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  • 特開-オフセット印刷システム及び温調装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088536
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】オフセット印刷システム及び温調装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 7/02 20060101AFI20230620BHJP
   B41F 13/00 20060101ALI20230620BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20230620BHJP
   B41F 13/22 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B41F7/02 326
B41F13/00 614
B41F33/00 200
B41F13/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203334
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】501113076
【氏名又は名称】アインズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正宏
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
【Fターム(参考)】
2C034AA12
2C034AA42
2C250DA04
(57)【要約】
【課題】湿し水を用いることなく版面温度を調整可能なオフセット印刷システムを提供する。
【解決手段】オフセット印刷システム100は、オフセット印刷機3と温調装置2を備え、オフセット印刷機3は、版胴31とブランケット胴32を備える。温調装置2は、温調風Aを発生させるための温調機6と、スリットが設けられた吹出ダクト7と、温調機により発生された温調風Aを吹出ダクト7へ供給するための接続ダクト8と、を備える。吹出ダクト7に供給された温調風Aは、版胴31とブランケット胴32との対向位置に向けて吹き出される。吹出ダクトには所定方向に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板が設けられ、複数枚の仕切り板の表面積は接続ダクト8が接続された端面から他方の端面に向かうに従い漸増する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に搬送される被印刷物に印刷を行うためのオフセット印刷機と、
温調装置と、を備え、
前記オフセット印刷機は、周面に印刷版を備えた版胴と、前記版胴と対向配置されたブランケット胴と、を備え、
前記温調装置は、前記オフセット印刷機を冷却又は加熱するための温調風を発生させる温調機と、スリットが設けられた吹出ダクトと、前記温調機により発生された温調風を前記吹出ダクトへ供給するための接続ダクトと、を備え、
前記吹出ダクトに供給された前記温調風は、前記スリットから前記版胴と前記ブランケット胴との対向位置に向けて吹き出され、
前記吹出ダクトは、所定方向において相互に対向する第1端面及び第2端面と、前記所定方向に延びる側面と、を備え、
前記第1端面には前記接続ダクトが接続する接続孔が設けられ、
前記スリットは前記側面に設けられ、
前記吹出ダクトには前記所定方向に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板が設けられ、前記複数枚の仕切り板の表面積は前記第1端面から前記第2端面に向かうに従い漸増するオフセット印刷システム。
【請求項2】
前記温調機は、冷却モードと温めモードを有し、
前記冷却モードにおいて、前記温調機は周辺空気を10°以下の下げ温度で冷却して前記温調風を発生させ、
前記温めモードにおいて、前記温調機は周辺空気を10°以上の上げ温度で加熱して前記温調風を発生させる請求項1に記載のオフセット印刷システム。
【請求項3】
前記吹出ダクトは、前記対向位置よりも前記搬送方向上流側に位置する請求項1又は2に記載のオフセット印刷システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のオフセット印刷システムにおいて用いられる温調装置であって、
温調風を発生させるための温調機と、
前記温調機から供給された温調風を吹き出すためのスリットが設けられた吹出ダクトと、
前記温調機により発生された温調風を前記吹出ダクトへ供給するための接続ダクトと、を備え、
前記吹出ダクトは、所定方向において相互に対向する第1端面及び第2端面と、前記所定方向に延びる側面と、を備え、
前記第1端面には前記接続ダクトが接続する接続孔が設けられ、
前記スリットは前記側面に設けられ、
前記吹出ダクトには前記所定方向に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板が設けられ、前記複数枚の仕切り板の表面積は前記第1端面から前記第2端面に向かうに従い漸増する温調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷システム及びこれに用いられる温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、版に付けたインクをブランケット胴に転写し、これを紙に転移して印刷するオフセット印刷が行われている。このようなオフセット印刷には、湿し水を用いる水あり印刷と、湿し水を利用しない水なし印刷がある。湿し水にはエッチ液等の有害物質が含まれ、これを廃棄するには産業廃棄物として処理する必要があることから、環境保全の観点からは湿し水を利用しない水なし印刷を採用するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2017/077825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DG(ドットゲイン)量は印刷物の色品質に影響を与え、一般社団法人日本印刷学会(ジャパンカラー)が要求するDG量の許容範囲は±3%以内とされている。カラー印刷の色調再現の管理を図るには、DG量を一定の許容範囲内に収める必要があるところ、版面温度(インク温度)が高過ぎるとDG量が太り過ぎ、版面温度が低過ぎるとDG量が細り過ぎ、色調品質の低下に繋がる。
【0005】
より具体的に、オフセット印刷装置を稼働すると版面の温度が上昇していき、版面の温度が上昇するとDG量も増加してしまう。また、印刷速度が上がるほど版面温度も高くなる。この点、水あり印刷においては湿し水が版面冷却の役割を担うことから、湿し水による冷却効果を利用してDG量の上昇を抑えることが可能であるが、水なし印刷においては湿し水による冷却効果は得られない。
【0006】
特に、UVインクを用いる水なしUV印刷においては、10,000/rph以下の印刷速度であっても、3,000枚程度を印刷した時点で版面温度の上昇によりDG量が増加し、色むらや地汚れが発生する等、高温下での障害が発生してしまっていた。
【0007】
一方、冬期および長時間の機械停止により、版面温度が適正温度範囲の下限を下回ると、GD量が低下する他、印刷用紙の剥けやインクの転移着肉不良、エッジピック等の障害が発生してしまっていた。
【0008】
本発明は、湿し水を用いることなく版面温度を調整可能なオフセット印刷システム及びこれに用いられる温調装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るオフセット印刷システムは、所定方向に搬送される被印刷物に印刷を行うためのオフセット印刷機と、温調装置と、を備え、前記オフセット印刷機は、周面に印刷版を備えた版胴と、前記版胴と対向配置されたブランケット胴と、を備え、前記温調装置は、前記オフセット印刷機を冷却又は加熱するための温調風を発生させる温調機と、スリットが設けられた吹出ダクトと、前記温調機により発生された温調風を前記吹出ダクトへ供給するための接続ダクトと、を備え、前記吹出ダクトに供給された前記温調風は、前記スリットから前記版胴と前記ブランケット胴との対向位置に向けて吹き出され、前記吹出ダクトは、所定方向において相互に対向する第1端面及び第2端面と、前記所定方向に延びる側面と、を備え、前記第1端面には前記接続ダクトが接続する接続孔が設けられ、前記スリットは前記側面に設けられ、前記吹出ダクトには前記所定方向に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板が設けられ、前記複数枚の仕切り板の表面積は前記第1端面から前記第2端面に向かうに従い漸増する。
【0010】
また、本発明に係る温調装置は、上記オフセット印刷システムにおいて用いられる温調装置であって、温調風を発生させるための温調機と、前記温調機から供給された温調を吹き出すためのスリットが設けられた吹出ダクトと、前記温調機により発生された温調風を前記吹出ダクトへ供給するための接続ダクトと、を備え、前記吹出ダクトは、所定方向において相互に対向する第1端面及び第2端面と、前記所定方向に延びる側面と、を備え、前記第1端面には前記接続ダクトが接続する接続孔が設けられ、前記スリットは前記側面に設けられ、前記吹出ダクトには前記所定方向に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板が設けられ、前記複数枚の仕切り板の表面積は前記第1端面から前記第2端面に向かうに従い漸増する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るオフセット印刷システム及び温調装置によれば、温調機により発生された温調風により版胴を冷却できるので、湿し水を用いる必要がない。また、吹出ダクトには複数枚の仕切り板が設けられているので、スリットからの吹き出す温調風の風量をスリットの長手方向において均一にすることができ、版胴をムラなく均一に冷却又は加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るオフセット印刷システムを示す模式図。
図2図1に示すオフセット印刷システムの要部拡大図。
図3図1に示すオフセット印刷システムが備える吹出ダクトを示す図であって、(a)は外観斜視図、(b)は透視斜視図。
図4図3に示す吹出ダクトの平面図。
図5】実証実験の結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るオフセット印刷システムについて説明する。
【0014】
図1を参照して、本実施形態に係るオフセット印刷システム100は、印刷装置1と、温調装置2と、を備える。印刷装置1は、CMYKの4色に対応した4個のオフセット印刷機3と、オフセット印刷機3へ被印刷物(図示せず)を供給する給紙部4と、印刷後の被印刷物が排出される排紙部5と、を備え、被印刷物は給紙部4から排紙部5に向けて所定の搬送方向D1に搬送される。
【0015】
各オフセット印刷機3は、周面に印刷版を備えた版胴31と、版胴31と対向配置されたブランケット胴32と、ニップ部において被印刷物をブランケット胴32に接触させるための圧胴33と、被印刷物を搬送するための渡し胴34と、これら版胴31,ブランケット胴32,圧胴33,及び渡し胴34をそれぞれ矢印の方向へ回転駆動するための駆動手段(図示せず)と、版胴31にインクを供給するインク供給装置(図示せず)と、を備える。版胴31,ブランケット胴32,圧胴33,及び渡し胴34は、搬送方向D1に垂直な所定方向D2(図1の紙面に垂直な方向/図3参照)に回転軸を有する円筒状に構成されている。
【0016】
インク供給装置(図示せず)から版胴31に供給されたインクは、版胴31とブランケット胴32との対向位置においてブランケット胴32へ転写される。被印刷物は紙や樹脂シート等のシート状物であって、ブランケット胴32に転写されたインクはブランケット胴32と圧胴33の間のニップ部において被印刷物へ転写されて印刷される。
【0017】
各オフセット印刷機3は更にフレーム35を有し、フレーム35に版胴31,ブランケット胴32,圧胴33,及び渡し胴34が回転可能に支持されている。また、図2に示す様にフレーム35には風取込口35aと通気口35bが設けられている。風取込口35aは版胴31とブランケット胴32との対向位置に対して搬送方向D1上流側に位置し、所定方向D2(図3)に沿って延びている。通気口35bは風取込口35aの上方位置に設けられている。
【0018】
図1を参照して、温調装置2は、温調風(冷風又は温風)を発生させるための温調機6と、4個のオフセット印刷機3に対応して設けられた4個の吹出ダクト7と、温調機6により発生された温調風を各吹出ダクト7へ供給するための接続ダクト8と、を備える。
【0019】
温調機6は、冷却モードと、温めモードと、スタンバイモードと、を有し、冷却モードの場合には外部から空気(温調機6が設置された工場内の空気、以下「周辺空気」という)を取り入れてこれを所定の下げ温度で冷却して冷風を発生させ、これを温調風として接続ダクト8を介して吹出ダクト7へ供給する。また、温めモードの場合には、周辺空気を取り入れてこれを所定の上げ温度で温めて温風を発生させ、これを温調風として接続ダクト8を介して吹出ダクト7へ供給する。また、スタンバイモードにおいては温調風の発生が停止される。
【0020】
本実施形態においては、冷却モードにおける下げ温度は10℃以下に設定される。即ち、周辺空気と冷風の温度差が10℃以下となるようにする。例えば、周辺空気が25℃であり、下げ温度が10℃の場合、温調機6は15℃の冷風を発生させる。また、温めモードにおける上げ温度は10℃以上に設定され、周辺空気と温風の温度差が10℃以上となるようにする。例えば、周辺空気が15℃であり、上げ温度が10℃の場合、温調機6は25℃の温風を発生させる。
【0021】
温調機6のモード切替の方法に制限はなく、例えば版面温度(版胴31の表面温度)や気温に応じて自動的に切り替えるものであっても良く、或いは版面温度やDG量等に基づき作業員が手動で切り替えるものであっても構わない。なお、温調機6の構造は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0022】
接続ダクト8は、温調機6に接続された主ダクト81と、主ダクト81から各吹出ダクト7へ向けて分岐する複数本の分岐ダクト82と、を有し、各分岐ダクト82にはフレキシブルダクトを用いるのが好ましい。
【0023】
図3及び図4に示すように、各吹出ダクト7は所定方向D2に長いボックス状であって、所定方向D2に延びて対応のオフセット印刷機3に対向する側面71と、所定方向D2において相互に対向する第1端面72及び第2端面73と、上面74と、下面75と、を有し、側面71には所定方向D2に沿って延びるスリット70が設けられている。また、側面71には、スリット70よりも上方位置に凹状の段部71aが設けられ、これにより吹出ダクト7は縦断面L字形状となっている。上面74には一対の把持部76が設けられている。
【0024】
第1端面72には接続ダクト8の分岐ダクト82が接続される接続孔72aが設けられ、これにより接続ダクト8の内部空間と吹出ダクト7の内部空間Sとは接続孔72aを介して連通する。
【0025】
吹出ダクト7の内部空間Sには所定方向D2に間隔を空けて配置された複数枚の仕切り板9(本実施形態では4枚の仕切り板91,92,93,94)が設けられ、各仕切り板9の下縁9a及び両側縁9b,9cは内部空間Sを規定する吹出ダクト7の内面に当接している。これら仕切り板9の表面積は、第1端面72から第2端面73に向かうに従い漸増する。即ち、仕切り板91,92,93,94の順に表面積が大きくなっている。換言すると、仕切り板9の高さ寸法は、第1端面72から第2端面73に向かうに従い漸増している(仕切り板91,92,93,94の順に高さ寸法が大きくなっている)。
【0026】
このような吹出ダクト7は、側面71が対応のオフセット印刷機3の風取込口35aに対向するように配置される。
【0027】
当該構成において、温調機6に取り込まれた周辺空気は、温調機6のモードに応じて上述のように冷却され又は温められて各吹出ダクト7へ送られ、吹出ダクト7のスリット70から版胴31とブランケット胴32の対向位置へ向けて温調風A(図2)として吹き出される。このように吹き出された温調風Aは、風取込口35aを介してオフセット印刷機3の内部に入り、版胴31及びブランケット胴32を冷却又は加熱する。
【0028】
ここで、吹出ダクト7には上述の仕切り板9が設けられていることから、スリット70から吹き出される温調風Aの風量は、所定方向D2全域において均一となっている。即ち、仕切り板9を用いない場合には、第1端面72(分岐ダクト82が接続される接続孔72a)から第2端面73に近づくに従い、スリット70から吹き出される温調風Aの風量が大きくなり、版胴31及びブランケット胴32を均一に冷却又は加熱することができない。
【0029】
これに対し、本実施形態においては、吹出ダクト7に表面積の異なる仕切り板9を設けることによって、スリット70から吹き出される温調風Aの風量を所定方向D2全域において均一としていることから、版胴31及びブランケット胴32を所定方向D2全域において均一にむらなく冷却又は加熱することができる。
【0030】
また、温調機6による空気の下げ温度(即ち、空気の冷却前後の温度差)が10℃を超えると、周辺空気と冷却後の空気(冷風)との温度差が大きくなり露が発生し、露の除去作業中は温調機6を使用することができなくなるが、本実施形態においては温調機6による空気の下げ温度を10℃以内としていることから、露の発生を防止することができる。また、周辺空気よりも10℃だけ低い温調風(冷風)Aであっても、版胴31及びブランケット胴32に対する十分な冷却効果を得ることができる。
【0031】
一方、温調機6による空気の上げ温度は10℃以上に設定されることから、版面温度を効率良く上昇させることができる。
【0032】
また、吹出ダクト7の側面71には凹状の段部71aが設けられていることから、吹出ダクト7により通気口35bが閉塞されるのを防止できる。
【0033】
更に、本実施形態においては、温調風Aを搬送方向D1上流側から(搬送方向に沿って)吹き付けるので被印刷物が損傷するのを防止できる。即ち、被印刷物としては厚さ0.05mmの薄紙から厚さ0.8mmの厚紙を用いるのが一般的であるところ、被印刷物として薄紙を用いた場合は特に、温調風Aを搬送方向D1下流側から吹き付けると被印刷物がばたつき、被印刷物が損傷するおそれがある。これに対し、温調風Aを搬送方向D1上流側から吹き付けることによって、このような被印刷物のばたつきを防止することができる。また、版胴31とブランケット胴32の対向位置は、被印刷物の搬送経路から一定の距離があることから、温調風Aが被印刷物に直接当たることもなく、これによっても被印刷物のばたつきを防止している。
【0034】
[実施例]
上記実施形態に係るオフセット印刷システムの効果を確認するための実証実験を行った。当該実証実験の結果を図5に示す。
【0035】
当該実証実験では、裏表両面印刷に対応して8台のオフセット印刷機3を備えるオフセット印刷システムを用い、各オフセット印刷機3に対して上述のように温調風(冷風)A(冷風)を用いた冷却を行った場合(実施例)と温調風(冷風)Aによる冷却を行わなかった場合(比較例)におけるDG量を調べた。被印刷物としては温度変化の影響を受けやすい上質紙を用いた。実験時の工場内温度は25℃であり、温調機6による空気の下げ温度は10℃とした(即ち、温調風Aの温度は15℃とした)。
【0036】
実施例では14,000/rphの印刷速度で18,000シートを印刷した後のDG量を調べた。また比較例では10,000/rphの印刷速度で3,000シートを印刷した後のDG量を調べた。
【0037】
その結果、比較例では8台全てのオフセット印刷機3においてDG量が許容範囲の±3%を超えているが、実施例では比較例よりも印刷速度を上げているにも関わらず、8台全てのオフセット印刷機3において±3%以内のDG量を達成できた。温度変化の影響を受けにくい被印刷物(例えば、コーテッドペーパー)を用いた場合には、更なる品質(DG量)の安定が期待できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係るオフセット印刷システムについて添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、オフセット印刷システム1は4台のオフセット印刷機3を備えるが、オフセット印刷機3の台数はこれに限定されない。また、上記実施形態では、各吹出ダクト7に4枚の仕切り板9を設けたが、仕切り板9の枚数はこれに限定されない。なお、各仕切り板9の表面積(高さ寸法)は、スリット70からの風量が所定方向D2において一定となるように、例えば風量計を用いながら設定すれば良く、或いはシミュレーションにより求めても良い。
【0040】
また、上記実施形態においては、吹出ダクト7は側面71に段部71aが設けられ縦断面L字形状とされているが、吹出ダクト7の断面形状はこれに限定されず、使用するオフセット印刷機3の構成に応じた形状とすることができる。
【0041】
上記実施例においては、温調機6による空気の下げ温度を10℃に設定したが、下げ温度は10℃に限定されず、10℃以下であれば良い。
【符号の説明】
【0042】
1 印刷装置
2 温調装置
3 オフセット印刷機
6 温調機
7 吹出ダクト
8 接続ダクト
9 仕切り板
31 版胴
32 ブランケット胴
70 スリット
71 側面
72 第1端面
73 第2端面
100 オフセット印刷システム
図1
図2
図3
図4
図5