(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088512
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】閉断面部材の結合構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B62D21/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203295
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BA02
3D203BA12
3D203BB12
3D203CA57
3D203CA58
3D203CA66
3D203CA67
3D203CA69
3D203CB09
3D203CB19
(57)【要約】
【課題】ボルトの座面陥没や軸力低下を抑制できる閉断面部材の結合構造を提供すること。
【解決手段】離間して対向する一対の貫通穴を備えた閉断面部材同士を結合する結合構造であって、各閉断面部材の内部において、一端の開口部が一対の貫通穴の一方に配置され、他端の開口部が一対の貫通穴の他方に配置されたパイプと、パイプの外径よりも小さい第1ボルト穴が一対の貫通穴と連通するように、各閉断面部材の外部に設けられたパッチと、複数の第2ボルト穴のそれぞれが、各閉断面部材の同じ側に設けられたパッチの第1ボルト穴と連通するように、パッチに当接されたブラケットと、各閉断面部材において、第2ボルト穴、第1ボルト穴、およびパイプに挿通され、ナット締めされたボルトと、を有する。パイプは、閉断面部材およびパッチのいずれにも固定されておらず、一対の貫通穴の径は、パイプの外径よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して対向する一対の貫通穴が設けられた第1閉断面部材と第2閉断面部材とを結合する閉断面部材の結合構造であって、
前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの内部において、一端の開口部が前記一対の貫通穴の一方に配置され、他端の開口部が前記一対の貫通穴の他方に配置されたパイプと、
前記パイプの外径よりも小さい第1ボルト穴が設けられており、前記第1ボルト穴が前記一対の貫通穴と連通するように、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの外部に設けられたパッチと、
複数の第2ボルト穴が設けられており、前記複数の第2ボルト穴のそれぞれが、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの同じ側の面に設けられた前記パッチの前記第1ボルト穴と連通するように、前記パッチに当接されたブラケットと、
前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材のそれぞれにおいて、前記第2ボルト穴、前記第1ボルト穴、および前記パイプに挿通され、ナット締めされたボルトと、を有し、
前記パイプは、前記第1閉断面部材、前記第2閉断面部材、および前記パッチのいずれにも固定されておらず、
前記一対の貫通穴のそれぞれの径は、前記パイプの外径よりも大きい、
閉断面部材の結合構造。
【請求項2】
前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材は、車両に搭載されるサイドメンバである、
請求項1に記載の閉断面部材の結合構造。
【請求項3】
前記第1閉断面部材は、前記第2閉断面部材の上方に設けられる、
請求項1または2に記載の閉断面部材の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、閉断面部材の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、閉断面のサイドメンバに、ブラケットを介してサスペンションアームを取り付ける構造が開示されている。このブラケットは、サイドメンバ内に挿入され、ボルトが挿通されるパイプと、そのパイプの一端が溶接され、サイドメンバ外でサスペンションアームを支持するハンガーと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、閉断面のサイドメンバ同士を結合する方法としては、溶接で接合する方法や、閉断面の内部にナットを溶接して閉断面の外部からボルト締めする方法が知られているが、それらは、コスト面や強度面で問題がある。
【0005】
そこで、上述したブラケットを用いて、閉断面のサイドメンバ同士を結合することが考えられる。しかし、その場合では、ボルトの座面陥没や軸力低下といった問題が起こりうる。
【0006】
本開示の一態様の目的は、ボルトの座面陥没や軸力低下を抑制することができる閉断面部材の結合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る閉断面部材の結合構造は、離間して対向する一対の貫通穴が設けられた第1閉断面部材と第2閉断面部材とを結合する閉断面部材の結合構造であって、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの内部において、一端の開口部が前記一対の貫通穴の一方に配置され、他端の開口部が前記一対の貫通穴の他方に配置されたパイプと、前記パイプの外径よりも小さい第1ボルト穴が設けられており、前記第1ボルト穴が前記一対の貫通穴と連通するように、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの外部に設けられたパッチと、複数の第2ボルト穴が設けられており、前記複数の第2ボルト穴のそれぞれが、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材それぞれの同じ側の面に設けられた前記パッチの前記第1ボルト穴と連通するように、前記パッチに当接されたブラケットと、前記第1閉断面部材および前記第2閉断面部材のそれぞれにおいて、前記第2ボルト穴、前記第1ボルト穴、および前記パイプに挿通され、ナット締めされたボルトと、を有し、前記パイプは、前記第1閉断面部材、前記第2閉断面部材、および前記パッチのいずれにも固定されておらず、前記一対の貫通穴のそれぞれの径は、前記パイプの外径よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ボルトの座面陥没や軸力低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係るサイドメンバ、パイプ、およびパッチを分解して示す斜視図
【
図2】本開示の実施の形態に係るパイプおよびパッチが取り付けられたサイドメンバを示す斜視図
【
図3】本開示の実施の形態に係る結合構造を示す斜視図
【
図4】本開示の実施の形態に係る結合構造を模式的に示す断面図
【
図5】本開示の比較例に係る結合構造を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0011】
まず、
図1、
図2を用いて、本実施の形態のサイドメンバ1、パイプ3、およびパッチ4について説明する。なお、
図3、
図4も適宜参照する。
【0012】
図1は、サイドメンバ1、パイプ3、およびパッチ4を分解して示す分視図である。
図2は、
図1に示したパイプ3およびパッチ4が取り付けられたサイドメンバ1を示す斜視図である。
【0013】
サイドメンバ1(第1閉断面部材の一例)は、閉断面構造を有する部材であり、例えば大型の商用自動車に搭載される車体フレームである。
【0014】
サイドメンバ1は、離間して対向する面Aおよび面Bを有する。面Aおよび面Bのそれぞれには、サイドメンバ1の長手方向に沿って、複数の貫通穴2が設けられている。
【0015】
面A側の貫通穴2と、面B側の貫通穴2とは、1対1に対向するように設けられている。すなわち、サイドメンバ1には、その長手方向に沿って、一対の貫通穴2が複数設けられていると言える。
【0016】
貫通穴2の径は、パイプ3の外径よりも大きい。
【0017】
パイプ3は、両端に開口部(符号略)が設けられ、軸方向に貫通した円筒状の鋼管である。
【0018】
パイプ3は、一対の貫通穴2の数に対応して複数個設けられる。パイプ3は、面A側または面B側の貫通穴2を介してサイドメンバ1内(閉断面内)に挿入される。このとき、一端の開口部は、面A側の貫通穴2に配置され、他端の開口部は、面B側の貫通穴2に配置される(
図4参照)。
【0019】
また、パイプ3は、サイドメンバ1およびパッチ4のいずれにも固定されずに、サイドメンバ1内に配置される(
図4参照)。
【0020】
パイプ3には、
図3、
図4に示すボルト10が挿通される。パイプ3が潰れ止めとして機能することにより、ボルト10の軸力の抜けを抑制でき、必要な締結力を確保することができる。
【0021】
パッチ4は、板状の長尺部材である。パッチ4には、貫通穴2(パイプ3)の数に対応して複数のボルト穴5(第1ボルト穴の一例)が設けられている。
【0022】
ボルト穴5の径は、パイプ3の外径よりも小さい。本実施の形態では例として、ボルト穴5の径は、パイプ3の内径と同じとしている(
図4参照)。
【0023】
図2に示すように、パッチ4は、溶接部6を介して、サイドメンバ1の面Aに固定される。具体的には、パッチ4は、各ボルト穴5が面A側の各貫通穴2と連通するように位置合わせされて、面Aに溶接される(
図4参照)。なお、
図2では、図示されていないが、面B側にも、上記同様にパッチ4が設けられる(
図4参照)。
【0024】
このように面Aと面Bのそれぞれにパッチ4を取り付けることにより、サイドメンバ1内に配置された各パイプ3がサイドメンバ1外へ飛び出すことを防止できる。
【0025】
次に、
図2に示したサイドメンバ1を含む本実施の形態の結合構造100(閉断面部材の結合構造の一例)について、
図3、
図4を用いて説明する。
【0026】
図3は、結合構造100を示す斜視図である。
図4は、結合構造100を模式的に示す断面図である。
【0027】
結合構造100は、ブラケット8、ボルト10、およびナット11を用いて、サイドメンバ1と、その下方に配置されたサイドメンバ7(第2閉断面部材の一例)とを結合した構造である。
【0028】
サイドメンバ7は、上述したサイドメンバ1と同じ構造を有する。よって、ここでの説明は省略する。
【0029】
ブラケット8は、サイドメンバ1とサイドメンバ7との結合に用いられる板状部材である。
【0030】
ブラケット8には、サイドメンバ1、7に設けられた貫通穴2(パイプ3)の数に対応して複数のボルト穴9(第2ボルト穴の一例)が設けられている。
【0031】
本実施の形態では例として、ボルト穴9の径は、パッチ4のボルト穴5の径(パイプ3の内径)と同じとしている(
図4参照)。
【0032】
図3に示すように、ブラケット8は、サイドメンバ1、7それぞれの面A側に設けられる。具体的には、ブラケット8は、各ボルト穴9が、サイドメンバ1、7それぞれの面A側に設けられたパッチ4のボルト穴5(面A側の各貫通穴2)と連通するように位置合わせされて、サイドメンバ1、7それぞれの面A側に設けられたパッチ4に当接される(
図4参照)。なお、
図3では、図示されていないが、サイドメンバ1、7それぞれの面B側にも、上記同様にブラケット8が設けられる(
図4参照)。
【0033】
図4に示すように、ボルト10は、サイドメンバ1、7のそれぞれにおいて、面B側のブラケット8のボルト穴9、面B側のパッチ4のボルト穴5、パイプ3、面A側のパッチ4のボルト穴5、面A側のブラケット8のボルト穴9に挿通される。そして、
図3、
図4に示すように、サイドメンバ1、7それぞれの面A側において、ボルト10にはナット11が締められる。
【0034】
このようにボルト10がナット締めされることにより、ブラケット8を介してサイドメンバ1とサイドメンバ7とが結合される。
【0035】
ここで、本開示の比較例としての結合構造200について、
図5を用いて説明する。
図5は、結合構造200を模式的に示す断面図である。
【0036】
図5において、
図1~
図4と同じ構成要素には同一の符号を付している。よって、以下では、それらの構成要素の説明は省略する。また、
図5では、サイドメンバ1、7のそれぞれにおいてボルト10とナット11による締結点を1箇所ずつ図示しているが、実際には、上述した結合構造100と同様に、サイドメンバ1、7の長手方向に沿って、複数の締結点が存在するものとする。
【0037】
接合構造200は、上述した結合構造100(
図4参照)と比べて、パイプ3の一端(面A側の端部)が溶接部6によりパッチ4に固定されている点が異なる。
【0038】
このような接合構造200では、パイプ3とパッチ4における溶接部6のバラツキの積み上げを考慮し、全ての締結点でボルト10が貫通できるようにするために、サイドメンバ1、7それぞれの面B側に設けられる貫通穴2の径、および、面B側のブラケット8に設けられるボルト穴9の径を大きくする必要がある。
【0039】
そして、サイドメンバ1、7それぞれの面B側に設けられる貫通穴2の径を大きくすると、
図5に示すように、面B側において、パイプ3の他端(面B側の端部)とサイドメンバ1、7のそれぞれとの接触がなくなるため(または、パイプ3の他端とサイドメンバ1、7のそれぞれとの接触面積が小さくなるため、でもよい)、ボルト10の軸力が低下するという懸念がある。
【0040】
また、面B側のブラケット8に設けられるボルト穴9の径を大きくすると、ボルト10の頭部の座面とブラケット8との接触面積が小さくなるため、ボルト10の頭部の座面が陥没するという懸念がある。
【0041】
これらの懸念は、締結点の数が多いほど悪化するものであり、例えば商用車の車体フレームなどの、大荷重に対する強度や剛性を確保しなければならない構造物においては、特に重要な問題である。
【0042】
これに対し、本実施の形態の結合構造100では、サイドメンバ1、7に設けられる貫通穴2はパイプ3の外径よりも大きく、かつ、パイプ3はサイドメンバ1、7やパッチ4に固定されることなく、サイドメンバ1、7の閉断面内に封印される。よって、パイプ3は、その軸方向に対して垂直な方向(
図4に示す矢印a、bの方向)に移動することが可能となる。
【0043】
これにより、ボルト10の挿入時にパイプ3の位置が障害になることが無い。そのため、接合構造200に比べて、サイドメンバ1、7それぞれの貫通穴2の径やブラケット8のボルト穴9の径を小さくすることができ、上述したボルト10の座面陥没や軸力低下を抑制することができる。
【0044】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示の閉断面部材の結合構造は、2つの閉断面部材同士を結合する構造に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1、7 サイドメンバ
2 貫通穴
3 パイプ
4 パッチ
5、9 ボルト穴
6 溶接部
8 ブラケット
10 ボルト
11 ナット
100、200 閉断面部材の結合構造