(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088447
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】電気集塵装置および電気集塵方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/36 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B03C3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203172
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】生川 功祐
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】森 俊介
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA05
4D054CA10
4D054EA14
(57)【要約】
【課題】 簡易な装置構成で、集塵効率を向上することができる電気集塵装置および電気集塵方法を提供する。
【解決手段】 排ガス中の粉塵を除去する電気集塵装置において、装置内部の前室内および後室内の少なくともいずれかに、個別に可動できる複数の可動羽根板で構成されるルーバー式ダンパを備えることを特徴とする電気集塵装置であり、この装置を用いて、可動羽根板の可動角度を個別に調整して粉塵の集塵効率を向上させることができる電気集塵方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の粉塵を除去する電気集塵装置であって、前記排ガスの流れ方向から順に、入側ダクト、前室、集塵室、後室および出側ダクトから構成され、前記前室内および前記後室内の少なくともいずれかに、複数の羽根板を有するルーバー式ダンパを備えたことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記複数の羽根板が、個別に可動できる可動羽根板であり、各可動羽根板の可動中心が直線上に並ぶことを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記可動羽根板の可動角度θが、0~180°であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気集塵装置。
ここで、可動角度θは、前記可動羽根板の各回転軸の中心を結ぶ直線を基準として前記羽根板の断面長手方向の中心線とのなす鋭角であって、前記中心線が各回転軸の中心を結ぶ直線に対し反時計回りとなる角度をプラスとする。
【請求項4】
前記前室内における前記入側ダクト寄りに、複数の羽根板を有し、該羽根板が、前記集塵室に向かって全体として扇状に開いた形状に固定されている整流板を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気集塵装置を用いて、排ガス中の粉塵を除去する電気集塵方法であって、前室内および後室内の少なくともいずれかに、個別に可動できる複数の可動羽根板で構成されるルーバー式ダンパを備え、前記排ガス量および前記粉塵の含有量に応じて、前記複数の可動羽根板の可動角度を個別に所定の角度に設定して集塵することを特徴とする電気集塵方法。
【請求項6】
前記複数の可動羽根板同士が平行となるように同じ可動角度に設定して集塵することを特徴とする請求項5に記載の電気集塵方法。
【請求項7】
前記複数の可動羽根板が前記集塵室に向かって全体として扇状に開くように個別に角度を設定して集塵することを特徴とする請求項5に記載の電気集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の粉塵を除去する電気集塵装置および電気集塵方法に関し、特に大量の集塵を行いつつ集塵効率を向上できる電気集塵装置および該電気集塵装置を用いた電気集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品を製造する製鉄所などでは、高炉に投入する焼結鉱を製造する焼結機、コークスを製造するコークス炉、銑鉄を鋼にする転炉などにおいて、排ガスとともに大量の粉塵(ダスト)が発生するため、大型の電気集塵装置を用いて、排ガスからこれら粉塵を除去して清浄化している。一般的な産業用の集塵装置としては、サイクロン(遠心力式集塵装置)、スクラバー(湿式集塵装置)、バグフィルター(隔壁式集塵装置)、電気集塵装置などが挙げられる。これらの中で、電気集塵装置は、ランニングコストが低く、保守性も高く、また、捕集できる粒子が非常に小さい(0.1μm以下の微粉)ため、他の集塵装置では対応できない微粉塵でも捕集することができ、さらに、圧力損失が少なく無駄が生じないといった利点を有していることから、電気集塵装置が多く使用されている。
【0003】
しかしながら、これまでの電気集塵装置については、排ガスの流量が変動したり、集塵装置内の温度が変動するといった状況において、これらに対応することが難しいという問題点を抱えており、このような問題点を解決する方法が検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1では、電気集塵装置の入口煙道に設けられた入口ダンパまたは出口煙道に設けられた出口ダンパにより、ダンパの開度を調整して、電気集塵装置へ入るガスの流れを制御する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、電気集塵装置内に設けた温度センサにより測温し、分岐ダクト(電気集塵装置入側ダクト)の外側に設けた流量調整ダンパにより冷却排ガスの流量を調整して装置内の温度を制御する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に記載される装置は、ダンパが電気集塵装置の入口煙道または分岐ダクトの外側に設置されているため、ダンパ開度の大小によってダンパ圧損を利用した排ガスの風量制御が可能となり、電気集塵装置の前に設置された炉の圧力制御や電気集塵装置の集塵室の腐食を防ぐだけであって、本発明が目的とする大量の粉塵を含んだ排ガスからその粉塵を除去するには、その能力に限界があるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-022907号公報
【特許文献2】特開2009-226334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、簡易な装置構成で集塵効率を向上することができる電気集塵装置および電気集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、集塵室内でのガスの流れを均一にすると、あるいは、集塵室入側で粉塵の一部を落下させると、集塵効率が向上し、そのために、集塵室前方の前室内または集塵室後方の後室内にダンパを設け、その開度と方向を調整すると良いという知見を得た。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を加えてなされたものであり、その構成は、以下のとおりである。
〔1〕排ガス中の粉塵を除去する電気集塵装置であって、前記排ガスの流れ方向から順に、入側ダクト、前室、集塵室、後室および出側ダクトから構成され、前記前室内および前記後室内の少なくともいずれかに、複数の羽根板を有するルーバー式ダンパを備えたことを特徴とする電気集塵装置。
〔2〕前記〔1〕において、前記複数の羽根板が、個別に可動できる可動羽根板であり、各可動羽根板の可動中心が直線上に並ぶことを特徴とする電気集塵装置。
〔3〕前記〔1〕または〔2〕において、前記可動羽根板の可動角度θが、0~180°であることを特徴とする電気集塵装置。
ここで、可動角度θは、前記可動羽根板の各回転軸の中心を結ぶ直線を基準として前記羽根板の断面長手方向の中心線とのなす鋭角であって、前記中心線が各回転軸の中心を結ぶ直線に対し反時計回りとなる角度をプラスとする。
〔4〕前記〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記前室内における前記入側ダクト寄りに、複数の羽根板を有し、該羽根板が、前記集塵室に向かって全体として扇状に開いた形状に固定されている整流板を備えたことを特徴とする電気集塵装置。
〔5〕前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つに記載の電気集塵装置を用いて、排ガス中の粉塵を除去する電気集塵方法であって、前室内および後室内の少なくともいずれかに、個別に可動できる複数の可動羽根板で構成されるルーバー式ダンパを備え、前記排ガス量および前記粉塵の含有量に応じて、前記複数の可動羽根板の可動角度を個別に所定の角度に設定して集塵することを特徴とする電気集塵方法。
〔6〕前記〔5〕において、前記複数の可動羽根板同士が平行となるように同じ可動角度に設定して集塵することを特徴とする電気集塵方法。
〔7〕前記〔5〕において、前記複数の可動羽根板が前記集塵室に向かって全体として扇状に開くように個別に角度を設定して集塵することを特徴とする電気集塵方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ルーバー式ダンパの可動羽根板同士の開度を平行かつ角度θを90°未満に変えることによりダンパに衝突した粉塵を落下させて粉塵の予備(回収)処理が可能となり、従来よりも優れた集塵性能が得られる。また、ルーバー式ダンパの可動羽根板同士の開度を扇状に変えることによりガス流全体を整流として電気集塵装置の集塵効率を向上できる。その結果、同一ガス流に対して、集塵装置のコンパクト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施態様である前室内にルーバー式ダンパを備えた電気集塵装置の概略断面図であり、(a)が複数の可動羽根板の可動角度θがすべて0°の場合で、(b)が複数の可動羽根板の可動角度がすべて45°の場合で、(c)が複数の可動羽根板が全体として集塵室に向かって扇状に開いた場合である。
【
図2】本発明の他の実施態様である入側ダクトと前室内に設けたルーバー式ダンパとの間に整流板を備えた電気集塵装置の概略断面図であり、(a)が複数の可動羽根板の可動角度θがすべて0°の場合で、(b)が複数の可動羽根板の可動角度がすべて45°の場合で、(c)が複数の可動羽根板の可動角度がすべて90°の場合である。
【
図3】本発明の他の実施態様である後室内にルーバー式ダンパを備えた電気集塵装置の概略断面図であり、(a)が複数の可動羽根板の可動角度θがすべて0°の場合で、(b)が複数の可動羽根板の可動角度がすべて45°の場合で、(c)が複数の可動羽根板が全体として集塵室から出側ダクトに向かって絞った場合である。
【
図5】本発明の電気集塵装置の概略斜視図(放電極と集塵極は省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る電気集塵装置の概要について、説明する。
【0014】
[電気集塵装置]
電気集塵装置とは、放電極(負極)と集塵極(正極)の間に高電圧を印加することにより形成される強力な電界に、粉塵を含む排ガスを通すと、排ガス中の粉塵が負帯電体となり、集塵極に吸着捕集されることを利用する静電式の集塵装置である。
【0015】
対象となる排ガスとは、前述したように、鉄鋼製品を製造する製鉄所においては、高炉に投入する焼結鉱を製造する焼結機、コークスを製造するコークス炉、銑鉄を鋼にする転炉などにおいて排出されるガスであって、その排ガスには、大量の粉塵(焼結ダスト、コークスダスト、転炉ダストなど)が含まれている。粉塵の粒度は、1~500μm程度であり、0.1μm以下の微細な粉塵も捕集する能力を有している。
【0016】
次に、本発明に係る電気集塵装置の一実施態様について、
図1および
図5に基づいて説明する。
図1は、
図5の電気集塵装置の幅方向(破線矢印)から見た断面図である。
【0017】
電気集塵装置1の基本的形態は、排ガスの流れ方向から順に、入側ダクト3、前室7、集塵室6、後室8および出側ダクト4から構成される。前述したように、放電極と集塵極とが対面する構造である直方体の集塵室6が中心部分にあり、その前方には、排ガスを装置内に送り込む入側ダクト3を備え、また、集塵室6の後方には、集塵された後の排ガスを排出する出側ダクト4を備えており、入側ダクト3と集塵室6の間には、入側ダクト3側から集塵室6側に広がった形状の前室7を、また、出側ダクト4と集塵室6の間には、集塵室6側から出側ダクト4側に絞った形状の後室8を備えている。また、集塵室6の下部には、図示していないが、捕集された粉塵を回収し排出する粉塵ホッパーが設けられている。
【0018】
電気集塵装置の形状(サイズ)は、その処理量などに応じて種々の形状を有しているが、製鉄所の場合は、例えば、集塵室周りの設備形状で、幅が5~20m、高さが5~20m、長さが10~40m程度の大きさを有している。
【0019】
[ルーバー式ダンパと可動羽根板]
本発明に係る電気集塵装置の一実施態様である
図1、または他の実施態様である
図2に示すように、本発明の特徴であるルーバー式ダンパ2を電気集塵装置1の内部にある前室7内に備えている。また、別の実施態様である
図3に示すように、後室8内に備えても良い。このルーバー式ダンパ2は、複数の羽根板10から構成され、複数の各羽根板10は、個別に可動することができる可動羽根板である。
【0020】
ルーバーとは、
図5に示すように細長い羽根板10をその可動軸を幅方向に複数枚平行に組んだものをいい、羽根板を可動軸回りに回転させて角度を調整することで羽根板同士の隙間を開けたり閉じたりできるものである。本発明に係るルーバー式ダンパの複数の羽根板が個別に可動する場合の可動軸は、羽根板断面の長手方向のどの位置であっても良いが、複数ある羽根板の断面の長手方向位置をそろえる必要がある。また、可動羽根板10の枚数は、5~15枚が好ましい。
【0021】
本発明においては、可動羽根板の「可動角度θ」で、ダンパの開き具合を表すことにする。
この可動角度θは、
図4に示すとおり、上記の可動羽根板10の各可動軸の中心を結ぶ直線を基準として、羽根板の断面長手方向の中心線とのなす角度であって、前記各可動軸の中心を結ぶ直線方向を0°(基準)として、前記羽根板の断面長手方向の中心線が反時計回りとなる鋭角を+(プラス)の値とする。θ=0~180°であることが好ましい。
【0022】
なお、複数の可動羽根板10は、個別に可動することができるが、送入される排ガスの性状(流量、濃度等)に応じた可動角度に設定し、運転中はその角度を保持しながら(固定したまま)運転を行っても良い。また、送入される排ガスの性状が変化する場合には、その変化を観測しながら、それに応じて連動して角度を変更し制御しながら運転を行っても良い。
【0023】
例えば、排ガス中の粉塵濃度が電気集塵装置の能力に比較して少ない場合、ルーバー式ダンパの可動羽根板同士を平行かつ可動角度を90°未満とすることにより、ルーバー式ダンパに粉塵を衝突させて落下させると、電気集塵装置の集塵効率を向上できる。また、排ガス中の粉塵濃度が電気集塵装置の最大能力に近い場合、ルーバー式ダンパの可動羽根板と扇状とすることにより、集塵室全体のガス流を整流とすることができて、電気集塵装置の集塵効率を向上できる。
【0024】
[可動羽根板の角度とガス流れとの関係]
ここで、可動羽根板の角度θとガスの流れとの関係を、一実施態様である
図1に基づいて説明する。
【0025】
図1(a)は、各可動羽根板10の角度がすべてθ=0°の場合、すなわち、各羽根板が垂直に並んだ状態であって、この場合には、送り込まれる排ガスを遮断して、ガスの流れ9を停止することができる。
【0026】
次に、
図1(b)は、各可動羽根板10の角度がすべてθ=45°の場合、すなわち、各羽根板がすべて同じ角度となって、羽根板同士は平行となっている場合であって、この場合には、ガスの流れ9は、ダンパ2により抑制され、ガスに含まれる粉塵が各羽根板10に衝突して、粉塵の一部は落下するため、粉塵の除去効率、すなわち電気集塵装置としての集塵効率が向上する。
【0027】
さらに、
図1(c)は、各可動羽根板10の可動角度を個々に調整して、全体として集塵室6に向かって扇状に開いた形状で設定した場合であって、この場合には、ガスの流れ9は、整流となるため、集塵室全体に排ガスが送り込まれ、全体としての集塵能力が上がり、装置としての集塵効率が向上する。つまり、ルーバー式ダンパ2が整流板の機能を有するため、効率的な集塵が可能となることから、電気集塵装置をより小型化にでき、設置コストや運転コストを低減することができる。
【0028】
[集塵効率]
排ガス中に含まれる粉塵(ダスト)の量は、JIS Z 8808(排ガス中のダスト濃度の測定方法)に基づいて測定される。この測定方法から、ダスト濃度Cd(mg/Nm3)は、吸引したガス量VN(Nm3)に対する捕集したダストの質量M(mg)として求められる。
【0029】
本発明における集塵効率とは、集塵率E(%)のことであり、次の式(1)で求められる。
E=(1-Co/Ci)×100 ・・・ (1)
ここで、Ciは、集塵装置入側の粒子濃度(mg/Nm3)で、Coは、集塵装置出側の粒子濃度(mg/Nm3)である。
従来の電気集塵装置の集塵率は、90~95%程度であった。
【0030】
[整流板の設置]
また、本発明の電気集塵装置の他の実施態様として、
図2および
図3に示すように、入側ダクト3から集塵室6に入る手前の前室7内に、ルーバー式ダンパとは別に整流板5を設置しても良い。この整流板5は、複数の羽根板から構成されているが、ルーバー式ダンパ2のような可動羽根板ではなく、固定式の羽根板であり、各羽根板の角度(開き方)は、集塵室側に向かって扇状に開いた形状に固定されて配置されている。この羽根板の配置により、ガスの流れが整流に保持され、前室内全体に排ガスが広がり、集塵室全体を使用することができるため、集塵効率が向上する。
【0031】
図2のように、ルーバー式ダンパ2を前室7内に設ける場合には、ルーバー式ダンパ2は、整流板5と集塵室6との間に設置する。ルーバー式ダンパ2を前室7内に設置した場合には、整流板5の整流効果とルーバー式ダンパ2の除塵効果および整流効果によって、集塵効率が大きく向上する。
【0032】
[風量制御]
図3のように、ルーバー式ダンパ2を後室8内に配置することもできる。ルーバー式ダンパ2を後室8内に配置した場合は、前室7内の整流板5によって、集塵室6全体に整流が形成され、集塵効率を高く保持したままで、後室8内のルーバー式ダンパ2によって風量の制御が容易になり、適切な集塵が可能になる。
【0033】
[電気集塵方法]
本発明に係る電気集塵方法は、前述した本発明に係る電気集塵装置を用いて、前室7内および後室8内の少なくともいずれかに、個別に可動できる複数の可動羽根板で構成されるルーバー式ダンパを備え、排ガス量および粉塵の含有量に応じて、複数の可動羽根板の可動角度を個別に所定の角度に設定して集塵することを特徴とするものである。
【0034】
そして、可動羽根板の角度設定方法として、次の実施態様を備えている。
第1の実施態様は、
図1(b)、
図2(b)に示すように、複数の可動羽根板同士が平行となるように同じ可動角度に設定して集塵するものである。この場合の可動角度θは、90°未満が好ましい。なお、図示した例では、すべて同じθ=45°とした。このように、すべての羽根板の角度θを同じにして各羽根板を平行にすると、ガスの流れ9は、ルーバー式ダンパ2により抑制され、排ガス中に含まれる粉塵がルーバー式ダンパ2の各可動羽根板10に衝突して、粉塵の一部は落下するため、粉塵の除去効率が向上する。また、
図3(b)は、前室7の整流板5により集塵室全体に整流を形成しつつ、後室8でルーバー式ダンパ2によって風量制御が可能となり、集塵効率を高く保持したままで、風量制御が容易になる。
【0035】
次に、第2の実施態様は、各可動羽根板10に整流板の機能を持たせるものであり、
図1(c)の場合は、複数の可動羽根板10が集塵室6に向かって扇状に開くように個別に角度を設定して集塵するものであって、
図2または
図3に図示する前室7の整流板5の各固定羽根板と同様の角度に設定され。また、
図2(c)の場合には、可動羽根板10はすべてθ=90°とし、ダンパ2の前に整流板5が配置されているので、その整流板5によって上下の空間に広がったガスの流れをそのまま継続するように水平位置に設定している。さらに、
図3(c)の場合には、ダンパ2が後室8内に配置されたものであり、前室7内に設置された固定式整流板5から広がったガスの流れを出側ダクト4に集約しやすいように、可動羽根板10は、集塵室6から絞るように個別に角度を設定して集塵するものである。このように、第2の実施態様においては、ガスの流れを整流に保持することにより、集塵室6全体に均一にガスが広がり、排ガスの集塵効率が向上する。
【0036】
なお、
図1(a)、
図2(a)または
図3(a)に示すように、可動羽根板10の可動角度θ=0°の場合、すなわち各可動羽根板10が垂直方向にまっすぐ並んだ場合は、上下の可動羽根板間の隙間がない状態であり、ガスの流れを停止させることができる。
【実施例0037】
以下、電気集塵装置の装置構成を変えて排ガスの集塵効率(集塵率%)を調べた。その結果を表1に示す。
【0038】
電気集塵装置の形状は、集塵室6周りで、幅が7m、高さが7m、長さが16mの大きさであり、焼結機からの排ガスの流量を6000m3/minとした。ルーバー式ダンパ2の可動羽根板10の1枚の大きさは、横幅6.5m、縦幅1300mm、厚さ12mmの板状であり、可動羽根板の枚数は、下記の実験No.1、2、5、6では、5枚とし、実験No.3、4では、9枚とした。また、整流板5の羽根板の大きさは、上記ルーバー式ダンパ2の可動羽根板10の大きさと同じであり、その羽根板の枚数は、5枚とした。
【0039】
次に、集塵前と集塵後の排ガス中の粉塵濃度は、JIS Z 8808(排ガス中のダスト濃度の測定方法)に基づいて測定した。それらの測定値から前述した式(1)により集塵率(%)を求めた。
【0040】
【0041】
No.1~6は、整流板5がない場合の実験例である。
No.1と2は、ルーバー式ダンパ2が前室7内にある場合である。No.1と2では、可動羽根板10の角度が異なっており、No.1の場合は、可動羽根板10同士が平行であって、角度θが45°を有しており、ガスの流れは、ルーバー式ダンパ2により抑制され、排ガスに含まれる粉塵がルーバー式ダンパ2に衝突して、粉塵の一部は落下するため、粉塵の除去効率が向上して集塵率が従来の最大95%より向上した。また、No.2の場合は、可動羽根板10が集塵室6に向かって扇状に開いた形状となっており、ルーバー式ダンパ2が整流板の機能を有し、排ガスが集塵室全体に広がることにより、集塵効率が98.3%に向上し、No.1の97.7%の場合よりも効率的な集塵が可能となった。
【0042】
No.3と4は、ルーバー式ダンパ2が後室8内にある場合である。No.3と4では、可動羽根板10の角度が異なっており、No.3の場合は、上記のNo.1と同様に、可動羽根板10の角度θが45°であり、それにより排ガス中の粉塵がルーバー式ダンパ2に衝突して除去効率が向上した。また、No.4の場合は、上記のNo.2と同様に、可動羽根板10が集塵室6に向かって扇状に開いた形状となっており、ルーバー式ダンパ2が整流板の機能を有し、No.3の場合よりもさらに効率的な集塵が可能となった。
【0043】
No.5と6は、ルーバー式ダンパ2が前室7と後室8の両方にある場合である。No.5と6では、可動羽根板10の角度が異なっており、No.5の場合は、粉塵をルーバー式ダンパに衝突させるNo.1とNo.3との相乗効果により、No.6の場合は、ルーバー式ダンパ2の整流板の機能によるNo.2と整流を保持したまま風量を制御するNo.4との相乗効果により、さらに集塵効率が向上した。
【0044】
次に、No.7~12は、固定式整流板5を前室7に設けた場合である。この固定式整流板5を設けることにより、ガスの流れが集塵室6内全体に整流に保持されやすくなり、その結果、固定式整流板5を設けない場合よりもさらに集塵率が向上した。
【0045】
さらに、No.8のように、固定式整流板5の後ろにルーバー式ダンパ2を設け、その可動羽根板10の角度θを90°、すなわち各可動羽根板10を水平に平行に設けた場合には、ガスの流れは、固定式整流板5とルーバー式ダンパ2の双方により、整流をさらに保持しやすくなるため、電気集塵装置1の集塵効率がさらに向上した。
【0046】
また、No.9と10のルーバー式ダンパを後室内に設置する形態では、前室7の固定式整流板5による流れの均一化が後室8まで維持されるため、放電極によるダストへの荷電が効率化され、集塵率が向上した。
【0047】
さらに、No.11と12は、ルーバー式ダンパ2が前室7と後室8の両方にある場合である。No.11の場合は、ルーバー式ダンパ2の可動羽根板10の角度θが45°を有しており、上述したNo.5の効果を上回る集塵効率となった。また、No.12の場合は、前室7のルーバー式ダンパ2の可動羽根板10の角度θが、上述したNo.8と同様の90°を有し、後室8内のルーバー式ダンパ2の可動羽根板10は、集塵室6から絞った形状となっており、上述したNo.6やNo.10の効果をさらに上回る集塵効率となった。
【0048】
以上のように、No.1~12のルーバー式ダンパ2を設けた本発明に係る電気集塵装置および電気集塵方法を用いることにより、比較例として示したルーバー式ダンパ2のないNo.13、14の場合よりも、集塵率が飛躍的に向上した。