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特開2023-88481転がり軸受、回転機器および転がり軸受の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088481
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】転がり軸受、回転機器および転がり軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20230620BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20230620BHJP
   F16C 43/04 20060101ALI20230620BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20230620BHJP
   F16J 15/28 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/16
F16C43/04
F16C33/66 Z
F16J15/28
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203237
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】飯野 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】小坂 貴之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 春彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
【テーマコード(参考)】
3J043
3J117
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J043AA16
3J043CB20
3J043CB24
3J043DA01
3J117HA02
3J117HA10
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB09
3J216BA01
3J216BA16
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB12
3J216CB18
3J216CC45
3J216DA18
3J216EA07
3J216GA03
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701CA12
3J701CA13
3J701CA14
3J701CA40
3J701EA63
3J701FA32
3J701GA24
3J701XB03
3J701XB11
3J701XB50
(57)【要約】
【課題】耐久性の確保および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受1は、外輪20に装着され、内輪10と外輪20との間を軸方向の外側から覆うシール部材50と、転動体30とシール部材50との間に配置されたグリース60と、を備える。シール部材50は、外輪20に軸方向の外側から接触する環状の台座部51と、台座部51の内周縁から軸方向の外側に延びる延出部52と、延出部52における軸方向の外側の端縁から内輪10に向かって径方向に沿って延びる平面部53と、を有する。グリース60は、外輪20の内周面に接触した外輪接触部61と、外輪接触部61よりも軸方向の外側、かつ内輪10側で平面部53に接触したシール部材接触部62と、を有する。シール部材接触部62の面積は、グリース60とシール部材50のうち延出部52および台座部51との接触面積よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸に配置された内輪および外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、
前記内輪および前記外輪のうち一方の軌道輪に装着され、前記内輪と前記外輪との間を軸方向の外側から覆うシール部材と、
前記転動体と前記シール部材との間に配置されたグリースと、
を備え、
前記シール部材は、
前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触する環状の台座部と、
前記台座部における前記内輪および前記外輪のうち他方の軌道輪側の周縁から前記軸方向の外側に延びる延出部と、
前記延出部における前記軸方向の外側の端縁から前記他方の軌道輪に向かって径方向に沿って延びる平面部と、
を有し、
前記グリースは、
前記一方の軌道輪における前記他方の軌道輪に対向する周面に接触した軌道輪接触部と、
前記軌道輪接触部よりも前記軸方向の外側、かつ前記他方の軌道輪側で前記平面部に接触したシール部材接触部と、
を有し、
前記シール部材接触部の面積は、前記グリースと前記シール部材のうち前記延出部および前記台座部との接触面積よりも大きい、
転がり軸受。
【請求項2】
前記シール部材接触部は、軸方向から見て前記グリースにおける径方向の中心位置を含む、
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記グリースは、前記延出部に対して非接触である、
請求項1または請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記軌道輪接触部は、前記一方の軌道輪と前記台座部との接触部に対して軸方向に間隔をあけて設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記グリースは、前記台座部に対して非接触である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記一方の軌道輪は、前記他方の軌道輪側に突出するとともに軌道面が形成された突出部を有し、
前記突出部は、前記軸方向の外側を向くとともに前記他方の軌道輪側の周縁において前記周面に接続し、前記台座部に接触する端面を有し、
前記台座部は、前記軸方向から見て前記端面よりも前記他方の軌道輪側に突出しないように配置されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項7】
回転可能に配置された回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する支持体と、
前記回転体と前記支持体との間に介在する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の転がり軸受と、
を備える回転機器。
【請求項8】
互いに同軸に配置された内輪および外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、
前記内輪および前記外輪のうち一方の軌道輪に装着され、前記内輪と前記外輪との間を軸方向の外側から覆うシール部材と、
前記転動体と前記シール部材との間に配置されたグリースと、
を備え、
前記シール部材は、
前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触する環状の台座部と、
前記台座部における前記内輪および前記外輪のうち他方の軌道輪側の周縁から前記軸方向の外側に延びる延出部と、
前記延出部における前記軸方向の外側の端縁から前記他方の軌道輪に向かって径方向に沿って延びる平面部と、
を有する転がり軸受の製造方法であって、
前記グリースを前記一方の軌道輪に接触させるとともに、前記グリースを前記一方の軌道輪との接触部から前記軸方向の外側かつ前記他方の軌道輪側に突出するように塗布する塗布工程と、
前記シール部材を前記軸方向の外側から前記一方の軌道輪に接近させて、前記平面部を前記グリースにおける前記軸方向の外側の端縁に接触させる接触工程と、
前記接触工程の後、前記シール部材を前記一方の軌道輪に接近させて前記台座部を前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触させるとともに、前記平面部で前記グリースを前記軸方向の内側に押す装着工程と、
を備える転がり軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、回転機器および転がり軸受の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受として一対の軌道輪(内輪および外輪)の間にグリースを保持するものがある。この種の転がり軸受においては、グリースの抵抗が回転抵抗を増大させる要因となる場合がある。ところで、転がり軸受においては、搭載される回転機器の省電力化を目的として回転抵抗の低減が望まれる。特にファンモータ等の各種モータで使用される小型の転がり軸受においては、回転抵抗の低減の要望が強い。
【0003】
転がり軸受の回転抵抗を低減するために、相対回転し合う部材の両方に接触しないようにグリースを配置することが有効である。そこで転がり軸受の固定輪(多くの場合で外輪)における軸方向の端部や、この端部側に配置されるシール部材にグリースを塗布し、転動体(玉)および転動体を保持する保持器に接触するグリースの量の低減が図られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の転がり軸受では、グリースは、外輪の転動体に接触する軌道面を避けた内周面に付着し、かつ、内輪の外周面に接触しないように、外輪の内周面側に偏って円環状に充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-150615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転抵抗を低減するためにグリースの量を低減すると、グリース切れによって転がり軸受の寿命が低下する可能性がある。したがって、従来の転がり軸受にあっては、耐久性の確保および回転抵抗の低減を両立するという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、耐久性の確保および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受、回転機器および転がり軸受の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の転がり軸受は、互いに同軸に配置された内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、前記内輪および前記外輪のうち一方の軌道輪に装着され、前記内輪と前記外輪との間を軸方向の外側から覆うシール部材と、前記転動体と前記シール部材との間に配置されたグリースと、を備え、前記シール部材は、前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触する環状の台座部と、前記台座部における前記内輪および前記外輪のうち他方の軌道輪側の周縁から前記軸方向の外側に延びる延出部と、前記延出部における前記軸方向の外側の端縁から前記他方の軌道輪に向かって径方向に沿って延びる平面部と、を有し、前記グリースは、前記一方の軌道輪における前記他方の軌道輪に対向する周面に接触した軌道輪接触部と、前記軌道輪接触部よりも前記軸方向の外側、かつ前記他方の軌道輪側で前記平面部に接触したシール部材接触部と、を有し、前記シール部材接触部の面積は、前記グリースと前記シール部材のうち前記延出部および前記台座部との接触面積よりも大きい。
【0008】
本発明によれば、グリースを所定の箇所に塗布した後、シール部材を装着する際に、シール部材の平面部によって軸方向の内側に押されたグリースが延出部および台座部に向けて径方向に広がる余地を設けることができる。このため、グリースが他方の軌道輪側、および転動体側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリースが転動体および他方の軌道輪に直接的に接触することを容易に抑制できる。
しかも、平面部と台座部との間に延出部が設けられているので、平面部が台座部から他方の軌道輪側に延びる構成と比較して、グリースを転動体からより離れた位置に配置できる。よって、グリースの増量を図ることができる。
以上により、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受を提供できる。
【0009】
上記の転がり軸受において、前記シール部材接触部は、軸方向から見て前記グリースにおける径方向の中心位置を含んでもいてもよい。
【0010】
本発明によれば、シール部材を装着する際に、グリースが平面部に押されることで径方向に広がった結果、シール部材接触部が軸方向から見てグリースにおける径方向の中心位置を含むので、グリースが転動体に向けて軸方向の内側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリースが転動体に直接的に接触することを容易に抑制できる。
【0011】
上記の転がり軸受において、前記グリースは、前記延出部に対して非接触であってもよい。
【0012】
本発明によれば、シール部材を装着する際に、シール部材の平面部によって軸方向の内側に押されたグリースが延出部に向けて径方向に広がる余地をより大きく設けることができる。このため、グリースが他方の軌道輪側、および転動体側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリースが転動体および他方の軌道輪に直接的に接触することを容易に抑制できる。
【0013】
上記の転がり軸受において、前記軌道輪接触部は、前記一方の軌道輪と前記台座部との接触部に対して軸方向に間隔をあけて設けられていてもよい。
【0014】
本発明によれば、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材の外側に漏出することを抑制できる。
【0015】
上記の転がり軸受において、前記グリースは、前記台座部に対して非接触であってもよい。
【0016】
本発明によれば、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材の外側に漏出することを抑制できる。
【0017】
上記の転がり軸受において、前記一方の軌道輪は、前記他方の軌道輪側に突出するとともに軌道面が形成された突出部を有し、前記突出部は、前記軸方向の外側を向くとともに前記他方の軌道輪側の周縁において前記周面に接続し、前記台座部に接触する端面を有し、前記台座部は、前記軸方向から見て前記端面よりも前記他方の軌道輪側に突出しないように配置されていてもよい。
【0018】
本発明によれば、グリースの軌道輪接触部が軸方向の外側に広がって端面の周縁を乗り越えた場合でも、グリースが台座部に付着しにくい。このため、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリースが一方の軌道輪と台座部との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材の外側に漏出することを抑制できる。
【0019】
本発明の回転機器は、回転可能に配置された回転体と、前記回転体を回転可能に支持する支持体と、前記回転体と前記支持体との間に介在する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の転がり軸受と、を備える。
【0020】
本発明によれば、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立された転がり軸受を備えるので、回転機器の長寿命化、および支持体に対する回転体の回転抵抗の低減による回転機器の省電力化を達成することができる。
【0021】
本発明の転がり軸受の製造方法は、互いに同軸に配置された内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、前記内輪および前記外輪のうち一方の軌道輪に装着され、前記内輪と前記外輪との間を軸方向の外側から覆うシール部材と、前記転動体と前記シール部材との間に配置されたグリースと、を備え、前記シール部材は、前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触する環状の台座部と、前記台座部における前記内輪および前記外輪のうち他方の軌道輪側の周縁から前記軸方向の外側に延びる延出部と、前記延出部における前記軸方向の外側の端縁から前記他方の軌道輪に向かって径方向に沿って延びる平面部と、を有する転がり軸受の製造方法であって、前記グリースを前記一方の軌道輪に接触させるとともに、前記グリースを前記一方の軌道輪との接触部から前記軸方向の外側かつ前記他方の軌道輪側に突出するように塗布する塗布工程と、前記シール部材を前記軸方向の外側から前記一方の軌道輪に接近させて、前記平面部を前記グリースにおける前記軸方向の外側の端縁に接触させる接触工程と、前記接触工程の後、前記シール部材を前記一方の軌道輪に接近させて前記台座部を前記一方の軌道輪に前記軸方向の外側から接触させるとともに、前記平面部で前記グリースを前記軸方向の内側に押す装着工程と、を備える。
【0022】
本発明によれば、接触工程においてシール部材の平面部がグリースにおける軸方向外側の端縁に接触するので、装着工程において平面部により軸方向の内側に押す過程で、グリースがシール部材の延出部および台座部に向けて径方向に広がる余地を設けることができる。このため、グリースが他方の軌道輪側、および転動体側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリースが転動体および他方の軌道輪に直接的に接触することを容易に抑制できる。
しかも、平面部と台座部との間に延出部が設けられているので、平面部が台座部から他方の軌道輪側に延びる構成と比較して、グリースが転動体側に押されにくい。よって、予めより転動体に近い位置までグリースを配置することが可能となるので、グリースの増量を図ることができる。
以上により、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受を製造できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐久性の確保および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受、回転機器および転がり軸受の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る転がり軸受の平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】第1実施形態に係るグリースの塗布方法を説明する転がり軸受の縦断面図である。
図4】第1実施形態に係るグリースの塗布方法を説明する転がり軸受の縦断面図である。
図5】第2実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0026】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態について図1から図4を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る転がり軸受の平面図である。図2は、図1のII-II線における断面図である。なお図2では、転がり軸受1が装着される回転機器2を仮想線で示している。
【0027】
図1および図2に示すように、転がり軸受1は、軌道輪である内輪10および外輪20と、複数の転動体30と、保持器40と、一対のシール部材50と、グリース60と、を備えた玉軸受である。転がり軸受1は、ファンモータ等の回転機器2に設けられている。回転機器2は、共通軸線Oを中心に回転可能に形成されたシャフト3(回転体)と、固定的に設置されてシャフト3を回転可能に支持する筐体4(支持体)と、を備える。転がり軸受1は、シャフト3と筐体4との間に介在している。なお、以下では転がり軸受を単に軸受という場合がある。
【0028】
内輪10および外輪20は、それぞれの中心軸線が共通軸線Oに一致するように、互いに同軸に配置されている。本実施形態では、共通軸線Oの延びる方向を軸方向といい、共通軸線Oに直交して共通軸線Oから放射状に延びる方向を径方向といい、共通軸線O回りに周回する方向を周方向という。また、軸方向に平行、かつ互いに反対方向を指向する方向のうち一方を上方と定義し、他方を下方と定義する。
【0029】
内輪10は、回転輪として設けられている。内輪10は、シャフト3に外挿されるとともに、シャフト3に固定される。外輪20は、固定輪として設けられている。外輪20は、筐体4の凹部(または貫通孔)に嵌入されるとともに、筐体4に固定される。外輪20は、内輪10との間に環状の空間を設けた状態で、内輪10を径方向の外側から囲んでいる。複数の転動体30は、内輪10と外輪20との間に配置されるとともに、保持器40によって転動可能に保持されている。保持器40は、複数の転動体30を周方向に均等配列させた状態で、各転動体30を回転可能に保持している。シール部材50は、外輪20に装着され、内輪10と外輪20との間の環状の空間を軸方向の外側から覆っている。
【0030】
外輪20は、ステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料により円環状に形成されている。ただし、外輪20は金属製に限定されるものではなく、その他の材料によって形成されていても構わない。外輪20は、軸方向に沿った幅が、内輪10の軸方向に沿った幅と同等とされた外輪本体21と、外輪本体21から径方向の内側に向かって突出するとともに周方向の全体にわたって延びる突出部22と、を有する。突出部22は、外輪本体21における軸方向の中央に位置する部分に形成されている。突出部22の軸方向に沿った幅は、外輪本体21の軸方向に沿った幅よりも短く、転動体30の外径よりも大きい。
【0031】
突出部22は、軸方向の外側を向く一対の端面22aと、一対の端面22aの内周縁同士を接続する内周面22bと、を備える。各端面22aは、径方向および周方向の双方向に平行に延びている。内周面22bには、径方向の外側に向かって窪む外輪軌道面23が形成されている。外輪軌道面23は、転動体30の外表面に沿うように断面視半球状に形成されているとともに、内周面22bの全周に亘って周方向に延びる環状に形成されている。外輪軌道面23は、内周面22bのうち、軸方向の中央に位置する部分に形成されている。内周面22bのうち外輪軌道面23を除く部分は、一定の内径で軸方向に延びている。
【0032】
外輪本体21は、突出部22の各端面22aの外周縁から外輪20の開口縁まで延びる一対の内周面21aを有する。各内周面21aにおける軸方向の内側に位置する部分は、軸方向の外側に位置する部分よりも径方向の外側に位置している。
【0033】
内輪10は、ステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料により円環状に形成されている。ただし、内輪10は金属製に限定されるものではなく、その他の材料によって形成されていても構わない。内輪10の外周面には、径方向の内側に向かって窪む内輪軌道面11が形成されている。内輪軌道面11は、転動体30の外表面に沿うように断面視半球状に形成されているとともに、外周面の全周に亘って周方向に延びる環状に形成されている。内輪軌道面11は、内輪10の外周面のうち、軸方向の中央に位置する部分に形成され、外輪軌道面23に対して径方向に向い合うように配置されている。内輪10の外周面のうち内輪軌道面11を除く部分は、一定の外径で軸方向に延びている。
【0034】
図2に示すように、複数の転動体30は、ステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料により球状に形成されている。複数の転動体30は、外輪軌道面23と内輪軌道面11との間に配置され、外輪軌道面23および内輪軌道面11によって転動可能に支持される。複数の転動体30は、保持器40によって周方向の間隔を保たれている。
【0035】
保持器40は、合成樹脂または金属材料により全体として円環状に形成されている。保持器40は、共通軸線Oを中心として配置されている。保持器40は、円環状に形成されて複数の転動体30に対して下方に配置された環状部41と、環状部41から上方に突設されているとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の柱部42と、を備える。柱部42は、周方向に均等に配列されている。周方向に隣り合う一対の柱部42は、互いの間にボールポケットを形成している。ボールポケットは、保持器40を径方向に貫通するとともに、保持器40の上端面において上方に開口している。ボールポケットは、転動体30の数に対応して設けられ、転動体30を各別に転動可能に保持する。これにより保持器40は、転動体30を周方向に間隔をあけて均等配列させる。保持器40は、内輪10および外輪20に干渉しないように、内輪10および外輪20に対して隙間をあけて配置されている。本実施形態では、保持器40の全体は、外輪20の突出部22の一対の端面22aよりも軸方向の内側に位置している。
【0036】
図1および図2に示すように、シール部材50は、円環の板状に形成されている。シール部材50は、共通軸線Oを中心として配置されている。シール部材50は、全周にわたって一様に形成されている。シール部材50は、外輪20に軸方向の外側から嵌入されている。シール部材50は、複数の転動体30に対する軸方向の両側に1つずつ配置されている。シール部材50は、外輪20に軸方向の外側から接触する環状の台座部51と、台座部51の内周縁から軸方向の外側に延びる延出部52と、延出部52における軸方向の外側の端縁から内輪10に向かって径方向に沿って延びる平面部53と、台座部51の外周縁から径方向の外側かつ軸方向の外側に延びた係止部54と、を有する。
【0037】
図2に示すように、台座部51は、外輪20の突出部22の端面22aに軸方向の外側から重なっている。台座部51は、外輪20の突出部22の端面22aと略平行に延びている。台座部51は、軸方向から見た平面視で突出部22の端面22aよりも径方向内側に突出している。台座部51が突出部22の端面22aから径方向内側に突出した距離は、内輪10と外輪20との径方向の間隔の10%以下であり、5%以下であることが望ましい。延出部52は、台座部51の内周縁から軸方向の外側かつ径方向の内側に延びている。平面部53は、平面視で転動体30の中心に重なっている。平面部53の内周縁は、内輪10の外周面に隙間をあけて配置されている。平面部53のうち軸方向に内側を向く面は、周方向および径方向に延びる平坦面である。係止部54の外周縁は、外輪本体21の内周面21aに軸方向の内側から係止されている。これにより、シール部材50は、外輪20に固定されている。
【0038】
グリース60は、転動体30とシール部材50との間に配置されている。グリース60は、内輪10と外輪20との間の環状の空間のうち、転動体30に対する軸方向の片側のみに配置されている。本実施形態では、グリース60は、軸方向で転動体30を挟んで保持器40の環状部41とは反対側に配置されている。つまり、グリース60は、転動体30に対する上方に配置されている。グリース60は、円環状または円弧状に延び、共通軸線Oと同軸に配置されている。
【0039】
グリース60は、外輪20の突出部22の内周面22bに接触した外輪接触部61(軌道輪接触部)と、外輪接触部61よりも軸方向の外側かつ径方向の内側でシール部材50の平面部53に接触したシール部材接触部62と、を備える。これら外輪接触部61およびシール部材接触部62は、グリース60の全長にわたって周方向に延びている。外輪接触部61は、周方向の全体にわたって軸方向に幅を持つ。外輪接触部61は、突出部22の内周面22bのうち外輪軌道面23から軸方向に間隔をあけた箇所に接触している。外輪接触部61は、突出部22の内周面22bのうち上方の端面22aの内周縁から軸方向に間隔をあけた箇所に接触している。すなわち、外輪接触部61は、外輪20とシール部材50の台座部51との接触部に対して軸方向に間隔をあけて設けられている。シール部材接触部62は、周方向の全体にわたって径方向に幅を持つ。シール部材接触部62は、シール部材50における延出部52と平面部53との接続部から径方向に間隔をあけた箇所において平面部53と接触している。
【0040】
グリース60は、外輪接触部61からシール部材接触部62に向けて、軸方向の外側かつ径方向の内側に延びている。グリース60は、内面63および外面64を備える。
内面63は、外輪接触部61における軸方向内側の端縁と、シール部材接触部62における径方向内側の端縁と、を接続している。内面63は、内輪10の外周面、および転動体30に対向している。内面63の上半部は、シール部材接触部62における径方向内側の端縁から軸方向の内側かつ径方向内側に延びている。内面63の下半部は、外輪接触部61における軸方向内側の端縁から軸方向の外側かつ径方向内側に延び、上半部における下端縁に接続している。内面63の上半部および下半部の境界部は、グリース60における最も径方向の内側に位置する内周縁を形成している。内面63は、内輪10、転動体30および保持器40から離間している。これにより、グリース60は、内輪10、転動体30および保持器40に対して非接触とされている。
【0041】
外面64は、外輪接触部61における軸方向外側の端縁と、シール部材接触部62における径方向外側の端縁と、を接続している。外面64は、外輪20の突出部22の内周面22b、およびシール部材50に対向している。外面64は、シール部材接触部62における径方向外側の端縁から軸方向の内側かつ径方向外側に延びて、外輪接触部61における軸方向外側の端縁に接続している。外面64は、シール部材50の台座部51および延出部52から離間している。これにより、グリース60は、シール部材50のうち平面部53よりも外輪20側に位置する台座部51および延出部52に対して非接触とされている。
【0042】
以上のように配置されたグリース60は、共通軸線Oに直交する断面積が軸方向外側の端部から軸方向の内側に向かうに従い漸次増加するように形成されている。本実施形態では、グリース60は、内面63の上半部に対応する部分で、共通軸線Oに直交する断面積が軸方向外側の端部から軸方向の内側に向かうに従い漸次増加するように形成されている。
【0043】
次に、本実施形態の転がり軸受1の製造方法について説明する。
本実施形態の転がり軸受1の製造方法は、塗布工程と、シール工程と、を備える。
【0044】
図3および図4は、第1実施形態に係るグリースの塗布方法を説明する転がり軸受の縦断面図である。
図3に示すように、塗布工程は、シール部材50が外輪20に取り付けられていない状態で行う。すなわち、内輪10と外輪20との間の環状の空間が軸方向に開放され、転動体30および保持器40が露出した状態でグリースが塗布される。塗布工程では、ノズルAを外輪20に対して共通軸線Oを中心に回転させながらノズルAからグリースを吐出する。このとき、ノズルAからグリースが径方向の外側かつ軸方向の内側に吐出されるようにノズルAの向きを調整する。さらに、吐出したグリースを外輪20の突出部22の内周面22bの所定位置に接触させ、かつグリースが転動体30および保持器40に接触しないようにノズルAの位置を調整する。ノズルAを外輪20に相対回転させながらグリースを吐出するので、外輪20に塗布されたグリース60は円周状または円弧状に延在する。また、グリース60は、ノズルAからの吐出方向に倣い、外輪20との接触部から軸方向の外側かつ径方向の内側に突出するように塗布される。塗布されたグリース60の軸方向外側の端面は、軸方向の外側に膨らんだ凸状に形成される。
【0045】
続いて、シール工程を行う。図4に示すように、シール工程では、シール部材50を軸方向の外側から外輪20に接近させて、シール部材50を外輪20に装着する。シール部材50を軸方向の内側に変位させる過程で、台座部51が外輪20の突出部22の端面22aに接触する前に、最初にグリース60全体のうち軸方向外側の端縁にシール部材50の平面部53を接触させる(接触工程)。この際、平面部53のうち径方向中間部にグリース60を接触させる。なお、径方向中間部は、平面部53の外周縁よりも径方向内側、かつ内周縁よりも径方向外側に位置していればよい、その後、シール部材50をさらに外輪20に接近させて台座部51を外輪20の突出部22の端面22aに軸方向の外側から接触させる(装着工程)。この際、シール部材50の平面部53でグリース60を軸方向の内側に押す。これにより、グリース60が平面部53に押されることで径方向に広がり、グリース60のシール部材接触部62が形成される。
【0046】
以上により、転がり軸受1が形成される。なお、本実施形態の塗布工程では、ノズルAを外輪20に対して回転させながらグリースを塗布しているが、周方向に延びる吐出孔を有するノズルからグリースを吐出して、グリースを円周状または円弧状に一括して塗布してもよい。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態の転がり軸受1のグリース60は、外輪20の突出部22の内周面22bに接触した外輪接触部61と、外輪接触部61よりも軸方向の外側かつ径方向の内側でシール部材50の平面部53に接触したシール部材接触部62と、を有する。シール部材接触部62の面積は、グリース60とシール部材50のうち延出部52および台座部51との接触面積よりも大きい。この構成によれば、グリース60を所定の箇所に塗布した後、シール部材50を装着する際に、シール部材50の平面部53によって軸方向の内側に押されたグリース60が延出部52および台座部51に向けて径方向に広がる余地を設けることができる。このため、グリース60が内輪10側および転動体30側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリース60が転動体30および内輪10に直接的に接触することを容易に抑制できる。
しかも、シール部材50には平面部53と台座部51との間に延出部52が設けられているので、平面部が台座部から径方向内側に延びる構成と比較して、グリース60を転動体30からより離れた位置に配置できる。よって、グリース60の増量を図ることができる。
以上により、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受1を提供できる。
【0048】
また、本実施形態の転がり軸受1の製造方法は、グリース60を外輪20に接触させるとともに、グリース60を外輪20との接触部から軸方向の外側かつ径方向の内側に突出するように塗布する塗布工程と、シール部材50を軸方向の外側から外輪20に接近させて、平面部53をグリース60における軸方向の外側の端縁に接触させる接触工程と、接触工程の後、シール部材50を外輪20に接近させて台座部51を外輪20に軸方向の外側から接触させるとともに、平面部53でグリース60を軸方向の内側に押す装着工程と、を備える。この製造方法によれば、接触工程においてシール部材50の平面部53がグリース60における軸方向外側の端縁に接触するので、装着工程において平面部53により軸方向の内側に押す過程で、グリース60がシール部材50の延出部52および台座部51に向けて径方向に広がる余地を設けることができる。このため、グリース60が内輪10側、および転動体30側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリース60が転動体30および内輪10に直接的に接触することを容易に抑制できる。
しかも、シール部材50には平面部53と台座部51との間に延出部52が設けられているので、平面部が台座部から径方向の内側に延びる構成と比較して、グリース60が転動体30側に押されにくい。よって、予めより転動体30に近い位置までグリース60を配置することが可能となるので、グリース60の増量を図ることができる。
以上により、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立できる転がり軸受1を製造できる。
【0049】
また、シール部材接触部62は、平面視でグリース60における径方向の中心位置を含む。この構成によれば、シール部材50を装着する際に、グリース60が平面部53に押されることで径方向に広がった結果、シール部材接触部62が平面視でグリース60における径方向の中心位置を含むので、グリース60が転動体30に向けて軸方向の内側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリース60が転動体30に直接的に接触することを容易に抑制できる。
【0050】
グリース60は、延出部52に対して非接触である。この構成によれば、シール部材50を装着する際に、シール部材50の平面部53によって軸方向の内側に押されたグリース60が延出部52に向けて径方向に広がる余地をより大きく設けることができる。このため、グリース60が内輪10側、および転動体30側に大きく広がることを抑制できる。よって、グリース60が転動体30および内輪10に直接的に接触することを容易に抑制できる。
【0051】
外輪接触部61は、外輪20と台座部51との接触部に対して軸方向に間隔をあけて設けられている。この構成によれば、グリース60が外輪20と台座部51との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリース60が外輪20と台座部51との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材50の外側に漏出することを抑制できる。
【0052】
グリース60は、台座部51に対して非接触である。この構成によれば、グリース60が外輪20と台座部51との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリース60が外輪20と台座部51との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材50の外側に漏出することを抑制できる。
【0053】
そして、本実施形態の回転機器2によれば、耐久性の確保、および回転抵抗の低減を両立された転がり軸受1を備えるので、回転機器2の長寿命化、および筐体4に対するシャフト3の回転抵抗の低減による回転機器2の省電力化を達成することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、シール部材50の台座部51が平面視で外輪20の突出部22の端面22aから径方向内側に突出しているが、台座部は平面視で突出部22の端面22aよりも径方向内側に突出しないように配置されていることが望ましい。この構成によれば、グリース60の外輪接触部61が軸方向の外側に広がって端面22aの内周縁を乗り越えた場合でも、グリース60が台座部に付着することを抑制できる。このため、グリース60が外輪20と台座部との接触部に接触することを回避できる。これにより、グリース60が外輪20と台座部との接触部を通じて毛細管現象によりシール部材50の外側に漏出することを抑制できる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、転がり軸受1が第1実施形態のグリース60に代えてグリース160を備える点で第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0056】
図5は、第2実施形態に係る転がり軸受1の縦断面図である。
図5に示すように、グリース160は、外輪20に接触した第1環状部160aと、第1環状部160aに連なるとともにシール部材50に接触した第2環状部160bと、を備える。第1環状部160aおよび第2環状部160bは、グリースが2回に分けて塗布されることで形成される。第1環状部160aおよび第2環状部160bは、それぞれ共通軸線Oを中心に円周状に延びている。ただし、第1環状部160aおよび第2環状部160bのうち少なくともいずれか一方は、共通軸線Oを中心として360°未満延びていてもよい。
【0057】
第1環状部160aは、外輪20の突出部22の内周面22bに接触した外輪接触部161(軌道輪接触部)を備える。外輪接触部161は、グリース160の全長にわたって周方向に延びている。外輪接触部161は、周方向の全体にわたって軸方向に幅を持つ。外輪接触部161は、突出部22の内周面22bのうち外輪軌道面23から軸方向に間隔をあけた箇所に接触している。外輪接触部161は、突出部22の内周面22bのうち上方の端面22aの内周縁から軸方向に間隔をあけた箇所に接触している。すなわち、外輪接触部161は、外輪20とシール部材50の台座部51との接触部に対して軸方向に間隔をあけて設けられている。
【0058】
第2環状部160bは、共通軸線Oを中心に円周状に延びている。第2環状部160bは、第1環状部160aに対し、径方向で外輪20とは反対側(すなわち径方向の内側)に配置されている。具体的には、平面視で第2環状部160bの外周縁が第1環状部160aの外周縁よりも径方向の内側に位置し、かつ第2環状部160bの内周縁が第1環状部160aの内周縁よりも径方向の内側に位置している。第2環状部160bは、第1環状部160aに軸方向の外側で連なって一体化している。第2環状部160bは、第1環状部160aの全周に亘って連なっている。第2環状部160bは、外輪接触部161よりも軸方向の外側かつ径方向の内側でシール部材50の平面部53に接触したシール部材接触部162を備える。シール部材接触部162は、周方向の全体にわたって径方向に幅を持つ。シール部材接触部162は、シール部材50における延出部52と平面部53との接続部から径方向に間隔をあけた箇所において平面部53と接触している。
【0059】
グリース160は、外輪接触部161からシール部材接触部162に向けて、軸方向の外側かつ径方向の内側に延びている。グリース160は、内面163および外面164を備える。
内面163は、外輪接触部161における軸方向内側の端縁と、シール部材接触部162における径方向内側の端縁と、を接続している。内面163は、内輪10の外周面、および転動体30に対向している。内面163の上端部は、シール部材接触部162における径方向内側の端縁から軸方向の内側かつ径方向の内側に延びている。内面163は、内輪10、転動体30および保持器40から離間している。これにより、グリース160は、内輪10、転動体30および保持器40に対して非接触とされている。
【0060】
外面164は、外輪接触部161における軸方向外側の端縁と、シール部材接触部162における径方向外側の端縁と、を接続している。外面164は、外輪20の突出部22の内周面22b、およびシール部材50に対向している。外面164の上端部は、シール部材接触部162における径方向外側の端縁から軸方向の内側かつ径方向の外側に延びている。外面164は、シール部材50の台座部51および延出部52から離間している。これにより、グリース160は、シール部材50のうち平面部53よりも外輪20側に位置する台座部51および延出部52に対して非接触とされている。
【0061】
以上のように配置されたグリース160は、共通軸線Oに直交する断面積が軸方向外側の端部から軸方向の内側に向かうに従い漸次増加するように形成されている。本実施形態では、グリース160は、第2環状部160bの上部に対応する部分で、共通軸線Oに直交する断面積が軸方向外側の端部から軸方向の内側に向かうに従い漸次増加するように形成されている。
【0062】
このように構成された本実施形態の転がり軸受1であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0063】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、内輪10が回転輪として設けられ、外輪20が固定輪として設けられている。そして、グリース60,160が固定輪である外輪20に接触している。しかし、グリースが接触する軌道輪は、固定輪でなくてもよい。すなわち、内輪が固定輪として設けられ、外輪が回転輪として設けられ、グリースが固定輪である内輪に接触していてもよい。また、内輪が固定輪として設けられ、外輪が回転輪として設けられ、グリースが回転輪である外輪に接触していてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、グリース60,160は、シール部材50の台座部51および延出部52に対して非接触とされているが、この構成に限定されない。グリースは、シール部材50の台座部51および延出部52のうち少なくともいずれか一方に接触していてもよく、シール部材接触部の面積がグリースと延出部52および台座部51との接触面積よりも大きければよい。
【0065】
また、上記実施形態では、グリース60,160が内輪10、転動体30および保持器40に対して非接触とされているが、この構成に限定されない。上述したように、上記実施形態ではシール部材50を装着する際にグリースが内輪10側および転動体30側に大きく広がることを抑制できる。このため、仮に内輪10、転動体30および保持器40のうち少なくともいずれか1つに接触しても、従来構造と比較して接触部を十分に小さくできるので、回転抵抗の低減効果が得られる。
【0066】
また、グリースの塗布形態は上記実施形態に限定されない。例えば、第2実施形態では、第1環状部160aおよび第2環状部160bが円周状に延びているが、この構成に限定されない。第1環状部および第2環状部のうち少なくともいずれか一方が全周にわたって点状に配置された粒体を備えていてもよい。この場合、周方向に整列した複数の粒体は、一体化していてもよいし、互いに離間していてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、回転機器としてファンモータを例示したが、回転機器はこれに限定されない。例えば、回転機器として、歯科用ハンドピースや、ハードディスクドライブのスピンドルモータ等に本発明を適用してもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…軸受 2…回転機器 10…内輪(他方の軌道輪) 20…外輪(一方の軌道輪) 22…突出部 22a…端面 30…転動体 50…シール部材 51…台座部 52…延出部 53…平面部 60,160…グリース 61,161…外輪接触部(軌道輪接触部) 62,162…シール部材接触部 A…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5