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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088637
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】クレーン装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/16 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B66C13/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203489
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】西本 昌司
(57)【要約】
【課題】センサの数を減らしつつワイヤ掛数を特定する精度を高めたクレーン装置を提供する。
【解決手段】フックブロックは、フックブロック速度(上昇/下降速度)に応じた第1検出値を出力する第1センサを有する。ウインチは、ワイヤ速度(ワイヤの繰出/巻取速度)に応じた第2検出値を出力する第2センサを有する。コントローラは、第1検出値からフックブロック速度を算出し(S13)、第2検出値からワイヤ速度を算出する(S17)。コントローラは、ワイヤ速度をフックブロック速度で除して対応値を算出し(S18)、算出した対応値からワイヤの掛数を特定し(S19)、特定した掛数をメモリに記憶させる(S20)。コントローラは、特定した掛数から最大吊荷重量などである「性能」を特定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮及び起伏可能であって、先端部に定滑車機構が設けられたブームと、
動滑車機構が設けられたフックブロックと、
上記定滑車機構及び上記動滑車機構に掛け回されており、上記ブームの先端部から上記フックブロックを吊下するワイヤと、
上記ブームの基端側に設けられており、上記ワイヤが巻き付けられたドラムを有するウインチと、
上記フックブロックに取り付けられており、当該フックブロックの上下方向の速度に応じた第1検出値を出力する第1センサと、
上記ワイヤの繰出速度或いは巻取速度に応じた第2検出値を出力する第2センサと、
上記第1検出値及び上記第2検出値に基いて上記ワイヤの掛数を取得するコントローラと、を備えるクレーン装置。
【請求項2】
上記コントローラは、
上記第1検出値に応じた値及び上記第2検出値に応じた値に基いて上記掛数を算出する演算式を用いて当該掛数を取得する取得処理を実行する、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
上記第1センサは、加速度を検出する加速度センサであり、
上記取得処理は、
上記第1検出値が示す加速度を積分して上記第1検出値に応じた値であるフックブロック速度を算出する第1算出処理と、
上記第2検出値に基いて上記第2検出値に応じた値である上記繰出速度或いは上記巻取速度を算出する第2算出処理と、
上記繰出速度或いは上記巻取速度を上記フックブロック速度で除した対応値を算出する対応値算出処理と、
上記対応値に基いて上記掛数を特定する特定処理と、を含む、請求項2に記載のクレーン装置。
【請求項4】
上記コントローラは、上記ウインチの駆動を基準として、所定の時間間隔で上記取得処理を繰り返し実行する、請求項2または3に記載のクレーン装置。
【請求項5】
上記コントローラは、
上記第1検出値が示す上記フックブロックの速度或いは加速度が所定値未満であることに応じて、上記取得処理の実行を停止する、請求項4に記載のクレーン装置。
【請求項6】
上記コントローラは、
上記ブームが伸縮或いは起伏している間、上記取得処理の実行を停止する、請求項4または5に記載のクレーン装置。
【請求項7】
上記ブームの起伏範囲と、伸縮範囲と、吊荷重量範囲と、掛数との対応を示す性能テーブルを記憶するメモリをさらに備えており、
上記コントローラは、
上記取得処理で取得した上記掛数と一致する掛数に対応する上記起伏範囲、上記伸縮範囲、及び上記吊荷重量範囲を取得する性能特定処理をさらに実行する、請求項2から6のいずれかに記載のクレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊荷ワイヤロープの掛数を変更可能なクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両に搭載されるクレーン装置は、ブーム、吊荷に係合されるフック、吊荷ワイヤロープ(以下、「ワイヤ」と称される。)を有するウインチ、ウインチによる吊荷性能(吊り下げ可能な荷物の最大重量)を増加させる滑車装置を備えている。滑車装置は、定滑車機構及び動滑車機構を有し、ウインチから繰り出されたワイヤが両者間に掛け回される。フックは、動滑車機構に固定される。定滑車機構及び動滑車機構は、それぞれ複数のシーブを備え、これらシーブにワイヤが所定の順序で掛け回される。定滑車機構は、ブームの先端に設けられている。定滑車機構と動滑車機構との間にワイヤが掛け回される回数(ワイヤ掛数)が多いほど、吊荷性能が向上する。
【0003】
オペレータは、ワイヤ掛数をたとえば手動でクレーン装置に入力する。クレーン装置は、入力されたワイヤ掛数に基づいて、ブームの長さ及び起伏角度の範囲や、吊荷の重量に制限を設ける。したがって、オペレータによるワイヤ掛数の入力操作は、クレーン作業において重要である。
【0004】
オペレータによるワイヤ掛数の入力ミスを防止するため、ワイヤ掛数を自動で算出するクレーン装置がある(特許文献1参照)。このクレーン装置は、ブームの起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器と、ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、ブームに加わる負荷を検出するブーム負荷検出器と、ワイヤに加わる引張力を検出する引張力検出器と、演算装置とを備える。演算装置は、検出したブームの起伏角度、長さ、及び負荷に基づいて吊荷の荷重を算出し、算出した荷重を、検出した引張力で除算することによって、ワイヤ掛数を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-350097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法では、ワイヤ掛数の算出に多数のセンサ(ブーム起伏角度検出器、ブーム長さ検出器、ブーム負荷検出器、及び引張力検出器)が用いられる。センサが出力する検出値は、計測誤差を含む。すなわち、使用されるセンサが多くなるほど、ワイヤ掛数の算出の精度が低下する。
【0007】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、ワイヤ掛数の特定に用いられるセンサの個数を削減しつつ、ワイヤ掛数を特定する精度を高めることができるクレーン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るクレーン装置は、伸縮及び起伏可能であって、先端部に定滑車機構が設けられたブームと、動滑車機構が設けられたフックブロックと、上記定滑車機構及び上記動滑車機構に掛け回されており、上記ブームの先端部から上記フックブロックを吊下するワイヤと、上記ブームの基端側に設けられており、上記ワイヤが巻き付けられたドラムを有するウインチと、上記フックブロックに取り付けられており、当該フックブロックの上下方向の速度に応じた第1検出値を出力する第1センサと、上記ワイヤの繰出速度或いは巻取速度に応じた第2検出値を出力する第2センサと、上記第1検出値及び上記第2検出値に基いて上記ワイヤの掛数を取得するコントローラと、を備える。
【0009】
第1検出値が示すフックブロックの上昇速度或いは下降速度と、第2検出値が示すワイヤの繰出速度或いは巻取速度との関係は、ワイヤの掛数(以下、「ワイヤ掛数」と称する。)に応じて変化する。コントローラは、第1検出値及び第2検出値に基いてワイヤ掛数を特定する。本発明に係るクレーン装置は、従来よりも少ない2つのセンサによってワイヤ掛数を特定するから、ワイヤ掛数を特定する精度が向上する。
【0010】
(2) 上記コントローラは、上記第1検出値に応じた値及び上記第2検出値に応じた値に基いて上記掛数を算出する演算式を用いて、当該掛数を取得する取得処理を実行してもよい。
【0011】
この場合、上記ワイヤ掛数は、上記演算式に基いて算出される。
【0012】
(3) 上記第1センサは、加速度を検出する加速度センサであり、上記取得処理は、上記第1検出値が示す加速度を積分して上記値第1検出値に応じたであるフックブロック速度を算出する第1算出処理と、上記第2検出値に基いて上記第2検出値に応じた値である上記繰出速度或いは上記巻取速度を算出する第2算出処理と、上記繰出速度或いは上記巻取速度を上記フックブロック速度で除した対応値を算出する対応値算出処理と、上記対応値に基いて上記掛数を特定する特定処理と、を含んでいてもよい。
【0013】
第1センサが検出する加速度からフックブロック速度が算出される。この「フックブロック速度」で上記「繰出速度」或いは「巻取速度」が除されてワイヤ掛数が特定される。
【0014】
(4) 上記コントローラは、上記ウインチの駆動を基準として、所定の時間間隔で上記取得処理を繰り返し実行してもよい。
【0015】
ウインチが駆動されてワイヤが繰り出され或いは巻き取られている間、所定の時間間隔でワイヤ掛数が繰り返し特定され、更新される。
【0016】
(5) 上記コントローラは、上記第1検出値が示す上記フックブロックの速度或いは加速度が所定値未満であることに応じて、上記取得処理の実行を停止してもよい。
【0017】
ブームが展開或いは格納される際にフックブロックは固定されるから、フックブロックの速度或いは加速度は、ほぼゼロとなる。コントローラは、第1検出値が示すフックブロックの速度或いは加速度が所定値未満であることに応じて、ブームが展開或いは格納されると判断し、ワイヤ掛数を取得する取得処理を停止する。
【0018】
(6) 上記コントローラは、上記ブームが伸縮或いは起伏している間、上記取得処理の実行を停止してもよい。
【0019】
ブームが伸縮或いは起伏されると、フックブロックが上下に移動する。そうすると、第1センサが検知したフックブロック速度(第1検出値)には、ワイヤの巻き取り或いは繰り出しによる速度成分に加え、ブームが伸縮或いは起伏することによる速度成分が含まれることになる。このブームの伸縮或いは起伏による速度成分は、ワイヤ掛数を特定する精度を低下させる。ブームが伸縮或いは起伏している間、取得処理が停止されることにより、ワイヤ掛数を特定する精度が向上する。
【0020】
(7) 本発明に係るクレーン装置は、上記ブームの起伏範囲と、伸縮範囲と、吊荷重量範囲と、上記掛数との対応を示す性能テーブルを記憶するメモリをさらに備えていてもよい。上記コントローラは、上記取得処理で取得した上記掛数と一致する掛数に対応する上記起伏範囲、上記伸縮範囲、及び上記吊荷重量範囲を取得する性能特定処理をさらに実行する。
【0021】
取得されたワイヤ掛数は、ブームの起伏範囲や伸縮範囲や吊荷重量範囲など、クレーン装置の性能の取得に用いられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るクレーン装置では、ワイヤ掛数の特定に用いられるセンサの個数を従来よりも減らしてワイヤ掛数を特定する精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ブーム22が起立した状態のクレーン車10の側面図である。
図2図2は、ブーム22の先端部及びフックブロック32の側面図である。
図3図3は、滑車装置25の模式的な斜視図である。
図4図4は、クレーン装置12の機能ブロック図である。
図5図5は、ワイヤ掛数取得処理のフローチャートである。
図6図6は、対応値の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。或いは、後述の処理の一部は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜省略することができる。
【0025】
本実施形態では、図1が示すクレーン車10が説明される。クレーン車10はラフテレーンクレーンである。但し、クレーン車10はオールテレーンクレーンであってもよい。
【0026】
クレーン車10は、走行体11と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及び運転室13と、を備える。クレーン装置12は、旋回台21、ブーム22、ウインチ23、滑車装置25(図2)、センサ群26(図4)、油圧アクチュエータ群27(図4)、油圧供給装置28(図4)、操作装置29(図4)、及びコントローラ70(図4)を有する。
【0027】
旋回台21は、走行体11に旋回可能に保持されている。そして、ブーム22は、旋回台21に起伏可能に支持されている。ブーム22は、複数の筒体が入れ子状に配置されており、いわゆるテレスコピックを構成し、伸縮可能である。すなわち、ブーム22は、起伏可能、伸縮可能、かつ旋回可能である。
【0028】
ウインチ23は、ブーム22の基端或いは旋回台に取り付けられている。ウインチ23は、ワイヤ41を巻き付けられたドラム56及びワイヤ41が掛け回されるシーブ57を有している。ウインチ23が駆動されることにより、吊下ワイヤロープ41(以下、「ワイヤ41」と記載する)がドラム56に巻き取られ、或いは繰り出される。
【0029】
ワイヤ41は、シーブ57に掛け回された後、ブーム22に沿ってブーム22の先端まで延ばされ、滑車装置25(図2)に掛け回されている。
【0030】
図2が示すように、滑車装置25は、固定シーブブロック31と、フックブロック32とを有する。固定シーブブロック31は、特許請求の範囲に記載の「定滑車機構」に相当する。フックブロック32は、特許請求の範囲に記載の「動滑車機構」に相当する。
【0031】
固定シーブブロック31は、1つの第1シーブ40と、3つの第2シーブ33、34、35(図3参照)とを有している。第1シーブ40及び第2シーブ33、34、35は、円盤状であり、中心軸周りに回転可能である。
【0032】
第1シーブ40は、ブーム22が水平方向に沿う状態において、ブーム22の先端の上部に位置している。3つの第2シーブ33、34、35は、ブーム22の幅方向に並んで設けられている。また、3つの第2シーブ33、34、35は、第1シーブ40の下方に位置している。なお、図2及び図3では、固定シーブブロック31が3つの第2シーブ33、34、35を有する例が示されているが、固定シーブブロック31は、2つの第2シーブを有していてもよいし、4つ以上の第2シーブを有していてもよい。
【0033】
フックブロック32は、躯体45と、躯体45に回転可能に保持された3つのシーブ36、37、38(図3参照)と、躯体45に取り付けられたフック39とを有している。シーブ36、37、38は、円盤状であり、中心軸周りに回転可能である。なお、フックブロック32は、2つのシーブを有していてもよいし、4つ以上のシーブを有していてもよい。
【0034】
ウインチ23のシーブ57(図1)から延びるワイヤ41は、固定シーブブロック31の第1シーブ40に掛け回された後、固定シーブブロック31の第2シーブ及びフックブロック32のシーブに掛け回される。図3が示す例では、ワイヤ41は、第2シーブ33、シーブ36、第2シーブ35、シーブ38に掛け回されている。すなわち、図3が示す例では、ワイヤ41が滑車装置25に掛け回された回数であるワイヤの掛数(以下、「ワイヤ掛数」と称する。)は、「4」である。ワイヤ掛数が増加されることにより、クレーン装置12が吊り下げられる荷物の最大値である最大吊荷重量が増加する。すなわち、クレーン装置12の吊荷性能が増加する。
【0035】
図4が示すように、クレーン装置12は、油圧アクチュエータ群27を備える。この油圧アクチュエータ群27は、旋回モータ51と、起伏シリンダ52と、伸縮シリンダ53と、油圧モータ54とを有する。
【0036】
旋回モータ51は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して回転する油圧モータであり、旋回台21を旋回させる。起伏シリンダ52は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して伸縮する油圧シリンダであり、ブーム22を起伏させる。伸縮シリンダ53は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して伸縮する油圧シリンダであり、ブーム22を伸縮させる。油圧モータ54は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して回転し、ウインチ23のドラム56を回転させる。
【0037】
油圧供給装置28は、走行体11が搭載するエンジン15によって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプと上記油圧アクチュエータ群27の旋回モータ51等とを繋ぐ配管と、この配管等に設けられた油圧切換弁等とを備える。油圧切換弁はいわゆる電磁弁であってもよく、コントローラ70から入力される駆動信号によって駆動される。電磁弁が駆動することにより、旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、油圧モータ54が駆動される。すなわち、コントローラ70は、駆動信号を出力することにより、ブーム22を旋回、起伏、及び伸縮させ、ワイヤ41を巻き取り或いは繰り出すことができる。
【0038】
クレーン装置12は、センサ群26は、ブーム長さセンサ61、起伏角度センサ62、第1センサ63、第2センサ64、及び過巻検知センサ65を有する。
【0039】
ブーム長さセンサ61は、ブーム22の長さに応じた検出値を出力する。ブーム長さセンサ61は、ブーム22の長さを直接検出するセンサであってもよいし、伸縮シリンダ53の伸長長さを検出するセンサであってもよい。すなわち、ブーム長さセンサ61は、ブーム22の長さに応じて変化する物理量を検出するセンサであればよい。
【0040】
起伏角度センサ62は、ブーム22の起伏角度に応じた検出値を出力する。起伏角度センサ62は、典型的にはブーム22の起伏角度を直接検出するセンサが採用され、例えば、ブーム22に取り付けられており、水平面に対する角度を出力する傾斜センサや水平センサである。ただし、起伏角度センサ62は、起伏シリンダ52の伸長長さを検出するセンサであってもよい。要するに、起伏角度センサ62は、ブーム22の起伏角度に応じて変化する物理量を検出可能なものであればよい。
【0041】
第1センサ63は、フックブロック32に取り付けられている。第1センサ63はジャイロセンサなどの加速度センサである。第1センサ63は、フックブロック32の上昇及び下降の加速度に応じた検出値(以下、「第1検出値」と称する。)を出力する。ただし、この第1検出値が示す加速度が積分されることにより、フックブロックの上昇速度或いは下降速度が容易に算出される。したがって、第1センサ63が出力する第1検出値は、フックブロック32の上昇速度及び下降速度に応じた検出値であると定義されてもよい。本実施形態では、第1センサ63は、電力が供給されることにより、一定の時間間隔で上記第1検出値を繰り返し出力する。第1センサ63は、上下方向(鉛直方向)の加速度のみを検出する1軸のセンサであってもよいし、上下方向、左右方向、及び前後方向の加速度を検出する3軸のセンサであってもよい。
【0042】
なお、図4には示されていないが、ハイパスフィルタやローパスフィルタが第1センサ63とコントローラ70との間に設けられていてもよい。ハイパスフィルタは例えばコンデンサであり、ローパスフィルタは例えばコイルである。
【0043】
第2センサ64は、例えば、ウインチ23のドラム56の軸に取り付けられたロータリエンコーダである。第2センサ64は、ワイヤ41の速度(ワイヤ41がドラム56に巻き取られ、或いは繰り出される速度)に応じた検出値(以下、「第2検出値」と称する。)を出力する。第2検出値は、ドラム56の回転に応じて第2センサ64が出力するパルス信号である。単位時間当たりのパルス数は、ドラム56の回転速度を示す。
【0044】
ドラム56の回転速度及びドラム巻取半径は、ワイヤ繰出速度或いはワイヤ巻取速度を決定する。ドラム巻取半径は、ドラム56の中心と、ドラム56に巻き付けられたワイヤ41の中心との間の距離である。したがって、ドラム56の半径及びワイヤ41の巻き付け回数(積層数)に応じてドラム巻取半径は変化する。ドラム巻取半径は、後述の制御プログラム74によって、従来の手法等を用いて算出される。このドラム巻取半径及び総パルス数は、繰り出されたワイヤ41の長さであるワイヤ繰出長さ或いは巻き取られたワイヤ41の長さであるワイヤ巻取長さを決定する。
【0045】
過巻検知センサ65は、ワイヤ41の過巻を検知するセンサである。すなわち、過巻検知センサ65は、ワイヤ41の過巻によるフックブロック32とブーム22の先端部との接触、及びそれによる破損を防止するためのセンサである。
【0046】
過巻検知センサ65は、ブーム22の先端部に取り付けられている。ワイヤ41の巻き上げによりフックブロック32が上昇する。過巻検知センサ65は、上昇するフックブロック32によってオン或いはオフされる。メイン過巻検知センサ65のオン/オフにより、フックブロック32がブーム22の先端部に接触する直前までワイヤ41が巻き上げられたことが検知される。
【0047】
センサ群26のブーム長さセンサ61、起伏角度センサ62、第2センサ64、及び過巻検知センサ65は、不図示の信号線によってコントローラ70と接続されている。すなわち、ブーム長さセンサ61等が出力した検出値は、コントローラ70に入力される。
【0048】
第1センサ63は、コントローラ70と有線接続或いは無線接続されている。例えば、バッテリ及び送信アンテナがフックブロック32に設置され、信号線等によってコントローラ70と接続された受信アンテナが運転室13に設置される。第1センサ63は、バッテリから供給された電力によって駆動し、第1検出値を送信アンテナから送信する。送信された第1検出値は、受信アンテナで受信されてコントローラ70に入力される。
【0049】
なお、センサ群26は、旋回台21の旋回角度を検出する旋回角センサや、フック39に吊り下げられた吊荷の重量を検出する吊荷重量センサなどの他のセンサを有していてもよい。
【0050】
操作装置29は、運転室13に配置されている。操作装置29は、オペレータによって操作される操作レバー等及びディスプレイを備える。操作レバー等は、フットペダルや、ボタン及びスイッチや、ディスプレイに重ねられたタッチセンサなどを含む。操作装置29は、不図示の信号線によってコントローラ70と接続されている。オペレータは、操作装置29を操作してコントローラ70に指示を入力し、クレーン装置12の操作を行う。
【0051】
なお、クレーン車10は、操作装置29に加え、或いは操作装置29に代えて、不図示の遠隔操作装置を備えていてもよい。遠隔操作装置は、例えば、オペレータの入力を受け付けるタッチパネルや入力ボタンや入力レバー等と、オペレータの入力操作に応じた操作信号を送出するアンテナとを備える。遠隔操作装置が送出した操作信号は、クレーン車10の運転室13等に設置されたアンテナによって受信され、コントローラ70に入力される。もっとも、コントローラ70自体が遠隔装置に組み込まれていてもよい。
【0052】
コントローラ70は、中央演算処理装置であるCPU71と、メモリ72と、電源回路73と、不図示の通信バスとを備える。コントローラ70は、制御基板に実装されたICやマイクロコンピュータや抵抗やダイオードやコンデンサ等によって実現される。制御基板は、例えば、運転室13に配置された制御ボックス内に配置される。
【0053】
CPU71、メモリ72、油圧供給装置28、センサ群26のブーム長さセンサ61等、及び操作装置29は、通信バスに接続されている。CPU71によって実行される後述の制御プログラム74は、メモリ72からデータや情報を読み出し、メモリ72にデータや情報を記憶させ、油圧アクチュエータ群27の旋回モータ51等の駆動を制御し、センサ群26のブーム長さセンサ61等が出力した検出値を取得し、オペレータが操作装置29に行った操作に応じた信号を取得することができる。
【0054】
メモリ72は、CPU71によって実行される制御プログラム74、演算式、性能情報、及び不図示の閾値などを予め記憶する。
【0055】
性能情報は、例えば、ワイヤ掛数と、吊荷重量と、旋回角度と、ブーム長さと、ブーム起伏角度とを対応付けた性能テーブルとして構成される。例えば、制御プログラム74は、ワイヤ掛数、吊荷重量、及び旋回角度に対応付けられたブーム長さ及びブーム起伏角度の範囲外では、ブーム22の伸縮及び起伏を規制する。すなわち、性能情報は、クレーン装置12においてクレーン車10の転倒等が生じない操作範囲を決定する。
【0056】
上記演算式は、後述のワイヤ速度をフックブロック速度で除した対応値を算出するためのものである。演算式は、例えば、ワイヤ速度及びフックブロック速度を引数とし、対応値を戻り値とする関数やクラスなどであってもよい。
【0057】
電源回路73は、走行体11に搭載されたバッテリ16から供給された直流電圧を、5Vや12Vなどの所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。電源回路73は、例えば、DC/DCコンバータである電源ICやコンデンサや抵抗やダイオードやコイルなどによって実現される。なお、バッテリ16は、走行体11が有するエンジン15によって充電される。電源回路73が出力する直流電圧は、CPU71や操作装置29やセンサ群26などに供給される。図4では、電源回路73からセンサ群26等への給電線の図示は省略されている。
【0058】
以下、制御プログラム74がワイヤ掛数を特定するワイヤ掛数特定処理について説明する。なお、制御プログラム74は、ワイヤ掛数特定処理とは別に、操作装置29から入力する操作信号に基いて旋回モータ51や起伏シリンダ52や伸縮シリンダ53や油圧モータ54等を駆動させる駆動処理を実行する。この駆動処理については詳しい説明は省略される。
【0059】
制御プログラム74は、図5が示すように、ウインチ23を駆動する操作信号が操作装置29から入力されるまで待機する(S11:No)。制御プログラム74は、ウインチ23を駆動する操作信号が入力されたと判断すると(S11:Yes)、上記駆動処理によって旋回モータ54(ウインチ23)を駆動させるとともに、第1センサ63が出力した第1検出値を取得する(S12)。制御プログラム74は、例えば、第1センサ63が一定の時間間隔で繰り返し出力する第1検出値を、メモリ72に予め記憶された所定回数だけ取得する。すなわち、制御プログラム74は、複数の第1検出値を取得する。なお、制御プログラム74は、予め決められた所定の時間間隔で第1検出値を取得してもよい。上記一定の時間間隔や所定の時間間隔は、いわゆるサンプリング周期である。
【0060】
制御プログラム74は、取得した第1検出値に基いて、フックブロック速度(上下方向7におけるフックブロック32の速度)を算出する(S13)。具体的には、制御プログラム74は、第1検出値が示すフックブロック32の加速度を積分して、フックブロック速度を算出する。例えば、制御プログラム74は、取得した複数の第1検出値が示す加速度の平均値を算出し、算出した平均値を積分して、フックブロック速度の平均値を算出する。ステップS13の処理は、本発明の特許請求の範囲に記載の「第1算出処理」に相当する。以下では、フックブロック速度の平均値を単に「フックブロック速度」と記載して説明がされる。
【0061】
制御プログラム74は、ドリフト量などのノイズを第1検出値から除去する処理を行った後、第1検出値に基いてフックブロック速度を算出してもよい。すなわち、上記ハイパスフィルタやローパスフィルタで物理的(アナログ的)にノイズが除去されるとともに、制御プログラム74によってソフト的にノイズが除去されてもよい。
【0062】
フックブロック速度の算出は、オペアンプ等を用いた積分回路を用いて行われてもよい。すなわち、本発明の特許請求の範囲に記載の「第1算出処理」は、アナログ回路を用いた処理を含む。
【0063】
制御プログラム74は、算出したフックブロック速度に基いて、過巻停止状態か否かを判断する(S14)。過巻停止状態とは、過巻検知センサ65が過巻を検知したことに基づいて制御プログラム74がウインチ23の駆動を停止させた状態を意味する。例えば制御プログラム74は、ステップS14において、算出したフックブロック速度の絶対値が、メモリ72に予め記憶された所定値未満であるか否かによって、過巻停止状態であるか否かを判断する。当該所定値は、ゼロより僅かに大きい値である。すなわち、制御プログラム74は、算出したフックブロック速度が、ほぼゼロであるか否かを判断することにより、フックブロック32が過巻停止状態であるか否かを判断する。なお、制御プログラム74は、フックブロック速度が所定値未満であるか否かによって過巻停止状態であるか否かを判断するのではなく、過巻検知センサ65が過巻を検知したか否かによって、過巻停止状態であるか否かを判断してもよい。或いは、制御プログラム74は、第2センサ64が出力した第2検出値に基づいてワイヤ速度を算出し、算出したワイヤ速度が所定値未満であるか否かによって過巻停止状態であるか否かを判断してもよい。
【0064】
制御プログラム74は、過巻停止状態であると判断すると(S14:Yes)、ワイヤ掛数取得処理を終了する(END)。制御プログラム74は、過巻停止状態でないと判断すると(S14:No)、ブーム22が起伏或いは伸縮しているか否かを判断する(S15)。具体的には、制御プログラム74は、ブーム長さセンサ61が所定の時間間隔で出力する検出値を取得し、取得した複数の検出値に基いて、当該検出値が示すブーム22の長さが変化しているか否かを判断する。また、制御プログラム74は、起伏角度センサ62が所定の時間間隔で出力する検出値を取得し、取得した複数の検出値に基いて、当該検出値が示すブーム22の起伏角度が変化しているか否かを判断する。或いは、制御プログラム74は、ブーム22を起伏させる制御信号やブーム22を伸縮させる制御信号を出力したかを判断することによって、ブーム22が起伏或いは伸縮しているか否かを判断してもよい。
【0065】
制御プログラム74は、ブーム22が起伏或いは伸縮していると判断すると(S15:Yes)、ワイヤ掛数取得処理を終了する(END)。詳しく説明すると、ブーム22が起伏或いは伸縮されつつウインチ23が駆動されると、ワイヤ41の繰り出し或いは巻き取りとは別にフックブロック32が上下に移動する。そうすると、第1検出値が示すフックブロック速度には、ワイヤ41の巻き取り或いは繰り出しによる速度成分に加え、ブーム22が伸縮或いは起伏することによる速度成分が含まれることになる。このブーム22の伸縮或いは起伏による速度成分は、ワイヤ掛数を特定する際の精度を低下させる。制御プログラム74は、ブーム22が起伏或いは伸縮していてワイヤ掛数を特定する精度が低下すると判断した場合(S15:Yes)、ワイヤ掛数取得処理を終了する。
【0066】
制御プログラム74は、ブーム22が起伏或いは伸縮していないと判断すると(S15:No)、第2センサ64が出力した第2検出値を取得する(S16)。制御プログラム74は、例えば、メモリ72に予め記憶された所定時間だけ第2センサ64が出力する第2検出値を取得する。制御プログラム74は、取得した第2検出値に基いてワイヤ速度を算出する(S17)。ワイヤ速度は、ワイヤ41の繰り出し(巻下)速度或いは巻き取り(巻上)速度である。ステップS17の処理は、本発明の特許請求の範囲に記載の「第2算出処理」に相当する。
【0067】
制御プログラム74は、ステップS17で算出したワイヤ速度及びステップS13で算出したフックブロック速度から、対応値を算出する(S18)。すなわち、上記ワイヤ速度を上記フックブロック速度で除すことにより、上記対応値を算出する。具体的には、制御プログラム74は、ワイヤ速度及びフックブロック速度をメモリ72に記憶された演算式に入力することによって、上記対応値を算出する。ステップS18の処理は、本発明の特許請求の範囲に記載の「対応値算出処理」に相当する。なお、フックブロック速度によるワイヤ速度の徐算は、オペアンプ等を用いた徐算回路(反転増幅回路)を用いて行われてもよい。すなわち、本発明の特許請求の範囲に記載の「対応値算出処理」は、アナログ回路を用いた処理を含む。また、上記徐算回路は、本発明の特許請求の範囲に記載の「演算式」に相当する。
【0068】
ワイヤ掛数が「1」である場合、ワイヤ速度とフックブロック速度とは同じ速度であり、対応値は理論上「1」となる。ワイヤ掛数が「3」である場合、ワイヤ速度はフックブロック速度の3倍の速度であり、対応値は理論上「3」となる。第1センサ63によって検出される上記フックブロック速度や、第2センサ64によって検出される上記ワイヤ速度に、検出誤差が含まれる。そのため、上記対応値は、理論値から若干外れる。制御プログラム74は、例えば、上記対応値の小数点以下を四捨五入することにより、ワイヤ掛数を特定する(S19)。上記ワイヤ速度を上記フックブロック速度で除して上記対応値を算出する演算式及び上記対応値の小数点以下を四捨五入してワイヤ掛数を算出する式は、本発明の特許請求の範囲に記載の「演算式」に相当する。ステップS19の処理は、本発明の特許請求の範囲に記載の「特定処理」に相当する。
【0069】
算出した対応値の時間変化が図6に示される。図6が示す例では、対応値は概ね「4」であり、ワイヤ掛数は「4」に特定される。
【0070】
なお、上記対応値の小数点以下を四捨五入する式に代えて、テーブルがメモリ72に予め記憶されていてもよい。このテーブルは、対応値とワイヤ掛数との対応を示すものである。制御プログラム74は、ステップS18で算出した上記対応値と上記テーブルとに基いてワイヤ掛数を特定する。
【0071】
制御プログラム74は、特定したワイヤ掛数をメモリ72に記憶させる(S20)。詳しく説明すると、メモリ72は、ワイヤ掛数を記憶する所定の記憶領域である掛数記憶領域を有する。制御プログラム74は、掛数記憶領域に記憶されたワイヤ掛数を上書きして保存する。
【0072】
制御プログラム74は、メモリ72に記憶させたワイヤ掛数と、メモリ72に予め記憶された性能情報(性能テーブル)とに基いて、このクレーン装置12の性能を特定する(S21)。特定される「性能」は、最大吊荷重量や、ブーム22の伸縮範囲及び起伏範囲などである。ステップS21の処理は、本発明の特許請求の範囲に記載された「性能特定処理」に相当する。
【0073】
制御プログラム74は、ウインチ23の駆動を停止したか否かを判断する(S22)。制御プログラム74は、ウインチ23の駆動を停止していないと判断すると(S22:No)、ステップS12以降の処理を再度実行する。ステップS12以降の処理は、数百mm秒や、数秒や、十数秒などの所定の時間間隔で繰り返し実行される。この所定の時間間隔は、メモリ72に予め記憶される。すなわち、所定の時間間隔でワイヤ掛数及び上記性能が繰り返し特定される。
【0074】
制御プログラム74は、ウインチ23の駆動が停止したと判断した場合、(S22:Yes)、ワイヤ掛数取得処理を終了する(END)。
【0075】
[実施形態の作用効果]
【0076】
本実施形態に係るクレーン装置12では、第1センサ63が検出したフックブロック速度(第1検出値)と、第2センサ64が検出したワイヤ速度(第2検出値)とによってワイヤ掛数が特定される。すなわち、2つのセンサ63、64によってワイヤ掛数が特定される。したがって、ワイヤ掛数を特定するために必要なセンサの個数が従来よりも少なく、ワイヤ掛数の特定の精度が向上する。
【0077】
本実施形態では、さらに次のような作用効果が奏される。
【0078】
ウインチ23が駆動している間(S22:No)、ワイヤ掛数が所定の時間間隔で繰り返し特定されて更新される(S20)。したがって、ワイヤ掛数が更新されずに誤った性能でクレーン装置12が駆動されることが防止される。
【0079】
過巻停止状態である場合(S14:Yes)、ワイヤ掛数を特定することなくワイヤ掛数取得処理が終了される(END)。したがって、ワイヤ41の過巻によってフックブロック32の上昇が停止した場合に、ワイヤ掛数が誤って更新されることが防止される。
【0080】
前述のように、ブーム22が起伏動作或いは伸縮動作をしている場合、ワイヤ掛数の特定にあたり精度が低下する。そのため、ブーム22が起伏又は伸縮しているときは(S15:Yes)、ワイヤ掛数を特定することなくワイヤ掛数取得処理が終了する(END)。したがって、誤って特定されたワイヤ掛数で更新されることが防止される。
【0081】
本実施形態では、特定されたワイヤ掛数を用いて最大吊荷重量やブーム22の起伏範囲等が決定される。つまり、クレーン装置12の性能が特定される(S21)。したがって、許容されるべき最大吊荷重量やブーム22の起伏範囲等がコントローラ70によって誤認されることがない。すなわち、仮に、クレーン装置12のオペレータがワイヤ掛数を誤って入力した場合、間違ったワイヤ掛数でクレーン装置12の性能が特定されてしまい、その結果、クレーン装置12の安全な操作が阻害される懸念があるが、本実施形態に係るクレーン装置12では、確実に安全な操作が可能となる。
【0082】
[変形例]
【0083】
本実施形態では、クレーン装置12がクレーン車10の走行体11に搭載されているが、上記クレーン装置12は、タワークレーンなどの設置型のクレーンに搭載されていてもよい。
【0084】
上記第1センサ63として加速度センサが用いられているが、第1センサ63として速度センサが用いられてもよい。例えば、下方に向けて音波を出射し、地面等で反射された音波を受信するドップラセンサなど、速度を検出可能なセンサが第1センサ63として用いられてもよい。
【0085】
上記コントローラ70は、前述の要領でワイヤ掛数を特定し取得するが、コントローラ70は、他の装置にワイヤ掛数を特定させて、当該ワイヤ掛数を取得してもよい。例えば、コントローラ70は、インターネットを通じて上記第1検出値及び上記第2検出値を含むリクエストをサーバ等の他のコンピュータ宛に送信し、当該他のコンピュータが特定したワイヤ掛数を含むレスポンスを受信してワイヤ掛数を取得してもよい。コントローラ70がワイヤ掛数を含むレスポンスを受信する処理は、本発明の特許請求の範囲に記載の「取得処理」に相当する。
【0086】
上述の実施形態では、ステップS13においてフックブロック速度が算出され、ステップS17においてワイヤ速度が算出され、ワイヤ速度をフックブロック速度で除して対応値が算出されるが、ステップS13において、フックブロック速度に代えて所定の時間範囲におけるフックブロック32の移動距離が算出され、ステップS17において、ワイヤ速度に代えて当該所定の時間範囲におけるワイヤ41の繰り出し長さ或いは巻き取り長さが算出され、ワイヤ41の繰り出し長さをフックブロック32の移動距離で除して上記対応値が算出されてもよい。すなわち、「速度」に代えて「距離」によって上記対応値が算出され、ワイヤ掛数が特定されてもよい。同様に、「速度」に代えて「加速度」によって対応値が算出されてワイヤ掛数が特定されてもよい。
【0087】
上述の実施形態では、上記対応値に基いてワイヤ掛数が特定されるが、算出した対応値からワイヤ掛数を特定できたか否かを判断する判断処理が、ステップS19の後に実行されてもよい。例えば、算出した対応値がメモリ72に予め記憶された所定の閾値範囲にあるか否かによって、ワイヤ掛数を特定できたか否かが判断される。ワイヤ掛数が特定できたと判断された場合、ステップS20の処理が実行される。ワイヤ掛数が特定できなかったと判断された場合、エラー表示がされ、或いはステップS12以降の処理が再度実行されてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、上記演算式で演算された対応値によってワイヤ掛数が特定されるが、メモリ72に予め記憶された対応テーブルに基いてワイヤ掛数が特定されてもよい。この対応テーブルでは、ワイヤ速度及びフックブロック速度とワイヤ掛数とが対応付けられている。
【0089】
上述の実施形態では、ワイヤ41の繰出速度或いは巻取速度に応じた第2検出値を出力する第2センサ64がウインチ23に設けられた例が説明された。しかしながら、第2センサ64は、ワイヤ41の繰出速度や巻取速度や繰出長さや巻取長さを検出可能であれば、どのような位置に設けられていてもよい。例えば、第2センサ64は、ワイヤ41が掛け回されるシーブに設けられる。一例として、第2センサ64は、ブーム22の先端部に配置されたシーブに設けられる。第2センサ64であるロータリエンコーダは、ワイヤ41の繰り出し或いは巻き取りによって回転するシーブの当該回転に応じたパルス信号を出力する。単位時間当たりのパルス数は、シーブの回転速度、すなわちワイヤ41の繰出速度或いは巻取速度を示す。当該パルス信号のパルス数は、ワイヤ繰出長さ或いはワイヤ巻取長さを示す。
【0090】
上述の実施形態では、フックブロック32が固定されている場合(S14:Yes)や、ブーム22が起伏動作或いは伸縮動作をしている場合(S15:Yes)、ワイヤ掛数が特定されることなくワイヤ掛数取得処理が終了される。ただし、フックブロック32が固定されている場合や、ブーム22が起伏或いは伸縮している場合であっても、ワイヤ掛数が特定されてもよい。その場合、特定したワイヤ掛数をメモリ72に上書きするステップS20の処理がスキップされるのが好ましい。
【0091】
例えば、フックブロック32が固定されている場合(S14:Yes)や、ブーム22が起伏或いは伸縮動作をしている場合(S15:Yes)に、上書きフラグがオンにされる。そして、上書きフラグがオフである場合は、ステップS20においてワイヤ掛数が上書きされ、上書きフラグがオンである場合は、ステップS20がスキップされる。ワイヤ掛数をメモリ72に上書きするステップS20の処理をスキップすることは、特許請求の範囲に記載の「取得処理を停止する」に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
10・・・クレーン車
11・・・走行体
12・・・クレーン装置
13・・・運転室
14・・・係止部材
22・・・ブーム
23・・・ウインチ
25・・・滑車装置
26・・・センサ群
29・・・操作装置
31・・・固定シーブブロック
32・・・フックブロック
41・・・吊下ワイヤロープ
52・・・起伏シリンダ
53・・・伸縮シリンダ
54・・・油圧モータ
56・・・ドラム
63・・・第1センサ
64・・・第2センサ
70・・・コントローラ
72・・・メモリ
74・・・制御プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6