(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088428
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】液晶高分子膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/18 20060101AFI20230620BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20230620BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08F20/18
C08F8/12
C08F8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203128
(22)【出願日】2021-12-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日:令和2年12月16日 刊行物:Akari Ito,Yunosuke Norisada,Shogo Inada,Mizuho Kondo,Tomoyuki Sasaki,Moritsugu Sakamoto,Hiroshi Ono,and Nobuhiro Kawatsuki,Langmuir,2021,Volume 37,Issue 3,Pages 1164-1172
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 開催日:令和3年9月16日 集会名:2021年日本液晶学会討論会 〔刊行物等〕 掲載日:令和3年9月8日 ウェブサイトのアドレス:https://jlcs.jp/ekitou/2021/restricted/index.html 〔刊行物等〕 開催日:令和3年9月15日 集会名:2021年日本液晶学会討論会 〔刊行物等〕 掲載日:令和3年9月8日 ウェブサイトのアドレス:https://jlcs.jp/ekitou/2021/restricted/index.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 開催日:令和3年7月9日 集会名:第67回高分子研究発表会(神戸) 〔刊行物等〕 掲載日:令和3年7月5日 ウェブサイトのアドレス:https://spsj.or.jp/branch/kansai/pdf_kobe/Poster_Pc.pdf 〔刊行物等〕 開催日:令和3年7月9日 集会名:第67回高分子研究発表会(神戸) 〔刊行物等〕 掲載日:令和3年7月5日 ウェブサイトのアドレス:https://spsj.or.jp/branch/kansai/pdf_kobe/Poster_Pc.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 発行日:令和3年11月20日 刊行物:Ayaka Sakai,Toshiki Nishizono,Mizuho Kondo,Tomoyuki Sasaki,Moritsugu Sakamoto,Hiroshi Ono,and Nobuhiro Kawatsuki,Chemistry Letters,Advance Publication,DOI 10.1246/cl.210617 〔刊行物等〕 発行日:令和3年6月11日 刊行物:Yunosuke Norisada,Mizuho Kondo,Tomoyuki Sasaki,Moritsugu Sakamoto,Hiroshi Ono,and Nobuhiro Kawatsuki,Journal of Photopolymer Science and Technology,2021,Volume 34,Issue 5,Pages 511-515
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】川月 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】高塚 啓文
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 盛嗣
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA04P
4J100BA13Q
4J100BA15P
4J100BA16P
4J100BA46P
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA66
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA08
4J100HA11
4J100HA61
4J100HC42
4J100HE32
4J100JA39
(57)【要約】
【課題】製造条件の制約を緩和することができ、様々な液晶高分子の化学構造を設計することができ、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】前記液晶高分子膜の製造方法は、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を備える側鎖型液晶高分子を含む高分子膜を形成する膜形成工程と、得られた高分子膜に感光性基が光反応してメソゲン成分を異方的に配向可能である光を照射する光照射工程と、光照射された高分子膜を加熱して、未配向のメソゲン成分の配向を誘起する加熱配向工程と、前記高分子膜を加熱して、加水分解性基を加水分解反応させ、脱離化合物とともに側鎖残基を発生させる加水分解工程と、側鎖残基と縮合反応可能な縮合性基を有する縮合性化合物を高分子膜に塗布する塗布工程と、側鎖残基と縮合性化合物とで縮合反応を行う縮合反応工程と、を少なくとも備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を備える側鎖型液晶高分子を含む高分子膜を形成する膜形成工程と、
得られた高分子膜に感光性基が光反応してメソゲン成分を異方的に配向可能である光を照射する光照射工程と、
光照射された高分子膜を加熱して、未配向のメソゲン成分の配向を誘起する加熱配向工程と、
前記高分子膜を加熱して、加水分解性基を加水分解反応させ、脱離化合物とともに側鎖残基を発生させる加水分解工程と、
側鎖残基と縮合反応可能な縮合性基を有する縮合性化合物を高分子膜に塗布する塗布工程と、
側鎖残基と縮合性化合物とで縮合反応を行う縮合反応工程と、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、前記側鎖残基が有する縮合性基がアルデヒド基またはアミノ基であり、前記縮合性化合物が下記式(5)~(7)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、液晶高分子膜の製造方法。
【化1】
(式中、cは0~3の整数であり;Z
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
3は-NH
2または-CHOであり;R
8は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、または桂皮酸基であり;R
9およびR
10は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【化2】
(式中、dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
4は-NH
2または-CHOであり;R
11は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、またはアルデヒド基であり;R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【化3】
(式中、fは0~3の整数であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
18は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法であって、前記側鎖型液晶高分子の前記側鎖が下記式(1)で表される側鎖構造を有する、液晶高分子膜の製造方法。
【化4】
(式中、aは0または1であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記膜形成工程で得られる高分子膜において、前記側鎖型液晶高分子が下記式(2)で表される側鎖構造をさらに有する共重合体である、および/または、下記式(2)で表される側鎖構造を有する重合体をさらに含む、液晶高分子膜の製造方法。
【化5】
(式中、bは0または1であり;rは0~12の整数であり;sは0または1であり;Yは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;R
5はカルボキシ基またはスルホ基であり;R
6およびR
7は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【請求項5】
下記式(9)で表される側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含む液晶高分子膜であって、二色比Dが0.5以上である、液晶高分子膜。
【化6】
(式中、aは0または1であり;dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
11は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはアミノ基であり;R
2、R
3、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【請求項6】
下記式(10)で表される側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含む液晶高分子膜であって、二色比Dが0.5以上である、液晶高分子膜。
【化7】
(式中、aは0または1であり;fは0~3の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
18は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
2、R
3、R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【請求項7】
請求項5または6に記載の液晶高分子膜を含む光学異方性素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶高分子膜およびその製造方法、ならびに液晶高分子膜を用いた光学異方性素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、特許文献1(特許第6518934号公報)において、縮合反応により感光性液晶高分子を形成可能な重合体の膜を縮合反応させて感光性液晶高分子膜を形成し、得られた感光性液晶高分子膜にメソゲン部分を異方的に配向可能な光を照射することによって作製した、光学的異方性や液晶配向能を有する液晶高分子膜を提案してきた。
【0003】
また、特許文献2(特許第6644310号公報)において、感光性液晶高分子膜上に易除去性マスキング材を積層し、その積層体を加熱処理した後、メソゲン部分を異方的に配向可能な光を照射することによって作製した、面外配向と面内配向に配向分割された液晶高分子膜を提案してきた。
【0004】
また、特許文献3(特開2019-85433号公報)において、液晶構造を形成可能であり、加水分解反応により除去可能な感光性基を有する側鎖(1)と、液晶構造を形成可能であり、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含む光配向性の高分子膜に、液晶構造を異方的に配向可能な光を照射した後、加熱し、加水分解反応させることによって感光性基を除去して作製した、耐光性に優れる液晶高分子膜を提案してきた。
【0005】
特許文献1~3に記載されている液晶高分子膜を形成する材料では、基材上に製膜した後、直線偏光性紫外線を照射すると、高分子側鎖に含まれる感光性基による軸選択的な光反応が生じる。さらに、このような膜を加熱すると、材料自体の液晶性により、軸選択的に光反応した側鎖によって、直線偏光性紫外線の照射に未反応であった側鎖を配向させることができる。この結果、膜全体を分子配向させることもできる。この膜は、液晶分子の配向能を発現することから液晶配向膜として利用できる。さらには、分子配向により複屈折性が発現することから位相差フィルムとして利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6518934号公報
【特許文献2】特許第6644310号公報
【特許文献3】特開2019-85433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に記載されている液晶高分子膜を形成する材料により、液晶高分子の分子配向を制御することが可能である。しかしながら、特許文献1~3では、膜形成の原材料として、溶媒に対する溶解性が低く、溶液にすることが困難な材料は使用することができない。また、原材料に溶解性が高い溶媒があったとしてもその溶液により基材が浸食される場合、当該原材料はやはり使用できない。
【0008】
また、製膜が可能である場合であっても、液晶高分子の側鎖を分子配向させるためにメソゲン部分を異方的に配向可能な光を照射した後、未反応の側鎖の分子配向を誘起するために加熱する際、その加熱温度を高くしなければ分子配向を誘起し難い化学構造の液晶高分子も存在する。そのような液晶高分子を原材料として用いる場合、製造条件の設定が困難になる。
【0009】
さらには、そもそも光配向し難い化学構造の液晶高分子も存在するため、そのような液晶高分子では、光学異方性の液晶高分子膜を作製することができない。
【0010】
したがって、本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、従来課せられていた製造条件の制約を緩和することができ、様々な液晶高分子膜を構成する液晶高分子の化学構造を設計することができ、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の別の目的は、複屈折率や耐熱性の向上した液晶高分子膜、または偏光発光できる液晶高分子膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、(i)加水分解性基を有する側鎖を備える感光性液晶高分子を含む高分子膜を形成し、(ii)得られた高分子膜に対して光照射および加熱することにより感光性液晶高分子を配向させた後、(iii)感光性液晶高分子中の加水分解性基を加水分解反応させ、そして、(iv)それにより生じる側鎖残基と、この残基と縮合反応可能な縮合性化合物とを反応させる製造方法を採ることにより、(I)光照射前の原材料として溶解性が良好であり分子配向を制御しやすい感光性液晶高分子を選択して用いることが可能であり、(II)分子配向後に側鎖を加水分解反応させたとしてもその配向を維持することが可能であり、かつ(III)縮合性化合物を利用して所望の側鎖構造を導入可能であるため、所望の側鎖構造の分子配向性等に関わらず、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を備える側鎖型液晶高分子を含む高分子膜を形成する膜形成工程と、
得られた高分子膜に感光性基が光反応してメソゲン成分を異方的に配向可能である光を照射する光照射工程と、
光照射された高分子膜を加熱して、未配向のメソゲン成分の配向を誘起する加熱配向工程と、
前記高分子膜を加熱して、加水分解性基を加水分解反応させ、脱離化合物とともに側鎖残基を発生させる加水分解工程と、
側鎖残基と縮合反応可能な縮合性基を有する縮合性化合物を高分子膜に塗布する塗布工程と、
側鎖残基と縮合性化合物とで縮合反応を行う縮合反応工程と、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の製造方法。
〔態様2〕
態様1に記載の製造方法であって、前記側鎖残基が有する縮合性基がアルデヒド基またはアミノ基であり、前記縮合性化合物が下記式(5)~(7)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、液晶高分子膜の製造方法。
【化1】
(式中、cは0~3(好ましくは1~3)の整数であり;Z
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
3は-NH
2または-CHOであり;R
8は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、または桂皮酸基であり;R
9およびR
10は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【化2】
(式中、dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
4は-NH
2または-CHOであり;R
11は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、またはアルデヒド基であり;R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
【化3】
(式中、fは0~3の整数であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
18は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
〔態様3〕
態様1または2に記載の製造方法であって、前記側鎖型液晶高分子の前記側鎖が下記式(1)で表される側鎖構造を有する、液晶高分子膜の製造方法。
【化4】
(式中、aは0または1であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
〔態様4〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の製造方法であって、前記膜形成工程で得られる高分子膜において、前記側鎖型液晶高分子が下記式(2)で表される側鎖構造をさらに有する共重合体である、および/または、下記式(2)で表される側鎖構造を有する重合体をさらに含む、液晶高分子膜の製造方法。
【化5】
(式中、bは0または1であり;rは0~12の整数であり;sは0または1であり;Yは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;R
5はカルボキシ基またはスルホ基(好ましくはカルボキシ基)であり;R
6およびR
7は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
〔態様5〕
下記式(9)で表される側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含む液晶高分子膜であって、二色比Dが0.5以上である、液晶高分子膜。
【化6】
(式中、aは0または1であり;dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
11は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはアミノ基であり;R
2、R
3、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
〔態様6〕
下記式(10)で表される側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含む液晶高分子膜であって、二色比Dが0.5以上である、液晶高分子膜。
【化7】
(式中、aは0または1であり;fは0~3の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
18は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
2、R
3、R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)
〔態様7〕
態様5または6に記載の液晶高分子膜を含む光学異方性素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、感光性液晶高分子の側鎖の加水分解反応とその後の縮合反応により、後から所望の側鎖構造を導入可能であるため、製造条件の制約を緩和することができ、様々な液晶高分子膜を構成する液晶高分子の化学構造を設計でき、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を製造することができる。
【0015】
さらに、本発明では、複屈折率や耐熱性の向上した液晶高分子膜や偏光発光できる液晶高分子膜を製造することが可能であり、この液晶高分子膜を光学異方性素子として有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1で得られた、膜形成工程後の高分子膜、および光照射工程後の高分子膜における偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフであり、(⊥)は検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収を示し、(||)は検出光の電界ベクトルの向きが平行な時の吸収を示す。
【
図2】実施例1で得られた、膜形成工程後の高分子膜(Initial)、光照射工程後の高分子膜(Exposed)、加熱配向工程後の高分子膜(Annealed)における偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフであり、(⊥)は検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収を示し、(||)は検出光の電界ベクトルの向きが平行な時の吸収を示す。
【
図3】実施例1で得られた、加水分解工程前の高分子膜(Oriented)、加水分解工程後の高分子膜(After hydrolysis)における偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフであり、(⊥)は検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収を示し、(||)は検出光の電界ベクトルの向きが平行な時の吸収を示す。
【
図4】実施例1で得られた、加水分解工程後の高分子膜(Hydrolysis)、塗布工程後の高分子膜(SB coated)、縮合反応工程後の液晶高分子膜(Post annealed)における偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフであり、(⊥)は検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収を示し、(||)は検出光の電界ベクトルの向きが平行な時の吸収を示す。
【
図5】実施例1で得られた液晶高分子膜(P1/SB)、実施例2で得られた液晶高分子膜(P1/MSB)、実施例3で得られた液晶高分子膜(P1/FL)、および実施例4で得られた液晶高分子膜(P1/TD)を窒素雰囲気下で加熱した際のΔnの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(液晶高分子膜の製造方法)
本発明の液晶高分子膜の製造方法は、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を備える側鎖型液晶高分子を含む高分子膜を形成する膜形成工程と、
得られた高分子膜に感光性基が光反応してメソゲン成分を異方的に配向可能である光を照射する光照射工程と、
光照射された高分子膜を加熱して、未配向のメソゲン成分の配向を誘起する加熱配向工程と、
前記高分子膜を加熱して、加水分解性基を加水分解反応させ、脱離化合物とともに側鎖残基を発生させる加水分解工程と、
側鎖残基と縮合反応可能な縮合性基を有する縮合性化合物を高分子膜に塗布する塗布工程と、
側鎖残基と縮合性化合物とで縮合反応を行う縮合反応工程と、
を少なくとも備える。
【0018】
[膜形成工程]
膜形成工程では、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を備える側鎖型液晶高分子を含む高分子膜を形成することができればよく、当該側鎖型液晶高分子を含む溶液を用いて製膜を行うことにより高分子膜を形成してもよい。または、当該側鎖型液晶高分子を縮合反応により形成可能な少なくとも2種の化合物を含む溶液を用いて製膜を行った後に、縮合反応させることにより高分子膜を形成してもよい。
【0019】
側鎖型液晶高分子は、感光性基を有するとともに、液晶性を発揮する剛直な部位であるメソゲン成分を有する感光性液晶高分子であり、感光性基の光反応により分子配向が誘起される性質を有する。感光性基が起こす光反応としては、光二量化反応、光フリース転移反応、光異性化反応等が挙げられる。
【0020】
感光性基としては、光エネルギーにより光反応を起こすことが可能な官能基であれば特に制限されず、例えば、カルコン基、クマリン基、シンナモイル基、シンナミリデン基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基、フェニルベンゾエート基、スチルベン基、アゾベンゼン基、ベンジリデンアニリン基またはこれらの誘導体等が挙げられ、好ましくはベンジリデンアニリン基またはその誘導体であってもよい。
【0021】
メソゲン成分は、2つ以上の芳香族環または脂肪族環とこれを結合する連結基とで構成され、連結基が共有結合で形成されるメソゲン基であってもよいし、または、連結基が水素結合で形成され、つまり、他の重合体もしくは同一重合体の他の側鎖等との水素結合による二量体を形成可能な構造を有しており、その二量化により形成されるメソゲン構造であってもよい。
芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、複素環(例えば、フラン環、ピラン環等の酸素含有複素環;ピロール環、イミダゾール環等の窒素含有複素環)等が挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環等が挙げられる。なお、これらの芳香族環または脂肪族環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、アルケニル基(例えば、C2-6アルケニル基、好ましくはC2-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2-6アルキニル基、好ましくはC2-4アルキニル基)、ハロゲン原子等が挙げられる。
連結基としては、共有結合である場合、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-C=C-、-C≡C-、-CO-C=C-、または-CH=N-等が挙げられる。水素結合である場合、末端にカルボキシ基を有する側鎖構造等が挙げられ、この場合、カルボキシ基同士で水素結合を形成する。
【0022】
側鎖型液晶高分子は、メソゲン成分とともに加水分解性基を有する側鎖を備える。加水分解性基とは、加水分解反応が可能な官能基であり、例えば、エステル基、チオエステル基、アセタール基、ケタール基、アミド基、シッフ塩基等が挙げられ、加水分解反応性の観点から、好ましくはシッフ塩基であってもよい。
【0023】
側鎖型液晶高分子は、メソゲン成分および加水分解性基が同一側鎖に存在していればよく、感光性基は、メソゲン成分および加水分解性基を有していない別の側鎖に存在していてもよいし、またはメソゲン成分および加水分解性基と同一側鎖に存在していてもよい。好ましくは、側鎖型液晶高分子は、メソゲン成分、加水分解性基、および感光性基を同一側鎖に備えていてもよい。また、同一側鎖において、メソゲン成分、加水分解性基、および感光性基は、それぞれ独立に存在していてもよいし、またはそれぞれ化学構造を共有して複合的に存在していてもよい。メソゲン成分、加水分解性基、および感光性基が化学構造を共有している場合としては、例えば、加水分解性基で連結されたメソゲン基を有する側鎖構造、感光性基がメソゲン基の一部を構成する側鎖構造、加水分解性基が感光性基の一部を構成する側鎖構造、または感光性基が加水分解性基で連結されたメソゲン基の一部を構成する側鎖構造等が挙げられる。
【0024】
好ましくは、側鎖型液晶高分子は、感光性基が加水分解性基で連結されたメソゲン基の一部を構成する側鎖構造を有していてもよく、より好ましくはベンジリデンアニリン基またはその誘導体を側鎖に有していてもよい。ベンジリデンアニリン基は、その炭素-窒素二重結合が光異性化反応性を有している感光性基であるとともに、剛直な分子構造を有し、液晶性を発現するのに有効なメソゲン基であり、また、ベンジリデンアニリン基に含まれる-CH=N-が加水分解性基でもある。
【0025】
側鎖型液晶高分子は、加水分解反応後に配向を保持する観点から、加水分解性基が加水分解反応した後でもメソゲン成分を有していてもよい。加水分解反応した後でもメソゲン成分を有している側鎖型液晶高分子としては、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖であって、加水分解反応した後の残基中にメソゲン成分を有する側鎖(例えば、加水分解性基より主鎖側にメソゲン成分を有する側鎖等)を備える場合や、加水分解性基を有しないが、メソゲン成分を有する側鎖を備える場合等が挙げられる。
【0026】
側鎖型液晶高分子は、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマレイミド系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する主鎖構造を有していてもよく、これらの主鎖構造に、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖、ならびに感光性基を有する側鎖が結合していてもよい。
【0027】
側鎖型液晶高分子のメソゲン成分、加水分解性基、および感光性基を有する側鎖は、好ましくは下記式(1)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(1)と称する場合がある)を有していてもよい。
<側鎖構造(1)>
【化8】
式中、aは0または1であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
2、R
3およびR
4は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。
【0028】
側鎖構造(1)では、Qがシッフ塩基であり、ベンゼン環を連結しているため、ベンジリデンアニリン基を有している。上述のように、ベンジリデンアニリン基は、光異性化反応性を有している感光性基であるとともに、液晶性を発現するのに有効なメソゲン基であり、ベンジリデンアニリン基に含まれるシッフ塩基が加水分解性基である。
【0029】
側鎖型液晶高分子は、メソゲン成分、加水分解性基、および感光性基を有する側鎖を含む同一繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖と感光性基を有する側鎖とを含む繰り返し単位からなる共重合体や、これらの側鎖とは異なる側鎖構造を含む繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0030】
側鎖型液晶高分子は、共重合体である場合、メソゲン成分、加水分解性基、および/または感光性基を有していない側鎖を有していてもよい。
【0031】
例えば、側鎖型液晶高分子は、上記側鎖の加水分解性基での加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する側鎖をさらに備えていてもよい。加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基は、酸性官能基であるカルボキシ基、スルホ基等が挙げられ、好ましくはカルボキシ基であってもよい。加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有していることにより、後述の加水分解工程において、酸等の触媒を別途加えることなく、上記側鎖に対して加水分解反応を行うことができる。さらに、酸等の触媒の除去工程についても不要となり、液晶高分子膜の製造方法が簡便となる。
【0032】
側鎖型液晶高分子は、加水分解性基での加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する側鎖として、下記式(2)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(2)と称する場合がある)を有する側鎖を備えていてもよい。
<側鎖構造(2)>
【化9】
式中、bは0または1であり;rは0~12の整数であり;sは0または1であり;Yは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;R
5はカルボキシ基またはスルホ基(好ましくはカルボキシ基)であり;R
6およびR
7は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
6およびR
7は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。
【0033】
上記式(2)では、R5が酸性官能基であるカルボキシ基またはスルホ基であるため、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基であり、好ましくはカルボキシ基であってもよい。上記式(2)において、R5がカルボキシ基である場合、加水分解反応に対して触媒として作用する以外に、カルボキシ基が水素結合性を有しているため、他の重合体または同一重合体の側鎖が有する末端の安息香酸基等のカルボキシ基とともに水素結合を形成して二量化することによりメソゲン構造を形成することが可能である。すなわち、上記式(2)において、R5がカルボキシ基である場合、bが0であっても、高分子としてはメソゲン成分を有する。
【0034】
なお、側鎖構造(1)および(2)は、繰り返し単位における側鎖の末端の化学構造を表しており、本発明の効果を損なわない範囲において、これらの側鎖構造と主鎖構造との間に種々の化学構造を含んでいてもよい。
【0035】
側鎖型液晶高分子が側鎖構造(1)および(2)を備える共重合体である場合、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖構造(1)を有する単量体単位と側鎖構造(2)を有する単量体単位とのモル比(1)/(2)は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
【0036】
膜形成工程において、高分子膜の形成に用いる材料としては、上記側鎖型液晶高分子を含んでいればよく、それ以外の化合物をさらに含んでいてもよい。そのような化合物としては高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。例えば、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する側鎖を備える重合体を含んでいてもよく、好ましくは側鎖構造(2)を有する側鎖を備える重合体を含んでいてもよい。特に、上記式(2)において、R5がカルボキシ基である場合、側鎖型液晶高分子の側鎖の加水分解反応に対して触媒として作用するだけでなく、水素結合を形成して二量化することによりメソゲン構造を形成することが可能であるため、液晶性を発現させることができる。
【0037】
上記側鎖型液晶高分子の製造方法は、特に制限はなく、上述のような側鎖を備える単量体を用いた公知の重合方法により製造することができる。
【0038】
また、上記側鎖型液晶高分子の製造方法は、縮合反応により上記側鎖型液晶高分子を形成可能な少なくとも2種の化合物を縮合反応させることにより製造することができる。ここで、縮合反応とは、少なくとも2種の化合物の官能基間で反応し、水、アルコール類、アンモニア、アミン類、ハロゲン化水素等の分子の脱離を伴う化学反応である。そのような化合物としては、縮合反応により上記側鎖型液晶高分子を形成可能な高分子化合物(前駆体高分子化合物)と低分子化合物とを少なくとも含んでいてもよい。前駆体高分子化合物および低分子化合物は互いに縮合反応可能な縮合性基をそれぞれ有しており、前駆体高分子化合物は縮合性基を有する側鎖を備えており、前駆体高分子化合物は、メソゲン成分、加水分解性基、および感光性基のうち少なくとも1つは有しておらず、低分子化合物と縮合反応することにより、メソゲン成分および加水分解性基を有する側鎖ならびに感光性基を有する側鎖を形成してもよい。
【0039】
例えば、前駆体高分子化合物の縮合性基を有する側鎖は、少なくとも加水分解性基は有しておらず、縮合反応により加水分解性基を導入可能であってもよく、好ましくは縮合反応により形成された基が加水分解性基であってもよい。また、当該側鎖は、感光性基を有しているか、または縮合反応により感光性基を導入可能な縮合性基を有していてもよい。また、当該側鎖は、メソゲン成分を有しているか、または縮合反応によりメソゲン成分を導入可能な縮合性基を有していてもよい。
【0040】
縮合性基としては、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられ、好ましくはアルデヒド基またはアミノ基であってもよい。例えば、前駆体高分子化合物の側鎖および低分子化合物の縮合性基が、それぞれアルデヒド基およびアミノ基であってもよく、好ましくはそれぞれ芳香族アルデヒド基および芳香族アミノ基であってもよい。芳香族アルデヒド基と芳香族アミノ基は、下記反応式1に示すように脱水縮合反応によりベンジリデンアニリン基を形成する。
【化10】
【0041】
前駆体高分子化合物の縮合性基を有する側鎖は、側鎖型液晶高分子の上記式(1)で表される側鎖構造の前駆体として、好ましくは下記式(3)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(3)と称する場合がある)を有していてもよい。
<側鎖構造(3)>
【化11】
式中、aは0または1であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Q
1はアルデヒド基またはアミノ基であり;R
2およびR
3は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
2およびR
3は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。
【0042】
前駆体高分子化合物は、側鎖型液晶高分子に対応する側鎖を有していてもよく、共重合体である場合、縮合反応に寄与しない側鎖を有していてもよい。例えば、メソゲン成分、加水分解性基、および/または感光性基を有していない側鎖を有していてもよく、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する側鎖を備えていてもよく、好ましくは側鎖構造(2)を有する側鎖を備えていてもよい。
【0043】
なお、側鎖構造(3)は、縮合反応後に対応する側鎖構造(1)と同様に、繰り返し単位における側鎖の末端の化学構造を表しており、本発明の効果を損なわない範囲において、これらの側鎖構造と主鎖構造との間に種々の化学構造を含んでいてもよい。
【0044】
前駆体高分子化合物が側鎖構造(3)および(2)を備える共重合体である場合、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖構造(3)を有する単量体単位と側鎖構造(2)を有する単量体単位とのモル比(3)/(2)は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
【0045】
上記前駆体高分子化合物の製造方法は、特に制限はなく、上述のような側鎖を備える単量体を用いた公知の重合方法により製造することができる。
【0046】
縮合性基を有する低分子化合物は、縮合反応後に未反応物として残存した場合に、系内から蒸発、昇華、洗浄等により容易に除外できることが好ましく、より好ましくは昇華性の低分子化合物であってもよい。昇華性の低分子化合物である場合、後述の加熱配向工程や加水分解工程で加熱することにより除去することが可能であり、その後の縮合反応工程まで残存して再度縮合反応に寄与することを避けることができる。
【0047】
縮合性基を有する低分子化合物は、好ましくは下記式(4)で表される化合物(以下、低分子化合物(4)と称する場合がある)であってもよい。
<低分子化合物(4)>
【化12】
式中、Q
2はアミノ基またはアルデヒド基であり;R
1およびR
4は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
4は、ベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。
【0048】
縮合性基を有する低分子化合物は、例えば、分子量が50~500であってもよく、好ましくは90~300であってもよく、より好ましくは110~200であってもよい。縮合性基を有する低分子化合物は、昇華性化合物として、例えば、p-アニシジン(4-メトキシアニリン)が挙げられる。
【0049】
膜形成工程では、上記側鎖型液晶高分子を有機溶媒に溶解した溶液を用いて製膜を行うことにより高分子膜を形成してもよいし、または上記側鎖型液晶高分子を縮合反応により形成可能な少なくとも2種の化合物を有機溶媒に溶解した溶液(混合溶液)、もしくはこれらの化合物を有機溶媒に溶解した個別の溶液(単独溶液)を用いて製膜を行った後に、縮合反応させることにより高分子膜を形成してもよい。単独溶液の場合、個別に製膜が行われるが、化合物間の縮合反応を行うため、各化合物の溶液は、少なくとも重複部が存在するよう製膜される。
【0050】
有機溶媒は、溶解する側鎖型液晶高分子や化合物の種類に応じて適宜選択することができ、非ハロゲン系溶媒であるのが好ましく、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート等のエーテル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。本発明では、側鎖型液晶高分子の化学構造を配向性や製造条件に合わせて設計することができるため、側鎖型液晶高分子の溶媒として選択肢を広げることができる。また、後述の基材として高分子フィルムを用いた場合にも、側鎖型液晶高分子の良溶媒であり、かつ高分子フィルムを溶解しないような溶媒を選択することができる。
【0051】
製膜の際、溶液は、基材に対して塗布してもよい。基材としては、種々の高分子フィルムおよびガラス、石英基板等の無機物の中から適宜選択して用いられる。例えば、高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂系フィルム;ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーフィルム;ビスフェノールA・炭酸共重合体等のポリカーボネート系ポリマーフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、シクロオレフィンポリマー、およびシクロオレフィンコポリマー等の直鎖、分枝鎖または環状ポリオレフィンフィルム;ポリアミド系フィルム;イミド系ポリマーフィルム;スルホン系ポリマーフィルム等が挙げられる。なお、光学異方性素子において液晶高分子膜を用いる場合、上記基材のうち、透明なもの(透明基材)を光学異方性素子の一部構成として用いてもよい。
【0052】
また、上記基材のうち、本発明の液晶高分子膜との密着性が低い材料からなる基材を、離型用基材として用いてもよい。離型用基材を用いる場合、本発明の液晶高分子膜形成後に剥離することが可能であるため、基材自体の光学特性を考慮しなくてもよく、不透明な基材を用いてもよい。例えば、基材上に本発明の液晶高分子膜を形成した後、粘着剤等を介して他の光学部材に接合し、その後離型用基材を剥離して使用することにより、液晶高分子膜を、基材を持たない構成として使用することができる。
【0053】
製膜方法としては、例えば、グラビアコーティング、フレキソコーティング、ダイコーティング、バーコーティング、スリットコーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング、スクリーン印刷等の塗布・印刷方法、インクジェットプリンターを用いた直接描画する方法等の公知の方法を利用することができる。
【0054】
また、上記側鎖型液晶高分子を縮合反応により形成可能な少なくとも2種の化合物(例えば、前駆体高分子化合物と低分子化合物)を個別に溶媒へ溶解させた溶液(単独溶液)を個別に製膜する場合、例えば、一方を全面に塗布して製膜しておき、他方を印刷法やプリンターを用いてパターニング塗布を行えば、他方を塗布した領域のみ側鎖型液晶高分子を形成し、配向させて光学異方性層を形成することも可能である。
【0055】
さらに、前駆体高分子化合物および低分子化合物の製膜溶液を個別に塗布する場合、先に前駆体高分子化合物溶液を塗布し、次いで低分子化合物溶液を、前駆体高分子化合物塗膜に対して塗布すると、低分子化合物を効率よく前駆体高分子化合物に付着することができるので好ましい。
【0056】
上記側鎖型液晶高分子を縮合反応により形成可能な少なくとも2種の化合物を縮合反応させる際の縮合反応の条件は、化合物の種類に応じて適宜設定することができる。また、縮合反応は、常温下で行われてもよいし、加熱下で行われてもよい。加熱する場合、縮合反応を促進することができる。加熱温度は、各化合物の沸点または昇華点以下に設定することが好ましい。
【0057】
縮合反応の時間は、化合物の種類や、加熱温度等の反応条件に応じて適宜設定することができる。例えば、所定の温度で加熱した場合、縮合反応の時間は、例えば1分~60分の範囲で行ってもよく、好ましくは3分~40分程度、より好ましくは5分~20分程度であってもよい。
【0058】
[光照射工程]
光照射工程では、膜形成工程で得られた高分子膜に対して、側鎖型液晶高分子の側鎖の感光性基が光反応してメソゲン成分を異方的に配向可能である光を照射する。このような光は、直線偏光であってもよく、または楕円偏光であってもよいが、直線偏光が好ましい。光照射工程により、軸選択的な光反応による異方性を生じた高分子膜となる。
【0059】
照射する光は、赤外線、可視光線、紫外線(例えば、近紫外線、遠紫外線等)、X線、荷電粒子線(例えば、電子線等)等、側鎖型液晶高分子の感光性基が光反応を生じる波長の光であれば特に限定されず、側鎖型液晶高分子の側鎖構造によっても異なるが、光の波長は、感光性基の種類によって適宜設定することができ、200~500nmであってもよく、中でも250~400nmの有効性が高い場合が多い。光反応は、光二量化反応、光フリース転移反応、光異性化反応等が挙げられるが、好ましくは光異性化反応である。
【0060】
光の照射量は、軸選択的な光反応により異方性を生じさせることができる限り特に限定されないが、例えば、100mJ/cm2~150J/cm2であってもよく、好ましくは500mJ/cm2~100J/cm2、より好ましくは1J/cm2~50J/cm2であってもよい。
【0061】
例えば、ベンジリデンアニリン基は、直線偏光性を有する光の照射により、下記反応式2に示すように軸選択的にcis-trans光異性化反応が生じる。ベンジリデンアニリン基を含有する側鎖型液晶高分子を含む高分子膜に偏光紫外線を照射すると、軸選択的な光異性化による異方性を生じた膜となる。
【化13】
【0062】
[加熱配向工程]
加熱配向工程では、光照射工程で光照射された高分子膜を加熱する。軸選択的な光反応による異方性を生じた高分子膜を加熱すると、高分子膜中の側鎖型液晶高分子が分子運動を行うことが可能となり、材料自体が液晶性を有することから、分子運動によって光反応を起こした側鎖に沿って未配向のメソゲン成分の配向が協調的に誘起される。
【0063】
上述のcis-trans光異性化反応等の光反応により分子配向を生じている場合には、その分子配向に沿って未配向のメソゲン成分の配向が協調的に誘起される結果、高分子膜全体において照射した偏光成分(例えば、直線偏光)の電界振動方向と垂直方向に側鎖が一様に配向した膜となり、高分子膜自体の異方性が増幅される。この異方性の増幅により光学的異方性(複屈折)を生じる。
【0064】
加熱温度は、高分子膜中の側鎖型液晶高分子の協調的な分子配向が誘起される限り特に限定されないが、高分子膜自体を形成する材料(側鎖型液晶高分子)の液晶相転移温度以上であり、等方相転移温度未満に設定することが好ましい。例えば、80~300℃であってもよく、好ましくは100~280℃、より好ましくは110~250℃であってもよい。
【0065】
また、加熱時間は、高分子膜中の側鎖型液晶高分子の協調的な分子配向が誘起される限り特に限定されないが、側鎖型液晶高分子の種類や、加熱温度等に応じて適宜設定することができ、例えば1分以上で行ってもよく、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であってもよい。上限は特に限定されないが、経済性の観点から、60分程度(好ましくは40分程度、より好ましくは20分程度)であってもよい。
【0066】
[加水分解工程]
加水分解工程では、高分子膜を加熱して、側鎖型液晶高分子の側鎖の加水分解性基を加水分解反応させることによって、脱離化合物とともに側鎖残基を発生させる。本発明では、側鎖型液晶高分子の側鎖の加水分解性基を加水分解反応させることにより生じた側鎖残基の縮合性基を利用して、後述の縮合反応工程で縮合性化合物の構造を側鎖に導入することが可能である。また、加水分解工程では、加水分解反応させたとしても、側鎖型液晶高分子のメソゲン成分の配向は、上記光照射工程および加熱配向工程により固定できているためか、保持させることが可能である。そのため、後述の縮合性化合物を導入した側鎖型液晶高分子の側鎖が本来光配向し難い化学構造であるとしても、配向を保持した側鎖型液晶高分子の側鎖に後から導入することで、所望の側鎖構造でありかつ配向した側鎖型液晶高分子を含む液晶高分子膜を製造することができる。
【0067】
加水分解工程では、加熱条件を調整することにより、側鎖型液晶高分子が有する加水分解性基中における加水分解反応が起こる割合(加水分解率)を調整することができるため、元の側鎖型液晶高分子の側鎖構造を残存させ、後述の縮合性化合物の導入率を調整することも可能である。
【0068】
加水分解反応により側鎖型液晶高分子から切断された脱離化合物は、系内から蒸発、昇華、洗浄等により容易に除外できることが好ましく、例えば、昇華性の低分子化合物が挙げられる。
【0069】
加熱温度は、加水分解反応の促進および加水分解率の調整が可能な限り特に限定されないが、側鎖型液晶高分子の側鎖の配向保持の観点から、膜自体を形成する材料(液晶高分子)の等方相転移温度未満が好ましい。また、脱離化合物が後述の縮合反応工程に関与することを抑制するために、脱離化合物が昇華、蒸発する温度に設定することが好ましい。加熱温度は、側鎖型液晶高分子の加水分解性基を有する側鎖の構造や、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基の有無等によっても異なるが、例えば、80~180℃であってもよく、好ましくは90~160℃、より好ましくは100~150℃であってもよい。
【0070】
加水分解工程は、加水分解反応の促進の観点から、大気雰囲気下または湿潤雰囲気下で行ってもよい。また、加水分解工程における湿度は、例えば、20%RH以上であってもよく、好ましくは30%RH以上であってもよい。上限は特に限定されないが、95%RH程度(好ましくは90%RH程度)であってもよい。
【0071】
また、加熱時間は、側鎖型液晶高分子の加水分解性基を有する側鎖の構造や、加熱温度等に応じて適宜設定することができ、例えば5分以上で行ってもよく、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上であってもよい。上限は特に限定されないが、経済性の観点から、600分程度(好ましくは180分程度、より好ましくは120分程度)であってもよい。
【0072】
前記製造方法において、加熱により加熱配向工程と加水分解工程とを同時に行ってもよい。加熱配向工程と加水分解工程とを同時に行うことによって、効率的に分子配向および加水分解反応を行うことができる。
【0073】
さらに、加水分解工程の処理後、剛直部分を配向させた高分子膜を材料の軟化点以下まで冷却すると分子が凍結されて、剛直部分が配向した高分子膜が得られる。冷却は通常の放置冷却で行うことが好ましい。
【0074】
[塗布工程]
塗布工程では、加水分解工程で生じた側鎖残基と縮合反応可能な縮合性基を有する縮合性化合物を高分子膜に塗布する。縮合性化合物は脱離化合物とは異なる化合物であることが好ましい。例えば、複屈折率や耐熱性を向上させる観点から、縮合性化合物は脱離化合物より分子量が大きいことが好ましい。また、側鎖残基と縮合性化合物との反応効率向上の観点からは、脱離化合物は加水分解工程での加熱温度で蒸発、昇華する化合物であり、加水分解工程で系内から蒸発、昇華等により容易に除外できることが好ましいが、縮合性化合物は、後述の縮合反応工程での反応温度で蒸発、昇華しない化合物であることが好ましい。
【0075】
縮合性化合物の縮合性基としては、加水分解して生じる側鎖残基の縮合性基と縮合反応可能であれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられ、好ましくはアルデヒド基またはアミノ基であってもよい。例えば、側鎖残基および低分子化合物の縮合性基として、アルデヒド基およびアミノ基を組み合わせてもよく、好ましくは芳香族アルデヒド基および芳香族アミノ基を組み合わせてもよく、これらは上述のように、脱水縮合反応によりベンジリデンアニリン基を形成することができる。
【0076】
縮合性化合物は、側鎖残基との縮合反応によりメソゲン成分および/または感光性基を導入可能な化学構造を有していてもよい。
【0077】
側鎖残基の縮合性基がアルデヒド基またはアミノ基であり、縮合性化合物は、好ましくは下記式(5)~(7)で表される化合物(以下、縮合性化合物(5)~(7)と称する場合がある)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0078】
<縮合性化合物(5)>
【化14】
式中、cは0~3(好ましくは1~3)の整数であり;Z
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
3は-NH
2または-CHOであり;R
8は、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、または桂皮酸基であり;R
9およびR
10は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
9およびR
10は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。上記式(5)において、cが2または3の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
1およびR
10は同一でも異なっていてもよい。
【0079】
上記式(5)において、側鎖残基の縮合性基がアルデヒド基である場合、Q3は-NH2であり、側鎖残基の縮合性基がアミノ基である場合、Q3は-CHOであり、いずれも縮合反応によりシッフ塩基を形成する。
【0080】
縮合性化合物(5)は、縮合により得られる側鎖型液晶高分子の複屈折率および耐熱性を向上させる観点からは、上記式(5)において、cが1~3の整数であることが好ましい。
【0081】
縮合性化合物(5)は、上記式(5)において、Q3が-NH2であり、R8がアミノ基である場合、いずれも側鎖残基のアルデヒド基と縮合反応することが可能であり、両方のアミノ基と縮合反応すると架橋することが可能である。また、Q3が-CHOであり、R8がアルデヒド基である場合、いずれも側鎖残基のアミノ基と縮合反応することが可能であり、両方のアルデヒド基と縮合反応すると架橋することが可能である。このような場合、架橋することにより耐熱性を向上させることができる。
【0082】
<縮合性化合物(6)>
【化15】
式中、dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;Q
4は-NH
2または-CHOであり;R
11は、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、またはアルデヒド基であり;R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。dおよびeが2の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
2およびR
12ならびにZ
3およびR
15は同一でも異なっていてもよい。
【0083】
縮合性化合物(6)は、フルオレン骨格を有しており、縮合により得られる側鎖型液晶高分子の複屈折率および耐熱性を向上させることができる。
【0084】
上記式(6)において、側鎖残基の縮合性基がアルデヒド基である場合、Q4は-NH2であり、側鎖残基の縮合性基がアミノ基である場合、Q4は-CHOであり、いずれも縮合反応によりシッフ塩基を形成する。
【0085】
縮合性化合物(6)は、上記式(6)において、Q4が-NH2であり、R11がアミノ基である場合、いずれも側鎖残基のアルデヒド基と縮合反応することが可能であり、両方のアミノ基と縮合反応すると架橋することが可能である。また、Q4が-CHOであり、R11がアルデヒド基である場合、いずれも側鎖残基のアミノ基と縮合反応することが可能であり、両方のアルデヒド基と縮合反応すると架橋することが可能である。このような場合、架橋することにより耐熱性を向上させることができる。
【0086】
<縮合性化合物(7)>
【化16】
式中、fは0~3の整数であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
18は、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
19およびR
20は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。fが2または3の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
4およびR
20は同一でも異なっていてもよい。
【0087】
縮合性化合物(7)を用いた縮合反応により導入される側鎖構造は、光配向し難い化学構造であるため、このような側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を原材料として用いて光学異方性の液晶高分子膜を作製するのは困難であるが、本発明の製造方法によりこのような側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含む光学異方性の液晶高分子膜を作製することができる。
【0088】
縮合性化合物(7)を用いる場合、側鎖残基の縮合性基はアミノ基であり、上記式(7)のアルデヒド基との縮合反応によりシッフ塩基を形成する。側鎖残基の縮合性基が芳香族アミノ基である場合、縮合性化合物(7)の縮合反応によりサリチリデンアニリン誘導体を形成することができる。サリチリデンアニリン誘導体は、下記反応式3に示すように、紫外線を照射すると分子内水素移動により光互変異性し、偏光発光することができる。
【化17】
【0089】
塗布工程では、縮合性化合物は、液体の場合にはそのまま塗布してもよいし、固体の場合に溶液にして塗布してもよい。縮合性化合物は、高分子膜中の加水分解した側鎖型液晶高分子に少なくとも重複部が存在するよう塗布される。塗布方法は、上記膜形成工程に記載の製膜方法を利用することができ、印刷法やプリンターを用いてパターニング塗布を行えば、縮合性化合物を塗布した領域のみ縮合反応により縮合性化合物を導入した側鎖型液晶高分子を形成し、塗布していない領域とは光学特性等の異なる光学異方性層を形成することも可能である。
【0090】
塗布工程は、加水分解工程より前に行ってもよい。その場合、加水分解工程と後述の縮合反応工程とを同時に行ってもよい。加水分解により脱離化合物が生じるとともに、縮合性基を有する側鎖残基に対して縮合性化合物との縮合反応を起こすことができる。
【0091】
[縮合反応工程]
縮合反応工程では、側鎖残基と縮合性化合物とで縮合反応を行う。縮合反応工程により、側鎖型液晶高分子に所望の側鎖構造を導入することができ、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を得ることができる。例えば、加水分解工程前の高分子膜より物性(例えば、複屈折率、耐熱性等)を向上させることができたり、加水分解工程前の高分子膜が有していなかった特性(例えば、偏光発光性)を付与することができる。
【0092】
縮合反応工程は、常温下で行われてもよいし、加熱下で行われてもよい。加熱する場合、縮合反応を促進することができる。加熱温度は、縮合性化合物の沸点または昇華点以下に設定することが好ましい。例えば、加熱温度は、50~180℃であってもよく、好ましくは80~160℃、より好ましくは100~140℃であってもよい。
【0093】
縮合反応の時間は、縮合性化合物の種類や、加熱温度等の反応条件に応じて適宜設定することができる。例えば、所定の温度で加熱した場合、縮合反応の時間は、例えば1分~120分の範囲で行ってもよく、好ましくは3分~90分程度、より好ましくは5分~60分程度であってもよい。
【0094】
以上のようにして、本発明の液晶高分子膜の製造方法では、上記光照射工程および加熱配向工程によって誘起した側鎖型液晶高分子の配向を保持しつつ、側鎖型液晶高分子の側鎖の加水分解反応とその後の縮合反応により、後から所望の側鎖構造を導入可能であるため、最終的に得られる液晶高分子膜を構成する側鎖型液晶高分子の化学構造によらず製造条件の制約を抑制することができ、所定の物性や特性を有する液晶高分子膜を製造することができる。
【0095】
(液晶高分子膜)
本発明の液晶高分子膜は、上述の製造方法により得ることができ、上記光照射工程および加熱配向工程によって誘起した配向が保持され、縮合性化合物の導入により形成された側鎖型液晶高分子から構成される液晶高分子膜であってもよい。本発明の液晶高分子膜は、所定の物性や特性を有していることが好ましく、例えば、上記加水分解工程前の高分子膜より物性(例えば、複屈折率、耐熱性等)が向上していてもよいし、また、上記加水分解工程前の高分子膜が有していなかった特性(例えば、偏光発光性)を有していてもよい。
【0096】
本発明の液晶高分子膜は、二色比Dが0.5以上であってもよい。二色比Dは、偏光特性を数値化したパラメータであり、下記式で定義される。
D=(A⊥-A||)/(A⊥+A||)
式中、A⊥は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸光度、A||は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸光度を表す。
【0097】
二色比Dが高いほど、分子の配向性が高く、本発明の液晶高分子膜は、メソゲン成分を有する側鎖において加水分解反応および縮合反応により反応させたとしても、上記光照射工程および加熱配向工程によって誘起した配向を保持できている。二色比Dは、0.55以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。二色比Dの上限は特に限定されないが、1以下であってもよい。なお、二色比Dは、偏光吸収スペクトルにおいて測定された同一波長の吸収における測定値であり、前記波長は化学構造に応じて適宜選択され、一番高い数値Dを示す波長の吸収における測定値であってもよい。
【0098】
本発明の液晶高分子膜は、光学異方性を制御する観点から、複屈折率Δnが0.13以上であってもよく、好ましくは0.14以上、より好ましくは0.15以上であってもよい。Δnの上限は特に限定されないが、例えば、1以下であってもよい。
【0099】
本発明において、液晶高分子膜の温度を上げていった際にΔnに変化が見られない最高温度を耐熱温度(TS)とし、本発明の液晶高分子膜は、TSが150℃以上であってもよく、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上であってもよい。TSの上限は特に限定されないが、例えば、400℃以下であってもよい。
【0100】
例えば、本発明の液晶高分子膜は、下記式(8)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(8)と称する場合がある)を有する側鎖型液晶高分子を含んでいてもよい。
<側鎖構造(8)>
【化18】
式中、aは0または1であり;cは0~3(好ましくは1~3)の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;Z
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
8は、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、または桂皮酸基であり;R
2、R
3、R
9およびR
10は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
2、R
3、R
9およびR
10は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。cが2または3の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
1およびR
10は同一でも異なっていてもよい。
【0101】
本発明の液晶高分子膜は、複屈折率および耐熱性を向上させる観点から、上記式(8)において、cが1~3の整数である側鎖型液晶高分子が好ましい。
【0102】
本発明の液晶高分子膜は、上記式(8)において、Qが-CH=N-であり、R8がアミノ基である側鎖型液晶高分子の場合、およびQが-N=CH-であり、R8がアルデヒド基である側鎖型液晶高分子の場合、側鎖の中には、縮合性化合物の導入時にR8のアミノ基またはアルデヒド基も側鎖残基と縮合反応して架橋構造を形成している側鎖も存在し、耐熱性を向上させることができるため、そのような側鎖型液晶高分子が好ましい。
【0103】
例えば、本発明の液晶高分子膜は、下記式(9)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(9)と称する場合がある)を有する側鎖型液晶高分子を含んでいてもよい。
<側鎖構造(9)>
【化19】
式中、aは0または1であり;dおよびeは、同一または異なって、0~2の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Qは-CH=N-または-N=CH-であり;Z
2およびZ
3は、同一または異なって、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;R
11は、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、またはアルデヒド基であり;R
2、R
3、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、およびR
17は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
2、R
3、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。dおよびeが2の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
2およびR
12ならびにZ
3およびR
15は同一でも異なっていてもよい。
【0104】
側鎖構造(9)を有する側鎖型液晶高分子は、フルオレン骨格を有しており、複屈折率および耐熱性を向上させることができる。
【0105】
本発明の液晶高分子膜は、上記式(9)において、Qが-CH=N-であり、R11がアミノ基である側鎖型液晶高分子の場合、およびQが-N=CH-であり、R11がアルデヒド基である側鎖型液晶高分子の場合、側鎖の中には、縮合性化合物の導入時にR11のアミノ基またはアルデヒド基も側鎖残基と縮合反応して架橋構造を形成している側鎖も存在し、耐熱性を向上させることができるため、そのような側鎖型液晶高分子が好ましい。
【0106】
例えば、本発明の液晶高分子膜は、下記式(10)で表される側鎖構造(以下、側鎖構造(10)と称する場合がある)を有する側鎖型液晶高分子を含んでいてもよい。
<側鎖構造(10)>
【化20】
式中、aは0または1であり;fは0~3の整数であり;pは0~12の整数であり;qは0または1であり;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、または-C≡C-であり;Z
4は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-であり;水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、シアノ基、またはカルボキシ基であり;R
2、R
3、R
19およびR
20は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C
1-6アルキル基、好ましくはC
1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C
1-6アルキルオキシ基、好ましくはC
1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン原子、またはシアノ基である。なお、R
2、R
3、R
19およびR
20は、それぞれベンゼン環上の置換可能な箇所における置換基を表し、これらの箇所において同一または異なる置換基を表している。fが2または3の場合、括弧内の化学構造が複数結合しているが、それらのZ
4およびR
20は同一でも異なっていてもよい。
【0107】
側鎖構造(10)は、光配向し難い化学構造であるため、このような側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を原材料として用いて光学異方性の液晶高分子膜を作製するのは困難であるが、本発明の製造方法によりこのような側鎖構造を有する側鎖型液晶高分子を含み、面内二色性に優れる液晶高分子膜を作製することができる。
【0108】
側鎖構造(10)は、サリチリデンアニリン骨格を有しており、上述したように、サリチリデンアニリン誘導体は、上記反応式3に示すように、紫外線を照射すると分子内水素移動により光互変異性し、偏光発光することができる。
【0109】
なお、側鎖構造(8)~(10)は、繰り返し単位における側鎖の末端の化学構造を表しており、本発明の効果を損なわない範囲において、これらの側鎖構造と主鎖構造との間に種々の化学構造を含んでいてもよい。
【0110】
本発明の液晶高分子膜を構成する側鎖型液晶高分子は、側鎖構造(8)~(10)のいずれかを含む同一繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、側鎖構造(8)~(10)以外に縮合反応工程で未反応の側鎖残基や架橋した側鎖を含む繰り返し単位や、これらの側鎖とは異なる側鎖構造を含む繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0111】
本発明の液晶高分子膜を構成する側鎖型液晶高分子は、共重合体である場合、側鎖構造(8)~(10)以外にメソゲン成分を有する側鎖を有していてもよい。例えば、上記式(2)で表される側鎖構造を有する側鎖を備えていてもよい。
【0112】
本発明の液晶高分子膜は、上記側鎖型液晶高分子以外の化合物をさらに含んでいてもよい。そのような化合物としては高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。例えば、液晶高分子膜の光学物性を調整する観点から、側鎖構造(2)を有する側鎖を備える重合体を含んでいてもよく、特に、上記式(2)において、R5がカルボキシ基である場合、側鎖型液晶高分子の側鎖の加水分解反応に対して触媒として作用するだけでなく、水素結合を形成して二量化することによりメソゲン構造を形成することが可能であるため、液晶性を発現させることができる。
【0113】
本発明の液晶高分子膜を構成する側鎖型液晶高分子は、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマレイミド系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する主鎖構造を有していてもよい。
【0114】
本発明の液晶高分子膜は、上記製造方法により製造された液晶高分子膜であり、光学異方性を有する液晶高分子膜であってもよい。本発明の液晶高分子膜は光学異方性素子の部材として用いることができる。
【0115】
本発明の光学異方性素子は、透明基材と透明基材の上に形成された上記液晶高分子膜を備えていてもよい。本発明の光学異方性素子は、光学物性の向上により、光学デバイスやディスプレイデバイスに用いられる位相差フィルム、液晶配向膜、パターンリターダ、偏光回折格子、ラジアル偏光コンバータ等として使用することができ、また、偏光発光を有している場合には、偏光発光フィルムとして使用することができ、バックライト等に使用することができる。
【実施例0116】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0117】
以下の実施例及び比較例において、各種物性は下記の方法により測定した。
分子量は、カラムとして昭和電工株式会社製Shodexカラムを備えたGPC装置(日本分光株式会社製、PU-2080、RI-2031)を使用し、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を使用して測定し、ポリスチレン換算で算出した。
相転移温度は、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、SSC5200H)を用いて測定した。
二色比は、グランテーラー偏光プリズムを備えた分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、U-3010)を使用して測定し、偏光吸収スペクトルから算出した。表1に示す二色比Dは、一番高い数値Dを示す波長の吸収における二色比を示す。
複屈折率は、加熱・冷却装置(LINKAM社製、TH600PM)を備えた偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製、BX51)を使用して、セナルモン法により波長633nmで測定した。
発光スペクトルは、分光蛍光高度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、F-7000)を使用して、フォトルミネッセンス(PL)測定により測定し、最大の発光強度を示す波長をPLmaxとして算出した。
【0118】
(単量体1)
4-ヒドロキシ安息香酸と6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸を合成した。次いでこの生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、化学式1に示される単量体1を合成した。
【化21】
【0119】
(単量体2)
4-ヒドロキシベンズアルデヒドと6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを合成した。この生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、化学式2に示される単量体2を合成した。
【化22】
【0120】
(単量体3)
単量体1と塩化チオニルを反応させて酸塩化物を合成した後、この生成物と4-ヒドロキシベンズアルデヒドをトリエチルアミン存在下で反応させ、化学式3に示される化合物を合成した。
【化23】
【0121】
次に、この生成物とp-アニシジンを脱水縮合させて化学式4で示される単量体3を合成した。
【化24】
【0122】
(単量体4)
4-アミノフェノールと6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)アニリンを合成した。次いでこの生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ4-(6-メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)アニリンを合成した。次いで4-メトキシベンズアルデヒドを脱水縮合させて化学式5に示される単量体4を合成した。
【0123】
【0124】
(単量体5)
4-アミノフェノールと6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)アニリンを合成した。次いでこの生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ4-(6-メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)アニリンを合成した。次いで4-メトキシサリチルアルデヒドを脱水縮合させて化学式6に示される単量体5を合成した。
【化26】
【0125】
(共重合体1)P1
単量体1と単量体2のモル比が単量体1:単量体2=80:20となるように単量体1と単量体2をTHF中に溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加して重合することにより共重合体1を得た。共重合体1の数平均分子量は38000、重量平均分子量は87400であった。この共重合体1は50℃から132℃の温度範囲で液晶性を呈した。
【0126】
(重合体2)P2
単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより重合体2を得た。この重合体2は120℃から295℃の温度範囲で液晶性を呈した。
【0127】
(共重合体3)P3
単量体1と単量体4をモル比が単量体1:単量体4=80:20となるように単量体1と単量体4をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体3を得た。この共重合体3は115℃から151℃の温度範囲で液晶性を呈した。
【0128】
(重合体4)P4
単量体5をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより重合体4を得た。
【0129】
(化合物1)
化合物1として、市販のp-アニシジン(東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0130】
(化合物2)SB
化合物2として、市販の4-アミノスチルベン(以下、SBと称する場合がある;東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0131】
(化合物3)MSB
化合物3として、市販の4-アミノ-4’-メトキシスチルベン(以下、MSBと称する場合がある;東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0132】
(化合物4)FL
化合物4として、市販の2,7-ジアミノフルオレン(以下、FLと称する場合がある;東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0133】
(化合物5)TD
化合物5として、市販のm-トリジン(以下、TDと称する場合がある;東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0134】
(化合物6)
化合物6として、市販の2-アミノフルオレン(東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0135】
(化合物7)
化合物7として、市販の2-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0136】
(化合物8)
化合物8として、市販の4-ホルミル-3-ヒドロキシ安息香酸(Sigma-Aldrich製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。
【0137】
(実施例1)
共重合体1と化合物1の材料をモル比が共重合体1:化合物1=1:2となるようにTHFに溶解し溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この基板を室温で乾燥した後、100℃で10分間加熱し、共重合体1と化合物1とを脱水縮合させることにより感光性液晶高分子からなる高分子膜を形成した。この高分子膜を3枚準備し、続いて、この高分子膜に、超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線光とし、2J/cm2、5J/cm2、20J/cm2をそれぞれ照射した。
【0138】
この高分子膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を
図1に示す。また、二色比(D)は下記式で定義される。
D=(A⊥-A||)/(A⊥+A||)
(式中、A⊥は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸光度、A||は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸光度を表す。)
【0139】
図1より、塗布後の照射により安息香酸基由来の262nmの吸収には二色比(D
262)はほとんど生じず、ベンジリデンアニリン基由来の335nmの二色比(D
335)が発生したことからベンジリデンアニリン基が軸選択的な光反応をしていることがわかるが、二色比D
335は0.01未満であった。
【0140】
以後、偏光紫外線を5J/cm
2照射した高分子膜を使用した。この高分子膜を、窒素雰囲気下、140℃で10分間熱処理を行った。得られた高分子膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を
図2に示す。
図2より、協調的な再配向が起こり安息香酸基由来の262nmの吸収においてD
262=0.74、ベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収においてD
335=0.69と二色比の大きな高分子膜が作製された。この高分子膜の位相差値および膜厚を測定し、複屈折率Δnを算出するとΔnは0.12であった。
【0141】
次に、協調的な再配向が起こった高分子膜を湿度35%の空気雰囲気下で、125℃で80分間熱処理を行った。得られた高分子膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を
図3に示す。
図3より、安息香酸基由来の262nmの吸収と二色比は維持された状態でベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収が減少していることから、安息香酸基の配向が維持されたまま、感光性基であるベンジリデンアニリン基が加水分解していることがわかる。この高分子膜のD
262=0.63であり、Δnは0.08であった。
【0142】
次に、化合物2をジエチルエーテルに溶解した溶液を調製した。スピンコーターを用いてこの溶液を加水分解後の高分子膜上に塗工して、窒素雰囲気下、130℃で10分間熱処理を行った。得られた液晶高分子膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を
図4に示す。
図4より、355nmに新しいピークを示し、その吸収における二色比はD
355=0.78と大きな値を示した。これは加水分解後の側鎖残基のベンズアルデヒド基と化合物2が脱水縮合反応によりベンジリデンアニリン基が生じ、かつ、それが配向していることを示している。得られた液晶高分子膜のΔnは0.13であった。
【0143】
この液晶高分子膜を窒素雰囲気下で昇温した際のΔnの変化を
図5(P1/SB)に示す。Δnに変化が見られない最高温度を耐熱温度(TS)と定義した。
図5(P1/SB)より、155℃まではΔnに変化がなく、得られた液晶高分子膜のTSは155℃であった。
【0144】
(実施例2)
化合物2の代わりに化合物3を使用した以外は実施例1と同様にして、表1に示す液晶高分子膜を得た。得られた液晶高分子膜は、安息香酸基由来の262nmの吸収においてD
262=0.75であり、ベンジリデンアニリン基由来の366nmの吸収においてD
366=0.82であり、Δnが0.14であった。
図5(P1/MSB)より、得られた液晶高分子膜のTSは150℃であった。
【0145】
(実施例3)
化合物2の代わりに化合物4を使用した以外は実施例1と同様にして、表1に示す液晶高分子膜を得た。得られた液晶高分子膜は、安息香酸基由来の262nmの吸収においてD
262=0.68であり、ベンジリデンアニリン基由来の378nmの吸収においてD
378=0.71であり、Δnが0.18であった。
図5(P1/FL)より、得られた液晶高分子膜のTSは180℃であった。
【0146】
(実施例4)
化合物2の代わりに化合物5を使用した以外は実施例1と同様にして、表1に示す液晶高分子膜を得た。得られた液晶高分子膜は、安息香酸基由来の262nmの吸収においてD
262=0.63であり、ベンジリデンアニリン基由来の341nmの吸収においてD
341=0.62であり、Δnは0.14であった。
図5(P1/TD)より、得られた液晶高分子膜のTSは165℃であった。
【0147】
(実施例5)
重合体2をTHFに溶解した溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この基板を室温で乾燥した後、この基板に、超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線光とし、7J/cm2照射した。照射後、窒素雰囲気下、200℃で10分間熱処理を行った。得られた高分子膜は、フェニル基由来の262nmの吸収における二色比D266=0.8であり、ベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収における二色比D335=0.82であり、Δnが0.24であった。
【0148】
次に、配向した高分子膜を希薄な酢酸水溶液(pH=3.0)中に60分間浸し、シッフ塩基を加水分解した後、メタノールとジエチルエーテルで洗浄した。得られた高分子膜のΔnは0.08であった。
【0149】
次に、化合物6をエチレングリコールに溶解した溶液(4wt%)を調製した。スピンコーターを用いてこの溶液を洗浄後の高分子膜上に塗工して、窒素雰囲気下、50℃で60分間熱処理を行った。得られた液晶高分子膜は、ベンジリデンアニリン基由来の350nmの吸収における二色比D350=0.79であり、Δnが0.40であり、TSが315℃であった。
【0150】
(実施例6)
共重合体3をTHFに溶解した溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この基板を室温で乾燥した後、この基板に超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線光とし、7J/cm2照射した。照射後、窒素雰囲気下、145℃で10分間熱処理を行った。得られた高分子膜は、フェニル基由来の266nmの吸収における二色比D266=0.64であり、ベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収における二色比D335=0.59であった。
【0151】
次に、配向した高分子膜を湿度35%の空気雰囲気下、110℃で60分間熱処理を行って、シッフ塩基を加水分解した。得られた高分子膜は、フェニル基由来の264nmの吸収における二色比D264=0.66であった。
【0152】
次に、化合物7をジエチルエーテルに溶解した溶液を調製した。スピンコーターを用いてこの溶液を加水分解後の高分子膜上に塗工して、窒素雰囲気下、100℃で10分間熱処理を行った。得られた液晶高分子膜は、ベンジリデンアニリン基由来の吸収における二色比D=0.70であった。また、得られた液晶高分子膜にUV光を照射し偏光板をかざすと、黄緑色(PLmax=508nm)の偏光発光を確認した。
【0153】
(実施例7)
化合物7の代わりに化合物8を使用した以外は実施例6と同様にして、表1に示す液晶高分子膜を得た。得られた液晶高分子膜は、ベンジリデンアニリン基由来の吸収における二色比D=0.63であった。また、得られた液晶高分子膜にUV光を照射し偏光板をかざすと、黄色(PLmax=546nm)の偏光発光を確認した。
【0154】
(比較例1)
共重合体1と化合物1の材料をモル比が共重合体1:化合物1=1:2となるようにTHFに溶解し溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この基板を室温で乾燥した後、100℃で10分間加熱し、共重合体1と化合物1とを脱水縮合させることにより感光性液晶高分子からなる高分子膜を形成した。続いて、この高分子膜に、超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線光とし、5J/cm2照射した。照射後、窒素雰囲気下、130℃で10分間熱処理を行い、さらに125℃で100分間熱処理を行った。得られた高分子膜は、ベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収における二色比D335=0.69であり、Δnが0.12であり、TSが146℃であった。
【0155】
(比較例2)
比較例1で得られた配向した高分子膜を湿度35%の空気雰囲気下、125℃で80分間熱処理して、シッフ塩基を加水分解した。得られた高分子膜は、安息香酸基由来の262nmの吸収における二色比D262=0.63であり、Δnが0.08であり、TSが130℃であった。
【0156】
(比較例3)
重合体4をTHFに溶解し溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この高分子膜に、超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線光とし1~20J/cm2照射した後、80~140℃で熱処理を行ったが、得られた高分子膜に配向を確認できなかった。
【0157】
【0158】
実施例1~4では、前駆体高分子化合物として共重合体1を用いて化合物1と縮合反応させることにより膜の原材料である側鎖型液晶高分子からなる高分子膜を作製し、光照射および加熱により配向を誘起した後、加水分解反応させ、さらに各種アミン化合物を塗布し、縮合反応させることにより、液晶高分子膜を得ている。比較例1は、加水分解反応前の高分子膜、比較例2は、加水分解反応後、縮合反応前の高分子膜に相当するが、実施例1~4で得られた液晶高分子膜は、比較例1および2より、複屈折率Δnおよび耐熱温度TSが高い値を示しており、原材料からなる高分子膜より物性が向上していた。
【0159】
実施例5では、重合体2を用いて高分子膜を作製し、光照射および加熱により配向を誘起した後、加水分解反応させ、さらにアミン化合物を塗布し、縮合反応させることにより、液晶高分子膜を得ている。実施例5で得られた液晶高分子膜の複屈折率Δnは0.40であり、加水分解反応前の高分子膜の複屈折率Δn0.24より向上している。また、実施例5で得られた液晶高分子膜の耐熱温度TSは315℃と高い耐熱性を有している。
【0160】
実施例6および7では、共重合体3を用いて高分子膜を作製し、光照射および加熱により配向を誘起した後、加水分解反応させ、さらに各種アルデヒド化合物を塗布し、縮合反応させることにより、液晶高分子膜を得ている。実施例6および7で得られた液晶高分子膜は、側鎖型液晶高分子の側鎖にサリチリデンアニリン誘導体を形成したため、偏光発光を示し、サリチリデンアニリンに置換する置換基の影響でその発光する色を調整することができた。比較例3では、実施例6で形成したサリチリデンアニリン誘導体を側鎖に有する重合体を原材料に用いて製膜したが、分子配向させることができなかった。
以上のように、本発明では、物性の向上した液晶高分子膜や所定の特性を有する液晶高分子膜を製造することができる。そして、本発明の液晶高分子膜は、透明基材上に形成することにより、光学異方性素子、位相差フィルム、光学補償フィルム、偏光発光フィルム等として好適に用いられるだけでなく、さらに液晶高分子の配向性を利用することにより、液晶配向膜としても好適に用いることができる。また、一対の液晶配向膜と、一対の光学素子間に配設される液晶層と、を備える液晶表示素子として用いることができる。
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。