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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088427
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203125
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 直樹
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA64
3J104AA69
3J104AA72
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA06
3J104BA33
3J104CA14
3J104CA22
3J104CA23
3J104CA24
3J104CA34
3J104DA05
(57)【要約】
【課題】サイズの小型化を図りながら、メンテナンスフリーを実現することができる直動案内ユニットを提供する。
【解決手段】直動案内ユニット10は、レールと、スライダ21aと、を備える。スライダ21aは、スライド部31と、第1側板41と、2つの第2循環路24a,25aの一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面28a,28bと対向する2つの第2循環路上側面29a,29bを含み、スライド部31と第1側板41とを連結するように配置される第2側板51aと、を含む。第2側板51aは、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部56を含む。含浸部56は、2つの第2循環路上側面29a,29bを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、
前記レールに相対移動可能に跨架され、前記一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、
複数の転動体と、を備え、
前記レールおよび前記スライダによって、前記複数の転動体が循環する環状路が形成されており、
前記環状路は、
前記第1軌道溝と前記第2軌道溝とから構成される軌道路と、
前記スライダ内に形成され、前記軌道路と並行する第1循環路と、
前記スライダ内に形成され、前記軌道路と前記第1循環路とを接続する2つの第2循環路と、を含み、
前記スライダは、
前記第1循環路の一部を構成する第1循環路内側面と、前記第2軌道溝と、を含むスライド部と、
前記第1循環路の一部を構成し、前記第1循環路内側面と対向する第1循環路外側面と、2つの前記第2循環路の一部を構成する2つの第2循環路下側面と、を含む第1側板と、
2つの前記第2循環路の一部をそれぞれ構成し、2つの前記第2循環路下側面と対向する2つの第2循環路上側面を含み、前記スライド部と前記第1側板とを連結するように配置される第2側板と、を含み、
前記第2側板は、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部を含み、
前記含浸部は、2つの前記第2循環路上側面を含む、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記第2側板は、前記含浸部を全域に含む、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記レールの幅は、1mm以上25mm以下である、請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記含浸部の空隙率は、10%以上50%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記含浸部は、樹脂製である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記含浸部は、超高分子量ポリエチレン微粒子を押し固めて構成されている、請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記第2側板は、前記含浸部の表面を覆う被覆層を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記被覆層は、グリースまたはワックスから構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
前記転動体は、ボールである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型であってメンテナンスフリーを実現するための潤滑部材を含む直動案内ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示の直動案内ユニットに含まれる潤滑部材は、エンドキャップの反ケーシング側の端面に形成された凹部にそれぞれ配設された一対の本体部と、一対の本体部を互いに連結する一対の連結部とから一体構造のワンピースとして形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6403992号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、直動案内ユニットにおいて、さらなる小型化の要望がある。ここで、特許文献1に開示の直動案内ユニットに対して、さらなる小型化を図ろうとすると、潤滑部材を構成する部材を含めた各部材についても小型化を図る必要がある。特許文献1に開示の潤滑部材は、その構成が複雑であるため、小型化を図ることが困難である。さらに、エンドキャップも小型化されることとなり、このような部材を用いる組み立ても困難となる。その結果、生産性が低下するおそれがある。そこで、サイズの小型化を図りながら、メンテナンスフリーを実現することができる直動案内ユニットを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に従った直動案内ユニットは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、レールに相対移動可能に跨架され、一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、複数の転動体と、を備える。レールおよびスライダによって、複数の転動体が循環する環状路が形成されている。環状路は、第1軌道溝と第2軌道溝とから構成される軌道路と、スライダ内に形成され、軌道路と並行する第1循環路と、スライダ内に形成され、軌道路と第1循環路とを接続する2つの第2循環路と、を含む。スライダは、第1循環路の一部を構成する第1循環路内側面と、第2軌道溝と、を含むスライド部と、第1循環路の一部を構成し、第1循環路内側面と対向する第1循環路外側面と、2つの第2循環路の一部を構成する2つの第2循環路下側面と、を含む第1側板と、2つの第2循環路の一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面と対向する2つの第2循環路上側面を含み、スライド部と第1側板とを連結するように配置される第2側板と、を含む。第2側板は、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部を含む。含浸部は、2つの第2循環路上側面を含む。
【発明の効果】
【0006】
上記直動案内ユニットによれば、サイズの小型化を図りながら、メンテナンスフリーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す直動案内ユニットを示す概略側面図である。
図3図3は、図1に示す直動案内ユニットの概略断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る直動案内ユニットに含まれるスライダを示す概略斜視図である。
図5図5は、図4中の矢印V-Vで示す断面で切断した場合のスライダの概略断面図である。
図6図6は、実施の形態2における直動案内ユニットに含まれるスライダの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
本開示の直動案内ユニットは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、レールに相対移動可能に跨架され、一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、複数の転動体と、を備える。レールおよびスライダによって、複数の転動体が循環する環状路が形成されている。環状路は、第1軌道溝と第2軌道溝とから構成される軌道路と、スライダ内に形成され、軌道路と並行する第1循環路と、スライダ内に形成され、軌道路と第1循環路とを接続する2つの第2循環路と、を含む。スライダは、第1循環路の一部を構成する第1循環路内側面と、第2軌道溝と、を含むスライド部と、第1循環路の一部を構成し、第1循環路内側面と対向する第1循環路外側面と、2つの第2循環路の一部を構成する2つの第2循環路下側面と、を含む第1側板と、2つの第2循環路の一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面と対向する2つの第2循環路上側面を含み、スライド部と第1側板とを連結するように配置される第2側板と、を含む。第2側板は、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部を含む。含浸部は、2つの第2循環路上側面を含む。
【0009】
昨今、直動案内ユニットにおいては、さらなる小型化の要望がある。もちろん、直動案内ユニットに対してはメンテナンスフリー、すなわち、長期にわたって潤滑油を転動体に供給してスライダの円滑な摺動を確保することが求められる。ここで、ケーシングと一対のエンドキャップとから構成されるスライダにおいて、エンドキャップ内に潤滑ユニット、すなわち、潤滑油を供給する部材を組み込み、この潤滑ユニットと転動体とを接触させて潤滑油を供給する方法がある。また、スライダ内に設けられ、軌道路と並行に配置されるリターン路内に潤滑ユニットを配置し、この領域で転動体に潤滑ユニットを接触させて潤滑油を供給する方法もある。
【0010】
しかし、直動案内ユニットにおいてさらなる小型化を進める場合、上記したエンドキャップ内に組み込まれる潤滑ユニットやリターン路内に配置される潤滑ユニットについても、極めて小さくなってしまう。そうすると、部品点数が多いことも相まって、組み立てが困難となり、生産性が低下することになる。また、このような極めて小型となった潤滑ユニットにおいて保持できる潤滑油の量が少なくなり、長期にわたって円滑なスライダの摺動が確保できないおそれがある。
【0011】
本開示の直動案内ユニットによると、スライダは、スライド部と、第1側板と、第2側板と、を含む。スライド部は、第1循環路の一部を構成する第1循環路内側面と、第2軌道溝と、を含む。第1側板は、第1循環路の一部を構成し、第1循環路内側面と対向する第1循環路外側面と、2つの第2循環路の一部を構成する2つの第2循環路下側面と、を含む。第2側板は、2つの第2循環路の一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面と対向する2つの第2循環路上側面を含む。また、第2側板は、スライド部と第1側板とを連結するように配置される。このような構成の直動案内ユニットに含まれるスライダは、スライド部、第1側板および第2側板から構成されることとなり、部品点数を少なくして比較的シンプルな構成とすることができる。そうすると、生産性の低下を回避しながら、各パーツの小型化を図って、極めて小さくすることが比較的容易となる。したがって、小型化の実現を図ることが容易となる。
【0012】
上記直動案内ユニットにおいて、第2側板は、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部を含む。そして、含浸部は、2つの第2循環路上側面を含む。このような構成によれば、転動体が第2循環路を通過する際に、含浸部に含まれる第2循環路上側面と転動体とを接触させることができる。そうすると、転動体が第2循環路を通過する際に、転動体に対して含浸部から潤滑油を給油することができる。この場合、例えば、特許文献1に開示の直動案内ユニットのように、潤滑のための給油をする潤滑部材を特別に設けて組み込む必要はない。したがって、スライダの構成が複雑になることを回避することができる。その結果、このような直動案内ユニットによると、サイズの小型化を図りながら、メンテナンスフリーを実現することができる。
【0013】
上記直動案内ユニットにおいて、第2側板は、含浸部を全域に含んでもよい。このようにすることにより、第2側板の構成を単純化することができると共に、潤滑油を保持できる領域を多く確保することができる。したがって、多くの潤滑油を第2側板の全域にわたって保持して、より長期にわたって潤滑油を供給することができる。
【0014】
上記直動案内ユニットにおいて、レールの幅は、1mm以上25mm以下であってもよい。このような構成のレールを含む直動案内ユニットは、より確実に小型化を実現することができる。
【0015】
上記直動案内ユニットにおいて、含浸部の空隙率は、10%以上50%以下であってもよい。含浸部の空隙率を上記範囲内とすることにより、長期にわたって供給する潤滑油を空隙内に確実に保持することができる。
【0016】
上記直動案内ユニットにおいて、含浸部は、樹脂製であってもよい。このようにすることにより、上記構成の含浸部を容易に形成することができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0017】
上記直動案内ユニットにおいて、含浸部は、超高分子量ポリエチレン微粒子を押し固めて構成されていてもよい。このようにすることにより、このような含浸部は、潤滑油との親和性が良好であり、所望の空隙率の含浸部を形成することが容易である。
【0018】
上記直動案内ユニットにおいて、第2側板は、含浸部の表面を覆う被覆層を含んでもよい。このようにすることにより、含浸部に保持された潤滑油が含浸部の表面から蒸発することを抑制することができる。したがって、長期にわたる潤滑油の保持が可能となり、より長期にわたって潤滑油を供給することができる。
【0019】
上記直動案内ユニットにおいて、被覆層は、グリースまたはワックスから構成されていてもよい。このような構成の被覆層によれば、潤滑油との親和性も良好であり、より確実に潤滑油の蒸発を抑制することができる。
【0020】
上記直動案内ユニットにおいて、転動体は、ボールであってもよい。このようにすることにより、より構成をシンプルにしながら、小型化を図ることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の直動案内ユニットの実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1における直動案内ユニットの構成について説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係る直動案内ユニットを示す概略斜視図である。図2は、図1に示す直動案内ユニットを示す概略側面図である。図3は、図1に示す直動案内ユニットの概略断面図である。図1および以下に示す図において、X方向は、直動案内ユニットの幅方向である短手方向を示し、Y方向は、直動案内ユニットの長手方向を示し、Z方向は、直動案内ユニットの厚さ方向(高さ方向)を示す。X方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ、直交している。図2は、矢印Yで示す向きから見た図である。図3は、Z方向に垂直な平面、すなわち、X-Y平面で切断した場合の断面図である。
【0023】
図1図2および図3を参照して、実施の形態1における直動案内ユニット10は、レール11と、スライダ21aと、複数の転動体としてのボール20と、を含む。レール11は、長手方向であるY方向に真っ直ぐに延びる構成である。転動体としてボール20を含むことにより、より構成をシンプルにしながら、直動案内ユニット10の小型化を図ることができる。
【0024】
レール11は、Z方向に間隔をあけて配置されるレール上端面12aおよびレール下端面12bと、X方向に間隔をあけて配置される第1レール側面13aおよび第2レール側面13bと、Y方向に間隔をあけて配置されるレール前端面14aおよびレール後端面14bと、を含む。レール11は、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝15a,15bを有する。第1軌道溝15aは、第1レール側面13aに設けられ、第1軌道溝15bは、第2レール側面13bに設けられる。第1軌道溝15a,15bはそれぞれ第1レール側面13aおよび第2レール側面13bにおいて、レール11の内方側に凹んで凹溝を形成するように設けられる。Z方向において、第1軌道溝15a,15bのそれぞれとレール上端面12aとの間には、長手方向に延びる突部16a,16bが形成されることになる。第1軌道溝15a,15bはそれぞれ、Z方向においてレール上端面12aに近い位置に設けられる。
【0025】
レール11には、第1レール側面13aから第2レール側面13bに至るようX方向に貫通する複数の貫通孔17a,17b,17cが設けられる。貫通孔17a,17b,17cは、Y方向において間隔をあけて設けられる。貫通孔17a,17b,17cは、例えば直動案内ユニット10の使用時において、レール11を所定の箇所に取り付ける際にそれぞれ有効に利用される。
【0026】
ここで、この直動案内ユニット10のサイズは、極めて小さい。本実施形態においては、レール11の幅W、すなわち、第1レール側面13aと第2レール側面13bとの間のX方向の長さは、例えば、1mmである。レール11の長手方向の長さ、すなわち、Y方向の長さは、上記した長さW等も考慮した上で要求に応じて任意に定められる。また、このレール11の大きさや要求に応じて、スライダ21aの大きさも定められる。なお、レール11の幅Wについては、1mm以上25mm以下であってもよい。このような構成のレール11を含む直動案内ユニット10は、より確実に小型化を実現することができる。
【0027】
次に、スライダ21aの具体的な構成について説明する。図4は、実施の形態1に係る直動案内ユニット10に含まれるスライダ21aを示す概略斜視図である。図4に示すスライダ21aは、図1に示す直動案内ユニット10からレール11およびボール20を取り除いた状態を示す図である。図5は、図4中の矢印V-Vで示す断面で切断した場合のスライダ21aの概略断面図である。なお、図5においては、理解を容易にする観点からボール20を図示している。図5は、X方向に垂直な平面、すなわち、Y-Z平面で切断した場合の断面図である。
【0028】
図1図3に加え、図4および図5を併せて参照して、スライダ21aは、レール11に相対移動可能に跨架される。すなわち、レール11に対してスライダ21aは、Y方向に摺動可能な構成である。スライダ21aは、一対の第1軌道溝15a,15bのそれぞれに対向する一対の第2軌道溝18a,18bを有する(特に図3参照)。
【0029】
レール11およびスライダ21aによって、複数のボール20が循環する環状路19a,19bが形成される。環状路19a,19bはX方向に間隔をあけて配置されている。X方向において、環状路19aは、第1レール側面13a側に配置され、環状路19bは、第2レール側面13b側に配置される。
【0030】
環状路19aは、軌道路22aと、第1循環路23aと、2つの第2循環路24a,25aと、を含む。軌道路22aは、第1軌道溝15aと、第1軌道溝15aと対向する第2軌道溝18aと、から構成される。第1循環路23aは、第1循環路内側面26aと、第1循環路内側面26aと対向する第1循環路外側面27aと、から構成されている。第2循環路24aは、第2循環路下側面28aと、第2循環路下側面28aと対向する第2循環路上側面29aと、から構成されている(特に図5参照)。第2循環路25aは、第2循環路下側面28bと、第2循環路下側面28bと対向する第2循環路上側面29bと、から構成されている。また、環状路19bは、軌道路22bと、第1循環路23bと、2つの第2循環路24b,25bと、を含む。軌道路22bは、第1軌道溝15bと、第1軌道溝15bと対向する第2軌道溝18bと、から構成される。第1循環路23bは、第1循環路内側面26bと、第1循環路内側面26bと対向する第1循環路外側面27bと、から構成されている。2つの第2循環路24b,25bの構成については、2つの第2循環路24a,25aの構成と同様であるため、それらの説明を省略する。第1循環路23a,23bはそれぞれ、リターン路とも呼ばれる。第2循環路24a,24b,25a,25bはそれぞれ、方向転換路とも呼ばれる。
【0031】
ここで、スライダ21aは、スライド部31と、第1側板(下側側板)41と、第2側板(上側側板)51と、を含む。本実施形態においては、スライダ21aは、スライド部31と、第1側板41と、第2側板51aとから構成されている。
【0032】
まず、スライド部31の構成について説明する。スライド部31は、ブロック状である。スライド部31は、X方向に間隔をあけて配置されて露出する側壁面32a,32bと、Z方向において露出する上壁面33と、を含む。上壁面33には、スライド部31をZ方向に貫通する貫通孔34a,34bが複数設けられる。本実施形態においては、貫通孔34a,34bは、Y方向に間隔をあけて2つ設けられる。
【0033】
また、スライド部31は、スライダ21aの内部において、X方向においてレール11と間隔をあけてそれぞれ配置される一対の環状路形成部35a,35bを含む(特に図3参照)。X方向において、一方の環状路形成部35aは、第1レール側面13a側に配置され、他方の環状路形成部35bは、第2レール側面13b側に配置される。一方の環状路形成部35aは、第1循環路23aの一部を構成する第1循環路内側面26aと、第2軌道溝18aと、を含む。他方の環状路形成部35bは、第1循環路23bの一部を構成する第1循環路内側面26bと、第2軌道溝18bと、を含む。なお、スライド部31は、金属製である。
【0034】
次に、第1側板41の構成について説明する。第1側板41は、長手方向の両端部に位置する一対の板状部42a,42bと、一対の板状部42a,42bをそれぞれ連結する一対の連結部43a,43bと、を含む。板状部42a,42bはそれぞれ、Y方向が厚さ方向となるように形成されている。板状部42a,42bにはZ方向に凹む凹部44が設けられており、凹部44内にレール11が配置されるよう構成される。板状部42aには、第1軌道溝15a,15bに引っ掛かるようにX方向に突出する突出部45a,45bが形成されている。また、板状部42a,42bには、Y方向に貫通する複数の貫通孔46が設けられている。連結部43a,43bはそれぞれ、Y方向に延びるように設けられている。X方向において、一方の連結部43aは、第1レール側面13a側に配置され、他方の連結部43bは、第2レール側面13b側に配置される。連結部43a,43bはZ方向において、レール11側に配置される。
【0035】
第1側板41は、第1循環路23aの一部を構成し、第1循環路内側面26aと対向する第1循環路外側面27aと、2つの第2循環路24a,25aの一部を構成する2つの第2循環路下側面28a,28bと、を含む。また、第1側板41は、第1循環路23bの一部を構成し、第1循環路内側面26bと対向する第1循環路外側面27bと、2つの第2循環路24b,25bの一部を構成する2つの第2循環路下側面と、を含む。第1循環路外側面27aは、一方の連結部43aに設けられており、第1循環路外側面27bは、他方の連結部43bに設けられている。なお、第1側板41は、本実施形態においては、樹脂製である。
【0036】
次に、第2側板51aの構成について説明する。第2側板51aは、第1側板41の一対の板状部42a、42bの間であって一対の連結部43a,43b上の空間に嵌まる形状を有する。また、第2側板51aは、スライド部31の側壁面32a,32bおよびスライド部31の上壁面33が露出するようにしてスライド部31を覆うように配置される。第2側板51aは、スライド部31と第1側板41とを連結するように配置される。
【0037】
第2側板51aは、長手方向(Y方向)に間隔をあけて配置される一対の第1部分52a,52bと、短手方向(X方向)に間隔をあけて配置される一対の第2部分53a,53bと、を含む。一方の第1部分52aは、厚さ方向をY方向とする板状であって、第1側板41の一方の板状部42aと接触して配置される。他方の第1部分52bについても厚さ方向をY方向とする板状であって、第1側板41の他方の板状部42bと接触して配置される。なお、第1部分52a,52bは、貫通孔46内にも配置される。第2部分53a,53bは、長手方向に延びる形状であり、それぞれ第1部分52a,52bを連結するように配置される。Z方向に見て、第1部分52a,52bおよび第2部分53a,53bによって囲まれる領域にスライド部31の上壁面33が露出するように構成されている。また、X方向に見て、第1部分52a,52b、第2部分53aおよび第1側板41の連結部43aによって囲まれる領域にスライド部31の側壁面32aが露出し、第1部分52a,52b、第2部分53bおよび第1側板41の連結部43bによって囲まれる領域にスライド部31の側壁面32bが露出するように構成される。
【0038】
第2側板51aは、2つの第2循環路24a,25aの一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面28a,28bと対向する2つの第2循環路上側面29a,29bを含む。また、第2側板51aは、同様に、2つの第2循環路24b,25bの一部をそれぞれ構成し、2つの第2循環路下側面と対向する2つの第2循環路上側面を含む。
【0039】
第2側板51aは、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部56を含む。本実施形態においては、含浸部56は、樹脂製である。本実施形態においては、含浸部56は、超高分子量ポリエチレン微粒子を押し固めて構成されている。超高分子量ポリエチレン微粒子としては、例えばミペロン(登録商標)(三井化学株式会社製)が用いられる。含浸部56の空隙率は、10%以上50%以下である。また、本実施形態においては、第2側板51aは、含浸部56を全域に含む。すなわち、第2側板51aは、含浸部56のみから構成されている。このような第2側板51aを含むスライダ21aについては、例えば、以下のようにして製造される。スライダ21aの製造方法について簡単に説明すると、まずスライド部31、第1側板41および第2側板51aをそれぞれ別途製造する。ここで、第2側板51aについては、含浸部56に潤滑油を含浸させておく。そして、スライド部31と第1側板41とを組み合わせてレール11に取り付け、次に転動体としての複数のボール20を環状路19a,19b内に挿入する。その後、第1側板41を押し広げて、第2側板51aを嵌め込むことにより、上記形状のスライダ21aを得ることができる。
【0040】
ここで、含浸部56は、2つの第2循環路上側面29a,29bを含む。すなわち、含浸部56は、2つの第2循環路24a,25aにおいてボール20と接触する位置に設けられている。
【0041】
このような構成の直動案内ユニット10に含まれるスライダ21aは、上記構成のスライド部31と、第1側板41と、第2側板51aと、を含む。このような構成の直動案内ユニット10に含まれるスライダ21aは、スライド部31、第1側板41および第2側板51aから構成されることとなり、部品点数を少なくして比較的シンプルな構成とすることができる。そうすると、生産性の低下を回避しながら、各パーツの小型化を図って、極めて小さくすることが比較的容易となる。したがって、小型化の実現を図ることが容易となる。
【0042】
ここで、上記直動案内ユニット10において、第2側板51aは、多孔質物質から構成され、潤滑油が含浸された含浸部56を含む。そして、含浸部56は、2つの第2循環路上側面29a,29bを含む。このような構成によれば、ボール20が第2循環路24a,25aを通過する際に、含浸部56に含まれる第2循環路上側面29a,29bとボール20とを接触させることができる。そうすると、ボール20が第2循環路24a,25aを通過する際に、ボール20に対して含浸部56から潤滑油を給油することができる。したがって、このような直動案内ユニット10によると、サイズの小型化を図りながら、メンテナンスフリーを実現することができる。
【0043】
本実施形態においては、第2側板51aは、含浸部56を全域に含む。よって、第2側板51aの構成を単純化することができると共に、潤滑油を保持できる領域を多く確保することができる。したがって、多くの潤滑油を第2側板51aの全域にわたって保持して、より長期にわたって潤滑油を供給することができる。
【0044】
本実施形態においては、含浸部56の空隙率は、10%以上50%以下である。したがって、長期にわたって供給する潤滑油を空隙内に確実に保持することができる。
【0045】
本実施形態においては、含浸部56は、樹脂製である。よって、上記構成の含浸部56を容易に形成することができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0046】
本実施形態においては、含浸部56は、超高分子量ポリエチレン微粒子を押し固めて構成されている。よって、このような含浸部56は、潤滑油との親和性が良好であり、所望の空隙率の含浸部56を形成することが容易である。
【0047】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2における直動案内ユニットに含まれるスライダの概略断面図である。図6を参照して、実施の形態2における直動案内ユニットは、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の直動案内ユニットは、第2側板の構造において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0048】
図6を参照して、実施の形態2に係る直動案内ユニットに備えられるスライダ21bは、スライド部31と、第1側板41と、第2側板51bと、を含む。スライド部31および第1側板41の構成については、実施の形態1の場合と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0049】
ここで、第2側板51bは、含浸部56の表面を覆う被覆層59を含む。被覆層59は、含浸部56が全域に設けられた第2側板51bにおいて、含浸部56が外部に露出しないように設けられる。すなわち、含浸部56は、被覆層59によって覆われている構成である。被覆層59は、例えばグリースまたはワックスから構成されている。
【0050】
このような構成の直動案内ユニットによれば、含浸部56に保持された潤滑油が含浸部56の表面から蒸発することを抑制することができる。したがって、長期にわたる潤滑油の保持が可能となり、より長期にわたって潤滑油を供給することができる。
【0051】
本実施形態においては、被覆層59は、グリースまたはワックスから構成されている。このような構成の被覆層59によれば、潤滑油との親和性も良好であり、より確実に潤滑油の蒸発を抑制することができる。
【0052】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態において、第2側板は、含浸部を全域に含むこととしたが、これに限らず、第2側板の一部が含浸部であってもよい。具体的には、第2循環路上側面を含む領域において含浸部が形成されており、第2側板のうちの露出する領域には含浸部が形成されていない構成としてもよい。このようにすることにより、含浸部が外部に露出しないため、含浸部に保持させた潤滑油の蒸発を抑制することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、第2側板は、樹脂製であることとしたが、これに限らず、例えば第2側板は、空隙を有する金属製であってもよい。なお、第1側板についても金属製であってもよい。
【0054】
なお、上記の実施の形態においては、転動体はボールであることとしたが、これに限らず、転動体は、ころであってもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
10 直動案内ユニット、11 レール、12a レール上端面、12b レール下端面、13a 第1レール側面、13b 第2レール端面、14a レール前端面、14b レール後端面、15a,15b 第1軌道溝、16a,16b 突部、17a,17b,17c,34a,34b,46 貫通孔、18a,18b 第2軌道溝、19a,19b 環状路、20 ボール、21a,21b スライダ、22a,22b 軌道路、23a,23b 第1循環路、24a,24b,25a,25b 第2循環路、26a,26b 第1循環路内側面、27a,27b 第1循環路外側面、28a,28b 第2循環路下側面、29a,29b 第2循環路上側面、31 スライド部、32a,32b 側壁面、33 上壁面、35a,35b 環状路形成部、41 第1側板、42a,42b 板状部、43a,43b 連結部、44 凹部、45a,45b 突出部、51a,51b 第2側板、52a,52b 第1部分、53a,53b 第2部分、56 含浸部、59 被覆層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6