(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008861
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】デリバリーカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20230112BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101230
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021111989
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153258
【氏名又は名称】株式会社JIMRO
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久松 孝知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠二
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA52
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267CC24
(57)【要約】
【課題】内視鏡が長尺であっても、デリバリーカテーテルの差し入れ時に、ガイドワイヤの掴み代を確保する。
【解決手段】デリバリーカテーテル2のアウターチューブ5にインナーシャフト4を軸方向へ移動可能に挿通する。インナーシャフト4は、ガイドワイヤ40が挿通される内管10を含む。インナーシャフト4の手元端に内側手元操作部30を設ける。内側手元操作部30の軸方向の遠位側端部39又は中間部の外周面に内管10の手元端を開口させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
内部にガイドワイヤが挿通される内管を含むインナーシャフトと、
前記インナーシャフトが軸方向へ移動可能に挿通されるアウターチューブと、
前記インナーシャフトの手元端に設けられた内側手元操作部と、
を備え、前記内管の手元端が、前記内側手元操作部の前記軸方向の遠位側端部又は中間部の外周面に開口されていることを特徴とするデリバリーカテーテル。
【請求項2】
前記内側手元操作部が、当該内側手元操作部の遠位側端面に開口する挿込孔と、前記挿込孔における前記遠位側端面とは反対側の端部から手元側へ向かって斜めに延びて前記外周面に開口する案内孔とを有していることを特徴とする請求項1に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項3】
前記アウターチューブの手元端には、前記内側手元操作部が出し入れ可能な筒状の外側手元操作部が設けられており、
前記内側手元操作部の外周面には、前記案内孔から手元側へ延びる平面状又は凹面状の逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項4】
前記インナーシャフトが、前記ガイドワイヤを通す管路を含み、前記管路の手元端が、前記内側手元操作部の遠位側端部又は中間部の外周面に開口されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項5】
前記内管が、前記挿込孔に挿通又は連通されていることを特徴とする請求項2に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項6】
前記内管の手元端が、前記案内孔と前記逃げ部との連通部に前記逃げ部へ向かって開口するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項7】
前記逃げ部が、前記逃げ部の幅方向に対向する一対の溝側面を有する凹溝状であり、前記溝側面の外周側縁が、前記内管の手元端の中心より外周側に突出されていることを特徴とする請求項6に記載のデリバリーカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いるデリバリーカテーテルに関し、特に、ステントを病変部まで届けて、開通させた病変部に留置するデリバリーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大腸癌等によって閉塞又は狭窄した病変部を開通させて、そこに筒形のステントを留置することで、開通状態を維持する治療施術は公知である。ステントの留置には、内視鏡と、カニューレと、ガイドワイヤと、デリバリーカテーテルが用いられる。
【0003】
先ず、内視鏡を病変部の近くまで差し入れる。該内視鏡の鉗子チャネルに、カニューレを被せたガイドワイヤを差し入れ、ガイドワイヤの遠位側端部を、病変部よりも奥へ通す。該ガイドワイヤを残置する一方、カニューレを引き抜く。このとき、ガイドワイヤの手元側部分は、鉗子チャネルの手元端の鉗子口から外部に出ている。該ガイドワイヤの手元側部分をデリバリーカテーテルに通す。つまり、デリバリーカテーテルをガイドワイヤの外周に嵌める。さらに、デリバリーカテーテルをガイドワイヤに沿って内視鏡の鉗子チャネルに差し入れる。該デリバリーカテーテルの遠位側端部を病変部に臨ませて、該遠位側端部に収容されていたステントを病変部内に出して展開させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記デリバリーカテーテルをガイドワイヤの外周に嵌めて内視鏡の鉗子チャネルに差し入れる工程では、手元側でガイドワイヤを掴んでいる必要がある。したがって、鉗子口から外部に出ているガイドワイヤの手元側部分の長さは、デリバリーカテーテルの長さより大きい必要がある。
一方、例えば大腸の施術においては、大腸のなるべく奥まで差し入れ可能にするために内視鏡の長尺化の要請がある。そうすると、通常の長さのガイドワイヤの場合、その遠位側端部を病変部よりも奥に位置させたとき、内視鏡の鉗子口から外部に出る手元側部分の長さが、デリバリーカテーテルより短くなることが想定される。そうすると、ガイドワイヤの掴み代が無くなり、デリバリーカテーテルの差し入れ操作に支障を来す。
本発明は、かかる事情に鑑み、内視鏡が長尺であっても、デリバリーカテーテルの差し入れ時に、ガイドワイヤの掴み代を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一形態においては、ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
内部にガイドワイヤが挿通される内管を含むインナーシャフトと、
前記インナーシャフトが軸方向へ移動可能に挿通されるアウターチューブと、
前記インナーシャフトの手元端に設けられた内側手元操作部と、
を備え、前記内管の手元端が、前記内側手元操作部の前記軸方向の遠位側端部又は中間部の外周面に開口されている。
【0007】
当該デリバリーカテーテルによれば、ガイドワイヤが内側手元操作部の遠位側端部又は中間部から外部に出される。したがって、例えば内視鏡が長尺であるために、ガイドワイヤが内視鏡の鉗子チャネルの手元端の鉗子口から出ている手元側部分の長さがデリバリーカテーテルの全長より多少短くても、ガイドワイヤの掴み代が確保される。この結果、デリバリーカテーテルの差し入れ操作を支障無く行うことができる。
また、ガイドワイヤの手元側部分が、内視鏡の鉗子口から外部に出ていることで、デリバリーカテーテルを病変部まで挿入した時でもガイドワイヤの入れ替えができる。さらには、ガイドワイヤが内管の内部を通る区間が長いため、ガイドワイヤと内管の隙間が狭い状態でガイドワイヤのたわみが生じにくく、ガイドワイヤの手元側部分が内視鏡鉗子チャネル内でデリバリーカテーテルから出る場合と比較して、ガイドワイヤとデリバリーカテーテルが絡み合う可能性が無いため、デリバリーカテーテル及びガイドワイヤの良好な操作性を確保することができる。
【0008】
前記内側手元操作部が、当該内側手元操作部の遠位側端面に開口する挿込孔と、前記挿込孔における前記遠位側端面とは反対側の端部から手元側へ向かって斜めに延びて前記外周面に開口する案内孔とを有していることが好ましい。
これによって、ガイドワイヤを、デリバリーカテーテルに対して案内孔に沿って斜めに出し入れできる。
内管は、前記挿込孔を通って、その手元端が案内孔に配置されていることが好ましい。
【0009】
前記アウターチューブの手元端には、前記内側手元操作部が出し入れ可能な筒状の外側手元操作部が設けられており、
前記内側手元操作部の外周面には、前記案内孔から手元側へ延びる平面状又は凹面状の逃げ部が形成されていることが好ましい。
これによって、内側手元操作部と外側手元操作部とが重なった状態でも、これら内側手元操作部と外側手元操作部との間にガイドワイヤの挿通スペースを確保できる。
【0010】
好ましくは、前記インナーシャフトが、前記ガイドワイヤを通す管路を含み、前記管路の手元端が、前記内側手元操作部の遠位側端部又は中間部の外周面に開口されている。前記内管の内部は、前記管路を構成する。前記案内孔が前記管路の一部を構成していてもよい。前記案内孔が前記管路の手元端を構成していてもよい。
【0011】
好ましくは、前記内管は、前記挿込孔に挿通又は連通されている。
前記内管が前記挿込孔に挿通されて、前記内管の手元端の開口部ひいては前記管路の手元端が、前記案内孔に配置されていてもよい。
前記挿込孔(連通孔)が、前記内管と連通されるとともに前記内管より手元側へ延びることによって前記ガイドワイヤを通す管路の一部を構成していてもよい。
【0012】
好ましくは、前記内管の手元端が、前記案内孔と前記逃げ部との連通部に前記逃げ部へ向かって開口するように配置されている。
内側手元操作部と外側手元操作部との間にガイドワイヤが挟まれたときは、逃げ部によってガイドワイヤの逃げスペースを確保できる。ガイドワイヤは、前記管路の手元端の開口から逃げ部の連通部側の端部内を通って外部へ引き出される。ステントのリリースの際は、外側手元操作部を手元側へ引いていくのにしたがって、ガイドワイヤの前記引き出された部分が順次、逃げ部に収まる。この結果、ステントをスムーズにリリースすることができる。
【0013】
好ましくは、前記逃げ部が、前記逃げ部の幅方向に対向する一対の溝側面を有する凹溝状であり、前記溝側面の外周側縁が、前記内管の手元端の中心より外周側に突出されている。これによって、ガイドワイヤを一対の溝側面の間に挟むことで逃げ部に確実に収めることができる。この結果、手技に支障が生じることなく、ステントのリリース操作を円滑に行なうことができる。
前記逃げ部の深さは、前記ガイドワイヤの半径より大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内視鏡が長尺であっても、デリバリーカテーテルの差し入れ時に、ガイドワイヤの手元端がデリバリーカテーテルから突出されるようにでき、ガイドワイヤの掴み代を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るデリバリーカテーテルを備えたデリバリーシステムの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の円部IIにおける前記デリバリーカテーテルの断面図である。
【
図3】
図3(a)~同図(c)は、病変部の治療施術手順を順次、解説的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るデリバリーカテーテルを備えたデリバリーシステムの側面図である。
【
図5】
図5は、前記第2実施形態に係るデリバリーカテーテルの内側手元操作部単独の平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う、前記第2実施形態に係るデリバリーカテーテルの断面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6のVIIa-VIIa線に沿う断面図である。
図7(b)は、
図6のVIIb-VIIb線に沿う断面図である。
【
図8】
図8(a)~同図(d)は、前記第2実施形態における、病変部の治療施術手順を順次、解説的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図3)>
図1は、デリバリーシステム1を示したものである。デリバリーシステム1は、例えば大腸癌等の閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いられるものであり、デリバリーカテーテル2と、ワイヤメッシュを含む筒状のステント3とを備えている。
【0017】
デリバリーカテーテル2は、ステント3を病変部まで届けるための術具であり、インナーシャフト4と、アウターチューブ5を含む。アウターチューブ5は、好ましくは透光性の樹脂によって構成されている。
図2に示すように、アウターチューブ5の手元端には、筒状の外側手元操作部6が設けられている。外側手元操作部6の材質は、金属又は硬質樹脂である。
【0018】
図1に示すように、インナーシャフト4がアウターチューブ5に軸方向へ移動可能に挿通されている。
図2に示すように、インナーシャフト4は、内管10と、被覆管20と、内側手元操作部30を備えている。内管10及び被覆管20の材質は、軟質の樹脂である。
【0019】
図1に示すように、内管10の外周に被覆管20が被さっている。内管10の遠位側端部は、被覆管20から延び出ている。ステント3が、内管10の遠位側端部の外周とアウターチューブ5との間に挟まれるように収容された状態で病変部まで届けられて、リリースされる。
内管10の遠位端には円錐形状の先端ピース15が設けられている。内管10の内部には、ガイドワイヤ40が挿通される。
【0020】
図1に示すように、インナーシャフト4の手元端に内側手元操作部30が設けられている。内側手元操作部30の材質は、金属又は硬質樹脂である。内側手元操作部30は、直線状の棒形状に形成されており、外側手元操作部6に出し入れ可能である。
【0021】
図2に示すように、内側手元操作部30の軸方向の遠位側端部39には、環状凹部31と、挿込孔32と、案内孔33と、逃げ部34が設けられている。環状凹部31は、内側手元操作部30の遠位側端部39の外周面の全周にわたって形成されている。環状凹部31に被覆管20の手元端が嵌め込まれている。これによって、内側手元操作部30の遠位側端部39の外周に被覆管20が固定されている。
【0022】
挿込孔32は、内側手元操作部30の軸線に沿って延び、内側手元操作部30の遠位側端面39eに開口している。挿込孔32における前記遠位側端面39eとは反対側(
図2において右側)の手元端部に案内孔33が連なっている。案内孔33は、挿込孔32の手元端部から手元側へ向かって、内側手元操作部30の外周側へ斜めに延びている。
【0023】
さらに、内側手元操作部30の外周面には、平面状の逃げ部34が形成されている。案内孔33が、逃げ部34に達することで、内側手元操作部30の外周に開口している。逃げ部34は、案内孔33から手元側(
図2において右側)へ延びている。逃げ部34における、内側手元操作部30の外周面からの深さd
34は、ガイドワイヤ40の直径D
40と同等又は直径D
40より僅かに大きい。逃げ部34における手元側の端部は、内側手元操作部30の外周面へ向かう斜面34dになっている。
【0024】
内管10の手元端が、挿込孔32に挿し込まれている。更に、内管10は、挿込孔32と案内孔33の連続部において屈曲されて、案内孔33の中間部まで挿し入れられている。内管10の手元端の開口部13は、案内孔33に配置されている。ひいては、内管10の手元端が、内側手元操作部30の軸方向の遠位側端部39の外周面に開口されている。
【0025】
病変部の治療施術は、例えば次のようにして行われる。
図3(a)において解説的に示すように、内視鏡50を用意する。該内視鏡50を患者の肛門A1から大腸A2に挿し入れて、病変部A3に臨ませる。好ましくは、内視鏡50は比較的長尺であり、大腸A2の奥の病変部A3まで挿し入れることができる。
【0026】
次に、カニューレ(図示せず)を挿通したガイドワイヤ40を内視鏡50の鉗子チャネル53に差し入れる。そして、ガイドワイヤ40の遠位側端部41を、病変部A3よりも奥へ通す。該ガイドワイヤ40を残置する一方、カニューレを引き抜く。このとき、ガイドワイヤ40の手元側部分43は、鉗子チャネル53の手元端の鉗子口53cから外部に出ている。
内視鏡50が長尺であるために、鉗子口53cから出ているガイドワイヤ40の手元側部分43の長さが、通常より短くなっている。
【0027】
続いて、
図3(b)に示すように、ガイドワイヤ40の手元側部分43をデリバリーシステム1の遠位端側から該デリバリーシステム1の内管10に通す。このとき、ガイドワイヤ40の一部分43aが鉗子口53cとデリバリーシステム1の遠位側端部との間から外部に現れているため、該一部分43aを把持することで、ガイドワイヤ40をデリバリーシステム1に挿し入れる作業を行うことができる。
【0028】
図2に示すように、ガイドワイヤ40は、内側手元操作部30の遠位側端部39において、内管10の手元端の開口部13から出て、案内孔33を通り、内側手元操作部30の外部に引き出される。更に、内側手元操作部30と外側手元操作部6とが重なった状態の場合、ガイドワイヤ40は、外側手元操作部6の内周面と逃げ部34との間、及び外側手元操作部6の内周面と内側手元操作部30の外周面との間を経て、デリバリーシステム1の外部へ引き出される。つまり、内側手元操作部30の手元端ひいてはデリバリーシステム1の手元端からではなく、内側手元操作部30の遠位側端部39ないしは外側手元操作部6の手元端からガイドワイヤ40の手元端43bが引き出される。したがって、鉗子口53cから出ているガイドワイヤ40の手元側部分43の長さが通常より短くても、手元端43bがデリバリーシステム1から外部へ突出されるようにすることができる。
内側手元操作部30の外周面に逃げ部34を形成しておくことによって、内側手元操作部30と外側手元操作部6とが重なった状態でも、これら内側手元操作部30と外側手元操作部6との間にガイドワイヤ40の挿通スペースを確保できる。
【0029】
続いて、
図3(c)に示すように、デリバリーシステム1をガイドワイヤ40に沿って内視鏡50の鉗子チャネル53に差し入れる。これに伴って、ガイドワイヤ40の前記一部分43aがデリバリーシステム1内に隠れて、把持できなくなる。一方、ガイドワイヤ40の手元端43bは、デリバリーシステム1から外部に突出されているから、該手元端43bを把持することで、ガイドワイヤ40を支持できる。したがって、デリバリーシステム1と一緒にガイドワイヤ40の手元側部分が鉗子チャネル53に入り込まないようにすることができ、デリバリーシステム1の差し入れ操作を円滑に行うことができる。
要するに、前記ガイドワイヤ40をデリバリーシステム1に通す工程から、デリバリーシステム1を鉗子チャネル53に差し入れる工程の全期間を通じて、ガイドワイヤ40の手元側の何れかの部分43a,43bが外部に現れていて把持可能である。すなわち、内視鏡50が長尺であるために、ガイドワイヤ40が鉗子口53cから出ている手元側部分43の長さが多少短くなっても、ガイドワイヤ40の掴み代が確保される。この結果、デリバリーシステム1の差し入れ操作を支障無く行うことができる。
【0030】
そして、デリバリーシステム1の遠位側端部を病変部A3に臨ませて、ステント3をリリースする。その後、デリバリーカテーテル2及びガイドワイヤ40を引き抜く。
ステント3は、病変部A3内において展開状態で留置されることで、病変部A3の開通状態を維持できる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を適宜省略する。
<第2実施形態(
図4~
図8)>
図4は、本発明の第2実施形態に係るデリバリーシステム1Bを示したものである。デリバリーシステム1においては、インナーシャフト4の内管10の内部が、ガイドワイヤ40を通す管路10aを構成している。
図5に示すように、内側手元操作部30には、挿込孔35と、案内孔36と、逃げ部37が設けられている。挿込孔35は、当該内側手元操作部30の遠位側端面(
図5において省略する左端面)から該内側手元操作部30の軸線に沿って延びている。
【0032】
図5に示すように、挿込孔35における手元端部(
図5において右端部)に案内孔36が連なっている。
図5~
図7(a)に示すように、案内孔36は、傾斜底面36aと、一対の孔側面36bとを有し、内側手元操作部30の外周面に開口する凹溝状に形成されている。
図6に示すように、傾斜底面36aは、手元側(
図6において右側)へ向かって、内側手元操作部30の外周側(
図6において上側)へ斜めに延びている。
図7(a)に示すように、傾斜底面36aの断面は、凹んだ半円状になっている。なお、傾斜底面36aが平面状であってもよい。
図5に示すように、傾斜底面36aの幅(
図5において上下方向の寸法)は、案内孔36における遠位側の端部から中間部までは一定であり、そこから手元側(
図5において右側)へ向かって漸次小さくなっている。
【0033】
案内孔36の幅方向(
図7(a)において左右方向)の両端には、それぞれ孔側面36bが設けられている。これら孔側面36bは、案内孔36の幅方向(
図7(a)において左右方向)に対向するとともに、内側手元操作部30の外周面30aに達している。
図5及び
図7(a)に示すように、一対の孔側面36bの対向距離(案内孔36の幅)は、内管10の外直径より大きく、かつ案内孔36の全長にわたって一定である。
【0034】
図5に示すように、案内孔36における遠位側の端部(
図5において左端部)から中間部までは、各孔側面36bと傾斜底面36aの幅方向端部とが段差無く連なっている。
図5及び
図7(a)に示すように、案内孔36における中間部から手元側端部(
図5において右端部)までは、各孔側面36bと傾斜底面36aの幅方向端部とが、段差面36dを介して連なっている。
図5に示すように、段差面36dは、傾斜底面36aを幅方向の両側から挟むように二股になっている。手元側へ向かって、傾斜底面36aの幅が小さくなる分だけ、段差面36dが幅広になっている。
【0035】
図5に示すように、孔側面36bにおける手元側端部は、連通壁面36eを構成している。一対の連通壁面36eが、それぞれ平面視で円弧状の曲面をなして、互いに接近されている。一対の連通壁面36eどうしの間に、案内孔36と逃げ部37との連通部38が形成されている。
【0036】
図5に示すように、連通部38から逃げ部37が内側手元操作部30の軸方向に沿って手元側(
図5において右側)へ延びている。
図5及び
図7(b)に示すように、逃げ部37は、溝底面37aと、一対の溝側面37bとを有する凹溝状に形成されている。溝底面37aは、案内孔36の段差面36dと面一に連なるとともに前記軸方向へ延びる平坦面となっている。
【0037】
図7(b)に示すように、溝底面37aの幅方向(
図7(b)において左右方向)の両端にそれぞれ溝側面37bが連なっている。溝側面37bは、溝底面37aとほぼ直角に交差して、内側手元操作部30の外周面30aに達している。一対の溝側面37bは、逃げ部37の幅方向(
図7(b)において左右方向)に対向している。
【0038】
図5に示すように、逃げ部37の幅(一対の溝側面37bの対向距離)は、案内孔36の幅より小さい。また、
図7(b)に示すように、逃げ部37の幅は、内管10の外直径より小さく、ガイドワイヤ40の直径と略等しいか僅かに大きい。逃げ部37の深さD
37(溝側面37bの高さ、ないしは溝底面37aから外周面30aまでの距離)は、ガイドワイヤ40の半径R
40よりも大きく(D
37>R
40)、更には内管10の外半径より大きい。
【0039】
第2実施形態の内管10は、PEEK等の合成樹脂によって構成されている。
図6に示すように、内管10の手元端側部分が、挿込孔35に挿通されている。内管10の前記手元端側部分における挿込孔35から出された管端部分12は、挿込孔35内に挿通された部分を含む管端部分12より先端側の管部分11よりも内径が大きく、厚みが小さくなっている。内管10の内周における、管部分11と管端部分12との間には、環状の段差10dが形成されている。
なお、内管10の管部分11と管端部分12とが同じ厚みであってもよい。
【0040】
図6に示すように、内管10の管端部分12は、挿込孔35と案内孔36の連続部において屈曲され、案内孔36の傾斜底面36aに添わされて斜めに延びている。内管10の手元端(
図6において右端)は、案内孔36と逃げ部37との連通部38に配置され、連通壁面36eに突き当てられている。内管10の手元端の開口部13ひいては管路10aの手元端13aが、逃げ部37に向かって開口されることで、内側手元操作部30の軸方向の遠位側端部39の外周面に臨むように開口されている。ステント3のリリース前においては、管路10aの手元端13aが、外側手元操作部5よりも手元側に配置されて外部に現れている。
【0041】
図7に示すように、管路10aの手元端13aの中心13cは、内側手元操作部30の外周面30aよりも案内孔36内に引っ込んでいる。言い換えると、溝側面37bの外周側縁37eが、管路10aの手元端13aの中心13cより外周側(
図7(b)において上側)に突出されている。
【0042】
第2実施形態において、病変部の治療施術は、例えば次のようにして行われる。
図8(a)において解説的に示すように、内視鏡50を用意する。該内視鏡50を患者の肛門A1から大腸A2に挿し入れて、病変部A3に臨ませる。好ましくは、内視鏡50は比較的長尺であり、大腸A2の奥の病変部A3まで挿し入れることができる。
【0043】
次に、カニューレ(図示せず)を挿通したガイドワイヤ40を内視鏡50の鉗子チャネル53に差し入れる。そして、ガイドワイヤ40の遠位側端部41を、病変部A3よりも奥へ通す。該ガイドワイヤ40を残置する一方、カニューレを引き抜く。このとき、ガイドワイヤ40の手元側部分43は、鉗子チャネル53の手元端の鉗子口53cから外部に出ている。
内視鏡50が長尺であるために、鉗子口53cから出ているガイドワイヤ40の手元側部分43の長さが、通常より短くなっている。
【0044】
図8(b)に示すように、ガイドワイヤ40の手元側部分43をデリバリーシステム1の遠位端側から該デリバリーシステム1の管路10aに通す。このとき、ガイドワイヤ40の一部分43aが鉗子口53cとデリバリーシステム1の遠位側端部との間から外部に現れているため、該一部分43aを把持することで、ガイドワイヤ40をデリバリーシステム1に挿し入れる作業を行うことができる。
【0045】
やがて、
図8(b)に示すように、ガイドワイヤ40の手元端43bが管路10aの手元端13aから外部へ出る。つまり、内側手元操作部30の手元端ひいてはデリバリーシステム1の手元端からではなく、内側手元操作部30の遠位側端部39ないしは中間部からガイドワイヤ40の手元端43bが引き出される。したがって、鉗子口53cから出ているガイドワイヤ40の手元側部分43の長さが通常より短くても、手元端43bがデリバリーシステム1から外部へ突出されるようにすることができる。
【0046】
続いて、
図8(c)に示すように、デリバリーシステム1をガイドワイヤ40に沿って内視鏡50の鉗子チャネル53に差し入れる。これに伴って、ガイドワイヤ40の前記一部分43aがデリバリーシステム1内に隠れて、把持できなくなる。一方、ガイドワイヤ40の手元端43bは、デリバリーシステム1から外部に突出されているから、該手元端43bを把持することで、ガイドワイヤ40を支持できる。したがって、デリバリーシステム1と一緒にガイドワイヤ40の手元側部分が鉗子チャネル53に入り込まないようにすることができ、デリバリーシステム1の差し入れ操作を円滑に行うことができる。
【0047】
要するに、前記ガイドワイヤ40をデリバリーシステム1に通す工程から、デリバリーシステム1を鉗子チャネル53に差し入れる工程の全期間を通じて、ガイドワイヤ40の手元側の何れかの部分43a,43bが外部に現れていて把持可能である。すなわち、内視鏡50が長尺であるために、ガイドワイヤ40が鉗子口53cから出ている手元側部分43の長さが多少短くなっても、ガイドワイヤ40の掴み代が確保される。この結果、デリバリーシステム1の差し入れ操作を支障無く行うことができる。
【0048】
図8(c)に示すように、デリバリーシステム1の遠位側端部を病変部A3に臨ませる。その後、
図8(d)に示すように、インナーシャフト4に対してアウターチューブ5を手元側(
図8(d)において右側)へ引く。これによって、ステント3がリリースされる。
【0049】
アウターチューブ5の引き操作によって、ガイドワイヤ40の手元側部分43が、内側手元操作部30の外周と外側手元操作部6の内周との間に挟まれる(
図4)。このとき、ガイドワイヤ40の手元側部分43は、内側手元操作部30の案内孔36を経て逃げ部37に収まる。したがって、重なった状態の内側手元操作部30と外側手元操作部6との間に、ガイドワイヤ40の挿通スペースを確保できる。ガイドワイヤ40の手元端43bは、外側手元操作部6の手元端の開口と内側手元操作部30の外周部との間から外部へ引き出される(
図4)。
【0050】
図6に示すように、第2実施形態においては、ガイドワイヤ40が、管路10aの手元端の開口13から、逃げ部37における案内孔36との連通側端部37cの内部を通って外部へ引き出されるようにできる。また、
図7(b)に示すように、逃げ部37における少なくとも連通側端部37c付近の一対の溝側面37bによって、ガイドワイヤ40を両側から挟むことができる。このため、ステント3のリリースのために外側手元操作部6を手元側へ引くとき、ガイドワイヤ40が外側手元操作部6と内側手元操作部30との間に挟まれることで(
図8(d)参照)、ガイドワイヤ40が順次、逃げ部37にスムーズに収まるようにできる。
この結果、デリバリーシステム1Bを有効長が長い内視鏡50(
図8参照)と組み合わせた場合、手技に支障が生じることなく、ステント3をリリースすることができる。
【0051】
前記ステント3のリリース後、デリバリーカテーテル2及びガイドワイヤ40を引き抜く。
ステント3は、病変部A3内において展開状態で留置されることで、病変部A3の開通状態を維持できる。
【0052】
本発明は、前記実施形態に限定されず、種々の改変をなすことができる。
例えば、内管10の手元端の開口部13が、内側手元操作部30の軸方向の中間部の外周面に設けられていてもよい。
逃げ部34が、凹面状であってもよい。
内管10の手元端が、内側手元操作部30の軸方向の遠位側端部に配置されていてもよく、挿込孔32,35の中途部に配置されていてもよい。挿込孔(連通孔)32,35が、内管10の手元端に連通されるとともに手元側へ延びて、ガイドワイヤ40を通す管路の一部を構成していてもよい。案内孔33,36が、ガイドワイヤ40を通す管路の手元端を構成していてもよい。内管10の手元端が、挿込孔(連通孔)32,35及び案内孔33,36を介して内側手元操作部30の外周面に開口されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば閉塞又は狭窄した病変部の治療具に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 デリバリーシステム
2 デリバリーカテーテル
3 ステント
4 インナーシャフト
5 アウターチューブ
6 外側手元操作部
10 内管
13 内管の手元端の開口部
20 被覆管
30 内側手元操作部
32 挿込孔
33 案内孔
34 逃げ部
39 遠位側端部
39e 遠位側端面
40 ガイドワイヤ
43 ガイドワイヤの手元側部分
50 内視鏡
53 鉗子チャネル
1B デリバリーシステム
10a 管路
11 管部分
12 管端部分
13a 管路の手元端
13c 開口部の中心
30a 外周面
35 挿込孔
36 案内孔
36a 傾斜底面
36b 孔側面
36d 段差面
36e 連通壁面
37 逃げ部
37a 溝底面
37b 溝側面
37c 連通側端部
37e 外周側縁
38 連通部