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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088458
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】無人搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230620BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G05D1/02 H
B61B13/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203191
(22)【出願日】2021-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】足立 剛志
【テーマコード(参考)】
3D101
5H301
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BB16
3D101BB43
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301EE06
5H301EE08
5H301HH10
(57)【要約】
【課題】無人搬送車と、該無人搬送車によって牽引される被牽引台車とを備えた無人搬送システムにおいて、被牽引台車の総重量の増加を極力抑制しながら被牽引台車に搭載したアクチュエータを駆動制御できるようにする。
【解決手段】無人搬送車10は、蓄電部21と、該蓄電部21に蓄電された電力により駆動され、該無人搬送車10の車輪を駆動する走行駆動源19,20と、該走行駆動源19,20の駆動を制御する走行制御部25と、前記蓄電部21に蓄電された電力を被牽引台車50に向けて供給する給電部28と、該給電部28による給電を制御する給電制御部26とを有し、前記被牽引台車50は、無人搬送車10に設けられた前記給電部28からの電力を受電する受電部63と、該受電部63にて受電した電力により駆動されるアクチュエータ75とを有し、給電制御部26は、給電部28から被牽引台車50に設けられた受電部63への給電を制御することでアクチュエータ75の作動を制御するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車と、該無人搬送車によって牽引される被牽引台車とを備えた無人搬送システムであって、
前記無人搬送車は、蓄電部と、該蓄電部に蓄電された電力により駆動され、該無人搬送車の車輪を駆動する走行駆動源と、該走行駆動源を制御する走行制御部と、前記蓄電部に蓄電された電力を前記被牽引台車に向けて供給する給電部と、該給電部による給電を制御する給電制御部とを有し、
前記被牽引台車は、前記無人搬送車に設けられた前記給電部からの電力を受電する受電部と、該受電部にて受電した電力により駆動されるアクチュエータとを有し、
前記給電制御部は、前記給電部から前記被牽引台車に設けられた前記受電部への給電を制御することで前記アクチュエータの作動を制御するように構成されていることを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記給電部は、非接触給電により前記受電部に給電を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記給電部の給電面と前記受電部の受電面とは、上下方向に間隔を空けて対向するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の無人搬送システム。
【請求項4】
前記被牽引台車に設けられる前記アクチュエータは、電力供給を受けることで回転する走行モータを含み、
前記被牽引台車は、前記走行モータにより回転駆動される駆動輪を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無人搬送システム。
【請求項5】
前記被牽引台車の所定方向の傾き角を検出する傾き検出機構部をさらに備え、
前記給電制御部は、前記傾き検出機構部により検出された前記被牽引台車の前記傾き角が所定量以上である場合には、前記給電部から前記被牽引台車に設けられた前記受電部への給電を実行することで該被牽引台車の走行モータを駆動する一方、前記傾き角が前記所定量未満である場合には、前記給電部から前記受電部への前記給電を非実行とするように構成されていることを特徴とする請求項4記載の無人搬送システム。
【請求項6】
前記被牽引台車は、前記駆動輪として左側駆動輪と右側駆動輪とを有し、前記走行モータとして、前記左側駆動輪を駆動する左側走行モータと、前記右側駆動輪を駆動する右側走行モータとを有し、前記受電部として、前記左側走行モータの駆動用電力を受電する左側受電部と、前記右側走行モータの駆動用電力を受電する右側受電部とを有しており、
前記無人搬送車は、前記給電部として、前記左側受電部に給電する左側給電部と、前記右側受電部に給電する右側給電部とを有し、
前記給電制御部は、前記左側給電部と前記右側給電部との給電比率を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の無人搬送システム。
【請求項7】
前記被牽引台車に設けられる前記アクチュエータは、電力供給を受けることで該被牽引台車の制動力を発生する制動アクチュエータを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無人搬送システム。
【請求項8】
前記被牽引台車の所定方向の傾き角を検出する傾き検出機構部と、
前記傾き検出機構部により検出した前記被牽引台車の前記傾き角を基に、前記被牽引台車の積載重量を推定する重量推定部とをさらに備え、
前記給電制御部は、前記重量推定部により推定される積載重量が所定重量以上である場合には、前記走行制御部により無人搬送車を停車させる際に、前記給電部から前記受電部への給電を実行することで前記制動アクチュエータを作動させる一方、前記積載重量が前記所定重量未満である場合には、前記走行制御部により前記無人搬送車を停車させる際の前記給電部から前記受電部への前記給電を非実行とすることで前記制動アクチュエータを非作動とするように構成されていることを特徴とする請求項7記載の無人搬送システム。
【請求項9】
前記傾き検出機構部は、前記被牽引台車に設けられた所定標識と、前記無人搬送車に搭載され、前記所定標識を撮像する撮像装置と、前記被牽引台車に前記所定方向の傾きが生じていない状態で前記撮像装置により撮像した前記所定標識の撮像画像を基準画像として記憶する記憶部と、前記撮像装置による前記所定標識の撮像画像と前記基準画像とを比較することで、前記被牽引台車の前記傾き角を算出する傾き角算出部とを有していることを特徴とする請求項5又は8記載の無人搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車と、該無人搬送車によって牽引される被牽引台車とを備えた無人搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した無人搬送システムの一例として、特開2020-044859号公報(下記特許文献1)に開示された無人搬送システムが知られている。この無人搬送システムでは、無人搬送車に被牽引台車が連結され、ユーザにより設定された出発地点から目的地点までの経路に沿って無人搬送車が自律走行することにより、被牽引台車に積載された積載物が目的地点まで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-044859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す無人搬送システムにおいて、例えば、被牽引台車に走行補助用の走行モータ(アクチュエータ)を搭載したり、ワーク積卸し用の作業ロボット(アクチュエータ)を搭載したりすることが考えられる。
【0005】
しかし、被牽引台車にアクチュエータを搭載した場合、該アクチュエータに電力を供給するための蓄電部や、アクチュエータの作動を制御するための制御装置をさらに搭載する必要がある。この結果、被牽引台車の総重量が増加してその走行安定性が損なわれたり、被牽引台車を牽引する無人搬送車の動力が不足して走行不能に陥ったりするという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、被牽引台車の総重量の増加を抑制しながら、被牽引台車に搭載したアクチュエータを駆動制御できる無人搬送システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の一局面は、
無人搬送車と、該無人搬送車によって牽引される被牽引台車とを備えた無人搬送システムであって、
前記無人搬送車は、蓄電部と、該蓄電部に蓄電された電力により駆動され、該無人搬送車の車輪を駆動する走行駆動源と、該走行駆動源を制御する走行制御部と、前記蓄電部に蓄電された電力を前記被牽引台車に向けて供給する給電部と、該給電部による給電を制御する給電制御部とを有し、
前記被牽引台車は、前記無人搬送車に設けられた前記給電部からの電力を受電する受電部と、該受電部にて受電した電力により駆動されるアクチュエータとを有し、
前記給電制御部は、前記給電部から前記被牽引台車に設けられた前記受電部への給電を制御することで前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている無人搬送システムに係る。
【0008】
この構成によれば、無人搬送車に搭載された走行制御部による制御の下、無人搬送車の走行駆動源が制御されて無人搬送車が走行する。この走行駆動源の駆動電力は、無人搬送車に搭載された蓄電部より供給される。一方、被牽引台車には電動式のアクチュエータが搭載されている。このアクチュエータとしては、例えば被牽引台車の駆動輪を駆動する電動モータなどを採用することができる。ここで、無人搬送車には、蓄電部の電力を台車に設けられた受電部に供給するための給電部が設けられており、前記アクチュエータは前記受電部にて受電した給電部からの電力によって駆動される。前記給電部から受電部への給電制御は、無人搬送車に搭載された給電制御部によって実行される。この給電制御には、例えば、受電部への給電タイミングの制御や給電量の制御などが含まれる。そして、給電制御部による制御の下、給電部から受電部への給電制御が実行されることで、アクチュエータの作動タイミングや作動速度が制御される。したがって、被牽引台車に、アクチュエータを駆動するための蓄電部や制御部を新たに搭載することなくアクチュエータの駆動制御を行うことができる。これにより、被牽引台車の総重量の増加を抑制しながらアクチュエータの駆動制御を行うことが可能となる。
【0009】
前記給電部は、非接触給電により前記受電部に給電を行うように構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、無人搬送車に設けられた給電部から被牽引台車に設けられた受電部への給電を非接触により行うことができる。よって、被牽引台車を無人搬送車に連結する際に、給電部と受電部とを電気的に接続するための配線作業が不要になり、作業者の作業負担を低減することができる。また、給電部と受電部とを配線接続した場合、無人搬送車が旋回する度に配線が屈曲して断線する虞があるが、前記構成によれば非接触給電を採用することで断線のリスクを回避して給電部から受電部への電力供給を安定的に行うことができる。
【0011】
前記給電部の給電面と前記受電部の受電面とは、上下方向に間隔を空けて対向するように配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、無人搬送車の進行方向が変化しても、給電部の給電面と受電部の受電面との距離が変化しないので、給電効率を一定に維持することができる。
【0013】
前記被牽引台車に設けられる前記アクチュエータは、電力供給を受けることで回転する走行モータを含み、前記被牽引台車は、前記走行モータにより回転駆動される駆動輪を有していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、被牽引台車に設けられたアクチュエータは、被牽引台車に設けられた駆動輪を回転させる走行モータにより構成され、この走行モータは、無人搬送車の給電部から被牽引台車の受電部に供給される電力により駆動される。そして、無人搬送車に搭載された給電制御部により給電部から受電部への給電制御が実行されることで、走行モータの作動制御が実行される。よって、被牽引台車に蓄電部や制御部を新たに搭載することなく、被牽引台車の駆動輪を走行モータにより回転駆動してその走行安定性を向上させることができる。
【0015】
前記無人搬送システムは、前記被牽引台車の所定方向の傾き角を検出する傾き検出機構部をさらに備え、前記給電制御部は、前記傾き検出機構部により検出された前記被牽引台車の前記傾き角が所定量以上である場合には、前記給電部から前記被牽引台車に設けられた前記受電部への給電を実行することで該被牽引台車の走行モータを駆動する一方、前記傾き角が所定量未満である場合には、前記給電部から前記受電部への給電を非実行とするように構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、傾き検出機構部により被牽引台車の所定方向(例えば車幅方向)の傾き角が検出される。そして、傾き検出機構部により検出された被牽引台車の所定方向の傾き角が所定量以上である場合には、給電制御部による制御の下、給電部から被牽引台車の受電部に電力が供給される。この電力は被牽引台車に設けられた走行モータ(アクチュエータ)に供給され、電力供給を受けた走行モータによって被牽引台車の駆動輪が回転駆動される。したがって、被牽引台車の傾き角が所定量以上である場合には、走行モータにより被牽引台車の駆動輪が駆動されることで、被牽引台車の不安定な走行状態が安定化さて被牽引台車の傾き角を低減することができる。一方、傾き検出機構部により検出された被牽引台車の傾き角が所定量未満である場合には、無人搬送車の給電部から被牽引台車の受電部への給電は実行されない。これにより、被牽引台車の傾き角が比較的小さい場合にまで被牽引台車の走行モータが不必要に駆動されるのを防止し、システム全体の消費電力を低減することができる。
【0017】
前記被牽引台車は、前記駆動輪として左側駆動輪と右側駆動輪とを有し、前記走行モータとして、前記左側駆動輪を駆動する左側走行モータと、前記右側駆動輪を駆動する右側走行モータとを有し、前記受電部として、前記左側走行モータの駆動用電力を受電する左側受電部と、前記右側走行モータの駆動用電力を受電する右側受電部とを有しており、前記無人搬送車は、前記給電部として、前記左側受電部に給電する左側給電部と、前記右側受電部に給電する右側給電部とを有し、前記給電制御部は、前記左側給電部と前記右側給電部との給電比率を変更可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、給電制御部によって、無人搬送車の左側給電部及び右側給電部の給電比率を変更することで、被牽引台車の左側走行モータ及び右側走行モータの回転数の比率を変更することができる。よって、例えば、無人搬送車の旋回に追従して被牽引台車が旋回する際に、給電制御部により前記給電比率を制御することで、左右の駆動輪の回転速度を、旋回中心回りの角速度が一定になるように制御することができる。これにより、被牽引台車の旋回走行時における左右の駆動輪の滑りを抑制してその走行安定性を向上させることができる。
【0019】
前記被牽引台車に設けられる前記アクチュエータは、電力供給を受けることで該被牽引台車の制動力を発生する制動アクチュエータを含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、被牽引台車には、制動力を発生させる制動アクチュエータが設けられており、給電制御部による制御の下、無人搬送車の給電部から被牽引台車の受電部に電力が供給されると制動アクチュエータが作動し、被牽引台車に制動力が付与される。したがって、無人搬送車が停車する際に、前記給電部から受電部への給電により前記被牽引台車の制動アクチュエータを作動させることで、被牽引台車の制動力不足を回避することができる。
【0021】
前記無人搬送システムは、前記被牽引台車の所定方向の傾き角を検出する傾き検出機構部と、前記傾き検出機構部により検出した前記被牽引台車の前記傾き角を基に、前記被牽引台車の積載重量を推定する重量推定部とをさらに備え、前記給電制御部は、前記重量推定部により推定される積載重量が所定重量以上である場合には、前記走行制御部により無人搬送車を停車させる際に、前記給電部から前記受電部への給電を実行することで前記制動アクチュエータを作動させる一方、前記積載重量が前記所定重量未満である場合には、前記走行制御部により無人搬送車を停車させる際の前記給電部から前記受電部への前記給電を非実行とすることで前記制動アクチュエータを非作動とするように構成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、傾き検出機構部により検出された被牽引台車の所定方向(例えば車幅方向)の傾き角を基に、重量推定部にて被牽引台車の積載重量(積載物の重量)が推定される。そして、該重量推定部により推定される被牽引台車の積載重量が所定重量以上である場合には、走行制御部により無人搬送車を停車させる際に、給電制御部による制御の下、給電部から受電部への給電が実行されて前記制動アクチュエータが作動する。これにより、無人搬送車が停車する際に、被牽引台車が慣性力により該無人搬送車に衝突するのを防止することができる。一方、被牽引台車の積載重量が所定重量未満である場合には、無人搬送車が停車させる際の前記給電部から受電部への前記給電が実行されることはない。よって、被牽引台車の積載重量が小さい場合にまで制動アクチュエータへの電力供給が不必要に実行されるのを防止し、システム全体の消費電力を低減することができる。
【0023】
前記傾き検出機構部は、前記被牽引台車に設けられた所定標識と、前記無人搬送車に搭載され、前記所定標識を撮像する撮像装置と、前記被牽引台車に傾きが生じていない状態で前記撮像装置により撮像した前記所定標識の撮像画像を基準画像として記憶する記憶部と、前記撮像装置による前記所定標識の撮像画像と前記基準画像とを比較することで、前記被牽引台車の前記傾き角を算出する傾き角算出部とを有していることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、被牽引台車に設けられた所定標識の画像が、無人搬送車に搭載された撮像装置によって撮像され、この撮像装置による撮像画像と、被牽引台車に前記所定方向の傾きが生じていない状態で前記撮像装置により撮像した前記所定標識の撮像画像である基準画像との比較を基に、前記被牽引台車の前記所定方向の傾き角が傾き角算出部により算出される。これによれば、簡単な画像処理を行うだけで被牽引台車の所定方向の傾き角を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の無人搬送システムによれば、無人搬送車に給電部を設けるとともに、被牽引台車には、該給電部からの電力を被牽引台車に搭載されたアクチュエータの駆動用電力として受電する受電部を設けて、無人搬送車に搭載された給電制御部により前記給電部から前記受電部への給電制御を実行するようにしたことで、被牽引台車の総重量を極力抑制しながら、被牽引台車に搭載されたアクチュエータの駆動制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係る無人搬送システムを示す車両左側から見た側面図である。
図2】実施形態1に係る無人搬送システムを示す平面図である。
図3】実施形態1に係る無人搬送システムの制御ブロック図である。
図4】実施形態2を示す図1相当図である。
図5】実施形態2を示す図2相当図である。
図6】実施形態3を示す図2相当図である。
図7】実施形態3を示す図3相当図である。
図8】実施形態4を示す図1相当図である。
図9】実施形態4を示す図3相当図である。
図10】実施形態4に係る無人搬送システムの傾き角算出部による台車の傾き角の算出アルゴリズムを説明するための説明図である。
図11】実施形態5を示す図2相当図である。
図12】実施形態5を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
《実施形態1》
図1及び図2に示すように、本実施形態の無人搬送システム1は、無人搬送車10と、該無人搬送車10に着脱自在に連結される台車50(被牽引台車の一例)とを備えている。そして、無人搬送車10は、作業者が設定した目的地点に向けて障害物を回避しながら無軌道で走行する。これにより、台車50に積載されている積載物が目標地点まで搬送される。尚、無人搬送車10は、無軌道走行するものに限らず、例えば床面に敷設した磁気テープや反射部材を検出しながら有軌道で走行するものであってもよい。
【0029】
無人搬送車10は、車両前後方向に長い直方体状の搬送車本体11を有している。搬送車本体11には、後述する図3に示すように、蓄電部21、制御装置24、及び給電装置27が搭載されている。尚、以下の説明において、「前側」、「後側」は、車両前後方向の前側、後側を意味し、「左側」、「右側」は、車幅方向の左側、右側を意味するものとする。
【0030】
図2に示すように、搬送車本体11の下面には、左側駆動輪12、右側駆動輪13、前側従動輪14及び後側従動輪15が取付けられている。左側駆動輪12及び右側駆動輪13は、搬送車本体11の下面における車両前後方向の中央部に、車幅方向の中央線C1を挟んで左右対称に配置されている。左側駆動輪12及び右側駆動輪13は、それぞれの車軸に連結された左側走行モータ19及び右側走行モータ20により回転駆動される。各走行モータ19,20は、本例ではDCモータにより構成されていて走行駆動源として機能する。尚、本例では、無人搬送車10は専用の操舵機構を有しておらず、後述する走行制御部25によって左右の走行モータ19,20の回転速度を異ならせることにより操舵機能が実現される。
【0031】
前側従動輪14及び後側従動輪15は、平面視で前記中央線C1上に位置している。前側従動輪14及び後側従動輪15は、無人搬送車10の進行方向に追従して旋回可能なキャスタ輪により構成されている。
【0032】
搬送車本体11の後側面における車幅方向の中央部には、後側に向かって水平に延びる連結板16(図1参照。図2では図示省略)が接続されている。連結板16の後端部には連結ピン17が突設されている。連結板16は、連結ピン17を介して台車50の連結板56に連結されている。
【0033】
搬送車本体11の後側面における連結板16の上方には、後側に向かって水平に突出する突出ダクト11aが接続されている。突出ダクト11aの先端部には、給電装置27の一部である給電部28が固定されており、突出ダクト11a内には、給電部28に接続される配線類が挿通されている。給電部28の給電面28aは、無人搬送車10の後側を向く鉛直面とされている。給電装置27は、蓄電部21に蓄電された電力の一部を前記給電部28を介して後述する台車50の受電部63に供給する。
【0034】
図3に示すように、前記蓄電部21は、例えば充電式のバッテリやキャパシタにより構成されている。蓄電部21は、左側走行モータ19及び右側走行モータ20にドライバ22,23を介して電力供給可能に接続されている。また、蓄電部21は、制御装置24、及び給電装置27に電力供給可能に接続されている。
【0035】
給電装置27は、給電部28を介して、台車50に搭載された受電装置62の受電部63に非接触で給電を行うように構成されている。給電部28から受電部63への給電は、例えば電磁誘導によって行われるが、これに限ったものではなく、電波、電場の共鳴又は磁場の共鳴などによって行うようにしてもよい。
【0036】
図1及び図2に戻って、台車50は、車両前後方向に長い直方体状の台車本体51を有している。台車本体51には、給電装置27からの電力を受電する受電装置62(図3参照)が搭載されているとともに、その内部には、ワーク等の積載物を収容可能な収容スペースが確保されている。
【0037】
台車本体51の下面には、駆動輪70、左側従動輪71及び右側従動輪72が取付けられている。駆動輪70は、台車本体51の車幅方向の中央位置における車両前側端部に配置されている。駆動輪70は、その車軸に連結された走行モータ75(アクチュエータの一例)により駆動される。走行モータ75は、本例ではDCモータにより構成されている。左側従動輪71及び右側従動輪72は、台車本体51の車両後側端部に、車幅方向の中央線C2を挟んで左右対称に配置されている。各従動輪71,72は、台車50の進行方向に追従して旋回可能なキャスタ輪により構成されている。
【0038】
台車本体51の前側面における車幅方向の中央部には、前側に向かって水平に延びる連結板56(図1参照。図2では図示省略)が接続されている。この連結板56の前端部には図示しない係合孔が形成されている。そして、この係合孔を、無人搬送車10の連結板16に設けられた連結ピン17に回動可能に係合させることで、該無人搬送車10と台車50とが両連結板16,56を介して連結される。
【0039】
台車本体51の前側面における連結板56の上方には、前側に向かって水平に突出する突出ダクト51aが接続されている。突出ダクト51aの先端部には、受電装置62の一部である受電部63が固定されている。受電部63の受電面63aは、台車50の車両前方側を向く鉛直面とされている。この受電面63aと、無人搬送車10に設けられた給電部28の給電面28aとは、無人搬送車10が直進走行する状態(無人搬送車10の中央線C1と、台車50の中央線C2とが平面視で同一直線上に位置する状態)で互いに平行に対向している。
【0040】
図3に示すように、前記受電装置62は、無人搬送車10の給電部28から供給される電力を受電する前記受電部63と、受電部63にて受電した電力を平滑化して直流電力に変換した後、走行モータ75に供給する受電回路64とを有している。
【0041】
無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63への給電制御は、搬送車本体11内に搭載された制御装置24によって行われる。
【0042】
図3に示すように、制御装置24は、走行制御部25及び給電制御部26を有している。制御装置24は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、走行制御部25及び給電制御部26は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。
【0043】
走行制御部25は、例えば自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)手法に基づくプログラムを実行する。そして、走行制御部25は、無人搬送車10の現在位置から目的地点までの走行経路を算出し、算出した走行経路に沿って無人搬送車10を走行させるべくドライバ22,23を介して左側走行モータ19及び右側走行モータ20の回転速度を制御する。すなわち、走行制御部25は、前記算出した走行経路に基づいて無人搬送車10を直進させる際には、左側走行モータ19及び右側走行モータ20を同じ速度で回転させ、無人搬送車10を旋回させる際には、両モータ19,20を無人搬送車10の旋回方向及び旋回半径に応じて異なる速度で回転させる。
【0044】
給電制御部26は、無人搬送車10の側面に設けられた操作パネル(図示しない)からの操作信号を基に、台車50の牽引モードが設定されているか否かを判定し、牽引モードが設定されていると判定した場合には、給電装置27の給電部28から前記受電部63への給電制御を実行する。具体的には、給電制御部26は、走行制御部25より無人搬送車10の走行状況を取得して、無人搬送車10が走行中であると判断した場合には給電部28から受電部63への給電を実行し、無人搬送車10が停止していると判断した場合には給電部28から受電部63への給電を停止する。給電制御部26は、無人搬送車10が走行中であると判断した場合において、給電部28から受電部63への給電を実行する際には、台車50と無人搬送車10とを同速度で走行させるように給電部28から受電部63への給電電力を制御する。
【0045】
一方、給電制御部26は、無人搬送車10の側面に設けられた操作パネルからの操作信号を基に、前記牽引モードが設定されていないと判定した場合には前記給電制御を実行しない。この場合、蓄電部21の電力は無人搬送車10の走行モータ19,20にのみ供給される。
【0046】
以上のように構成された無人搬送システム1によれば、無人搬送車10の操作パネルにて牽引モードが設定された状態で、無人搬送車10が目的時点に向けて走行を開始すると、給電制御部26による制御の下、該無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63に向けて電力が供給される。供給された電力は、受電回路64を介して直流電力に変換された後、台車50の走行モータ75に供給される。そして、電力供給を受けた走行モータ75によって台車50の駆動輪70が回転駆動される。一方、無人搬送車10が走行を停止すると、給電制御部26によって前記給電部28から受電部63への給電が停止され、これにより、台車50の走行モータ75の回転も停止する。
【0047】
このように本実施形態によれば、無人搬送車10の走行中は、台車50が走行モータ75の動力により走行するようになっているので、例えば無人搬送車10の旋回走行時など、台車50の走行安定性が損なわれ易い状況下において台車50の走行安定性を十分に確保することがきる。しかも、台車50に設けられる走行モータ75の駆動電力は、無人搬送車10に搭載された蓄電部21から給電装置27を介して供給され、この給電装置27を制御する制御装置24も無人搬送車10に搭載されている。したがって、台車50には走行モータ75を駆動するための蓄電部や制御装置を搭載する必要がないので、台車50の総重量の増加を抑制することができる。よって、台車50の総重量の増加に起因する走行安定性の低下や無人搬送車10の動力不足といった問題を回避することができる。
【0048】
また、前記無人搬送車10の給電部28は、台車50の受電部63に非接触で給電を行うように構成されている。
【0049】
この構成によれば、台車50を無人搬送車10に連結する際に、給電部28と受電部63とを電気的に接続するための配線作業を行う必要がない。また、給電部28と受電部63とを配線接続した場合、無人搬送車10が旋回する度に配線が屈曲して断線する虞があるが、前記構成によれば非接触給電を採用することで断線のリスクを回避して給電部28から受電部63への電力供給を安定的に行うことができる。
【0050】
《実施形態2》
図4及び図5は、実施形態2を示している。この実施形態は、給電部28及び受電部63の構成が実施形態1とは異なっている。尚、この点を除く他の構成は実施形態1と同様であり、以下の各実施形態において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
すなわち、本実施形態では、給電部28の給電面28aと、受電部63の受電面63aとが共に水平面により構成され、上下方向にて対向するように配置されている。給電面28a及び受電面63aは、平面視で円形状をなしていて互いに同軸に配置されている。また、給電面28a及び受電面63aの軸心A1は、連結ピン17の軸心A2と同軸をなしている。
【0052】
本実施形態では、給電部28の給電面28aと、受電部63の受電面63aとが上下方向にて対向しているので、無人搬送車10の進行方向が変化しても、給電部28の給電面28aと受電部63の受電面63aとの距離を一定に維持することができる。よって、給電部28から受電部63への給電効率を、無人搬送車10の進行方向に拘わらず一定に維持することができる。
【0053】
また、給電面28a及び受電面63aの軸心A1は、連結ピン17の軸心A2と同軸をなしているので、無人搬送車10の旋回走行時に、連結ピン17回りの台車50の角度が変化したとしても、給電面28aと受電面63aとの対向部分の面積は一定に維持される。よって、給電部28から受電部63への給電効率を確実に一定化することができる。
【0054】
《実施形態3》
図6及び図7は実施形態3を示している。この実施形態3は、台車50の車輪構成、並びに、給電部28及び受電部63の構成が実施形態1とは異なっている。
【0055】
先ず、図6を参照して台車50の車輪構成を説明する。台車50は、左側駆動輪52、右側駆動輪53、前側従動輪54、及び後側従動輪55を有している。左側駆動輪52及び右側駆動輪53は、台車本体51の前後方向の中央部に、車幅方向の中央線C2を挟んで左右対称に配置されている。前側従動輪54及び後側従動輪55は、平面視で前記中央線C2上に配置されている。左側駆動輪52及び右側駆動輪53は、それぞれの車軸に連結された左側走行モータ60及び右側走行モータ61によって駆動される。
【0056】
次に、図6及び図7を参照して、給電部28及び受電部63の構成を説明する。無人搬送車10に設けられる給電部28は、左側給電部28Lと右側給電部28Rとで構成されている。台車50に設けられる受電部63は、左側給電部28Lから受電する左側受電部63Lと、右側給電部28Rから受電する右側受電部63Rとで構成されている。
【0057】
無人搬送車10における搬送車本体11の後側面には、図6に示すように、車幅方向に間隔を空けて並ぶ左側突出ダクト11c及び右側突出ダクト11dが突設されている。左側突出ダクト11c及び右側突出ダクト11dは平面視で車幅方向の中央線C1を挟んで左右対称に配置されており、左側給電部28Lは左側突出ダクト11cの先端部に固定され、右側給電部28Rは右側突出ダクト11dの先端部に固定されている。
【0058】
台車本体51の前側面には、車幅方向に間隔を空けて並ぶ左側突出ダクト51c及び右側突出ダクト51dが突設されている。左側突出ダクト51c及び右側突出ダクト51dは平面視で車幅方向の中央線C2を挟んで左右対称に配置されており、左側受電部63Lは左側突出ダクト51cの先端部に固定され、右側受電部63Rは右側突出ダクト51dの先端部に固定されている。
【0059】
各給電部28L,28Rの給電面28aと、各受電部63L,63Rの受電面63aとは、無人搬送車10が直進する状態(図6の状態)で、車両前後方向にて対向している。
【0060】
図7に示すように、受電装置62は、左側受電部63Lに接続された受電回路67と、右側受電部63Rに接続された受電回路68とを有している。そして、無人搬送車10の左側給電部28Lより台車50の左側受電部63Lに供給された電力は、受電回路67(図7参照)にて直流電力に変換された後、左側走行モータ60に供給される。また、無人搬送車10の右側給電部28Rより台車50の右側受電部63Rに供給された電力は、受電回路68にて直流電力に変換された後、右側走行モータ61に供給される。
【0061】
そして、給電制御部26は、給電制御の実行に際して、左側給電部28L及び右側給電部28Rの給電比率を制御することで、台車50の左側走行モータ60と右側走行モータ61との速度比を制御する。具体的には、給電制御部26は、無人搬送車10の走行状況を走行制御部25より取得して、取得した状況を基に、無人搬送車10が直進走行中(前進中又は後退中)であると判断した場合には、左側給電部28L及び右側給電部28Rの給電比率を1:1に設定することで台車50の左側走行モータ60と右側走行モータ61とを同じ速度で駆動する。一方、給電制御部26は、無人搬送車10が旋回走行中であると判断した場合には、台車50の旋回半径に応じて、左側給電部28L及び右側給電部28Rの給電電力を異ならせることで、台車50の左側走行モータ60と右側走行モータ61とに速度差を生じさせて左側駆動輪52と右側駆動輪53との旋回角速度を一致させる。
【0062】
このように本実施形態では、給電制御部26は、左側給電部28Lと右側給電部28Rとの給電比率を変更可能に構成されている。これにより、台車50の旋回走行時に、左側走行モータ60と右側走行モータ61との回転速度比を制御してその走行安定性を向上させることができる。
【0063】
《実施形態4》
図8及び図9は実施形態4を示している。この実施形態では、台車50の車幅方向(所定方向の一例)の傾き角を検出する傾き検出機構部35を備える点、及び、該傾き検出機構部35が検出した台車50の傾き角を基に給電制御部26による給電制御を実行する点が前記実施形態1とは異なっている。
【0064】
すなわち、本実施形態の無人搬送システム1は、傾き検出機構部35として、無人搬送車10に搭載された撮像装置29と、台車50に取付けられた所定標識30と、後述する制御装置24に設けられた基準画像記憶部32及び傾き角算出部33とを有している。
【0065】
所定標識30は、台車本体51の前側面における車幅方向の中央部に取付けられている。本例では、所定標識30は正方形状の図形標識とされている。撮像装置29は、例えばCCDカメラ等により構成されていて、搬送車本体11の後側面に取付けられている。そして、撮像装置29は、前記所定標識30の画像を撮像するとともに、撮像画像を前記傾き角算出部33へと送信する。尚、前記所定標識30は、正方形状に限ったものではなく、例えば三角形状や菱形状であってもよく、また図形標識に限らず、例えば文字標識などであってもよい。
【0066】
図9に示すように、制御装置24は、走行制御部25、給電制御部26、基準画像記憶部32、及び傾き角算出部33を有している。傾き角算出部33は、走行制御部25及び給電制御部26と同様にコンピュータプログラムによってその機能が実現され、基準画像記憶部32は、例えばROMなどの記憶媒体によって実現される。
【0067】
基準画像記憶部32には、台車50に車幅方向の傾きが生じていない状態で撮像装置29により撮像した所定標識30の画像が基準画像g2として予め記憶されている。
【0068】
前記傾き角算出部33は、図10に示すように、撮像装置29による撮像画像g1と、基準画像記憶部32に記憶された基準画像g2とを比較することで、台車50の車幅方向の傾き角(鉛直上方に対する車幅方向の傾き角)を算出する。具体的には、給電制御部26は、基準画像g2に対する撮像画像g1の傾き角θを算出し、算出した傾き角θに対応する台車50の車幅方向の傾き角を算出する。ここで、撮像画像g1の傾き角θに対応する前記台車50の傾き角は、例えば、幾何学的な理論計算により算出してもよいし、撮像画像g1の傾き角θと台車50の傾き角との相関関係を示す測定データを基に算出してもよい。後者の場合、測定データはROMなどの記憶部に予め記憶される。
【0069】
前記給電制御部26は、傾き角算出部33にて算出した台車50の車幅方向の傾き角が所定量以上である場合には、無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63への給電を実行する一方、前記傾き角が所定量未満である場合には、該給電部28から受電部63への給電を非実行とするように構成されている。
【0070】
この構成によれば、傾き検出機構部35により検出された台車50の傾き角が所定量以上である場合には、給電制御部26による制御の下、給電部28から台車50の受電部63に電力が供給される。供給された電力は受電回路64にて直流電力に変換された後、台車50の走行モータ75に供給され、電力供給を受けた走行モータ75によって駆動輪70が回転駆動される。このように、台車50の車幅方向の傾き角が所定量以上になると、台車50の駆動輪70が回転してその走行安定性が向上し、延いては台車50の傾き角を低減することができる。
【0071】
一方、傾き検出機構部35により検出された台車50の傾き角が前記所定量未満である場合には、給電制御部26は、無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63への給電を実行しない。したがって、台車50の傾き角が比較的小さい場合にまで台車50の走行モータ75が不必要に駆動されるのを防止し、延いては、無人搬送システム1全体の消費電力を低減することができる。
【0072】
《実施形態5》
図11及び図12は実施形態5を示している。この実施形態では、台車50に搭載されるアクチュエータが電磁ブレーキ69により構成される点、及び、制御装置24が重量推定部34を有する点が前記実施形態4とは異なっている。
【0073】
すなわち、本実施形態では、台車50には、実施形態1のように走行モータ75が設けられておらず、3つの車輪71~73が全て従動輪とされている。そして、前側の従動輪73には、台車50に減速力を付与する励磁作動式の電磁ブレーキ69が取付けられている。電磁ブレーキ69は、電磁コイル69aを有していて、該電磁コイル69aに通電することで生じる電磁力により摩擦部材(図示しない)を従動輪73に押付けて制動力を発生させる。尚、図11の例では、前側の従動輪73にのみ電磁ブレーキ69を取付けるようにしているが、これに限ったものではなく、3つの従動輪71~73の全てに電磁ブレーキ69を取付けるようにしてもよい。
【0074】
無人搬送車10の制御装置24は、台車50に積載された積載物の重量を推定する重量推定部34をさらに有している。
【0075】
重量推定部34は、台車50の旋回走行時に、前記傾き角算出部33により算出される台車50の車幅方向の傾き角を基に台車50の積載物の重量を推定する。この推定に際しては、例えば、台車50の積載物の重量と、台車50の回走行時における車幅方向の傾き角との相関関係を予め測定した相関データを使用するなどすればよい。尚、この他にも、例えば、無人搬送車10の直進走行時に発生する台車50の車幅方向の傾き角の最大値を傾き角算出部33により算出して、算出した傾き角の最大値を基に台車50の積載物の重量(積載重量)を推定するようにしてもよい。
【0076】
そして、給電制御部26は、重量推定部34により推定される台車50の積載重量が所定重量以上である場合には、走行制御部25により無人搬送車10を停車させる際に、無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63への給電を実行することで電磁コイル69aに通電して電磁ブレーキ69を作動させる一方、重量推定部34により推定された台車50の積載重量が前記所定重量未満である場合には、走行制御部25により無人搬送車10を停車させる際の前記給電部28から前記受電部63への給電を非実行とするように構成されている。
【0077】
したがって、本実施形態の無人搬送システム1によれば、台車50の積載重量が所定重量以上である場合には、無人搬送車10の停車に際して、無人搬送車10の給電部28から台車50の受電部63に電力が供給されて電磁ブレーキ69が作動する。これにより、台車50が停車する際にその慣性力により無人搬送車10の後部に衝突するのを防止することができる。一方、台車50の積載重量が所定重量未満である場合には、前記給電部28から受電部63への電力供給は行われない。よって、台車50の積載重量が比較的小さい場合にまで電磁ブレーキ69が不必要に作動してシステム全体の消費電力が増加するのを防止することができる。
【0078】
《他の実施形態》
前記実施形態では、台車50に搭載するアクチュエータの一例として走行モータ75、及び電磁ブレーキ69を挙げて説明したが、これに限ったものではない。アクチュエータは、例えば、台車50に搭載された作業ロボットや、物体を持ち上げる電動リフタなどであってもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、操作パネルを介して台車50の牽引モードが設定されている場合にのみ、給電制御部26による給電制御を実行するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、給電装置27と受電装置62とのそれぞれに無線通信部を設けて、無線通信部同士の通信(例えば赤外線通信)が確立した場合に、給電制御部26による給電制御を実行するようにしてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、給電部28から受電部63への給電方式として非接触給電方式を採用するようにしているが、これに限ったものではなく、接触給電方式を採用するようにしてもよい。
【0081】
また、本発明は前記各実施形態の任意の組み合わせを含む。
【0082】
尚、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる
【符号の説明】
【0083】
1 無人搬送システム
10 無人搬送車
12 左側駆動輪(無人搬送車の車輪)
13 右側駆動輪(無人搬送車の車輪)
19 左側走行モータ(走行駆動源)
20 右側走行モータ(走行駆動源)
21 蓄電部
25 走行制御部
26 給電制御部
28 給電部
28L 左側給電部
28R 右側給電部
28a 給電面
29 撮像装置(傾き検出機構部)
30 標識(傾き検出機構部)
32 基準画像記憶部(記憶部、傾き検出機構部)
33 傾き角算出部(傾き検出機構部)
34 重量推定部
35 傾き検出機構部
40 制御装置
50 台車
52 左側駆動輪(駆動輪)
53 右側駆動輪(駆動輪)
60 左側走行モータ(アクチュエータ)
61 右側走行モータ(アクチュエータ)
63 受電部
63L 左側受電部
63R 右側受電部
63a 受電面
69 電磁ブレーキ(アクチュエータ、制動アクチュエータ)
70 駆動輪
75 走行モータ(アクチュエータ)
g1 撮像画像
g2 基準画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12