(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088686
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】濾材
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20230620BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B01D39/16 A
D01F8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203583
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】愛甲 尚正
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 悠一郎
【テーマコード(参考)】
4D019
4L041
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB05
4D019BC05
4D019BC06
4D019BC10
4D019BC11
4D019BC13
4D019BC15
4D019BC20
4D019BD01
4D019CA02
4D019CA10
4D019CB06
4D019DA01
4D019DA02
4D019DA03
4D019DA04
4D019DA06
4L041BA11
4L041BA33
4L041BA48
4L041BD11
4L041CA36
4L041CA38
4L041CA39
(57)【要約】
【課題】
圧力損失と捕集効率のバランスに優れた、不織布層を備える濾材を提供する。
【解決手段】
異形断面繊維を含んだ不織布層を備える濾材において、その圧力損失と捕集効率のバランスは、当該不織布層における孔径分布の態様と、当該不織布層において最頻出する孔径の態様に影響を受けていることを見出した。具体的に本願出願人は、
・異形断面繊維を含んだ不織布層における孔径分布の態様については、相対度数の5%累積値の孔径(以後P5と略す、単位:μm)と、相対度数の95%累積値の孔径(以後P95と略す、単位:μm)との差が、14.1μmよりも大きいことによって、
そして、
・不織布層において最頻出する孔径の大きさについては、最頻出する孔径(単位:μm)がP5%以上P95%以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さいことによって、
異形断面繊維を含んだ不織布層の圧力損失と捕集効率のバランスが向上することを見出した。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形断面繊維を含んだ不織布層を備える濾材であって、
前記不織布層の有する孔径を最小孔径から最大孔径の順に並べ作成したヒストグラムにおける、相対度数の5%累積値の孔径(以後P5と略す、単位:μm)と、相対度数の95%累積値の孔径(以後P95と略す、単位:μm)との差が、14.1μmよりも大きく、
前記不織布層において最頻出する孔径(単位:μm)が、前記P5以上前記P95以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さい、
濾材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形断面繊維を含んだ不織布層を備える濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエアフィルタやマスクには、圧力損失が低く通気性に優れると共に、大気塵やPM2.5などの塵埃ならびに花粉などの捕集効率に優れるという性能が求められている。この相反する性能を共に満足する、濾過性能に富む濾材を用いてエアフィルタやマスクを調製することが求められている。
【0003】
従来技術にかかる濾材として、特開2021-169059(特許文献1)には、引張り強さが3cN/dtex以上のポリオレフィン系接着繊維と、他の繊維とを含み構成された不織布濾材が開示されている。なお、特許文献1には、不織布濾材の強度や濾過性能を向上する役割を担うことができるよう、繊維径が細い他の繊維を採用するのが好ましいという知見、および、当該他の繊維としてフィブリル状の部分を有するものが好ましいという知見が開示されている。そして、特許文献1の実施例では、16分割可能なオレンジ形状の断面を有する分割型繊維へ強く水流を作用させることで分割型繊維が分割してなる異形断面繊維を形成すると共に、それに留まらず、当該異形断面繊維がフィブリル状になるまで強く水流を作用させたこと、そして、このようにして調製したフィブリル状の部分を有する他の繊維を含んだ不織布濾材を製造したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願人は、特許文献1に開示されているような、従来技術にかかる濾材について検討を行った。特に、特許文献1の開示に基づき、分割繊維を混綿した繊維ウェブを水流絡合装置へ供して、分割繊維が分割してなる異形断面繊維を形成すると共に構成繊維同士を絡合させてなる、不織布層を備える濾材を調製した。なお、濾材の濾過性能が向上するという特許文献1の開示に基づき、繊維径が細い異形断面繊維からなる濾材を調製できるよう、当該絡合工程において分割繊維へ強く水流を作用させ分割型繊維を完全に分割した。
【0006】
しかし、このような従来技術に基づき作成した不織布層を備える濾材は、従来技術が開示する知見と反し、必ずしも圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材ではなかった。
【0007】
そのため、なおも圧力損失と捕集効率のバランスに優れた濾材の実現が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の本発明は、
「異形断面繊維を含んだ不織布層を備える濾材であって、
前記不織布層の有する孔径を最小孔径から最大孔径の順に並べ作成したヒストグラムにおける、相対度数の5%累積値の孔径(以後P5と略す、単位:μm)と、相対度数の95%累積値の孔径(以後P95と略す、単位:μm)との差が、14.1μmよりも大きく、
前記不織布層において最頻出する孔径(単位:μm)が、前記P5以上前記P95以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さい、
濾材。」
である。
また、第二の本発明は、
「前記異形断面繊維として、一部分が分割された状態の分割繊維を含む、請求項1に記載の濾材。」
である。
【発明の効果】
【0009】
本願出願人は検討を続けた結果、異形断面繊維を含んだ不織布層を備える濾材において、その圧力損失と捕集効率のバランスは、当該不織布層における孔径分布の態様と、当該不織布層において最頻出する孔径の態様に影響を受けていることを見出した。
【0010】
具体的に本願出願人は、
・異形断面繊維を含んだ不織布層における孔径分布の態様については、不織布層の有する孔径を最小孔径から最大孔径の順に並べ作成したヒストグラムにおける、相対度数の5%累積値の孔径(以後P5と略す、単位:μm)と、相対度数の95%累積値の孔径(以後P95と略す、単位:μm)との差が、14.1μmよりも大きいことによって、
そして、
・不織布層において最頻出する孔径の大きさについては、最頻出する孔径(単位:μm)がP5%以上P95%以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さいことによって、
異形断面繊維を含んだ不織布層の圧力損失と捕集効率のバランスが向上することを見出した。
【0011】
更に、本願出願人は、濾材を構成する不織布層が異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維を含むことによって、請求項1に記載の濾材を実現できることを見出した。
【0012】
以上から、本発明によって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れた不織布層を備える濾材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。そして、以下に記載する各上限値ならびに各下限値は、所望により任意に組み合わせることで採用可能な数値範囲を定めることができる。
【0014】
本発明にかかる濾材は、異形断面繊維を含んだ不織布層を備えている。
【0015】
ここでいう異形断面繊維とは、繊維をその繊維長方向と垂直をなす方向で切断した断面の輪郭形状が、中実の円形あるいは中実の楕円形ではない部分を有する繊維を意味する。異形断面繊維における前述した断面の輪郭形状は適宜調整できるが、略扇型、T状、Y状、+状、中空状(ドーナツ状)、多角形状であることができる。また、フィブリル繊維などの断面の形状が不定形状の繊維などであることができる。
【0016】
このような異形断面繊維は、分割繊維を分割処理することで調製できる。一例として、オレンジ型の断面を有する分割繊維を分割処理させることで、断面の形状が略扇型の異形断面繊維を調製できる。また、分割型繊維が完全に分割しないよう水流を作用させるなどして調製した、完全に分割されておらず一部分が分割された状態の分割繊維を、異形断面繊維として採用することができる。
【0017】
異形断面繊維を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ4-メチルペンテン樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0018】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0019】
また、異形断面繊維は単一成分から構成されている単繊維であっても、複数成分から構成されていても良い。例えば、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。一例として、鞘部に低融点樹脂、芯部に前記低融点樹脂よりも融点の高い樹脂を備えてなる芯鞘型接着繊維のような複合繊維であることができる。このような複合繊維であると、低融点樹脂が軟化や融解した状態であっても、芯部の存在によって異形断面繊維の繊維形状が維持された状態で、不織布層における構成繊維同士の繊維接着がなされる。その結果、強度に優れると共に、圧力損失と捕集効率のバランスに優れた不織布層を備える濾材を提供できる。
【0020】
濾材に難燃性が求められる場合には、異形断面繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。更には、異形断面繊維が例えば、吸湿剤、艶消し剤、顔料、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染色剤、導電剤、親水化剤、脱臭剤、或いは抗菌剤などの機能性物質を含んでいても良い。
【0021】
圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、異形断面繊維の平均繊維径は1~20μmであることができ、2~18μmであることができ、3~16μmであることができる。
【0022】
本発明でいう「平均繊維径」は、測定対象物の断面や表面などを撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、50点の繊維における各繊維径の算術平均値をいう。また、繊維径が細過ぎて測定が困難である場合には、5000倍よりも高い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定できる。なお、繊維の断面形状が中実の円形ではない場合には、当該繊維の断面形状における断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなすことができる。
【0023】
異形断面繊維は連続した長繊維であっても、所定長さに切断された短繊維であっても良い。圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、繊維長は0.5~20mmであるのが好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0024】
本発明にかかる濾材は異形断面繊維を含んでいることによって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるものである。
【0025】
本発明にかかる濾材が備える不織布層は、その構成繊維として、異形断面繊維以外の繊維(以降、他の繊維と称することがある)を含んでいても良い。他の繊維の断面形状は適宜選択できるものであり、中実の円形あるいは中実の楕円形や、中実の円形あるいは中実の楕円形ではない部分を有する繊維、あるいは、フィブリル繊維などの断面の形状が不定形状の繊維などであってもよい。
【0026】
他の繊維を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、異形断面繊維を構成可能であると挙げた樹脂を採用できる。なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0027】
また、他の繊維は単一成分から構成されている単繊維であっても、複数成分から構成されていても良い。例えば、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。一例として、鞘部に低融点樹脂、芯部に前記低融点樹脂よりも融点の高い樹脂を備えてなる芯鞘型接着繊維のような複合繊維であることができる。このような複合繊維であると、低融点樹脂が軟化や融解した状態であっても、芯部の存在によって他の繊維の繊維形状が維持された状態で、不織布層における構成繊維同士の繊維接着がなされる。その結果、強度に優れると共に、圧力損失と捕集効率のバランスに優れた不織布層を備える濾材を提供できる。
【0028】
濾材に難燃性が求められる場合には、他の繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。
【0029】
更には、他の繊維が例えば、吸湿剤、艶消し剤、顔料、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染色剤、導電剤、親水化剤、脱臭剤、或いは抗菌剤などの機能性物質を含んでいても良い。
【0030】
圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、他の繊維の平均繊維径は1~20μmであることができ、2~18μmであることができ、3~16μmであることができる。
【0031】
他の繊維は連続した長繊維であっても、所定長さに切断された短繊維であっても良い。圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、繊維長は0.5~20mmであるのが好ましい。
【0032】
本発明にかかる不織布層の構成繊維について、不織布層を構成する繊維の質量(例えば、異形断面繊維と他の繊維との質量の和)に占める異形断面繊維の質量の百分率は、0質量%よりも多く100質量%以下である。当該百分率は圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、適宜調整する。具体的に当該百分率は、5質量%以上100質量%未満であることができ、10質量%以上90質量%以下であることができ、20質量%以上80質量%以下であることができ、30質量%以上80質量%以下であることができ、40質量%以上70質量%以下であることができ、50質量%以上60質量%以下であることができる。
【0033】
本発明にかかる濾材が有する不織布層は、不織布層の有する孔径を最小孔径から最大孔径の順(つまり、不織布層の有する孔径を大きさ順)に並べ作成したヒストグラムにおける、相対度数の5%累積値の孔径(以後P5と略す、単位:μm)と、相対度数の95%累積値の孔径(以後P95と略す、単位:μm)との差が、14.1μmよりも大きいことを特徴としている。
【0034】
濾材が有する不織布層が本構成を満足するか否かは、以下の方法で確認できる。
【0035】
(P5とP95との差の求め方)
1.濾材から不織布層部分から試料を採取する。なお、濾材から不織布層を採取して試料としてもよい。
2.ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を使用し、試料が有する孔径(単位:μm)をバブルポイント法によって測定する。なお、試料が有する孔径はバブルポイント法により測定される流量孔径(単位:μm)をいう。測定の結果を、不織布層の有する孔径とする。
3.測定された試料が有する各孔径を、小さい孔径から大きい孔径順に並べることで、孔径とその孔径の個数との関係を示すヒストグラムを作成する。なお、当該ヒストグラムは孔径の階級(データ区間)ごとの孔径の個数を表すグラフを意味する。また、孔径の階級の幅(データ区間の幅)は0.1μmに設定する。具体的には、0μより大きく0.1μm以下の孔径範囲を第一のデータ区間、0.1μmより大きく0.2μm以下の孔径範囲を第二のデータ区間として、以下同様に孔径の階級の幅を設定する。
4.並べられた各孔径における最も小さい孔径から大きい孔径へ向かい、測定された孔径の総個数を100%に換算した際の、5%の番目に並んでいる孔径が含まれている階級における孔径の最大値を、P5の孔径とする。具体的には、測定された試料が有する孔径の総個数が2n個あるいは2n+1個(nは50以上の整数)である場合、並べられた各孔径における最も小さい孔径から大きい孔径へ向かい、2n×0.05番目に並んでいる孔径を求める。そして、当該孔径が含まれている階級における孔径の最大値(例えば、当該階級が14.9より大きく15.0μm以下の孔径範囲である場合には、孔径の最大値は15.0μm)を、P5の孔径とする。
5.次いで、並べられた各孔径における最も小さい孔径から大きい孔径へ向かい、測定された孔径の総個数を100%に換算した際の、95%の番目に並んでいる孔径が含まれている階級における孔径の最大値を、P95の孔径とする。具体的に、測定された試料が有する孔径の総数が2n個あるいは2n+1個(nは50以上の整数)である場合、並べられた各孔径における最も小さい孔径から大きい孔径へ向かい、2n×0.95番目に並んでいる孔径を求める。そして、当該孔径が含まれている階級における孔径の最大値(例えば、当該階級が42.7より大きく42.8μm以下の孔径範囲である場合には、孔径の最大値は42.8μm)を、P95の孔径とする。
6.上述のようにして求めた、P95からP5を引いた値を、P5とP95との差(単位:μm)とする。
【0036】
なお、P5とP95との差が大きいほど、当該不織布層はブロ―ドな孔径分布を有していることを意味する。本発明にかかる濾材は、当該孔径分布を有する不織布層を備えていることによって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる。
【0037】
また、本発明にかかる濾材が有する不織布層は、前記不織布層において最頻出する孔径(単位:μm)が、P5以上P95以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さいことを特徴としている。なお、上述した(P5とP95との差の求め方)で作成したヒストグラムにおいて、最も多くの孔径が含まれている階級における孔径の最大値(例えば、当該階級が22.9より大きく23.0μm以下の孔径範囲である場合には、孔径の最大値は23.0μm)を、前記不織布層において最頻出する孔径(単位:μm)とする。
【0038】
本願出願人は、P5とP95との差が14.1μmよりも大きいと共に、最頻出する孔径がP5以上P95以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さいという構成を有していることによって、不織布層の圧力損失と捕集効率のバランスが向上したものとなる結果、当該不織布層を備えた濾材は圧力損失と捕集効率のバランスに優れることを見出した。
【0039】
そして、本願出願人は、ブロ―ドな孔径分布を有する不織布層(P5とP95との差が大きい不織布層)を備えることによって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供し易くなることを見出した。より圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、不織布層におけるP5とP95との差は、15~100μmであるのが好ましく、16~60μmであるのが好ましく、17~50μmであるのが好ましく、18~40μmであるのが好ましく、19~30μmであるのが好ましく、19.8~27.8μmであるのが好ましい。
【0040】
また、本願出願人は、不織布層において最頻出する孔径(単位:μm)がP5以上P95以下の範囲内にあると共には24.8μmよりも小さい不織布であることによって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供し易くなることを見出した。より圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるよう、不織布における最頻出する孔径は、1μm以上であるのが好ましく、3μm以上であるのが好ましく、5μm以上であるのが好ましく、10μm以上であるのが好ましく、12.8μmより大きいのが好ましい。そして、上限値は24.8μmよりも小さいよう適宜調整できるが、24.0μm以下であるのが好ましく、23.5μm以下であるのが好ましい。また、最頻出する孔径は13.9~23.0μmの範囲内にあるのが好ましい。
【0041】
なお、本発明にかかるヒストグラムを作成するため用いた孔径の総個数に占める、最頻出する孔径の個数の百分率(度数(単位:%))は、適宜調整できる。当該度数が低いほど、不織布における孔径分布がブロードである傾向にあることを意味するものであり、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供し易くなるため好ましい。
【0042】
不織布層における他の構成、例えば、厚さ、目付など他の構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整できる。厚さは、0.1~10mmであることができ、0.3~5mmであることができ、0.5~3mmであることができる。また、目付は、例えば、10~500g/m2であることができ、30~300g/m2であることができ、40~100g/m2であることができる。なお、本発明において厚さとは主面と垂直方向へ20g/cm2圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0043】
本発明にかかる濾材は、上述した不織布のみで構成された濾材として使用可能であるが、帯電処理へ供して帯電濾材とする、別の部材(例えば、多孔体、多孔フィルムや無孔フィルム、発泡体、不織布や織物あるいは編物など布帛)を積層してなる濾材としてもよい。また、濾材の形状は用途に併せ適宜調整できるものであるが、平板以外にもプリーツやコルゲート形状の濾材であっても良い。
【0044】
本発明にかかる濾材は周知の方法により製造することができるが、一例として、以下の工程を備える製造方法を用いて製造できる。
工程1.異形断面繊維、または、異形断面繊維と他の繊維を構成繊維として備える繊維ウェブを用意する工程。
工程2.繊維ウェブに水流を当て水流絡合することで、異形断面繊維同士、または、異形断面繊維と他の繊維同士を絡ませ合う工程。
工程3.構成繊維同士が絡み合った繊維ウェブを乾燥して、不織布を調製する工程。
工程4.調製した不織布を用いて濾材を調製する工程。
【0045】
まず、工程1について説明する。
異形断面繊維、または、異形断面繊維と他の繊維を構成繊維として備える繊維ウェブを調製する方法は周知の方法を採用できる。当該異形断面繊維、または、当該異形断面繊維と他の繊維などの構成繊維をカード機へ供し、混綿して繊維ウェブを調製する方法や、直接紡糸法を用いて紡糸された繊維(異形断面繊維など)を捕集することで当該繊維構成を有する繊維ウェブを調製する方法、異形断面繊維、または、異形断面繊維と他の繊維を含む分散液を抄造して繊維ウェブを調製する方法などを採用できる。なお、分散液を抄造することで調製した繊維ウェブを乾燥機(例えば、エアスルー式の乾燥機)へ供することで分散媒を除去できる。
【0046】
次いで、工程2について説明する。
繊維ウェブに作用させる水流絡合の態様は、繊維ウェブの構成繊維同士が絡合することで本願発明にかかる孔径分布を有する不織布を調製できるよう、適宜調整する。水流の圧力は1MPa以上とすることができ、9MPa未満とすることができ、7MPa以下とすることができ、5MPa以下とすることができる。また、繊維ウェブへ水流絡合を複数回施してもよい。繊維ウェブへ水流を作用させている際、繊維ウェブの下から余分な水をサクションによって除去するのが好ましい。
【0047】
そして、工程3について説明する。
構成繊維同士が絡み合った繊維ウェブを乾燥する方法は適宜選択でき、乾熱乾燥機などの乾燥機へ供する方法を挙げることができる。加熱温度は適宜調整するが、繊維ウェブから水を除去できる温度であって、意図せず繊維ウェブの構成成分が変性あるいは劣化しない温度となるように調整する。当該工程において、異形断面繊維や他の繊維の繊維接着成分を融解させて、繊維ウェブの構成繊維同士を繊維接着してもよい。また、繊維ウェブが接着剤を含んでいる場合には、当該接着剤を融解して構成繊維同士を接着してもよい。
【0048】
そして、工程4について説明する。
工程3を経て調製された不織布は、そのまま平板状の濾材として使用しても良いが、不織布を二次加工へ供して濾材を調製してもよい。一例として、不織布に活性炭や薬剤などの機能性材料を付与して濾材を調製する、不織布を求める形状に打ち抜くあるいは切り抜いて濾材を調製する、コロナ帯電処理やプラズマ帯電処理あるいは水など極性液体を作用させ帯電させる帯電処理などの帯電処理へ供して不織布を帯電させる、不織布に別の部材(例えば、多孔体、多孔フィルムや無孔フィルム、発泡体、不織布や織物あるいは編物など布帛)を積層あるいは積層一体化してなる濾材を調製する、不織布をプリーツやコルゲート形状に折り立体的な濾材を調製する、フィルタ枠などに不織布を設けフィルタユニットを調製するなどの、二次加工を採用できる。
【0049】
また、本発明にかかる濾材は、上述の工程1~2に替えて以下の工程1´~2´を備える、別の製造方法を用いて製造できる。
工程1´.分割することによって異形断面繊維を形成可能な分割繊維、または、当該分割繊維と他の繊維を構成繊維として備える繊維ウェブを用意する工程。
工程2´.繊維ウェブに水流を当て水流絡合することで、分割繊維を分割させ異形断面繊維を形成すると共に、異形断面繊維同士、または、異形断面繊維と他の繊維同士を絡ませ合う工程。
【0050】
まず、工程1´について説明する。
分割することによって異形断面繊維を形成可能な分割繊維、または、当該分割繊維と他の繊維を構成繊維として備える繊維ウェブを調製する方法は周知の方法を採用でき、当該分割繊維、または、当該分割繊維と他の繊維などの構成繊維をカード機へ供し、混綿して繊維ウェブを調製する方法や、直接紡糸法を用いて紡糸された繊維(分割繊維など)を捕集することで当該繊維構成を有する繊維ウェブを調製する方法、異形断面繊維、または、異形断面繊維と他の繊維を含む分散液を抄造して繊維ウェブを調製する方法などを採用できる。なお、分散液を抄造することで調製した繊維ウェブを乾燥機(例えば、エアスルー式の乾燥機)へ供することで分散媒を除去できる。
【0051】
次いで、工程2´について説明する。
繊維ウェブに作用させる水流絡合の態様は、分割繊維が分割され異形断面繊維が形成されると共に、繊維ウェブの構成繊維同士が絡合することで、本願発明にかかる孔径分布を有する不織布を調製できるよう、適宜調整する。水流の圧力は1MPa以上とすることができ、9MPa未満とすることができ、7MPa以下とすることができ、5MPa以下とすることができる。また、繊維ウェブへ水流絡合を複数回施してもよい。繊維ウェブへ水流を作用させている際、繊維ウェブの下から余分な水をサクションによって除去するのが好ましい。
【0052】
本願出願人は、当該工程2´において、特許文献1に開示されているように分割繊維を完全に分割させた場合、予想外にも、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供することが困難であることを見出した。
【0053】
それに対し、本願出願人は、完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維を含む不織布層を備えた濾材は、つまり、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維を含む不織布層を備えた濾材は、特許文献1が開示する知見に対し予想外にも、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材であることを見出した。そして、工程2´において、繊維ウェブへ作用させる水流の強さ、繊維ウェブへ施す水流絡合の回数、処理時間、繊維ウェブの下から余分な水をサクションさせるその強さなど、水流絡合の態様を調整することで、完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維を含む不織布を調製できることを見出した。
【0054】
なお、濾材における不織布層が、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維を含むか否かは、不織布層における両主面や断面の顕微鏡写真を撮影し、当該写真を確認することによって判断できる。つまり、当該写真中に、一部分が分割されているものの完全に分割されていない状態の分割繊維が存在している場合、当該写真に写る不織布は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維を含むと判断できる。
【実施例0055】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
(構成繊維の準備)
以下に記載の構成を備える分割繊維を用意した。
・繊維長:5mm
・平均繊維径:15.4μm
・繊維断面形状:中実の16分割可能なオレンジ形状
・繊維断面に占める、一つのポリプロピレン樹脂部分の面積と、一つのポリ4-メチルペンテン樹脂部分の面積との比率:1対1、
・分割によって生じる繊維:ポリプロピレン樹脂(融点:165℃)で構成された断面形状が中実の略扇型をした異形断面繊維(平均繊維径:3.8μm)と、ポリ4-メチルペンテン樹脂(融点:240℃)で構成された断面形状が中実の略扇型をした異形断面繊維(平均繊維径:3.8μm)
また、他の繊維として、以下に記載の構成を備える芯鞘型接着繊維を用意した。
・繊維長:5mm
・平均繊維径:10.6μm
・繊維断面形状:芯鞘形状を有する中実の円形
・芯部:ポリプロピレン樹脂(融点:165℃)
・鞘部:ポリエチレン樹脂(融点:135℃)
【0057】
(比較例1)
分割繊維40質量%と芯鞘型接着繊維60質量%を含む分散液を抄造して、繊維ウェブを調製した。
その後、加熱温度140℃に調整したエアースルー加熱機へ供することで、繊維ウェブを乾燥すると同時に芯鞘型接着繊維の接着成分(鞘成分)のみを融解させることで、芯鞘型接着繊維の接着成分(鞘成分)により構成繊維同士が繊維接着させ、放冷して不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、分割されていない分割繊維と芯鞘型接着繊維で構成されているものであった。
【0058】
(実施例1)
分割繊維40質量%と芯鞘型接着繊維60質量%を含む分散液を抄造して、繊維ウェブを調製した。
その後、加熱温度140℃に調整したエアースルー加熱機へ供することで、繊維ウェブを乾燥すると同時に芯鞘型接着繊維の接着成分(鞘成分)のみを融解させることで、芯鞘型接着繊維の接着成分(鞘成分)により構成繊維同士が繊維接着させ、繊維ウェブを放冷した。
放冷した後の繊維ウェブを水流絡合装置へ供することで、繊維ウェブに含まれる分割繊維を分割させると同時に、構成繊維同士を絡合させた。なお、水流絡合装置における繊維ウェブへ作用させる水流絡合の条件は、水流の圧力:3MPa、サクションの圧力:45kPa、水流を作用させる回数:4回とした。
その後、加熱温度約100℃に調整したエアースルー加熱機へ供することで、繊維ウェブを乾燥させて不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
【0059】
(実施例2)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流の圧力を5MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
【0060】
(実施例3)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流の圧力を7MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
【0061】
(比較例2)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流の圧力を9MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでおらず、分割繊維が分割されてなる異形断面繊維と芯鞘型接着繊維で構成されているものであった。
【0062】
上述のようにして製造した、各濾材の諸物性を表1にまとめた。また、圧力損失(単位:Pa)と捕集効率(単位:%)は、以下の測定方法を用いて求めた。更に、求められた圧力損失と捕集効率の値から、濾材における圧力損失と捕集効率のバランスを評価可能なQF値を算出した。
【0063】
(圧力損失と捕集効率の測定方法)
濾材から、試験片を採取した。そして、採取した試験片を柴田科学株式会社製の測定装置「AP-9000」に装着して、捕集効率および圧力損失を測定した。
まず、試験片の有効ろ過面積44.12cm2あたり毎分40リットルとなるよう試験流量を調整し、試験片における上流と下流との差圧を測定し、測定された差圧から試験片の圧力損失(単位:Pa)を求めた。
次いで、試験片の有効ろ過面積44.12cm2あたり毎分30リットルとなるよう試験流量を調整すると共に、塩化ナトリウム粒子(粒径分布の個数基準中央値:0.06~0.10μm、幾何標準偏差:1.8以下)が、濃度50mg/m3以下(濃度変動:±15%以下)含有されている試験気流を、試験片の上流側へ供給した。そして、試験気流を1分間供給した後の、試験片における上流側と下流側に存在する当該塩化ナトリウム粒子の濃度を、光散乱式粉じん濃度計を用いて測定し、測定された両濃度から試験片に捕集されている塩化ナトリウム粒子の濃度を算出した。そして、試験片の上流側へ供給された塩化ナトリウム粒子の濃度に占める、試験片に捕集されている塩化ナトリウム粒子の濃度の百分率を算出し、その値を試験片の捕集効率(単位:%)とした。
【0064】
(QF値の算出方法)
上述のようにして算出された圧力損失と捕集効率の値を次式へ代入することで、QF値(単位なし)を算出した。なお、QF値が高いほど、圧力損失の低さと捕集効率の高さのバランスに優れた濾材であることを意味する。
QF値=-Ln(1-A/100)/B
Ln:自然対数
A:捕集効率(単位:%)
B:圧力損失(単位:Pa)
【0065】
なお、表1および表2中ではP5とP95との差を「P95%-P5%[μm]」欄に記載した。また、最頻出する孔径を「最頻出する孔径[μm]」欄に記載し、当該孔径の度数を「度数[%]」欄に記載した。
【0066】
【0067】
(実施例4)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流絡合の条件を、水流の圧力:3MPa、サクションの圧力:35kPa、水流を作用させる回数:4回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
(実施例5)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流絡合の条件を、水流の圧力:1MPa、サクションの圧力:45kPa、水流を作用させる回数:2回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
【0068】
(実施例6)
放冷した後の繊維ウェブへ作用させる水流絡合の条件を、水流の圧力:3MPa、サクションの圧力:45kPa、水流を作用させる回数:2回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布を調製した。
そして、このようにして製造した不織布を、そのまま平板状の濾材とした。なお、このようにして調製された濾材(不織布)の構成繊維は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。
【0069】
上述のようにして製造した、各濾材の諸物性を表2にまとめた。
【0070】
【0071】
上述のようにして調製した実施例の濾材は、QF値が高かったことから圧力損失値の低さと捕集効率の高さのバランスに優れた濾材であった。一方、これら実施例と比べ比較例1~2の濾材は、QF値が低かったことから圧力損失値の低さと捕集効率の高さのバランスに劣る濾材であった。
【0072】
この結果から、濾材における異形断面繊維を含んだ不織布層における、P5とP95との差が14.1μmよりも大きいこと、また、最頻出する孔径(単位:μm)がP5以上P95以下の範囲内にあると共に24.8μmよりも小さいことによって、特異的に、圧力損失値の低さと捕集効率の高さのバランスに優れた濾材を実現できることが判明した。
【0073】
また、上述のようにして調製した実施例の濾材は、いずれも、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいた。一方、これら実施例と比べ比較例2の濾材は、異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含んでいなかった。
【0074】
そのため、濾材を構成する不織布層が異形断面繊維として一部分が分割された状態の分割繊維(完全に分割しておらず不完全に分割された状態の分割繊維)を含むことによって、圧力損失と捕集効率のバランスに優れる濾材を提供できるものであった。
本発明にかかる濾材は、例えば、食品や医療品の生産工場用途、精密機器の製造工場用途、農作物の室内栽培施設用途、一般家庭用途あるいはオフィスビルなどの産業施設用途、空気清浄機用途やOA機器用途などの電化製品用途、自動車や航空機などの各種車両用途、マスク用途や医療機器など機器用途において、気体フィルタや液体フィルタとして好適に使用できる。