(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088518
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】シリサイド膜形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20230620BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230620BHJP
C23C 14/58 20060101ALI20230620BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01L21/28 301S
H01L21/285 S
C23C14/58 C
C23C14/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203302
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】大庭 卓
【テーマコード(参考)】
4K029
4M104
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA25
4K029BA11
4K029BA12
4K029BB02
4K029CA05
4K029EA03
4K029FA09
4K029GA01
4M104AA01
4M104AA03
4M104BB21
4M104BB25
4M104BB26
4M104BB28
4M104DD37
4M104DD39
4M104DD41
4M104DD81
4M104DD84
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハ上に一様な金属シリサイド膜を形成することが可能なシリサイド膜形成方法を提供する。
【解決手段】構成元素としてシリコンを含む半導体ウエハを、スパッタリングチャンバ内に配置する。その後、圧力が9×10
-5Pa以下になるまでスパッタリングチャンバ内を排気する。その後、スパッタリングチャンバ内にスパッタリングガスを導入してターゲットをスパッタリングすることにより、半導体ウエハに金属膜を堆積させる。半導体ウエハに堆積させた金属膜にレーザビームを入射させてシリサイド反応を生じさせ、金属シリサイド膜を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素としてシリコンを含む半導体ウエハを、スパッタリングチャンバ内に配置し、
その後、圧力が9×10-5Pa以下になるまで前記スパッタリングチャンバ内を排気し、
その後、前記スパッタリングチャンバ内にスパッタリングガスを導入して、前記スパッタリングチャンバ内のターゲットをスパッタリングすることにより、前記半導体ウエハに金属膜を堆積させ、
前記半導体ウエハに堆積させた前記金属膜にレーザビームを入射させてシリサイド反応を生じさせ、金属シリサイド膜を形成するシリサイド膜形成方法。
【請求項2】
前記スパッタリングガスは、純度99.9995%以上のアルゴンガスである請求項1に記載のシリサイド膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリサイド膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ等のシリコンを含む半導体ウエハ上に金属膜を堆積させ、レーザアニールを行うことにより、金属シリサイド膜を形成する技術が公知である(特許文献1)。金属膜として、Ni、Ti、Mo、W等が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウエハ全面に一様な金属シリサイド膜を形成することが望まれる。本願の発明者による種々の評価実験によると、レーザアニールにより形成された金属シリサイド膜に、外観上のムラが発生する場合があることが確認された。本発明の目的は、半導体ウエハ上に一様な金属シリサイド膜を形成することが可能なシリサイド膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
構成元素としてシリコンを含む半導体ウエハを、スパッタリングチャンバ内に配置し、
その後、圧力が9×10-5Pa以下になるまで前記スパッタリングチャンバ内を排気し、
その後、前記スパッタリングチャンバ内にスパッタリングガスを導入して前記スパッタリングチャンバ内のターゲットをスパッタリングすることにより、前記半導体ウエハに金属膜を堆積させ、
前記半導体ウエハに堆積させた前記金属膜にレーザビームを入射させてシリサイド反応を生じさせ、金属シリサイド膜を形成するシリサイド膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
スパッタリングガスを導入する前に、圧力が9×10-5Pa以下になるまでスパッタリングチャンバ内を排気しておくことにより、金属膜中への酸素原子の取り込み量が低減される。その結果、金属シリサイド膜の外観上のムラの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施例によるシリサイド膜形成方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2A~
図2Cは、金属シリサイド膜を形成するまでの途中段階におけるウエハの断面図であり、
図2Dは金属シリサイド膜を形成したウエハの断面図である。
【
図3】
図3は、本実施例で用いられるレーザアニール装置の概略図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、それぞれ上記実施例及び比較例による方法で作製した金属シリサイド膜の光学顕微鏡写真である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、それぞれ上記実施例及び比較例による方法で作製した金属膜積層ウエハの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図5Bを参照して、一実施例によるシリサイド膜形成方法について説明する。
図1は、本実施例によるシリサイド膜形成方法の手順を示すフローチャートである。
図2A~
図2Cは、金属シリサイド膜を形成するまでの途中段階におけるウエハの断面図であり、
図2Dは金属シリサイド膜を形成したウエハの断面図である。
【0009】
まず、スパッタリング装置のスパッタリングチャンバ内に半導体ウエハ31(
図2A)を搬入する(ステップS1)。半導体ウエハ31は、シリコンを含む半導体で形成されている。例えば、半導体ウエハ31は、シリコンウエハ、SiCウエハ等である。スパッタリング装置として、例えばRFマグネトロンスパッタリング装置が用いられる。スパッタリングのターゲットとして金属のモリブデン(Mo)が用いられる。
【0010】
半導体ウエハ31を搬入した後、スパッタリングチャンバ内を真空排気する(ステップS2)。このときのスパッタリングチャンバの圧力を、9×10
-5Paとする。スパッタリングガス導入前のスパッタリングチャンバ内の真空度に相当する圧力を、到達圧力Pmということとする。スパッタリングチャンバ内を真空排気した後、スパッタリングガスの導入を開始する(ステップS3)。さらに、スパッタリングチャンバ内で放電を開始させてスパッタリングを行うことにより、半導体ウエハ31の上にモリブデン膜32(
図2B)を堆積させ、ターゲットを交換してモリブデン膜32の上に、ニッケル膜33(
図2B)を堆積させる(ステップS4)。半導体ウエハ31、モリブデン膜32、及びニッケル膜33を含むウエハを、金属膜積層ウエハ30ということとする。
【0011】
ニッケル膜33を堆積させた後、スパッタリングガスの導入を停止する(ステップS5)。その後、半導体ウエハ31をスパッタリングチャンバから搬出し、アニールチャンバに搬入する(ステップS6)。
【0012】
図3は、本実施例で用いられるレーザアニール装置の概略図である。アニールチャンバ12内に移動機構11によってステージ10が支持されている。移動機構11は、制御装置20からの指令を受けて、ステージ10を水平面内で移動させることができる。ステージ10の上面に、モリブデン膜32及びニッケル膜33が形成された金属膜積層ウエハ30(
図2B)が、ニッケル膜33を上方に向けて保持される。
【0013】
レーザ光源21が、制御装置20からの指令を受けて、アニール用のパルスレーザビームを出力する。レーザ光源21として、例えば発振波長約800nmのレーザダイオードが用いられる。レーザ光源21から出力されたパルスレーザビーム25が伝送光学系22、及びレンズ23を経由し、アニールチャンバ12の天板に設けられたレーザ透過窓13を透過して、金属膜積層ウエハ30に入射する。伝送光学系22は、例えばビームホモジナイザ、アパーチャ、レンズ、ミラー等を含む。ビームホモジナイザとレンズ23とにより、金属膜積層ウエハ30の表面におけるビームスポットが整形され、ビームプロファイルが均一化される。
【0014】
制御装置20は、移動機構11を制御して、ステージ10を水平面内の二次元方向に移動させる。制御装置20は、さらに、ステージ10の現在位置情報に基づいて、レーザ光源21を制御してレーザ光源21からパルスレーザビーム25を出力させる。例えば、制御装置20は、移動機構11及びレーザ光源21を制御して、金属膜積層ウエハ30の表面においてパルスレーザビーム25(
図2C)のビームスポットを主走査方向と副走査方向とに移動させる。主走査と副走査とを繰り返すことにより、金属膜積層ウエハ30の表面のほぼ全域をアニールすることができる。
【0015】
ステップS6の後、金属膜積層ウエハ30に対してレーザアニールを行って、半導体ウエハ31に含まれるシリコンとモリブデン膜32とのシリサイド反応を生じさせることにより、モリブデンシリサイド膜34(
図2D)を形成する(ステップS7)。
図2に示した「MoSi」の標記は、MoとSiとの組成比が1:1であることを意味しているわけではない。レーザアニールが終了すると、金属膜積層ウエハ30をアニールチャンバ12(
図3)から搬出する(ステップS8)。
【0016】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、上記実施例の優れた効果について説明する。
図4A及び
図4Bは、それぞれ上記実施例及び比較例による方法で作製した金属シリサイド膜の光学顕微鏡写真である。
図4A及び
図4Bのやや濃い領域が金属膜積層ウエハ30である。金属膜積層ウエハ30の形状は、一辺の長さが10mmの正方形である。
図4Bに示した比較例においては、ステップS2(
図1)における到達圧力Pmを5×10
-4Paとした。
【0017】
実施例による方法では、
図4Aに示すように、外観上、均一な金属シリサイド膜が形成されている。これに対して比較例による方法では、外観上、色のムラ(写真において濃い灰色の領域と淡い灰色の領域)が発生していることがわかる。
【0018】
このように、上記実施例による方法を適用することにより、外観上、色のムラのない均一なモリブデンシリサイド膜34(
図2D)を形成することが可能である。
【0019】
次に、
図5A及び
図5Bを参照して、比較例による方法で作製したモリブデンシリサイド膜に、外観上のムラが生じた原因について説明する。
【0020】
図5A及び
図5Bは、それぞれ上記実施例及び比較例による方法で作製した金属膜積層ウエハ30の断面を示す模式図である。半導体ウエハ31の上にモリブデン膜32が形成されており、その上にニッケル膜33が形成されている。スパッタリングによりモリブデン膜32を堆積させると、モリブデン膜32に酸素原子35が取り込まれる。本願発明者による評価実験によると、ステップS2における到達圧力Pmが高い(真空度が低い)と、モリブデン膜32に取り込まれる酸素原子35の量が多くなることがわかった。上記実施例(
図5A)では、到達圧力Pmを9×10
-5Paとし、比較例(
図5B)では、到達圧力Pmを5×10
-4Paとしている。このため、比較例による方法で作製したモリブデン膜32(
図5B)の酸素の取り込み量が、上記実施例による方法で作製したモリブデン膜32(
図5A)の酸素の取り込み量より多い。
【0021】
モリブデン膜32に取り込まれた酸素原子35は、レーザアニール時(ステップS7)にモリブデンと反応する。レーザアニール時におけるモリブデンの酸化反応によって、モリブデンシリサイド膜34(
図2D)に、外観上の色のムラが発生する。ステップS2における到達圧力Pmを9×10
-5Pa以下にすることにより、外観上の色のムラのない、均一なモリブデンシリサイド膜34(
図2D)を形成することができる。
【0022】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、モリブデン膜32(
図2B)の上にニッケル膜33(
図2B)を堆積させたが、ニッケル膜33は省略することも可能である。この場合、モリブデン膜32が露出した金属膜積層ウエハ30にアニール用のパルスレーザビーム25(
図2C)を入射させることにより、シリサイド反応を生じさせる。
【0023】
また、上記実施例ではRFマグネトロンスパッタリング法を用いて金属膜を堆積させたが、その他のスパッタリング法を用いてもよい。例えば、DCマグネトロンスパッタリング法等を用いてもよい。
【0024】
また、上記実施例では、シリサイド反応を生じさせる金属膜として、モリブデン膜32(
図2C)を用いているが、モリブデン以外のシリサイド反応を生じる金属からなる膜を用いてもよい。このような金属として、例えば、ニッケル、チタン、タングステン等が挙げられる。シリサイド反応を生じる金属膜としてモリブデン膜以外の金属膜を用いる場合でも、金属膜に酸素が多量に取り込まれているとレーザアニール中に金属の酸化反応が生じ、外観上の色のムラが生じ得る。したがって、シリサイド反応を生じる金属膜としてモリブデン膜以外の金属膜を用いる場合でも、ステップS2における到達圧力Pmが9×10
-5Pa以下になるまで真空排気することが好ましい。
【0025】
さらに、シリコンとシリサイド反応する金属膜に取り込まれる酸素の量の増大を回避するために、スパッタリングガスとして用いるアルゴンガスの純度を99.9995%以上にすることが好ましい。
【0026】
上記実施例は例示であり、実施例及び変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施例及び変形例の同様の構成による同様の作用効果については実施例及び変形例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例及び変形例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0027】
10 ステージ
11 移動機構
12 アニールチャンバ
13 レーザ透過窓
20 制御装置
21 レーザ光源
22 伝送光学系
23 レンズ
25 パルスレーザビーム
30 金属膜積層ウエハ
31 半導体ウエハ
32 モリブデン膜
33 ニッケル膜
34 モリブデンシリサイド膜
35 酸素原子