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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088585
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】固定具、及び固定具を有する固定部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20230620BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20230620BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20230620BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20230620BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F16B43/00 C
F16J15/06 L
F16J15/10 K
F16J15/10 Q
E03C1/042 E
A47K1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203406
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
【テーマコード(参考)】
2D060
3J034
3J040
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BC30
2D060BD01
2D060BD03
2D060BE20
2D060BF03
3J034AA04
3J034BA09
3J034BC04
3J034BD01
3J034CA01
3J040AA02
3J040AA13
3J040EA01
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA04
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】固定対象物の固定時の施工性を向上させて、固定対象物のガタつきを抑制する。
【解決手段】孔12が貫通形成された壁11の一方の面13に、ネジ部材70が取り付けられた固定対象物60を固定するための固定具10であって、パッキン貫通孔33を有するとともに、一方の面13から孔12に挿入されたネジ部材70に、壁11の他方の面14から外嵌されるパッキン30と、座金貫通孔41を有するとともに、パッキン30の他方の面14側からネジ部材70に外嵌される座金40と、ネジ部材70の外周面に形成されたネジ部71に螺合して、パッキン30及び座金40を締め付けて他方の面14に固定するナット50とを備え、パッキン30及び座金40の少なくとも一方には、座金40がネジ部材70の径方向へ移動して、座金貫通孔41の内縁がネジ部71のネジ山に接触することを規制する規制部34が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が貫通形成された壁の一方の面に、ネジ部材が取り付けられた固定対象物を固定するための固定具であって、
パッキン貫通孔を有するとともに、前記一方の面から前記孔に挿入された前記ネジ部材に、前記壁の他方の面から外嵌されるパッキンと、
座金貫通孔を有するとともに、前記パッキンの前記他方の面側から前記ネジ部材に外嵌される座金と、
前記ネジ部材の外周面に形成されたネジ部に螺合して、前記パッキン及び前記座金を締め付けて前記他方の面に固定するナットと
を備え、
前記パッキン及び前記座金の少なくとも一方には、前記座金が前記ネジ部材の径方向へ移動して、前記座金貫通孔の内縁が前記ネジ部のネジ山に接触することを規制する規制部が設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記規制部は、前記パッキンにおける前記径方向の端部に設けられて、前記座金の外縁に当接する請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記規制部は、前記座金の外縁を取り囲むように環状に形成されている請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記パッキンは、前記径方向の断面が円形状に形成されて、円形状の前記パッキン貫通孔を有し、
前記座金は、前記径方向の断面が円形状に形成されて、円形状の前記座金貫通孔を有し、
前記規制部は、前記パッキンの外周部に、前記座金側に突出するように円環状に形成され、
前記座金貫通孔の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径より大きく、
前記規制部の内径は、前記座金の外径以上であり、
前記パッキン貫通孔の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径以上であり、
前記座金貫通孔の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差は、前記規制部の内径と前記座金の外径との差に、前記パッキン貫通孔の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差を足した値より大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固定具、前記ネジ部材、及び前記固定対象物を有する固定部材であって、
前記固定対象物は前記一方の面に固定されて前記孔を塞ぐキャップであり、
前記ネジ部材は前記キャップに取り付けられるボルトであることを特徴とする固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔が貫通形成された壁の一方の面に固定対象物を固定するための固定具、及び固定具を有する固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台やキッチンシンク等の壁には、種々の形状の水栓が取り付けられている。
図7に示すように、特許文献1には、洗面台に取り付けられた洗髪用の水栓1が開示されている。図7(a)に示すように、水栓1は、吐水ヘッド2の基端側に、外周面にネジが形成された取付筒3が設けられている。水栓1は、洗面台の壁Wに形成された取付孔4に取付筒3を挿入し、壁Wの下方から三角パッキン5を外嵌してナット6で締め付けることにより固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-302775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、三角パッキン5は、ナット6の緩み防止や壁Wの傷付き防止等のために取り付けられていることから弾性を有しており、ナット6の締付力が三角パッキン5の一部に掛かると変形し易い。そのため、図7(b)に示すように、三角パッキン5とナット6との間には座金7が介在されている。しかし、座金7は板状であるため、ナット6で締め付ける際に、座金7に形成された貫通孔7aの内縁が、取付筒3の外周面に形成されたネジ山3aに引っ掛かってしまう場合がある。
【0005】
また、洗面台の下側は見え難く施工し難いため、座金7が三角パッキン5に十分に当接しない位置でネジ山3aに引っ掛かってしまう場合、つまり、座金7が正常な位置より手前で止まってしまう場合がある。こうした座金7の位置ずれに気づかずにナット6を締め付けると、座金7が位置ずれした状態で水栓1が固定されてしまうことになる。そのため、ナット6の締付力が三角パッキン5を介して壁Wに伝わらず、水栓1の固定状態が不安定となって、ガタつきの原因となる。特に、座金7の厚みが取付筒3のネジ山3aのピッチに比べて薄い場合に起こり易い。
【0006】
こうした問題は、水栓を洗面台に固定する場合に限らず、孔が貫通形成された壁の一方の面に、ネジ部材が取り付けられた固定対象物を固定する場合に共通して起こり得る問題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の固定具は、孔が貫通形成された壁の一方の面に、ネジ部材が取り付けられた固定対象物を固定するための固定具であって、パッキン貫通孔を有するとともに、前記一方の面から前記孔に挿入された前記ネジ部材に、前記壁の他方の面から外嵌されるパッキンと、座金貫通孔を有するとともに、前記パッキンの前記他方の面側から前記ネジ部材に外嵌される座金と、前記ネジ部材の外周面に形成されたネジ部に螺合して、前記パッキン及び前記座金を締め付けて前記他方の面に固定するナットとを備え、前記パッキン及び前記座金の少なくとも一方には、前記座金が前記ネジ部材の径方向へ移動して、前記座金貫通孔の内縁が前記ネジ部のネジ山に接触することを規制する規制部が設けられている。
【0008】
この構成によれば、パッキン及び座金をナットで締め付ける際、ネジ部材のネジ山に座金が接触し難くなり、座金の位置ずれが抑制される。固定対象物の固定時の施工性が向上する。また、座金が正常な位置を保持したまま締め付けられることで、固定対象物のガタつきが抑制されて、壁にしっかりと固定することができる。
【0009】
上記の構成において、前記規制部は、前記パッキンにおける前記径方向の端部に設けられて、前記座金の外縁に当接することが好ましい。
例えば、キッチンシンクの下に調理器具を収納したり、洗面台の下に掃除用具を収納したりする際、壁の下側にこれら収納物をぶつけてしまう場合がある。この点、規制部がパッキンにおけるボルトの径方向の端部に設けられていると、座金がパッキンに覆われた状態となる。そのため、座金の外縁によって収納物が傷付くことが抑制される。
【0010】
上記の構成において、前記規制部は、前記座金の外縁を取り囲むように環状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、パッキンに対する座金の位置決め状態が安定する。
【0011】
上記の構成において、前記パッキンは、前記径方向の断面が円形状に形成されて、円形状の前記パッキン貫通孔を有し、前記座金は、前記径方向の断面が円形状に形成されて、円形状の前記座金貫通孔を有し、前記規制部は、前記パッキンの外周部に、前記座金側に突出するように円環状に形成され、前記座金貫通孔の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径より大きく、前記規制部の内径は、前記座金の外径以上であり、前記パッキン貫通孔の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径以上であり、前記座金貫通孔の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差は、前記規制部の内径と前記座金の外径との差に、前記パッキン貫通孔の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差を足した値より大きい。
【0012】
この構成によれば、パッキンとネジ部材との間に遊びがあり、また、座金とパッキンとの間に遊びがあっても、座金とネジ部材のネジ山との接触を抑制することができる。
上記課題を解決するため、本発明の固定部材は、上記の固定具、前記ネジ部材、及び前記固定対象物を有する固定部材であって、前記固定対象物は前記壁の一方の面に固定されて前記孔を塞ぐキャップであり、前記ネジ部材は前記キャップに取り付けられるボルトである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定対象物の固定時の施工性が向上するとともに、固定対象物のガタつきが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の固定部材を固定した洗面台の部分斜視図である。
図2図1における2-2線断面図である。
図3】固定部材の分解斜視図である。
図4】固定具の寸法について説明する図である。
図5】変更例の固定具について説明する図である。
図6】変更例の固定具について説明する図である。
図7】従来の水栓の固定構造について説明する図であって、(a)は壁に取り付けられた水栓の部分断面図であり、(b)は(a)の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施形態の固定具10、及び固定具10を有する固定部材20について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の固定具10は、洗面台の壁11に固定対象物であるキャップ60を固定するために使用される。洗面台の壁11には孔12が2つ貫通形成されており、水栓Fを2つ並設可能に構成されている。固定具10は、一方の孔12のみに水栓Fを取り付けて他方の孔12を使用しない場合に、使用しない孔12をキャップ60で塞ぐためのものである。
【0016】
<固定具10について>
図2及び図3に示すように、固定具10は、パッキン30、座金40、及びナット50を有している。固定具10は、ボルト70が取り付けられたキャップ60を、壁11に貫設された孔12の上面13に固定するために使用される。ボルト70が本発明のネジ部材に相当し、キャップ60が本発明の固定対象物に相当する。キャップ60に取り付けられたボルト70は、上面13から孔12に挿入されて下面14から突出している。パッキン30及び座金40は、下面14側からボルト70に外嵌されており、ナット50をボルト70に螺合して締め付けることにより下面14に固定されている。
【0017】
次に、固定具10を構成するパッキン30、座金40、及びナット50について説明する。以下の説明では、固定部材20が壁11に固定された状態で、壁11の上面13側を上、下面14側を下として説明する。
【0018】
パッキン30は、弾性を有するゴム材料で、径方向断面が円形状に形成されている。パッキン30は、上方ほど小径となるテーパ面31aが形成されたテーパ部31と、上下方向の径が変化しない基部32とが一体に連設された形状をなしている。パッキン30の径方向中央には、径方向断面が円形状で上下方向に延びるパッキン貫通孔33が貫設されている。パッキン貫通孔33は、テーパ部31側が基部32側より大径となっている。基部32におけるパッキン貫通孔33の径は一定に形成されている。
【0019】
図3及び図4に示すように、パッキン30の径方向の端部には、下方に突出するように規制部34が一体に形成されている。規制部34は、パッキン30の全周に亘って円環状に形成されている。規制部34の下方への突出長は、後に説明する座金40の厚みより少し長い。規制部34の内周面34aは、上方ほど徐々に小径となるテーパ面として形成されている。
【0020】
座金40は、金属製の板材であり、径方向断面が円形状に形成されている。座金40の径方向中央には、径方向断面が円形状の座金貫通孔41が貫設されている。
ナット50は、金属製であり、2つの取手51とネジ孔52を有するいわゆる蝶ナットである。ネジ孔52の内周面に形成された雌ネジ52aが、ボルト70のネジ部71に螺合して、パッキン30及び座金40を締め付ける。
【0021】
<固定部材20について>
図2及び図3に示すように、固定部材20は、固定具10、キャップ60、ボルト70、及び上面パッキン80を有している。
【0022】
キャップ60は、金属製の板材であり、径方向断面が円形状に形成されている。キャップ60の外径は、壁11に貫設された孔12の内径より大きい。キャップ60の下面の径方向中央には、下方に突出するように延びる円筒状の取付筒61が一体に形成されている。取付筒61の内周面には、雌ネジ61aが螺設されており、ボルト70のネジ部71と螺合可能とされている。
【0023】
キャップ60の外周部には、下方に突出するように円環状の被覆部62が形成されている。被覆部62はキャップ60の全周に亘って形成されている。被覆部62の下方への突出長は、後に説明する上面パッキン80の厚みより少し短い。
【0024】
ボルト70は、金属製で同一径に形成されている。ボルト70の外周面には、全長に亘ってネジ部71が形成されている。ボルト70の上部のネジ部71を、キャップ60の取付筒61の雌ネジ61aに螺合することによってキャップ60に取り付けられる。
【0025】
上面パッキン80は、例えばウレタン樹脂等の樹脂材料で形成された弾性を有する板材であり、円環状に形成されている。上面パッキン80の外径は、キャップ60の被覆部62の内径より少し小さい。上面パッキン80は、キャップ60の被覆部62の内部に収容される。
【0026】
<固定具10及び固定部材20の寸法について>
図4に示すように、パッキン30の規制部34の内径は、座金40の外径以上である。本実施形態のパッキン30では、規制部34の内周面34aが、上方ほど徐々に小径となるテーパ面として形成されている。規制部34の内径とは、内周面34aの上端縁での内径を言う。パッキン30の規制部34の内径と座金40の外径との差を「B」とする。差Bは、例えば0~0.3mm程度である。本実施形態では、差Bがほぼ0mmであって、規制部34の内周面34aの上端縁は座金40の外縁に当接している。
【0027】
パッキン貫通孔33の内径は、ボルト70のネジ部71の外径以上である。具体的には、ネジ部71の最大径であるネジ山72での外径以上である。パッキン貫通孔33の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差を「C」とする。差Cは、例えば0~0.3mm程度である。
【0028】
座金貫通孔41の内径は、ネジ部71のネジ山72の外径より大きい。座金貫通孔41の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差を「A」とする。差Aは、例えば0.5~1.5mm程度である。
【0029】
差A、差B、差Cとの間に、A>B+Cの関係式が成り立つように、パッキン30、座金40が形成されている。つまり、座金貫通孔41の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差Aが、パッキン30の規制部34の内径と座金40の外径との差Bに、パッキン貫通孔33の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差Cを足した値より大きくなるようにパッキン30及び座金40の寸法が設定されている。
【0030】
<固定具10及び固定部材20の作用について>
洗面台の壁11にキャップ60を固定する固定方法とともに、作用について説明する。
図2及び図3に示すように、ボルト70が取り付けられるとともに、被覆部62の内部に上面パッキン80が収容された状態のキャップ60を準備する。ボルト70を壁11の上面13から孔12に挿入して、ボルト70を下面14から突出させる。続いて、下面14側から、パッキン貫通孔33をボルト70に外嵌する。パッキン30の下面14側から、座金貫通孔41をボルト70に外嵌する。座金40の下面14側から、ボルト70のネジ部71にナット50を螺合して、パッキン30及び座金40を締め付ける。
【0031】
図4に示すように、パッキン30及び座金40は、その重みによりナット50の上端面に接触した状態で、ナット50とともに締付方向である上方へ移動する。パッキン30の外周部には、突出長が座金40の厚みより少し長く、座金40の外径との間に「差B」の間隔を有する円環状の規制部34が一体に形成されている。そのため、座金40は規制部34によって差B以上の径方向の移動が規制された状態となっている。
【0032】
また、パッキン30には、ボルト70のネジ山72の外径との間に「差C」の間隔を有するパッキン貫通孔33が形成されている。そのため、パッキン30はパッキン貫通孔33によって差C以上の径方向の移動が規制された状態となっている。
【0033】
座金40に形成された座金貫通孔41の内径は、上記A>B+Cの関係式を満たすように設定されている。そのため、規制部34によって径方向の移動が規制された座金40が、パッキン30に対して差Bだけ径方向へ移動し、パッキン30がボルト70に対して差Cだけ径方向へ移動したとしても、座金貫通孔41がボルト70のネジ山72に接触することが抑制される。
【0034】
図2に示すように、座金40の径方向への移動が規制された状態でナット50を締め付けていくと、キャップ60が壁11の上面13に固定される。この状態では、パッキン30のテーパ部31のテーパ面31aが、孔12の下面14側の開口に押し付けられる。また、壁11の上面13では、キャップ60の被覆部62の突出長より厚い上面パッキン80が、厚み方向に圧縮される。これにより、孔12の上面13での水密性が確保された状態で、キャップ60が固定される。
【0035】
本実施形態の固定具10及び固定部材20によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の固定具10は、パッキン30、座金40、及びナット50を備えている。パッキン30には、座金40がボルト70の径方向へ移動して、座金40に形成された座金貫通孔41の内縁がボルト70のネジ山72に接触することを規制する規制部34が設けられている。
【0036】
そのため、パッキン30及び座金40をナット50で締め付ける際、座金貫通孔41の内縁がネジ山72に引っ掛かって、座金40の位置がずれることが抑制される。座金40が正常な位置を保持したまま締め付けられることで、キャップ60の固定状態が安定する。また、壁11にしっかりと固定されることで、孔12を介しての上面13からの漏水を抑制することができる。
【0037】
(2)洗面台の壁11に固定部材20を固定する場合、壁11の下面14側での締付作業では、座金40の位置を確認し難い。この点、規制部34によって座金40の位置ずれが抑制されるため、固定部材20の固定時の施工性を向上させることができる。
【0038】
(3)規制部34の内周面34aは、上方ほど徐々に小径となるテーパ面として形成されている。そのため、ナット50を締め付ける際、内周面34aが座金40の外縁を案内する案内面として作用する。パッキン30とボルト70との間、座金40とボルト70との間の遊びにより、パッキン30と座金40が径方向にずれたとしても、パッキン30に対する座金40の位置ずれを抑制することができる。固定部材20の固定時の施工性をより向上させることができる。
【0039】
(4)規制部34は、パッキン30の径方向の端部に設けられており、内周面34aが座金40の外縁に当接している。そのため、座金40の外縁が規制部34で覆われた状態となっている。壁11の下側に収納物をぶつけてしまっても、座金40の外縁によって収納物が傷付くことが抑制される。
【0040】
(5)規制部34は、円環状に形成されて座金40の外縁を取り囲んでいる。そのため、パッキン30に対する座金40の位置決め状態が安定する。
(6)座金貫通孔41の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差A、パッキン30の規制部34の内径と座金40の外径との差B、パッキン貫通孔33の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差Cとの間には、A>B+Cの関係式が成り立つように、パッキン30、座金40が形成されている。そのため、パッキン30とボルト70との間に遊びがあり、また、座金40とパッキン30との間に遊びがあったとしても、座金40とボルト70のネジ山72との接触を抑制することができる。
【0041】
(7)パッキン30の上部には、テーパ面31aを有するテーパ部31が形成されている。そのため、開口径の異なる種々の孔12に対応することができる。
(8)固定対象物であるキャップ60は、ボルト70と別体に形成されている。そのため、取り付けるボルト70の長さを変更すれば、厚さの異なる壁11に対応することができる。また、大きさの異なる種々のキャップ60を取り付けることができる。さらに、固定部材20を保管等する際に省スペース化することができる。
【0042】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
・上記実施形態の規制部34は、パッキン30の径方向の端部に形成されているが、形成箇所はこれに限定されない。図5に示すように、径方向の内側、つまり、パッキン貫通孔33側の端部に形成されていてもよい。この場合、例えばパッキン貫通孔33を囲むように円環状に形成されており、座金貫通孔41の内縁に当接することで、座金40が径方向へ移動して座金貫通孔41の内縁がネジ山72に接触することを規制する。
【0044】
・規制部34は、円環状に形成されていなくてもよい。下方に突出する複数の凸部が円環状に並ぶように形成されていてもよい。
・座金40の径方向への移動を規制して、ネジ山72への接触を抑制する構成は、座金40に形成されていてもよい。図5に示すように、座金40の外周部には、上方に突出する座金規制部42が形成されている。座金規制部42は、例えばパッキン30の基部32の外周面を囲むように円環状に形成されている。こうすることで、パッキン30に規制部34が形成されていなくても、座金40の移動を規制することができる。
【0045】
・パッキン30及び座金40は、径方向の断面が円形状のものに限定されない。例えば、図6に示すように、径方向の断面が矩形状のものであってもよい。この場合、パッキン30の規制部34の内面と座金40の側辺との差が「B」となる。そして、座金貫通孔41の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差Aが、パッキン30の規制部34の内面と座金40の側辺との差Bと、パッキン貫通孔33の内径とネジ部71のネジ山72の外径との差Cを足した値より大きくなるようにパッキン30及び座金40の寸法が設定されていればよい。
【0046】
・パッキン30は、テーパ部31を有していなくてもよい。上下方向に径が変化しない筒状に形成されていてもよい。また、規制部34の内周面34aがテーパ面ではなく、上下方向に径が変化しない面として形成されていてもよい。
【0047】
・ナット50の形状は特に限定されない。蝶ナットでなくてもよい。
・パッキン貫通孔33、座金貫通孔41は、径方向断面が円形状ではなく、例えば矩形状であってもよい。この場合、パッキン貫通孔33の内接円の内径、座金貫通孔41の内接円の内径が、A>B+Cの関係式を満たせばよい。
【0048】
・固定具10がパッキン30、座金40、ナット50以外の他の部材を有していてもよい。例えば、パッキン30と座金40との間に、パッキン30に対する座金40の滑りを良くするための板状のスリップワッシャーが介在していてもよい。こうしたスリップワッシャーについても、パッキン30の規制部34によって、ネジ山72との接触が規制されていることが好ましい。
【0049】
・固定対象物はキャップ60に限定されない。例えば、水栓の吐水ヘッドであってもよい。
・ネジ部材は、外周面にネジ部を有しており、ナットと螺合して壁の孔に取り付けられるものであれば、本実施形態のようなボルト70に限定されない。例えば、内部に通水路が形成されて吐水ヘッドが取り付けられた取付筒であってもよい。
【0050】
・固定具10で固定する場所は、洗面台に限らない。孔が形成された壁に固定対象物を固定する場合であれば適用可能である。
・キャップ60とボルト70が一体に形成されていてもよい。
【0051】
・上面パッキン80を省略してもよい。
次に、上記実施形態から把握される技術的思想について記載する。
・孔が貫通形成された壁の一方の面に、ネジ部材が取り付けられた固定対象物を固定するための固定具であって、パッキン貫通孔を有するとともに、前記一方の面から前記孔に挿入された前記ネジ部材に、前記壁の他方の面から外嵌されるパッキンと、座金貫通孔を有するとともに、前記パッキンの前記他方の面側から前記ネジ部材に外嵌される座金と、前記ネジ部材の外周面に形成されたネジ部に螺合して、前記パッキン及び前記座金を締め付けて前記他方の面に固定するナットとを備え、前記パッキン及び前記座金の少なくとも一方には、前記座金が前記ネジ部材の径方向へ移動して、前記座金貫通孔の内縁が前記ネジ部のネジ山に接触することを規制する規制部が設けられており、前記パッキン及び前記座金は、前記径方向の断面が円形状に形成され、前記規制部は、前記パッキンの外周部に前記座金側に突出するように円環状に形成され、前記座金貫通孔の内接円の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径より大きく、前記規制部の内径は、前記座金の外径以上であり、パッキン貫通孔の内接円の内径は、前記ネジ部のネジ山の外径以上であり、前記座金貫通孔の内接円の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差は、前記規制部の内径と前記座金の外径との差に、前記パッキン貫通孔の内接円の内径と前記ネジ部のネジ山の外径との差を足した値より大きい。
【符号の説明】
【0052】
10…固定具、11…壁。12…孔、13…上面、14…下面、20…固定部材、30…パッキン、33…パッキン貫通孔、34…規制部、40…座金、41…座金貫通孔、42…座金規制部(規制部)、50…ナット、60…キャップ(固定対象物)、70…ボルト(ネジ部材)、71…ネジ部、72…ネジ山。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7