(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088675
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】取鍋における耐火物の厚み測定方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20230620BHJP
G01B 5/06 20060101ALI20230620BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20230620BHJP
B22D 41/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F27D1/00 V
G01B5/06
F27D21/00 Q
B22D41/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203565
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文仁
(72)【発明者】
【氏名】三津山 玲司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】松田 健吾
【テーマコード(参考)】
2F062
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
2F062AA27
2F062AA51
2F062GG29
2F062GG71
4K051AA06
4K051BH01
4K056AA06
4K056FA19
(57)【要約】
【課題】取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することが可能な、耐火物の厚み測定方法を提供する。
【解決手段】本開示は、取鍋本体と、該取鍋本体の内面に張られた耐火物と、を有する取鍋における、前記耐火物の厚みを測定する方法であって、長さが既知の治具40を用いることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋本体と、該取鍋本体の内面に張られた耐火物と、を有する取鍋における、前記耐火物の厚みを測定する方法であって、
長さが既知の治具を用いることを特徴とする、取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【請求項2】
前記治具が、前記取鍋本体の内面に張られた前記耐火物に挿入されている、請求項1に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【請求項3】
前記治具が、棒状であり、かつ前記取鍋の底部に位置する排出口から挿入される、請求項1又は2に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【請求項4】
前記取鍋の上端位置を検出し、
検出された前記取鍋の上端位置を基準として、当該上端位置から一定深さの位置を、前記取鍋の底部における、前記取鍋本体の内面の仮想位置として設定し、
前記取鍋の底部における前記耐火物の表面の位置を検出し、
検出された前記耐火物の表面の位置と、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置との差から、前記取鍋の底部における前記耐火物の厚み暫定値Aを得て、
前記取鍋の底部に位置する排出口から前記治具を挿入し、前記取鍋の底部における前記取鍋本体の内面からの前記治具の上端の高さBが既知であり、
前記治具の上端の位置を検出し、
検出された前記治具の上端の位置と、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置との差から、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置に対する前記治具の上端の高さCを算出し、
前記Bと前記Cとの差を測定誤差として把握し、
前記厚み暫定値Aを前記測定誤差に基づいて補正して、前記取鍋の底部における前記耐火物の厚み測定値Dを得る
工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【請求項5】
以下の補正式(1)により前記厚み測定値Dを得る、請求項4に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
D=A+(B-C) ・・・(1)
【請求項6】
前記検出をレーザー距離計により行う、請求項4又は5に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物を内張した取鍋における耐火物の厚み測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉から出鋼した溶鋼を運ぶための容器である取鍋は、取鍋本体と、該取鍋本体の内面に張られた耐火物と、を有する。取鍋本体は、鉄皮と、該鉄皮の内面に張られた永久煉瓦とを含む。この永久煉瓦の内面に、前記耐火物としてワーク煉瓦が張られている。この耐火物(ワーク煉瓦)は、溶鋼処理プロセスの中でスポーリング、摩耗、剥離、スラグによる溶損等によって、徐々に損耗する。耐火物が損耗した場合には、耐火物を張り替える必要があるため、この損耗量を適切に管理する必要がある。張替えが遅い場合は、耐火物の残厚が足りず、取鍋の鉄皮に孔が開いて漏鋼トラブルが発生するおそれがある。張替えが早すぎる場合は、耐火物の無駄な張替えを行うことで製造原単価の上昇につながってしまう。そこで、取鍋の内部の耐火物の厚みを精度よく測定することが望まれている。取鍋における耐火物の厚み測定方法の一例として、特許文献1に記載されるように、耐火物を内張りした溶融金属収容体における前記耐火物の表面をカメラにより撮像することで、前記耐火物の表面プロファイルを取得する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で用いるカメラに替えて、レーザー距離計により耐火物の表面プロファイルを取得して、耐火物の厚みを測定することも考えられる。この方法では、レーザー距離計で取鍋の上端位置を検出し、検出された取鍋の上端位置を基準として、当該上端位置から一定深さの位置を、取鍋の底部における取鍋本体の内面の仮想位置(取鍋本体と耐火物との境界の仮想位置、すなわち耐火物の厚みが0mmとなる仮想位置)として設定することが想定される。使用前の取鍋の上端位置と、取鍋の底部における取鍋本体の内面の位置との距離は、既知であることから、当該距離を「一定深さ」として採用することが想定される。この場合、レーザー距離計で取鍋の底部における耐火物の表面の位置を検出し、検出された耐火物の表面の位置と、設定された取鍋本体の内面の仮想位置との差から、取鍋の底部における耐火物の厚み測定値を得ることができる。
【0005】
この際、
図1(左側)に示すように、レーザー距離計により検出される取鍋の上端位置が、真の取鍋の上端の位置である場合には、
図2も参照して、当該上端位置から一定深さXの位置は、取鍋本体の内面の位置(すなわち、真の耐火物0mmのライン)となる。このため、原理的に、耐火物の厚み測定値は真の耐火物残厚D’と等しくなる。しかしながら、
図1(右側)に示すように、取鍋を使用する過程で、取鍋の上端にはスラグや地金などの付着物が堆積する。この場合、
図2も参照して、レーザー距離計により検出される取鍋の上端位置は、取鍋の上端の真の位置ではなく、付着物の上端位置となる。この場合、当該上端位置から一定深さXの位置は、取鍋本体の内面の真の位置(すなわち、真の耐火物0mmのライン)よりも、付着物の厚さYの分だけ高い位置となる。つまり、取鍋本体の内面として設定される仮想位置は、取鍋本体の内面の真の位置(真の耐火物0mmのライン)よりも、付着物の厚さYの分だけ高い位置となる。その結果、耐火物の厚み測定値A’は、真の耐火物残厚D’よりも付着物の厚さYの分だけ小さくなり、これが取鍋の底部における耐火物の厚みの測定誤差となる。取鍋を使用する過程で、取鍋の上端の付着物は、その厚みYが徐々に大きくなったり、ある段階で剥離したりする。このため、耐火物の厚みを測定する各タイミングでの、付着物の厚さYは一定とはならず、測定誤差も一定とはならない。すなわち、従来の方法では、取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することができないという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することが可能な、耐火物の厚み測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者らが検討したところ、
(i)耐火物の厚み測定の際に、取鍋底部に位置する溶鋼の排出口から棒状の治具を挿入すること(すなわち、治具の上端には付着物が存在しないこと)、
(ii)取鍋の底部における取鍋本体の内面からの前記治具の上端の高さは既知の固定値であること、
(iii)取鍋本体の内面として設定される仮想位置からの前記治具の上端の高さを測定すること、
によって、付着物の厚さYに相当する測定誤差を求めることができ、当初の厚み測定値をこの測定誤差に基づいて補正することによって、高精度の厚み測定値を得ることができるとの着想を得た。
【0008】
この着想に基づき完成された本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]取鍋本体と、該取鍋本体の内面に張られた耐火物と、を有する取鍋における、前記耐火物の厚みを測定する方法であって、
長さが既知の治具を用いることを特徴とする、取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【0009】
[2]前記治具が、前記取鍋本体の内面に張られた前記耐火物に挿入されている、上記[1]に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【0010】
[3]前記治具が、棒状であり、かつ前記取鍋の底部に位置する排出口から挿入される、上記[1]又は[2]に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【0011】
[4]前記取鍋の上端位置を検出し、
検出された前記取鍋の上端位置を基準として、当該上端位置から一定深さの位置を、前記取鍋の底部における、前記取鍋本体の内面の仮想位置として設定し、
前記取鍋の底部における前記耐火物の表面の位置を検出し、
検出された前記耐火物の表面の位置と、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置との差から、前記取鍋の底部における前記耐火物の厚み暫定値Aを得て、
前記取鍋の底部に位置する排出口から前記治具を挿入し、前記取鍋の底部における前記取鍋本体の内面からの前記治具の上端の高さBが既知であり、
前記治具の上端の位置を検出し、
検出された前記治具の上端の位置と、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置との差から、設定された前記取鍋本体の内面の仮想位置に対する前記治具の上端の高さCを算出し、
前記Bと前記Cとの差を測定誤差として把握し、
前記厚み暫定値Aを前記測定誤差に基づいて補正して、前記取鍋の底部における前記耐火物の厚み測定値Dを得る
工程を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【0012】
[5]以下の補正式(1)により前記厚み測定値Dを得る、上記[4]に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
D=A+(B-C) ・・・(1)
【0013】
[6]前記検出をレーザー距離計により行う、上記[4]又は[5]に記載の取鍋における耐火物の厚み測定方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の取鍋における耐火物の厚み測定方法によれば、取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】取鍋100における耐火物12の厚みをレーザー距離計20で測定する際の基準点(取鍋の上端位置)を説明する模式図である。
【
図2】取鍋100の上端位置に付着物が存在する場合に生じる、取鍋100の底部における耐火物12の厚みの測定誤差を説明する模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、取鍋100の底部に位置する排出口16から棒状の治具40を挿入した状態を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態において、取鍋100の底部における耐火物12の厚みの測定原理を説明する模式図である。
【
図5】実施例における耐火物の厚みの測定箇所を説明するための、取鍋の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明が対象とする取鍋100の構成を説明する。取鍋100は、転炉から出鋼した溶鋼を運ぶための容器であり、取鍋本体10と、該取鍋本体10の内面に張られた耐火物12と、を有する。取鍋本体10は、鉄皮と、該鉄皮の内面に張られた永久煉瓦とを含む。この永久煉瓦の内面に、前記耐火物12としてワーク煉瓦が張られている。鉄皮、永久煉瓦、及びワーク煉瓦は、いずれも底部が平坦であり、側部が円筒形状であり、上部が開放されている。鉄皮、永久煉瓦、及びワーク煉瓦の上端位置は略同じ高さにあり、これが取鍋の上端位置(初期位置)である。
【0017】
取鍋本体10の外周には、取鍋100をクレーンで吊る際に用いるトラニオン14が設けられている。取鍋100の底部には、取鍋100内に収容された溶鋼を排出するための排出口16が設けられている。排出口16から排出された溶鋼は、連続鋳造機のタンディッシュ等へ注入される。
【0018】
以下に、本発明の一実施形態による取鍋100における耐火物12の厚み測定方法の手順を説明する。
図1に示すように、溶鋼を排出した空の取鍋100を、レーザー距離計20が設定されている仮置き場30に配置する。この際、トラニオン14を仮置き場30の受台32に載置することで、毎回同じ向きに取鍋100を配置することができる。
【0019】
レーザー距離計20は、取鍋本体10内の耐火物12の表面に向けてレーザーを出射して、レーザー距離計20と当該表面との距離を測定する。この操作をレーザーの射出方向を変更しながら、耐火物12の表面全面にわたって行うことで、耐火物12の表面全体とレーザー距離計20との間の距離が計測でき、レーザー距離計20の位置から見た耐火物12の表面プロファイルを3次元的に決定できる。レーザー距離計20は、耐火物12の表面全体にレーザーを照射可能な位置に設置される。なお、レーザー距離計20に替えて、所望の位置を検出可能な任意の装置を用いてもよい。
【0020】
図1(右側)に示すように、取鍋100を使用する過程で、取鍋100の上端にはスラグや地金などの付着物が堆積する。本実施形態は、この付着物に起因する、取鍋100の底部における耐火物12の厚み測定値の測定誤差を補正する方法に関する。具体的には、長さが既知の治具40を用いることが特徴である。治具40は、取鍋本体の内面に張られた耐火物12に挿入されており、具体的には、
図3に示すように、治具40は棒状であり、かつ、治具40は、取鍋の底部に位置する排出口16から挿入される。
【0021】
以下、
図3及び
図4を参照して、本実施形態による、取鍋100の底部における耐火物12の厚みの測定原理を説明する。
【0022】
まず、レーザー距離計20で取鍋100の上端位置を検出する。ここで、取鍋の上端に付着物が存在しない場合、レーザー距離計20で検出される取鍋100の上端位置は、取鍋100の上端の真の位置となるが、取鍋の上端に付着物が存在する場合、レーザー距離計20で検出される取鍋100の上端位置は、取鍋100の上端の真の位置ではなく、付着物の上端位置となる。
【0023】
次に、
図4を参照して、検出された取鍋100の上端位置(付着物の上端位置)を基準として、当該上端位置から一定深さXの位置を、取鍋100の底部における、取鍋本体10の内面の仮想位置として設定する。
図4において、この仮想位置は「上端位置を基準とした耐火物0mmライン」と記載した。
【0024】
次に、レーザー距離計20で、取鍋100の底部における耐火物12の表面の位置を検出し、検出された耐火物12の表面の位置と、設定された取鍋本体10の内面の仮想位置との差から、取鍋100の底部における耐火物12の厚み暫定値Aを得る。
【0025】
ここで、取鍋本体10の内面として設定される仮想位置は、取鍋本体の内面の真の位置(
図4中の「真の耐火物0mmのライン」)よりも、付着物の厚さYの分だけ高い位置となる。その結果、耐火物の厚み暫定値Aは、真の耐火物残厚Dよりも付着物の厚さYの分だけ小さくなり、これが取鍋100の底部における耐火物12の厚みの測定誤差となる。
【0026】
本実施形態は、この厚み暫定値Aの測定誤差を補正して、取鍋100の底部における耐火物12の厚みを精度良く測定する方法に関する。
【0027】
図3及び
図4を参照して、取鍋100の底部に位置する排出口16を開いて、この排出口16から棒状の治具40を挿入する。治具40は、排出口16の下部のフランジ面へ取付可能なフランジ40Aを有しており、排出口16に固定される。ここで、フランジ40Aから突出する棒状部材40Bの長さは既知かつ一定なので、取鍋10の底部における取鍋本体10の内面からの治具40の上端の高さBは既知かつ固定値となる。治具40の上端は平面となっており、レーザー距離計20からレーザーを照射可能な位置に配置される。治具40は、取鍋100内の1000℃を超える雰囲気に耐える材質であれば、金属、耐火物等種々のものが使用できる。排出口16への挿入作業等のハンドリングで損傷を受けないように、治具40は鋼製であることが好ましい。
【0028】
この状態で、レーザー距離計20で治具40の上端の位置を検出し、検出された治具40の上端の位置と、設定された取鍋本体10の内面の仮想位置との差から、設定された取鍋本体10の内面の仮想位置に対する治具40の上端の高さCを算出する。
【0029】
この高さCは、付着物が存在せず、これに起因する、取鍋100の底部における耐火物12の厚みの測定誤差が存在しない場合には、取鍋10の底部における取鍋本体10の内面からの治具40の上端の高さBと同じ値となるはずである。そこで、このBとCとの差を測定誤差として把握する。
【0030】
そこで、厚み暫定値Aをこの測定誤差に基づいて補正して、取鍋100の底部における耐火物12の厚み測定値Dを得る。具体的には、以下の補正式(1)により厚み測定値Dを得ることができる。この補正式によれば、厚み測定値Dは、原理上、取鍋100の底部における耐火物12の真の厚みと同等となる。
D=A+(B-C) ・・・(1)
【0031】
例えば、耐火物12の厚み暫定値Aが100mmであり、取鍋10の底部における取鍋本体10の内面からの治具40の上端の高さBが327mmであるところ、設定された取鍋本体10の内面の仮想位置に対する治具40の上端の高さCが260mmである場合、測定誤差は327-260=67mmであると判断して、100+67=167mmを厚み測定値Dとして採用する。
【0032】
このようにして、本実施形態による取鍋における耐火物の厚み測定方法によれば、取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することができる。よって、耐火物の張替えを適時に行うことができ、漏鋼トラブルを確実に回避しつつ、張替え費用を最低限とすることができる。
【0033】
本実施形態の厚み測定を、取鍋100の底部における耐火物12の表面の任意の箇所で実施することによって、当該任意の箇所での厚みを精度良く測定することができる。また、本実施形態の厚み測定を、取鍋100の底部における耐火物12の表面全体で実施することによって、取鍋100の底部における耐火物12の厚みプロファイルを精度良く得ることができる。
【0034】
補正式(1)に代えて、以下の補正式(2)により厚み測定値Dを得ることもできる。補正式(1)の場合、厚み測定値Dは、原理上、取鍋100の底部における耐火物12の真の厚みと同等となり、その値が0mmになった段階で耐火物の張替えを行っても、漏鋼のリスクが高い。そこで、厚み暫定値Aに測定誤差(B-C)を加えた後、安全代E(1~20mmの範囲内)を差し引くことで得られる厚み測定値Dを管理値として採用することができる。この場合、厚み測定値Dが0mmになった段階で耐火物の張替えを行っても、漏鋼のリスクは低い。ただし、Eを20mm超えに設定すると、測定誤差を低減するという本発明の効果が損なわれるので、Eは20mm以下とする。
D=A+(B-C)-E ・・・(2)
【実施例0035】
溶鋼を180t保持することができる取鍋を用いて、耐火物の厚み測定を実施した。取鍋を使用開始から27チャージ溶鋼の収容、排出をくり返し、その後仮置き場の受台の上に載置した。取鍋の底面に設けられた排出口のスライディングゲートを開け、排出口の下方から、棒状の治具を取鍋内へ挿入した。治具はステンレス製であり、長さは1mである。治具の下端に設けたフランジを排出口下面のフランジに固定し、治具の上端面は、取鍋の底部における永久煉瓦の上面よりも327mm突出した状態となった。仮置き場にレーザー距離計を配置し、取鍋内の耐火物表面を計測した。このとき、以下の
図5に示す取鍋の底部の測定箇所I及びIIにおいて、以下の3つの方法で耐火物の厚みを測定した。
【0036】
[発明例]
上記の補正式(1)に基づいて、厚み測定値Dを算出した。B=327mmであり、C=276mmであったことから、測定誤差B-C=51mmと判断した。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例]
上記の補正式(1)における厚み暫定値Aをそのまま測定値として採用した。結果を表1に示す。
【0038】
[コアボーリングによる実測]
発明例及び比較例による測定の精度を検証するために、耐火物をコアボーリングして残厚を調べた。結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1に示すように、いずれの箇所においても、発明例による測定値はコアボーリングによる実測値の±10mm以内に収まっており、取鍋の底部における耐火物の厚みを精度良く測定することができた。