(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088619
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】自動工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20230620BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230620BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B23Q17/22 D
B23Q17/09 C
B23Q3/155 F
B23Q3/155 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203463
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002HH08
3C029AA27
3C029DD05
(57)【要約】
【課題】工具に対する刃先の検知高さを自動で取得する自動工具交換装置を提供すること。
【解決手段】周状軌道に従って配置された複数の工具から所定の工具を割出し位置に移動させる工具割出し機構と、前記割出し位置の工具を交換位置に移動させる工具交換移動機構と、前記周状軌道上に設けられた工具検知位置で停止した工具に対し、予め設定された刃先の検知高さに工具検知用モータを使用した昇降手段によってタッチセンサを移動させる工具破損検知装置と、工具の刃先に対する前記タッチセンサの接触の有無によって工具の破損を判定する工具破損検知部および、前記保持部材に新たに取り付けられた工具に対し、前記工具検知位置において刃先にタッチセンサを接触させることにより、前記工具検知用モータに設けられたエンコーダの計測信号から前記検知高さを求める工具管理部を備えた制御装置と、を有する自動工具交換装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が保持部材に起立姿勢で取り付けられ、周状軌道に従って配置された複数の工具から所定の工具を割出し位置に移動させる工具割出し機構と、
前記割出し位置の工具を交換位置に移動させる工具交換移動機構と、
前記周状軌道上に設けられた工具検知位置で停止した工具に対し、予め設定された刃先の検知高さに工具検知用モータを使用した昇降手段によってタッチセンサを移動させる工具破損検知装置と、
工具の刃先に対する前記タッチセンサの接触の有無によって工具の破損を判定する工具破損検知部および、前記保持部材に新たに取り付けられた工具に対し、前記工具検知位置において刃先にタッチセンサを接触させることにより、前記工具検知用モータに設けられたエンコーダの計測信号から前記検知高さを求める工具管理部を備えた制御装置と、
を有する自動工具交換装置。
【請求項2】
前記工具管理部は、前記タッチセンサの下限位置から前記工具検知位置に配置された計測対象である工具の刃先までの検知距離を求め、当該計測対象工具の前記検知高さとするものである請求項1に記載の自動工具交換装置。
【請求項3】
前記工具管理部は、前記工具検知位置に配置した基準工具に前記タッチセンサを接触させ、前記タッチセンサの下限位置から当該接触位置までの基準距離と、前記計測対象工具における検知距離との差を基に、前記基準工具の工具長から前記計測対象工具の工具長を求めるものである請求項2に記載の自動工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具に対する刃先の検知高さを自動で取得することが可能な自動工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニング系の加工機にはドリルなど複数の工具を交換用に収納した自動工具交換装置が備えられている。自動工具交換装置内に収納される工具は、加工内容によって用意されたものであり、それぞれ工具の種類が異なり、工具長などにも違いがある。そうした異なる複数の工具はワークの加工内容によって選択され、主軸装置との間で自動交換が行われる。そのため、制御装置には各種工具に対する情報が予め入力され、自動工具交換装置では、工具とその工具が取り付けられたツールホルダとの対応がとられている。そうした工具に関するこれまでの情報入力作業は、特に工具長の値が作業者によって計測され、その値を手入力することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、工具長の計測および入力は、作業者に負担がかかるだけではなく作業時間を要し、しかも計測ミスや入力ミスが起こる可能性もあった。そして、自動工具交換装置に対して工具を交換および追加するたびに、作業者が工具長の計測と計測値の入力を行わなければならなかった。自動工具交換装置にはタッチセンサを使用した工具破損検知装置が設けられるが、タッチセンサを移動制御する検知高さは工具長に基づいて算出されていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、工具に対する刃先の検知高さを自動で取得する自動工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動工具交換装置は、工具が保持部材に起立姿勢で取り付けられ、周状軌道に従って配置された複数の工具から所定の工具を割出し位置に移動させる工具割出し機構と、前記割出し位置の工具を交換位置に移動させる工具交換移動機構と、前記周状軌道上に設けられた工具検知位置で停止した工具に対し、予め設定された刃先の検知高さに工具検知用モータを使用した昇降手段によってタッチセンサを移動させる工具破損検知装置と、工具の刃先に対する前記タッチセンサの接触の有無によって工具の破損を判定する工具破損検知部および、前記保持部材に新たに取り付けられた工具に対し、前記工具検知位置において刃先にタッチセンサを接触させることにより、前記工具検知用モータに設けられたエンコーダの計測信号から前記検知高さを求める工具管理部を備えた制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、工具破損検知装置によって工具の刃先に接触させるタッチセンサによって工具の破損を判定することができ、さらに保持部材に新たに工具を取り付けられた場合に、工具検知位置において刃先にタッチセンサを接触させることにより、工具検知用モータに設けられたエンコーダの計測信号から前記検知高さを求めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】マシニングセンタの本体内部の構造を示した斜視図である。
【
図2】自動工具交換装置の内部を示した斜視図である。
【
図3】工具破損検知装置を含む自動工具交換装置を後方側から示した斜視図である。
【
図4】自動工具交換装置の後部を示した平面図である。
【
図6】自動工具交換装置に収納された工具の配置を示した図である。
【
図7】マシニングセンタの制御システムを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る自動工具交換装置の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、マシニングセンタに組み込まれた自動工具交換装置を例に挙げて説明する。
図1は、マシニングセンタの本体内部の構造を示した斜視図である。マシニングセンタ1は立型であり、全体が不図示の機体カバーによって覆われ、そのカバー内部には密閉されたワークに対する加工室が構成されている。マシニングセンタ1は、ベース2の上を前後方向(Y軸方向)に移動可能なものであり、車輪を備えた可動ベッド3の上に組み付けられている。
【0010】
マシニングセンタ1は、工具を保持する主軸装置5が前部に設けられている。主軸装置5は、ドリルやエンドミル等の工具を着脱可能に取り付ける主軸チャック11を備え、そこに保持された工具を回転させる主軸用モータ12が設けられている。工具を回転させる主軸装置5の回転軸は鉛直方向(Z軸方向)である。そして、主軸装置5の下方にはクランプ機構を備えたワークテーブル13が設けられ、架台15から機体前方側に突き出すように構成されている。
【0011】
架台15の上には自動工具交換装置6が設けられ、更にその上には駆動装置7が組み付けられている。駆動装置7は、主軸装置5を3軸方向に移動させるものであり、Z軸方向に移動させるためのZ軸駆動機構、機体幅方向であるX軸方向に移動させるためのX軸駆動機構、そしてY軸方向に移動させるためのY軸駆動機構によって構成されている。各軸の駆動機構は、いずれも駆動モータの回転をボールネジによって直線移動に変換した駆動制御が行われる。そして、マシニングセンタ1には、可動ベッド3の後方に主軸装置5、自動工具交換装置6、駆動装置7などの駆動を制御する制御装置8が搭載されている。
【0012】
次に、
図2は、自動工具交換装置6の内部を示した斜視図である。自動工具交換装置6には様々な種類の工具Tが収納されるが、図面には具体的な形状を省略した円筒形状で示されている。自動工具交換装置6は、箱型の交換装置本体21(
図1参照)の内部に複数の工具が収納され、出し入れすることによって主軸チャック11との間で工具交換が行われるようになっている。交換装置本体21は、加工室側の前面に一対の開閉扉22が設けられ、通常は閉じられてワーク加工によって飛び散るクーラントや切削屑などから工具を保護している。
【0013】
自動工具交換装置6には工具Tの着脱が可能なツールホルダ23が複数設けられている。ツールホルダ23は、一対の把持爪によって工具Tの首部を挟み込むようにしたものであり、自動工具交換装置6内に収納された工具Tは、回転軸を鉛直にした姿勢で吊下げ保持される。複数のツールホルダ23は、
図6に示す長円形の周状軌道20に沿って同時に移動するように、無端のローラチェーン25に一定の間隔で固定されている。ローラチェーン25は一対のスプロケットに掛け渡され、割出し用モータの駆動制御によって使用する工具Tを割出し位置P1へと移動させるための工具割出し機構が構成されている。
【0014】
自動工具交換装置6は、工具割出し機構によって割出しされた工具Tを、主軸チャック11との工具交換位置P2(
図1参照)へと移動させる工具交換移動機構が構成されている。複数のツールホルダ23やローラチェーン25など工具割出し機構は可動テーブル26の上に組み付けられ、工具交換移動機構は、その可動テーブル26を交換装置本体21内で前後方向に移動させるものである。可動テーブル26は、オイルパンとしての機能を有するものであり、工具Tから落ちるクーラントや切削屑を受け取れるようになっている。可動テーブル26は、交換装置本体21内に敷設されたガイドレールに従って前後方向に移動自在であり、交換移動用モータ27の回転をボールネジによって直線移動に変換するよう構成されている。
【0015】
自動工具交換装置6には、刃こぼれなど工具Tの破損状況を確認するための工具破損検知装置10が設けられている。
図3は、工具破損検知装置10を含む自動工具交換装置6を後方側から示した斜視図である。また、
図4は、自動工具交換装置6の後部を示した平面図であり、
図5は、工具破損検知装置10を示した側面図である。
【0016】
工具破損検知装置10にはタッチセンサ31が使用され、
図6に示すように後方側の工具検知位置P3において工具Tの破損検知が行われる。
図6は、自動工具交換装置6に収納された工具Tの配置を示した図である。工具破損検知装置10は、鉛直方向に移動可能なスライド32を有し、そこから前方に向けて水平にアーム33が延び、先端部にタッチセンサ31が取り付けられている。
【0017】
交換装置本体21にブラケット34を介してスライダベース35が固定され、スライド32は、その側面に形成されたガイド36に対して摺動可能に取り付けられている。スライダベース35の上部には工具検知用モータ37が固定され、スライダベース45の内部には、工具検知用モータ37の回転を直線運動に変換し、スライド32をガイド36に沿って上下方向に移動させるボールネジ機構が構成されている。タッチセンサ31は、ドリルなど工具Tの刃先に接触することにより、内部のb接点であるスイッチが切れてOFF信号がマシニングセンタ1の制御装置8へと送られる。
【0018】
図7は、マシニングセンタ1の制御システムを表すブロック図である。制御装置8は、CPU41のほかにROM42やRAM43、不揮発性メモリ44といった記憶装置などを備えたコンピュータを主体とするものであり、I/045を介して主軸装置5、自動工具交換装置6、駆動装置7などの各駆動部に接続されている。
【0019】
更に、マシニングセンタ1は、タッチパネル式の操作表示装置48が機体前面に設けられ、作業情報や操作画面などの表示のほか、作業者による設定値の入力などが可能になっている。そして、制御装置8には各種加工に関する加工プログラムやワークの種類、工具や治具に関するワーク加工情報などが記憶部に格納されている。特に、本実施形態では工具の破損状況を確認するための工具破損検知プログラム51のほか、工具破損検知装置10を利用した工具管理プログラム53が格納されている。
【0020】
自動工具交換装置6に収納された工具Tは、
図6に示すように番号の付されたツールホルダ23に対応した管理がなされている。すなわち、ツールホルダ23の番号ごとに取り付けられた工具Tの種類や工具長などの工具管理情報が作成されている。この工具管理情報は、操作表示装置48から作業者によって入力されるが、工具長に関してこれまでは作業者によって測定が行われていた。一方、本実施形態の自動工具交換装置6では、工具破損検知装置10を使用した自動計測が行われるよう構成されている。
【0021】
先ず、工具破損検知装置10の破損検知について説明する。マシニングセンタ1では、ワークの加工内容が切り換えられると、それまで使用されていた工具Tが自動工具交換装置6に戻され、工具破損検知プログラム51が実行される。使用後の工具Tは工具検知位置P3に送られる。工具破損検知装置10は、工具検知用モータ37の駆動によりスライド32が上昇し、タッチセンサ31の高さが調整される。サーボモータである工具検知用モータ37はエンコーダを有し、その計測信号に基づいてタッチセンサ31の移動制御が行われる。
【0022】
下限位置HLで待機するタッチセンサ31は、工具Tの刃先位置(検知高さ)にまで上昇する。検知高さは、工具管理情報の一つとして予め工具毎に設定されている。そこで、検知高さにまで上昇して位置決めされたタッチセンサ31は、そこで工具Tの刃先に接触した場合には正常を示す検知信号が制御装置8へと送られ、工具Tについて異常が無いと判定される。一方で、工具Tに刃こぼれが生じているような場合にはタッチセンサ31が刃先には接することがないため、異常を示す検知信号が制御装置8へと送られ、工具Tに破損が生じていると判定される。
【0023】
工具管理プログラム53による自動計測は、こうした工具破損検知装置10を使用し、自動工具交換装置6のツールホルダ23に対し新たな工具Tの段取り替えが行われた後に実行される。例えば、自動工具交換装置6に16個あるツールホルダ23全てについて新たに工具Tが取り付けられた場合には、番号1から番号16の工具Tについて自動計測が行われ、工具管理情報の書き換えが行われる。また、段取り替えで一部のツールホルダ23にだけ工具Tの取り換えが行われた場合にも、該当するツールホルダ23について工具Tの自動計測が行われ、工具管理情報の書き換えが行われる。
【0024】
自動計測には基準工具Taに関する基準データが使用される。基準データは、
図5に示す基準工具Taの「基準工具長La」と、タッチセンサ31の下限位置HLから刃先位置HMまでの「基準距離Da」である。基準工具Taの基準工具長Laは、加工に使用される工具Tの工具長よりも長い寸法であり、作業者によって測定されて操作表示装置48から入力される。一方、基準距離Daは、ツールホルダ23に取り付けられ工具検知位置P3に配置された基準工具Taについて、工具破損検知装置10の自動計測によって得られた計測値である。
【0025】
その自動計測は、工具検知用モータ37の駆動制御により、下限位置HLのタッチセンサ31が上昇して基準工具Taの刃先に接触して停止する刃先位置HMまでの距離(基準距離Da)が、エンコーダから発信される計測信号に基づいて求められる。そして、工具Tn(nはツールホルダ23に対応する1から16の番号)について「検知距離Dn」の自動計測と、基準データを基にした「工具長Ln」の算出が行われる。
【0026】
検知距離Dnは、タッチセンサ31の下限位置HLから工具Tnの刃先までの距離であり、エンコーダからの計測信号によって求められる。そして、任意の工具Tnにおける工具長Lnは、基準工具長Laと基準距離Daと検知距離Dnとの差Sn(Da-Dn)から(La-Sn)が算出される。なお、基準工具Taと加工用の工具Tnは、ツールホルダ23によって把持された上端位置HTは一致している。
【0027】
工具管理プログラム53では、以上のように工具検知位置P3に工具Tnが順番に位置決めされ、工具破損検知装置10の駆動によって検知距離Dnと工具長Lnとが求められる。そして、新たに取り付けられた工具Tに関しては、ツールホルダ23の番号ごとに新たな工具データとして工具管理情報が書き換え保存される。この工具管理情報は、検知距離Dnが工具破損検知に利用され、工具長Lnは加工時の工具長補正に利用される。
【0028】
工具Tnに対する工具破損検知は、前述したようにタッチセンサ31が工具検知用モータ37の駆動により検知高さにまで上昇して行われるが、その検知高さは下限位置HLから検知距離Dnだけ上昇した位置である。そこでタッチセンサ31における刃先の接触によって破損の有無が判断される。一方、ワーク加工プログラムでは、工具長Lnに基づく工具長補正によって刃先の位置制御が行われる。
【0029】
よって、本実施形態では、これまで作業者が測定していた工具長を自動で行うことができるようになり、作業者の負担が軽減され、正確な値が得られるようになった。また、従来は測定した工具長に基づいて刃先に対応した検知高さを算出し、タッチセンサ31を位置決めするようにしていたが、本実施形態では計測した検知距離Dnによって位置決めができ、制御処理が簡単になった。
【0030】
ところで、工具破損検知装置10は、工具破損検知の場合には予め設定されている検知高さ(検知距離Dn)に従ってタッチセンサ31を上昇させればよいため移動速度を上げることができる。一方で、検知距離Dnを自動計測する場合には、工具Tnの刃先を探すことになるため、タッチセンサ31の移動速度を下げる必要があり、時間を要してしまう。そこで、例えば10mm単位で工具Tnをグループ分けし、刃先の10mm以内まではタッチセンサ31を破損検知時と同じく高速で移動させ、その後タッチセンサ31が刃先に接触する段階では低速移動になるように速度制御するようにしてもよい。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…マシニングセンタ 5…主軸装置 6…自動工具交換装置 7…駆動装置 8…制御装置 10…工具破損検知装置 23…ツールホルダ 31…タッチセンサ 37…工具検知用モータ 51…工具破損検知プログラム 53…工具管理プログラム P1…割出し位置 P2…工具交換位置 P3…工具検知位置 T…工具 Ta…基準工具