(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088417
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】樹脂組成物、平板状成形体、多層体、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20230620BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230620BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08L33/06
B32B27/30 A
B32B27/36 102
C08L25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203099
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 円
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25J
4F100AK45B
4F100AT00
4F100EH172
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EH202
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100JJ03A
4F100JJ03B
4F100JL04
4F100JL043
4F100JN01A
4F100JN01B
4J002BC06X
4J002BG03W
4J002EH057
4J002EW086
4J002FD066
4J002FD167
4J002GF00
4J002GG02
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 透明性に優れ、かつ、湿熱試験後の反りが抑制された多層体を提供可能な樹脂組成物、平板状成形体、多層体、および、成形品の提供。
【解決手段】 共重合体(A)30~90質量部に対し、共重合体(B)を70~10質量部を含み、共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を0~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体であり、共重合体(B)が、芳香族ビニル単量体単位を70~90質量%、および、シアン化アルケニル単量体単位を10~30質量%を含む共重合体である、樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)30~90質量部に対し、共重合体(B)を70~10質量部を含み、
前記共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を0~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体であり、
前記共重合体(B)が、芳香族ビニル単量体単位を70~90質量%、および、シアン化アルケニル単量体単位を10~30質量%を含む共重合体である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を1~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~63質量%を含む共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときのヘイズが5.0%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
屈折率が1.54以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
示差走査熱量測定に従った開始ガラス転移温度(Tig)が115℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形し、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度がF以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
230℃、荷重3.8kgにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が1.0g/10分以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤および/または離型剤を合計で、0.001~0.5質量部含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された平板状成形体。
【請求項10】
請求項9に記載の平板状成形体と他の少なくとも1層を含む、多層体。
【請求項11】
前記他の少なくとも1層が、ポリカーボネート樹脂を含む層である、請求項10に記載の多層体。
【請求項12】
前記ポリカーボネート樹脂の示差走査熱量測定に従った開始ガラス転移温度(Tig)が130℃以下である、請求項11に記載の多層体。
【請求項13】
前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される末端構造を有する、請求項11または12に記載の多層体。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【請求項14】
さらに、ハードコート層を有する、請求項10~13のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項15】
前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されている、請求項10~14のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載の平板状成形体、または、請求項10~15のいずれか1項に記載の多層体を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、平板状成形体、多層体、および、成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、優れた透明性と成形加工性を有し、表面硬度に優れることから光学材料として多くの用途に使用されている。一方で、アクリル樹脂は材料靭性に劣るため、透明性と材料靭性に優れたポリカーボネート樹脂との共押出により多層フィルム・シート等の多層体を作製することが行われている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面に、シアン化アルケニル単量体とスチレン系単量体との共重合体を樹脂成分として含有する熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする樹脂積層板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、シアン化アルケニル単量体とスチレン系単量体との共重合体と、メタクリル樹脂とをブレンドすると、得られる平板状成形体について、透明性が劣ってしまう場合があることが分かった。また、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の共押出多層体には、湿熱試験後の反りの抑制が問題となることがある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、透明性に優れ、かつ、湿熱試験後の反りが抑制された多層体を提供可能な樹脂組成物、平板状成形体、多層体、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、所定の2種の共重合体をブレンドすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>共重合体(A)30~90質量部に対し、共重合体(B)を70~10質量部を含み、前記共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を0~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体であり、前記共重合体(B)が、芳香族ビニル単量体単位を70~90質量%、および、シアン化アルケニル単量体単位を10~30質量%を含む共重合体である、樹脂組成物。
<2>前記共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を1~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~63質量%を含む共重合体である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときのヘイズが5.0%以下である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>屈折率が1.54以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>示差走査熱量測定に従った開始ガラス転移温度(Tig)が115℃以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形し、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度がF以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>230℃、荷重3.8kgにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が1.0g/10分以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>さらに樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤および/または離型剤を合計で、0.001~0.5質量部含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された平板状成形体。
<10><9>に記載の平板状成形体と他の少なくとも1層を含む、多層体。
<11>前記他の少なくとも1層が、ポリカーボネート樹脂を含む層である、<10>に記載の多層体。
<12>前記ポリカーボネート樹脂の示差走査熱量測定に従った開始ガラス転移温度(Tig)が130℃以下である、<11>に記載の多層体。
<13>前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される末端構造を有する、<11>または<12>に記載の多層体。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
<14>さらに、ハードコート層を有する、<10>~<13>のいずれか1つに記載の多層体。
<15>前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されている、<10>~<14>のいずれか1つに記載の多層体。
<16><1>~<9>のいずれか1つに記載の平板状成形体、または、<10>~<15>のいずれか1つに記載の多層体を含む成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、透明性に優れ、かつ、湿熱試験後の反りが抑制された多層体を提供可能な樹脂組成物、平板状成形体、多層体、および、成形品を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の多層体の層構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、(メタ)アリル基は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書における平板状成形体および多層体は、それぞれ、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「平板状成形体」とは、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「平板状成形体」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2021年11月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)30~90質量部に対し、共重合体(B)を70~10質量部を含み、前記共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を0~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体であり、前記共重合体(B)が、芳香族ビニル単量体単位を70~90質量%、および、シアン化アルケニル単量体単位を10~30質量%を含む共重合体であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、透明性に優れ、湿熱後の反りが抑制された多層体が得られる。すなわち、本実施形態においては、共重合体(A)と共重合体(B)を精査して組み合わせることにより、両者を相溶させることができ、透明性に優れた樹脂組成物が得られたと推測される。さらに、樹脂組成物中の(メタ)アクリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の比率のバランスを図ることにより、湿熱試験後の反りを効果的に抑制できたと推測される。
【0010】
<共重合体(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を0~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体(A)を含む。共重合体(A)を含むことにより、汎用アクリル樹脂であるポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いる場合と比較して、共重合体(B)との相溶性が向上し、透明性に優れた樹脂組成物が得られる。
本実施形態においては、共重合体(A)が、(メタ)アクリル単量体単位を36~96質量%、芳香族ビニル単量体単位を1~60質量%、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を合計で3~64質量%を含む共重合体であることが好ましい。
より具体的には、共重合体(A)中の(メタ)アクリル単量体単位の割合は、37質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、65質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐擦傷性が向上する傾向にある。また、共重合体(A)中の(メタ)アクリル単量体単位の割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが一層好ましく、75質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の屈折率が向上し、ポリカーボネートと積層した際の干渉縞の発生が抑えられる傾向にある。
また、共重合体(A)中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の屈折率が向上し、ポリカーボネート樹脂層と多層体とした際の干渉縞の発生を効果的に抑制できる。また、共重合体(A)中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることがより一層好ましく、10質量%以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐擦傷性や耐熱性が向上する傾向にある。
さらに、共重合体(A)中の環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位(好ましくはN置換型マレイミド単量体単位)の割合は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることが一層好ましく、16質量%以上であることがより一層好ましく、20質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性が向上する傾向にある。また、共重合体(A)中の環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位(好ましくはN置換型マレイミド単量体単位)の割合は、63質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが一層好ましく、35質量%以下であることがより一層好ましく、30質量%以下であることがさらに一層好ましく、25質量%以下であることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐擦傷性や靭性が向上する傾向にある。
また、共重合体(A)中の(メタ)アクリル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位の合計割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが一層好ましく、99質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。前記共重合体(A)中の(メタ)アクリル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、ならびに、環状酸無水物単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位の合計割合の上限は、100質量%である。
本実施形態において、共重合体(A)は、(メタ)アクリル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、環状酸無水物単位、および、N置換型マレイミド単量体単位をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0011】
共重合体(A)は、(メタ)アクリル単量体単位を含む。(メタ)アクリル単量体単位を含むことにより、得られる平板状成形体の鉛筆硬度が向上する傾向にある。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を含む限り特に定めるものではないが、式(a1)で表される化合物が好ましい。
式(a1)
【化2】
(式(a1)中、Ra
1は、水素原子またはメチル基であり、Ra
2は、脂肪族基である。)
上記式(a1)において、Ra
1は、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。Ra
2は、脂肪族基であり、直鎖または分岐の脂肪族基であることが好ましく、直鎖の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基(シクロアルキニル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)等が例示され、アルキル基が好ましく、直鎖または分岐のアルキル基がより好ましく、直鎖のアルキル基がさらに好ましい。Ra
2である脂肪族基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
式(a1)で表される(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはアルキルメタクリレート)であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)であることがより好ましい。メチルメタクリレートを用いることにより、得られる平板状成形体の衝撃強さと鉛筆硬度が向上する傾向にある。
【0012】
共重合体(A)は、芳香族ビニル単量体単位を含むことができる。芳香族ビニル単量体単位を含むことにより、干渉縞の発生を抑制することができる。
共重合体(A)における芳香族ビニル単量体は、ビニル基と芳香環基を有する化合物であり、(メタ)アクリレートと共重合可能な化合物を広く採用できる。芳香族ビニル単量体は、CH2=CH-L1-Ar1で表される化合物であることが好ましい。ここで、L1は単結合または2価の連結基であり、単結合または式量100~500の2価の連結基であることが好ましく、単結合または式量100~300の2価の連結基であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。L1が2価の連結基の場合、脂肪族炭化水素基または、脂肪族炭化水素基と-O-との組み合わせからなる基であることが好ましい。ここで、式量とは、芳香族ビニル単量体のL1に相当する部分の1モル当たりの質量(g)を意味する。以下、他の「式量」についても同様に考える。Ar1は芳香環基であり、置換または無置換の、ベンゼン環基またはナフタレン環(好ましくはベンゼン環)であることが好ましく、無置換のベンゼン環基であることがさらに好ましい。
【0013】
より具体的には、芳香族ビニル単量体は式(b1)で表される芳香族ビニル単量体を含むことが好ましい。
式(b1)
【化3】
(式(b1)中、Ra
3は、置換基であり、naは、0~6の整数である。)
【0014】
式(b1)中、Ra3は、置換基であり、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子、フッ素原子または臭素原子)、水酸基、アルキル基(好ましくは炭素数1~5のアルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~5のアルケニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~5のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくはフェノキシ基)が例示される。naが2以上のとき、複数のRa3は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
naは、5以下の整数であることが好ましく、4以下の整数であることがより好ましく、3以下の整数であることがさらに好ましく、2以下の整数であることが一層好ましく、1以下の整数であることがより一層好ましく、0であることがさらに一層好ましい。
【0015】
芳香族ビニル単量体は、分子量104~600の化合物であることが好ましく、分子量104~400の化合物であることがより好ましく、104~200であることがさらに好ましい。
芳香族ビニル単量体は、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、トリブロモスチレン等のスチレン系モノマー(スチレン誘導体)が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0016】
共重合体(A)は環状酸無水物単量体単位、および/または、N置換型マレイミド単量体単位を含む。環状酸無水物単量体単位および/またはN置換型マレイミド単量体単位を含むことにより、得られる平板状成形体の耐熱性が向上する。
【0017】
共重合体(A)における環状酸無水物単量体単位は、無水マレイン酸単量体単位、グルタル酸無水物単量体単位が例示され、無水マレイン酸単量体単位が好ましい。環状酸無水物単量体単位、特に、マレイン酸単量体単位を含むことにより、共重合体(B)との相溶性の向上効果および耐熱性の向上効果がより効果的に発揮される。
共重合体(A)におけるN置換型マレイミド単量体単位は、N-フェニルマレイミド単量体単位、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位、N-ベンジルマレイミド単量体単位、N-(4-カルボキシフェニル)マレイミド)単量体単位が例示され、N-フェニルマレイミド単量体単位、および/または、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位が好ましい。N置換型マレイミド単量体単位、特に、N-フェニルマレイミド単量体単位、および/または、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位を含むことにより、さらには、N-フェニルマレイミド単量体単位とN-シクロヘキシルマレイミド単量体単位の両方を含むことにより、耐熱性、および、共重合体(B)との相溶性がより効果的に発揮される。
【0018】
本実施形態における共重合体(A)は、(メタ)アクリル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、環状酸無水物単位、および、N置換型マレイミド単量体単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の単量体単位としては、脂肪族ビニル化合物単位、ラクトン環構造単位、グルタルイミド単位が例示される。
【0019】
前記共重合体(A)の開始ガラス転移温度(Tig)は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、127℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ成形時のクラック発生防止効果がより向上する傾向にある。また、前記共重合体(A)の開始ガラス転移温度(Tig)は、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、140℃以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ成形時のスプリングバックの抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が共重合体(A)を2種以上含む場合、共重合体(A)の開始ガラス転移温度(Tig)とは、混合物のTigとする。また、ガラス転移温度の測定方法は後述する実施例に記載の方法に従う(以下、重量平均分子量、鉛筆硬度、ならびに、共重合体(B)のガラス転移温度、重量平均分子量、鉛筆硬度についても同じ)。
【0020】
前記共重合体(A)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、70,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることがさらに好ましく、150,000以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の衝撃強さをより向上させることができる。前記共重合体(A)の重量平均分子量は、300,000以下であることが好ましく、250,000以下であることがより好ましく、225,000以下であることがさらに好ましく、210,000以下であることが一層好ましく、200,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くすることができる。
【0021】
前記共重合体(A)の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上がさらに好ましく、H以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の表面硬度をより高くすることができる。また、前記共重合体(A)の鉛筆硬度は、2H以下であることが好ましく、H以下であることがより好ましい。
【0022】
前記共重合体(A)の屈折率は、1.51以上であることが好ましく、1.52以上であることがより好ましい。上限は、例えば、1.57以下であり、1.55以下、1.54以下であってもよい。
【0023】
<共重合体(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ビニル単量体単位を70~90質量%、および、シアン化アルケニル単量体単位を10~30質量%を含む共重合体(B)を含む。
共重合体(B)中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、71質量%以上であることが好ましく、72質量%以上であることがより好ましく、73質量%以上であることがさらに好ましく、74質量%以上であることが一層好ましく、75質量%以上であることがより一層好ましい。また、共重合体(B)中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、87質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、83質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが一層好ましく、78質量%以下であることがより一層好ましい。前記下限値以上、および、上限値以下とすることにより、共重合体Aと相溶し、透明性に優れた樹脂組成物が得られる傾向にある。
共重合体(B)中のシアン化アルケニル単量体単位の割合は、13質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、17質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが一層好ましく、22質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性が向上する傾向にある。また、共重合体(B)中のシアン化アルケニル単量体単位の割合は、29質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることがさらに好ましく、26質量%以下であることが一層好ましく、25質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、共重合体Aと相溶し、透明性に優れた樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0024】
また、共重合体(B)中の芳香族ビニル単量体単位、および、シアン化アルケニル単量体単位の合計割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、99質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。前記共重合体(B)中の芳香族ビニル単量体単位、および、シアン化アルケニル単量体単位の合計割合の上限は、100質量%である。
本実施形態において、共重合体(B)は、芳香族ビニル単量体単位、および、シアン化アルケニル単量体単位をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0025】
共重合体(B)は、芳香族ビニル単量体単位を含む。芳香族ビニル単量体単位を含むことにより、フローマークに優れた平板状成形体が得られる。
共重合体(B)における芳香族ビニル単量体単位を構成する芳香族ビニル単量体は、共重合体(A)における芳香族ビニル単量体単位を構成する芳香族ビニル単量体と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0026】
共重合体(B)は、シアン化アルケニル単量体単位を含む。シアン化アルケニル単量体単位を含むことにより、透明性に優れた平板状成形体が得られる。
共重合体(B)におけるシアン化アルケニル単量体単位を構成するシアン化アルケニル単量体は、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0027】
本実施形態における共重合体(B)は、芳香族ビニル単量体単位、および、シアン化アルケニル単量体単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の単量体単位としては、(メタ)アクリル単量体単位、環状酸無水物単量体単位、N置換マレイミド単量体単位が挙げられる。
【0028】
前記共重合体(B)の開始ガラス転移温度(Tig)は、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、102℃以上であることがさらに好ましく、104℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ成形時のクラックが抑制する傾向にある。また、前記共重合体(B)の開始ガラス転移温度(Tig)は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、115℃以下であることがさらに好ましく、さらには110℃以下、107℃以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ成形時のスプリングバックの抑制効果がより向上する傾向にある。
【0029】
前記共重合体(B)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、60,000以上であることがより好ましく、80,000以上であることがさらに好ましく、90,000以上であることが一層好ましく、100,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の衝撃強さをより向上させることができる。また、前記共重合体(B)の重量平均分子量は、200,000以下であることが好ましく、180,000以下であることがより好ましく、170,000以下であることがさらに好ましく、160,000以下であることが一層好ましく、150,000以下であることがより一層好ましく、130,000以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くすることができる。
【0030】
前記共重合体(B)の鉛筆硬度は、B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の表面硬度をより高くすることができる。また、前記共重合体(B)の鉛筆硬度は、H以下であることが好ましく、HB以下であることがより好ましい。
【0031】
前記共重合体(B)の屈折率は、1.54以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.56以上であることがさらに好ましく、1.57以上であることがさらに好ましく、1.58以上であってもよい。上限は、例えば、1.60以下であり、1.59以下であってもよい。
【0032】
<共重合体(A)と共重合体(B)のブレンド比>
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)30~90質量部に対し、共重合体(B)を70~10質量部を含む。本実施形態においては、特に、共重合体(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対し、共重合体(A)の割合が、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることがさらに好ましく、51質量部以上、56質量部以上、60質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、耐擦傷性が向上し、熱曲げ成形時のクラック抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記共重合体(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対し、共重合体(A)の割合が、85質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、76質量部以下であることがさらに好ましく、74質量部以下、70質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、フローマークに優れた平板上成形体の作製が容易となり、ポリカーボネート樹脂層との多層体とした場合に干渉縞が生じづらくなる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)および共重合体(B)を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)と共重合体(B)の合計含有量が樹脂組成物の85質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、95質量%以上を占めることがさらに好ましく、97質量%以上を占めることが一層好ましく、99質量%以上を占めることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。樹脂組成物中の共重合体(A)と共重合体(B)の合計含有量の上限は100質量%である。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物においては、共重合体(A)と共重合体(B)の全質量に対する(メタ)アクリル単量体単位の割合が、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐擦傷性がより向上する傾向にある。また、共重合体(A)と共重合体(B)の全質量に対する(メタ)アクリル単量体単位)の割合は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、63質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物においては、共重合体(A)と共重合体(B)の全質量に対する芳香族ビニル単量体単位(好ましくはスチレン単量体単位)の割合が、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、屈折率が向上し、ポリカーボネートと積層した際の干渉縞の発生が抑えられる傾向にある。また、共重合体(A)と共重合体(B)の全質量に対する芳香族ビニル単量体単位(好ましくはスチレン単量体単位)の割合は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましく、33質量%以下であることが一層好ましく、30質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、湿熱試験後の反りが抑制される傾向にある。
【0035】
<酸化防止剤>
本実施形態の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、樹脂組成物や平板状成形体の色相に優れることから特に好ましい。
【0036】
リン系酸化防止剤は、ホスファイト系酸化防止剤が好ましく、以下の式(1)または(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
【化4】
(式(1)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に、炭素数1~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表す。)
【化5】
(式(2)中、R
13~R
17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基または炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【0037】
上記式(1)中、R11、R12で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R11、R12がアリール基である場合、以下の式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【0038】
【化6】
(式(1-a)中、R
Aは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、R
Bは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【0039】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特開2018-090677号公報の段落0063、特開2018-188496号公報の段落0076の記載を参照でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
酸化防止剤は、上記の他、特開2017-031313号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.008質量部以上であることがより好ましい。また、酸化防止剤の含有量の上限値としては、樹脂組成物100質量部に対して、0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましく、0.15質量部以下であることが一層好ましく、0.10質量部以下であることがさらに一層好ましく、0.08質量部以下であることが特に一層好ましい。
【0042】
酸化防止剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、色相、耐熱変色性がより良好な平板状成形体を得ることができる。また、酸化防止剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、耐熱変色性を悪化させることなく、湿熱安定性が良好な平板状成形体を得ることができる。
酸化防止剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤を含むことにより、平板状成形体の成形性を向上させることができる。
離型剤の種類は特に定めるものではないが、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5,000のポリエーテル、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
【0044】
離型剤の詳細は、国際公開第2015/190162号の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0045】
離型剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましい。上限値としては、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることがさらに好ましい。
離型剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
特に、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤および/または離型剤を合計で、0.001~0.5質量部含むことが好ましい。
【0047】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分の他、上記以外の熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記成分の含有量は、含有する場合、合計で樹脂組成物の0.1~5質量%であることが好ましい。
【0048】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、透明性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときのヘイズが5.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.4%以下であることが一層好ましく、0.3%以下であることがより一層好ましく、0.2%未満であることがさらに一層好ましく、0.15%以下であってもよい。下限値は、0%が理想であるが、0.01%以上が実際的である。
ヘイズは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は、屈折率が高い方が好ましい傾向にある。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の屈折率が1.54以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましい。上限は、例えば、1.58以下であり、1.57以下であってもよく、1.56以下であってもよい。
このような屈折率は、共重合体(A)と共重合体(B)の単量体単位の種類やモノマー比率、ブレンド比率を調整することにより達成される。
屈折率は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物は、示差走査熱量測定による開始ガラス転移温度(Tig)が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の開始ガラス転移温度(Tig)は、115℃以上であることが好ましく、118℃以上であることがより好ましく、119℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが一層好ましく、121℃以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、クラックの発生を効果的に抑制することができる。さらに、湿熱試験、高温試験などの耐環境試験の耐久性がより向上する傾向にある。示差走査熱量測定による開始ガラス転移温度(Tig)の上限は、例えば、130℃以下であり、さらには125℃以下であっても十分に要求性能を満たす。
開始ガラス転移温度(Tig)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
開始ガラス転移温度(Tig)を高くするには、樹脂の原料モノマーを調整することが例示される。また、樹脂の分子量を高くすることも挙げられる。樹脂の開始ガラス転移温度は一般的に原料モノマーと分子量によって決まり、当業者が適宜選択できる。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物は、鉛筆硬度が高い(硬い)ことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を1mmの厚さに成形し、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度が、F以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。前記鉛筆硬度をF以上とすることにより、多層体全体の硬度を高めることができ、耐擦傷性を向上させることができる。上限は特に定めるものではないが、3H以下が実際的である。
鉛筆硬度は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、230℃、荷重3.8kgにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が1.0g/10分以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形性がより向上し、樹脂組成物の劣化や黄変を効果的に抑制でき、また、樹脂成分の分解を効果的に抑制できる傾向にある。前記MFRは1.2g/10分以上であることが好ましく、1.3g/10分以上であることがより好ましく、1.4g/10分以上であることがさらに好ましく、1.5g/10分以上であることが一層好ましい。また、前記MFRの上限値は、11.0g/10分以下であることが好ましく、10.0g/10分以下であることがより好ましく、8.0g/10分以下であることがさらに好ましく、6.0g/10分以下であることが一層好ましく、4.0g/10分以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性が向上し、フローマークの発生を抑制できる傾向にある。
このようなMFRは、共重合樹脂Aおよび/または共重合体Bの重量平均分子量や数平均分子量を適切に調整することによって達成できる。
MFRは後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0053】
<平板状成形体>
本実施形態の樹脂組成物は、平板状成形体に加工して用いることが好ましい。すなわち、本実施形態の平板状成形体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。本実施形態の平板状成形体は、透明性に優れ、湿熱試験後の反りが効果的に抑制される。
平板状成形体としては、プレート、フィルム、シート等が例示される。また、平板状成形体は、詳細を後述するとおり、他の基材等に積層された多層体に含まれていてもよい。また、本実施形態の平板状成形体は、多層体の一部に組み込まれた後に、曲げ加工などが施されていてもよい。
平板状成形体の厚さは、下限値が、例えば、1μm以上であり、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、80μm以上であることが一層好ましく、90μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形がより容易となるとともに、硬度が向上する傾向にある。また、平板状成形体の厚さの上限に特に制限は無いが、5,000μm以下であることが好ましく、2,000μm以下であることがより好ましく、1,000μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが一層好ましく、300μm以下であることがより一層好ましい。特に、詳細を後述する通り、平板状成形体とポリカーボネート樹脂層の厚さの合計に対し、平板状成形体が薄い方が好ましいこのような構成とすることにより、多層体を加熱成形しても、クラックの発生が効果的に抑制され、かつ、スプリングバックの発生が効果的に抑制される。
本実施形態の平板状成形体は、射出成形やTダイによる押出成形などにより成形される。
【0054】
<多層体>
本実施形態の多層体は、本実施形態の平板状成形体と他の少なくとも1層を含む。このような多層体は表面硬度に優れたものとなる。本実施形態においては、他の少なくとも1層がポリカーボネート樹脂を含む層(ポリカーボネート樹脂層)であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂層は、通常、多層体の基材の役割を果たす。
本実施形態の多層体は、さらに、ハードコート層を含むことが好ましい。ハードコート層は、少なくとも、本実施形態の平板状成形体の表面に設けることが好ましい。また、前記ハードコート層は、前記ポリカーボネート樹脂を含む層、前記平板状成形体、前記ハードコート層の順に積層していることがより好ましい。また、ハードコート層は、ポリカーボネート樹脂層側にも設けられていてもよい。なお、ポリカーボネート樹脂層と平板状成形体の間、および、平板状成形体とハードコート層の間には、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を有していてもよい。
図1は、本実施形態の多層体の一例を示す模式図であって、1は多層体を、2は基材(ポリカーボネート樹脂層)を、3は平板状成形体を、4はハードコート層を示している。本実施形態においては、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を有していてもよい。他の層としては、具体的には、接着層、粘着層、防汚層等が例示される。
さらに、本実施形態の多層体は、前記ハードコート層上であって、基材(前記ポリカーボネート樹脂層)とは反対側の面に、低屈折率層を有することも好ましい。すなわち、上記多層体は、反射防止フィルムとして用いることができる。
本実施形態の多層体は、また、前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されていることが好ましい。このときの多層体の最表面の一例として、ハードコート層が挙げられる。また、アンチブロッキング処理とは、フィルム同士が密着しても容易に剥離できるようにする処理をいい、アンチブロッキング剤を添加すること、多層体の表面に凹凸を設けることなどが例示される。
【0055】
次に、基材1について説明する。
基材1は、その種類について特に定めるものではなく、本実施形態の多層体に求められる性能を満たす限り、公知の基材を採用できる。具体的には、樹脂基材が好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂がより好ましく、ポリカーボネート樹脂を含むことがさらに好ましい。これらの樹脂は、1種単独でも、2種以上による複合基材を構成していてもよい。本実施形態の多層体において、基材1は、上述の通り、ポリカーボネート樹脂を含む層(ポリカーボネート樹脂層)が好ましい。ポリカーボネート樹脂層におけるポリカーボネート樹脂の割合は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0056】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される末端構造を有することが好ましい。式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を低くすることができる。
【化7】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【0057】
R1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表し、炭素数10以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数12以上のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましく、さらに炭素数14以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。これにより樹脂のガラス転移温度を低くし、多層体の熱曲げ性がより向上する。また、R1は、炭素数22以下のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数18以下のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。これにより、他の樹脂との相溶性がより向上する。R1は、アルキル基であることが好ましい。アルキル基およびアルケニル基は、直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。
本実施形態では、R1は、特に、ヘキサデシル基であることが好ましい。
また、R1は、メタ位、パラ位、オルト位のいずれに位置していてもよいが、メタ位またはパラ位に位置していることが好ましく、パラ位に位置していることがより好ましい。
【0058】
R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、または、フェニル基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子またはメチル基であることがより好ましい。
nは0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0059】
式(1)で表される末端構造は、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル等の末端封止剤を用いることによって、ポリカーボネート樹脂に付加することができる。これらの詳細は、特開2019-002023号公報の段落0022~0030の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態用いる式(1)で表される末端構造を芳香族ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される末端構造が1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
本実施形態においては、式(1)で表される末端構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。また、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂の50モル%以上が式(1)で表される末端構造を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0061】
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂は、また、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態におけるビスフェノール型ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位が、末端構造を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0062】
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0063】
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、特に、定めるものではないが、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましく、40,000以上であることが一層好ましく、50,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、多層体の耐衝撃性や成形時のフローマークの抑制がより向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることがさらに好ましく、80,000以下であることが一層好ましく、60,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の成形性が向上する傾向にある。
【0064】
本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂の開始ガラス転移温度(Tig)は、130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の熱曲げ成形性がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂の開始ガラス転移温度(Tig)は、121℃以上であることが好ましく、122℃以上であることがより好ましく、123℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる多層体の湿熱試験、高温試験などの耐環境試験の耐久性がより向上する傾向にある。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の屈折率は、例えば、1.55以上であり、1.56以上であってもよく、1.57以上であってもよい。上限は、例えば、1.61以下であり、1.60以下であってもよく、1.59以下であってもよい。
【0065】
その他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2019-035001号公報の段落0040~0073の記載、特開2018-103518号公報の段落0016~0043の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0066】
基材1には、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、各種樹脂添加剤を含有していてもよい。樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滴下防止剤、染料および顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
【0067】
また、基材1は単層であってもよいが、多層であってもよい。
基材1(好ましくはポリカーボネート樹脂層)の厚みは、特に制限はないが、例えば、1μm以上であり、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが一層好ましく、100μm以上であることがより一層好ましく、300μm以上であることがさらに一層好ましく、500μm以上であることが特に一層好ましく、700μm以上であってもよい。また、基材1の厚みは、10,000μm以下であることが好ましく、5,000μm以下であることがより好ましく、3,000μm以下であってもよく、2,500μm以下であってもよい。
【0068】
本実施形態の多層体は、上述の通り、平板状成形体および基材を含むことが好ましいが、この時、平板状成形体と基材(好ましくは、ポリカーボネート樹脂層)の厚みの関係性は、平板状成形体の厚み/[平板状成形体と基材の合計厚み]<1/5を満たすことが好ましい。この関係を満たすことで、平板状成形体が多層体全体として薄いものとなるため、多層体を加熱成形しても、クラックの発生がより効果的に抑制され、かつ、スプリングバックの発生がより効果的に抑制される。より具体的には、スプリングバックを抑制するには、多層体を折り曲げた際に、多層体全体に残っている曲げに対する残留応力を緩和することがより効果的である。かかる観点から、基材だけでなく、平板状成形体についても残留応力を緩和することがより好ましい。平板状成形体と基材が上記関係を満たすようにすることにより、平板状成形体に由来する残留応力が緩和されやすくなり、スプリングバックをより効果的に抑制することができる。本実施形態においては、平板状成形体の厚み/[平板状成形体と基材の合計厚み]<1/6がより好ましく、平板状成形体の厚み/[平板状成形体と基材の合計厚み]<1/8がさらに好ましい。また、1/35<平板状成形体の厚み/[平板状成形体と基材の合計厚み]であることが好ましく、1/25<平板状成形体の厚み/[平板状成形体と基材の合計厚み]であることがより好ましい。特に、本実施形態では、平板状成形体と基材が上述した所定の厚みの好ましい範囲を、また、多層体が後述する厚みの好ましい範囲を満たしつつ、上記関係を満たすことがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に達成される。
【0069】
本実施形態において、前記平板状成形体(アクリル樹脂層)と、ポリカーボネート樹脂層とからなる多層体の温度85℃、相対湿度85%の環境下に120時間静置した後の反り変化量は、600μm未満であることが好ましく、350μm未満であることがより好ましく、200μm未満であることがより好ましい。前記反り変化量の下限は0μmが理想であるが、1μm以上が実際的である。
反り変化量は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0070】
次に、ハードコート層の詳細について説明する。本実施形態の多層体に含まれていてもよいハードコート層は、基材(例えば、ポリカーボネート樹脂層)よりも、表面硬度が高い層である。このようなハードコート層を含むことにより、多層体ないし成形品の表面硬度を高めることができる。
ハードコート層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、4μm以上であることが一層好ましく、5μm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ハードコート層による多層体全体の鉛筆硬度がより向上する傾向にある。ハードコート層の厚さの上限は、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが一層好ましく、8μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時の加工性がより向上する傾向にある。
【0071】
ハードコート層は、熱硬化または活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させて得られるものが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)の(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物が挙げられ、好ましくは、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すればよい。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0072】
本実施形態の多層体の総厚みは、特に制限はないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。層厚みが厚いほうが、多層体としての剛性が向上する傾向がある。また、多層体の総厚みは、10,000μm以下であることが好ましく、5,000μm以下であることがより好ましく、2,000μm以下であってもよい。このような層厚みにすることで、多層体成形時において、ロール間で多層シートを圧着させ、樹脂を冷却する際に、多層体内部まで樹脂が冷却されるため、多層体の成形性を向上させることができる。
【0073】
本実施形態の多層体は、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物を押出するメイン押出機と、本実施形態の樹脂組成物を押出するサブ押出機とを用い、各々用いる樹脂の条件にて樹脂を溶融し押し出しダイに導き、ダイ内部で積層しシート状に成形する、もしくはシート状に成形した後に積層することで多層体を形成することができる。
【0074】
本実施形態の多層体は、また、熱曲げ耐性に優れているため、屈曲部を有する用途に適している。例えば、曲率半径が50mmR以下(好ましくは曲率半径が40~50mmR)の部位を有する成形品にも好ましく用いられる。
前記成形品は、好ましくは、本実施形態の多層体を130~150℃(好ましくは133~143℃)で熱曲成形することにより得られる。本実施形態の多層体は、熱曲げ耐性に優れているため、曲率半径が50mmR以下の部位を有する成形品としたときに、特に有益である。さらに、スプリングバックやクラックの発生の観点から133℃以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時間を短縮でき、また、樹脂の応力緩和が早くなり、スプリングバックが発生しにくくなり好ましい。また、前記熱曲げ温度は、147℃以下であることが好ましく、144℃以下であることがより好ましく、143℃以下であることがさらに好ましい。
【0075】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物、平板状成形体および多層体は、成形品、例えば、光学部品や意匠製品、反射防止成形品などに好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の平板成形体または多層体を含む。
本実施形態の平板状成形体および多層体は、表示装置、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、各種ディスプレイ、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端および家電製品の筐体、照明機器および車輌部品(特に、車輌内装部品)、スマートフォンやタッチパネル等の表層フィルム、光学材料、光学ディスクに好適に用いられる。特に、本実施形態の成形品は、タッチパネルのセンサー用フィルムや各種ディスプレイの反射防止成形品として好ましく用いられる。
【実施例0076】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0077】
1.原料
・共重合体(A)
(A1)旭化成ケミカルズ社製、アクリル系樹脂、デルペットPM120N、スチレン:N-フェニルマレイミド:メチルメタクリレート(MMA)の質量比=4質量%:15質量%:81質量%、Tig:126℃、Mw:121,000、鉛筆硬度2H、屈折率:1.53
(A2)日本触媒製、アクリル系樹脂、PML203、スチレン:N-フェニルマレイミド:N-シクロへキシルマレイミド:MMAの質量比=6質量%:19質量%:4質量%:71質量%、Tig:135℃、Mw:189,000、鉛筆硬度2H、屈折率:1.53
【0078】
・共重合体(B)
(B1)ダイセルミライズ社製、スチレン系樹脂、020SF、スチレン:アクリロニトリルの質量比=74質量%:26質量%、Tig:106℃、Mw:145,500、鉛筆硬度HB、屈折率:1.58
(B2)ダイセルミライズ社製、スチレン系樹脂、050SF、スチレン:アクリロニトリルの質量比=76質量%:24質量%、Tig:105℃、Mw:126,800、鉛筆硬度HB、屈折率:1.58
(B3)ダイセルミライズ社製、スチレン系樹脂、090SF、スチレン:アクリロニトリルの質量比=68質量%:32質量%、Tig:108℃、Mw:103,800、鉛筆硬度HB、屈折率:1.57
【0079】
・PMMA(C)
(C)アルケマ社製、ポリメチルメタクリレート、ALTUGLAS(登録商標)V020
【0080】
・ポリスチレン(D)
(D)PSジャパン社製、SPG10
【0081】
・酸化防止剤(E)
(E)アデカスタブPEP-36、下記化合物、tBuは、t-ブチル基を示す。
【化8】
【0082】
・離型剤(F)
(F)グリセリンモノステアレート、理研ビタミン株式会社製、リケマールS-100A
【0083】
・ポリカーボネート樹脂
T-1380:パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステルを末端封止剤に用いたビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、三菱ガス化学株式会社製、Tig:124℃、屈折率:1.58、Mw55,000
【0084】
2.実施例1~4、比較例1~12
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
上記に記載した各成分を、表1~3に記載の添加量(表1~3の各成分は質量部表記である)となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0085】
<ペレット外観>
得られたペレットについて、目視でその外観を評価した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:透明であった。
B:上記A以外であった(例えば、ペレットが得られなかった、得られたペレットが半透明もしくは白濁であった等)。
また、評価が「A」のペレット(実施例1~4または比較例1~6の樹脂組成物)について、さらに、以下の評価を行った。
【0086】
<開始ガラス転移温度(Tig)の測定>
ポリカーボネート樹脂および樹脂組成物の開始ガラス転移温度(Tig)は、下記の示差走査熱量測定(DSC測定)条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度(Tig)とた。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とした。単位は、℃で示した。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
【0087】
<重量平均分子量の測定方法>
各種樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー装置には、LC-20AD system(島津製作所社製)を用い、カラムとして、LF-804(Shodex社製)を接続して用いた。カラム温度は40℃とした。検出器はRID-10A(島津製作所社製)のRI検出器を用いた。溶離液として、クロロホルムを用い、検量線は、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して作成した。
上記ゲル浸透クロマトグラフィー装置、カラム、検出器が入手困難な場合、同等の性能を有する他の装置等を用いて測定する。
【0088】
<メルトマスフローレート(MFR)値の測定>
得られたペレット(樹脂組成物)のメルトマスフローレート(MFR)値はメルトインデクサーを用いて、温度230℃、3.8Kg荷重下で測定した。単位は、g/10分で示した。
メルトインデクサーは、東洋精機社製「メルトインデックサG-02」を用いた。
【0089】
<平板状成形体の製造>
得られたペレット(樹脂組成物)をベント付二軸射出成形機(Sodick社製「PE-100」、二軸スクリュー径29mmの噛合型同方向回転式、プランジャー直径28mm)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、金型温度80℃の条件にて平板状成形体(100×100×1mm)を成形した。
【0090】
<ヘイズの測定>
ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、上記で得られた平板状成形体のヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0091】
<樹脂および樹脂組成物の屈折率の測定>
樹脂組成物の屈折率は、偏光回折法により測定した。
得られた平板状成形体について、自動薄膜計測装置を用いて波長589nmの光の屈折率を求めた。
樹脂の屈折率についても、上記と同様にして平板状成形体を成形し、上記と同様に屈折率を測定した。
屈折率の測定に際し、自動薄膜計測装置として、分光エリプソメーター Auto SE(HORIBA社製)を用いた。
【0092】
<鉛筆硬度>
上記で作製した平板状成形体について、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
【0093】
<ハードコート層なし多層体の製造>
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結された650mm幅のTダイとを有する多層押出機に各押出機と連結したマルチマニホールドダイとを有する多層押出装置を用いて多層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に、表1~3に示す実施例1~4または比較例1~6の樹脂組成物を導入し、シリンダー温度250℃、吐出量を3.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(T-1380)を連続的に導入し、シリンダー温度280℃、吐出量を32.4kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃にして、押し出して、積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度110℃、120℃、160℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、ポリカーボネート樹脂層と上記樹脂組成物から形成されたアクリル樹脂層の多層体を得た。得られた多層体の中央部の全体厚みは1000μm、アクリル樹脂層厚の厚みは100μmであった。
【0094】
<フローマーク外観>
上記<多層体の製造>において目視でフローマークの有無を確認した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:フローマークが認められなかった。
B:フローマークが認められた。
【0095】
<干渉縞>
上記で得られた多層体のポリカーボネート樹脂から形成された層側に黒テープ(3Mジャパン社製、黒色ビニールテープ型番117BLA)を貼り付け、ポリカーボネート樹脂から形成された層側から三波長型蛍光ランプ((有)テクニカ、インバータライト60、AL-60231)を照射し、干渉縞の有無を評価した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:干渉縞が見えないか、干渉縞が弱く見えた。
B:上記A以外、干渉縞が強く見えた等。
【0096】
<湿熱後反り(高温高湿環境下の反り)>
上記で得られたハードコート層なしの多層体の中央付近から縦10cm、横6cmの試験片を切り出した。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した。このときの値を処理前反り量の値とした。次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した。このときの値を処理後反り量の値とした。反りの測定には、電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に静置し、1mm間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを反りとして計測した。処理前後の反り量の差、すなわち、(処理後反り量)-(処理前反り量)を反り変化量として評価した。その際、平板状成形体(アクリル樹脂層)側が凸の場合は「-」符号、ポリカーボネート樹脂層が凸の場合は「+」符号で評価した。
A:反り変化量の絶対値が350μm未満であった。
B:反り変化量の絶対値が350μm以上600μm未満であった。
C:反り変化量の絶対値が600μm以上であった。
【0097】
<ハードコート層付き多層体の製造>
6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名:U6HA、新中村化学工業株式会社製)60質量部、PEG200#ジアクリレート(製品名:4EG-A、共栄社化学株式会社製)35質量部、および含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー(製品名:RS-90、DIC株式会社製)5質量部の合計100質量部に対して、光重合開始剤(製品名:I-184〔化合物名:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン〕BASF株式会社製)を1質量%加えた塗料を、上記で作製したハードコート層なしの多層体のアクリル樹脂層の表面にバーコーターにて塗布し、メタルハライドランプ(20mW/cm2)を5秒間当ててハードコートを硬化させた。ハードコート層の膜厚は6μmであった。
【0098】
<熱プレス成形加工性1(120℃、3分曲げ)>
上記で得られたハードコート層付き多層体について、曲率半径が50mmRとなる凸型(オス型)と凹型(メス型)の金型を作製した。ハードコート層を塗装した多層体は成形前に90℃で1分間予備加熱し、ハードコート層を塗装した側の表面が凸側になるように、金型に置き、金型温度120℃で3分間プレスを行い、自然冷却することにより、熱プレス成形品を作製した。
上記熱プレス成形品の曲げ部分のクラックを目視で評価した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認されなかった。
B:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認された。
【0099】
<熱プレス成形加工性2(115℃、7分熱曲げ)>
上記で得られたハードコート層付き多層体について、曲率半径が50mmRとなる凸型(オス型)と凹型(メス型)の金型を作製した。ハードコート層を塗装した多層体は成形前に90℃で1分間予備加熱し、ハードコート層を塗装した側の表面が凸側になるように、金型に置き、金型温度115℃で7分間プレスを行い、自然冷却することにより、熱プレス成形品を作製した。
上記熱プレス成形品の曲げ部分のクラックを目視で評価した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認されなかった。
B:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認された。
【0100】
<熱曲げ後スプリングバック>
上記熱プレス成形加工性1で作製した熱プレス成形体を50mmRの円筒に沿わせて、下記の基準でスプリングバックの合否判定を行い、Aを合格とした。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:円筒に沿う(スプリングバック無し)。
B:円筒に沿わない(スプリングバック有り)。
【0101】
<総合評価>
上記湿熱後反り、熱プレス成形加工性1(120℃)、熱プレス成形加工性2(115℃)および熱曲げ後スプリングバックの結果に基づき、以下の通り評価した。
A:前記評価がいずれもAである
B:前記評価の3つがAである
C:上記AおよびB以外
【0102】
【0103】
【0104】