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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088521
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】製氷機構
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/045 20180101AFI20230620BHJP
   F25C 1/04 20180101ALI20230620BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20230620BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F25C1/045 Z
F25C1/04 302Z
F25B39/02 M
F25B49/02 520B
F25B49/02 570Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203305
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】関 和芳
(72)【発明者】
【氏名】加賀 進一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義康
【テーマコード(参考)】
3L110
【Fターム(参考)】
3L110BA11
(57)【要約】
【課題】可燃性のある炭化水素ガスなどを冷媒として製氷部を冷却し得ると共に閉じた冷却空間に配置することができる製氷機構を提供する。
【解決手段】下方に開口する多数の製氷小室32が形成された製氷部31と、製氷部31に設けられて冷凍回路20を循環する液相冷媒を気化させて当該製氷部31を冷却する冷却部25と、を備え、冷却部25で冷却した製氷部31の製氷小室32に供給した製氷水を氷結させて氷塊を形成するよう構成する。そして、冷却部25において冷媒を気化する蒸発管100を、冷媒が循環する内管102と、内管102が内部に挿通されて当該内管102との間に空間部106を形成する外管104とを有する多重管構造に形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に開口する多数の製氷小室が形成された製氷部と、前記製氷部に設けられて冷凍回路を循環する液相冷媒を気化させて当該製氷部を冷却する冷却部と、を備え、前記冷却部で冷却した前記製氷部の製氷小室に供給した製氷水を氷結させて氷塊を形成するよう構成されている製氷機構であって、
前記冷却部において冷媒を気化する蒸発管を、当該冷媒が循環する内管と、前記内管が内部に挿通されて当該内管との間に空間部を形成する外管とを有する多重管構造に形成した
ことを特徴とする製氷機構。
【請求項2】
前記製氷部が設けられる冷却空間から隔離されて外気の流通が許容された開放空間に、前記冷却部における蒸発管の端部が臨むよう構成されて、前記冷却空間内に位置している蒸発管の全体が多重管構造となっていることを特徴とする請求項1記載の製氷機構。
【請求項3】
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に二酸化炭素が充填されていることを特徴とする請求項1または2記載の製氷機構。
【請求項4】
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に充填されている気体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて制御手段が前記冷凍回路の動作を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の製氷機構。
【請求項5】
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に充填されている気体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて制御手段が報知手段を制御して前記内管からの冷媒漏れを報知するよう構成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の製氷機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷小室が一方に開口するよう形成された製氷部を冷却部で冷却することで、当該製氷小室に供給された製氷水を氷結させて氷塊を形成可能に構成された製氷機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、氷塊を連続的に製造する自動製氷機には、下向きに向けて開放するよう製氷小室が形成された製氷部を冷却部で冷却する製氷機構を備えて、当該製氷部を冷却した状態で製氷水を下方から噴射供給することで氷塊を生成する噴射式の自動製氷機が知られており、このような自動製氷機が喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。このような噴射式の自動製氷機には、製氷部の製氷小室の開口を水皿により開閉自在に閉成して、該水皿から製氷小室へ製氷水を噴射供給するクローズドセル式や、製氷小室の開口を開放したままの状態で、下方から該製氷小室へ製氷水を噴射供給するオープンセル式が知られている。
【0003】
例えば、クローズドセル式の自動製氷機としては、例えば特許文献1に開示されるように、冷媒が循環する冷凍回路に接続した冷却部により製氷部を冷却する冷却機構を備えると共に、この製氷部の下側を塞ぐ閉成姿勢およびこの閉成姿勢から傾動して製氷部の下側を開放する開放姿勢との間で変位する水皿と、この水皿の下方に固定されて水皿と共に傾動する製氷水タンクとを備えている。このような自動製氷機では、製氷運転において水皿が閉成姿勢で保持されて、製氷水タンクに貯留された製氷水が循環ポンプによって水皿に送られ、水皿から冷却部で冷却された製氷部の各製氷小室に噴射供給される。そして、製氷運転で各製氷小室に氷塊が生成されると、製氷運転から除氷運転に移行し、除氷運転において水皿を閉成姿勢から開放姿勢に傾動すると共に、製氷部を加熱することで製氷小室から氷塊を離脱させて貯氷室へ案内するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-138974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような製氷機構を備えた自動製氷機などの装置は、冷却機構の冷却部を冷却する冷凍回路を循環する冷媒として、オゾン層を破壊する性質を有するクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代えて、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの代替フロンが利用されることがある。しかしながら、このような代替フロンは、オゾン層の破壊作用はないものの地球温暖化係数が高いことが知られている。このため、近年はこのような代替フロンに代えて、蒸発熱や飽和圧等の冷媒としての特性に優れているブタンやプロパン等の炭化水素(HC系)を冷媒として利用することで環境負荷の削減を図る取り組みが行われている。
【0006】
しかしながら、経年劣化や何らかの外的要因により冷媒配管が損傷した場合には、冷媒として利用している可燃性のある炭化水素ガスが漏出する可能性がある。特に、製氷部は断熱材で囲まれた冷却空間に設置されることから、冷却部において冷媒が流通する蒸発管が損傷した場合には、可燃性の冷媒が冷却空間に滞留することになることから、冷媒漏れに対する対策が必要になる。このような冷媒の漏出に対しては、冷媒を検出するガスセンサを設置したり、冷媒の漏出時に冷媒の供給を遮断する遮断弁を設置するなどの対策が考えられるものの、一般にガスセンサの検出精度の信頼性は低く、漏出した冷媒以外のガスに反応したり、またガスセンサに霜が付着した場合には漏出した冷媒の検出が不能になる懸念がある。また、高価なガスセンサや遮断弁を採用するため、コストが嵩む問題も指摘される。このため、製氷部が設置される冷却空間に可燃性のある炭化水素ガスなどを冷媒とした冷却機構を設置することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題を好適に解決するべく提案されたものであって、可燃性のある炭化水素ガスなどを冷媒として製氷部を冷却し得ると共に閉じた冷却空間に配置することができる製氷機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の発明は、
一方に開口する多数の製氷小室が形成された製氷部と、前記製氷部に設けられて冷凍回路を循環する液相冷媒を気化させて当該製氷部を冷却する冷却部と、を備え、前記冷却部で冷却した前記製氷部の製氷小室に供給した製氷水を氷結させて氷塊を形成するよう構成されている製氷機構であって、
前記冷却部において冷媒を気化する蒸発管を、当該冷媒が循環する内管と、前記内管が内部に挿通されて当該内管との間に空間部を形成する外管とを有する多重管構造に形成したことを要旨としている。
この発明によれば、冷却部の蒸発管において冷媒が循環する内管が外管の内部に挿通されていることにより、当該冷媒が蒸発管から漏出するのを効果的に防ぐことができる。すなわち、内管に腐食等に起因して孔空き(孔食)が発生したとしても、内管から漏出した冷媒を外管の内部に留まらせることができ、冷媒が外部に漏れ出すことを効果的に防ぐことができる。このため、蒸発熱や飽和圧等の冷媒としての特性に優れているブタンやプロパン等の炭化水素ガスを冷媒に採用しつつ、冷却部が配置される冷却空間に冷却部を含む冷却機構を配置することができる。また、冷媒の漏れを検出するガスセンサや冷媒の漏出時に冷媒の供給を遮断する遮断弁などの検知精度に課題のある装置構成を設ける必要が無いから、冷却機構の信頼性を高めることができる。
【0009】
第2の発明は、
前記製氷部が設けられる冷却空間から隔離されて外気の流通が許容された開放空間に、前記冷却部における蒸発管の端部が臨むよう構成されて、前記冷却空間内に位置している蒸発管の全体が多重管構造となっていることを要旨とする。
この発明によれば、蒸発管の端部を開放空間に臨ませて冷却空間内に位置している蒸発管の全体を二重管構造とすることで、冷媒が冷却空間に漏れ出すことを効果的に防ぐことができる。
【0010】
第3の発明は、
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に二酸化炭素が充填されていることを要旨とする。
この発明によれば、内管と外管との間の空間に熱伝導性に優れた二酸化炭素を充填することで、蒸発管を二重管構造としつつ冷却機構の冷却性能の低下を防止することができる。
【0011】
第4の発明は、
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に充填されている気体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて制御手段が前記冷凍回路の動作を制御するよう構成されていることを要旨とする。
この発明によれば、蒸発管内を流通する冷媒による温度変化に伴って変化する内管と外管との間の空間に充填されている気体の圧力を圧力検出手段で検出することができるから、当該圧力検出手段が検出する気体圧力に基づいて冷凍回路の運転状態を判別して冷凍回路の動作制御が可能になると共に、冷媒の漏れを圧力検出手段により検出することが可能になる。すなわち、圧力検出手段の検出に基づいて冷凍回路の運転制御が可能になると共に、冷媒の漏れがある状態か否かを早期に発見して、冷媒の漏れがある異常な状態で冷凍回路が運転されるのを防止することが可能になる。
【0012】
第5の発明は、
前記蒸発管において前記内管と前記外管との間の空間部に充填されている気体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて制御手段が報知手段を制御して前記内管からの冷媒漏れを報知するよう構成されていることを要旨とする。
この発明によれば、圧力検出手段により検出した冷媒の漏出を速やかに報知して冷媒の漏れがある異常な状態で冷凍回路が運転されるのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可燃性のある炭化水素ガスなどを冷媒として製氷部を冷却し得ると共に閉じた冷却空間に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る製氷機構を備えた自動製氷機の概略構成を示す一部切欠斜視図である。
図2図1に示す自動製氷機に使用される冷凍回路と、この冷凍回路により冷却される製氷機構と、該製氷機構の下方に配設した貯氷室との概略構成を示す説明図である。
図3】製氷機構の冷却部と製氷部とを示す概略図である。
図4】蒸発管の断面を示す概略図である。
図5】蒸発管の端部を断面で示す概略図である。
図6】実施形態に係る蒸発管に圧力検出センサを取り付けた状態を示す概略図である。
図7】実施形態に係る蒸発管に冷媒検出センサを取り付けた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る製氷機構の好適な実施形態に関し、添付図面を参照しながら以下説明する。ここで、本実施形態では、図1に示すように、製氷部31に下向きに設けた多数の製氷小室32に対して下方から製氷水を噴射供給して多数の角氷を製造するセル方式の自動製氷機10に用いられる製氷機構30を例にして説明するものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る自動製氷機10は、略箱形をなす筐体11の内部上方に貯氷室12が画成されると共に、筐体11の下方に機械室13が画成されている。そして、前記貯氷室12の内部に製氷機構30が配設され、製氷運転に際して製氷機構30の製氷部31で生成された氷塊Rが、除氷運転により落下して前記貯氷室12内に貯留されるようになっている。また前記機械室13には、図2で後述する冷凍回路20を構成する圧縮機21、凝縮器22、および膨張手段24等が配設されると共に、冷凍回路20の一部を構成する冷却部25は、貯氷室12内において前記製氷部31の上面に密着配置されている。すなわち、この実施形態において貯氷室12は、冷凍回路20により冷却される冷却空間となっている。
【0017】
前記製氷機構30は、図2図3に示すように、一方(混実施形態では下向き)に開口するよう製氷小室32を内部に多数画成した前記製氷部31と、当該製氷部31に設けられて冷凍回路20により循環する液相冷媒を気化させて当該製氷部31を冷却する冷却部25とを備えている。すなわち、冷凍回路20の一部を構成して冷媒が循環する冷却部25は、製氷機構30を構成している。また、製氷機構30は、前記製氷部31の下方に位置するよう設けられて当該製氷部31の製氷小室32の開口を開閉可能な水皿33と、該水皿33の下部に一体に設けられた製氷水タンク34とを備えており、水皿開閉機構35の作動により水皿33および製氷水タンク34が一体的に傾動して製氷小室32の開口を開閉するよう構成されている。ここで、前記水皿33には、一方の端部側(図1図2では左側端部側)に枢支軸38が設けられて、当該枢支軸38を中心に傾動し得るよう筐体11の図示しない取付部材に支持されている。そして、前記水皿33において前記枢支軸38から離間する端部側(図1図2では右側端部側)は、前記水皿開閉機構35を構成するカムアーム39に対してコイルスプリング40を介して接続されている。これにより、前記水皿33は、アクチュエータモータ41を駆動して前記カムアーム39を正逆回転させることで、前記枢支軸38を中心として前記製氷部31の製氷小室32を下方から塞ぐ閉鎖状態と、該製氷部31の製氷小室32を開放するように下方に傾斜した開放状態とに姿勢変位するようになっている。
【0018】
前記製氷水タンク34は、一方が深くなったバケット形状に形成されており、給水部50から供給される製氷水を貯留し得るようになっている。なお給水部50は、外部の上水道に接続する構成であっても、筐体11の内部に備えた貯水タンクに接続する構成であってもよい。この実施形態では、給水部50が外部の上水道に接続している。前記製氷水タンク34の最深部分には送水ポンプ45が配設されており、該製氷水タンク34に貯留された製氷水を前記水皿33に設けた噴射孔(図示せず)を介して前記製氷部31の各製氷小室32へ噴射供給し得るようになっている。更に、前記給水部50は、上水道等の外部給水源に接続された給水管51と、該給水管51の途中に配設された給水弁52とから構成され、該給水弁52は機械室13に配置された制御装置(図示せず)により開閉制御される。このように、この実施形態では、前記水皿33、製氷水タンク34および送水ポンプ45により製氷部31の製氷小室32へ製氷水を供給する製氷水供給部を構成している。
【0019】
図2は、前記製氷機構30、前記冷凍回路20および前記貯氷室12を概略的に示すものである。この冷凍回路20は、気相冷媒を圧縮する圧縮機21と、圧縮した冷媒を液化する凝縮器22と、液相冷媒の圧力を低下させる減圧手段としての膨張手段24と、液相冷媒を気化する冷却部25とを冷媒管26で接続して構成される。また前記圧縮機21および凝縮器22を結ぶ冷媒管26aの中間と、前記膨張手段24および冷却部25を結ぶ冷媒管26bの中間にバイパス管29が連通接続されると共に、該バイパス管29にホットガス弁27が設けられている。なお、前記膨張手段24は、前記凝縮器22で凝縮された高圧の液化冷媒を前記冷却部25へ供給し、冷却部25の蒸発管100で膨張させて気化熱を奪うことで冷却部25が取り付けられている前記製氷部31を氷点下にまで冷却するものである。この膨張手段24としては、細径キャピラリーチューブや弁体が使用されるが、本実施形態では膨張手段24として膨張弁を使用している。また、図2において符号23は、前記凝縮器22を送風冷却するファンモータを示している。ここで、冷凍回路20を循環する冷媒としては、蒸発熱や飽和圧等の冷媒としての特性に優れているブタンやプロパン等の炭化水素系(HC系)の冷媒が採用されている。
【0020】
そして、前記冷凍回路20は、製氷運転時には前記ホットガス弁27を閉じた状態で圧縮機21により冷媒を圧縮するよう制御装置により動作制御されて、圧縮機21、凝縮器22、膨張手段24、冷却部25および圧縮機21の順に冷媒が強制循環されると共に、循環する過程で冷却部25で液相冷媒が気化することにより、製氷部31が冷却されて製氷が行われる。また、除氷運転には、前記ホットガス弁27を開いた状態で圧縮機21により冷媒を圧縮するよう制御装置により動作制御されて、圧縮機21、冷却部25および圧縮機21の順に冷媒が強制循環されると共に、圧縮された高温の冷媒(ホットガス)により冷却部25が加熱されることで、製氷部31が加温されて氷塊Rが製氷部31から離脱して落下するようになっている。
【0021】
ここで、前記冷却部25は、図1に示すように、管路を蛇行させた蒸発管100が製氷部31の上面に溶接などにより接合される。この蒸発管100は、前記冷凍回路20の冷媒が循環する内管102と、前記内管102が内部に挿通されて当該内管102との間に空間を形成する外管104とを有する二重管構造に形成されて、当該内管102の内側の空間を冷媒が流通するよう構成される。なお、内管102および外管104は熱伝導性に優れた銅やアルミニウムなどの金属材料で形成されている。
【0022】
前記蒸発管100の前記内管102は、前記外管104の内面に接触しないよう当該外管104の内側に挿通するようにしてもよく(図4(a)参照)、外管104の内面に接触するようにして当該外管104の内側に挿通するようにしてもよい(図4(b)参照)。外管104の内面に内管102を接触するよう構成する場合には、外管104の内面において製氷部31に接合される側(図4(b)の下側)に内管102が接するようにすることで、内管102の内部で気化する冷媒の熱伝達効率を高めることができる。また、本実施形態において内管102および外管104の夫々は、製氷部31に面する側が長尺な楕円管に形成してあるが、内管102および外管104の一方或いは両方を円管に形成するようにしてもよい。
【0023】
また、前記蒸発管100は、前記貯氷室12を画成している壁材110を貫通して貯氷室12の外側に両端部が臨むよう構成されている。すなわち、蒸発管100の端部は、貯氷室12から隔離されて外気の流通が許容された開放空間Sに臨むよう構成されて、貯氷室12内に位置している蒸発管100の全体が二重管構造となるよう構成してある(図3参照)。ここで、図1では壁部材110の図示を省略してあるが、壁材110としては、筐体11の側面や背面、天面を画成する壁部材を利用するようにしてもよく、また筐体11の内部に貯氷室12と区画するように設けた部材であってもよい。そして、貯氷室12の外側に貫通した蒸発管100の両端部は、外管104の端部から内管102が延出しており、外管104から延出する内管102の一方に、膨張手段24およびバイパス管29が接続している流入側の冷媒管26bが接続されると共に、外管104から延出する内管102の他方に、圧縮機21に接続する流出側の冷媒管26cが接続されている。なお、図3において、符号120は蒸発管100の内管102と各冷媒管26b,26cの接続部位を示しており、蒸発管100の内管102と冷媒管26とは、溶接により接続するようにしてもよく、また管継手などの接続部材を介して接続するようにしてもよい。
【0024】
また、図5に示すように、蒸発管100の端部には、前記内管102と外管104との間の空間部106を塞ぐ閉塞板108が設けられており、当該内管102と外管104との間の空間部106が閉じた空間を形成するようになっている。このように空間部106が閉じた空間をなすよう形成することで、内管102に孔空き(孔食)が生じた場合でも内管102から漏れた冷媒を蒸発管100の内部の空間部106に留まらせることができるようになる。
【0025】
ここで、内管102と外管104との間の空間部106は、内管102内を流通する冷媒との間で熱交換し得る流体が充填されている状態とすることが好ましい。ここで、空間部106の流体として空気(大気)が充填されているようにしてもよいが、当該空間部106にブライン(冷媒)を充填するようにしてもよい。ここで、ブラインとしては、顕熱の熱容量によって熱を移動させる熱媒体であり、比熱が大きく、熱伝導率に優れ、不活性で腐食がないものを採用することができ、例えば塩化カルシウム水溶液やエチレングリコール水溶液、アルコールなどを採用することができ、特には伝熱性に優れたエチレングリコール水溶液が好適である。このように、内管102と外管104との間の空間部106に熱伝導率に優れたブラインを充填することで、熱伝導効果の向上が期待でき、熱交換部HEにおける熱交換効率を向上させ得る利点がある。
【0026】
また、蒸発管100の内管102と外管104との間の閉じた空間を形成している空間部106に、二酸化炭素を充填するようにしてもよい。このように、内管102と外管104との間の空間部106に熱伝導率に優れた二酸化炭素を充填することで熱伝導効果の向上が期待でき、冷却部25(蒸発管100)における熱交換効率を向上させ得る利点がある。更に、二酸化炭素を充填した場合は、内管102と外管104の間の空間部106で二酸化炭素の凝縮と気化が行われることにより、二重管構造の断面においてヒートパイプの働きをする。このため、蒸発管100に二重管構造を採用することで、外管104の内側の空間に充填した二酸化炭素のヒートパイプの作用も相俟って、製氷部31との間の熱交換効率を高めることができる。
【0027】
また、内管102と外管104との間の閉じた空間部106に充填する流体としては、温度変化により圧力が変化する二酸化炭素などの気体であることが好ましく、このような気体を充填した状態で空間部106の圧力を圧力検出センサ(圧力検出部)112で検出するよう構成することにより、圧力検出センサ112の検出圧力に基づいて冷凍回路20の動作(製氷運転および除氷運転の切り替え)を制御可能にできる。ここで、本実施形態の蒸発管100には、内管102と外管104との間の閉じた空間部106に二酸化炭素が充填されており、当該二酸化炭素の圧力を検出し得るよう圧力検出センサ112が設けられている(図3図6参照)。具体的には、外管104に形成した孔部104aに、圧力検出センサ112に繋がる圧力伝送管112aが接続されており、前記空間部106に充填された二酸化炭素の圧力を圧力検出センサ112で検知可能に構成されている。この圧力センサ112は、前記制御装置に電気的に接続されており、圧力検出センサ112の検出圧力に基づいて制御装置が冷凍回路20の動作を制御するよう構成されている。
【0028】
具体的に、製氷運転時には、蒸発管100の内管102内を流通する冷媒の気化に伴って空間部106に充填されている二酸化炭素の冷却や、冷却された二酸化炭素の凝縮に伴って、圧力検出センサ112が検出する二酸化炭素の圧力が次第に低下する。このため、圧力検出センサ112の検出圧力が制御装置に予め設定した製氷完了圧力となった場合に、制御装置が製氷完了を判別して製氷運転を終了し、除氷運転に切り替えるように冷凍回路20の動作を制御するよう構成されている。また、除氷運転時には、蒸発管100の内管102内を流通するホットガスにより空間部106に充填されている二酸化炭素が加熱され、圧力検出センサ112の検出圧力が次第に上昇する。そして、製氷部31から氷塊Rが離脱することにより二酸化炭素の加熱に伴って圧力検出センサ112の検出圧力が急速に高まるように変化する。このため、圧力検出センサ112の検出圧力が制御装置に予め設定した除氷完了圧力となった場合に、制御装置が除氷完了を判別して除氷運転を終了するように冷凍回路20の動作を制御するよう構成されている。
【0029】
また、内管102と外管104との間の空間部106には、外気圧および冷媒の充填圧力よりも高い圧力で二酸化炭素を充填してある。そして、圧力検出センサ112の検出圧力が制御装置に予め設定した閾値以下となった場合に制御装置が冷媒漏れ異常と判断するよう構成されている。すなわち、腐食等により外管104に孔あき(孔食)が生じて二酸化炭素が蒸発管100の外部に漏出した場合に、圧力検出センサ112の検出圧力が閾値以下まで低下することで制御装置が冷媒漏れ異常として判断するようになっている。また、腐食等により内管102に孔あき(孔食)が生じた場合には、二酸化炭素の内管102側への漏出に伴って圧力検出センサ112の検出圧力が閾値以下まで低下することで制御装置が冷媒漏れ異常として判断するようになっている。ここで、製氷運転時と除氷運転時とで圧力検出センサ112の検出圧力の範囲が異なることから、制御装置が冷媒漏れと判断する検出圧力(閾値)は、製氷運転および除氷運転毎に異なった値に設定される。
【0030】
このように、蒸発管100の空間部106に充填された二酸化炭素の圧力を圧力検出センサ112で検出することにより、内管102および外管104の両方の孔あき(孔食)による異常を検出することができるようになっている。そして、前記制御装置は、圧力検出センサ112の検出圧力に基づいて冷媒漏れと判断した場合に、自動製氷機10に備えられている図示しない報知手段により冷媒漏れ異常を報知するよう構成されている。ここで、冷媒漏れ異常の報知方法としては特に限定されるものではなく、例えば表示パネルに警告表示を表示したり、スピーカから警報音を出力するなどにより実行することができる。
【0031】
更に、図3図7に示すように、蒸発管100に冷媒検出センサ(冷媒検出手段)114を設けられており、内管102の中を流通する冷媒の漏出を当該冷媒検出センサ114で検出可能に構成することが可能になっている。具体的には、図7に示すように、外管104に形成した孔部104aに両端部が開口する側管116を取り付けて前記空間部106に連通するよう構成すると共に、この側管116の外側の開口端部の近傍に冷媒検出センサ114を配置してある。なお、冷媒検出センサ114としては、検出対象の冷媒(この実施形態では炭化水素ガス)を検出可能なセンサであれば従来公知のセンサを採用可能である。そして、この冷媒検出センサ114は、前記制御装置に電気的に接続されており、冷媒検出センサ114が冷媒を検出した場合に制御装置が冷媒漏れ異常と判断するよう構成されている。すなわち、腐食等により内管102に孔あき(孔食)が生じて、内管102の中を流通する冷媒が前記空間部106に漏出した場合には、漏出した冷媒が側管116を介して冷媒検出センサ114まで導かれることで冷媒漏れ異常として判断し得るようになっている。ここで、冷媒検出センサ114で検出した冷媒漏れ異常の報知方法としては特に限定されるものではなく、例えば表示パネルに警告表示を表示したり、スピーカから警報音を出力するなどにより実行することができる。また、製氷機10は、冷媒検出センサ114および側管116の外側の開口端部を囲むように隔壁118が設けられており、冷媒検出センサ114の設置箇所周辺の雑ガスを冷媒検出センサ114が検出して冷媒漏れ異常と判断されないようにしてある。
【0032】
(実施形態の作用)
次に、本実施形態に係る自動製氷機10の作用について説明する。自動製氷機10では、製氷運転時に前記製氷水供給部により前記製氷小室32の夫々へ製氷水を供給して製氷を行うと共に、製氷完了を検知して除氷運転に切り替えるよう制御装置が制御することで氷塊Rを製造する。すなわち、前記給水部50の給水弁52を開放制御して、該給水管51から所定量の製氷水を前記製氷水タンク34に供給する。更に、冷凍回路20の冷凍運転を行い、前記製氷部31の各製氷小室32を氷点下にまで冷却する。また、前記送水ポンプ45を作動させて、前記製氷水タンク34に貯留されている製氷水を、下向きに開口する前記製氷小室32の夫々に噴射供給して、各製氷小室32に氷塊Rを生成していく。なお、前記製氷小室32で氷結しなかった製氷水は、水皿33に形成した戻り孔(図示せず)を介して前記製氷水タンク34へ回収され、再び送水ポンプ45により各製氷小室32へ循環供給される。
【0033】
そして、圧力検出センサ112の検出圧力が制御装置に予め設定された製氷完了圧力となることで、製氷運転から除氷運転に移行するよう冷凍回路20がの動作が制御される。具体的には、前記冷凍回路20のホットガス弁27を開いて、ホットガスを前記冷却部25に供給して製氷部31の温度を上昇させる。このとき、水皿開閉機構35を駆動して前記水皿33を所要角度に傾動させて製氷部31を開放し、各製氷小室32から離脱した氷塊Rを下方の貯氷室12へ放出する。そして、圧力検出センサ112の検出圧力が制御装置に予め設定された除氷完了圧力となることで、制御装置が除氷完了を判別して除氷運転を終了するように冷凍回路20の動作を制御する。具体的には、除氷運転の終了に伴い、圧縮機21で圧縮された高温の冷媒が凝縮器22に送られるよう前記冷凍回路20のホットガス弁27を切り替えると共に、前記水皿開閉機構35を作動して前記水皿33を閉鎖位置に移動させる。ここで、貯氷室12には氷塊Rが満杯まで貯氷されたことを検出する貯氷検知スイッチ60が設けられており、貯氷検知スイッチ60が氷の満杯を検出していない状態の場合には、前述した製氷運転および除氷運転を繰り返し実行するよう各部が制御され、除氷運転の終了時に貯氷検知スイッチ60が氷の満杯を検出することで、製氷運転が停止される。
【0034】
ここで、冷却部25の蒸発管100は、冷凍回路20の冷媒が循環する内管102と、当該内管102が内部に挿通されて当該内管102との間に空間部106を形成する外管104とを有する二重管構造に形成され、冷媒が循環する内管102が貯氷室12に露出しないように製氷部31に取り付けられている。このため、蒸発管100を流通する冷媒が貯氷室12に漏出するのを効果的に防ぐことができ、蒸発熱や飽和圧等の冷媒としての特性に優れているブタンやプロパン等の炭化水素ガスを冷媒に採用しつつ、製氷部31が配置されている貯氷室12内に冷却部25を配置することができる。
【0035】
具体的に、貯氷室12内に位置する蒸発管100を、内管102と外管104との二重管構造として、内管102の内側の空間を冷媒が流通するように構成することで、腐食等が生じて内管102に孔空き(孔食)が発生したとしても、内管102から漏出した一次冷媒を外管104の内部に留まらせることができ、冷媒が外部に漏れ出すことを効果的に防ぐことができる。また、冷媒の漏れを検出するために、ガスセンサや冷媒の漏出時に冷媒の供給を遮断する遮断弁などの検知精度に課題のある装置構成を設ける必要が無いから、自動製氷機10の信頼性を高めることができる。また、高価なガスセンサや遮断弁を必要としないことにより、製品の製造コストを低廉に抑制することができる利点がある。
【0036】
また、蒸発管100を二重管構造とした場合でも、内管102と外管104との間の空間部106に熱伝導性に優れた二酸化炭素を充填することで、蒸発管100を二重管構造として冷媒の外部への漏れを効果的に防止しつつ冷却部25の冷却性能の低下を防止することができる。
【0037】
更に、蒸発管100の内管102に冷媒を流通させるようにした場合でも、冷媒の漏れを圧力検出センサ112や冷媒検出センサ114により検出することで、冷媒の漏れがある状態か否かを早期に発見して、冷媒の漏れがある異常な状態で冷凍回路20や製氷機構30が運転されるのを防止することが可能になると共に、冷媒の漏れがある状態を速やかに解消して復旧させることができるようになる。更に、冷媒検出センサ114を設ける場合に、当該冷媒検出センサ114や側管116の外側の開口端部を囲むように隔壁118を設けることにより、冷媒検出センサ114の設置箇所周辺の雑ガスの影響を抑制して冷媒の漏れを正確に検出することが可能になる。
【0038】
そして、蒸発管100内を流通する冷媒による温度変化に伴って変化する内管102と外管104との間の空間部106に充填されている気体(二酸化炭素)の圧力を圧力検出センサ112で検出することで、前述したように当該圧力検出センサ112の検出圧力に基づいて自動製氷機10の運転状態(製氷運転の完了および除氷運転の完了)を判別して冷凍回路20の動作制御が可能になると共に、冷媒の漏れを圧力検出センサ112により検出することが可能になる。すなわち、自動製氷機10の運転制御と、冷媒の漏れがある状態か否かの判別を圧力検出センサ112の検出圧力に基づいて兼用して行うことが可能になる。このため、従来の自動製氷機において製氷運転の完了や除氷運転の完了を検出するために用いられているサーミスタなの温度センサを省略することができるから、自動製氷機10の簡略化を図りコストを抑制することができる利点がある。
【0039】
(変更例)
本発明に係る製氷機構としては、前述した実施形態に示すものに限られるものではなく、種々の変更が可能である。
【0040】
(1) 圧力検出センサ112および冷媒検出センサ114により蒸発管100からの冷媒の漏れを検出するよう構成したが、圧力検出センサ112および冷媒検出センサ114の一方または両方を省略することもできる。また、圧力検出センサ112や冷媒検出センサ114の配置位置は任意に変更することができ、圧力検出センサ112を貯氷室12に配置したり、冷媒検出センサ114を貯氷室12の外側に配置するようにしてもよい。
(2) 蒸発管100を形成する内管102や外管104は単層の配管に限らず複層の配管を採用することができる。
(3) 蒸発管100としては内管102および外管104を備えた二重管構造に限られるものではなく、3つ以上の管体を同心状に挿通した多重管構造として、冷媒が循環する管体の外側に別の管体が位置するようにして、当該管体の間に空間部を備えるよう構成してもよい。
(4) 蒸発管100の内管102内を流通させる冷媒としては炭化水素ガスに限定されるものではなく、アンモニアや二酸化炭素などの従来公知の冷媒を採用することができ、また複数の気体を混合した混合冷媒を用いるようにしてもよい。
(5) 実施形態では、製氷小室32の開口を水皿33で塞いだ状態で製氷水を噴射供給する所謂クローズドセル式の自動製氷機10に本発明に係る製氷機構30を適用する場合を例にして説明したが、製氷小室32の開口を開放した状態で製氷水を噴射供給する所謂オープンセル式の自動製氷機の製氷機構に適用することも可能である。また、自動製氷機に限らず、冷凍庫や冷凍・冷蔵庫、ショーケースおよびプレハブ庫等の所謂貯蔵庫など製氷機構を備えた従来公知の装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
12 貯氷室(冷却空間),20 冷凍回路,25 冷却部,31 製氷部
32 製氷小室,100 蒸発管,102 内管,104 外管
112 圧力検出センサ(圧力検出手段),S 開放空間
図1
図2
図3
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図5
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図7