(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088715
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】キュービクル監視システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/04 20060101AFI20230620BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230620BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230620BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H02J9/04
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203626
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】長根 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 淳
(72)【発明者】
【氏名】大橋 均
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【テーマコード(参考)】
5G015
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G015GB01
5G015JA32
5G015JA52
5G015JA59
5G015JA64
5G015KA05
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA05
5G066AA02
5G066AA03
5G066AA09
5G066HA11
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】 負荷駆動用の蓄電池をキュービクルに設置し、停電が長期化してもキュービクルの遠隔監視を継続でき、また非常時の電源として蓄電池を活用できる。
【解決手段】 キュービクル1は、状態情報を管理サーバ3に送信するキュービクル内監視装置10と蓄電池71とを有し、キュービクル内監視装置10は蓄電池71の充放電を制御し、管理サーバ3と通信する監視制御装置23を備えている。管理サーバ3は、系統からキュービクル1へ供給される受電電力情報を入手して監視制御装置23に通知し、監視制御装置23は管理サーバ3から受電電力情報を受けて、受電電力が所定の上限値を超えないよう蓄電池71の充放電を制御し、系統が停電したらキュービクル内監視装置10の電源を蓄電池71から供給させて、キュービクル内監視装置10の機能を維持させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統の高圧電力を受電する高圧受電設備を収容して、低圧に変換した電力を負荷に供給するキュービクルと、クラウド上に配置されて前記キュービクルの状態情報を蓄積して管理する管理サーバと、を有するキュービクル監視システムであって、
前記キュービクルは、前記系統が停電した際に少なくとも一部の負荷に電力を供給するための蓄電池と、
前記状態情報を前記管理サーバに送信するキュービクル内監視装置とを有し、
前記キュービクル内監視装置は、前記状態情報の一部であるキュービクルの所定部位の電圧値、電流値を含む物理データを計測して収集するデータ収集手段と、
前記蓄電池の充放電を制御すると共に、前記管理サーバと通信する監視制御装置とを備え、
前記管理サーバは、前記系統から前記キュービクルへ供給される受電電力を計測する電力量計から、計測値情報を入手する受電電力情報入手部を有する一方、
前記監視制御装置は、前記管理サーバから前記受電電力情報を入手して、受電電力が所定の上限値を超えないよう前記蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、
前記系統が停電したら、前記キュービクル内監視装置の電源を前記蓄電池から供給させて、前記キュービクル内監視装置の機能を維持させる電源制御部とを有することを特徴とするキュービクル監視システム。
【請求項2】
前記キュービクルには、太陽光発電装置が発電した直流電力及び前記蓄電池に蓄電した直流電力を交流変換して負荷に供給すると共に、系統からの交流電力を直流変換して前記蓄電池に供給するためのパワーコンディショナが配置され、
前記管理サーバは、前記キュービクルを設置したエリアの気象予報情報を取得する気象情報取得部と、入手した気象予報情報から前記キュービクルに供給される前記太陽光発電装置の発電電力を予測する発電予測部とを有し、
前記監視制御装置は、前記管理サーバから前記太陽光発電装置の発電電力の予測情報を入手して、前記予測情報を基に前記蓄電池の蓄電残量の下限値を設定することを特徴とする請求項1記載のキュービクル監視システム。
【請求項3】
前記監視制御装置が前記管理サーバに送信する状態情報は、負荷に供給される使用電力情報を含み、
前記管理サーバは、受信した前記使用電力情報を記憶する負荷電力情報記憶部と、
過去の前記使用電力情報を基に、現在から所定時間先までの負荷の使用電力を予測する負荷電力予測部とを有して、使用電力の予測情報を前記監視制御装置に送信し、
前記監視制御装置は、前記予測情報を基に前記蓄電池の蓄電残量の下限値を設定することを特徴とする請求項1又は2記載のキュービクル監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統の高圧電力を受電するキュービクルを遠隔監視するキュービクル監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気料金を低減するために受電設備に蓄電池を配置した構成が普及している。設置した蓄電池を夜間電力等の使用電力が少ない時間帯に充電しておき、受電電力が契約電力を超えそうになったら放電させることで、ピーク電力の抑制に有効に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、キュービクル式高圧受電設備(以降キュービクル)の状態を遠隔監視するキュービクル監視システムがある。このシステムでは、系統側が停電した際に監視装置の電源が消失してしまうと、監視システムはシステム異常が発生したと判断し、遠隔監視ができなくなった。このような場合は、現地へ駆けつけて対応しなければならなかった。
この問題を防ぐために、監視システムのバックアップ電源を設けたり無停電電源装置(UPS)を用いられる場合もあったが、停電が長期となった場合は、これらの蓄電容量も無くなるため、同様の対応が必要となった。
【0004】
また、災害などの大規模停電時の電源確保の目的を備えた蓄電池の場合は、常に大きな蓄電量を確保しておく必要があり、例えば蓄電残量が常時満充電の30%を切らないように使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のキュービクル監視システムでは、系統側が停電した際に監視装置の電源が消失してしまうと、停電となった原因を調査する様々な準備をして現地へ駆けつけなければならなかった。
また、監視システムのバックアップ電源を用いられる場合もあったが、停電が長期となるとやはり電源を消失して監視装置が動作停止した。
加えて、災害などの停電時に非常時の電源確保のための電池設備は、一定量の蓄電残量を常に確保しておく必要があるため、平常時は蓄電容量を十分に活用することができなかった。更に、このような蓄電池設備はキュービクルと別途設置されるため、それぞれの置き場所が必要であるし両者を接続する配線工事も必要になり、施工費用が嵩む等の理由から設置の障壁となる課題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、停電時の負荷駆動用電源として蓄電池をキュービクルに設置し、停電が長期化してもキュービクルの遠隔監視を継続でき、加えて平常時の蓄電残量を大きく設定しなくても、非常時の電源として蓄電池を活用できるキュービクル監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、系統の高圧電力を受電する高圧受電設備を収容して、低圧に変換した電力を負荷に供給するキュービクルと、クラウド上に配置されてキュービクルの状態情報を蓄積して管理する管理サーバと、を有するキュービクル監視システムであって、キュービクルは、系統が停電した際に少なくとも一部の負荷に電力を供給するための蓄電池と、状態情報を管理サーバに送信するキュービクル内監視装置とを有し、キュービクル内監視装置は、状態情報の一部であるキュービクルの所定部位の電圧値、電流値を含む物理データを計測して収集するデータ収集手段と、蓄電池の充放電を制御すると共に、管理サーバと通信する監視制御装置とを備え、管理サーバは、系統からキュービクルへ供給される受電電力を計測する電力量計から、計測値情報を入手する受電電力情報入手部を有する一方、監視制御装置は、管理サーバから受電電力情報を入手して、受電電力が所定の上限値を超えないよう蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、系統が停電したら、キュービクル内監視装置の電源を蓄電池から供給させて、キュービクル内監視装置の機能を維持させる電源制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、系統が停電した際には、蓄電池を電源としてキュービクル内監視装置を動作させるため、系統が停電してもキュービクルの情報を監視サーバに送信できる。また、蓄電池の容量は負荷の非常用電源でもあるため容量が比較的大きく、電源を供給する負荷の制限等を実施すれば、監視制御装置の動作を長時間維持させることが可能となる。
よって、キュービクルの遠隔監視を継続して実施でき、停電が発生する度に管理者が現地に駆けつける事態を削減できる。
加えて、受電電力が所定の上限値を超えないよう蓄電池が制御されるため、電力料金の低減が可能となるし、蓄電池をキュービクル内に配置するため、キュービクル内の配電設備と蓄電池との接続も容易に実施できるし、設置スペースも最小で済む。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、キュービクルには、太陽光発電装置が発電した直流電力及び蓄電池に蓄電した直流電力を交流変換して負荷に供給すると共に、系統からの交流電力を直流変換して蓄電池に供給するためのパワーコンディショナが配置され、管理サーバは、キュービクルを設置したエリアの気象予報情報を取得する気象情報取得部と、入手した気象予報情報からキュービクルに供給される太陽光発電装置の発電電力を予測する発電予測部とを有し、監視制御装置は、管理サーバから太陽光発電装置の発電電力の予測情報を入手して、予測情報を基に蓄電池の蓄電残量の下限値を設定することを特徴とする。
この構成によれば、気象状況により蓄電池の蓄電残量が下限値が設定されるため、例えば、雨天が続くことで当面十分な発電量が望めないような場合は、下限値を大きく設定する制御を実施して非常時に備えたり、晴天が続くようであれば、下限値を小さく設定して蓄電電力を活用するよう制御でき、蓄電池を有効活用できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、監視制御装置が管理サーバに送信する状態情報は、負荷に供給される使用電力情報を含み、管理サーバは、受信した使用電力情報を記憶する負荷電力情報記憶部と、過去の使用電力情報を基に、現在から所定時間先までの負荷の使用電力を予測する負荷電力予測部とを有して、使用電力の予測情報を監視制御装置に送信し、監視制御装置は、予測情報を基に蓄電池の蓄電残量の下限値を設定することを特徴とする。
この構成によれば、負荷に供給する電力を予測して蓄電残量の下限値を設定するため、蓄電池を有効活用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、系統が停電した際には、蓄電池を電源としてキュービクル内監視装置を動作させるため、系統が停電してもキュービクルの情報を監視サーバに送信できる。また、蓄電池の容量は負荷の非常用電源でもあるため容量が比較的大きく、電源を供給する負荷の制限等を実施すれば、監視制御装置の動作を長時間維持させることが可能となる。
よって、キュービクルの遠隔監視を継続して実施でき、停電が発生する度に管理者が現地に駆けつける事態を削減できる。
加えて、受電電力が所定の上限値を超えないよう蓄電池が制御されるため、電力料金の低減が可能となるし、蓄電池をキュービクル内に配置するため、キュービクル内の配電設備と蓄電池との接続も容易に実施できるし、設置スペースも最小で済む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るキュービクル監視システムの一例を示す構成図である。
【
図2】キュービクル内監視装置のブロック図である。
【
図3】蓄電池を電源とするキュービクル内の電源供給ラインを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るキュービクル監視システムの一例を示す構成図である。キュービクル監視システムは、高圧受電設備を収容したキュービクル1、電力量計2、キュービクルを管理する管理サーバ3、気象情報を提供する気象サーバ4等で構成されている。
管理サーバ3はクラウド上に配置され、キュービクル1、電力量計2、気象サーバ4と通信ネットワークNを介して接続されている。
【0014】
気象サーバ4は、気象庁或いは気象事業者等によって管理されて気象情報を提供するデータサーバであり、日本全土を複数エリアに分割した各エリアの天気、気温、風向き、日照率等の情報が一般に提供される。
【0015】
キュービクル1には、高圧受電設備に加えて、管理サーバ3と通信してキュービクル1の状態情報を管理サーバ3に送信すると共に制御情報を入手するキュービクル内監視装置10が収容されている。
高圧受電設備は、系統から受電した高圧を低圧に変換する変圧器、高圧交流負荷開閉器、断路器、真空遮断器、限流ヒューズ、高圧進相コンデンサ、配線用遮断器、計器用変成器等により構成され、これらが収容(何れも図示せず)されている。
また、停電時に負荷(図示せず)に電力を供給するための蓄電池装置7が収容されているし、太陽光発電装置8(
図2)がキュービクル1に接続されている。
【0016】
蓄電池装置7は、
図2に示すように、蓄電池71、直流電力を交流電力に変換して系統に逆潮流させたり、負荷に供給するためのパワーコンディショナ(以下、PCSとする)72、後述する下限値等を記憶する記憶部73、監視制御装置23と通信するための通信部75等を備えている。
PCS72は、蓄電池71の充放電を制御する機能を有し、監視制御装置23により設定された下限値を下回らないように蓄電残量を制御する。また、太陽光発電装置8が発電した電力の交流変換を実施し、変換した交流電力を負荷に供給したり、系統側に逆潮流させる。更に、系統からの交流電力を直流に変換して蓄電池71へ供給する制御を行う。
【0017】
尚、負荷には、系統からの受電電力が供給されるし、太陽光発電装置8が発電した電力及び蓄電池71に蓄電された直流電力が交流に変換されて供給される。
【0018】
電力量計2は、系統から受電する受電電力情報を外部に送信する機能を備えたスマートメータであり、通信ネットワークNに接続する通信装置26を介して管理サーバ3に受電電力情報を送信する。管理サーバ3は、この情報を受けて受電電力が設定された上限値を超えないよう監視制御装置23に通知を出す。尚、上限値は最大デマンド値或いはそれより低く設定された電力値であり、電力料金の上昇を防止する目的、或いは低減を目的に受電電力の需要家により設定される。尚、通信装置26は電力量計2と一体としても良い。
【0019】
図2はキュービクル内監視装置10のブロック図を示している。
図2に示すように、キュービクル内監視装置10は、キュービクル1の状態情報を取得するデータ収集装置(データ収集手段)21と、接点情報入力装置(接点情報収集手段)22と、監視制御装置(送信制御手段)23とで構成されている。
データ収集装置21は、電力関係の物理データを収集する第1計測装置21a、温度関係の物理データを収集する第2計測装置21bを有し、高圧受電設備の所定の機器の間に配設された電路の電圧、電流、機器の温度等の物理データ(状態情報)を収集する。
【0020】
具体的に、第1計測装置21aは、計測情報を入力する入力部51、計測を制御すると共に計測値の正常/異常を判断する判断部としての第1計測装置CPU52、個々の計測値の正常/異常を判断するための閾値を記憶する記憶部(閾値記憶部)53、監視制御装置23と通信する通信部54等を備えている。
入力部51には、図示しない複数の電圧計測装置、電流計測装置、また漏洩電流計測装置等が接続され、高圧側の電圧情報M1、電流情報M2、低圧側の電圧情報M3、電流情報M4、変圧器の漏洩電流情報M5等が入力される。第1計測装置CPU52は、第1計測装置21aを制御すると共に力率演算部でもあり、負荷の使用電力情報を含む電力、力率を算出して出力する。
【0021】
第2計測装置21bは、温度情報を入力する入力部56、計測を制御すると共に計測値の正常/異常を判断する判断部としての第2計測装置CPU57、個々の計測値の正常/異常を判断するための閾値を記憶する記憶部(閾値記憶部)58、監視制御装置23と通信する通信部59等を備えている。尚、ここでは、第1計測装置21aを介して監視制御装置23と通信を実施するよう構成されている。
入力部56には、図示しない温度計測装置が接続され、変圧器の油温情報T1、キュービクル1内部の温度情報T2等が入力される。第2計測装置CPU57は、第2計測装置21bを制御する。
【0022】
接点情報入力装置22は、遮断情報や警報情報等のキュービクル1内の各種接点情報(状態情報)を収集する。具体的に、接点情報入力装置22は、接点情報を入力する入力部61、入力情報を所定の識別データに変換する接点情報入力装置CPU62、監視制御装置23と通信して入手した接点情報を送信する通信部63等を備えている。尚、ここでは、第1計測装置21aを介して監視制御装置23と通信を実施するよう構成されている。
入力部61には、断路器、真空遮断器、配線用遮断器の遮断情報S1、限流ヒューズの溶断情報等のヒューズ情報S2、更に絶縁監視装置64の警報情報S3、漏電火災警報器65の警報情報S4等の接点情報が入力される。
接点情報入力装置CPU62は、接点情報が入力されたら、監視制御装置23に出力する。
【0023】
監視制御装置23は、第1計測装置21a、蓄電池装置7と通信する第1通信IF41、入手したデータ、上限値等を記憶する記憶部42、監視制御装置23を制御する監視制御装置CPU43、管理サーバ3と通信する第2通信IF44等を備えている。
尚、監視制御装置23の第1通信IF41は、第1計測装置21aだけで無く、第2計測装置21b、接点情報入力装置22と直接通信するよう構成しても良い。そうすることで第1計測装置21aの制御負担を軽減できる。一方、
図1に示すように、監視制御装置23のキュービクル1内の通信先を第1計測装置21aと蓄電池装置7のみにすることで、監視制御装置23を独立させて設置することが容易となる。
【0024】
監視制御装置CPU43は、状態情報、蓄電池装置7を介して入手した太陽光発電装置8の発電電力情報を管理サーバ3に送信する制御を実施すると共に、系統からの受電電力が設定された上限値を超えないよう蓄電池装置7の充放電を制御する蓄電池制御部としての機能をそなえている。また、系統が停電したら、蓄電池71をキュービクル内監視装置10の電源とする制御を実施し、特定の負荷に対して蓄電池装置7及び太陽光発電装置8の発電電力を電源とする制御を実施する電源制御部としての機能を備えている。
また下限値設定部の機能を有し、管理サーバ3から送信された気象予報情報(日照情報)を基に、蓄電池装置7の蓄電池71の蓄電残量の最低値である下限値を設定して蓄電池装置7に送信する。
【0025】
図3は、蓄電池71を電源とするキュービクル1内の電源供給ラインを示している。L1は直流電力線、L2はキュービクル内監視装置10への電源線、L3は系統接続側電力線を示し、電源送り回路25は負荷及び系統へ電力を供給する回路である。
図3に示すように、蓄電池71からキュービクル内監視装置10を構成する各機器に電源が供給されるよう構成されている。尚、キュービクル内監視装置10へは、停電時に自動切替で電源が供給される。
【0026】
このように、系統が停電した際には、蓄電池71を電源としてキュービクル内監視装置10を動作させるため、監視制御装置23の動作を継続させて、系統が停電してもキュービクル1の情報を管理サーバ3に送信できる。また、蓄電池71の容量は負荷の非常用電源でもあるため容量が比較的大きく、電源を供給する負荷の制限等を実施すれば、監視制御装置23の動作を長時間維持することが可能となる。
よって、キュービクル1の遠隔監視を継続して実施でき、停電が発生する度に管理者が現地に駆けつける事態を削減できる。
また、蓄電池71をキュービクル1内に配置し、PCS72もキュービクル1内に設置されるため、キュービクル1内の配電設備と蓄電池設備7との配線工事を簡素化できるし、電力設備の設置スペースも最小にできる。
【0027】
図4は管理サーバ3のブロック図を示している。管理サーバ3は、
図3に示すように、管理している複数のキュービクル1から送信されたデータを保存する記憶部31、キュービクル1が設置されている場所が含まれる地域(エリア)を記憶するエリア情報記憶部33、キュービクル1の受電電力容量、蓄電池装置7の蓄電容量、太陽光発電装置8の発電容量等を記憶するキュービクル情報記憶部32、負荷の使用電力を予測する負荷電力予測部34、太陽光発電装置8の発電量を予測する発電予測部35、管理サーバ3を制御する管理サーバCPU36、通信ネットワークNを介してキュービクル内監視装置10、電力量計2等と通信する管理サーバ通信IF37等を備えている。
【0028】
上記の如く構成されたキュービクル監視システムは以下のように動作する。但し、ここでは、管理サーバ3による蓄電池装置7の制御を中心に説明する。
管理サーバ3は、キュービクル1の監視制御装置23から、所定部位の電圧情報M1,M3、電流情報M2,M4、漏洩電流情報M5、負荷の使用電力情報等の電力情報、更に所定部位の油温情報T1、温度情報T2、また遮断情報S1、ヒューズ情報S2、警報情報S3、S4等の接点情報が送信され、これらの情報を記憶部31に記憶している。
【0029】
こうした各種情報を受信した管理サーバ3は、入手した情報を基に以下のような情報をキュービクル1に対して送信する。
管理サーバ3は、電力量計2から入手した受電電力情報を監視制御装置23に通知する。監視制御装置23は、送信された受電電力情報と設定されている上限値とを比較し、受電電力が上限値を超えそうだと判断したら、蓄電池装置7に対して出力増の指示を出し、負荷の電源の一部を蓄電池71から供給させる。
このように、系統からの受電電力が所定の上限値を超えないよう蓄電池71の充放電が実施されるため、電力料金の低減が可能となる。
【0030】
また、キュービクル1に対して、例えば、入手した気象予報情報を基にした太陽光発電装置8がキュービクル1に出力する発電量の予測値を通知する。具体的に、気象サーバ4から、キュービクル1が設置されているエリアの気象予報情報(日照時間情報、気温情報、風速情報等)を入手し、例えば翌日の日照時間予測から、翌日の発電量を予測する。管理サーバ3は太陽光発電装置8の過去の発電電力データを蓄積しており、そのデータを基に発電予測部35が日照時間から発電電力を予測する。
【0031】
更に管理サーバ3は、負荷の使用電力を予測して監視制御装置23に通知する。具体的に、管理サーバ3の記憶部31は、負荷の過去の使用電力データを蓄積する負荷電力情報記憶部を構成しており、そのデータを基に負荷電力予測部34が曜日毎の使用電力量、及び所定時間毎の使用電力を予測し、例えば翌日の使用電力の予測情報を通知する。
【0032】
発電電力予測情報と使用電力の予測情報を受けた監視制御装置23は、監視制御装置CPU43が蓄電池71の下限値を設定し、蓄電池装置7に通知する。例えば、翌日の発電量が蓄電池71を充電するのに十分な数値であり、且つ負荷の使用電力が通常と変わらない場合は、当日の下限値を例えば満充電の10%と低く設定し、蓄電池71を放電させて電力を活用させる。但し、翌日の負荷使用電力予測が、通常日より大きいと判断した場合は、系統から受電する電力のピークシフトを考慮して当日の蓄電池71の下限値を例えば20%と通常より多く設定する。
また、逆に管理サーバ3から通知された翌日の発電量予測値が、蓄電池71を充電するには不十分な数値であり、且つ負荷の使用電力が通常と変化ない場合は、当日の下限値を例えば満充電の40%と高く設定し、翌日の電力不足に備える。但し、翌日の負荷使用電力予測が、通常日より大きい場合は、当日の下限値を更に大きく例えば50%に設定する。
【0033】
このように、気象状況により蓄電池71における蓄電残量の下限値が設定されるため、例えば、雨天が続くことで当面十分な発電量が望めないような場合は、下限値を大きく設定する制御を実施して停電等の非常時に備えたり、晴天が続くようであれば、下限値を小さく設定して蓄電電力を活用するよう制御でき、蓄電池71を有効活用できる。
また、気象情報に加えて負荷に供給する電力を予測して蓄電残量の下限値を設定するため、蓄電池71を更に有効活用できる。
【0034】
尚、上記実施形態は、クラウド側で需要家の蓄電池装置7、太陽光発電装置8を管理できるため、仮想発電所のアグリゲータと連携させる充放電制御も容易に実施可能となる。また、気象情報により停電(台風、ゲリラ豪雨など)が想定された場合は、蓄電池装置7の電池残量を、通常よりも多めの電池残量に自動で変更して容量を確保することも可能であるため、常時は経済効果が高くなる蓄電池活用ができ、非常時に備えて蓄電池活用ができるので、小さな蓄電池容量設備で、より大きめの蓄電池容量設備と同等の蓄電活用が可能となる
また、キュービクルにEMS(Energy Management System)が設置されている場合は、監視制御装置23をEMSに組み込んでも良い。
【符号の説明】
【0035】
1・・キュービクル、2・・電力量計、3・・管理サーバ、4・・気象サーバ、7・・蓄電池装置、8・・太陽光発電装置、10・・キュービクル内監視装置、21・・データ収集装置(データ収集手段)、23・・監視制御装置、31・・記憶部(負荷電力情報記憶部)、34・・負荷電力予測部、35・・発電予測部、36・・管理サーバCPU、37・・管理サーバ通信IF(受電電力情報入手部、気象情報取得部)、43・・監視制御装置CPU(蓄電池制御部、電源制御部)。