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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088551
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230620BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203355
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】本田 廉治
(72)【発明者】
【氏名】浅井 幸治
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
5H301GG17
5H301KK05
(57)【要約】
【課題】緊急事態において移動ロボットが人の避難の妨げになる事態を回避する。
【解決手段】自律的に移動する移動ロボット130であって、移動手段132と、移動手段を制御する移動制御装置170とを備え、移動制御装置170は、センサ136からの情報に基づき自己位置を自己位置認識部171と、緊急情報を取得する緊急情報取得部172と、緊急情報に基づき移動可能な領域を特定する領域特定部173と、特定された領域内において区分ごとに割り当てられた退避すべき優先度を示すコストマップを取得するコストマップ取得部176と、自己位置を含む区分に対応する優先度よりも高い優先度の区分に移動するように移動手段132を制御する退避部175と、を備える移動ロボット130。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動ロボットであって、
移動手段と、
前記移動手段を制御する移動制御装置と、を備え、
前記移動制御装置は、
センサからの情報に基づき自己位置を自己位置認識部と、
緊急情報を取得する緊急情報取得部と、
緊急情報に基づき移動可能な領域を特定する領域特定部と、
特定された領域内において区分ごとに割り当てられた退避すべき優先度を示すコストマップを取得するコストマップ取得部と、
前記自己位置認識部が認識した自己位置を含む区分に対応する優先度よりも高い優先度の区分に移動するように前記移動手段を制御する退避部と、を備える
移動ロボット。
【請求項2】
前記緊急情報取得部が緊急情報を取得してからの時間を計測し、制限時間を超え最も優先度の高い区分に到達していない場合、最も近い壁面に移動ロボットを移動させるように前記退避部の制御を更新する制御更新部を備える
請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項3】
前記緊急情報取得部が取得した緊急情報に基づき取得したコストマップを更新するコストマップ更新部を備える
請求項1または2に記載の移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律的に移動する移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行装置が走行した走行情報に基づいて避難動作を行うかを避難判定部が判定し、避難動作が必要と判断された場合、自律走行装置が避難動作をするための経路に経路情報を更新する技術が存在している。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-110272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが従来、火災、地震の発生などの緊急事態において、人の避難の邪魔にならないように自律的に移動するロボットはなく、緊急事態発生時にロボットの近くにいた作業員などがロボットを人の避難経路から移動させる必要があった。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、避難指示などを示す緊急情報を受けて人の避難の邪魔にならない位置にまで自律的に移動する移動ロボットの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の1つである移動ロボットは、自律的に移動する移動ロボットであって、移動手段と、前記移動手段を制御する移動制御装置とを備え、前記移動制御装置は、センサからの情報に基づき自己位置を自己位置認識部と、緊急情報を取得する緊急情報取得部と、緊急情報に基づき移動可能な領域を特定する領域特定部と、特定された領域内において区分ごとに割り当てられた退避すべき優先度を示すコストマップを取得するコストマップ取得部と、前記自己位置認識部が認識した自己位置を含む区分に対応する優先度よりも高い優先度の区分に移動するように前記移動手段を制御する退避部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、緊急情報に基づき、退避領域に移動ロボットが自律的に移動することができ、緊急事態において移動ロボットが人の避難の邪魔になることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る移動ロボットの外観を示す側面図である。
図2図2は、実施の形態1に係る移動ロボットの外観を示す底面図である。
図3図3は、実施の形態1に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、避難候補地点を備えたフロアマップを示す図である。
図5図5は、実施の形態2に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、フロアマップを優先度毎に区分したコストマップを示す図である。
図7図7は、実施の形態3に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る移動ロボットの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0010】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0011】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0012】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る移動ロボットの外観を示す側面図である。図2は、実施の形態1に係る移動ロボットの外観を示す底面図である。本実施の形態1で説明する移動ロボット130は、自律的に移動しながら掃除を実行するロボット型の掃除機であり、移動手段132と、移動制御装置170と、を備えている。本実施の形態1の場合、移動ロボット130は、本体131と、掃除手段134と、位置情報を取得するためのセンサ136と、を備えている。
【0014】
本体131は、移動ロボット130の構造的基礎となる構造部材である。また本体131は、移動手段132、掃除手段134、位置情報を取得するためのセンサ136、移動制御装置170などを収容、または保持する筐体として機能する。本体131の外周部には本体131に対して径方向に変位可能なバンパ139が取り付けられている。また、図2に示されるとおり、本体131の底面部には、ごみを本体131の内部に吸引するための吸込口138が設けられている。
【0015】
移動手段132は、移動制御装置170からの指示に基づき移動ロボット130を走行させ、方向転換などをさせる装置である。移動手段132は、特に限定されるものではないが、本実施の形態1の場合、本体131に回転可能に取り付けられる一対のホイール140、ホイール140にトルクを与える走行用モータ(不図示)、および、走行用モータを収容するハウジング141を備えている。本体131の底面には補助輪として機能するキャスター142を移動手段132は備えている。移動ロボット130の本体131は、移動手段132の2つのホイール140の回転を独立して回転させることで、直進、後退、左回転、右回転など自在に移動することができる。
【0016】
掃除手段134は、本体131の下側、または本体131の周辺の塵埃や汚れを掃除するものであれば、吸引により集塵するもの、モップや不織布などにより拭き掃除するものなどを例示することができる。本実施の形態1の場合、掃除手段134は、塵埃を掃き集めて吸込口138からごみを吸い込ませるためのユニットであり、吸込口138の近傍に配置される回転ブラシ146、回転ブラシ146を回転させるブラシ駆動モータ147、吸引ユニット133などを備えている。
【0017】
吸引ユニット133は、吸込口138から塵埃を吸い込み、本体131の内部に吸い込んだ塵埃を保持するユニットであり、電動ファン(不図示)、および塵埃保持部143を備えている。電動ファンは、塵埃保持部143の内部の空気を吸引し、本体131の外方に空気を吐出させることにより、吸込口138からごみを吸い込み、塵埃保持部143内にごみを収容する。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。移動制御装置170は、移動手段132を制御して移動ロボット130を移動させる装置である。移動制御装置170は、プロセッサを備え、当該プロセッサにおいてプログラムを実行する事により実現する処理部として、自己位置認識部171と、緊急情報取得部172と、領域特定部173と、退避地点選出部174と、退避部175と、を備えている。なお、移動制御装置170は、緊急情報を取得していない状態においては、通常の情報、例えば掃除情報に含まれる経路情報に基づきフロアを掃除するように移動ロボット130を移動させる。
【0019】
自己位置認識部171は、センサからの情報である位置関連情報に基づき移動ロボット130の位置を認識する処理部である。本実施の形態1の場合、自己位置認識部171は、本体131に対する対象物の相対的な位置関係を示す位置関連情報を取得し、フロアマップなどのマップ情報と照合することによりフロア内における移動ロボット130の相対的な位置を自己位置として認識している。具体的に自己位置認識部171は、本体131の周囲に存在する壁、家具などの対象物の方向、距離などを検出し、2.5次元的な位置情報を取得する。また、自己位置認識部171が検出した対象物の方向と距離との情報と別途保持している経路マップ、フロアマップなどのマップ情報から移動ロボット130の自己位置を把握する。
【0020】
自己位置認識部171の情報の取得対象であるセンサの種類は、特に限定されるものではないが、例えば光を放射し対象物により反射して帰ってきた光に基づいて位置と距離とを検出するLiDAR(Light Detection and Ranging)、ToF(Time of Flight)カメラ等を例示できる。その他、自己位置認識部171としては、対象物が反射した照明光や自然光を像として取得し視差に基づき位置と距離とを取得する複眼カメラ、GPS(Global Positioning System)センサ、ホイール140の回転量を検出するセンサなどを例示することができる。なお、自己位置認識部171は、複数のセンサからの情報に基づき自己位置を認識してもかまわない。
【0021】
本実施の形態1の場合、自己位置認識部171は、移動手段132により移動ロボット130が移動した実績に基づき所定の位置に対する相対的な自己位置を検出する。具体的に例えば、走行用モータによって回転する一対のホイール140のそれぞれの回転角を検出するエンコーダなどのオドメトリセンサ、走行する際の加速度を検出する加速度センサ、旋回する際の角加速度を検出するジャイロセンサなどの慣性センサ、などを自己位置検出装置として移動ロボット130は、備えてもよい。また、自己位置検出装置は、LPS(Local Positioning System)を備えてもよい。
【0022】
自己位置認識部171は、SLAM(Simultaneous Localizationand Mapping)を使い自己位置を取得している。具体的には、自己位置検出装置であるオドメトリとLiDARのスキャンデータを連続取得しながらマップの作成を進め、作成されたマップに基づき自己位置を計算により取得している。
【0023】
緊急情報取得部172は、緊急情報を取得する処理部である。緊急情報とは、火災、地震などの災害の発生を知らせる情報である。緊急情報の報知方法は、特に限定されるものではなく、例えば、移動ロボット130が移動する領域を管轄する管理システムからの電波による通信でもかまわない。また、管理システムにより報知されるサイレンなどの警報音を移動ロボット130が備えるマイクで取得し、緊急情報取得部172がマイクからの音の情報に基づき緊急情報を取得してもかまわない。また、管理システムにより報知される光の点滅などによる警報発光を移動ロボット130が備えるカメラ、照度センサなどにより取得し、緊急情報取得部172がカメラ、照度センサなどからの光の情報に基づき緊急情報を取得してもかまわない。
【0024】
また、移動ロボット130が備えるジャイロセンサなどを含む慣性センサからの情報に基づき緊急情報取得部172が地震の発生を検出することにより緊急情報を生成してもかまわない。なお、緊急情報の生成は、緊急情報の取得に含まれる。また、移動ロボット130が備える温度センサ、煙センサなどからの情報に基づき、緊急情報取得部172が火災の発生を検出することにより緊急情報を生成してもかまわない。
【0025】
領域特定部173は、緊急情報取得部172が取得した緊急情報に基づき移動ロボット130が移動可能な領域を特定する。移動可能な領域は、例えば図4に示すように、緊急事態の発生において閉ざされる防火扉、防火シャッターなどの緊急閉鎖部材201の位置を考慮し、緊急情報取得部172が緊急情報を取得した際における自己位置認識部171が認識した自己位置に基づき領域特定部173が特定する。緊急閉鎖部材201の位置は、領域特定部173が予め取得し、記憶装置に記憶される。
【0026】
退避地点選出部174は、領域特定部173が特定した領域内において、緊急情報取得部172が緊急情報を取得した際における自己位置認識部171が認識した自己位置から自己位置認識部171が情報を取得するセンサにより検知できる範囲内において特定された領域内の複数の退避候補地点202から少なくとも一つの退避地点(図4中の二重丸)を選出する。退避候補地点202とは、緊急事態において移動ロボット130が人の避難の妨げにならない領域である退避領域203内に単数、または複数箇所に予め設定される地点である。退避候補地点202の位置は、退避地点選出部174が予め取得し、記憶装置に記憶される。
【0027】
退避地点選出部174が退避地点を選出する方法は、限定されるものではないが、例えば、退避地点選出部174は、自己位置認識部171が位置関連情報を取得するセンサが自己位置から対象物を検出可能なエリア、例えばセンサがLiDARの場合、自己位置を中心とし、LiDARの検出限界距離(例えば20m)を半径とする円内に含まれる退避候補地点202を選出する。
【0028】
退避地点選出部174は、選出した退避候補地点202であって、自己の進行方向(図4中の矢印)における前方に存在する退避候補地点に対し近いほど高い優先度を設定し、後方に存在する退避候補地点202を前方に存在する退避候補地点よりも低い優先度で近いほど高い優先度を設定する。これにより、移動ロボット130の方向の転換量を抑制し、迅速に到着できる地点ほど優先度の高い退避候補地点202に設定することができる。最も優先度の高い退避候補地点202を退避地点(図4中の二重丸)として選出してもよい。
【0029】
退避地点選出部174は、さらに自己位置認識部171が位置関連情報を取得するセンサ(例えばLiDAR)からの情報に基づき、優先度を設定した退避候補地点202までの間に走行の障害となる対象物の無い退避候補地点202の優先度を上げ、最も優先度の高い退避候補地点202を退避地点として選出してもよい。これによれば、方向転換の量を抑制しつつ、ほぼ直線に近い状態で速やかに移動ロボット130を退避地点に到達させることができる。
【0030】
また、退避地点選出部174は、センサからの情報に基づくことなく、緊急情報取得部172が緊急情報を取得するまでに移動ロボット130が移動した移動実績に基づき退避候補地点までの間に走行の障害となる障害物の無い退避候補地点202の優先度を上げ、最も優先度の高い退避候補地点202を退避地点として選出してもよい。具体的には、移動ロボット130の自己位置と退避候補地点202とを結んだ直線領域の全てについて掃除を実行するために通過した移動実績が存在していた場合、当該退避候補地点202を昇降の障害となる障害物のない地点として優先度を上げる。
【0031】
移動実績の取得先は、特に限定されるものではないが、例えば移動ロボット130が備える掃除制御部などを取得先として例示できる。掃除制御部は、移動ロボット130の移動対象となるフロアマップを事前に取得し、掃除計画を事前に決定するような処理部である。フロアマップには壁、柱、パーティション、家具などの移動の障害となる障害物の配置が予め登録されている。掃除制御部は、取得したフロアマップを用いながら決定した掃除計画に従って移動手段132、および掃除手段134を制御し、掃除を実行する。また、移動し、掃除した実績を移動実績として生成する。
【0032】
なお、退避地点選出部174は、緊急情報取得部172が出火位置などを示す被災位置情報を緊急情報として取得した場合、被災位置から遠いほど退避候補地点202の優先度を上げても構わない。
【0033】
退避部175は、選出された退避地点にできる限り短時間で移動するように移動手段132を制御する。また、退避部175は、移動ロボット130が優先度の高い退避候補地点202である退避地点に到達した後、当該退避地点から最も近い壁面まで移動ロボット130を移動させてもよい。自己位置認識部171が情報を取得するセンサに基づき退避部175は、最も近い壁面を検出しても構わない。これにより、移動ロボット130が人の避難の障害になることを更に回避することができる。
【0034】
また、退避部175は、最も近い壁面に到達する際に壁面からの移動ロボット130の突出量が最も小さくなる姿勢となって壁面に当接するように移動手段132を制御してもよい。これにより、移動ロボット130の形状を床面に投影した際のアスペクト比(縦と横の長さの比)が大きな場合、より移動ロボット130を壁面に沿わせて停止させることで人の避難の邪魔になることを回避できる。壁面には建屋の壁ばかりでなく、家具などにより壁状に形成される面なども含まれる。
【0035】
実施の形態1に係る移動ロボット130によれば、緊急情報が報知される状況下において移動ロボット130が到達可能な退避候補地点202を探索し、優先度の高い退避候補地点202である退避地点に移動する。これにより、緊急情報を取得した移動ロボット130は、迅速に退避地点に移動することができ、移動ロボット130が人の避難の妨げになる事態を回避することができる。
【0036】
(実施の形態2)
続いて、移動ロボット130の他の実施の形態について説明する。なお、前記実施の形態1と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0037】
本実施の形態2で説明する移動ロボット130は、自律的に移動しながら掃除を実行するロボット型の掃除機であり、移動手段132と、移動制御装置170と、を備えている。本実施の形態2の場合、移動ロボット130は、図1図2に示す本体131と、掃除手段134と、位置情報を取得するためのセンサ136と、を備えている。
【0038】
図5は、実施の形態2に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。移動制御装置170は、移動手段132を制御して移動ロボット130を移動させる装置である。移動制御装置170は、プロセッサを備え、当該プロセッサにおいてプログラムを実行する事により実現する処理部として、自己位置認識部171と、緊急情報取得部172と、領域特定部173と、コストマップ取得部176と、制御更新部177と、コストマップ更新部178と、退避部175と、を備えている。
【0039】
コストマップ取得部176は、特定された領域内において区分ごとに割り当てられた退避すべき優先度を示すコストマップを取得する。コストマップは、フロアマップなどに対応して生成されるマップである。具体的に例えば、コストマップは、図6に示すように、最も優先度の高い退避領域203、次に優先度の高い中領域204、人の避難経路に対応する領域であって優先度の低い低領域205、非常扉210の開閉領域であって優先度の最も低い最低領域206にフロアマップを区分する情報である。
【0040】
実施の形態2の場合、退避部175は、コストマップ取得部176が取得したコストマップに基づき、自己位置認識部171が認識した自己位置を含む区分に対応する優先度よりも高い優先度の区分に移動するように移動手段132を制御する。具体的には、退避部175は、図6に示すように、自己位置に基づき移動ロボット130の一部が低領域205の上にあると判断した場合は、最も近い中領域204に移動するよう移動手段132を制御する。退避部175は、さらに優先度の高い退避領域203に移動するように移動手段132を制御する。なお、退避部175は、優先度が低くなる区分を通過する経路は選択せず、優先度が高くなる区分を通過する経路に基づいて移動手段132を制御してもよい。
【0041】
また、退避部175は、A*(A-star)アルゴリズムのような経路探索のアルゴリズムを用いて、優先度が高くなる方向にのみ移動するような経路を見つけて移動してもかまわない。すなわち、中領域204に移動した後、低領域205に戻る経路を退避部175は、探索しない。これにより、後述の経過時間が制限時間を超える場合などを含む退避のタイムアウト発生時において、移動ロボット130を確実に退避前の位置よりも優先度の高い退避位置に移動させることができる。
【0042】
制御更新部177は、緊急情報取得部172が緊急情報を取得した時点からの経過時間を計測し、経過時間が制限時間を超えた際、移動ロボット130が移動可能な領域内において最も優先度の高い区分に到達していない場合、移動ロボット130の現在位置から最も近い壁面に移動ロボットを移動させるように退避部175の制御を更新する。
【0043】
なお、制御更新部177は、緊急情報取得部172が第二の緊急情報である避難指示を取得した際、移動ロボット130が移動可能な領域内において最も優先度の高い区分に到達していない場合、移動ロボット130の現在位置から最も近い壁面に移動ロボット130を移動させるように退避部175の制御を更新してもよい。
【0044】
また、制御更新部177は、移動ロボット130が優先度の高い区分に向かって移動を開始してから移動可能な時間を示す移動制限時間に達すると、移動ロボット130がその場で停止するように退避部175の制御を更新してもよい。また、移動制限時間は、状況に応じて動的に変化させても構わない。例えば移動制限時間は、次の式1により動的に変化しても構わない。
【0045】
移動制限時間=コストマップ×(移動制限時間-経過時間)/移動制限時間・・・式1
コストマップとは、移動ロボット130の自己位置を含む区分の優先度である。
【0046】
また、移動制限時間の所定時間前の時点で、移動ロボット130が存在する地点の優先度が、移動開始位置の優先度よりも低い場合は移動開始位置に戻るように退避部175の制御を更新してもよい。
【0047】
コストマップ更新部178は、緊急情報取得部172が取得した緊急情報に基づき取得したコストマップを更新する。例えば、コストマップ更新部178は、緊急情報取得部172が出火位置などを示す被災位置情報を緊急情報として取得した場合、被災位置に近い区分の優先度を下げても構わない。また、コストマップ更新部178は、緊急情報に詳細な人の避難経路などが含まれている場合、取得した人の避難経路に基づいてコストマップを更新しても構わない。
【0048】
実施の形態2に係る移動ロボット130によれば、移動ロボット130が非常扉の前を移動中に緊急事態が発生した場合に、コストマップによって移動ロボット130が移動すべきエリアに存在するか、などを即座に判定することができる。したがって、緊急事態の発生時に非常扉210の開閉領域内を移動している移動ロボット130が非常扉210の開閉や人の避難の邪魔になる事態を即座に回避することができる。
【0049】
(実施の形態3)
続いて、移動ロボット130の他の実施の形態について説明する。なお、前記実施の形態1、2と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1、2と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0050】
本実施の形態3で説明する移動ロボット130は、自律的に移動しながら掃除を実行するロボット型の掃除機であり、移動手段132と、移動制御装置170と、を備えている。本実施の形態2の場合、移動ロボット130は、図1図2に示す本体131と、掃除手段134と、位置情報を取得するためのセンサ136と、を備えている。
【0051】
センサ136の種類は、特に限定されるものではなく、位置情報を取得するセンサ以外のセンサを含んでも良い。また、移動ロボット130は、センサを複数備えても構わない。具体的に位置情報を取得するセンサ136は、LiDAR、ToFカメラ、複眼カメラ、GPSセンサ、オドメトリセンサ、ジャイロセンサを含む慣性センサなどを例示することができる。また、位置情報を取得するセンサ以外のセンサ136としては、デジタルカメラ、超音波による測距センサ、赤外線の反射の有無により障害物を検出する測距センサなどを例示することができる。
【0052】
図7は、実施の形態3に係る移動制御装置の機能構成を示すブロック図である。移動制御装置170は、移動手段132を制御して移動ロボット130を移動させる装置である。移動制御装置170は、プロセッサを備え、当該プロセッサにおいてプログラムを実行する事により実現する処理部として、自己位置認識部171と、緊急情報取得部172と、領域特定部173と、フロアマップ取得部179と、禁止領域認識部180と、退避マップ生成部181と、現状報知部182と、消音部183と、退避部175と、を備えている。
【0053】
緊急情報取得部172は、センサ136からの情報に基づき緊急事態の発生を検出して緊急情報を生成する。例えば、移動ロボット130が停止しているとき、または移動中の移動ロボット130を停止させてセンサ136の一つであるジャイロセンサからの信号を所定の期間保存しておき、保存しているジャイロセンサからの信号と、現在ジャイロセンサから取得する信号とを比較して地震の発生を検出する。これにより、トラック、電車の通過による揺れや、風による揺れなど通常発生する揺れと地震による揺れを分離し、地震による揺れを緊急事態の発生として検出する事ができる。また、後述のフロアマップ取得部179が取得するフロアマップには、フロアの高さ(階数)に関する情報が含まれており、ジャイロセンサの信号はフロアの高さ毎に保存されてもよい。この場合、移動ロボット130が存在するフロアの高さと同じ高さのフロアについて保存されているジャイロセンサの信号に基づき地震の発生を検出しても構わない。これによりフロアごとに異なる揺れを正確に把握し、地震の発生を高精度で検出する事ができる。
【0054】
また、緊急情報取得部172は、他の移動ロボットが生成した緊急情報を取得しても構わない。これにより、高いフロアに存在する移動ロボット130が検出した地震の発生を低いフロアに存在する移動ロボット130に伝えることができ、地震の揺れを検出できなかった移動ロボット130も適切な退避行動をとることができる。
【0055】
フロアマップ取得部179は、移動ロボット130の自己位置を含むフロアのフロアマップを取得する。フロアマップ取得部179は、自己位置認識部171がSLAMにより作成したマップをフロアマップとして取得してもよく、建屋の設計時などで作成されたフロアマップを取得しても良い。また、フロアマップには退避候補地点が記されていてもよく、区分ごとに退避の優先度が設定されていても良い。
【0056】
禁止領域認識部180は、取得したフロアマップ内において、センサ136からの情報に基づき停止が禁止される領域を認識する。例えば、禁止領域認識部180は、センサ136の一つであるデジタルカメラから画像情報を取得し、人、通常の扉、非常扉、窓に貼られている消防の突入マークなどの禁止領域対象物を認識し、認識した対象物の前方、または周囲の領域であって対象物に対応した形状、大きさの領域を禁止領域として認識する。また、LiDERから取得した点群データなどから形状認識により、禁止領域対象物を認識しても良い。これにより、現状に応じて禁止領域を認識することができ、例えば人がいる場合には、人のいない方向に移動ロボット130を移動させることも可能となる。
【0057】
なお、禁止領域認識部180は、緊急情報取得部172が緊急情報を取得してから所定の避難期限の経過後に人を認識した場合、逃げ遅れた人であると認識しても構わない。これにより、移動ロボット130の位置と人が逃げ遅れていることを外部の管理システムなどに報知することにより、救出作業の支援を行うことができる。
【0058】
退避マップ生成部181は、禁止領域認識部180が認識した禁止領域をフロアマップに重ね合わせ、退避マップを生成する。退避マップは、退避候補地点202を備えていてもよく、コストマップとして機能するものでも構わない。
【0059】
退避部175は、生成された退避マップに基づき禁止領域から移動ロボット130を移動させ、禁止領域には近づかないように移動手段132を制御する。さらに、退避部175は、優先度の高い領域に移動ロボット130を移動させる。
【0060】
現状報知部182は、緊急情報取得部172が取得した緊急情報に基づき人に現状を報知する。具体的には、現状報知部182は、ディスプレイ、ライト、スピーカなどの報知手段に現状情報を出力し、報知手段を介して人に現状を報知する。現状報知部182は、移動ロボット130が退避のための移動終了後に現状情報を出力しても構わない。現状情報とは、例えば、非常事態であることを明示する情報、スピーカからサイレン音を出し、ライトを明滅させる情報を出力して火災報知機として発報する情報などを例示することができる。
【0061】
また、現状報知部182は、避難経路、避難方向、火災の発生場所などの避難情報を現状情報として出力しても構わない。
【0062】
消音部183は、退避部175により移動ロボット130が移動している際は、移動ロボット130が通常発生させる電子音を停止させる。これにより、移動ロボット130が発生させる電子音が非常事態において人に対して放送される避難指示などの館内放送の妨げになることを回避できる。
【0063】
実施の形態3に係る移動ロボット130によれば、予め定められた退避に関するマップ情報に加えて移動ロボット130が認識できる禁止領域に基づき移動ロボット130の退避位置を決定することができる。これにより更に安全に人の避難経路を確保することができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0065】
例えば、移動ロボット130として床面を走行しながら掃除する掃除ロボットを例示したが、移動ロボットは床面を二次元的に移動するロボットばかりでなく、三次元空間を移動する事ができる飛行型のロボットでもかまわない。
【0066】
また、自己位置認識部171や、禁止領域認識部180などにより移動ロボット130がエレベータ内に存在すると認識される場合、退避部175は、退避行動を取らないように移動手段132を制御しても良い。また現状報知部182は、現状情報を出力しなくても構わない。
【0067】
また、複数台の移動ロボット130と、移動ロボット130のそれぞれと通信可能なサーバとを備えたロボットシステムを構築し、複数台の移動ロボット130が備えるセンサ136からの信号を位置情報(高さの情報を含んでも良い)とともに取得して総合的に解析することにより、地震の震源地、津波の発生の有無、S波の到達予測などをサーバが実行しても構わない。さらに、サーバが地震の発生の予知を行っても構わない。
【0068】
また、センサ136としては、熱源センサを備え、緊急情報取得部172が火災の発生、および火災の発生箇所を検出し緊急情報を生成しても構わない。
【0069】
また、移動ロボット130は、本体131から床面にまで達する複数本の金属線、金属チェーンなどの電極部材を備え、二本の電極部材間に流れる電流に基づき床面が浸水しているかを検出して浸水に関する緊急情報を緊急情報取得部172が生成しても構わない。当該緊急情報により、退避部175は、浸水していない場所に移動するように移動手段132を制御しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、掃除ロボット、警備ロボット、配膳ロボット、案内ロボット、広告ロボットなど自律的に移動するロボットに利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
130 移動ロボット
131 本体
132 移動手段
133 吸引ユニット
134 掃除手段
136 センサ
138 吸込口
139 バンパ
140 ホイール
141 ハウジング
142 キャスター
143 塵埃保持部
146 回転ブラシ
147 ブラシ駆動モータ
170 移動制御装置
171 自己位置認識部
172 緊急情報取得部
173 領域特定部
174 退避地点選出部
175 退避部
176 コストマップ取得部
177 制御更新部
178 コストマップ更新部
179 フロアマップ取得部
180 禁止領域認識部
181 退避マップ生成部
182 現状報知部
183 消音部
201 緊急閉鎖部材
202 退避候補地点
203 退避領域
204 中領域
205 低領域
206 最低領域
210 非常扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7