(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088602
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】無線通信装置、通信制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/08 20230101AFI20230620BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20230620BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20230620BHJP
【FI】
H04W28/08
H04W4/06
H04W88/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203438
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊太朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕和
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC13
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG01
5K067HH22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザの利用環境に応じて適切なマルチキャスト送信レートを自動的に決定する無線通信装置、通信制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】通信システム10において、アクセスポイント100は、無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は複数の無線通信端末が同時に受信可能なデータを送信する第2方式で通信する無線通信部と、単位時間における第2方式の通信量を示す情報に基づいて第2方式の通信レートを変更する制御部、を含む。これにより、適切なマルチキャスト送信レートを自動的に決定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は複数の無線通信端末が同時に受信可能なデータを送信する第2方式で通信する通信部と、
単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する制御部、
を含む、無線通信装置。
【請求項2】
前記前記第2方式の通信量を示す情報は、前記単位時間における前記第1方式による通信量と前記第2方式による通信量との比率である、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記単位時間における前記第1方式による通信量と前記第2方式の通信量との合計に対する前記第2方式の通信量の割合を取得し、
取得された前記第2方式の通信量の割合に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記単位時間と前記単位時間における前記第2方式の通信量の割合とに基づいて所定期間を設定し、
前記所定期間における前記単位時間ごとの前記第2方式の通信量の割合と所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、接続されている無線通信端末の数に応じて、前記所定の閾値を設定する、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、第1閾値及び前記第1閾値とは異なる第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第2方式の通信量の割合が前記第1閾値以上である又は前記第2閾値以下である単位時間の数に応じて、前記第2方式の通信レートを変更する、請求項4又は5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記所定期間における各単位時間は、連続又は非連続である、請求項4乃至6の何れか一項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記第1方式は、ユニキャスト方式であり、
前記第2方式は、マルチキャストまたはブロードキャスト方式である、請求項1乃至7の何れか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
無線通信装置が、
無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は複数の無線通信端末が同時受信可能なデータを送信する第2方式で通信し、
単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、
ことを含む、通信制御方法。
【請求項10】
前記前記第2方式の通信量を示す情報は、前記単位時間における前記第1方式による通信量と前記第2方式による通信量との比率である、請求項9に記載の通信制御方法。
【請求項11】
前記第2方式の通信レートを変更することは、
前記単位時間における前記第1方式による通信量と前記第2方式の通信量との合計に対する前記第2方式の通信量の割合を取得し、
取得された前記第2方式の通信量の割合に基づいて前記第2方式の通信レートを変更すること、
を含む、請求項10に記載の通信制御方法。
【請求項12】
前記第2方式の通信レートを変更することは、
前記単位時間と前記単位時間における前記第2方式の通信量の割合とに基づいて所定期間を設定すること、をさらに含み、
前記取得された前記第2方式の通信量の割合に基づいて前記第2方式の通信レートを変更することは、前記所定期間における前記単位時間ごとの前記第2方式の通信量の割合と所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記第2方式の通信レートを変更することである、請求項11に記載の通信制御方法。
【請求項13】
前記所定の閾値は、接続されている無線通信端末の数に応じて設定される、請求項12に記載の通信制御方法。
【請求項14】
前記所定の閾値は、第1閾値及び前記第1閾値とは異なる第2閾値を含み、
前記比較結果に基づいて前記第2方式の通信レートを変更することは、前記第2方式の通信量の割合が前記第1閾値以上である又は前記第2閾値以下である単位時間の数に応じて、前記第2方式の通信レートを変更することである、請求項12又は13に記載の通信制御方法。
【請求項15】
前記所定期間における各単位時間は、連続又は非連続である、請求項12乃至14の何れか一項に記載の通信制御方法。
【請求項16】
前記第1方式は、ユニキャスト方式であり、
前記第2方式は、マルチキャストまたはブロードキャスト方式である、請求項9乃至15の何れか一項に記載の通信制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、
無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は複数の無線通信端末が同時受信可能なデータを送信する第2方式で通信し、
単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、
ことを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、通信制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2.4GHz帯または5GHz帯の通信帯域を用いる無線LAN(Local Area Network)などの無線通信は、同時に通信するノード(通信相手)の数に応じて、主に3つの通信方式、ユニキャスト方式、マルチキャスト方式、及びブロードキャスト方式に分類することができる。ユニキャスト方式は、単一のアドレスを指定して、1対1で行われるデータ通信方式であり、例えば、Webサイトの閲覧や、メールの送受信などに用いられる。マルチキャスト方式は、特定のアドレスを指定して、1対複数で行われるデータ通信方式であり、例えば、動画配信、音楽配信などのストリーミング配信に用いられる。ブロードキャスト方式は、同じネットワーク内の全宛先を指定し、1対不特定多数で行われるデータ通信方式であり、相手を特定しない制御データのやりとりや、通信相手の探索などに用いられる。
【0003】
ユニキャスト方式では、送信側と受信側との間で受信確認が行われるため、受信側からの受信応答に基づいて、通信レートを最適化することができる。一方、マルチキャスト方式、およびブロードキャスト方式の場合、受信側が複数のため、送信側と受信側との間で受信確認が行われず、受信側からの受信応答に基づいて、通信レートを最適化することができない。特許文献1では、ユニキャスト方式の通信を行う場合の無線通信情報に基づいて、マルチキャスト方式、およびブロードキャスト方式の通信の通信レートを選択することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信システムでは、無線通信装置が送信するマルチキャストフレーム、及びブロードキャストフレーム(マルチキャスト/ブロードキャストフレーム)のレートであるマルチキャスト送信レートの設定が可能である。マルチキャスト送信レートを小さくすると、無線通信システムと無線通信端末との通信可能な距離を大きくすることができる。一方、マルチキャスト送信レートを小さくすると、無線通信システムで実行される、ユニキャスト方式と、マルチキャスト/ブロードキャスト方式との通信のうち、マルチキャスト/ブロードキャストフレームが占めるエアタイムの割合が大きくなり、ユニキャストフレームのスループットが小さくなってしまう。
【0006】
マルチキャスト送信レートを設定する際には、通信におけるマルチキャスト/ブロードキャストフレームが占めるエアタイムなどの利用環境に応じて適切なマルチキャスト送信レートを設定することが必要になるが、ユーザ自らが利用する無線環境について知ることは難しい。そのため、どのようにマルチキャスト送信レートを決定すべきか判断しづらく、さらにユーザ自らがマルチキャスト送信レートの設定を行うことは、非常に煩雑である。
【0007】
本開示の目的の一つは、適切なマルチキャスト送信レートを自動的に決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、無線通信端末とデータを送受信する第1方式 又は複数の無線通信端末が同時に受信可能なデータを送信する第2方式で通信する通信部と、単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する制御部、を含む、無線通信装置が提供される。
【0009】
本発明の別の一実施形態によれば、無線通信装置が、無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は複数の無線通信端末が同時受信可能なデータを送信する第2方式で通信し、単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、ことを含む、通信制御方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、コンピュータに、無線通信端末とデータを送受信する第1方式又は前記複数の無線通信端末が同時受信可能なデータを送信する第2方式で通信し、単位時間における前記第2方式の通信量を示す情報に基づいて前記第2方式の通信レートを変更する、ことを実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、適切なマルチキャスト送信レートを自動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る通信制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施形態に係る設定変更処理を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の一実施形態に係る設定決定処理を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の一実施形態に係る設定決定処理を示すフローチャートである。
【
図6】信制御処理の開始から記録した第2方式の通信量の割合の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
図面は説明をより明確にするため、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。なお、本発明の属する分野における通常に知識を有する者であれば認識できるものである場合、特段の説明を行わないものとする。
【0015】
<通信システム>
本開示の通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る通信システムは、無線通信を中継するアクセスポイントによって実現される。アクセスポイントは、以下に説明する方法により、ユーザの利用環境に応じて、適切なマルチキャスト送信レートを自動的に決定して、決定されたマルチキャスト送信レートに変更することができる。以下に本実施形態におけるアクセスポイントについて説明する。尚、通信システムは、アクセスポイントに代えてルータやネットワークスイッチ等の他の通信装置によって実現されてもよい。
【0016】
以下の説明において、「送信レート」は、無線通信装置が送信するフレームレートを意味し、「受信レート」は、無線通信端末が無線通信装置から送信されたフレームを受信する際のフレームレートを意味する。「通信レート」は、送信レートと、受信レートとを区別しない場合に用いる。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態における通信システム10の構成を説明する図である。通信システム10は、アクセスポイント100、および無線通信端末200(200-1、200-2)を含む、通信システム10は、ルータ300を含んでもよい。
【0018】
アクセスポイント100は、無線通信端末200に無線LANの環境を提供する。また、アクセスポイント100は、ルータ300を介して無線通信端末200のWAN(Wide Area Network)やインターネットへの接続を中継することができる。
図1において、2つの無線通信端末200-1、200-2が示されているが、1つ以上の無線通信端末200が存在していればよい。以下、個々の無線通信端末200-1、200-2を区別する必要がない場合は、単に無線通信端末200として説明する。
【0019】
アクセスポイント100は、制御部101、無線通信部103、記憶部105、及び操作部107を含む。アクセスポイント100は、通信モジュール109を含んでもよい。アクセスポイント100の各構成は、バス111によって互いに接続される。
【0020】
制御部101は、CPUなどの演算処理回路およびメモリを含む。制御部101は、記憶部105に記憶された制御プログラムをCPUによって実行して、各種機能をアクセスポイント100において実現させる。実現される機能には、通信制御機能が含まれる。この通信制御機能によれば、後述する通信制御処理を実行することができる。なお、制御部101によって実現される機能は、上述した通信制御機能以外にも、アクセスポイント100を構成する各部を制御する機能を含む。これらの機能を実現する構成の一部または全部は、プログラムの実行によってソフトウエアによって実現される場合に限られず、ハードウエアによって実現されてもよい。
【0021】
制御プログラムは、コンピュータにより実行可能であればよく、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。この場合には、アクセスポイント100は、記録媒体を読み取る装置を備えていればよい。また、制御プログラムは、外部からネットワーク経由でダウンロードされてもよい。
【0022】
無線通信部(通信部)103は、無線通信端末200と無線通信する。具体的には、無線通信部103は、制御部101により設定された、通信レートを含む通信パラメータに基づいて、ユニキャスト方式、およびマルチキャスト方式、またはブロードキャスト方式で無線通信端末200と無線通信し、フレームを送受信する。通信パラメータは、通信レートの他、通信に用いる帯域幅、送信ストリーム数などを含むことができる。無線通信部103は、2.4GHz帯、および5GHz帯の通信帯域のどちらも使用することができる。
【0023】
記憶部105は、不揮発性メモリ、ハードディスク、RAM等の記憶装置である。記憶部105には、SSD(Solid State Drive)の半導体メモリ等のほか、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク等)、光記録媒体、光磁気記録媒体、記憶媒体である記憶可能な素子が用いられる。記憶部105は、制御部101により実行される通信制御機能、およびその他の機能を実現するためのアプリケーションプログラム、各種情報などを記憶するデータベースとしての機能を有する。アプリケーションプログラムは、外部からネットワーク経由でダウンロードされてもよい。また、記憶部105は、外部に存在してもよい。記憶部105は、後述するマルチキャスト方式、およびブロードキャスト方式の通信による通信量の閾値データが記憶する。
【0024】
操作部107は、電源ボタン、設定ボタン等の操作子を含み、操作子に対するユーザの操作を受け付け、その操作に応じた信号を制御部101に出力する。
【0025】
通信モジュール109は、本実施形態では、ルータ300と通信し、ルータ300を介して他の装置と通信する。この通信は、無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。
【0026】
<通信制御処理>
制御部101により実行される通信制御処理について説明する。以下の説明において、アクセスポイント100の無線通信部103による無線通信端末200との通信において、ユニキャスト方式での通信を第1方式の通信、マルチキャスト方式、またはブロードキャスト方式での通信を第2方式の通信と称する。第1方式の通信では、アクセスポイント100と無線通信端末とが1対1でフレーム(データ)を送受信し、第2方式の通信では、アクセスポイント100は、複数の無線通信端末200に、該複数の無線通信端末200が同時に受信可能なフレーム(データ)を送信する。
【0027】
制御部101は、単位時間における第2方式の通信量を示す情報に基づいて、第2方式による通信の送信レートを変更する。本実施形態においては、単位時間における第2方式の通信量を示す情報として、該単位時間における第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率を用いて、第2方式による通信の送信レートを変更する。制御部101により実行される通信制御処理は、所定の単位時間における第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率に基づいて、第2方式による通信の送信レートを変更するための処理を含む。
【0028】
図2は、本実施形態に係る通信制御処理を示すフローチャートである。本実施形態において、通信制御処理が開始されると、制御部101は、開始時点から単位時間(a秒)毎に第2方式による通信量の割合を記録する(S201)。単位時間における第2方式の通信量の割合は、該単位時間における第1方式による通信の通信量と第2方式による通信の通信量との合計に対する、第2方式による通信の通信量の割合を算出することにより取得することができる。制御部101によって算出された第2方式による通信の通信量の割合は、記憶部105に一時的に記憶されてもよい。
【0029】
本実施形態において、単位時間における第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率は、上述の単位時間における第2方式の通信量の割合に限定されるわけではない。例えば、単位時間における第1方式による通信及び第2方式による通信における、第2方式による通信のエアタイムの割合(エアタイム占有率)が第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率として、考慮されてもよい。また、例えば、単位時間における第1方式による通信のフレームサイズによらないフレームの到着数と第2方式による通信のフレームサイズによらないフレームの到着数との比率を、第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率に代えて用いることもできる。
【0030】
続いて、制御部101は、開始時点から一定時間(b秒)が経過したか否か判定する(S202)。開始時点から一定時間(b秒)が経過している場合(S202;Yes)、制御部101は、設定時刻に達した否か判定する(S203)。設定時刻は、第2方式の送信レートを変更する所定の時刻である。設定時刻は、1日における所定の時刻であってもよく、ユーザが適宜設定することができる。
【0031】
設定時刻に達した場合(S203;Yes)、制御部101は、設定変更処理を実行する(S204)。一方、設定時刻に達していない場合、制御部101は、設定時刻に達するまで、単位時間(a秒)毎に第2方式による通信量の割合の記録を続ける(S205)。
【0032】
図3は、設定変更処理を示すフローチャートである。設定変更処理は、次の第2方式の送信レートの設定を変更するための処理である。制御部101は、単位時間における第2方式による通信の通信量が占める割合に基づいて、送信レートを含む、第2方式による通信の設定を変更する。
【0033】
設定変更処理が開始されると、制御部101は、各単位時間(a秒)における第2方式の通信量の割合を取得する(S301)。
【0034】
次に、制御部101は、単位時間と、S301の処理によって取得した各単位時間における第2方式の通信量の割合とに基づいて所定期間を設定する(S302)。制御部101は、単位時間における第2方式の通信量の割合が相対的に大きな単位時間を所定の数(b秒間分)だけ抽出し、抽出された単位時間を所定期間として設定する。抽出される単位時間の個数は、2個以上であればよく、ユーザにより適宜設定することができる。所定期間に含まれる単位時間は、連続していてもよく、非連続であってもよい。所定期間は、第2方式による通信の送信レートを決定するために考慮される期間である。
【0035】
次に、制御部101は、S302の処理によって設定された所定期間に含まれる単位時間の第2方式による通信の通信量の割合を抽出する(S303)。
【0036】
次に、制御部101は、S303の処理によって抽出された所定期間に含まれる単位時間の第2方式による通信の通信量の割合に基づいて設定決定処理を行う(S304)。その後、制御部101は、S304の設定決定処理によって決定された設定を、次に設定する第2方式の送信レートに反映し(S305)、一連の処理を終える。
【0037】
図4および
図5は、設定決定処理を示すフローチャートである。設定決定処理は、次に設定する第2方式の送信レートを決定するための処理である。
【0038】
制御部101は、S303の処理によって抽出された所定期間に含まれる単位時間の第2方式による通信の通信量の割合と第1閾値とを比較し、第2方式による通信の通信量の割合が第1閾値以上である単位時間の個数が所定の個数以上であるか否かを判定する(S401)。第1閾値は、所定の第2方式による通信の通信量の割合である。第1閾値は、ユーザが適宜設定することができる。また、単位時間の所定の個数は、予め設定されていてもよく、ユーザが適宜設定することもできる。
【0039】
S401の処理における判定の結果、第2方式による通信の通信量の割合が第1閾値以上である、所定期間に含まれる単位時間の個数が、所定の個数以上である場合(S401;Yes)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを上げた場合、次に設定しようとしている第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの上限値未満であるか否かを判定する(S402)。第2方式の送信レートの上限値は、ユーザが適宜設定してもよい。
【0040】
S402の処理における判定の結果、現在の第2方式の送信レートを上げた場合、次に設定しようとしている第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの上限値未満である場合(S402;Yes)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートの最低値を上げることを決定する(S403)。
【0041】
S402の処理における判定の結果、現在の第2方式の送信レートを上げた場合、次に設定しようとしている第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの上限値以上である場合(S402;No)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを変更しないことを決定する(S404)。
【0042】
一方、S401の処理における判定の結果、第2方式による通信の通信量の割合が第1閾値以上である、所定期間に含まれる単位時間の個数が、所定の個数に達していない場合(S401;No)、制御部101は、S303の処理によって抽出された所定期間に含まれる単位時間の第2方式による通信の通信量の割合と第2閾値とを比較し、第2方式による通信の通信量の割合が第2閾値以下である単位時間の個数が所定の個数以上であるか否かを判定する(S405)。第2閾値は、第1閾値とは異なる、所定の第2方式による通信の通信量の割合である。第2閾値は、第1閾値よりも小さい。第2閾値は、ユーザが適宜設定することができる。また、単位時間の所定の個数は、予め設定されていてもよく、ユーザが適宜設定することもできる。S405の処理において、判定のために参照される単位時間の所定の個数は、上述したS401の処理における、判定のために参照される単位時間の所定の個数と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
S405の処理における判定の結果、第2方式による通信の通信量の割合が第2閾値以下である、所定期間に含まれる単位時間の個数が、所定の個数以上である場合(S405;Yes)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの下限値であるか否かを判定する(S406)。第2方式の送信レートの下限値は、ユーザが適宜設定してもよい。
【0044】
S406の処理における判定の結果、現在の第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの下限値でない場合(S406;No)、制御部101は、制御部101は、現在の第2方式の送信レートの最低値を下げることを決定する(S407)。
【0045】
一方、S405の処理における判定の結果、第2方式による通信の通信量の割合が第2閾値以下である、所定期間に含まれる単位時間の個数が、所定の個数に達していない場合(S405;No)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを変更しないことを決定する(S404)。
【0046】
また、S406の処理における判定の結果、現在の第2方式の送信レートが、予め規定されている第2方式の送信レートの下限値である場合(S406;Yes)、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを変更しないことを決定する(S404)。
【0047】
このように制御部101は、第1方式及び第2方式の通信量に占める第2方式に通信量の割合に基づいて、次に設定する第2方式の送信レートを自動的に決定する。これにより、ユーザ自らが利用する無線利用環境を考慮して通信レートを設定するという煩雑な作業を実用とせず、利用環境に応じた適切なマルチキャスト送信レートを設定することができる。
【0048】
以上では、第2方式の送信レート、つまり、マルチキャスト方式、またはブロードキャスト方式を用いた通信の送信レートの設定を変更する方法を説明した。しかしながら、第2方式による通信の受信レートを送信レートの設定の変更と同時に変更してもよい。制御部101は、例えば、設定決定処理において、第2方式の送信レートの最低値を上げることを決定する(S403)場合、同時にサポートされている受信レートの最低値を上げることを決定してもよい。また、第2方式の送信レートの最低値を下げることを決定する(S406)場合、同時にサポートされている受信レートの最低値を下げることを決定してもよい。
【0049】
さらに、制御部101は、第2方式の送信/受信レートの設定の変更に加え、第1方式の送信レートの設定を同時に変更してもよく、第1方式の受信レートの設定を同時に変更してもよい。第2方式の送信/受信レートの設定の変更に加え、第1方式の送信/受信レートの設定を変更することにより、第1方式による通信、及び第2方式による通信における、送受信の通信可能距離のギャップを低減することができる。
【0050】
制御部101は、第2方式の送信レートの最低値を上げる、または下げる場合、予め決められた上限値、または下限値まで段階的に送信レートを上げる、または下げる。例えば、第2方式の送信レートの下限値が1Mbpsであり、上限値が12Mbpsであり、第2方式の送信レートは、1Mbps、2Mbps、5Mbps、6Mbps、9Mbps、11Mbps、12Mbpsから選択できると仮定する。この場合、現在の第2方式の送信レートが1Mbpsであり、制御部101が、設定決定処理において、第2方式の送信レートの最低値を上げることを決定(S403)した場合、制御部101は、次の第2方式の送信レートを2Mbpsに設定する。また、現在の第2方式の送信レートが11Mbpsであり、制御部101が、設定決定処理において、第2方式の送信レートの最低値を下げることを決定(S406)した場合、制御部101は、次の第2方式の送信レートを9Mbpsに設定する。
【0051】
S401及びS405の処理に用いた第1閾値及び第2閾値は、予め設定されていてもよく、アクセスポイント100に接続する無線通信端末200の数に応じて可変であってもよい。
【0052】
以下、アクセスポイント100の制御部101によって実行される通信制御処理の具体例を説明する。ここで説明する通信制御処理は、本実施形態の一例であって、本実施形態は、以下に説明する通信制御処理に限定されるわけではない。
【0053】
以下に述べる通信制御処理において、制御部101は、1日(24時間)毎に第2方式の送信レートの設定を変更するものとし、午前3時を設定時刻とする。また、1日において、第2方式による通信の通信量は30分(1800秒)ごとに取得されるものとする。つまり、
図2におけるS201の単位時間(a秒)が1800秒(a=1800)であるとする。また、第2方式による通信の送信レートを決定するために考慮される期間、つまり所定期間の長さは288000秒(8時間)とする。これは、単位時間(1800秒)16個分に相当する時間である。第2方式の送信レートは、1Mbps、2Mbps、5Mbps、6Mbps、9Mbps、11Mbps、12Mbpsから選択できるものとする。さらに、現在の第2方式の送信レートが1Mbpsであるとする。
【0054】
制御部101が、通信制御処理の開始から記録した第2方式の通信量の割合(%)の一例を
図6に示す。制御部101は、単位時間、つまり1800秒間における第1方式による通信の通信量と第2方式による通信の通信量との合計に対する、第2方式による通信の通信量の割合を算出することにより、第2方式の通信量の割合(%)を得てもよい。制御部101は、第2方式の送信レートの設定を変更する設定時刻に達するまで第2方式の通信量の割合を単位時間ごとに記録する。
図6では、前日の3時から当日の2時30分までに記録された第2方式の通信量の割合を示している。
【0055】
制御部101は、設定時刻(当日の3時)に達すると、設定時刻に達するまでに記録された、24時間分の単位時間ごとの第2方式の通信量の割合に基づいて、次に設定する第2方式の送信レートを決定する。以下では、制御部101による処理を、
図3を参照して説明した設定変更処理、および
図4および
図5を参照して説明した設定決定処理に対応付けて説明する。
【0056】
設定時刻(当日の午前3時)に達すると、制御部101は、前日の3時から当日の2時30までに記録された24時間分の単位時間ごとの第2方式の通信量の割合を取得する(S301)。
【0057】
次に、制御部101は、単位時間と、S301の処理によって取得した各単位時間における第2方式の通信量の割合とに基づいて所定期間を設定する(S302)。ここでは、第2方式による通信の送信レートを決定するために考慮される期間、つまり所定期間の長さは288000秒(8時間)である。そのため、制御部101は、単位時間における第2方式の通信量の割合が相対的に大きな、288000秒分の単位時間を抽出し、抽出された単位時間を所定期間として設定する。単位時間は1800秒であるため、制御部101は、単位時間における第2方式の通信量の割合が相対的に大きな16個(288000/1800)の単位時間を所定期間として抽出する。
【0058】
図6を参照すると、前日の8時30分から前日の16時までに記録された288000秒間(8時間)の第2方式の通信量の割合が相対的に大きい。したがって、前日の8時30分から前日の16時までを所定期間として設定する。
【0059】
次に、制御部101は、前日の8時30分から前日の16時までの単位時間の第2方式の通信量の割合を抽出する(S303)。制御部101は、抽出された第2方式の通信量の割合のうち、第2方式の通信量の割合が第1閾値以上である単位時間が所定の個数以上であるか否か判定する(S401)。一例として、第1閾値が90%、所定の個数を8個とする。前日の8時30分から前日の16時までの単位時間の第2方式の通信量の割合のうち、前日の10時から14時30分までに記録された第2方式の通信量の割合が90%を超えている。前日の10時から14時30分までの期間が単位時間10個分に相当する。したがって、制御部101は、第2方式の通信量の割合が第1閾値以上である単位時間が所定の個数以上である(S401;Yes)と判定する。
【0060】
次に、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを上げた場合、次に設定する第2方式の送信レートが予め規定されている第2方式の送信レートの上限値未満であるか否か判定する(S402)。ここで、現在の第2方式の送信レートが1Mbpsであり、第2方式の送信レートの上限値は12Mbpsであるため、制御部101は、現在の第2方式の送信レートを上げた場合、次に設定する第2方式の送信レートが予め規定されている第2方式の送信レートの上限値未満である(S402;Yes)と判定する。
【0061】
その結果、制御部101は、現在の第2方式の送信レートの最低値を上げることを決定する(S403)。具体的には、制御部101は、第2方式の送信レートを現在設定されている1Mbpsから2Mbpsに変更することを決定し、この結果を設定に反映させる(S305)。
【0062】
<変形例>
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0063】
以上に述べた本開示の一実施形態では、単位時間における第2方式の通信量を示す情報として、単位時間における第1方式による通信量と第2方式による通信量との比率を用いて、該比率に基づいて、第2方式による通信の送信レートを設定しているが、本開示はこれに限定されない。本開示の実施形態では、単位時間における第2方式の通信量を示す情報として、単位時間における第2方式による通信の通信量、単位時間における第2方式による通信のエアタイム、または単位時間における第2方式による通信のフレームサイズによらないフレームの到着数を用いてもよく、これらに基づいて、第2方式による通信の送信レートを設定してもよい。
【0064】
以上に述べた本開示の一実施形態では、S401及びS405の処理に用いた第1閾値及び第2閾値は、予め設定されていてもよく、アクセスポイント100に接続する無線通信端末200の数に応じて可変であってもよい例を示したが、本開示はこれに限定されない。本開示の実施形態では、例えば、第1閾値及び第2閾値は、ユーザが所望するカバレッジの大きさに基づいて設定されてもよい。
【0065】
また、本開示の一実施形態では、第1閾値及び第2閾値は、単位時間ごとの第2方式の通信量の割合の推移を入力として適切な第2方式の送信レートをあらかじめ学習させた学習済みモデルを利用して決定されてもよい。
【0066】
本開示の一実施形態では、設定変更処理において、単位時間における第2方式の通信量の割合を取得する際、制御部101は、休日に記録された単位時間における第2方式の通信量の割合を使用しなくてもよい。この場合、制御部101は、直近の平日に記録された単位時間における第2方式の通信量の割合を取得して使用してもよい。
【0067】
本開示の一実施形態では、休日における第2方式の通信レートは固定であってもよい。つまり、休日では、制御部101は、第2方式の通信レートの設定を変更しなくてもよい。
【0068】
本開示の一実施形態では、制御部101が、設定決定処理において、第2方式の送信レートの最低値を上げることを決定する際、同時にサポートされている受信レートの最低値を上げることを決定する場合、その時点で受信レートの下限値で接続されている無線通信端末が存在するか否かを判定してもよい。存在する場合、制御部101は、サポートされている受信レートの最低値の設定を変更しない。一方、存在しない場合、制御部101は、サポートされている受信レートの最低値を上げる。
【0069】
本開示の一実施形態として上述した実施形態及び変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、実施形態に示す構成を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本開示の要旨を備えている限り、発明の範囲に含まれる。
【0070】
上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本実施形態の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本開示の一実施形態によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0071】
10・・・通信システム、100・・・アクセスポイント、101・・・制御部、103・・・無線通信部、105・・・記憶部、107・・・操作部、109・・・通信モジュール、200・・・無線通信端末、300・・・ルータ