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特開2023-88631エッチング方法、電子部品の製造方法、プラズマ装置及びプラズマ装置の使用方法。
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  • 特開-エッチング方法、電子部品の製造方法、プラズマ装置及びプラズマ装置の使用方法。 図1
  • 特開-エッチング方法、電子部品の製造方法、プラズマ装置及びプラズマ装置の使用方法。 図2
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  • 特開-エッチング方法、電子部品の製造方法、プラズマ装置及びプラズマ装置の使用方法。 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088631
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】エッチング方法、電子部品の製造方法、プラズマ装置及びプラズマ装置の使用方法。
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203480
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】味上 俊一
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA14
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004CA02
5F004DA01
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA15
5F004DA26
5F004DB08
5F004DB13
(57)【要約】
【課題】ルテニウムのエッチング技術ついて、ルテニウムのエッチング量の増大と、ルテニウムとフォトレジストとの選択比の増大とを達成し、厚膜のルテニウムを高精度でパターニングすることができること。
【解決手段】ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いて金属をエッチングするエッチング方法とした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いて金属をエッチングするエッチング方法。
【請求項2】
マスク材にフォトレジストを用いる請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものである請求項1又は請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3何れか1項記載のエッチング方法を行う弾性波フィルター及びMEMS等の電子部品の製造方法。
【請求項5】
ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いてフォトレジストをマスク材とした金属をエッチングするプラズマ装置の使用方法。
【請求項6】
金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものである請求項5記載のプラズマ装置の使用方法。
【請求項7】
ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いるプラズマ装置。
【請求項8】
塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものである請求項7記載のプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム等の金属をエッチングするエッチング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロデバイスの製造においては金属や導電性酸化物の成膜、エッチングなどの微細加工技術の開発が必要であり、近年では移動体通信システムで利用されるBAWフィルターの電極に使われるルテニウムの加工技術が重要となっている。
【0003】
ルテニウム又はルテニウム酸化物のドライエッチングに関する公知技術としては、塩素ガス及び臭化水素ガスと酸素ガスを含むガス系を用いてルテニウムをエッチングする技術が特許第2956485号公報(特許文献1)に記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2956485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにルテニウムは酸素プラズマを使った反応によりエッチングできることが知られているが、特許文献1で用いているマスク材はSOGであり、一般的なマスク材であるフォトレジストを使用するとルテニウムとの選択比が低下するため、厚いルテニウムのエッチングには不適であった。特にバルク弾性波フィルター(BAWフィルター)においては、高周波数化に従いルテニウムの電極も厚膜化する傾向にあるため、マスク材としてパターニング精度の高いフォトレジストを使用できないことは問題であり、デバイス開発速度を妨げる一因になっている。そのためエッチング速度が上昇し、フォトレジストを採用したときでも選択比が向上するルテニウム膜のエッチング技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いて金属をエッチングするエッチング方法を提供する。
本開示の一態様では、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いて金属をエッチングするため、酸素ガスを単独で用いた場合と比べて金属のエッチング量が増加する。また、フルオロメタン系ガス量を固定して塩素系ガス量を調整することで、エッチング速度の制御ができる。
【0007】
本開示の一態様によれば、マスク材にフォトレジストを用いるエッチング方法とすることができる。
マスク材にフォトレジストを用いることとしたため、パターニング精度を高めることができる。また、酸素ガス単独で用いた場合と比べて金属とフォトレジストとの選択比が増加する。加えてフルオロメタン系ガス量を固定して塩素系ガス量を調整することで、金属とフォトレジストとの選択比の制御ができる。
【0008】
本開示の一態様によれば、金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものであるエッチング方法とすることができる。
本開示の一態様では、金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものとしたため、フッ素と塩素によってルテニウムのエッチング生成物の還元を促し、ルテニウムのエッチング量の増大と、ルテニウムとフォトレジストとの選択比の増大とを達成することができる。そして、厚膜のルテニウムを高精度でパターニングすることができる。
【0009】
本開示の一態様によれば、上記何れかのエッチング方法を行う弾性波フィルター及びMEMS等の電子部品の製造方法を提供する。
本開示の一態様では、上記何れかのエッチング方法を行う弾性波フィルター及びMEMS等の電子部品の製造方法としたため、弾性波フィルター及びMEMS等の電極が厚く、立体的な構成を備える電子部品を容易に精度良く製造することができる。
【0010】
本開示の一態様によれば、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いてフォトレジストをマスク材とした金属をエッチングするプラズマ装置の使用方法を提供する。
本開示の一態様では、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いてフォトレジストをマスク材とした金属をエッチングするため、酸素ガス単独で用いた場合と比べて金属のエッチング量が増加する。また、マスク材にフォトレジストを用いることとしたため、パターニング精度を高めることができる。加えて、フルオロメタン系ガス量を固定して塩素系ガス量を調整することで、金属のエッチング速度と、金属とフォトレジストとの選択比の制御ができる。
【0011】
本開示の一態様によれば、金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものであるものとすることができる。
本開示の一態様では、金属がルテニウムであり、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものとしたため、フッ素と塩素によってルテニウムのエッチング生成物の還元を促し、ルテニウムのエッチング量の増大と、ルテニウムとフォトレジストとの選択比の増大とを達成することができる。そして、厚膜のルテニウムを高精度でパターニングすることができる。
【0012】
本開示の一態様によれば、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いるプラズマ装置を提供する。
本開示の一態様では、ベースガスである酸素ガスと、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスとを含み、当該追加ガス濃度が全ガス中の5~10%である混合ガスを用いるプラズマ装置としたため、酸素ガス単独で用いた場合と比べて、エッチング量を大きくしたい金属のエッチングに好適なプラズマ装置である。また、フルオロメタン系ガス量を固定して塩素系ガス量を調整することで、エッチング速度の制御ができるプラズマ装置である。
【0013】
本開示の一態様によれば、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものであるプラズマ装置とすることができる。
本開示の一態様では、塩素系ガスが塩素、塩化ホウ素、フッ化塩素から選択され、フルオロメタン系ガスがテトラフルオロメタン、ジフルオロメタン、モノフルオロメタンから選択されるものであるプラズマ装置としたため、フォトレジストをマスク材としたルテニウムのエッチングに利用でき、フッ素と塩素によってルテニウムのエッチング生成物の還元を促し、ルテニウムのエッチング量の増大と、ルテニウムとフォトレジストとの選択比の増大とを達成することができる。そして、厚膜のルテニウムを高精度でパターニングすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、従来の10倍以上のエッチング速度を得ることができる。
また本開示によれば、従来の10倍以上の金属とフォトレジストとの選択比を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】プラズマ装置の模式図である。
図2】酸素ガスに混合する1種の追加ガス濃度とRuエッチング量の関係を示すグラフである。
図3】酸素ガスに混合する1種の追加ガス濃度とRu/フォトレジストの選択比の関係を示すグラフである。
図4】酸素ガスに混合する2種の追加ガス濃度とRuエッチング量の関係を示すグラフである。
図5】酸素ガスに混合する2種の追加ガス濃度とRu/フォトレジストの選択比の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一つの実施形態として説明するのは、BAWフィルター等の電子部品の電極に使われるルテニウム(以下単に「Ru」ともいう)等の金属のエッチング技術であり、特にはエッチングの際にプラズマ装置等において用いられるエッチングガスに関するものである。
【0017】
上述したとおり、酸素ガスを用いたプラズマ技術によりRuをエッチングできるが、フォトレジストをマスク材として使用すると選択比が低下するという問題から厚膜のRuの精度の良いエッチングには不向きであった。しかしながら、酸素ガスをベースガスとしながらも、塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスを全ガス中の5~10%含む混合ガスを用いること、換言すれば、ガス流量の総計から酸素ガスを90~95%とし、残りの5~10%の間で塩素系ガス及びフルオロメタン系ガスからなる追加ガスを含ませることで、エッチング速度の向上と、フォトレジストを用いた場合の選択比の向上を達成した。なお、本明細書及び特許請求の範囲においてガス量の割合を示す%はvol%を示す。
【0018】
塩素系ガスには、塩素ガス(Cl)や、3塩化ホウ素(BCl)、3フッ化塩素(ClF)等が例示できる。
フルオロメタン系ガスには、トリフルオロメタン(CHF)や、ジフルオロメタン(CH)、モノフルオロメタン(CHF)等が例示できる。
金属には、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム等が例示できる。
マスク材には、フォトレジストを用いることができる。
これらのうちでも塩素ガスとトリフルオロメタンの組み合わせが好ましい。エッチングを阻害する生成物の反応について塩素と水素による分解効果が最も得られ、且つレジストの選択比も維持できるからである。ただし水素が多すぎるとエッチングが抑制されるため、選択比は上がるがエッチング速度は下がる傾向になる。そのため、フルオロメタン系ガスの濃度は5%以下となるように加えることが好ましい。
【0019】
2.5%~5.0%範囲内のフルオロメタン系ガスに、塩素系ガスを2.5~5.0%とその混合割合を増加させると、その増加量に応じてルテニウムのエッチング速度と、フォトレジストとの選択比がほぼ比例して増加することから、フルオロメタン系ガス量を固定して塩素系ガス量を制御することで、所望のルテニウムのエッチング速度と、フォトレジストとの選択比が得られる。そのため、Ruの厚膜領域とされる300nm以上のエッチング加工ができ、例えば一般的なG線に感光波長を有するフォトレジストを3um厚に形成したマスクにより、ルテニウムを500nm以上エッチングすることができる。
【実施例0020】
実験例1:(酸素ガスに混合する1種の追加ガス濃度とRuエッチング量の関係)
プラズマエッチング装置に種々の試験ガスを流し、厚さ725μmのシリコンウェーハ上に金属Ruを200nm程度蒸着により付着させたウェーハのRu膜をエッチングして、試験ガスの違いによるRu膜のエッチング量の相違を測定した。以下に具体的に説明する。
【0021】
図1で示すのはこの実験に用いた平行平板型の誘電結合プラズマエッチング装置(ICP)10の模式図である。このプラズマ装置10の静電チャック(ESC)11上に上記ウェーハを吸着させた状態に置き、以下に詳述する試験ガスをチャンバー12内に流して、圧力制御バルブ13を有するターボ分子ポンプ14でチャンバー12内を真空に引き一定の圧力(2.0Pa)に保持した。電源15としては誘電体電極16上のコイル17にRF電力(1000W)を、バイアス電源18としては金属プレート電極19にRF電力(100W)を各々独立に印加してプラズマ20を発生させ60秒間処理した。
上記試験ガスは、酸素ガス(O)をベースガスとして、塩素ガス(Cl)、フルオロメタンガス(CHFl)、テトラフルオロメタンガス(CF)、三塩化ホウ素ガス(BCl)の4種類の何れかのガスを追加ガスとして加えた混合ガスとし、総ガス流量は各々180sccmとした。そして、Ruのエッチング量は、エッチング断面を顕微鏡写真で観察することで測定した。この結果を図2で示す。この図2において、直線で示す折れ線グラフは塩素ガスを追加した混合ガスを、破線で示す折れ線グラフはフルオロメタンガスを追加した混合ガスを、一点鎖線で示す折れ線グラフはテトラフルオロメタンガスを追加した混合ガスを、二点鎖線で示す折れ線グラフは三塩化ホウ素ガスを追加した混合ガスをそれぞれ示す。
【0022】
結果及び考察:
図2で示すグラフから明らかに、追加ガスの含有量とRuエッチング量との関係は、総ガス濃度100%のうち追加ガス濃度が約5~10%で、追加ガスの種類にかかわらずほとんどの試験ガスでRuエッチング量が最大となった。したがって、約10%含有するまでは追加ガスの添加量にしたがってRuエッチング量が増える一方で、約10%を超えると追加ガスの添加量が増えるにしたがってエッチング量が減る傾向があることがわかった。
【0023】
実験例1の結果から酸素ガスに追加ガスを加えた場合のRuエッチングのメカニズムは次のように考えられる。まず、追加ガスを加えない酸素ガス100%でエッチングを行う場合には、RuのエッチングでRuOが生成する。しかし、このRuOは蒸気圧が低いためさらなるエッチングの妨げとなる。そうした一方で追加ガスが加わった酸素ガスでエッチングを行う場合には、生成したRuOを再解離させRuOを生成する。このRuOは気化し易くRuのエッチングが妨げられないと考えられる。よって、追加ガス濃度が10%に上昇するまでは追加ガスがエッチングを阻害する生成物と反応することでRuのエッチング量は増加する。しかしながら、追加ガス濃度が10%を超えると今度はエッチャントとして機能する酸素ガス濃度が低下するデメリットのほうが大きくなり、それによりRuのエッチング量が減少すると考えられる。
【0024】
実験例2:(酸素ガスに混合する1種の追加ガス濃度とRu/フォトレジストの選択比の関係)
実験例1で作製したRu膜を設けた水晶基板に、さらにi線に感光波長を有するフォトレジスト材料を厚さ3μm程度塗布し、実験例1と同様の条件で種々の試験ガスを用いてエッチングした。そして、エッチング断面を顕微鏡写真で観察することでフォトレジストのエッチング量を測定した。そして、実験例1で得たRuのエッチング量と、本実験例2で得たフォトレジストのエッチング量から、Ruとフォトレジストの選択比を求めた。その結果を図3で示す。この図3において、直線で示す折れ線グラフは塩素ガスを追加した混合ガスを、破線で示す折れ線グラフはフルオロメタンガスを追加した混合ガスを、一点鎖線で示す折れ線グラフはテトラフルオロメタンガスを追加した混合ガスを、二点鎖線で示す折れ線グラフは三塩化ホウ素ガスを追加した混合ガスをそれぞれ示す。
【0025】
結果及び考察:
図3で示すグラフから明らかに、追加ガスの含有量と選択比との関係は、総ガス濃度100%のうち追加ガス濃度が約10%で、追加ガスの種類にかかわらず塩素ガスを除いたほとんどの試験ガスで選択比が最大となった。したがって、約10%含有するまでは追加ガスの添加量にしたがって選択比が上がる一方で、約10%を超えると追加ガスの添加量が増えるにしたがって選択比が下がる傾向があることがわかった。この傾向はRuのエッチング量と同様であった。なお、塩素ガスについては、10%を超えてもほぼ10%のときと同程度の値になった。これは塩素ガスとフォトレジストとの反応物である四塩化炭素(CCl)がデポ成分となりフォトレジストに積み重なるため選択比が維持されると考えられる。
【0026】
実験例3:(酸素ガスに混合する2種の追加ガス濃度とRuエッチング量の関係)
実験例1と同様に、200nm程度の金属Ruを蒸着により付着させた厚さ5mmの水晶基板上に、種々の試験ガスを用いてRuをエッチングした。実験例1との相違は、実験例1では試験ガスは酸素ガスに1種類の追加ガスを加えたものであったが、本実験例では酸素ガスに2種類の追加ガスを加えた混合ガスとした点である。
より具体的には、試験ガスには、酸素ガス(O)をベースにし、塩素ガス(Cl)とフルオロメタンガス(CHFl)の2種類の追加ガスを加えた混合ガスを用いた。そして、実験例1と同様にしてRuをこれらの試験ガスでエッチングしてエッチング量を測定した。結果を図4で示す。この図4において、破線で示す折れ線は、フルオロメタンガス量を2.5%に固定して塩素ガス量を変化させたグラフであり、直線で示す折れ線は、フルオロメタンガス量を5.0%に固定して塩素ガス量を変化させたグラフである。
【0027】
結果及び考察:
フルオロメタンガスと塩素ガスの2種類の追加ガスを酸素ガスに加えた混合ガスを用いると、Ruエッチング量が多いところで110nmを超えていることがわかる。即ち、酸素ガス100%の際のRuエッチング量が11nmであったことと比較すると、この混合ガスを用いるとRuエッチング量が10倍以上になることがわかった。
これは、フルオロメタンガスの混合によりエッチング生成物の還元を促し、塩素ガスの添加によりエッチング生成物の分解を促進させることができるためと考えられる。ここでは、フルオロメタンガスに起因した水素の還元によるRuOの分解がキーポイントである。
【0028】
実験例4:(酸素ガスに混合する2種の追加ガス濃度とRu/フォトレジストの選択比の関係)
実験例2と同様に、フォトレジストを塗布した厚さ5mmの水晶基板に対して種々の試験ガスを用いてそのフォトレジストをエッチングした。実験例2との相違は、実験例2では試験ガスは酸素ガスに1種類の追加ガスを加えた混合ガスであったが、本実験例では酸素ガスに2種類の追加ガスを加えた混合ガスとした点である。そして、実験例2と同様にしてRuとフォトレジストの選択比を求めた。その結果を図5で示す。この図5において、破線で示す折れ線は、フルオロメタンガス量を2.5%に固定して塩素ガス量を変化させたグラフであり、直線で示す折れ線は、フルオロメタンガス量を5.0%に固定して塩素ガス量を変化させたグラフである。
【0029】
結果及び考察:
フルオロメタンガスと塩素ガスの2種類の追加ガスを酸素ガスに加えた混合ガスを用いると、Ruとフォトレジストの選択比が大きいところで0.2を超えていることがわかる。即ち、酸素ガス100%の際のRuとフォトレジストの選択比が0.017であったことと比較すると、この混合ガスを用いるとRuとフォトレジストの選択比が10倍以上になることがわかった。
フルオロメタンガスは濃度が増えるとCHラジカルの生成物が生成されるため、5.0%程度までに抑えることが好ましい。この状態で塩素ガスの混合割合が増加すると、Ruのエッチング速度と、Ruとフォトレジストの選択比の双方が増加することがわかる。したがって、塩素ガス量を調整することで、Ruのエッチング速度と、Ruとフォトレジストの選択比の双方について制御することが可能となる。
【0030】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更又は公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
10 プラズマ装置
11 静電チャック
12 チャンバー
13 圧力制御バルブ
14 ターボ分子ポンプ
15 電源
16 誘電体電極
17 コイル
18 バイアス電源
19 金属プレート電極
20 プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5