IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クレオの特許一覧

<>
  • 特開-洗浄装置、洗浄液および洗浄方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088527
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】洗浄装置、洗浄液および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20230620BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20230620BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B08B3/02 A
C11D7/18
C11D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203317
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】396013329
【氏名又は名称】株式会社クレオ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光也
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA21
3B201AB03
3B201AB13
3B201BB24
3B201BB62
3B201BB92
3B201CB15
3B201CC01
3B201CC11
3B201CD22
3B201CD42
3B201CD43
4H003BA20
4H003CA15
4H003DA05
4H003DA17
4H003DC01
4H003EA16
4H003EA21
4H003ED02
4H003EE04
4H003FA23
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を用いて被洗浄体を的確に洗浄することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被洗浄体3が設置される被洗浄体設置部5と、所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質とした常温の水溶液9を、被洗浄体設置部5に設置されている被洗浄体3に向けて吐出する水溶液吐出部7とを有する洗浄装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体が設置される被洗浄体設置部と、
所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質とした常温の水溶液を、前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出する水溶液吐出部と、
を有する洗浄装置。
【請求項2】
前記水溶液を蓄える水溶液蓄え部を有し、
前記水溶液吐出部は、前記水溶液蓄え部に蓄えられている水溶液を前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出し、前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出された水溶液は、前記水溶液蓄え部に戻るように構成されている請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度を検出するペーハー調整剤濃度検出センサと、
前記ペーハー調整剤濃度検出センサでの検出結果に応じて、前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度と前記水溶液中の過酸化水素の濃度とを調整する濃度調整部と、
を有する請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記水溶液吐出部によって前記水溶液で洗浄された前記被洗浄体に向けて水を吐出して前記被洗浄体のすすぎをするすすぎ部を有し、
前記すすぎ部で使用された水が、前記水溶液に供給されるように構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
所定量の過酸化水素と、アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤と、前記所定量の過酸化水素と前記所定量のペーハー調整剤とが溶質となっている水とで構成されている洗浄液であって、
被洗浄体の洗浄をするために常温で使用される洗浄液。
【請求項6】
アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤および所定量の過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を、被洗浄体に向けて吐出する水溶液吐出工程を有する洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置、洗浄液および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品用のトレイ等の被洗浄体を、たとえば80℃程度の高温の洗浄液を用いて洗浄する洗浄装置が知られている。ボイラ等で昇温された高温の洗浄液を用いることで、被洗浄体に付着している汚れをしっかりと落すことができる。
【0003】
しかし、洗浄液を昇温するには、多くの燃料が消費されてしまう。これは、環境問題(たとえば、2050年カーボンニュートラルの宣言)に対して好ましいことではない。
【0004】
また、人間が労働するのに適した温度は、23℃~25℃なのであるが、高温の洗浄液を用いると、人間が労働する部屋の温度が労働者にとって不適な温度まで上がってしまう。そこで、部屋内の熱がこもった空気を、ダクト等を介して適宜排除する必要がある。さらに、洗浄液の温度が上がると、洗浄液に溶けている洗浄剤の成分等が分解等によってぬけてしまうおそれがある。
【0005】
なお、低温においても、油汚れと蛋白質汚れに対して優れた洗浄力を示す自動食器洗浄機用洗浄剤が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤は、洗浄基剤として、オキシプロピレン基の平均重合度が30~90であるポリオキシプロピレンを用い、更に特定の理化学的性質を有するアルカリプロテアーゼを配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-36928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、安全、安価なしかも容易に得ることができる洗浄液として、過酸化水素を溶質とした水溶液を用いることが考えられる。洗浄液を常温で使用すれば、過酸化水素の分解が抑制される。
【0009】
本発明は、過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を用いて被洗浄体を的確に洗浄することができる洗浄装置および洗浄方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、過酸化水素を溶質とした常温の水溶液からなり、被洗浄体を的確に洗浄することができる洗浄液を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、被洗浄体が設置される被洗浄体設置部と、所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質とした常温の水溶液を、前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出する水溶液吐出部とを有する洗浄装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記水溶液を蓄える水溶液蓄え部を有し、前記水溶液吐出部は、前記水溶液蓄え部に蓄えられている水溶液を前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出し、前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体に向けて吐出された水溶液は、前記水溶液蓄え部に戻るように構成されている請求項1に記載の洗浄装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度を検出するペーハー調整剤濃度検出センサと、前記ペーハー調整剤濃度検出センサでの検出結果に応じて、前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度と前記水溶液中の過酸化水素の濃度とを調整する濃度調整部とを有する請求項1または請求項2に記載の洗浄装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記水溶液吐出部によって前記水溶液で洗浄された前記被洗浄体に向けて水を吐出して前記被洗浄体のすすぎをするすすぎ部を有し、前記すすぎ部で使用された水が、前記水溶液に供給されるように構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、所定量の過酸化水素と、アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤と、前記所定量の過酸化水素と前記所定量のペーハー調整剤とが溶質となっている水とで構成されている洗浄液であって、被洗浄体の洗浄をするために常温で使用される洗浄液である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤および所定量の過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を、被洗浄体に向けて吐出する水溶液吐出工程を有する洗浄方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を用いて被洗浄体を的確に洗浄することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る洗浄装置1は、図1で示すように、食品トレイ等の被洗浄体3を洗浄する装置であり、洗浄部2とすすぎ部17とを備えて構成されている。洗浄部2は、被洗浄体設置部(被洗浄体載置部)5と水溶液吐出部(水溶液噴射部)7とを備えて構成されている。
【0020】
被洗浄体設置部5には、洗浄の対象である被洗浄体3が設置されるようになっている。被洗浄体設置部5に設置される前の被洗浄体3には、蛋白質、油脂等が付着している。
【0021】
水溶液吐出部7は、被洗浄体3の洗浄をするために、洗浄液である常温の水溶液9を、被洗浄体設置部5に設置されている被洗浄体3に向けて吐出(噴射)するようになっている。水溶液9は、所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質としている。すなわち、水溶液9は、水と所定量の過酸化水素と所定量のペーハー調整剤とで生成されている。
【0022】
ペーハー調整剤は水溶液9をアルカリ性にするものであり、ペーハー調整剤として、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の少なくともいずれかが使用される。
【0023】
水溶液9における過酸化水素の濃度は、1wt%~2wt%の範囲内になっているが、上記範囲を適宜広げてもよい。たとえば、1wt%~3wt%に広げてもよいし、0.5wt%~5wt%に広げてもよい。
【0024】
また、水溶液9におけるペーハー調整剤の量は、水溶液9のPHの値を8よりも大きくする(8~14の範囲内)量である。水溶液9におけるペーハー調整剤の量は、より好ましくは、水溶液9のPHの値を11前後(たとえば10~12)にする量である。
【0025】
水溶液9における常温とは、水溶液9が液体の状態にある温度であって、ペーハー調整剤と油脂との間での鹸化が発生しにくく、水溶液9から泡が生成されにくい温度をいう。たとえば、常温として、0℃~50℃の範囲内に温度を掲げることができる。また、常温を、10℃~45℃の範囲内の温度としてもよいし、20℃~40℃の範囲内の温度としてもよいし、30℃~40℃の範囲内の温度としてもよいし、35℃~40℃の範囲内の温度としてもよい。なお、35℃から50℃の温度は、通常、常温よりも若干高温な温度であると認識されるが、ここでは、常温に含めることにする。
【0026】
また、洗浄装置1には、水溶液蓄え部11とペーハー調整剤濃度検出センサ13と濃度調整部15とが設けられている。水溶液蓄え部11は、水溶液9を蓄えるようになっている。
【0027】
水溶液吐出部7は、水溶液蓄え部11に蓄えられている水溶液9を被洗浄体設置部5に設置されている被洗浄体3に向けて吐出するようになっている。
【0028】
被洗浄体設置部5に設置されている被洗浄体3に向けて吐出された水溶液9は、水溶液蓄え部11に戻るように構成されている。水溶液9は、1日毎等の所定時間毎(たとえば、洗浄装置1が稼働して被洗浄体3の洗浄を所定時間する毎)に交換される。
【0029】
ペーハー調整剤濃度検出センサ13は、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度を検出するようになっている。さらに説明すると、ペーハー調整剤濃度検出センサ13は、水溶液9の電気伝導度を検出することで、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度を検出するようになっている。
【0030】
濃度調整部15は、ペーハー調整剤濃度検出センサ13での検出結果に応じて、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度と水溶液9中の過酸化水素の濃度とを調整するようになっている。すなわち、過酸化水素の濃度を直接検出することなく、ペーハー調整剤濃度検出センサ13で検出したペーハー調整剤の濃度に応じて、過酸化水素の濃度を調整するようになっている。
【0031】
さらに説明すると、濃度調整部15は、水溶液9に、所定量のペーハー調整剤と所定量の過酸化水素を適宜供給することで、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度と水溶液9中の過酸化水素の濃度とを調整するようになっている。濃度調整部15によるペーハー調整剤と過酸化水素との濃度の調整は、被洗浄体3を洗浄するときに被洗浄体3に付着している蛋白質や油脂を適切に落とすためになされる。
【0032】
また、洗浄装置1のすすぎ部17では、水溶液吐出部7によって水溶液9で洗浄された被洗浄体3に向けて水19を吐出(噴射)して被洗浄体3のすすぎをするようになっている。
【0033】
すすぎ部17で被洗浄体3のすすぎに使用された水は、一定期間の使用後、すすぎ部17でのすすぎに使用されなくなった後に、水溶液9に供給され水溶液吐出部7で使用されるようになっている。すすぎ部17ですすぎがされた被洗浄体3は、図示しない脱水部(たとえば遠心力を用いた脱水装置)にて水切りがされるようになっている。
【0034】
洗浄装置1についてさらに詳しく説明する。
【0035】
洗浄装置1の洗浄部2には、洗浄室21が設けられている。被洗浄体設置部5は、洗浄室21内に設けられている。水溶液蓄え部11から洗浄室21までは、配管23が延びている。配管23の途中にはポンプ26が設けられている。ポンプ26が稼働することで、水溶液蓄え部11から洗浄室21内に水溶液9が供給されるようになっている。
【0036】
水溶液9は、洗浄室21内で被洗浄体3に向けて配管23から吐出されるようになっている。ヒータ等の温度調節部をわざわざ設けていなくても、水溶液の温度は、ポンプ26による水溶液9の攪拌等によって、30℃~40℃温度に落ち着くようになっている。
【0037】
濃度調整部15は、過酸化水素供給部25と図示しないペーハー調整剤供給部とが設けられている。過酸化水素供給部25は、水溶液蓄え部11の水溶液9に濃い過酸化水素の水溶液を供給するようになっている。ペーハー調整剤供給部は、水溶液蓄え部11の水溶液9にペーハー調整剤(たとえば水酸化ナトリウム)を供給するようになっている。
【0038】
なお、水溶液蓄え部11の水溶液9に過酸化水素を供給する代わりに、配管23の途中で配管23内に過酸化水素を供給してもよい(破線の矢印A1、A2参照)。
【0039】
すすぎ部17も、洗浄部2と同様にして、被洗浄体設置部27と水蓄え部29とすすぎ室31と配管33とポンプ35とを備えて構成されている。そして、洗浄部2と同様にして、ポンプ35が稼働することで、被洗浄体設置部27に設置された被洗浄体3に向けて水19が吐出されるようになっている。また、上述したように、水蓄え部29内の水19は、水溶液蓄え部11に適宜供給されるようになっている。
【0040】
洗浄部2からすすぎ部17、すすぎ部17から図示しない脱水部への被洗浄体3の移送は、たとえば図示しないコンベヤでなされるようになっているが、バッチ方式で被洗浄体3の洗浄、すすぎ、脱水がされるようになっていてもよい。
【0041】
ここで、洗浄部2についてさらに説明する。配管23の途中からは、配管(分岐配管)23Aが分岐している。配管23Aを流れた水溶液9は、洗浄部2での洗浄に使用されることなく、水溶液蓄え部11に直接戻るようになっている。
【0042】
配管23の途中には、流量調整バルブ36Aが設けられており、配管23Aの途中には、流量調整バルブ36Bが設けられている。流量調整バルブ36Aは、配管23Aが分岐している箇所よりも下流側(水溶液9の流れ方向の下流側)に設けられている。そして、流量調整バルブ36Aが洗浄部2で被洗浄体3に向けて吐出される水溶液9の量を調整するようになっている。流量調整バルブ36Bは、水溶液蓄え部11に直接戻る水溶液9の量を調整するようになっている。
【0043】
ポンプ26として、たとえば、吐出量が一定である定吐出量のものが採用されている。そして、流量調整バルブ36Bを閉じ流量調整バルブ36Aを開くことで、ポンプ26から吐出された水溶液9の総てが、洗浄部2で使用されるようになっている。また、流量調整バルブ36Bを開き流量調整バルブ36Aを閉じることで、ポンプ26から吐出された水溶液9の総てが、水溶液蓄え部11に直接戻るようになっている。
【0044】
なお、流量調整バルブ36A、流量調整バルブ36Bの開度を適宜調整することで、ポンプ26から吐出され洗浄部2で使用される水溶液9と、ポンプ26から吐出され水溶液蓄え部11に直接戻る水溶液9との比を適宜変えることができるようになっていてもよい。
【0045】
このように構成されていることで、ポンプ26から吐出された水溶液9が洗浄部2で使用されなくても、ポンプ26を稼働させておけば、水溶液9を被洗浄体3の洗浄に適した温度(たとえが30℃~40℃)の範囲内に保つことができる。
【0046】
次に、すすぎ部17についてさらに説明する。配管33の途中からは、配管(分岐配管)33Aが分岐している。そして、配管33Aを流れたに水19は、すすぎ部17でのすすぎに使用されることなく、水蓄え部29に直接戻るようになっている。
【0047】
配管33の途中には、流量調整バルブ37Aが設けられており、配管33Aの途中には、流量調整バルブ37Bが設けられている。流量調整バルブ37Aは、配管33Aが分岐している箇所よりも下流側(水19の流れ方向の下流側)に設けられている。そして、流量調整バルブ37Aがすすぎ部17で被洗浄体3に向けて吐出される水19の量を調整するようになっている。流量調整バルブ37Bは、水蓄え部29に直接戻る水19の量を調整するようになっている。
【0048】
ポンプ35として、たとえば、吐出量が一定である定吐出量のものが採用されている。そして、流量調整バルブ37Bを閉じ流量調整バルブ37Aを開くことで、ポンプ35から吐出された水19の総てが、すすぎ部17で使用されるようになっている。また、流量調整バルブ37Bを開き流量調整バルブ37Aを閉じることで、ポンプ35から吐出された水19の総てが、水蓄え部29に直接戻るようになっている。
【0049】
なお、流量調整バルブ37A、流量調整バルブ37Bの開度を適宜調整することで、ポンプ35から吐出されすすぎ部17で使用される水19と、ポンプ35から吐出され水蓄え部29に直接戻る水19との比を適宜変えることができるようになっていてもよい。
【0050】
このように構成されていることで、ポンプ35から吐出された水19がすすぎ部17で使用されなくても、ポンプ35を稼働させておけば、水19を被洗浄体3のすすぎに適した温度(たとえな30℃~40℃)の範囲内に保つことができる。
【0051】
次に、すすぎ部17で使用された水19の流れ(動き)についてさらに説明する。すすぎ室31からは配管39A、39B、39Cが延出している。配管39A、39B、39C内を、水19が流れるようになっている。
【0052】
配管39Aは、すすぎ室31の底部と水溶液蓄え部11とをつないでいる。配管39Bは、すすぎ室31の底部と水蓄え部29とをつないでいる。配管39Cは、すすぎ室31の底部と図示しない水19等の排水口とをつないでいる。
【0053】
配管39Aの途中には、流量調整バルブ37Cが設けられている。配管39Bの途中には、流量調整バルブ37Dが設けられている。配管39Cの途中には、流量調整バルブ37Eが設けられている。そして、流量調整バルブ37C、37D、37Eの開度を調整することで、すすぎ部17で使用された水19のすすぎ室31から水溶液蓄え部11、水蓄え部29への供給量を、適宜調整することができるようになっている。また、流量調整バルブ37C、37D、37Eの開度を調整することで、すすぎ部17で使用された水19のすすぎ室31から排水口へ廃棄される量を、適宜調整することができるようになっている。
【0054】
なお、すすぎ部17で使用された水19は、重力によって、水溶液蓄え部11、水蓄え部29へ供給され、また、排水口から廃棄されるようになっている。ここで、ポンプ(図示せず)を設け、このポンプ(たとえば定吐出量ポンプ)によって、水19が強制的に供給されまた廃棄がされるようになっていてもよい。
【0055】
また、常態では、すすぎ部17で使用された水19のほとんどが、水溶液蓄え部11に供給され水溶液9として使用されるようになっている。これにより、水溶液蓄え部11で水溶液9の量が増えるが、水溶液9の量が増えすぎた場合、水溶液蓄え部11から水溶液9がオーバーフローし、このオーバーフローした水溶液9は廃棄されるようになっている。
【0056】
なお、水蓄え部29に、図示しないセンサが設けられていてもよい。このセンサ(たとえばレベルセンサ)は、水蓄え部29内の水19の量を測定するようになっている。そして、水蓄え部29内の水19が所定量よりも減少した場合には、図示しない水供給部から水蓄え部29内に水19を供給するようになっていてもよい。
【0057】
また、洗浄装置1には、たとえば、CPU43とメモリ45を備えて構成されている制御部41が設けられており、制御部41の制御の下、洗浄装置が動作するようになっている。
【0058】
次に、洗浄装置1の動作について説明する。まず、洗浄部2の被洗浄体設置部5に洗浄前の被洗浄体3が設置される。続いて、被洗浄体3に向けて水溶液9を所定時間吐出し、被洗浄体3の洗浄をする。
【0059】
なお、稼働し始めてからしばらくの間は、水溶液9の温度が10℃から25℃程度の低い温度になっているが、この低い温度のまま、被洗浄体3の洗浄を行ってもよい。また、水溶液9の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの検出結果に応じて、被洗浄体3に向けて水溶液9を吐出する時間を適宜変更してもよい。たとえば、水溶液9の温度が低いときには、被洗浄体3に向けて水溶液9を吐出し洗浄する時間を長くし、水溶液9の温度が高くなるにしたがって、被洗浄体3に向けて水溶液9を吐出し洗浄する時間を次第に短くしてもよい。
【0060】
洗浄部2で洗浄された被洗浄体3は、すすぎ部17の被洗浄体設置部27に設置される。続いて、被洗浄体3に向けて水19を所定時間吐出し、被洗浄体3のすすぎをする。すすぎ部17ですすぎがされた被洗浄体3は、図示しない脱水部で水切りがされる。
【0061】
洗浄装置1では、所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質とした常温の水溶液9を被洗浄体設置部5に設置されている被洗浄体3に向けて吐出するようになっている。
【0062】
これにより、過酸化水素を溶質とした常温の水溶液9を用いて被洗浄体3を的確に洗浄することができる。
【0063】
また、水溶液9を昇温する必要がないので、昇温のための燃料が消費されることがなく、省エネルギーであり環境問題に対しても好ましいことになる。
【0064】
また、常温の水溶液9を用いるので、人間が労働する部屋の温度が労働にとって不適な温度まで上がってしまうことが防止される。人間が労働する部屋の環境改善がなされる。
【0065】
水溶液9の温度を常温とすることで、ペーパー調整剤と油脂とによる鹸化がほとんど起こらず、水溶液9が泡立つことが無くなる。また、過酸化水素を溶質として使用しているので、水溶液9を被洗浄体3に向けて噴射しても、泡がほとんど発生しない。これにより、水溶液9の噴射による削ぎ力(被洗浄体3に付着している汚れを削ぐ力)を維持できる。
【0066】
また、過酸化水素を溶質として使用しているので、塩素系の洗浄液を用いる場合のように、被洗浄体3の洗浄後の乾燥時等に不快な臭いが発生することがほとんどない。
【0067】
ここで、所定量の過酸化水素およびアルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤を溶質とした常温の水溶液9の洗浄作用についての概要を説明する。
【0068】
過酸化水素は、水溶液中では弱酸であり、アルカリ性の領域の水溶液中では水素イオン(H)とペルヒドロキシアニオン(HO )に解離する。pH9では、非解離過酸化水素の存在割合は、99%以上になっている。pHの値が上昇するとともに、過酸化水素の解離度が高まり、pH11.6では、非解離過酸化水素の存在割合は、50%になる。pH13以上では、非解離過酸化水素の存在割合は4%以下になる。
【0069】
逆に、ペルヒドロキシアニオン(HO )存在割合は、pHの値が上昇するとともに上昇する。過酸化水素の洗浄力(被洗浄体に付着している汚れに対する洗浄力)は、水酸化物イオン(OH)の洗浄力を基盤として、過酸化水素の解離で生成されるペルヒドロキシアニオンの蛋白質分解作用に起因する。
【0070】
洗浄装置1には、水溶液9を一時的に蓄える水溶液蓄え部11が設けられている。そして、水溶液9が循環する態様で使用されるようになっている。これにより、水溶液9を無駄にせず使用することができる。
【0071】
また、水溶液吐出部7は、ポンプ26を用いて水溶液9を吐出しているが、ポンプ26による水溶液9の流れの形成等によって、水溶液9の温度が洗浄に適した30℃~40℃程度になる。水溶液9を循環する態様で使用することで、熱を極力無駄にすることなく35℃~40℃の温度を維持しやすくなる。
【0072】
洗浄装置1では、濃度調整部15が、ペーハー調整剤濃度検出センサ13での検出結果に応じて、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度と水溶液9中の過酸化水素の濃度とを調整するように構成されている。
【0073】
ペーハー調整剤濃度検出センサ13は、水溶液9の電気伝導度を検出することで、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度を検出するようになっている。一方、水溶液9中の過酸化水素の濃度の検出は、水溶液9中のペーハー調整剤の濃度に検出に比べて困難である。
【0074】
水溶液9が、洗浄に使用されると、水溶液9中の過酸化水素とペーハー調整剤との濃度は低下するが、たとえば、過酸化水素の濃度が低下する割合と、ペーハー調整剤との濃度が低下する割合とは、ほぼ一定になっている。
【0075】
そこで、検出が容易なペーハー調整剤の濃度のみを検出し、この検出結果に応じて、過酸化水素の濃度を推定する。これらに基づいてペーハー調整剤と過酸化水素の濃度を調整すれば、水溶液9におけるペーハー調整剤の濃度と過酸化水素の濃度とを安価でしかも容易に調整することができる。
【0076】
なお、水溶液9が、洗浄に使用されることで水溶液9中の過酸化水素とペーハー調整剤との濃度が低下したときに、過酸化水素の濃度が低下する割合と、ペーハー調整剤との濃度が低下する割合とが、一定になっていない場合には、次のようにする。過酸化水素の濃度の低下量に対するペーハー調整剤の濃度の低下量を予めもとめておく。このもとめたデータをメモリ45に記憶しておく。そして、メモリ45に記憶してあるデータとペーハー調整剤濃度検出センサ13での検出結果とに基づいてペーハー調整剤と過酸化水素の濃度を自動的に調整する。なお、メモリ45に記憶することなく、データで対応表を作成しておき、この対応表を用いて、人がペーハー調整剤と過酸化水素の濃度を調整してもよい。
【0077】
また、洗浄装置1では、すすぎ部17でのすすぎに使用された水19が、水溶液9に供給され使用されるように構成されている。これにより、水19の無駄を極力無くして、被洗浄体3の洗浄をすることができる。
【0078】
ところで、上述した内容を洗浄方法として把握してもよい。
【0079】
すなわち、アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤および所定量の過酸化水素を常温の水(不純物がほぼ除去されている水道水等の水)に添加することで、水溶液を生成する水溶液生成工程と、この水溶液生成工程で生成され、アルカリ性の度合いを調整する所定量のペーハー調整剤および所定量の過酸化水素を溶質とした常温の水溶液を、被洗浄体に向けて吐出する水溶液吐出工程を有する洗浄方法として把握してもよい。
【0080】
この洗浄方法において、水溶液を一時的に蓄える水溶液蓄え部を設け、前記水溶液吐出工程が、前記水溶液蓄え部に蓄えられている水溶液を前記被洗浄体設置部に設置されている被洗浄体向けて吐出する工程であり、前記被洗浄体向けて吐出された水溶液が、前記水溶液蓄え部に戻るようにしてもよい。
【0081】
また、上記洗浄方法において、前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度を、ペーハー調整剤濃度検出センサを用いて検出するペーハー調整剤濃度検出工程と、前記ペーハー調整剤濃度検出工程での検出結果に応じて、前記水溶液中のペーハー調整剤の濃度と前記水溶液中の過酸化水素の濃度とを調整する濃度調整工程とを設けてもよい。
【0082】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 洗浄装置
3 被洗浄体
5 被洗浄体設置部
7 水溶液吐出部
9 水溶液
11 水溶液蓄え部
13 ペーハー調整剤濃度検出センサ(ペーハー検出センサ)
15 濃度調整部
17 すすぎ部
図1