで変化してしまい、移動体12が垂下部材16の紐19の部分に接触する可能性が高くなる。移動体12が水面浮上体である場合にはこの方向転換部材18を水に浮く素材あるいは構造とすることで角度θを90度に近く維持できるため、移動体12が垂下部材16の紐19の部分に接触し、移動体12が傾くことを抑制することができる。
【0035】
図3は、方向転換部材18が一つのリング31と一つの円筒32と、リング31と円筒32を接合する接合体から構成されている場合の断面図と平面図の例である。左側のリング31には線状部材14が内側を貫通(内通)し、右側の円筒32には垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。
【0036】
この円筒32についても、内側および上下の口で垂下部材16が接触する場所は、摩擦抵抗が小さい滑らかな金属あるいは樹脂であることが望ましく、垂下部材16の紐19の部分が引っ掛からないようエッジの無いことが望ましい。
【0037】
垂下部材16の紐19と方向転換部材18の接合体との角度としてθが図中に示されている。重力によって方向転換部材18には鉛直下方向の力が働くが、
図3の構造を取ることによって、垂下部材16の紐19の部分と方向転換部材18の右側の円筒32が接触して方向転換部材18の接合体が斜めとなることが抑制され、角度θは90度に近い角度を維持できる。前述のように移動体12として用いる対象がドローン等の飛行体である場合、
図3の構造を取ることによって移動体12が垂下部材16の紐19と接触することを抑制できる。その結果として、飛行開始時に機体が傾かない利点を得ることができる。
【0038】
図4は、方向転換部材18が、一つのリング31と、一つの円筒32と、リング31と円筒32を接合する接合体と、接合体の角度θを維持する補強材33とから構成されている場合の断面図と平面図の例である。左側のリング31には線状部材14が内側を貫通(内通)し、右側の円筒32には垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。垂下部材16の紐19と方向転換部材18の接合体との角度としてθが図中に示されている。
【0039】
重力によって方向転換部材18には鉛直下方向の力が働くが、
図4の構造の場合の角度θも90度に近い角度を維持できる。垂下部材16の紐19の部分と方向転換部材18の右側の円筒が接触し、方向転換部材18の接合体が斜めとなるのを抑制するためである。前述のように移動体12がドローン等の飛行体である場合、
図4の構造をとることによって移動体12が垂下部材16の紐19との接触を抑制できる。
図3の構造を取る場合に比べて補強材33を設けているため、強度的により所望の角度θを維持できる可能性が高くなる。その結果として、飛行開始時に機体が傾かない利点を得ることができる。移動体12が垂下部材16に接触しても問題が無い場合には方向転換部材18をリングのみで実現しても良い。
【0040】
図5は、方向転換部材18が二つのリングのみから構成され、二つのリング、あるいはリングと円筒とを接合する接合体を省略した場合の断面図と平面図の例である。左側のリング51には線状部材14が内側を貫通(内通)し、右側のリング52には垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。二つのリングは相互に接続されており、線状部材14が横方向に引っ張られると垂下部材16の紐19も同方向に引っ張られ、方向転換部材18および線状部材14の横方向への移動を抑制できる。その結果として、線状部材14が空間10の壁面や縁と接触するリスクを低減でき、損耗の抑制が可能となる。その結果、線状部材14が切れるリスクを最小化することができる。
【0041】
図6は、方向転換部材18が一つの共同リング61で構成されている場合の断面図と平面図の例である。リングの左側には線状部材14が内側を貫通(内通)し、共同リング61の右側には垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。この場合も、線状部材14が横方向に引っ張られると垂下部材16の紐19も同方向に引っ張られ、方向転換部材18および線状部材14の横方向への移動が抑制される。その結果として、線状部材14が空間10の壁面や縁と接触するリスクを低減でき、損耗の抑制が可能となる。その結果、線状部材14が切れるリスクを最小化することができる。
【0042】
方向転換部材18の上下方向の位置は、垂下部材16の紐19の所定の箇所に下方移動抑制部材26(
図7参照)を設けることで実現できる。この下方移動抑制部材26の設置位置を適切に設定することで、線状部材14が空間10の壁面や縁に接触することを回避できる。
【0043】
図7は下方移動抑制部材26が垂下部材に固定されている場合の断面図と平面図の例である。左側のリングには線状部材14が内側を貫通(内通)し、右側のリングには垂下部材16の紐19の部分が内側を貫通(内通)している。垂下部材16の紐19と方向転換部材18の接合体との角度としてθが図中に示されている。重力によって方向転換部材18には鉛直下方向の力が働くため、下方移動抑制部材26が無ければ下方まで滑り落ちてしまう。前述のように、移動体12が水面浮上体であり、方向転換部材18を水に浮く素材あるいは構造とする場合、方向転換部材18は水面で留まりこの下方移動抑制部材26は不要であるが、移動体12が飛行体や車両型走行体の場合には所定の高さ以下に方向転換部材18が下がらないようにする必要がある。そのために、右側の垂下部材16の紐19が貫通しているリングあるいは円筒の内径を貫通しないサイズの下方移動抑制部材26を垂下部材16の紐19に固定するのが有効である。
【0044】
図8は、下方移動抑制部材26が垂下部材16の紐19に固定されている状態の側面図と平面図の例である。ここでは2枚の平面状固体81を締結具(ボルト82とナット83)で垂下部材16の紐19に締め付けている構造を取っているが、ばねを利用したクリップなどほかの形態をとっても方向転換部材18が所望の位置から下がらない機能を満たせば良い。
【0045】
垂下部材16の紐19は、少なくとも一部が容易に曲げられる紐やロープ、ワイヤーなどの材料で構成される。垂下部材16の紐19はボビンに巻けるものとし、ボビンを回転して繰り出すことによって、空間10の深さが長い場合でも長尺の棒が不要となり、取り扱いが容易となる。垂下部材16の紐19は太いロープやワイヤーなど重量がある材質とする、あるいは錘を先端に備え、鉛直下方に向けて伸びる状態を維持できるようにすることが望ましい。
【0046】
移動体12は線状部材14と方向転換部材18を介して垂下部材16につながっているため、線状部材14に与えられる横方向の力が大きくても重量がある材質や錘の付いた垂下部材16であればたわみが少なく、線状部材14が空間10の壁面や縁に接触することを抑制できる。なお、空間10の下方で汚水などの液体が流れており、その液体に垂下部材16が接触する場合には液体の流れで垂下部材16が流されて斜めとなったりたわんだりしないよう、より重量を有する材料で垂下部材16を構成する、あるいはより重量のある錘を備えることが望ましい。
管内情報取得部材97は、一端を固定装置90に固定され、他端であるその下端部にアンテナ101、カメラ102、照明103を有する情報取得部94を有する部材であって、空間10の入り口から空間10の下方空間10cの方向に垂下される。
固定装置90は、地上あるいは地上から手の届く距離に設置され、空間10内に落下しない構造を有する。固定装置90は金属枠や棒や板などいずれで構成されても良い。この固定装置90は、線状部材14、垂下部材16の少なくとも一方の引き出し長が伸びないよう固定する。固定装置90には、線状部材14、方向転換部垂下紐92、垂下部材16、管内情報取得垂下部材97が固定される、あるいは必要に応じてこれらを巻き取れ、繰り出せる、あるいは繰り出し長を保持できるボビンが固定される。
管内情報取得垂下部材94には移動体が含まれる方向を照らす照明103が搭載されている。この照明が明るいほど地上員は地上モニター95を介して移動体12の飛行状況や空間10cの状況をより正確に確認することが可能となる。管内情報取得部材97には移動体との電波を送受信するアンテナ101も搭載されている。このアンテナ101は、操縦用の電波のみならず、移動体12が撮影する動画の電波の通信に用いるものであり、1本であっても複数本であっても良い。通信機のアンテナ線のみではなく、アンテナに加え通信機本体を管内情報取得部材97に備えても良い。