(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088690
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】自動消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20230620BHJP
A62C 35/06 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A62C3/00 A
A62C35/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203589
(22)【出願日】2021-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA07
2E189BB01
2E189BB06
2E189BC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設置が容易で、レンジ台で発生した火災を初期段階で確実に消火できる自動消火装置を提供する。
【解決手段】自動消火装置1は、燃焼器具が配備されるレンジ台50の近傍の壁面100に取り付けられ、壁面100に固定されるカバー機構10と、温度を計測するセンサーと、投てき式の消火部材40が収容される収容ボックス30と、カバー機構10および収容ボックス30に動作指令を出すコントローラー60を備えている。計測温度の温度上昇率の値が第1閾値を超えるとコントローラー60が判断したとき、コントローラー60からの第1動作指令によってカバー機構10は回動して、燃焼器具の周囲と上方を覆う。温度上昇率の値が第1閾値を超え、計測温度の値が第2閾値を超えるとコントローラー60が判断したとき、コントローラー60からの第2動作指令によって、収容ボックス30は動作して、消火部材40がレンジ台50の方向に向かって放出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器具が配備されるレンジ台の近傍の壁面に取り付けられる自動消火装置であって、
前記壁面に固定されるカバー機構と、
温度を計測するセンサーと、
消火剤が充填された投てき式の消火部材が収容される収容ボックスと、
前記センサーが計測した計測温度を検知して、前記カバー機構および前記収容ボックスに動作指令を出すコントローラーと、を備え、
前記計測温度に基づいて算出された温度上昇率の値が第1閾値を超えると前記コントローラーが判断したとき、前記コントローラーから出される第1動作指令によって前記カバー機構は回動して、前記燃焼器具、前記収容ボックス、および前記センサーの周囲と上方を覆い、
前記温度上昇率の値が前記第1閾値を超えるとともに、前記計測温度の値が第2閾値を超えると前記コントローラーが判断したとき、前記コントローラーから出される第2動作指令によって、前記収容ボックスは動作して、前記消火部材が前記レンジ台の方向に向かって放出されることを特徴とする自動消火装置。
【請求項2】
複数の前記センサーを備え、前記計測温度に基づいて算出された温度上昇率の値のうち少なくとも1つが前記第1閾値を超えると前記コントローラーが判断したとき、前記コントローラーから出される第1指令によって前記カバー機構は回動して、前記燃焼器具、前記収容ボックス、および前記センサーの周囲と上方を覆い、
前記温度上昇率の値のうち少なくとも1つが前記第1閾値を超えるとともに、前記計測温度の値のうち少なくとも1つが前記第2閾値を超えると前記コントローラーが判断したとき、前記コントローラーから出される第2指令によって、前記収容ボックスは動作して、前記消火部材が前記レンジ台の方向に向かって放出されることを特徴とする請求項1に記載の自動消火装置。
【請求項3】
前記カバー機構は、前記壁面に固定される固定部と、前記固定部の下端部に回動可能に支持されて前記レンジ台の方向に向かって回動する回動フレームと、それぞれの縁端が前記固定部、前記回動フレームに接続する蛇腹形状の耐熱シートとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動消火装置。
【請求項4】
前記収容ボックス、および前記センサーは、前記固定部に固定されるとともに、前記コントローラーは、前記収容ボックスに収容されることを特徴とする請求項3に記載の自動消火装置。
【請求項5】
前記回動フレームの一部または全部が前記レンジ台に接触したとき、前記カバー機構の回動が停止することを特徴とする請求項3または4に記載の自動消火装置。
【請求項6】
前記カバー機構は、付勢することで回動を始動する回動バネが装着されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の自動消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器具が配備されるレンジ台の近傍の壁面に取り付けられる自動消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生時に、自動的に動作して火災を鎮火する天井取付式の自動消火装置は、オフィスビル等の様々な場所で既に使用されている。しかし、一般家庭における主たる火災発生源は台所のガスコンロ周辺であり、特にレンジフード直下に置かれた鍋の中のてんぷら油が発火したときは、レンジフードの吸気によって火炎の勢いが増大して消火できない事態が想定される。
【0003】
特許文献1では、レンジ近傍の壁面の適所に設置される自動消火装置が提案されている。この自動消火装置は、本体部が、プラスチック製のチェーン等の線状部材を介して壁面に接続する構造である。本体部は、可燃性素材の中空体に消火剤を充填して形成された消火剤充填部材が収容されている。火災が発生したとき、線状部材が燃えることで消火充填剤が落下して、鍋に消火剤が散布される。これによって、火炎が鎮火されるものである。
【0004】
特許文献2では、マグネット等によってレンジフードに取り付けられる自動消火装置が提案されている。この自動消火装置は、火災による熱を受けてハンダが溶けることでカバーが開き、レンジ上部及び周囲を覆うスカート状の耐熱シートを落下させてレンジ直上に紐で吊り下げ保持し、耐熱シートの上部中央に配置された噴射ヘッドに装着されたハンダが火災による熱を受けて分解すると、本体内の薬液タンクからの消火薬液がフレキシブルチューブを通って噴射ヘッドから油火災を起こしている調理鍋に放出される。これによって、火炎が鎮火される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-334222号公報
【特許文献2】特開2006-198229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案されている自動消火装置は、消火剤が十分に散布されないときは、火炎を鎮火することができない。仮に一時的に火炎を鎮火できたとしても、再度発火する可能性は否定できない。また、線状部材が燃えることでのみ、消火材充填部材が投下されるので、消火材充填部材が投下されるときはすでに火炎が勢いを増して周辺部に広がっている可能性がある。
【0007】
特許文献2で提案されている自動消火装置は、ハンダが溶けることでカバーが開き、また噴射ヘッドから消火液材が散布されるので、消火液材が散布されるときすでに火炎が勢いを増して周辺部に広がっている可能性がある。また、耐熱シートは紐で吊下げられているので、火炎の勢いであおられて揺れることで所定の場所に降下できない可能性がある。また、レンジフードに取り付ける構造なので、レンジフードの吸気機能を阻害する。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、設置が容易で、レンジ台で発生した火災を初期段階で確実に消火できる自動消火装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、燃焼器具が配備されるレンジ台の近傍の壁面に取り付けられる自動消火装置であって、壁面に固定されるカバー機構と、温度を計測するセンサーと、消火剤が充填された投てき式の消火部材が収容される収容ボックスと、センサーが計測した計測温度を検知して、カバー機構および収容ボックスに動作指令を出すコントローラーとを備え、計測温度に基づいて算出された温度上昇率の値が第1閾値を超えるとコントローラーが判断したとき、コントローラーから出される第1動作指令によってカバー機構は回動して、燃焼器具、収容ボックス、およびセンサーの周囲と上方を覆い、温度上昇率の値が第1閾値を超えるとともに、計測温度の値が第2閾値を超えるとコントローラーが判断したとき、コントローラーから出される第2動作指令によって、収容ボックスは動作して、消火部材がレンジ台の方向に向かって放出されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、自動消火装置は、燃焼器具が配備されるレンジ台の近傍の壁面に取り付けられるので、レンジ台の近傍に壁があれば、レンジフードの位置のいかんにかかわらず取り付けることができる。また、温度を計測するセンサーは、レンジ台近傍の壁面に固定されているので、火災発生の初期段階を的確に把握できる。火災の初期段階の温度は、レンジ台近傍の気温によって上下する。例えばレンジ台近傍の気温が低い場合は低くなる。しかし、火災が発生したときは、レンジ台近傍の温度上昇率は急激に増加する。この構成で、第1閾値を計測温度の温度上昇率に対応して設定することで、周辺温度の状況に影響を受けることなく火災の初期段階を的確に捉えることができる。また、第1閾値を超えるとコントローラーが判断したとき、カバー機構が回動して、燃焼器具、収容ボックス、およびセンサーの周囲と上方を覆うことで空気の供給を断つことができるので、仮に火災が発生したとしても初期段階で鎮火できる。さらに、第2閾値を、計測温度の値とすることで、カバー機構が回動した後、消火部材を適切に放出できる。
【0011】
好ましくは、複数のセンサーを備え、計測温度に基づいて算出された温度上昇率の値のうち少なくとも1つが第1閾値を超えるとコントローラーが判断したとき、コントローラーから出される第1指令によってカバー機構は回動して、燃焼器具、収容ボックス、およびセンサーの周囲と上方を覆い、温度上昇率の値のうち少なくとも1つが第1閾値を超えるとともに、計測温度の値のうち少なくとも1つが第2閾値を超えるとコントローラーが判断したとき、コントローラーから出される第2指令によって、収容ボックスは動作して、消火部材がレンジ台の方向に向かって放出されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1動作指令、または第2動作指令は、複数のセンサーが計測する計測温度のいずれかが第1閾値、または第2閾値を超えるとコントローラーが判断したときに出されるので、局所的に偏在して発生する火災に対しても、延焼が拡大することなく初期段階で的確に鎮火できる。
【0013】
好ましくは、カバー機構は、壁面に固定される固定部と、固定部の下端部に回動可能に支持されてレンジ台の方向に向かって回動する回動フレームと、それぞれの縁端が固定部、回動フレームに接続する蛇腹形状の耐熱シートとを有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、カバー機構は蛇腹状の耐熱シートが伸長し、あるいは折り畳まれることで開閉するので、円滑な開閉が可能となる。また、耐熱シートの縁端は、固定部、回動フレームに接続するので、端部の形状を維持した状態で回動できる。これにより確実に燃焼器具を覆うことができる。
【0015】
好ましくは、収容ボックス、およびセンサーは、固定部に固定されるとともに、コントローラーは、収容ボックスに収容されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、収容ボックス、およびセンサーは、固定部に固定されるとともに、コントローラーは、収容ボックスに収容されるので、自動消火装置の取付けは壁面に固定部を固定することで足りる。これにより設置の効率化を図ることができる。また、コントローラーは収容ボックスに収容されているので、コントローラーを火炎から保護できる。これにより、カバー機構、および収容ボックスの動作のより一層の安定化を図ることができる。
【0017】
好ましくは、回動フレームの一部または全部がレンジ台に接触したとき、カバー機構の回動が停止することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、回動フレームの一部または全部がレンジ台に接触したとき、カバー機構の回動が停止するので、カバー機構の回動が停止したときカバー機構とレンジ台の間から供給される空気を減少させることができる。
【0019】
好ましくは、カバー機構は、付勢することで回動を始動する回動バネが装着されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、カバー機構は、付勢することで回動を始動する回動バネが装着されるので、カバー機構の確実な回動が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】自動消火装置がレンジ台近傍の壁面に取り付けられた状態を説明する側面図である。
【
図3】(a)は、カバー機構の側面図であり、(b)は、カバー機構が回動したときの側面図である。
【
図4】
図3(a)における矢視A-A方向の部分断面図である。
【
図5】(a)は、収容ボックスの側断面図であり、(b)は、
図5(a)における矢視B-B方向の断面図である。
【
図6】自動消火装置の動作手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
【0023】
図1、2に示す通り、自動消火装置1は、ガスコンロ51(燃焼器具)の近傍の壁面100に取付けられている。本実施形態では、ガスコンロ51は1台であるが、レンジ台50の延びる方向に複数台設置される場合は、これに応じて自動消火装置1をレンジ台50が延びる方向に伸ばして複数のガスコンロ51でそれぞれ発生する火災を1つの自動消火装置1で消火できる構造としてもよい。
【0024】
レンジ台50はガスコンロ51が配備されていて、ガスコンロ51には鍋52が置かれている。鍋52にはてんぷら油が注ぎ込まれており、ガスコンロ51の上方には、換気の為のレンジフード110が設けられている。このような状況下では、てんぷら油が何らかの原因で発火したとき、火炎はレンジフード110に吸い上げられ、激しく燃えることが考えられる。
【0025】
自動消火装置1は、センサー20で温度を計測して、計測温度Tに基づいて算出した温度上昇率ΔTが第1閾値TH1を超えたとき、カバー機構10が回動して、ガスコンロ51を覆う。その後、さらに計測温度Tが第2閾値TH2を超えたとき、消火部材40がガスコンロ51の方向に向かって放出されて、鍋52に投下される。自動消火装置1が固定される位置は、鍋52に注ぎ込まれたてんぷら油が発火したとき消火部材40が鍋52に的確に投入できる位置であることが好ましい。
【0026】
カバー機構10は、固定部11、回動フレーム12、耐熱シート13、および第1ソレノイド14を有している。固定部11は壁面100に固定される平面視で矩形の平板である固定本体11aと、固定本体11aの上端中央部からレンジフート110の方向に向かって延びる固定凸部11bを有している。固定凸部11bには、先端部に第1ラッチ15が装着された状態の第1ソレノイド14が着脱可能に固定されている。
【0027】
固定本体11aの上部および側部の外縁に沿って、平面視でコ字形の耐熱シート13の一端が接続している。耐熱シート13は、蛇腹構造であり他端は回動フレーム12に接続している。回動フレーム12は、平面視でコ字形の骨組部材であり、下端部は固定本体11aと回動可能に接続している。また、上端部の中央に、第1ソレノイド14の方向に向かって延びる第1突起部12aを有している。第1突起部12aは第1ソレノイド14の先端に装着される第1ラッチ15と対向する面同士が接触することで、回動フレーム12を拘束した状態で支持する。
【0028】
第1ラッチ15は、第1ソレノイド14が通電されることで、上方(レンジフード110が位置する方向)に移動する。これにより、回動フレーム12が第1ラッチ15との接触から解放されて、レンジ台50の方向に向かって回動する。
【0029】
2つのセンサー20が、収容ボックス30を挟んで固定本体11aに着脱可能に固定されている。センサー20は温度を計測する非接触型の温度センサーである。センサー20で計測された計測温度Tのデータは、収容ボックス30に収容されているコントローラー60にリード線(図示略)を介して送られる。
【0030】
収容ボックス30は、内部にコントローラー60、および消火部材40を収容した状態で、固定本体11aに固定されている。
【0031】
第2ソレノイド34は、収容ボックス30の上方に位置し、先端部に第2ラッチ35が装着された状態で、固定本体11aに着脱可能に固定されている。第2ラッチ35は、第2ソレノイド34が通電されることで、上方に移動する。
【0032】
消火部材40は、略円筒形のボトルに消火剤が充填された構造であり、炎に向かって投げ入れることで簡単に鎮火できる、いわゆる投てき式の消火器である。非常時にきちんと機能するよう、ボトルは、鍋52に落下したとき、割れる強度に設定することが好ましい。本実施形態では、ボトルの形状は略円筒形であるが、転がりやすい形状であれば、他の形状であってもよい。例えば球状であってもよい。また、消火剤は、体に触れても安全であり、保管管理できる温度範囲が、可能な限り広いものであることが好ましい。
【0033】
図3(a)に示す通り、自動消火装置1が動作する前は、第1突起部12aは第1ラッチ15と接触しており、回動フレーム12を拘束した状態で支持している。このとき、耐熱シート13は蛇腹状に折り畳まれた状態で固定本体11aと回動フレーム12に挟持されている(
図4参照)。また、回動フレーム12は上端部に設けられた板バネ17によってレンジ台50に向かって回動する方向に付勢されている。
【0034】
図3(b)に示す通り、回動フレーム12が回動すると、耐熱シート13は蛇腹状に展開する。耐熱シート13は、蛇腹構造の上面部、および上面部に接続する蛇腹構造の両側面部を有する。この状態で、鍋52、収容ボックス30、およびセンサー20は、固定本体11aと耐熱シート13によって、外周、および上方が覆われる。
【0035】
図5(a)、(b)に示す通り、収容ボックス30は、収容本体31と、回動カバー32を有しており、内部に消火部材40とコントローラー60を収容している。収容本体31は固定本体11aに固定されており、回動カバー32は収容本体31を覆った状態で、下端部で収容本体31と回動可能に接続している。回動カバー32の上端部は回動可能な構造となっており、第2突起部32aが設けられている。第2突起部32aは第2ソレノイド34の方向に向かって延びる平板であり、第2ソレノイド34の先端に装着される第2ラッチ35と対向する面同士が接触することで回動カバー32を拘束した状態で支持する。
【0036】
回動カバー32の下面32bは、回動カバー32が回動した際に、回動カバー32の上端部がガスコンロ51に向いた状態とするために、角度αが設けられている。これにより、回動カバー32が回動したとき、消火部材40はレンジ台50の方向に向かって投てきされる。角度αは、回動カバー32の形状、回動カバー32とレンジ台50との位置関係を考慮して、適宜に定めればよい。
【0037】
自動消火装置1の消火手順について説明する。
【0038】
2つのセンサー20は、常時、周囲の温度を計測して、計測温度Tのデータをコントローラー60に送信している(
図6のステップS1、ステップS2)。収容ボックス30を挟んで設けられる2つのセンサー20で温度を計測することで、火炎の状況を的確に把握できる。例えば、鍋52の一方が塞がれる等によって、火炎が偏在して発生する場合でも、火炎の近傍に位置するセンサー20によって温度上昇を的確に捉えることができる。
【0039】
2つのセンサー20のいずれかの計測温度Tの温度上昇率ΔTが、第1閾値TH1を超えたとコントローラー60が判断したとき、コントローラー60は、第1動作指令D1をカバー機構10に送ることで第1ソレノイド14を通電する(
図6のステップS3、S4)。通電によって、第1ソレノイド14の先端に装着されている第1ラッチ15が上方へ移動する。これにより、第1ラッチ15と第1突起部12aとの接触は解放されて、板バネ17の付勢力によって、回動フレーム12はレンジ台50の方向に向かって回動する。この回動は、回動フレーム12が、レンジ台50に接触して終了する。第1閾値TH1は、火炎の初動を感知できる値に設定することが好ましい。また、2つのセンサー20の計測温度Tの温度上昇率ΔTが、第1閾値TH1を超えないときは、温度計測を継続する(
図6のステップS3)。
【0040】
回動フレーム12がレンジ台50の方向に向かって回動した状態では、鍋52は外周、および上方がカバー機構10によって覆われるため、回動フレーム12とレンジ台50のわずかなすき間からのみ酸素が供給される。これにより、火炎は鎮火の方向に向かう。鎮火して、センサー20が計測する計測温度Tが第2閾値TH2を超えないとコントローラー60が判断したときは、消火部材40が投てきされることはない(
図6のステップS5)。
【0041】
なお、ガスコンロ51に異常を感知したときガスの供給を止める機能が設けられていないときは、第1動作指令D1によってガスの供給を停止する機能を付加してもよい。これにより、火炎の勢いを抑制することができる。
【0042】
火炎の勢いが収まらず、あるいは鎮火してもなお温度が上昇して、2つのセンサー20のうちのいずれか1つの計測温度Tが、第2閾値TH2を超えたとコントローラー60が判断したとき、コントローラー60は、第2動作指令D2を収容ボックス30に送ることで第2ソレノイド34を通電する(
図6のステップS5、S6)。第2閾値TH2は、火炎の継続あるいは勢いづくことが検知できる値に設定することが好ましい。通電によって、第2ソレノイド34の先端に装着されている第2ラッチ35が上方へ移動する。これにより、第2ラッチ35と第2突起部32aとの接触は解放されて、回動カバー32はレンジ台50の方向に向かって回動する。この回動は、回動カバー32の下面32bが、固定本体11aに接触して終了する。
【0043】
回動カバー32がレンジ台50の方向に向かって回動することによって、消火部材40は、回動カバー32に沿って転動して、鍋52に投下される。これにより、鍋52の中で発生した火炎は確実に鎮火できる。このように、消火部材40に充填された消火剤の散乱は鍋52の中、あるいはその周辺に限定され、周囲を汚すことを回避できる。
【0044】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、カバー機構は、複数のガスコンロを覆う構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る自動消火装置は、火災の初期段階を着実に捉えて、火炎発生源である鍋の周囲を覆うことができる。特に地震に起因する台所火災も確実に鎮火できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0046】
1:自動消火装置
10:カバー機構
11:固定部
12:回動フレーム
13:耐熱シート
17:板バネ
20:センサー
30:収容ボックス
40:消火部材
50:レンジ台
51:ガスコンロ(燃焼器具)
60:コントローラー
100:壁面
D1:第1動作指令
D2:第2動作指令
TH1:第1閾値
TH2:第2閾値
T:計測温度
ΔT:温度上昇率