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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088618
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両用モニターシステム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/157 20060101AFI20230620BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20230620BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20230620BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G02F1/157
B60R1/20 100
G02F1/15 501
G02F1/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203461
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵介
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DC63
2K101EC12
2K101EC13
2K101EC55
2K101ED01
2K101EE01
2K101EG52
2K101EG54
2K101EJ11
2K101EK07
(57)【要約】
【課題】
ブラックマトリクス(BM)を有する表示装置をミラーデバイスで観察しても、モアレの発生を防止する。
【解決手段】
電気化学装置は、列方向BMを有する液晶モニタ表示面に画像を表示するモニタ手段と、第1、第2の透光性基板上の作用電極と対向電極と、両電極間に配置されたAgを含む電解液と、を含み、両電極間に電圧を印加して作用電極上にAg膜を析出する可変ミラー手段と、を含み、作用電極と対向電極は、それぞれ金属リードフレーム対と金属リードフレーム対間を接続する、幅の制限された複数の導電パターンの金属電極群と、金属電極群に接し、かつ基板面を覆う透明導電膜とを含み、金属電極群は、全体的に列方向BMに並列に延伸し、局所的に列方向と交差し、逆方向に反転して再び列方向と交差し、繰り返しカーブしている。
【選択図】 図1-3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を撮像し、画像データを得る撮像手段と、
前記撮像手段に接続され、行列状に配置された多数の画素と該画素間を分離する行方向および列方向のブラックマトリクスとを有する液晶モニタ表示面に前記画像データに基づく画像を表示するモニタ手段と、
対向配置された透光性の第1、第2の基板と、該第1の基板の対向面上に形成された作用電極と、該第2の基板の対向面上に形成され、該作用電極に対向する対向電極と、該作用電極と該対向電極との間に配置されたAgを含む電解液と、を含み、対向電極と作用電極との間に動作電圧を印加することにより、作用電極上にAg膜を析出できる可変ミラー手段と、
を含む構成を有し、
前記作用電極と前記対向電極は、それぞれ、前記基板の周辺領域上の対向する位置に形成された第1、第2の金属リードフレーム対と前記第1、第2の金属リードフレーム対間を接続する、幅の制限された複数の導電パターンである第1、第2の金属電極群と、前記第1、第2の金属電極群に接し、かつ前記第1、第2の基板面を覆うように形成された第1、第2の透明導電膜とを含み、
前記第1、第2の金属電極群は、前記ブラックマトリクスの列方向に沿って、並列に並んで延伸しており、かつ局所的には、全体的延伸方向と交差し、逆方向に反転して再び全体的延伸方向と交差するように、繰り返しカーブされている、
電気化学装置。
【請求項2】
前記リードフレーム対は、前記金属電極群の延伸方向に対して垂直方向に形成されている請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記金属電極群の繰り返しカーブは、前記延伸方向に対する第1の角度に向かう屈曲と前記延伸方向に対する前記第1の角度とは逆方向の角度に向かう屈曲との繰り返しである請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記第1の角度は、20度以上、55度以下である請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記第1の角度は、約45度である請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記繰り返しカーブは、前記延伸方向に対する角度を連続的に変化させる方向変化である請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記繰り返しカーブは、前記延伸方向に対する角度変化が正弦波に従うものである請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項8】
対向配置された透光性の第1、第2の基板と、
該第1の基板の対向面上に形成された作用電極と、
該第2の基板の対向面上に形成され、該作用電極に対向する対向電極と、
該作用電極と該対向電極との間に配置されたAgを含む電解液と、
を含み、
対向電極と作用電極との間に動作電圧を印加することにより、作用電極上にAg膜を析出でき、
前記作用電極と前記対向電極は、それぞれ、前記基板の周辺領域上の対向する位置に形成された第1、第2の金属リードフレーム対と前記第1、第2の金属リードフレーム対間を接続する、幅の制限された複数の導電パターンである第1、第2の金属電極群と、前記第1、第2の金属電極群に接し、かつ前記第1、第2の基板面を覆うように形成された第1、第2の透明導電膜とを含み、
前記第1、第2の金属電極群は、並列に並んで延伸しており、かつ局所的には、全体的延伸方向と交差し、逆方向に反転して再び全体的延伸方向と交差するように、繰り返しカーブされている、
電気化学装置。
【請求項9】
前記金属電極群の繰り返しカーブは、前記延伸方向に対する第1の角度に向かう屈曲と前記延伸方向に対する前記第1の角度とは逆方向の角度に向かう屈曲との繰り返しである請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記繰り返しカーブは、前記延伸方向に対する角度を連続的に変化させる方向変化である請求項8に記載の電気化学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のモニターシステムに関し、特に高精度の視覚的観察が可能な車両用モニターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、通常、ルームミラーを運転者の前方上方に備え、運転者はルームミラーに写る反射像によって視覚的に後方を監視できる。ルームミラーの与える視界は、車両内後方領域、車両外後方領域を目視可能にする。
【0003】
ルームミラーとは別に、車両後方を観察できるカメラを備え、カメラが撮影した情報を運転者に選択供給する提案もある。自動車の後方を撮影するカメラを設け、カメラで撮影した映像をルームミラーに表示する提案もされている。
【0004】
図4を参照する。バックライト(光源)BLを備えた液晶表示パネルLCDと液晶表示パネルLCDの表面上に配置したハーフミラーHMとの積層配置で、自動車のルームミラーRMを形成する。この自動車の後部窓上方等に自動車の後方を撮影する光電カメラPECを配置し、制御回路CCの制御の下、光電カメラPECが撮影した映像をデジタル映像信号DISとして液晶表示パネルLCDに供給可能にする(特許文献1、2)。
【0005】
バックライトBLをONにし、デジタル映像信号DISを液晶表示パネルLCDに供給すれば、液晶表示パネルLCD上にカメラで撮影した後方視野の映像を表示できる。バックライトBLをOFFにすれば、液晶表示パネルLCD上の画像表示は消滅する。外部からルームミラーRMに入射する光は、バックライトがONの時は液晶画像に隠れて認識されないが、バックライトがOFFになると、液晶画像表示は消滅し、ハーフミラーHMで反射された反射光が反射像を形成し、通常のルームミラーと同様の反射映像を提供する。カメラで撮影した後方視野の映像、ハーフミラーで反射された通常のルームミラーと同様の反射映像、の何れか一方を選択的に観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/047367号公報
【特許文献2】特開2020-093574号公報
【背景技術に対する研究】
【0007】
図5Aを参照する。本発明者は、自動車後方を光電カメラPECで撮影し、撮影した映像を、制御回路CCを介して、光源BLと液晶モニターLCDとを含むTFTLCDモジュールの液晶モニターLCDに表示し、液晶モニターLCDの映像をミラーデバイスMDで観察する構成を検討した。ミラーデバイスMDは、対向配置された透光性対向基板対の対向面上にITO膜等の透明導電膜を有し、その間の空間にAgを含む電解液を挟持し、電圧印加により陰極上にAg鏡を析出できる構成である。
【0008】
液晶モニターLCDは、行列状に配置された多数の制御可能な液晶表示画素を含み、任意の画像を表示できる。例えば制御用の薄膜トランジスタ(TFT)を備えた多数の液晶表示(LCD)画素をバックライト上方に行列状に配置し、任意の映像を表示できるTFTLCDモジュールが知られている。行方向、列方向の画素間領域に遮光用(黒色)のブラックマトリクスBMが配置され、画素形状を画定している。
【0009】
図5Bを参照する。TFTLCDモジュールの液晶モニターLCDは、画素間を分離する行方向、列方向のブラックマトリクスBMを備え、各画素がTFT制御されて所望の透過率パターンを合成し、後方のバックライトBLから供給される光束により明暗パターンを実現する。
【0010】
ITO膜は無視できない抵抗を有し、抵抗値の低い透明膜を形成することは容易でない。面積の広いITO膜を形成すると電源配線からITO膜中央部までの抵抗値が高くなり、ITO膜全体上に所望膜厚のAg鏡を均一に形成しようとしても、ITO膜中央部に析出するAg膜の厚さは薄くなってしまう。
【0011】
図5Cを参照する。電源からITO膜の任意位置までの抵抗値を低下させるため、補助金属電極層を積層した。例えば膜厚約10nmのMo膜、膜厚約300nmのAl膜、膜厚約10nmのMo膜を積層したMAMからなる補助金属電極を下地構造とし、その上に例えば膜厚約450nmのITO膜を形成する構成を採用した。
【0012】
補助金属電極は光を透過しないので、透明領域に幅の広い金属電極は配置できない。視界を確保するため、例えば、透光性の基板上に、電源配線として機能する金属リードフレーム対を形成し、金属リードフレーム対の間に、視界を妨げない程度に幅が狭い、線幅約20μm~40μmのストライプ状補助金属電極を例えば開口率約90%以上で形成し、ストライプ状補助金属電極を覆って、透明電極を形成した複合電極を採用する。透光性の基板対上に、微視的には非透光性の金属細線を分布させ、膜内抵抗値を均一化して、広い面積をカバーできる対向透明導電膜構造を形成する。
【0013】
一対の複合電極を備えた透光性基板対間にAg含有電解液を挟持し、一対の複合電極間にON電圧を印加して陰極側透明電極上にAgを析出させると、鏡状態を得ることができる。電圧をOFFするか、OFF電圧を印加して、透明状態に戻すことができる。
【0014】
図5Dを参照する。透明状態、鏡状態を選択的に実現できるミラーデバイスMDを用いる。対向透光性基板上にストライプ状補助金属電極群を有する対向電極構造を形成する。対向透光性基板それぞれの上の対向する位置にリードフレーム対を設け、リードフレーム対間をストライプ状補助金属電極群で接続する。図示の簡略化のため透光性基板とリードフレーム対の図示を省略している。遮光面積を制限するため、対向基板上に形成するストライプ状補助金属電極群は基板上の対応位置に形成する。ストライプ状補助金属電極群を覆って、透明導電(ITO)膜を形成する。対向基板上の対向電極間に直流の作用電圧を印加する。負電圧を印加される作用電極上にAg膜が析出する。
【0015】
図5Bに示すようなブラックマトリクスBMを有する液晶表示装置LCDに表示した画像を、図5Dに示すようなミラーデバイスMDを介して観察したところ、液晶表示装置LCDのブラックマトリクスBMとミラーデバイスMDのストライプ状補助金属(MAM)電極群との間にモアレ縞が発生してしまうことが判った。ブラックマトリクスBMとストライプ状MAM電極群とが平行な場合、周期不整合でモアレ縞が発生する。モアレ縞が発生すると、視野観察に対するノイズとなり、運転者の視覚による認識の妨げとなる。
【発明に関係する先行研究】
【0016】
図6を参照する。垂直方向ブラックマトリクスBMとミラーデバイスMDのストライプ状MAM電極群とが交差する角度θを変化させて、影響を調べた。交差角度θが0度、5度の時は、モアレが強く発生する。実用価値は認められない。交差角度θが10度、15度となると、モアレは弱くなる。実用的には問題が残る。交差角度θが20度から55度の間は、モアレは発生していない。交差角度θが60度から75度の間は、弱いモアレが発生する。実用的には問題が残る。交差角度θが80度、85度、90度の時は、モアレが強く発生する。実用価値は認められない。
【0017】
ブラックマトリクスBMが90度、0度に配置されており、MAM電極群とブラックマトリクスBMが重なる配置では周期不整合によるモアレが強く発生し、交差角度がずれるとθ方向の重ねずれによるモアレ縞が発生すると考えられる。
【0018】
ブラックマトリクスBMとMAM電極群との交差角度が20度から55度と大きな場合はモアレは発生せず、好ましい特性といえる。特に交差角度45度の場合の特性が優れている。ブラックマトリクスBMが0度(水平方向)、90度(垂直方向)に配置されているので、交差角度45度(135度)はいずれのブラックマトリクスBMに対しても平行から大きく離れた角度であり、モアレ抑制の効果は大きい。
【0019】
2点間を接続するMAM電極を直線状に配置するという前提を廃棄する。たとえば、MAM電極をジグザグに折り曲げ、局所的な方向は45度または135度としつつ、全体としての延在方向は90度とすれば、モアレを抑制しつつ、所望の延在方向を得ることができよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ブラックマトリクスBMを有する表示装置に表示した画像を、ミラーデバイスを介して視認したときに視覚的に発生するモアレ(干渉縞)を軽減することのできる、モニターシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施例に拠れば、
車両の後方を撮像し、画像データを得る撮像手段と、
【0022】
前記撮像手段に接続され、行列状に配置された多数の画素と該画素間を分離する行方向および列方向のブラックマトリクスBMとを有する液晶モニタ表示面に前記画像データに基づく画像を表示するモニタ手段と、
【0023】
対向配置された透光性の第1、第2の基板と、該第1の基板の対向面上に形成された作用電極と、該第2の基板の対向面上に形成され、該作用電極に対向する対向電極と、該作用電極と該対向電極との間に配置されたAgを含む電解液と、を含み、対向電極と作用電極との間に動作電圧を印加することにより、作用電極上にAg膜を析出できる可変ミラー手段と、
を含む構成を有し、
【0024】
前記作用電極と前記対向電極は、それぞれ、前記基板の周辺領域上の対向する位置に形成された第1、第2の金属リードフレーム対と前記第1、第2の金属リードフレーム対間を接続する、幅の制限された複数の導電パターンである第1、第2の金属電極群と、前記第1、第2の金属電極群に接し、かつ前記第1、第2の基板面を覆うように形成された第1、第2の透明導電膜とを含み、
【0025】
前記第1、第2の金属電極群は、前記ブラックマトリクスBMの列方向に沿って、並列に並んで延伸しており、かつ局所的には、全体的延伸方向と交差し、逆方向に反転して再び全体的延伸方向と交差するように、繰り返しカーブされている、
電気化学装置
が提供される。
【発明の効果】
【0026】
第1、第2の金属電極群が、第1、第2の透明導電膜の電気抵抗値を実効的に低下させる機能を果たすし、電流密度の均一性を向上させ、Ag析出時の反射率のムラを軽減させる。
【0027】
第1、第2の金属電極群とブラックマトリクスBMの交差角度が0度、90度から離隔して、モアレは抑制しつつ、全体的な延在方向は縦方向または横方向とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1-1】と、
図1-2】と、
図1-3】図1Aは補助金属電極MAMの電極パターンである補助金属電極群MAMCを概略的に示す線図、図1B図1Aに示した補助金属電極群MAMCを面内で45度回転させた状態を概略的に示す線図、図1Cは液晶モニターLCDのブラックマトリクスBMのパターンとミラーデバイスの透明導電膜の下に形成する補助金属電極群MAMCを重ねたパターンを概略的に示す線図、図1Dはミラーデバイスの透明導電膜の下に形成する補助金属電極群MAMCの可能パターンの1つを示す線図、図1Eはミラーデバイスの基板上に形成される補助金属電極MAMの下地層とその上に形成される透明導電膜とを概略的に示す断面図、図1Fはミラーデバイスの透明導電膜の下地として形成する補助金属電極群MAMCのパターンを概略的に示す平面図である。
図2図2Aは補助金属電極群MAMCの短周期ジグザグパターンの例を示す平面図、図2Bは液晶モニターLCDのブラックマトリクスBMのパターンの列方向パターンBMvと補助電極群MAMCの短周期ジグザグパターンとを重ねた状態を示す平面図、図2CはブラックマトリクスBMのパターンの行方向パターンBMhと補助金属電極群MAMCの短周期ジグザグパターンとを重ねた状態を示す平面図である。
図3図3は、正弦波状パターンMsに形成されたミラーデバイスの下地金属配線のパターンを概略的に示す平面図である。
図4図4は、自動車の後部窓上方等に配置され、自動車の後方を撮影する光電カメラと、制御回路の制御の下、光電カメラが撮影した映像を表示可能なバックライト付き液晶表示パネルの表面にハーフミラーを形成した構成を示す回路図である。
図5-1】と、
図5-2】図5Aは自動車後方を撮影する光電カメラ、撮影した映像を、制御回路を介して、表示するTFTLCDモジュールの液晶モニター、液晶モニターの映像を観察するミラーデバイスを含むモニターシステムの回路図、図5BはTFTLCDの構成を示す概略斜視図、図5Cはミラーデバイスの下地配線層と上側の透明導電膜との積層構成を示す断面図、図5Dは対向配置された作用電極と対向電極の間に電解液が挟持されたミラーデバイスの概略斜視図である。
図6図6は、ブラックマトリクスBMの垂直方向マトリクスとミラーデバイスのストライプ状金属電極群配向方向とが交差する角度θを変化させた時のモアレ発生具合を調べた結果の表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図5Dにおいては、補助金属電極群が垂直方向に配置されている状態を示したが、透明導電膜全領域の実効抵抗値を低減する点、断線の影響を低減する点、ブラックマトリクスBMも垂直方向、水平方向に配置されている点などを考慮すると、制限的ではないが、補助金属配線群も1方向のみでなく、交差する2方向に配置する方が好ましいであろう。
【0030】
図1Aは、x方向、y方向に等ピッチで配置した補助金属電極MAMの電極パターンである補助金属電極群MAMCをを示すモデルである。金属配線群のない窓領域は正方形となっている。この状態では、液晶モニターLCDのブラックマトリクスBMとx方向、y方向で平行となりモアレが強く出るであろう。補助金属電極MAMは、例えば膜厚約10nmのMo(モリブデン)膜、膜厚約300nmのAl(アルミニウム)膜、膜厚約10nmのMo膜を積層したMAMからなる。また、MAMはMoやAl以外にも、例えばCu(銅)やTi(チタン)のような、透光性基板11に使用されるガラスとの密着性が高い金属を積層させたものを用いることもできる。
【0031】
図1Bは、図1Aの補助金属電極群MAMCを面内で45度回転させた状態を示す。水平方向(x軸、0度)が45度に変更され、垂直方向(y軸、90度)が135度変更されている。
【0032】
図1Cに示すように、液晶モニターLCDのブラックマトリクスBMはy方向、x方向に配置されており、補助金属電極群MAMCは、45度回転されて、45度、135度の方向を向いている。交差角度が45度であり、モアレは抑制されると考えられる。
【0033】
図1Dは、補助金属電極群MAMCから選択した線分をジグザグ状に接続し、垂直方向(y軸方向)に延在する補助金属電極群MAMCを生成する例を示している。45度方向の線分の上側に135度方向の線分を接続し、その上方に順次、45度方向線分、135度方向線分、45度方向線分、・・・と接続していく。各線分は45度方向または135度方向であるので、ブラックマトリクスBMの0度方向、90度方向とは大きな交差角度を持ち、モアレは強く抑制され、全体的な延在方向は90度となるので、x軸方向、y軸方向の辺で画定される矩形面積を効率的に低抵抗化できよう。
【0034】
図1Eは、ミラーデバイスの透光性基板11の上に形成される補助金属電極MAM12、補助金属配線を覆って形成されるITO等の透明導電膜13の積層構造の断面図である。透光性基板は、例えばガラス等の透光性材料が用いられる。
【0035】
図1FはミラーデバイスMDの透光性基板上にMAM等の金属で形成される対向リードフレーム21,22、補助金属配線12を示す概略平面図である。図1Fで示されている補助金属配線12は、液晶モニターLCDのブラックマトリクスBM(図示せず)の列方向に沿って、並列に並んで延伸しており、かつ局所的には、全体的延伸方向と交差し、逆方向に反転して再び全体的延伸方向と交差するように、繰り返しカーブされている。補助金属配線12を覆って、ITO等の透明導電膜13が形成される。ここで、例えばリードフレームを対向透光性基板のそれぞれ上下の対向する位置と、それぞれ左右の位置と、に設けた場合、つまり対向透光性基板の外周に沿って、例えば矩形状にリードフレームを設けた場合、リードフレームが交差する角部の電流密度が相対的に大きくなる。ミラーデバイスの電流密度にムラが生じると、Ag析出時の反射率にばらつきが生じる。図1Fのようにリードフレームを例えば対向して配置させることによって、モアレを解消し、且つ電流密度の均一性を保つことができる。
【0036】
図2Aは、図1D同様の、短距離ジグザグパターンに形成された補助金属電極群MAMCを示す。図1Dでは、正方形を敷き詰めた格子を1段ずつ進行方向を変えながら進行した。図2では、1度に進む線分の長さは2格子分となった。隣接する2本の補助金属電極MAM間の距離は基本正方形の1対角線分である。なお、補助金属電極群MAMCのパターンは、正方形、長方形を敷き詰めた格子模様から種々選択することができよう。
【0037】
図2Bは、図2Aに示した補助金属電極群MAMCと液晶モニターLCDの垂直方向ブラックマトリクスBMvとの配置例を示す。交差角度は約45度であり、モアレ発生は抑制されよう。
【0038】
図2Cは、図2Aに示した補助金属電極群MAMCと液晶モニターLCDの水平方向ブラックマトリクスBMhとの配置例を示す。交差角度は約45度であり、モアレ発生は抑制されよう。
【0039】
なお、矩形ないし長方形を敷き詰めた境界線から線分を選択、接続し、ジグザグ状の屈曲配線を形成する場合を説明した。直交する線分の集合から線分を選択接続してジグザグ状配線を形成する他、種々のパターンが可能であろう。1例として、三角関数波形を用いる方法がある。
【0040】
図3に示すように、例えば金属の正弦波形状Msを並べて、補助金属電極群MAMCを形成することもできる。同一波形を用いれば、配線間の距離は一定にできる。進行方向の変更は連続的であり、徐々に変化する。直線と直線とが屈曲点で接続される場合、屈曲点に角部が形成され、電流密度の変化を生じ易い。例えば、図1Dに示す補助金属電極の屈曲点の角部の内側は補助金属細線同士の距離が短く、相対的に電流密度が高くなる可能性がある。角部を生じない曲線であれば、相対的に電流密度分布を均一化しやすい可能性もあろう。
【0041】
以上実施例に沿って、本発明を説明したが、これらは例示であり、何ら制限的意味を持たない。種々の変更、改良、組合せなどが可能なことは、当業者に自明であろう。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6