(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088461
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】作業装置および作業装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20230620BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203200
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】保富 裕二 アンドレ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707KS03
3C707KS33
3C707KS35
3C707KS36
3C707KS37
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT11
3C707LW15
3C707MT03
3C707MT04
3C707WA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的シンプルかつ安価な構成で、作業用ロボットの高精度な高さ調整が可能な作業装置を提供する。
【解決手段】目標物に対し作業を行う作業ロボットと、前記作業ロボットを搭載するプラットフォームと、前記プラットフォームの高さを調整する高さ調整装置と、前記目標物を検出する検出装置と、前記検出装置が検出した前記目標物の位置が前記作業ロボットの動作範囲内にあるかを判定する判定装置と、前記作業ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、を備え、前記判定装置は、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っているかを判定し、動作範囲に入っている場合は、前記ロボット制御装置に前記目標物の位置に合わせて前記作業ロボットの動作軌道を計算するよう指示し、動作範囲に入っていない場合は、前記高さ調整装置に前記プラットフォームの高さを調整するよう指示することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物に対し作業を行う作業ロボットと、
前記作業ロボットを搭載するプラットフォームと、
前記プラットフォームの高さを調整する高さ調整装置と、
前記目標物を検出する検出装置と、
前記検出装置が検出した前記目標物の位置が前記作業ロボットの動作範囲内にあるかを判定する判定装置と、
前記作業ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、を備え、
前記判定装置は、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っているかを判定し、
動作範囲に入っている場合は、前記ロボット制御装置に前記目標物の位置に合わせて前記作業ロボットの動作軌道を計算するよう指示し、
動作範囲に入っていない場合は、前記高さ調整装置に前記プラットフォームの高さを調整するよう指示することを特徴とする作業装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記判定装置は、前記目標物の位置が前記作業ロボットの関節制限内であるか否か、または、前記目標物の位置が過去の移動実験で前記作業ロボットの衝突が発生した領域内にあるか否かを判定することを特徴とする作業装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記判定装置は、前記検出装置が検出した前記目標物の位置に基づいて、前記作業装置の構成要素および作業環境の構成要素を用いてシミュレーション環境を更新し、
前記作業ロボットの作業範囲内の前記目標物の位置特定を表す経路生成アルゴリズムを介して、前記シミュレーション環境内に衝突のない経路を生成することを特徴とする作業装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記判定装置は、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていないと判定した場合、前記検出装置の垂直測定能力以下のステップサイズで前記検出装置を移動させることを特徴とする作業装置。
【請求項5】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記判定装置は、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていないと判定した場合、前記作業ロボットの垂直可動範囲以下のステップサイズで前記プラットフォームを移動させることを特徴とする作業装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記目標物の検出時点から前記プラットフォームが完全に停止するまでの間に移動する前記プラットフォームの高さを事前に推定し、当該推定した高さに基づき前記検出装置による前記目標物の検出位置を補正することを特徴とする作業装置。
【請求項7】
請求項1に記載の作業装置であって、
エレベータの昇降路内に配置され、前記昇降路内の組立作業を行うことを特徴とする作業装置。
【請求項8】
請求項1に記載の作業装置であって、
窓付き建物の外壁に配置され、窓の四隅を前記目標物として検出し、窓拭き作業を行うことを特徴とする作業装置。
【請求項9】
請求項1に記載の作業装置であって、
前記判定装置は、前記作業ロボットの姿勢が過去の移動実験において前記ロボットの関節が過負荷により停止する手前の姿勢になっているか、または、前記ロボットに取り付けた負荷検出器からの信号により前記作業ロボットの関節が過負荷により停止する手前の姿勢になっているか、を判定することを特徴とする作業装置。
【請求項10】
(a)作業ロボットを搭載したプラットフォームを目標物の高さに移動するステップと、
(b)前記作業ロボットに取り付けられた検出装置により前記目標物を検出するステップと、
(c)前記検出装置が検出した前記目標物の位置が前記作業ロボットの動作範囲内に入っているかを判定するステップと、を有し、
前記(c)ステップにおいて、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていると判定した場合、前記目標物の位置に合わせて前記作業ロボットの動作軌道を計算し、
前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていないと判定した場合、前記プラットフォームの高さを調整することを特徴とする作業装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の作業装置の制御方法であって、
前記(b)ステップと前記(c)ステップとの間に、
(d)前記検出装置を前記目標物が検出された位置まで移動させ、前記目標物を再検出するステップを有することを特徴とする作業装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置の構成とその制御に係り、特に、作業装置に搭載された作業用ロボットの高さ調整に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直移動プラットフォーム上のロボットは、建設及び保守分野における組立・検査・保守作業を行うために使用される。このような作業には、これに限定されるものではないが、エレベータレールの自動設置や建物の外観のメンテナンス、内装ボードの壁への固定、ダム壁の検査、及び窓の拭き取りなどが含まれる。これらの作業を実行するために、通常、巻き取り機を使用してプラットフォームを移動し、その結果、ロボットが垂直に移動して、ロボットが処理する目標物の高さに到達する。
【0003】
高精度な作業を実行する場合や、作業環境の図面または3D概略図に基づいて予めプログラムされた軌道に従って作業を実行する場合は、高精度の高さ測定が必要とされる。
【0004】
しかしながら、一般的な巻き取り機は、ロボットの到達不足やロボットの特異点、障害物との衝突を避けるために必要なミリメートル単位の精度を満たしておらず、別の高さ測定方法が必要である。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、地上階に配置されたレーザ照射器と可動プラットフォームに設置されたレーザ反射板とで構成されるレーザ距離センサを用いる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、垂直に引き伸ばされたピアノ線にトレースされた目盛りを検出して、プラットフォームの高さを高精度で測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-7095号公報
【特許文献2】特開平4-55276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、レーザ距離センサの追加によるコスト増に加えて、レーザ照射器を最下階に配置し、それをロボットシステムの操作前にレーザ反射板に位置合わせする必要があり、システムの稼働準備のリードタイムが増加する。
【0009】
さらに、レーザ測定の精度はプラットフォームの高さと共に低下し、ロボットを操作できる最大の高さが制限される。
【0010】
また、特許文献2では、ロボットシステムのコスト増に加えて、特別に目盛りが付けられたピアノ線を使用する必要があり、システムがより複雑になる。
【0011】
さらに、ピアノ線が伸びると塑性変形し、高さ測定精度が低下する。また、ピアノ線は形状が細いため、目盛りの測定が困難である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、垂直移動プラットフォーム上に作業用ロボットが搭載された作業装置において、比較的シンプルかつ安価な構成で、作業用ロボットの高精度な高さ調整が可能な作業装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、目標物に対し作業を行う作業ロボットと、前記作業ロボットを搭載するプラットフォームと、前記プラットフォームの高さを調整する高さ調整装置と、前記目標物を検出する検出装置と、前記検出装置が検出した前記目標物の位置が前記作業ロボットの動作範囲内にあるかを判定する判定装置と、前記作業ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、を備え、前記判定装置は、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っているかを判定し、動作範囲に入っている場合は、前記ロボット制御装置に前記目標物の位置に合わせて前記作業ロボットの動作軌道を計算するよう指示し、動作範囲に入っていない場合は、前記高さ調整装置に前記プラットフォームの高さを調整するよう指示することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、(a)作業ロボットを搭載したプラットフォームを目標物の高さに移動するステップと、(b)前記作業ロボットに取り付けられた検出装置により前記目標物を検出するステップと、(c)前記検出装置が検出した前記目標物の位置が前記作業ロボットの動作範囲内に入っているかを判定するステップと、を有し、前記(c)ステップにおいて、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていると判定した場合、前記目標物の位置に合わせて前記作業ロボットの動作軌道を計算し、前記目標物が前記作業ロボットの動作範囲内に入っていないと判定した場合、前記プラットフォームの高さを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、垂直移動プラットフォーム上に作業用ロボットが搭載された作業装置において、比較的シンプルかつ安価な構成で、作業用ロボットの高精度な高さ調整が可能な作業装置及びその制御方法を実現することができる。
【0016】
これにより、垂直移動を伴う作業において、ロボットによる作業を最適に行うことができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係るエレベータの昇降路内に配置された組立システムの正面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る組み立て作業のためにロボットの高さを最適化する方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例2に係る組み立て作業のためにロボットの高さを最適化する方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例3に係る窓付き建物の外部に配置された組立システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0020】
図1から
図3を参照して、本発明の実施例1の作業装置とその制御方法について説明する。
【0021】
なお、本明細書では、作業装置として、主にエレベータの昇降路内で組み立て作業を実施する組立システムの例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述したように、建物の外観のメンテナンスや内装ボードの壁への固定、ダム壁の検査、窓の拭き取りなどの作業装置にも適用することができる。
【0022】
図1は、本実施例のエレベータの昇降路101内に配置された組立システム100の正面図である。
図2は、
図1の組立システム100の上面図である。
図3は、本実施例の組み立て作業のためにロボットの高さを最適化する方法を示すフローチャートである。
【0023】
本実施例の組立システム100は、
図1及び
図2に示すように、組み立て作業を行うためにエレベータの昇降路101内に配置されている。組立システム100は、少なくとも2本のロープ3によって吊り下げられた垂直移動プラットフォーム2の上部に配置されたロボットアーム1を備える。
【0024】
ロープ3は、それぞれ少なくとも1台の巻き取り機4によって巻き取りまたは引き延ばしが行われ、これにより、垂直移動プラットフォーム2が上下方向に移動することができる。巻き取り機4の少なくとも1台は、垂直移動プラットフォーム2の高さの大まかな推定を可能にする絶対位置検出器(図示せず)を備えている。
【0025】
なお、ロープ3の伸縮や劣化により、垂直移動プラットフォーム2の高さの推定精度が低下するため、絶対位置検出器の値を垂直移動プラットフォーム2の高さに正確に関連付けることはできない。
【0026】
X軸及びY軸における垂直移動プラットフォーム2の向きは、傾斜センサ5によって測定される。この向きは、垂直移動プラットフォーム2を水平方向に保つために巻き取り機4に巻き取りコマンドを送信する巻き取り機制御装置12によって調整される。
【0027】
また、組立システム100は、ロボット制御装置11と、巻き取り機制御装置12と、ロボット動作範囲判定装置13(以下、単に判定装置13と称する)と、作業計画装置14とを含むシステム制御装置10を備えている。
【0028】
ロボット制御装置11は、作業計画装置14によって作成された計画に従ってロボットアームを移動させるために、制御コマンドをロボットアームに送信する。
【0029】
作業計画装置14は、巻き取り機制御装置12によって駆動される巻き取り機4の動作を計画する。
【0030】
判定装置13は、ロボットが到達できない領域に到達することなく組立作業を実行できる高さであるか、ロボットが特異点に位置する状態であるか、またはロボットが周囲の環境と衝突するかを判定する。
【0031】
組立システム100が配置されているエレベータの昇降路101は、組立システム100を取り囲む壁6と、下方位置で地面に固定されている2つのレール7と、レール7に固定されている目標物8とを備えている。
【0032】
目標物8は、ブラケット8aと、クリップボルト8bと、クリップ8cと、ナット8dとを含んで構成されている。
【0033】
クリップボルト8bがレール7のエッジの一方の側にクリップ8cを押し付け、レール7のエッジの反対側においてナット8dをブラケット8aの表面に向かってねじ込むことにより、レール7のエッジの反対側にあるブラケット8aをレール7に固定する。クリップボルト8bは、反対側のナット8dと連結するために、ブラケット8aに設けられた穴(図示せず)を貫通する。
【0034】
なお、ブラケット8aは、クリップボルト8b及びナット8dによってレール7に固定される以外にも、例えば、半田付けによって固定しても良い。
【0035】
ロボットアーム1は、組立システム100の外部の目標物8を検出するために使用される目標物検出装置9(以下、単に目標検出装置9と呼ぶ)を備える。
【0036】
本実施例では、所定の目標物を検出するための画像処理能力を備えたカメラが、目標検出装置9として使用される。なお、カメラの代わりに、目標検出機能を備えた他のセンサを使用することもできる。例えば、物体検出用のアルゴリズムを備えたレーザプロファイラや、レーザスキャナ、超音波距離センサを、カメラの代わりに使用することができる。
【0037】
また、本実施例では、組立システム100はエレベータの昇降路101内で使用されているが、本発明の適用範囲はエレベータの昇降路に限定されない。本発明は、建物の外装や、ダム壁に近接した場所、内装ボードを壁に固定する必要のある建設施設などにも適用可能である。
【0038】
本実施例の組立システム100によって実施される組立作業には、目標物8の取り扱いに関する作業も含まれる。取り扱い作業の種類は、ロボットの動作範囲の判断に影響を与えるが、本発明の概念において重要ではない。
【0039】
しかしながら、本発明の説明を分かり易くするために、ここでは取り扱い作業を、クリップボルト8bの締め付け解除、ブラケット8aの位置の部分的なシフト、及びクリップボルト8bの締め付けを含む一連の作業として定義する。
【0040】
この作業は、一端がレール7に固定されているブラケット8aを、壁面上のブラケット固定が可能な壁6上の高さ(例えば、表面の凹凸のない壁の高さ)に移動させるために行われる。
【0041】
図1及び
図2には図示していないが、この作業を行うには、少なくとも、ナットランナなどのクリップボルトを緩めるための工具と、エアグリッパなどのブラケットを把持するための工具が必要である。
【0042】
図3に、本実施例において、組立作業を実施するためにロボットの高さを最適化する方法のフローチャートを示す。
【0043】
先ず、ステップS30において、垂直移動プラットフォーム2を目標物8に近い所定の高さに移動させる。
【0044】
次に、ステップS31において、目標検出装置9(以下、カメラとも称する)を予め推定した目標物8の位置に移動させる。
【0045】
続いて、ステップS32において、カメラ9による目標物8の検出を試行する。
【0046】
次に、ステップS33において、目標物8の検出可否を判定する。
【0047】
巻き取り機4の不正確さや目標物8の手動配置による高さの不正確さのために、目標物8がカメラ9の視野15内にない可能性がある。その場合(No)、カメラ9を新たな検索位置に移動させ、ステップS32に戻り、カメラ9による目標物8の検出を繰り返す。
【0048】
一方、ステップS33において、カメラ9により目標物8を検出した場合(Yes)は、ステップS35に進み、目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にあるかどうかをチェックする。
【0049】
ステップS35において、目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にあると判定された場合(Yes)、ステップS37に進み、目標物8の高さに適応するように、ロボットアーム1を含むロボットアセンブリの軌道を新しい目標位置に調整し、組立作業を実施する。
【0050】
一方、ステップS35において、目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にないと判定された場合(No)、ステップS36に進み、垂直移動プラットフォーム2を新たな高さに移動させ、ステップS31に戻り、ステップS31以降の動作を繰り返す。
【0051】
なお、垂直移動プラットフォーム2の所定の初期高さ、及び予め推定された目標物8の探索位置は、エレベータの昇降路101の3Dデータまたは2D図面によって得ることができる。
【0052】
また、例えば、目標物8が手動で配置された場合には、目標物8の高さを事前に直接測定することによっても得ることができる。
【0053】
垂直移動プラットフォーム2の初期高さを考慮する際には、目標検出装置(カメラ)9の死角も考慮されるべきである。
【0054】
死角の例としては、カメラ9と目標物8との間にロープ3や他の物体があるようなカメラ9の位置である。
【0055】
目標物8を検出するためには、例えば、同じ目標物8の事前に撮影された画像から画像処理を介して目標物8の特徴を抽出し、次いで、それらの抽出された特徴に一致する特徴を目標物8の検索中に新たに撮影した画像から検索することができる。
【0056】
一致する特徴が見つかった場合、それは目標物8が見つかったことを意味する。画像の特徴を抽出するための画像処理方法の例には、テンプレートマッチング及びパターン検出が挙げられる。また、ニューラルネットワークの使用も考えられる。
【0057】
目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にあるかどうかを判定するために、判定装置13は、(1)目標物8がロボットアーム1の関節制限内にあるかどうか、(2)ロボットアーム1の仕様に従ってロボットの特異点が発生する可能性のあるロボット構成を必要とする位置にないかどうか、(3)以前の経験でロボットアーム1の衝突が発生した位置にないかどうか、(4)(1)~(3)に含まれない場合であっても、ロボットの姿勢によりロボットアーム1の関節が過負荷により壊れる位置にないか、を簡単にチェックすることができる。
【0058】
これらの経験を得るには、ロボットアーム1を様々な高さに移動し、作業をシミュレートして衝突の可能性を確認する必要がある。そして、衝突の可能性のある情報は、判定装置13によるアクセスのためにデータベース(図示せず)に格納する。
【0059】
(4)の例としては、例えば、ロボットアーム1がある対象物を把持しようとした時に、ロボットアーム1の重心位置が変化しプラットフォーム2が変異および回転することで、ロボットアーム1のグリッパー位置が変異し、対象物をつかめなくなったり、衝突したりする問題を挙げられる。また、ロボットアームが対象物をつかんでから、対象物を扱っている時、ロボットの姿勢によりプラットフォーム2がロボットアーム1の関節に負担がかかる動きをしてしまい、ロボットアーム1が関節過負荷で壊れたり、止まったりする問題も挙げられる。
【0060】
過負荷により停止するロボットアーム1の姿勢であるか否かを判断するには、過去の運転試験のデータもしくはセンサにより過負荷手前の負荷を検出することである。負荷検出センサとしては、ロボットアーム1の各関節での電流を測定する電流センサ、ロボットアーム1の各関節でのトルクを測定するトルクセンサ、ロボットアーム1手先に取り付け、ロボットアーム1手先の力とモーメントを測定する力覚センサを挙げられる。
【0061】
目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にあるか否かを判定するための別の方法は、(1)組立システム100の全ての構成要素並びに作業環境(つまり、エレベータの昇降路101)の全ての構成要素と共にシミュレーション環境を作ること、(2)カメラ9によって得られた目標物8の位置に基づいて環境を更新すること、(3)例えば、高速探索ランダムツリー(RRT)などのグラフベースの軌道検索アルゴリズムを介して、目標物8を操作するための衝突のない経路を見つけようとすることである。
【0062】
経路が見つかった場合は、目標物8はロボットアーム1の作業範囲内にあると判定され、それ以外の場合は、目標物8はロボットアーム1の作業範囲内にないと判定される。 最初の探索位置に目標物8が見つからない場合に、目標物8を探索するための新しいカメラ9の位置は、ロボットアーム1の作業範囲内にあり、カメラ9によって測定されていない任意の位置である可能性がある。
【0063】
目標物8を効率的に探索するために、ロボットアーム1は、カメラ9の水平方向または垂直方向の視野15以下のステップサイズで移動させることができる。
【0064】
横方向(
図1のY軸)における目標物8の位置の推定が常に正確であることを考慮すると、目標物8を探索するための効率的なアプローチは、ロボットアーム1がその到達限界に達することなく、カメラ9の垂直視野に等しいステップサイズでより長く動くことができる方向(上向きまたは下向き)に移動することである。
【0065】
一方向への連続した探索ステップの後に到達限界に達した場合、効率的なアプローチは、ロボットアーム1を最初の探索位置に戻し、他の方向への探索を継続することである。
【0066】
このようにして、ロボットアーム1は、垂直方向の全ての探索領域をカバーすることができ、標的物8が見つからない場合には、判定装置13は、標的物8がロボットアーム1の作業範囲内にないことを確実に判定することができる。
【0067】
検出された目標物8の位置が、ロボットアーム1の作業範囲内にないと判断された場合の新しい垂直移動プラットフォーム2の高さは、ロボットアーム1に対して目標物8が所定の最適な作業位置にあるようにする方向及びステップサイズである可能性がある。この最適な位置は、組立システム100を用いた事前の実験によって得ることができる。
【0068】
目標物8が見つからなかった場合の新しい垂直移動プラットフォーム2の高さは、ロボットアーム1の垂直作業範囲に等しいステップサイズで、現在のプラットフォーム位置から上方または下方にシフトされた高さである可能性がある。
【0069】
目標物8が検出されなかった理由に関する経験がなければ、探索方向はランダムに選択することができる。
【0070】
上述の方法により、組立システム100のロボットアーム1を、組立作業を最適化する高さに配置することができる。
カメラ9が目標物8を検出しなかった場合(No)、ステップS40に戻り、垂直移動プラットフォーム2の移動方向に応じて、上限または下限に達するまで垂直移動プラットフォーム2を移動し続ける。
続いて、ステップS43において、カメラ9を目標物8が検出された位置まで移動させ、目標物8をより精密に検出する。つまり、目標物8を再検出するために、より良い検出高さに垂直移動プラットフォーム2及びロボットアーム1を移動させる。
ステップS44において、目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にあると判定された場合(Yes)、ステップS46に進み、目標物8の高さに適応するように、ロボットアーム1を含むロボットアセンブリの軌道を新しい目標位置に調整し、組立作業を実施する。
一方、ステップS44において、目標物8がロボットアーム1の作業範囲内にないと判定された場合(No)、ステップS45に進み、垂直移動プラットフォーム2を新たな(異なる)高さに移動させた後、ステップS43に戻り、ステップS43以降の動作を繰り返す。
ステップS43における目標物8の再検出は、垂直移動プラットフォーム2を移動させている間の目標物8の検出が垂直移動プラットフォーム2の動きに起因する画像取得エラーを受ける可能性があるために行われる。
再検出の別の理由は、目標物8が検出されてから、垂直移動プラットフォーム2が完全に停止するまでに遅延があるためである。したがって、垂直移動プラットフォーム2が停止した後、目標物8の位置は、目標物8が検出された時と同じではない。
上記の遅延の事前推定とこの遅延の間に移動する高さの推定を行い、目標物8の位置推定の高さ誤差を補償することができる。しかしながら、垂直移動プラットフォーム2の静止状態での目標物8の再検出は、さらに正確である。
この遅延の間に移動した高さを使用して、検出された目標物8の位置の高さ誤差を補償する場合、目標物8を再検出するためにカメラ9が移動する際に、目標物8がカメラ9の視野15内にあることを保証することができる。
但し、この方法は、目標物8が動いていることが検出されるため、検出エラーが発生しやすくなる。別の欠点は、使用されるカメラ9が、垂直移動プラットフォーム2が移動する全ての高さを捕捉するのに十分な高いサンプリング周波数を有していなければならないことであり、これは、式(1)によって計算することができる。
ここで、fはサンプリング周波数、Vplatfはプラットフォーム垂直方向の最大速度、dVFOV’はカメラ9の垂直視野の寸法である。なお、他のセンサを用いた場合には、センサの測定範囲をdVFOVに置き換えることができる。