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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088599
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】交流給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230620BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/18 135
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203429
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】森島 直樹
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA04
5G066HA11
5G066HA19
5G066HB02
(57)【要約】
【課題】既存の分散型電源を使用しながら、交流電源の停電時に分散型電源を単独運転させることが可能な交流給電システムを提供する。
【解決手段】この交流給電システムは、負荷6に交流電力を供給するための給電線3と、商用交流電源5と給電線3の間に接続され、商用交流電源5の健全時にオンされ、商用交流電源5の停電時にオフされる遮断器1と、給電線3の交流電圧Vaに同期して給電線3に交流電力を供給する分散型電源4と、商用交流電源5の停電時に、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが商用周波数Fcになるように給電線3に無効電力を供給する無効電力補償装置30とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に交流電力を供給するための給電線と、
一方端子が交流電源から供給される交流電圧を受け、他方端子が前記給電線に接続され、前記交流電源の健全時にオンされ、前記交流電源の停電時にオフされる遮断器と、
前記給電線の交流電圧に同期して前記給電線に交流電力を供給する分散型電源と、
前記交流電源の停電時に、前記給電線の交流電圧の周波数が参照周波数になるように前記給電線に無効電力を供給する無効電力補償装置とを備える、交流給電システム。
【請求項2】
前記無効電力補償装置は、
前記給電線の交流電圧の周波数を検出する周波数検出器と、
前記交流電源の停電時に、前記参照周波数と前記周波数検出器によって検出される周波数との偏差がなくなるように第1の無効電力制御値を生成する周波数制御部と、
前記第1の無効電力制御値に従って前記給電線に無効電力を出力する無効電力発生部とを含む、請求項1に記載の交流給電システム。
【請求項3】
前記無効電力補償装置は、
前記給電線の交流電圧の電圧値を検出する電圧値検出器と、
前記交流電源の健全時に、前記電圧値検出器によって検出される電圧値が参照電圧値になるように第2の無効電力制御値を生成する電圧制御部とをさらに含み、
前記無効電力発生部は、前記第1および第2の無効電力制御値に従って前記給電線に無効電力を出力する、請求項2に記載の交流給電システム。
【請求項4】
前記分散型電源は、
直流電力を発生する直流電源と、
前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して前記給電線に供給する電力変換器と、
前記給電線の交流電圧の周波数変化を検出し、その周波数変化がしきい値を超えた場合に前記電力変換器の運転を停止させる単独運転検出部とを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交流給電システム。
【請求項5】
前記交流電源は商用交流電源であり、
前記参照周波数は商用周波数である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の交流給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は交流給電システムに関し、特に、分散型電源を備えた交流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2013-207853号公報(特許文献1)には、負荷に交流電力を供給するための給電線と、交流電源と給電線の間に接続された遮断器と、給電線に交流電力を供給する分散型電源と、分散型電源の単独運転を許可するか否かを設定する設定部とを備える交流給電システムが開示されている。
【0003】
設定部の設定結果を示す信号は、通信網を介して分散型電源に送信される。分散型電源の単独運転が許可されていない場合、交流電源の停電時には、遮断器がオフされるとともに分散型電源の運転が停止され、負荷への電力供給は停止される。分散型電源の単独運転が許可されている場合、交流電源の停電時には、遮断器がオフされるとともに分散型電源が単独運転され、分散型電源から負荷に交流電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-207853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、設定部から信号を受信して動作する新規の分散型電源を使用する必要があり、既存の分散型電源を使用することができないという問題があった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、既存の分散型電源を使用しながら、交流電源の停電時に分散型電源を単独運転させることが可能な交流給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る交流給電システムは、負荷に交流電力を供給するための給電線と、一方端子が交流電源から供給される交流電圧を受け、他方端子が給電線に接続され、交流電源の健全時にオンされ、交流電源の停電時にオフされる遮断器と、給電線の交流電圧に同期して給電線に交流電力を供給する分散型電源と、交流電源の停電時に、給電線の交流電圧の周波数が参照周波数になるように給電線に無効電力を供給する無効電力補償装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る交流給電システムでは、交流電源の停電が発生すると、給電線の交流電圧が参照周波数になるように無効電力補償装置から給電線に無効電力が供給されるので、分散型電源の単独運転は検出されず、分散型電源の運転が継続される。したがって、既存の分散型電源を使用しながら、交流電源の停電時に分散型電源を単独運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明の基礎となる交流給電システムの構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図1に示す分散型電源の構成を示す回路ブロック図である。
図4】この発明の実施の形態1に従う交流給電システムの構成を示す回路ブロック図である。
図5図4に示す無効電力補償装置の構成を示すブロック図である。
図6図5に示す制御部の構成を示すブロック図である。
図7】この発明の実施の形態2に従う交流給電システムの要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の理解を容易にするために、まず本願発明の基礎となる交流給電システムについて説明する。図1は、本願発明の基礎となる交流給電システムの構成を示す回路ブロック図である。図1において、この交流給電システムは、遮断器1、制御装置2、給電線3、および複数の分散型電源4を備え、商用交流電源5と連係して複数の負荷6に交流電力を供給する。
【0011】
遮断器1の一方端子は商用交流電源5から供給される商用周波数の交流電圧VAを受け、その他方端子は給電線3に接続される。遮断器1のオンおよびオフは、制御装置2によって制御される。
【0012】
制御装置2は、商用交流電源5から交流電圧VAが正常に供給されている場合(商用交流電源5の健全時)には遮断器1をオンさせ、商用交流電源5から交流電圧VAが正常に供給されていない場合(商用交流電源5の停電時)には遮断器1をオフさせる。
【0013】
図2は、制御装置2の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置2は、電圧検出器10、停電検出器11、および制御部12を含む。電圧検出器10は、商用交流電源5から供給される交流電圧VAの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VAfを出力する。
【0014】
停電検出器11は、電圧検出器10の出力信号VAfによって示される交流電圧VAの電圧値が正常範囲内であるか否かを検出し、検出結果を示す停電検出信号DBを出力する。交流電圧VAの電圧値が正常範囲内である場合には、停電検出信号DBは非活性化レベルの「H」レベルにされる。交流電圧VAの値が正常範囲よりも低い場合には、停電検出信号DBは活性化レベルの「L」レベルにされる。制御部12は、停電検出信号DBが「H」レベルである場合には遮断器1をオンさせ、停電検出信号DBが「L」レベルである場合には遮断器1をオフさせる。
【0015】
再び図1を参照して、複数の分散型電源4および複数の負荷6の各々は、給電線3に接続されている。各分散型電源4は、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faの時間変化Fchgに基づいて、当該分散型電源4が商用交流電源5と連係せずに単独運転しているか否かを判別する。
【0016】
単独運転していないと判別した場合には、当該分散型電源4は、給電線3の交流電圧Vaに同期して交流電力を給電線3に供給する。単独運転していると判別した場合には、当該分散型電源4の運転は停止される。
【0017】
商用交流電源5の健全時には、給電線3は遮断器1を介して商用交流電源5に接続され、給電線3の交流電圧Vaの周波数変化Fchgは小さいので、分散型電源4の単独運転は検出されない。
【0018】
商用交流電源5の停電時には、遮断器1がオフされて給電線3が商用交流電源5から電気的に切り離され、複数の分散型電源4の出力電流と複数の負荷6のインピーダンスとの関係で決定される所定周波数に向かって給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが変化するので、分散型電源4の単独運転が検出される。交流電圧Vaの周波数Faが許容範囲を超えると負荷6等に悪影響が発生するので、単独運転が検出されると分散型電源4の運転は停止される。
【0019】
図3は、分散型電源4の構成を示すブロック図である。図3において、分散型電源4は、直流電源20およびパワーコンディショナ21を備える。直流電源20は、自然エネルギーを直流電力に変換する。自然エネルギーは、たとえば、太陽光、風力、潮力、地熱などであり、再生可能エネルギーとも呼ばれる。パワーコンディショナ21は、給電線3の交流電圧Vaに同期して動作し、直流電源20によって生成される直流電力を交流電力に変換して給電線3に供給する。
【0020】
パワーコンディショナ21は、電流検出器22,26、電圧検出器23,27、電力変換器24、遮断器25、単独運転検出部28、および制御部29を含む。直流電源20の出力端子20aは、電力変換器24の直流端子24aに接続される。電力変換器24の交流端子24bは遮断器25の一方端子に接続され、遮断器25の他方端子は給電線3に接続される。
【0021】
電流検出器22は、直流電源20の直流出力電流IDを検出し、その検出値を示す信号IDfを制御部29に出力する。電圧検出器23は、直流電源20の直流出力電圧VDを検出し、その検出値を示す信号VDfを制御部29に出力する。
【0022】
電力変換器24は、制御部29によって制御される。分散型電源4の単独運転が検出されていない場合には、電力変換器24は、直流電源20から供給される直流電力を交流電力に変換する。分散型電源4の単独運転が検出された場合には、電力変換器24の運転は停止される。
【0023】
遮断器25のオンおよびオフは、制御部29によって制御される。分散型電源4の単独運転が検出されていない場合には、遮断器25はオンされる。分散型電源4の単独運転が検出された場合には、遮断器25はオフされる。
【0024】
電流検出器26は、遮断器25の他方端子と給電線3との間に流れる交流電流Iaの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iafを制御部29に出力する。電圧検出器27は、給電線3の交流電圧Vaを検出し、その検出値を示す信号Vafを単独運転検出部28および制御部29に出力する。
【0025】
単独運転検出部28は、電圧検出器27の出力信号Vafによって示される給電線3の交流電圧Vaの周波数Faの時間変化Fchgを求め、求めた周波数変化Fchgとしきい値Fthとの大小を比較し、比較結果を示す信号を単独運転検出信号DIとして制御部29に出力する。
【0026】
周波数変化Fchgがしきい値Fthよりも小さい場合には(Fchg<Fth)、単独運転が行なわれていないと判定され、単独運転検出信号DIは非活性化レベルの「L」レベルにされる。周波数変化Fchgがしきい値Fthよりも大きい場合には(Fchg>Fth)、単独運転が行なわれていると判定され、単独運転検出信号DIは活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0027】
また、単独運転検出部28は、周波数変化Fchgがしきい値Fthよりも小さな所定値Fbを超えた場合には、周波数変化Fchgを増大させる方向(進相または遅相)の無効電力の出力を指令する指令信号CMDを制御部29に出力する。これにより、単独運転を迅速に検出することが可能となっている。
【0028】
なお、このような検出方法は、新型能動的方式と呼ばれる。ただし、単独運転検出部28は、従来型能動方式または受動的方式で単独運転を検出するものであっても構わない。
【0029】
制御部29は、電流検出器22,26の出力信号IDf,Iaf、電圧検出器23,27の出力信号VDf,Vaf、および単独運転検出部28の出力信号DI,CMDに基づいて電力変換器24を制御する。
【0030】
単独運転検出信号DIが非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部29は、遮断器25をオンさせるとともに、電流検出器22,26および電圧検出器23,27の出力信号に基づいて電力変換器24を制御し、直流電源20によって生成される直流電力を交流電力に変換させる。
【0031】
また、制御部29は、指令信号CMDに従って電力変換器24を制御し、電力変換器24から給電線3に進相無効電力または遅相無効電力を出力させる。また、単独運転検出信号DIが活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部29は、遮断器25をオフさせるとともに電力変換器24の運転を停止させる。
【0032】
次に、この交流給電システムの動作について説明する。商用交流電源5の健全時には、停電検出器11(図2)によって停電検出信号DBが非活性化レベルの「H」レベルにされ、制御部12によって遮断器1(図1)がオンされる。これにより、商用交流電源5の交流出力電圧VAが遮断器1を介して給電線3に供給され、商用交流電源5と複数の分散型電源4が連係される。
【0033】
各分散型電源4では、直流電源20(図3)によって自然エネルギーが直流電力に変換され、その直流電力が電力変換器24によって交流電力に変換され、その交流電力は遮断器25および給電線3を介して複数の負荷6に供給される。
【0034】
複数の負荷6の消費電力よりも、複数の分散型電源4によって生成される交流電力が小さい場合には、不足分の電力は商用交流電源5から供給される。複数の負荷6の消費電力よりも、複数の分散型電源4によって生成される交流電力が大きい場合には、余剰分の電力は商用交流電源5に回生される。
【0035】
商用交流電源5の停電時には、停電検出器11(図2)によって停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされ、制御部12によって遮断器1(図1)がオフされ、商用交流電源5(図1)と給電線3が電気的に切り離される。商用交流電源5と給電線3が電気的に切り離されると、複数の分散型電源4の交流出力電流Iaと複数の負荷6のインピーダンスとで決定される所定周波数に向かって、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが変化する。
【0036】
その周波数Faの時間変化Fchgが所定値Fbを超えると、単独運転検出部28から制御部29に指令信号CMDが出力される。制御部29は、指令信号CMDに応答して電力変換器29を制御し、その周波数変化Fchgを増大させる方向の無効電力を給電線3に出力させる。
【0037】
周波数変化Fchgがさらに増大してしきい値Fthを超えると、単独運転検出部28によって単独運転検出信号DIが活性化レベルの「H」レベルにされ、電力変換器24の運転が停止されるとともに、遮断器25がオフされる。これにより、複数の分散型電源4から給電線3への交流電力の出力が停止され、複数の負荷6の運転が停止される。
【0038】
このように、図1図3で示した交流給電システムでは、商用交流電源5の停電時には、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faの変化によって負荷6が悪影響を受けること等を防止するため、全ての分散型電源4の運転が停止される。しかし、自然災害等によって商用交流電源5の停電が発生した場合に、複数の分散型電源4によって生成される交流電力を有効に利用することが望まれる。本願発明では、この問題の解決が図られる。
【0039】
[実施の形態1]
図4は、この発明の実施の形態1に従う交流給電システムの構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図4を参照して、この交流給電システムが図1の交流給電システムと異なる点は、無効電力補償装置30が追加されている点である。
【0040】
無効電力補償装置30は、停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされている場合に、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが商用周波数Fc(参照周波数)になるように無効電力を給電線3に出力する。無効電力補償装置30は、たとえばSTATCOM(Static synchronous compensator)を含む。
【0041】
図5は、無効電力補償装置30の構成を示すブロック図である。図5において、無効電力補償装置30は、無効電力発生部31、電流検出器32、電圧検出器33、周波数検出器34、および制御部35を含む。
【0042】
無効電力発生部31は、複数のリアクトル、複数のコンデンサ、複数のサイリスタを含み、制御部35によって制御され、無効電力を給電線3に出力する。複数のサイリスタの各々をオンおよびオフさせることにより、進相無効電力または遅相無効電力を選択的に出力するとともに、無効電力の大きさを所望の値に制御することが可能となっている。
【0043】
電流検出器32は、無効電力発生部31から給電線3に出力される交流電流IRを検出し、その検出値を示す信号IRfを制御部35に出力する。電圧検出器33は、給電線3の交流電圧Vaの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Vafを制御部35に出力する。周波数検出器34は、電圧検出器33の出力信号Vafに基づいて交流電圧Vaの周波数Faを検出し、その検出値を示す信号Fafを制御部35に出力する。
【0044】
制御部35は、停電検出信号DB、電流検出器32の出力信号IRf、電圧検出器33の出力信号Vaf、および周波数検出器34の出力信号Fafに基づいて、無効電力発生部31を制御する。
【0045】
制御部35は、停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルである場合に活性化され、周波数検出器34の出力信号Fafによって示される周波数Faが商用周波数Fcになるように、無効電力発生部31から出力される無効電力を制御する。
【0046】
図6は、制御部35の構成を示すブロック図である。図6において、制御部35は、減算器40、周波数制御部41、および無効電力制御部42を含む。減算器40は、商用周波数Fcと、周波数検出器34(図5)の出力信号Fafによって示される周波数Faとの偏差ΔFa=Fc-Faを求める。
【0047】
周波数制御部41は、停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされた場合に活性化され、偏差ΔFaがなくなるように無効電力制御値ΔQを生成する。周波数制御部41は、たとえば、偏差ΔFaに比例する値と偏差ΔFaの積分値に比例する値とを加算することにより無効電力制御値ΔQを生成する。
【0048】
無効電力制御部42は、電流検出器32の出力信号IRfと、電圧検出器33の出力信号Vafとに基づいて、無効電力発生部31から給電線3に出力される無効電力を検出し、その検出値が無効電力制御値ΔQに応じた値の無効電力になるように無効電力発生部31を制御する。
【0049】
次に、図4図6で示した交流給電システムの動作について説明する。商用交流電源5の健全時の動作は、図1図3で示した交流給電システムと同じである。すなわち、商用交流電源5(図4)の健全時には、停電検出信号DBが非活性化レベルの「H」レベルにされ、遮断器1がオンされるとともに、無効電力補償装置30が非活性化される。
【0050】
これにより、商用交流電源5の交流出力電圧VAが遮断器1を介して給電線3に供給され、商用交流電源5と複数の分散型電源4が連係される。各分散型電源4では、自然エネルギーが直流電力に変換され、その直流電力が交流電力に変換され、その交流電力は給電線3を介して複数の負荷6に供給される。このとき無効電力補償装置30から無効電力は出力されない。
【0051】
商用交流電源5の停電時には、停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされ、遮断器1がオフされて商用交流電源5と給電線3が電気的に切り離されるとともに、無効電力補償装置30が活性化される。
【0052】
電圧検出器33および周波数検出器34(図5)によって給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが検出され、減算器40(図6)によって商用周波数Fcと交流電圧Vaの周波数Faとの偏差ΔFaが求められる。周波数制御部41によって偏差ΔFaがなくなるように無効電力制御値ΔQが生成され、その無効電力制御値ΔQに従って無効電力制御部42が無効電力発生部31を制御し、無効電力発生部31から給電線3に無効電力が出力される。
【0053】
これにより、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faは商用周波数Fcに維持される。周波数Faが商用周波数Fcに維持されるので、単独運転検出部28によって単独運転は検出されず、分散型電源4の運転が継続され、負荷6の運転が継続される。
【0054】
以上のように、この実施の形態1では、商用交流電源5の停電時には、無効電力補償装置30によって給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが商用周波数Fcに維持されるので、単独運転検出部28によって単独運転は検出されず、分散型電源4の単独運転が継続される。したがって、既存の分散型電源4を使用しながら、商用交流電源5の停電が発生した場合でも、分散型電源4の単独運転を継続することができる。このため、自然災害等によって商用交流電源5の停電が発生した場合に、分散型電源4によって生成される交流電力を有効に利用することができる。
【0055】
[実施の形態2]
商用交流電源5の健全時に分散型電源4の発電量が増大すると、逆潮流によって給電線3の交流電圧Vaの実効値Veが上昇するという問題がある。交流電圧Vaの実効値Veが過度に高くなると、負荷6に悪影響が発生する。本実施の形態2では、この問題の解決が図られる。
【0056】
図7は、この発明の実施の形態2に従う交流給電システムの要部を示すブロック図であって、図6と対比される図である。図7を参照して、この交流給電システムが実施の形態1と異なる点は、無効電力補償装置30の制御部35が制御部45で置換されている点である。
【0057】
制御部45は、制御部35に実効値演算部50、減算器51、電圧制御部52、およびスイッチ53を追加したものである。実効値演算部50は、電圧検出器33(図5)の出力信号Vafに基づいて、給電線3の交流電圧Vaの実効値Ve(電圧値)を求める。電圧検出器33および実効値演算部50は、電圧値検出器の一実施例を構成する。減算器51は、交流電圧Vaの実効値の基準値Vc(参照電圧値)と、実効値演算部50によって求められた実効値Veとの偏差ΔVe=Vc-Veを求める。
【0058】
電圧制御部52は、停電検出信号DBが非活性化レベルの「H」レベルにされた場合に活性化され、偏差ΔVeがなくなるように無効電力制御値ΔQを生成する。電圧制御部52は、たとえば、偏差ΔVeに比例する値と偏差ΔVeの積分値に比例する値とを加算することにより無効電力制御値ΔQを生成する。
【0059】
スイッチ53は、停電検出信号DBに応じて、周波数制御部41によって生成される無効電力制御値ΔQと、電圧制御部52によって生成される無効電力制御値ΔQとの何れか一方を無効電力制御部42に与える。具体的には、停電検出信号DBが非活性化レベルの「H」レベルにされた場合に、スイッチ53は、電圧制御部52によって生成される無効電力制御値ΔQを無効電力制御部42に与える。停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされた場合に、スイッチ53は、周波数制御部41によって生成される無効電力制御値ΔQを無効電力制御部42に与える。
【0060】
次に、この交流給電システムの動作について説明する。商用交流電源5(図4)の健全時には、停電検出信号DBが非活性化レベルの「H」レベルにされ、遮断器1がオンされる。これにより、商用交流電源5の交流出力電圧VAが遮断器1を介して給電線3に供給され、商用交流電源5と複数の分散型電源4が連係される。各分散型電源4では、自然エネルギーが直流電力に変換され、その直流電力が交流電力に変換され、その交流電力は給電線3を介して複数の負荷6に供給される。
【0061】
また、無効電力補償装置30では、電圧制御部52(図7)が活性化される。電圧検出器33(図5)によって給電線3の交流電圧Vaが検出され、実効値演算部50(図7)によって交流電圧Vaの実効値Veが求められ、減算器51によって交流電圧Vaの実効値Veと基準値Vcとの偏差ΔVeが求められる。
【0062】
電圧制御部52によって偏差ΔVeがなくなるように無効電力制御値ΔQが生成され、スイッチ53を介して無効電力制御部42に与えられる。その無効電力制御値ΔQに従って無効電力制御部42が無効電力発生部31を制御し、無効電力発生部31から給電線3に無効電力が出力される。これにより、給電線3の交流電圧Vaの実効値Veが基準値Vcに維持され、交流電圧Vaの実効値Veが過度に高くなることが防止される。
【0063】
商用交流電源5の停電時には、停電検出信号DBが活性化レベルの「L」レベルにされ、遮断器1がオフされて商用交流電源5と給電線3が電気的に切り離される。無効電力補償装置30では、電圧制御部52が非活性化されるとともに、周波数制御部41が活性化される。
【0064】
電圧検出器33および周波数検出器34によって給電線3の交流電圧Vaの周波数Faが検出され、減算器40によって商用周波数Fcと交流電圧Vaの周波数Faとの偏差ΔFaが求められる。周波数制御部41によって偏差ΔFaがなくなるように無効電力制御値ΔQが生成され、スイッチ53を介して無効電力制御部42に与えられる。その無効電力制御値ΔQに従って無効電力制御部42が無効電力発生部31を制御し、無効電力発生部31から給電線3に無効電力が出力される。
【0065】
これにより、給電線3の交流電圧Vaの周波数Faは商用周波数Fcに維持される。周波数Faが商用周波数Fcに維持されるので、単独運転検出部28によって単独運転は検出されず、分散型電源4の運転が継続され、負荷6の運転が継続される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0066】
以上のように、この実施の形態2では、商用交流電源5の健全時には、給電線3の交流電圧Vaの実効値Veが基準値Vcになるように、無効電力補償装置30から給電線3に無効電力が供給される。したがって、分散型電源4の発電量が増大した場合でも、給電線3の交流電圧Vaの実効値Veが増大して負荷6に悪影響が発生することを防止することができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1,25 遮断器、2 制御装置、3 給電線、4 分散型電源、5 商用交流電源、6 負荷、10,23,27,33 電圧検出器、11 停電検出器、12,29,35,45 制御部、20 直流電源、21 パワーコンディショナ、22,26,32 電流検出器、24 電力変換器、28 単独運転検出部、30 無効電力補償装置、31 無効電力発生部、34 周波数検出器、40,51 減算器、41 周波数制御部、42 無効電力制御部、50 実効値演算部、52 電圧制御部、53 スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7