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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088473
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両用電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/231 20210101AFI20230620BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230620BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20230620BHJP
【FI】
H01M50/231
B60K1/04 Z ZHV
H01M50/249
H01M50/227
H01M50/233
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203220
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜介
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB18
3D235BB20
3D235BB25
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235HH44
5H040AA01
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC05
5H040JJ04
5H040LL06
5H040LL10
5H040NN00
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】軽量化により車両の電費の向上に貢献することが可能な電池ユニットを提供する。
【解決手段】
電池パック10は、電池スタック13と、電池スタック13を車両下方側から受けつつ、電池スタック13が搭載されるトレイ11と、電池スタック13が搭載されたトレイ11を、車両上方側から覆うアッパーカバー12と、を備える。トレイ11は、コア層と、コア層に対して車両上方側で積層する上側スキン層と、コア層に対して車両下方側で積層する下側スキン層と、により形成されている。上側スキン層及び下側スキン層を形成する繊維強化樹脂は、コア層を形成する繊維強化樹脂よりも含有される樹脂長が長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池スタックと、
前記電池スタックを車両下方側から支持する下側ケースと、
前記電池スタックを支持する前記下側ケースを、車両上方側から覆う上側ケースと、
を備える車両用電池ユニットであって、
前記下側ケースは、
繊維を含有する繊維強化樹脂で形成されたコア層と、
前記コア層に対して車両上方側で積層し、繊維強化樹脂で形成された上側スキン層と、
前記コア層に対して車両下方側で積層し、繊維強化樹脂で形成された下側スキン層と、
を有し、
前記上側スキン層及び前記下側スキン層を形成する繊維強化樹脂は、前記コア層を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の樹脂長が長い、車両用電池ユニット。
【請求項2】
前記上側スキン層及び前記下側スキン層を形成する繊維強化樹脂は、前記コア層を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の割合が大きい請求項1に記載の車両用電池ユニット。
【請求項3】
前記コア層における車両上下方向での厚み寸法は、前記上側スキン層及び前記下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい請求項1又は2に記載の車両用電池ユニット。
【請求項4】
前記上側スキン層における車両上下方向での厚み寸法は、前記下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用電池ユニット。
【請求項5】
前記下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法は、前記上側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用電池ユニット。
【請求項6】
前記上側スキン層及び前記下側スキン層の繊維強化樹脂に含まれる繊維は、連続繊維及び長繊維の少なくともいずれかである請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用電池ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電池セルの積層体である電池スタックをケースに収容した車両用電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電池ユニットから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを駆動源とするハイブリッド車両等が存在する。このようなモータを駆動源する電気自動車やハイブリッド車両の電源としては、設置スペースが制限される上に高電圧及び高エネルギー容量が要求されることから、複数の電池セルを積層した電池スタックを有する電池ユニットが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-201112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の重量を軽量化することで、電費を向上させることができる。しかし、電池ユニットは、電池スタックの重量や、この電池スタックからの荷重を支持するための金属製のケース自体の重量が重く、まだまだ軽量化の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、軽量化により車両の電費の向上に貢献することが可能な車両用電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る車両用電池ユニットでは、電池スタックと、電池スタックを車両下方側から支持する下側ケースと、電池スタックを支持する前記下側ケースを、車両上方側から覆う上側ケースと、を備える。車両用電池ユニットの下側ケースは、繊維を含有する繊維強化樹脂で形成されたコア層と、コア層に対して車両上方側で積層し、繊維強化樹脂で形成された上側スキン層と、コア層に対して車両下方側で積層し、繊維強化樹脂で形成された下側スキン層と、を有し、上側スキン層及び下側スキン層を形成する繊維強化樹脂は、コア層を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の樹脂長が長い。
【0007】
請求項2に係る車両用電池ユニットでは、上側スキン層及び下側スキン層を形成する繊維強化樹脂は、コア層を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の割合が大きい。
【0008】
請求項3に係る車両用電池ユニットでは、コア層における車両上下方向での厚み寸法は、上側スキン層及び下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい。
【0009】
請求項4に係る車両用電池ユニットでは、上側スキン層における車両上下方向での厚み寸法は、下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい。
【0010】
請求項5に係る車両用電池ユニットでは、下側スキン層における車両上下方向での厚み寸法は、上側スキン層における車両上下方向での厚み寸法よりも大きい。
【0011】
請求項6に係る車両用電池ユニットでは、上側スキン層及び下側スキン層の繊維強化樹脂に含まれる繊維は、連続繊維及び長繊維の少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池ユニットを軽量化し、ひいては車両の電費の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電池ユニットを備える車両を説明する図である。
図2】電池ユニットの分解斜視図である。
図3】電池ユニットを側面から見た断面図である。
図4】トレイの断面図である。
図5】トレイに加わる荷重を説明する図である。
図6】車両走行時にトレイに加わる荷重を説明する図である。
図7】第2実施形態に係るトレイの断面図である。
図8】第2実施形態に係るトレイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両用電池ユニットの一実施形態であるバッテリパックについて説明する。以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0015】
以下の説明では、バッテリパックを、車両に搭載した状態での方向を用いて説明する。具体的には、車両100の前方を「車両前方」と記載し、後方を「車両後方」と記載し、車両の上方を「車両上方」と記載し、車両の下方を「車両下方」と記載する。また、重力方向を、「車両上下方向」と記載し、車両の左右方向を「車幅方向」と記載する。各図において、「車両前方」を「前方」と、「車両後方」を「後方」と、「車両上方」を「上方」、「車両後方」を「下方」と簡略化して記載している。また、「車幅方向」の一方を「左」、他方を「右」と記載している。
【0016】
(1-1)第1実施形態の概略
図1で表されるように、車両100は、モータ90を駆動源とする電気自動車であり、バッテリパック10から供給される電力に基づいてモータ90を駆動することで走行する。バッテリパック10は、車両100において、車室91よりも車両下方側の位置である床下に組付けられている。具体的には、バッテリパック10は、底面(後述するトレイ11の底面)が、車両100の床面を形成するフロアパネル92よりも車両下方側、又はフロアパネル92の底面と同じ高さとなるように、車両100に固定されている。
【0017】
なお、車両100は、モータ90を駆動源とする電気自動車に限らず、モータ90とエンジンとを駆動源とするハイブリッド車両であってもよい。
【0018】
図2図3で表されるように、バッテリパック10は、トレイ11と、アッパーカバー12と、電池スタック13と、バッテリ監視モジュール14と、冷却部材15とを備えている。トレイ11とアッパーカバー12とは、電池スタック13を収容可能な収容空間Sを有するケースとして機能する。バッテリパック10は、トレイ11とアッパーカバー12とで形成される収容空間S内に、複数の電池スタック13と、冷却部材15とを収容している。なお、本実施形態では、バッテリ監視モジュール14は、収容空間Sの外に配置されているが、バッテリ監視モジュール14は、収容空間S内に配置されていてもよい。
【0019】
電池スタック13は、複数の電池セルを積層して構成された直方体形状であり、例えば、積層方向が車両幅方向となるように電池スタック13の内部に収容されている。本実施形態では、6つの電池スタック13が収容空間Sに収容されている。具体的には、トレイ11において、車両後方側には、電池スタック13が上下二段に収容されており、車両前方側には、電池スタック13が一段に収容されている。電池スタック13は、リチウムイオン電池セルやニッケル水素電池セルを積層して構成されたものや、水素電池といった燃料電池セルを積層して構成されたものを用いることができる。これ以外にも、電解質を硫化物や酸化物といった個体により構成した全個体電池セルを用いてもよい。
【0020】
バッテリパック10が備える電池スタック13の数は、バッテリパック10に要求される定格電圧や容量に応じて、その数は適宜変更されればよい。そのため、バッテリパック10が有する電池スタック13の数は、6個に限定されず、例えば、1~20個の範囲の数とすることができる。
【0021】
トレイ11は、複数の電池スタック13を車両下方側から支持する。トレイ11は、電池スタック13が載置されて固定される載置面111を車両上方側に有する平板状の部材である。本実施形態では、トレイ11は、バッテリパック10が車両100に組付けられた場合に、車両下方側の面112が、車両100の底面の一部となる。トレイ11は、繊維強化樹脂(FRP)により形成されている。トレイ11の詳細な構成については後述する。本実施形態では、トレイ11が、下側ケースの一例である。
【0022】
アッパーカバー12は、車両下方側に開口を有する部材である。具体的には、アッパーカバー12は、車両前方側の部位である前側カバー部121と、車両後方側の部位である後側カバー部122とにより形成されている。前側カバー部121は、上面視において矩形状であり、一段に配置された電池スタック13を収容可能な高さ寸法H1を有する部位である。後側カバー部122は、上面視において矩形状であり、二段に配置された電池スタック13を収容可能な高さ寸法H2を有する部位である。言い換えると、後側カバー部122の高さ寸法H2は、前側カバー部121の高さ寸法H1よりも大きくなっており、アッパーカバー12の内部に形成される収容空間Sは、車両後方側の空間が車両前方側の空間よりも広くなっている。本実施形態では、アッパーカバー12が、上側ケースの一例である。
【0023】
アッパーカバー12は、トレイ11と異なり、電池スタック13からの荷重を支持しないため、トレイ11よりも軽量なものを用いることができる。例えば、アッパーカバー12は、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂により形成することができる。例えば、アッパーカバー12に用いられる熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンを用いることができる。アッパーカバー12に用いられる熱硬化性樹脂として、エポキシ、ビニルエステル、フェノール、不飽和ポリエステル、ポリイミド、ビスマレイドを用いることができる。
【0024】
アッパーカバー12に対して車両後方側には、バッテリ監視モジュール14が配置されている。バッテリ監視モジュール14は、各電池スタック13の電圧、電流、温度を管理するモジュールである。バッテリ監視モジュール14は、車両100内において不図示のバッテリECUに接続されている。電池スタック13と、トレイ11との間には、冷却部材15が配置されている。冷却部材15は、電池スタック13の温度上昇を抑制するための部材である。
【0025】
次に、本実施形態のトレイ11の構成について説明する。図4は、図2で示すトレイ11のA-A断面での断面図である。トレイ11は、3つの層が積層して構成されており、具体的には、コア層20と、上側スキン層21と、下側スキン層22とが積層して構成されている。
【0026】
コア層20は、トレイ11において車両上下方向における中心層を形成し、繊維強化樹脂で形成された層である。コア層20を形成する繊維強化樹脂は、母材を樹脂とし、含有される強化用樹脂を短繊維とする樹脂である。
【0027】
コア層20を形成する繊維強化樹脂は、母材を熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂とし、含有される繊維を短繊維とするものを用いることができる。短繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、スチール繊維、バサルト繊維の他、アラミド繊維やポリエチレン繊維等の有機繊維を用いることができる。母材に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンを用いることができる。母材に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ、ビニルエステル、フェノール、不飽和ポリエステル、ポリイミド、ビスマレイドを用いることができる。
【0028】
上側スキン層21は、コア層20に対して車両上方側で積層する層である。下側スキン層22は、コア層20に対して車両下方側で積層する層である。上側スキン層21及び下側スキン層22を形成する繊維強化樹脂は、母材を樹脂とし、含有される強化用繊維を長繊維又は連続繊維とする樹脂である。言い換えると、上側スキン層21及び下側スキン層22を形成する繊維強化樹脂は、コア層20を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の繊維長が長い。以下では、上側スキン層21と下側スキン層22とを総称して記載するときは、「各スキン層21,22」と記載する。
【0029】
各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂は、母材として熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂とし、含有される繊維を長繊維又は連続繊維とするものを用いることができる。長繊維又は連続繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、スチール繊維、バサルト繊維の他、アラミド繊維やポリエチレン繊維等の有機繊維を用いることができる。この場合において、コア層20の繊維強化樹脂に含まれる短繊維と、各スキン層21,22の繊維強化樹脂に含まれる長繊維又は連続繊維とは、異なる繊維であってもよいし、繊維長が異なるだけで同じ種類の繊維であってもよい。なお、母材である、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂は、コア層20と同様のものを用いることができる。
【0030】
各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂は、コア層20を形成する繊維強化樹脂よりも繊維の含有割合が高い。言い換えると、コア層20は、各スキン層21,22よりも、繊維の含有割合が低く、各スキン層21,22よりも比重が低い層である。
【0031】
例えば、各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂に含有される連続繊維又は長繊維の含有割合は、基準値(例えば、30[%])を基準とした場合に、この基準値よりも高い値を用いることができる。各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂において、繊維の含有割合の上限値は、トレイ11に要求される性能に応じて適宜設定すればよい。例えば、繊維強化樹脂として、連続繊維である炭素繊維を含有する場合、含有割合の上限値は、40[%]よりも高く、99[%]よりも低い値となる。これに対して、コア層20を形成する繊維強化樹脂に含有される短繊維の含有割合は、0[%]以上、かつ60[%]未満とすることができる。
【0032】
トレイ11において、コア層20における車両上下方向での厚み寸法H11は、各スキン層21,22における車両上下方向での各厚み寸法H12,H13よりも大きい。本実施形態では、コア層20の厚み寸法H11は、2~100[mm]でありる。上側スキン層21及び下側スキン層22の厚み寸法H12,H13は略同寸法であり、例えば、1~50[mm]とすることができる。
【0033】
(1-2)車両停止時に、トレイ11に加えられる荷重とトレイ11との関係
以上のように構成されたバッテリパック10を車両100に組付けた場合の、トレイ11に加えられる荷重について図5を参照して説明する。
【0034】
バッテリパック10のトレイ11には、複数の電池スタック13の重量に応じて車両上方から車両下方に向けた荷重F1が加えられている。図5では、複数の電池スタック13からの荷重F1を矢印により示している。各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂は、長繊維又は連続繊維が含有されており強度が高い。そのため、各スキン層21,22は、複数の電池スタック13からの荷重F1が加えられても、車両上下方向に変形しにくい。また、コア層20は、上側スキン層21と下側スキン層22とに挟まれることで、強度が高い各スキン層21,22により形状が保持され、複数の電池スタック13からの荷重F1が加えられても、車両上下方向に変形しにくい。トレイ11は、樹脂により形成されているため、金属で形成されるものよりも重量が軽い。更には、電池スタック13からの荷重F1に対して強度が高く、上下方向に変形しにくい。
【0035】
(1-3)車両走行時に、トレイ11に加えられる荷重とトレイ11との関係
次に、車両100の走行時における、トレイ11と、加えられる荷重との関係を、図6を用いて説明する。なお、図6では記載していないが、車両走行時においても、トレイ11には、図5で表したのと同様、複数の電池スタック13からの荷重F1が加えられている。
【0036】
バッテリパック10は、車両100の下方に取り付けられているため、トレイ11のうち、下側スキン層22における車両下方側の表面が、車両100の底面の一部となる。そのため、車両100の走行時において、縁石等の干渉物が下側スキン層22の表面に衝突する場合がある。この場合において、図6で表されるように、トレイ11には、干渉物との干渉によって車両下方側から車両上方側に向けた衝撃荷重F2が、下側スキン層22に加えられる。
【0037】
下側スキン層22を形成する繊維強化樹脂は、強度が強く、衝撃荷重F2が加えられても破損しにくい。そのため、下側スキン層22は、破損することなく、加えられた衝撃荷重F2をコア層20に伝達させる。コア層20を形成する繊維強化樹脂は、繊維の含有割合が各スキン層21,22よりも低く、比重が各スキン層21,22よりも低い。そのため、コア層20は、衝撃荷重F2のエネルギーを吸収し易く、衝撃荷重F2を緩和させることができる。
【0038】
その後、コア層20により緩和された衝撃荷重F2は、上側スキン層21を経て電池スタック13に加わることとなる。このとき、衝撃荷重F2のエネルギーは、コア層20により吸収されているため、電池スタック13に加わる衝撃荷重F2は、下側スキン層22に加えられたときよりも緩和されており、衝撃荷重F2から電池スタック13を保護することができる。
【0039】
(1-4)作用・効果
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
バッテリパック10は、電池スタック13と、電池スタック13を車両下方側から支持するトレイ11と、トレイ11を、車両上方側から覆うアッパーカバー12と、を備えている。トレイ11は、コア層20と、コア層20に対して車両上方側で積層する上側スキン層21と、コア層に対して車両下方側で積層する下側スキン層22と、で形成されている。上側スキン層21及び下側スキン層22を形成する繊維強化樹脂は、コア層20を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の樹脂長が長い。これにより、アッパーカバー12及びトレイ11を樹脂により構成することで、バッテリパック10の重量を、アッパーカバー12及びトレイ11を金属で構成する場合よりも軽量化することができる。また、トレイ11は、強度が高い各スキン層21,22によりコア層20を挟んだ積層構造であるため、電池スタック13からの荷重F1により車両上下方向に変形しにくい。これにより、トレイ全体での車両上下方向での厚み寸法の増加を抑制しつつ、各スキン層21,22の強度を所望の強度に維持することができる。
【0040】
各スキン層21,22を形成する繊維強化樹脂は、コア層20を形成する繊維強化樹脂よりも含有される繊維の割合が大きい。これにより、車両100の走行時において、干渉物とトレイ11とが干渉することで車両下方側から衝撃荷重F2が加えられても、比重が各スキン層21,22よりも低いコア層20により、衝撃荷重F2のエネルギーを吸収し、電池スタック13に加わる衝撃荷重F2を緩和することができる。
【0041】
コア層20における車両上下方向での厚み寸法H11は、各スキン層21,22における車両上下方向での厚み寸法H12,H13よりも大きい。これにより、トレイ全体での厚み寸法に対する、コア層20の厚み寸法H11を大きくすることができ、トレイ全体での重量の増加を抑制しつつ、電池スタック13を衝撃荷重F2から保護する機能を向上させることができる。
【0042】
(2-1)第2実施形態
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号を付した箇所は、同一の箇所であり、その説明は繰り返さない。
【0043】
上述の第1実施形態では、トレイ11において上側スキン層21と下側スキン層22とは、車両上下方向での厚み寸法が同じ寸法であった。これに代えて、本実施形態では、上側スキン層21と下側スキン層22とは、車両上下方向での厚み寸法が異なっている。
【0044】
図7は、本実施形態での図2で示すトレイ11のA-A断面での断面図である。本実施形態においても、コア層20における車両上下方向での厚み寸法H21は、各スキン層21,22における車両上下方向での各厚み寸法H22,H23よりも大きい。一方、上側スキン層21における車両上下方向での厚み寸法H22は、下側スキン層22における車両上下方向での厚み寸法H23よりも大きい。
【0045】
上記構成のバッテリパック10では、トレイ11には、複数の電池スタック13による車両上方から車両下方に向けた荷重が加えられる。本実施形態で示すトレイ11では、トレイ全体での厚み寸法(=H21+H22+H23)に占める、上側スキン層21の厚み寸法H22が、第1実施形態で示すトレイ11よりも大きくなる。これにより、トレイ全体での厚み寸法の増加を抑制しつつ、複数の電池スタック13からの荷重F1を直接受ける上側スキン層21の厚み寸法H22を大きくすることができる。その結果、トレイ11全体での重量の増加を最小限に留めつつ、トレイ11の強度や形状の安定性を所望のものに維持することができる。
【0046】
(2-2)第2実施形態の変形例
上側スキン層21と下側スキン層22との車両上下方向での厚み寸法を異ならせる場合において、下側スキン層22の厚み寸法を、上側スキン層21の厚み寸法よりも大きくしてもよい。図8で表されるトレイ11では、下側スキン層22の車両上下方向での厚み寸法H33は、上側スキン層21の車両上下方向での厚み寸法H32よりも大きくなっている。これにより、トレイ全体での厚み寸法(H31+H32+H33)の増加を抑制しつつ、下側スキン層22の厚み寸法H33を大きくすることができる。その結果、トレイ11全体での重量の増加を最小限に留めつつ、車両走行時に、縁石等からの衝撃荷重F2が直接加えられる下側スキン層22の強度を高めることができる。
【0047】
(3)その他の実施形態
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、トレイ11は、コア層20、上側スキン層21、下側スキン層22の3層により形成されていた。これに代えて、トレイ11は、コア層20と、各スキン層21,22との間に、樹脂で形成された層が積層されることで、3層以上の層により形成されていてもよい。
【0048】
トレイ11の形状は、電池スタック13を車両下方側から支持できる構成であればよく、平板形状に限定されない。例えば、トレイ11は、底の浅い容器形状であってもよい。具体的には、トレイ11は、複数の電池スタック13が載置される載置面を有する底板部と、底板部の各縁から車両上方側に延びる側壁とを有することで、車幅方向での断面が容器形状を形成している。この場合においても、トレイ11において、複数の電池スタック13が配置される底板部は、コア層20と、上側スキン層21と、下側スキン層22とにより構成されている。なお、側壁は、コア層20と、上側スキン層21と、下側スキン層22で形成さていなくともよい。
【0049】
上述の実施形態では、アッパーカバー12は、樹脂により形成されていた。これに代えて、アッパーカバー12を、樹脂以外の材質(例えば金属)により形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…バッテリパック
11…トレイ
12…アッパーカバー
13…電池スタック
14…バッテリ監視モジュール
15…冷却部材
20…コア層
21…上側スキン層
22…下側スキン層
100…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8