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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088422
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】飛行ルート制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20230620BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203115
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一毅
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG09
5H301GG10
(57)【要約】
【課題】飛行体が飛行中に発生する騒音、振動及び落下物の可能性を動的に考慮し総合的に判断して最小となる飛行ルートを算出して飛行体を制御する。
【解決手段】飛行体100と地上管制装置110とで飛行ルートを制御する飛行ルート制御システムであり、飛行体100は地上管制装置110と通信する通信部102と、飛行を制御する制御部107とを備える。地上管制装置110は飛行体100の性能及び目的地までの固定条件情報を取得する固定条件情報取得部103と、高度、速度、気象条件及び目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得する変動条件情報取得部104と、固定条件情報及び変動条件情報に基づき飛行体100が地上に与える影響を三次元的に計算し、数値化する定量化部105と、数値化した影響と、現在地から目的地までの飛行距離に基づき飛行ルートを動的に設定し、通信部102に送信する設定部106とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体と地上制御装置とにより飛行体の飛行ルートを制御する飛行ルート制御システムであって、
前記飛行体は、
前記地上制御装置と通信する通信部と、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、を備え、
前記地上制御装置は、
前記飛行体の性能、および前記飛行体の目的地までのフライトプランを含む固定条件情報を取得する固定条件情報取得部と、
前記飛行体の飛行高度、飛行速度、周辺の気象条件、および前記飛行体の目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得する変動条件情報取得部と、
前記固定条件情報、および前記変動条件情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える影響を三次元的に計算し、前記影響を数値化する定量化部と、
前記定量化部において数値化した前記影響と、前記飛行体の現在地から目的地までの飛行距離とに基づいて、前記飛行体の飛行ルートを動的に設定し、前記飛行体の前記通信部に送信する設定部と、
を備える飛行ルート制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行ルート制御システムにおいて、
地上の建造物の所在や人が密集する区域の有無を示す地上情報を求めるために必要な、少なくとも地上の重要施設の位置情報と人の密集度合いを含む情報を収集し、前記地上情報を計算する地上情報取得部を備え、
前記定量化部は、
前記固定条件情報、前記変動条件情報、および前記地上情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える前記影響を動的に計算し、前記飛行体が地上に与える前記影響を数値化する飛行ルート制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行ルート制御システムにおいて、
前記飛行体が地上に与える前記影響に対し、補償を行う区域の補償情報を求めるために必要な情報を収集し、前記補償情報を計算する補償情報取得部を備え、
前記定量化部は、
前記固定条件情報、前記変動条件情報、前記地上情報、および前記補償情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える前記影響を動的に計算し、前記飛行体が地上に与える前記影響を数値化する飛行ルート制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の飛行ルート制御システムにおいて、
前記定量化部は、前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の飛行ルート制御システムにおいて、
前記定量化部は、前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値の関数および前記騒音値の地上情報係数から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値の関数および前記振動値の地上情報係数から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物の関数および前記落下物の地上情報係数から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御システム。
【請求項6】
請求項3に記載の飛行ルート制御システムにおいて、
前記定量化部は、前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値の関数、前記騒音値の地上情報係数および前記騒音値の補償情報係数から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値の関数、前記振動値の地上情報係数および前記振動値の補償情報係数から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物の関数、前記落下物の地上情報係数及び前記落下物の補償情報係数から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御システム。
【請求項7】
飛行体と地上制御装置とにより飛行体の飛行ルートを制御する飛行ルート制御方法であって、
前記飛行体の性能、および前記飛行体の目的地までのフライトプランを含む固定条件情報を取得し、
前記飛行体の飛行高度、飛行速度、周辺の気象条件、および前記飛行体の目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得し、
前記固定条件情報、および前記変動条件情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える影響を三次元的に計算し、前記影響を数値化し、
数値化した前記影響と、前記飛行体の現在地から目的地までの飛行距離とに基づいて、前記飛行体の飛行ルートを動的に設定し、前記飛行体に送信する飛行ルート制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の飛行ルート制御方法において、
地上の建造物の所在や人が密集する区域の有無を示す地上情報を求めるために必要な、少なくとも地上の重要施設の位置情報と人の密集度合いを含む情報を収集し、前記地上情報を計算し、
前記固定条件情報、前記変動条件情報、および前記地上情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える前記影響を動的に計算し、前記飛行体が地上に与える前記影響を数値化する飛行ルート制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の飛行ルート制御方法において、
前記飛行体が地上に与える前記影響に対し、補償を行う区域の補償情報を求めるために必要な情報を収集し、前記補償情報を計算し、
前記固定条件情報、前記変動条件情報、前記地上情報、および前記補償情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える前記影響を動的に計算し、前記飛行体が地上に与える前記影響を数値化する飛行ルート制御方法。
【請求項10】
請求項7に記載の飛行ルート制御方法において、
前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載の飛行ルート制御方法において、
前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値の関数および前記騒音値の地上情報係数から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値の関数および前記振動値の地上情報係数から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物の関数および前記落下物の地上情報係数から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御方法。
【請求項12】
請求項9に記載の飛行ルート制御方法において、
前記飛行体が発生する騒音の地上における騒音値の関数、前記騒音値の地上情報係数および前記騒音値の補償情報係数から計算される騒音ペナルティ値と、前記飛行体が発生する振動の地上における振動値の関数、前記振動値の地上情報係数および前記振動値の補償情報係数から計算される振動ペナルティ値と、前記飛行体から落下される地上における落下物の関数、前記落下物の地上情報係数及び前記落下物の補償情報係数から計算される落下物ペナルティ値と、前記飛行体の現在値から目的地までの飛行ルート長と、を変数とする目的関数が最小となる飛行ルートを算出する飛行ルート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアモビリティ等の飛行体の飛行ルート制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体の一例であるエアモビリティは、次世代の交通手段として注目されている。しかし、エアモビリティからは、地上の構造物に対して大きな騒音と振動が発生するほか、エアモビリティからの落下物のリスクも存在する。
【0003】
これらの影響を軽減することが、エアモビリティの社会実装への課題となっている。
【0004】
エアモビリティが地上に与える影響を軽減するための技術として、騒音に着目したもの(特許文献1)や、落下物リスクに着目したもの(特許文献2)が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、気象条件による騒音分布の変化に拘わらず、飛行体から発生される騒音に対して地上の各地点で受ける騒音を想定レベル以下に安定的に抑える技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、飛行体からの落下物が落下する可能領域と落下範囲とに応じて飛行ルートを決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-24456号公報
【特許文献2】特開2021-35831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エアモビリティ等の飛行体が地上に与える影響を軽減するためには、実際に飛行を行う以前にその影響を計算し、影響が最小になるような飛行ルートを決定する必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載された技術に代表される従来技術では、地上に与える影響を騒音や落下物リスクなど個別の事象のみで求めていたほか、地上を単純化した平面として計算を行っている。
【0010】
飛行体が飛行している状況において、地上騒音・振動・落下物リスクなどの複合した要素からの影響を考慮しつつ、高さ方向も含めた地上の構造物に与える影響をより正確に求め、エアモビリティ等の飛行体が飛行するルートを動的に変化させることで地上に与える影響を軽減させることが課題となる。
【0011】
本発明の目的は、飛行体が飛行中に発生する騒音、振動及び落下物の可能性を動的に考慮し、それらを総合的に判断して最小となるような飛行ルートを算出して飛行体を制御可能な飛行ルート制御システム及び制御方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0013】
飛行体と地上制御装置とにより飛行体の飛行ルートを制御する飛行ルート制御システムであって、前記飛行体は、前記地上制御装置と通信する通信部と、前記飛行体の飛行を制御する制御部と、を備え、前記地上制御装置は、前記飛行体の性能、および前記飛行体の目的地までのフライトプランを含む固定条件情報を取得する固定条件情報取得部と、前記飛行体の飛行高度、飛行速度、周辺の気象条件、および前記飛行体の目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得する変動条件情報取得部と、前記固定条件情報、および前記変動条件情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える影響を三次元的に計算し、前記影響を数値化する定量化部と、前記定量化部において数値化した前記影響と、前記飛行体の現在地から目的地までの飛行距離とに基づいて、前記飛行体の飛行ルートを動的に設定し、前記飛行体の前記通信部に送信する設定部と、を備える。
【0014】
また、飛行体と地上制御装置とにより飛行体の飛行ルートを制御する飛行ルート制御方法であって、前記飛行体の性能、および前記飛行体の目的地までのフライトプランを含む固定条件情報を取得し、前記飛行体の飛行高度、飛行速度、周辺の気象条件、および前記飛行体の目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得し、前記固定条件情報、および前記変動条件情報に基づいて、前記飛行体が地上に与える影響を三次元的に計算し、前記影響を数値化し、数値化した前記影響と、前記飛行体の現在地から目的地までの飛行距離とに基づいて、前記飛行体の飛行ルートを動的に設定し、前記飛行体に送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飛行体が飛行中に発生する騒音、振動及び落下物の可能性を動的に考慮し、それらを総合的に判断して最小となるような飛行ルートを算出して飛行体を制御可能な飛行ルート制御システム及び制御方法を実現することができる。地上への影響を軽減する飛行体の飛行ルートを動的に決定することで、飛行体の社会実装をさらに進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1における飛行体の飛行ルート制御システムの構成図である。
図2】本発明の実施例1における定量化部の処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施例2における飛行体の飛行ルート制御システムの構成図である。
図4】本発明の実施例2における定量化部の処理を示すフローチャートである。
図5A】本発明の実施例2における地上情報係数の求め方を示す表である。
図5B】本発明の実施例2における地上情報係数の求め方を示す表である。
図5C】本発明の実施例2における地上情報係数の求め方を示す表である。
図6】本発明の実施例3における飛行体の飛行ルート制御システムの構成図である。
図7】本発明の実施例3における定量化部の処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施例4における飛行体の飛行ルート制御システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。なお、実施例1にて言及された符号の意味は、同義として他の実施例の説明にも援用する。また、以下の実施例では、エアモビリティを飛行体の一例として説明する。
【実施例0018】
(実施例1)
本発明の実施例1では、飛行体であるエアモビリティの飛行に関連する地上へのリスクと飛行距離が最適となる飛行ルートを動的に求め、エアモビリティに反映する。地上へのリスクは騒音・振動・落下物の三者をペナルティとして定量的に計算し各空域に対してペナルティ場を作成する。
【0019】
図1は、実施例1に係るエアモビリティ100の運用システムの構成図である。図1において、エアモビリティ100の運用システム(飛行ルート制御システム)は、大きくエアモビリティ100側と地上制御装置である地上管制装置110の運用管制側とに分けられる。エアモビリティ100の機体は、エアモビリティ記録部101と、エアモビリティ通信部102と、エアモビリティ制御部107とを備えている。
【0020】
地上管制装置110である運用管制側は、エアモビリティ100の性能及び目的地までのフライトプランを含む固定条件情報を取得する固定条件情報取得部103と、エアモビリティ100の飛行高度、飛行速度、周辺の気象条件、およびエアモビリティ100の目的地までの飛行ルートを含む変動条件情報を取得する変動条件情報取得部104と、固定条件情報および変動条件情報に基づいて、エアモビリティ100が地上に与える影響を三次元的に計算し、計算した影響を数値化する定量化部105と、定量化部105において数値化した影響およびエアモビリティ100の現在地から目的地までの飛行距離に基づいて、エアモビリティ100の飛行ルートを動的に設定し、エアモビリティ100のエアモビリティ通信部102に送信するする設定部106と、を備えている。
【0021】
エアモビリティ100の速度性能や騒音性能といった基本的な性能やエアモビリティ100の目的地情報はエアモビリティ記録部101からエアモビリティ通信部102を経由して地上管制装置110である運用管制側の固定条件情報取得部103に送信される。
【0022】
エアモビリティ100の現在の飛行位置・速度・現在の飛行ルートといった変動条件情報はエアモビリティ記録部101からエアモビリティ通信部102を経由して変動条件情報取得部104に動的に送信される。また、変動条件情報取得部104は、エアモビリティ100周辺の風向・風速・天気・気温などの気象条件を動的に取得する。
【0023】
固定条件情報取得部103で得られた固定条件情報及び変動条件情報取得部104から得られた変動条件情報から、定量化部105でエアモビリティ100が地上に与える影響を動的に計算する。エアモビリティ100が地上に与える影響としては騒音値、振動値及び落下物リスクが挙げられる。
【0024】
設定部106は、定量化部105において数値化した影響と、飛行体であるエアモビリティ100の現在地から目的地までの飛行距離とに基づいて、エアモビリティ100の飛行ルートを動的に設定する。
【0025】
エアモビリティ制御部107は、設定部106で定められたエアモビリティ100の飛行ルートを、エアモビリティ通信部102を通じて動的に取得し、エアモビリティ100の飛行を制御する。
【0026】
図2は、実施例1における定量化部105の処理を示すフローチャートである。
【0027】
図2において、処理ステップS201で処理は開始され、処理ステップS202では、固定条件情報取得部103及び変動条件情報取得部104から固定条件情報及び変動条件情報を取得する。各条件情報を取得したら処理ステップ203、処理ステップS204及び処理ステップS205に進む。
【0028】
処理ステップS203では、エアモビリティ100が飛行する各空域におけるエアモビリティ100が発生する騒音が地上に与える騒音値と、その範囲と、ペナルティ値とを計算する。計算が終了次第、処理ステップS206に進む。
【0029】
処理ステップS204では、エアモビリティ100が飛行する各空域におけるエアモビリティ100が発生する振動が地上に与える振動値と、その範囲と、ペナルティ値とを計算する。計算が終了次第、処理ステップS206に進む。
【0030】
処理ステップS205では、エアモビリティ100が飛行する各空域におけるエアモビリティ100からの落下物の到達範囲と、そのペナルティ値とを計算する。計算が終了次第、処理ステップS206に進む。
【0031】
処理ステップS206では、エアモビリティ100の現在地から目的地までの飛行ルートを飛行距離と各ペナルティ値を変数にする目的関数が最小になるように決定する。
【0032】
処理ステップ203における騒音による騒音ペナルティ値pslの計算方法を以下に示す。地上における騒音値の計算は公知のものを利用できる。
【0033】
騒音における騒音ペナルティ値pslと地上の各地点における騒音値の関係は以下の式(1)で表せる(計算される)。
【0034】
【数1】
【0035】
式(1)において、fslは騒音値と騒音ペナルティ値pslの関数、Slevelは地上における騒音値、dslは計算半径、pslは騒音ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0036】
騒音値Slevelと騒音ペナルティ値pslの関数fslは、ユーザが設定可能である。
【0037】
処理ステップS204における振動による振動ペナルティ値pvlの計算方法を以下に示す。地上における振動値の計算は公知のものを利用できる。
【0038】
振動における振動ペナルティ値pvlと地上の各地点における振動値の関係は以下の式(2)で表せる(計算される)。
【0039】
【数2】
【0040】
式(2)において、fvlは振動値と振動ペナルティ値pvlの関数、Vlevelは地上における振動値、dvlは計算半径、pvlは振動ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0041】
振動値Vlevelと振動ペナルティ値pvlの関数fvlはユーザが設定可能である。
【0042】
処理ステップ処理205における落下物リスクとペナルティの計算方法を示す。地上の各地点における落下物リスクの求め方は公知のものを利用できる。
【0043】
落下物リスクにおける落下物ペナルティ値pfrと地上の各地点における落下物リスクとの関係は以下の式(3)で表せる(計算される)。
【0044】
【数3】
【0045】
式(3)において、ffrは振動値と落下物ペナルティ値pfrの関数、Friskは地上における落下物リスク、dfrは計算半径、pfrは落下物ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0046】
落下物リスクFriskと落下物ペナルティ値pfrとの関係はユーザが設定可能である。
【0047】
処理ステップS206における目的関数fを以下に示す。処理ステップS203、S204及びS205で得た各ペナルティ値とエアモビリティ100の現在地から目的地までの飛行ルート長とを変数とし、それぞれをそれぞれの変数に対応するゲイン値と乗算する。
【0048】
【数4】
【0049】
式(4)において、kslは騒音ペナルティ値pslに対するゲイン、kvlは振動ペナルティ値pvlに対するゲイン、kfrは落下物ペナルティ値pfrに対するゲイン、krouteは飛行ルート長に対するゲイン、Drouteはエアモビリティ100の現在地から目的地までの飛行ルート長である。
【0050】
上記式(4)において、目的関数fが最小となるようにエアモビリティ100の飛行ルートを算出していき、現時点における最適飛行ルートに従って、エアモビリティ100の飛行動作を制御する。
【0051】
以上のように、実施例1の飛行制御システム(エアモビリティ運用システム)により、騒音リスク、振動リスク及び落下物リスクに対するペナルティ値に応じて、エアモビリティ100の飛行が地上に与える影響と飛行距離の両者を極力抑えられ飛行ルートを動的に確定することができる。
【0052】
つまり、実施例1によれば、飛行体100が飛行中に発生する騒音、振動及び落下物の可能性を動的に考慮し、それらを総合的に判断して最小となるような飛行ルートを算出して飛行体を制御可能な飛行ルート制御システム及び制御方法を実現することができる。
【0053】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0054】
実施例2の飛行ルート制御システムであるエアモビリティ運用システムは、実施例1に加えて地上の影響を動的に加えることで飛行ルートを変化させる例であり、この点が実施例1と異なる。
図3は、実施例2に係るエアモビリティの運用システムの構成図である。実施例2の実施例1と異なる部分は、実施例1に地上情報取得部307が追加され、実施例1における定量化部105が実施例2では定量化部305となり、処理の内容が定量化部105とは変更されていることである。
【0055】
定量化部305は、固定条件情報、変動条件情報、および地上の建造物の所在や人が密集する区域の有無を示す地上情報に基づいて、エアモビリティ100が地上に与える影響を動的に計算し、エアモビリティ100が地上に与える影響を数値化する。
【0056】
地上情報取得部307は地上の様子を示す情報を動的に取得する。地上情報取得部307は、地上情報を求めるために必要な、少なくとも地上の重要施設の位置情報と人の密集度合いを含む情報を収集し、地上情報を計算する。ここでは、地上情報は、地上に存在する重要建造物の所在など時間変化があまりない情報や、イベントなどにより人が密集する区域の有無など時間変化に応じて動的に変化する情報などを指す。
【0057】
図4は、実施例2における定量化部305の処理を示すフローチャートである。図2に示す実施例1における定量化部105の処理を示すフローチャートと同じ番号のものは処理内容に変更のないものである。
【0058】
図4において、処理ステップS402では、固定条件情報取得部103、変動条件情報取得部104及び地上情報取得部307から固定条件、変動条件及び地上情報を取得する。各条件を取得したら処理ステップS403、処理ステップS404及び処理ステップS405に進む。
【0059】
処理ステップS403では、実施例1の処理ステップS203と同様に各空域における地上での騒音値と範囲とペナルティ値とを計算する。計算方法は実施例1と同様に公知の手法を用いることができる。計算終了後は処理ステップ406に移動する。
【0060】
処理ステップS404では、実施例1の処理ステップS204と同様に各空域における地上での振動値と範囲とペナルティ値とを計算する。計算方法は実施例1と同様に公知の手法を用いることができる。計算終了後は処理ステップS407に移動する。
【0061】
処理ステップS405では実施例1の処理ステップS205と同様に各空域における地上での落下物の到達範囲とペナルティ値を計算する。計算方法は実施例1と同様に公知の手法を用いることができる。計算終了後は処理408に移動する。
【0062】
処理406では処理ステップ403で求めたエアモビリティ100からの騒音による地上での騒音値と、地上情報から地上から発生される騒音値とによるペナルティ値を計算する。騒音とペナルティ値の関係は以下の式(5)で求められる(計算される)。このとき、地上情報によって各地点での騒音値に関する地上情報係数が変化する。
【0063】
【数5】
【0064】
式(5)において、fslは飛行体100が発生する騒音の地上における騒音値の関数、Slevelは地上における騒音値、dslは計算半径、cslは地上情報係数(騒音値)、pslは騒音ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0065】
騒音値Slevelと騒音ペナルティ値pslの関数fslは、ユーザが設定可能である。
【0066】
処理ステップS407では処理ステップ404で求めたエアモビリティ100の振動が地上に与える振動値と、地上情報から地上から発生される振動値とによるペナルティ値を計算する。振動とペナルティ値の関係は以下の式(6)で求められる(計算される)。このとき、地上情報によって各地点での振動値に関する地上情報係数cslが変化する。
【0067】
【数6】
【0068】
式(6)において、fvlは振動値と振動ペナルティ値pvlの関数、Vlevelは地上における振動値、dvlは計算半径、cvlは地上情報係数(振動値)、pvlは振動ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0069】
振動値Vlevelと振動ペナルティ値pvlの関数fvlはユーザが設定可能である。
【0070】
処理ステップS408では処理ステップS405で求めたエアモビリティ100から落下される地上での落下物リスクと、地上情報から地上における建物等からの落下物リスクによるペナルティ値を計算する。落下物リスクとペナルティ値の関係は以下の式(7)で求められる(計算される)。このとき、地上情報によって各地点での落下物リスクに関する係数が変化する。
【0071】
【数7】
【0072】
式(7)において、ffrは振動値と落下物ペナルティ値pfrの関数、Friskは地上における落下物リスク、dfrは計算半径、cfrは地上情報係数(落下物リスク)、pfrは落下物ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0073】
落下物リスクFriskと落下物ペナルティ値pfrとの関係はユーザが設定可能である。
【0074】
以上の処理を実施例1に加えることにより、地上の建物や人口密集度によってエアモビリティ100の飛行ルートを変更できる。
【0075】
図5A図5B及び図5Cは、地上情報係数の求め方を示す表である。図5A図5B及び図5Cに示すように、エアモビリティ100の飛行する領域周辺の人口密度、病院や役所など地上に存在する重要建造物の所在など、長期間にわたり値が安定するものに対応する固定項と、イベントなどで動的に人が密集する場合に対応するよう、短期間での地上情報係数の変化に対応する動的項の2つを用いて計算を行う。
【0076】
地上情報係数の計算に用いる情報の取得は公知のものを利用できる。各項の値は、飛行ルート制御システムであるエアモビリティ運用システムの利用者によって定めることができる。
【0077】
以上のように、実施例2の異常管制装置実施例1と同様な効果を得ることができる他、騒音、振動、落下物リスクに対するペナルティ値と地上情報に応じた飛行ルートを確定できるという効果が得られる。
【0078】
なお、実施例2において、地上情報取得部307の動作を停止させ、実施例1と同様な機能により動作させるか、地上情報取得部307の動作を開始させるかの選択を行うように構成することも可能である。
【0079】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。
【0080】
実施例3の飛行ルート制御システムであるエアモビリティ運用システムは、実施例2に加えて地上の影響に対し補償を支払うことでペナルティ値を下げることを可能にする点が実施例2と異なる。
【0081】
図6は、実施例3に係るエアモビリティ運用システムの構成図である。実施例2と異なる部分は補償情報取得部608の追加及び定量化部605の処理の変更である。
【0082】
図6に示した補償情報取得部608はエアモビリティ100が地上に与える影響に対し、地権者や関係者に対して補償を行っている区域の補償情報を収集し、取得するものである。
【0083】
図7は、実施例3における定量化部605の処理を示すフローチャートである。図4に示す実施例2における定量化部305の処理を示すフローチャートと同じ番号のものは処理内容に変更のないものである。
【0084】
図7において、処理ステップS702では、固定条件情報取得部103、変動条件情報取得部104、地上情報取得部307及び補償情報取得部608から得た固定条件、変動条件、地上情報及び補償情報を取得する。
【0085】
各情報を取得したら処理ステップS403、処理ステップS404、処理ステップS405に進む。
【0086】
処理ステップS706では処理ステップS403で求めた地上での騒音値、地上情報および補償情報から騒音によるペナルティ値を計算する。騒音とペナルティ値の関係は以下の式(8)で求められる(計算される)。このとき、地上情報によって各地点での騒音値に関する地上情報係数が変化する。また、補償情報によって各地点での騒音値に関する補償情報係数が変化する。
【0087】
【数8】
【0088】
式(8)において、fslは騒音値と騒音ペナルティ値pslの関数、Slevelは地上における騒音値、dslは計算半径、cslは地上情報係数(騒音値)、rslは補償情報係数(騒音値)、pslは騒音ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0089】
騒音値Slevelと騒音ペナルティ値pslの関数fslは、ユーザが設定可能である。
【0090】
処理ステップS707では、処理ステップS404で求めた地上での振動値、地上情報および補償情報から振動によるペナルティ値を計算する。振動とペナルティ値の関係は以下の式(9)で求められる(計算される)。
【0091】
このとき、地上情報によって各地点での振動値に関する地上情報係数cslが変化する。また、補償情報によって各地点での振動値に関する補償情報係数rslが変化する。
【0092】
【数9】
【0093】
式(9)において、fvlは振動値と振動ペナルティ値pvlの関数、Vlevelは地上における振動値、dvlは計算半径、cvlは地上情報係数(振動値)、rvlは補償情報係数(振動値)、pvlは振動ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0094】
振動値Vlevelと振動ペナルティ値pvlの関数fvlはユーザが設定可能である。
【0095】
処理ステップS708では、処理ステップS405で求めた地上での落下物リスク、地上情報および補償情報から落下物リスクによるペナルティ値を計算する。落下物リスクとペナルティ値の関係は以下の式(10)で求められる(計算される)。このとき、地上情報によって各地点での落下物リスクに関する地上情報係数が変化する。また、補償情報によって各地点での落下物リスクに関する補償情報係数が変化する。
【0096】
【数10】
【0097】
式(10)において、ffrは振動値と落下物ペナルティ値pfrの関数、Friskは地上における落下物リスク、dfrは計算半径、cfrは地上情報係数(落下物リスク)、rfrは補償情報係数、pfrは落下物ペナルティ値、xはエアモビリティ100からの三次元相対距離である。
【0098】
落下物リスクFriskと落下物ペナルティ値pfrとの関係はユーザが設定可能である。
【0099】
以上の処理を実施例2から変更することにより、地上への補償情報によってエアモビリティ100の飛行ルートを変更できる。
【0100】
補償情報係数rfrの値は地権者・関係者との補償内容に応じて飛行ルート制御システムであるエアモビリティ運用システムの利用者によって定めることができる。
【0101】
以上のように、実施例3の飛行ルート制御システムによれば、実施例2と同様な効果を得ることができる他、騒音、振動、落下物リスクに対するペナルティ値と地上情報に加えて、地上の地権者・関係者に対する補償に応じた飛行ルートを確定できるという効果が得られる。
【0102】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について、説明する。
【0103】
図8は、実施例4に係るエアモビリティ100の運用管理システムの構成図である。図1に示した実施例1との相違点は、実施例4においては、実施例1の地上管制装置110に運用管制送信部111と、運用管理部112と、管理情報記憶部113とが追加されている。
【0104】
図8には、エアモビリティ100が一つのみ示されているが、複数のエアモビリティ100に対して、地上管制装置110が後述する飛行ルートの設定動作を行うことができる。
【0105】
エアモビリティ100は、エアモビリティ100の使用者等が、運用管理側にエアモビリティ100の適切な飛行ルートの設定を依頼する場合には、エアモビリティ通信部102から地上管制装置110の運用管制通信部111に、運用管理側の地上管制装置110に飛行ルート設定サービスを受けることの登録を依頼する。
【0106】
この登録依頼は、エアモビリティ100に関する個別情報であり、そのエアモビリティ100を特定できる情報を付加して行われる。
【0107】
地上管制装置110の運用管理部112は、運用管制通信部111からエアモビリティ100の登録依頼を受け取ると、管理情報に登録依頼に付加された個別情報を管理情報記憶部113に格納する。
【0108】
上記登録が完了したエアモビリティ100のエアモビリティ通信部通信部102から飛行ルート設定依頼を、運用管理通信部111を介して、運用管理部12が受け取ると、管理情報記憶部113に格納された登録情報を確認する。
【0109】
運用管理部12が、飛行ルート設定依頼を行ったエアモビリティ100が管理情報記憶部113に格納された登録情報と一致するエアモビリティであることを確認すると、運用管理部12は、エアモビリティ100の適切な飛行ルートの設定動作の開始を個別条件情報取得部103、変動条件情報取得部104、定量化部105及び設定部106に指令する。
【0110】
地上管制装置110は、実施例1と同様な動作を行い、エアモビリティ100の適切な飛行ルートの設定動作を行う。
【0111】
運用管理部112は、エアモビリティ100の適切な飛行ルートの設定動作が完了すると、実行した飛行ルートの設定動作開始日時、終了日時及び設定動作内容を、管理情報記憶部113に登録されたエアモビリティ100の個別情報に対して、格納する。
【0112】
そして、管理情報記憶部113格納された実行した飛行ルートの設定動作開始日時、終了日時および設定動作内容を、該当するエアモビリティ100のエアモビリティ通信部102に送信する。
【0113】
以上のように、実施例4の飛行ルート制御システムによれば、飛行体100が飛行中に発生する騒音、振動及び落下物の可能性を動的に考慮し、それらを総合的に判断して最小となるような飛行ルートを算出して飛行体を制御可能な飛行ルート制御方法を実現することができる。実施例4は、いわゆるビジネスモデルに関する発明の実施例である。
【0114】
以上述べた実施例4は、実施例1に適用した例であるが、実施例2及び実施例3にも適用可能である。
【0115】
なお、上述した実施例1~3においては、エアモビリティ100とは別個に、地上管制装置110を備えるように構成したが、地上管制装置110の固定条件情報取得部103、変動条件情報取得部104、定量化部105および設定部106をエアモビリティ100に備えるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0116】
100・・・エアモビリティ、101・・・エアモビリティ記録部、102・・・エアモビリティ通信部、103・・・固定条件情報取得部、104・・・変動条件情報取得部、105、305、605・・・定量化部、106・・・設定部、107・・・エアモビリティ通信部、110・・・地上管制装置(地上制御装置)、111・・・運用管理通信部、112・・・運用管理部、113・・・管理情報記憶部、307・・・地上情報取得部、608・・・補償情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8